(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す統合アンテナ装置1は、第1アンテナ10と、第2アンテナ20が統合されたアンテナ装置である。
【0013】
本実施形態の統合アンテナ装置1は、たとえば車両で用いられ、2つの異なる周波数の円偏波を送受信、または、送信と受信の何れか一方を行う。以下では、統合アンテナ装置1は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)で用いられる周波数帯の電波を送受信するとともに、衛星測位システムの一つであるGPS(Global Positioning System)で用いられる衛星から送信される電波を受信するとして説明する。統合アンテナ装置1は、たとえば車両のフロントガラス上部などに取り付けられる。
【0014】
DSRCでは5.8GHz帯の電波が用いられ、GPSでは1.5GHz帯が用いられている。そして、DSRC、GPSとも偏波は円偏波である。すなわち、統合アンテナ装置1は、5.8GHz帯の円偏波の電波を送受信するとともに、1.5GHz帯の円偏波の電波を受信する。なお、以下では、5.8GHz帯を第1周波数とし、1.5GHz帯を第2周波数とする。第1周波数は第1アンテナ10の使用周波数であり、第2周波数は第2アンテナ20の使用周波数である。
【0015】
(全体構成)
基板2は、ガラスエポキシ基板などの誘電体材料で構成されており、形状は、略正方形の矩形平板形状である。基板2の一方の面(表面とする)2aには、グランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22、フィルタ16a〜16dが配置されている。したがって、グランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22は、同一平面上に配置されていることになる。
【0016】
基板2の大きさおよび形状は、これらグランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22、フィルタ16a〜16dを配置するために十分な大きさ、および形状となっていればよい。本実施形態の基板2の形状は正方形であるが、その他、長方形や円形(楕円を含む)であってもよい。また、本実施形態の基板2の大きさは、一辺28mm程度である。
【0017】
グランドパターン11は、銅などの導体製の板あるいは箔形状である。このグランドパターン11の形状は、1辺の電気長が、第2アンテナ20が使用する電波の波長(以下、第2波長λ
2)の4分の1未満であり、第1アンテナ10が使用する電波の波長(以下、第1波長λ
1)の半波長よりも大きい所定の長さの正方形とする。
【0018】
このグランドパターン11は、その外周部分に相当する4つの辺のうちの1つの辺11a上の1点において無給電素子22と電気的に接続される。また、無給電素子22が接続されている辺11aと直交する辺11b上の1点において第2給電部23と接続される。この第2給電部23は、被給電素子21とも接続される。
【0019】
グランドパターン11において、第2給電部23と接続する点を被給電側接続点25とし、無給電素子22と接続する点を無給電側接続点26とする。
【0020】
第1アンテナ素子であるパッチアンテナ素子12は、導体を素材とする板状の部材である。パッチアンテナ素子12の形状は、正方形の1組の対角部に切り欠き部13を設けた形状となっている。切り欠き部13は、円偏波を放射するための構造であり、周知の縮退分離素子や摂動素子と称されるものに相当する。切り欠き部13によって、元の正方形から削られる部分の面積は、周知の縮退分離法によって定まる面積となっていればよい。
【0021】
パッチアンテナ素子12の1辺の電気長は、第1波長λ
1の約半分の長さである。なお、ここでの1辺の電気長は、切り欠き部13を無視した場合の形状、すなわち正方形における1辺である。
【0022】
このパッチアンテナ素子12は、グランドパターン11と所定の間隔をおいて略平行な姿勢で、そのグランドパターン11に対して対向配置されている。また、パッチアンテナ素子12の位置は、パッチアンテナ素子12の中心を通り、パッチアンテナ素子12を含む平面に垂直な軸線が、グランドパターン11の略中心を通る位置になっている。
【0023】
パッチアンテナ素子12は、
