(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。この種の二次電池は、例えば、金属箔に正極活物質層を有する正極電極と金属箔に負極活物質層を有する負極電極との間をセパレータで絶縁し、層状に積層した電極組立体を有する。そして、二次電池は、ケースに電極組立体と電解液とを収容して構成される。
【0003】
ケース内への電解液の注入は、ケースを構成するケース壁の厚み方向に貫通する注液孔から行われる。そして、注液孔の封止構造として、特許文献1に記載の二次電池では、リベット部材を用いている。
図8に示すように、特許文献1の二次電池では、ケース壁51の注液孔51aがリベット部材53で封止されている。リベット部材53は、胴部54と、注液孔51aの周縁部表面を覆うフランジ55と、注液孔51aの周縁部裏面を覆うかしめ部56とを備えている。また、リベット部材53のフランジ55とケース壁51との間には、注液孔51aの周縁部表面とフランジ55の下面とに密接した環状のシール部材58が介装されている。そして、シール部材58により、ケース壁51における注液孔51aの周縁部表面とフランジ55の下面とがシールされることにより、注液孔51aからの電解液の漏れが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、注液孔51aの封止作業の簡易化を図るため、リベット部材53の胴部54にシール部材58を締り嵌めで嵌合させ、一体に組み付けておくことが考えられる。このようにすると、胴部54を注液孔51aに挿入するだけで、シール部材58も、ケース壁51における注液孔51aの周縁部表面に配置できるようになる。
【0006】
しかしながら、リベット部材53の胴部54にシール部材58を嵌合させる際には、胴部54が嵌合するシール部材58の内周部59に胴部54から軸方向に対し直交する方向への応力が作用することにより、シール部材58の内周部59が圧縮されて厚みを増したように変形した状態となる。このため、シール部材58の面圧が内周部59で過度に高くなるために、シール部材58におけるその他の箇所で作用する面圧が低下する。そして、胴部54を注液孔51aに挿入した状態で、シール部材58による注液孔51aのシール性が低下してしまうおそれがある。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、リベット部材の胴部への締まり嵌めに伴うシール部材の変形に起因して、シール部材による注液孔のシール性が低下することを抑制することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する蓄電装置は、ケース内に電極組立体及び電解液が収容された蓄電装置であって、ケースを構成するケース壁に電解液の注液孔を有するとともに、注液孔を封止するリベット部材を備えるものである。リベット部材は、有底筒状の胴部と、胴部の軸方向一端のフランジと、胴部への締まり嵌めによって一体に組み付けられた環状のシール部材と、を備えている。そして、リベット部材は、胴部が軸方向他端から注液孔に挿通され、シール部材は、胴部への締まり嵌めに伴う当該シール部材の内周部の変形を逃がすための逃がし空間を内周縁に沿って有している。
【0009】
上記構成では、リベット部材の胴部へのシール部材の締まり嵌めに伴って、胴部からシール部材に軸方向に対し直交する方向の応力が作用したとき、シール部材が軸方向に対し直交する方向に圧縮される。この際、胴部への締り嵌めによって一体に組み付けられたシール部材の面圧が内周部で過度に高くなることが抑制される。
【0010】
すなわち、シール部材は、リベット部材の胴部への締まり嵌めに伴って軸方向に対し直交する方向に圧縮されるが、シール部材は内周部で逃がし空間に逃げるように変形する。このため、軸方向に対し直交する方向への面圧がシール部材の内周部だけで過度に高くなってしまうことが抑制される。したがって、リベット部材の胴部への締まり嵌めに伴うシール部材の変形に起因して、シール部材による注液孔のシール性が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リベット部材の胴部への締まり嵌めに伴うシール部材の変形に起因して、シール部材による注液孔のシール性が低下することを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、蓄電装置を具体化した一実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、二次電池10は、ケース11に電極組立体12及び電解液が収容されて構成されている。ケース11は、有底四角筒状のケース本体13と、ケース本体13に電極組立体12を挿入するための開口部13aを塞ぐ矩形平板状の蓋体14とからなる。本実施形態では、蓋体14がケース11を構成するケース壁に相当する。ケース本体13と蓋体14とは、いずれも金属製(例えばステンレス製やアルミニウム製)である。二次電池10は角型電池であり、リチウムイオン電池である。