図2に示すように、樹脂製のスペーサ14により、グランドパターン11から離隔して配置されている。スペーサ14は柱状であり、一端がパッチアンテナ素子12に接し、他端がグランドパターン11に接している。スペーサ14の数は、ここでは4つである。
【0024】
第1給電部15は、パッチアンテナ素子12に第1周波数に応じた高周波電流を供給する。たとえば、第1給電部15は、パッチアンテナ素子12と同軸ケーブルの内部導体とを電気的に接続する導電性のピンを、樹脂などの電気絶縁材料で覆った柱状の部材とすればよい。この第1給電部15は、パッチアンテナ素子12の外周部分が備える4つの辺のうち、被給電素子21の長手部21bに対向する辺12aの中央に設けられる。
【0025】
被給電素子21は、線状素子である。具体的には、被給電素子21は、略直線形状のモノポール導体素子を、その途中において直角に曲げた、いわゆる逆L型のモノポール導体素子である。この被給電素子21、および、次に説明する無給電素子22は、第2アンテナ20が備えるアンテナ素子、すなわち請求項の第2アンテナ素子に相当する。
【0026】
被給電素子21は、基部側の端が第2給電部23に接続され、他端は開放端である。なお、被給電素子21の給電側の端と、第2給電部23がグランドパターン11と接続している点である被給電側接続点25との距離は、第2波長λ
2に比較して十分に小さい。したがって、以下では、被給電素子21のグランドパターン11側の端が被給電側接続点25であるとして説明する。
【0027】
被給電素子21は、被給電側接続点25側の端から直角に曲がった部分(以下、直角部)までの長さに対して、直角部から開放端までの長さが相対的に長い。以下、被給電側接続点25側の端から直角部までを短手部21aとし、直角部から開放端までを長手部21bとする。
【0028】
被給電素子21は、長手部21bがグランドパターン11の外周に対して対向するように基板2上に配置される。この長手部21bは請求項の被給電側対向部に相当する。
【0029】
より具体的には、被給電素子21は、長手部21bが、グランドパターン11の外周を形成する4つの辺のうち、被給電側接続点25が設けられている辺11bに対して所定の間隔をおいて平行である。また、被給電側接続点25が開放端よりも無給電素子22側に位置するように配置される。
【0030】
被給電素子21の電気長は、この被給電素子21に電流を流した場合にグランドパターン11に所望の大きさのイメージ電流を誘起する長さとなっていればよい。
【0031】
長手部21bの長さは、グランドパターン11の1辺の長さよりも短い。したがって、長手部21bを配置するために、基板2において長手部21bに沿った方向の長さを長くする必要がない。また、長手部21bの開放端は、グランドパターン11の1つの辺の延長線上にある。後に詳述するように、被給電素子21は、第1アンテナ10のグランドとしても機能するので、被給電素子21を配置するために基板2を大きくする必要がない範囲で、第1アンテナ10のグランドをできるだけ大きくするためである。
【0032】
無給電素子22は、被給電素子21と同様に、逆L型のモノポール導体素子であり、相対的に短い側となる短手部22aと、相対的に長い側となる長手部22bを備える。短手部22aは、無給電側接続点26から直角に折り曲げられた部分である直角部までであり、長手部22bは、直角部から開放端までである。
【0033】
無給電素子22は、当該無給電素子22の長手部22bがグランドパターン11の外周に対して対向するように基板2上に配置される。したがって、長手部22bは請求項の無給電側対向部に相当する。
【0034】
より具体的には、無給電素子22は、その長手部22bが、グランドパターン11の辺11aに平行であって、かつ、無給電側接続点26が開放端よりも被給電素子21側に位置するように配置される。無給電素子22の電気長は、被給電素子21と同じとする。また、短手部22a、長手部22bの長さも、それぞれ、被給電素子21の短手部21a、長手部21bの長さと同じである。
【0035】
したがって、長手部22bの長さも、グランドパターン11の1辺の長さよりも短いことになる。そのため、長手部22bを配置するために、基板2において長手部22bに沿った方向の長さを長くする必要もない。また、長手部22bの開放端も、グランドパターン11の1つの辺の延長線上にある。
【0036】