【0014】
電極組立体12には、正極端子15及び負極端子16が電気的に接続されている。そして、正極端子15及び負極端子16には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁部材17がそれぞれ取り付けられている。また、正極端子15と負極端子16は、蓋体14からケース11外に露出している。
【0015】
電極組立体12は、正極電極、負極電極、及び正極電極と負極電極とを絶縁するセパレータを有する。正極電極は、正極金属箔(例えばアルミニウム箔)の両面に正極活物質層を備える。負極電極は、負極金属箔(例えば銅箔)の両面に負極活物質層を備える。そして、電極組立体12は、複数の正極電極と複数の負極電極とが交互に積層されるとともに、両電極の間にセパレータが介在された積層構造である。
【0016】
蓋体14の両面のうち、ケース11の内側に位置する面を裏面14aとし、ケース11の外側に位置する面を表面14bとする。蓋体14は、その厚み方向に貫通する注液孔14cを有している。注液孔14cは、リベット部材20によって封止され、ケース11内からのガス及び電解液の漏れが防止されている。
【0017】
次に、注液孔14cに挿入される前のリベット部材20について説明する。
図1及び
図3に示すように、リベット部材20は、軸方向一端で開口するとともに、軸方向他端に底壁21aを有する中空円筒状の胴部21と、胴部21の軸方向一端の開口縁に設けられた環状のフランジ22と、胴部21の内部に収容されるマンドレル30と、を有する。胴部21とフランジ22とは一体でアルミニウム製であり、プレス成形により一体に形成される。
【0018】
胴部21の内部では、軸方向他端側に、すなわち下側に、マンドレル30の大径部31より大径の収容部21dが形成されており、収容部21dに連接し、且つ大径部31より小径の連通部21eが形成されている。また、胴部21の内部では、連通部21eよりも軸方向一端側に、すなわち上側に、内径が連通部21eよりも拡径された挿通部21fが形成されている。
【0019】
フランジ22は、その下面22aに下方向に向けて突出し、且つ胴部21を取り囲む環状凸部22bを有している。
マンドレル30は、棒状の操作部32と、この操作部32より大径の大径部31と、操作部32と大径部31の境界に設けられ、操作部32より小径の脆弱部33と、を有している。マンドレル30は例えばステンレス製である。そして、マンドレル30が胴部21の内部に収容された状態では、マンドレル30の大径部31が胴部21の収容部21dに収容されるとともに、マンドレル30の脆弱部33が胴部21の連通部21eに収容される。また、マンドレル30の操作部32が胴部21の挿通部21fに収容されており、操作部32の先端が胴部21から突出している。なお、マンドレル30の硬度は、胴部21の硬度よりも大きい。
【0020】
また、リベット部材20では、胴部21の外周面に円環状のシール部材40が嵌合される。シール部材40は例えば樹脂製やゴム製である。
図4に示すように、シール部材40の内周部41は、内側に突出した形状の複数の(本実施形態では5つの)凸部41aと、周方向で隣り合う2つの凸部41aで挟まれ、外側に凹んだ形状の複数の(本実施形態では5つの)凹部41bと、を有する形状である。凸部41aの頂点と凹部41bの頂点とは、シール部材40の内周部41の周方向において、直線状の内周縁によって繋がっている。
【0021】
なお、複数の凸部41aの頂点を仮想的に繋げて形成される空間S1は円状をなし、この円状の内径が胴部21の外径よりも僅かに小さくなるように、シール部材40の内周部41が形成されている。また、シール部材40の内周部41において、空間S1よりも周方向の外側の空間である複数の凹部41bからなる空間S2と、空間S1と、の合計であるシール部材40の内周部41全体の容積は、胴部21の軸方向に対し直交方向の容積よりも大きくされている。
【0022】
図5に示すように、シール部材40が胴部21に嵌合されると、シール部材40の内周部41が圧縮されて変形する。すなわち、シール部材40は胴部21に締り嵌めで嵌合され、胴部21に一体に組み付けられた状態となる。
【0023】
図6に示すように、胴部21への締まり嵌めに伴って、シール部材40には、上下方向に対して直交する方向の応力が胴部21から作用し、上下方向に対して直交する方向へとシール部材40が圧縮される。このため、シール部材40の内周部41では、上下方向に対して直交する方向におけるシール部材40の外側に向かって、凸部41aが凹む。そして、シール部材40では、こうして凸部41aが凹む分だけ、周方向において凹部41bが狭くなる変形が生じる。すなわち、胴部21の軸方向に対し直交方向の容積に対するシール部材40の空間S1の差の分だけ、シール部材40の周方向において凹部41bが狭くなる変形が生じる。なお、胴部21にシール部材40が嵌合され、注液孔14cに挿入される前のリベット部材20では、シール部材40の凹部41bの上記の変形により空間S2が狭まる。なお、胴部21に嵌合される前におけるシール部材40の空間S2の容積は、胴部21への締まり嵌めに伴うシール部材40の変形を吸収可能な容積とされている。