被給電素子21、無給電素子22は、導体パターンであるため、基板2にグランドパターン11を形成する際に、同時に形成することができる。
【0037】
第2給電部23は、被給電素子21の短手部21aが同軸ケーブルの内部導体と電気的に接続されるとともに、グランドパターン11の被給電側接続点25が同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続された構成である。
【0038】
フィルタ16a、16bは、グランドパターン11と被給電素子21の長手部21bとを接続する。詳しくは、フィルタ16aは、被給電素子21の長手部21bの先端部において、その長手部21bとグランドパターン11とを接続する。フィルタ16bは、被給電素子21の長手部21bの基部すなわち直角部付近において、その長手部21bとグランドパターン11とを接続する。
【0039】
また、フィルタ16c、16dは、グランドパターン11と無給電素子22の長手部22bとを接続する。詳しくは、フィルタ16cは、無給電素子22の長手部22bの開放端付近において、その長手部22bとグランドパターン11とを接続する。フィルタ16bは、無給電素子22の長手部22bの直角部付近において、その長手部22bとグランドパターン11とを接続する。
【0040】
これらフィルタ16a〜16dは、第1アンテナ10を構成する要素であり、ここでの接続は、第1周波数において電気的導通があることを意味しており、グランドパターン11との間に、空間的な隔たりがあってもよい。
【0041】
本実施形態の4つのフィルタ16a〜16dはいずれも同じ構成である。以下、4つのフィルタ16a〜16dを区別しないときは、単にフィルタ16と記載する。本実施形態のフィルタ16の構成は、
図3に示すように、一端がグランドパターン11に接続されたコンデンサCと、そのコンデンサCに一端が接続され、他端が被給電素子21(または無給電素子22)に接続されたコイルLを備えるLC直列共振回路である。
【0042】
フィルタ16の特性は、第1周波数において低インピーダンスとなり、第2周波数において高インピーダンスとなる特性である。具体的には、フィルタ16の特性は、共振周波数が第1周波数またはその付近となる特性である。
【0043】
ここでの低インピーダンスは、第1周波数において、グランドパターン11と、被給電素子21、無給電素子22が導通状態であるとみなすことができる値である。一方、高インピーダンスは、第2周波数において、グランドパターン11と、被給電素子21、無給電素子22が電気的に切断されているとみなすことができる値である。もちろん、第1周波数におけるインピーダンスは、第2周波数におけるインピーダンスよりも低い。
【0044】
(第1アンテナ10の作動)
以上の構成のうち、グランドパターン11、パッチアンテナ素子12、切り欠き部13、スペーサ14、第1給電部15、フィルタ16、被給電素子21、無給電素子22が第1アンテナ10を構成する。次に、この第1アンテナ10の作動を説明する。
【0045】
パッチアンテナ素子12は、第1波長λ
1の約半分となっており、かつ、1組の切り欠き部13が設けられているので、第1周波数の円偏波を放射する。フィルタ16は、第1数波数で低インピーダンスとなるように設定されていることから、第1周波数においては、グランドパターン11と、被給電素子21、無給電素子22は、フィルタ16により電気的に接続される。すなわち、第1アンテナ10にとって、第1周波数では、グランドパターン11に加えて、被給電素子21、無給電素子22もグランドとして機能する。
【0046】
(第2アンテナ20の作動)
第2アンテナ20は、グランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22、第2給電部23を備えた構成である。この第2アンテナ20の作動を、
図4〜
図8を用いて説明する。
【0047】
被給電素子21と無給電素子22は、グランドパターン11の互いに直交する辺11b、11aに沿って配置される。言い換えれば、被給電素子21と無給電素子22は、それぞれの長手方向が直交する。また、被給電素子21と無給電素子22は、それらのグランドパターン11側の端である被給電側接続点25、無給電側接続点26が近接し、各開放端同士は離れるように配置される。
【0048】