【0024】
次に、注液孔14cに挿入された状態のリベット部材20について説明する。
図7に示すように、リベット部材20が胴部21の底壁21aから注液孔14cに挿入されると、胴部21の底壁21aがケース11内に位置し、フランジ22がケース11外に位置した状態で蓋体14に締結される。なお、マンドレル30では、脆弱部33を境に操作部32と大径部31とが分断され、操作部32が胴部21内から除去されている。こうした操作部32の胴部21内からの除去作業により、マンドレル30の大径部31が胴部21内に圧入されて胴部21を拡径させ、かしめ部24が形成される。かしめ部24の外周面は、蓋体14の裏面14aにおける注液孔14cの周囲に密接し、注液孔14cを封止している。
【0025】
また、リベット部材20が注液孔14cに挿入された状態では、シール部材40の上面40aがフランジ22の下面22aと対向した状態となり、シール部材40の下面40bが蓋体14の表面14bに対向した状態となる。
【0026】
そして、かしめ部24とフランジ22によって、リベット部材20が蓋体14に締結されるとともに、フランジ22の下面22aと蓋体14の表面14bとの間に、シール部材40が挟持される。シール部材40には、締結に伴う軸力がフランジ22の下面22a及び環状凸部22bを介して作用し、軸方向へとシール部材40が圧縮される。
【0027】
フランジ22の下面22a及び環状凸部22bとシール部材40の上面40aとが密接することにより、フランジ22の下面22aとシール部材40の上面40aとの間に所定の面圧が生じている。同様に、シール部材40の下面40bと蓋体14の表面14bとが密接することにより、シール部材40の下面40bと蓋体14の表面14bとの間に所定の面圧が生じている。こうして上面40a及び下面40bに面圧が生じたシール部材40によって、ケース11の外側で注液孔14cが封止されている。
【0028】
次に、二次電池10の作用について説明する。
胴部21への締まり嵌めに伴って、シール部材40では、シール部材40の内周部41の凸部41aが圧縮されて厚みが増すように変形する。このとき、シール部材40の内周部41は、逃がし空間としての空間S2に逃げるように変形する。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)リベット部材20の胴部21へのシール部材40の締まり嵌めに伴って、胴部21からシール部材40に軸方向に対し直交する方向の応力が作用したとき、シール部材40は内周部41で逃がし空間としての空間S2に逃げるように変形する。このため、軸方向に対し直交する方向への面圧がシール部材40の内周部41だけで過度に高くなってしまうことが抑制される。したがって、リベット部材20の胴部21への締まり嵌めに伴うシール部材40の変形に起因して、シール部材40による注液孔14cのシール性が低下することを抑制することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ シール部材40の凸部41a及び凹部41bの数を変更しても良い。また、シール部材40の内周部41の形状を変更しても良い。例えば、シール部材40の内周部41を全周に亘って厚みを外周部の厚みよりも小さく形成し、軸方向において外周部の表面と内周部の表面との間に生じた空間を、シール部材40の変形を逃がす逃がし空間として機能させても良い。
【0031】
○ 環状凸部22bを省略しても良い。また、環状凸部22bに換えて、蓋体14の表面14bにシール部材40に向けて突出する凸部を設けても良い。また、環状凸部22bと蓋体14の凸部との両方を設けてもよい。
【0032】
○ ケース本体13を構成する側壁や底壁をケース壁として、それらに注液孔14cを設け、リベット部材20で封止しても良い。
○ 正極金属箔として、アルミニウム以外の金属からなる箔を採用しても良い。
【0033】
○ 負極金属箔として、銅以外の金属からなる箔を採用しても良い。
○ 正極電極の片面のみが正極活物質層を有していても良い。
○ 負極電極の片面のみが負極活物質層を有していても良い。
【0034】
○ 電極組立体12は捲回型でも良い。
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、他の二次電池であっても良い。要するに、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであれば良い。
【0035】
○ ケース11の形状を変更してもよい。例えば、ケース11は円筒型でも良い。
○ 本発明を、電気二重層キャパシタ等の蓄電装置に具体化しても良い。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
【0036】
(イ)前記蓄電装置は二次電池である。