したがって、被給電素子21の直角部から開放端に向かって伸びる半直線が無給電素子22の長手部22bを通る直線と交差せず、かつ、無給電素子22の直角部から開放端に向かって伸びる半直線が被給電素子21の長手部21bを通る直線と交差しない。
【0049】
説明の便宜上、
図4に示すように、グランドパターン11において、被給電側接続点25が設けられる辺11bの両端に相当する頂点をそれぞれA、Bとし、無給電側接続点26が設けられる辺11aの両端に相当する頂点をB、Cとする。辺11aと辺11bは、頂点Bを共有する。
図5〜
図8における符号A、B、Cも同じ意味である。
【0050】
図5は、グランドパターン11の辺11aおよび辺11b上における、被給電側接続点25および無給電側接続点26の位置関係を説明するための概念図である。
図4および
図5を比較すれば分かるように、
図5における頂点Aから頂点Cまでの線分のうち、頂点Aから頂点Bまでの区間が辺11bを表し、頂点Bから頂点Cまでの区間が辺11aを表す。辺11aを表す区間と、辺11bを表す区間は、実際には直角である。
【0051】
被給電側接続点25は、グランドパターン11の外周上における頂点Cからの距離が、電気的に第2波長λ
2の4分の1波長となる位置に設ける。すなわち、辺11aの長さと頂点Bから被給電側接続点25までの長さの和が電気的に第2波長λ
2の4分の1となる位置に設ける。なお、
図5中のλ
2は、基板2による波長短縮効果によって短縮された、グランドパターン11における第2周波数の電波の波長(いわゆる導波波長)を表している。
【0052】
また、無給電側接続点26は、グランドパターン11の外周上における頂点Aからの距離が電気的に第2波長λ
2の4分の1となる位置に設ける。すなわち、無給電側接続点26の位置は、辺11bの長さと頂点Bから無給電側接続点26までの長さの和が電気的に第2波長λ
2の4分の1となる位置に設ける。
【0053】
グランドパターン11における第2周波数の導波波長を約117mmとする場合には、グランドパターン11の1辺の長さを導波波長の4分の1に相当する長さ(約29mm)よりも短い値、たとえば25mmとすればよい。その場合、頂点Bから被給電側接続点25までの距離は4〜5mmとすればよい。
【0054】
この
図5、および、
図5に電流の流れを付加した
図6〜
図8を用いて、第2アンテナ20の作動を説明する。アンテナは送受信の可逆性があるので、以下では、送信時の作動のみを説明する。
【0055】
なお、フィルタ16は第2周波数では高インピーダンスであるため、第2アンテナ20にとっては、被給電素子21、無給電素子22と、グランドパターン11とは導通していないとみなすことができる。したがって、
図5〜
図8では、被給電素子21、無給電素子22と、グランドパターン11の辺11a、11bを離隔した状態で示している。
【0056】
第2周波数の電波の送信時には、
図6に示すように第2給電部23から第2周波数に応じた高周波電流が被給電素子21に供給され、被給電素子21上を開放端に向かって電流I1が流れる。この被給電素子21を流れる電流I1によって、グランドパターン11の縁部すなわち外周付近にはイメージ電流I2が誘起される。イメージ電流I2は、頂点Aから辺11bに沿って無給電側接続点26に向かう方向に誘起される。
【0057】
なお、電流I1によって、実際にはグランドパターン11の外周部において、辺11bおよび辺11a以外の部分、たとえばグランドパターン11の辺11aの対辺にもイメージ電流が誘起されうる。しかし、頂点Aから無給電側接続点26までの電気長が、第2波長λ
2の4分の1波長分の長さとなっていることから、イメージ電流I2は、無給電側接続点26および頂点Aのそれぞれを節(または腹)とする定常波を形成しやすい。したがって、電流I1によって誘起されるイメージ電流I2は主として頂点Aから無給電側接続点26の間に発生する。また、上記理由によって、頂点Aをイメージ電流I2の始点と見なすことができる。
【0058】
頂点Aから無給電側接続点26に向かって流れるイメージ電流I2は、無給電側接続点26から無給電素子22に流入する。その成分を便宜上、電流I3とする。なお、無給電素子22に流れる電流I3の位相は、頂点Aから無給電側接続点26までの電気長が、第2波長λ
2の4分の1となっているため、イメージ電流I2に対して90度遅れたものとなる。
【0059】
そして、無給電素子22上に電流I3が発生することによって、
図7に示すように辺11aを中心に、イメージ電流I4が誘起される。イメージ電流I4の向きは頂点Cから被給電側接続点25に向かう向きである。また、イメージ電流I4の位相は、イメージ電流I2に対して90度遅れている。
【0060】
イメージ電流I4が、主として頂点Cから被給電側接続点25までの間に発生する理由は、頂点Cから被給電側接続点25までの電気長が、第2波長λ
2の4分の1となっているためである。すなわち、共振状態における安定性からイメージ電流I4は、頂点Cから被給電側接続点25の間に発生する。ここでの共振状態の安定性とは、定常波の節の形成のしやすさを指す。
【0061】
無給電側接続点26から被給電側接続点25まで区間においては、イメージ電流I2とイメージ電流I4とが重なる。イメージ電流I2とイメージ電流I4とは、互いに逆方向の電流であるため、互いに打ち消し合うように振る舞う。
【0062】
図8は、以上で述べた第2アンテナ20の作動をまとめたものである。グランドパターン11の頂点Aから被給電側接続点25の間には、被給電素子21に流れる電流I1に起因するイメージ電流I2aが流れる。また、グランドパターン11の頂点Cから無給電側接続点26の間には、イメージ電流I2aに対して位相が90度遅れたイメージ電流I4aが流れる。さらに、イメージ電流I2a、I4aが生じる辺11bと辺11aは、
図4に示すように直角である。
【0063】
すなわち、イメージ電流I2a、I4aは互いに直交し、かつ、位相が90度ずれたものとなる。また、電流の振幅も同程度となるため、これらのイメージ電流I2a、I4aによって、第2周波数の円偏波が送信される。第2周波数の円偏波は、グランドパターン11に垂直な方向であって、パッチアンテナ素子12が配置されている側に放射される。
【0064】
(実施形態の効果)
この実施形態の統合アンテナ装置1は、グランドパターン11と同一平面において、グランドパターン11の外側に、被給電素子21、無給電素子22が配置されている。また、グランドパターン11と被給電素子21、無給電素子22との間は、フィルタ16により接続されている。このフィルタ16は、第1周波数で低インピーダンスとなるため、第1アンテナ10にとっては、グランドパターン11に加えて被給電素子21、無給電素子22も、パッチアンテナ素子12のグランドとして機能する。
【0065】
グランドパターン11に加えて、被給電素子21、無給電素子22もパッチアンテナ素子12のグランドとして機能するので、第1アンテナ10の利得が向上する。
図9は本実施形態の統合アンテナ装置1における第1アンテナ10の指向性解析結果である。
図10は、本実施形態の統合アンテナ装置1からフィルタ16を取り除いた比較構成におけるパッチアンテナの指向性解析結果である。
【0066】
図9、
図10において、中心から図上に向かう方向が、グランドパターン11からパッチアンテナ素子12に向かう方向である。
図9の方が図上方向の利得がよいことが分かる。この
図9、
図10からも、本実施形態の統合アンテナ装置1は利得が向上していることが分かる。
【0067】
加えて、本実施形態の統合アンテナ装置1は、第1周波数とは異なる第2周波数で作動する第2アンテナ20も備えているので、2つの周波数で作動する。
【0068】
しかも、第2アンテナ20の要素である被給電素子21、無給電素子22は、第1アンテナ10のグランドとしても機能する。すなわち、第2アンテナ20の要素が第1アンテナ10の要素としても機能するので、統合アンテナ装置1は小型化が実現できている。
【0069】
さらに、第2アンテナ20は、第1アンテナ10の要素であるグランドパターン11に流れるイメージ電流I2a、I4aによって円偏波を放射する。すなわち、第1アンテナ10の要素が第2アンテナ20の要素としても機能する。しかも、被給電素子21、無給電素子22の長さを、第2波長λ
2の4分の1波長よりも短くできる。そのため、互いに異なる2つの周波数の円偏波を放射する統合アンテナ装置1を、より小型にできる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0071】
<変形例1>
前述の実施形態のフィルタ16aは、一端がグランドパターン11の辺11aに接続されたコンデンサCとコイルLにより構成された直接共振回路であった。この変形例1では、フィルタ16aに代えて、
図11に示すように、平行ライン117とミアンダパターン118から構成されるフィルタ116aを備える。
【0072】
平行ライン117は、グランドパターン11の辺11bから離隔して配置され、かつ、辺11bと平行な線状の導体パターンである。ミアンダパターン118は一端が平行ライン117に接続され、他端が被給電素子21に接続されている。
【0073】
平行ライン117が間隔を隔ててグランドパターン11の辺11bと平行に対向することにより、コンデンサとして機能する。また、ミアンダパターン118はコイルとして機能する。したがって、このフィルタ116aもLC直列共振回路となる。
【0074】
平行ライン117とグランドパターン11の辺11bとの間の距離、平行ライン117の長さ、ミアンダパターン118の形状、大きさは、このフィルタ116aの共振周波数が第1周波数となるように定められる。
【0075】
なお、
図11には、
図1のフィルタ16aに代えて用いるフィルタ116aを示しているが、もちろん、フィルタ16b〜16dに代えて、このフィルタ116aを用いることもできる。
【0076】
平行ライン117、ミアンダパターン118は、いずれも導体パターンにより形成されている。したがって、この変形例1の構成では、基板2にグランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22を形成する際に、同時にフィルタ116aを形成することができる。
【0077】
<変形例2>
また、
図12に示すフィルタ216を用いることもできる。
図12に示すフィルタ216は、平行ライン217と、2つのコイル218を備える。平行ライン217の長さは、グランドパターン11の辺11bの長さに近い長さであり、グランドパターン11の辺11bおよび被給電素子21の長手部21bに平行である。2つのコイル218のうちの一方は、平行ライン217の一方の端と被給電素子21の長手部21bを接続する。他方のコイル218は、平行ライン217の他方の端と被給電素子21の長手部21bを接続する。
【0078】
<変形例3>
また、上述の
図12に示すように、第2アンテナ200は、被給電素子21のみを備え、無給電素子22を備えていない構成でもよい。この第2アンテナ200は直線偏波を放射する。
【0079】
<変形例4>
前述の実施形態では、頂点Cから被給電側接続点25までの電気的長さと、頂点Aから無給電側接続点26までの電気的長さのそれぞれを、第2波長λ
2の4分の1となるように配置する構成としたが、これに限らない。他の態様として、頂点Cから被給電側接続点25までの電気的長さ、および頂点Aから無給電側接続点26までの電気的長さは、第2波長λ
2の4分の1の整数倍となっていればよく、たとえば第2波長λ
2の2分の1や、4分の3に相当する長さであってもよい。
【0080】
<変形例5−10>
これまでに説明した実施形態、変形例では、第2アンテナ20のアンテナ素子である被給電素子21、無給電素子22は、グランドパターン11の辺に平行であったが、第2アンテナのアンテナ素子は、グランドパターン11の辺に平行である必要はない。たとえば、第2アンテナのアンテナ素子は、一直線形状の線状素子であり、一方の端から他方の端に向かうに従い、グランドパターン11との距離が増加する配置、反対に、その距離が減少する配置でもよい(変形例5)。
【0081】
また、第2アンテナのアンテナ素子は、複数の折れ曲がり点を持つ線状素子でもよい(変形例6)。
【0082】
また、グランドパターンも正方形状である必要はなく、正方形以外の矩形、矩形以外の多角形、真円形、楕円形等の形状のグランドパターンでもよい(変形例7)。
【0083】
また、フィルタとして、LC直列共振回路以外のフィルタを用いることもできる。第1アンテナの使用周波数で低インピーダンスになっていればよいので、前述の実施形態と同様、第1周波数が第2周波数よりも高い場合において、第1周波数で低インピーダンスとなるハイパスフィルタを、LC並列共振回路などで構成してもよい(変形例8)。
【0084】
また、第1周波数を第2周波数よりも低い周波数としてもよい(変形例9)。その場合には、コイルのみを用いても、第1周波数で低インピーダンスとなり、第2周波数で高インピーダンスとなるフィルタを構成することができる(変形例10)。また、第1アンテナ10が切り欠き部13を備えず、直線偏波を放射するパッチアンテナであってもよい(変形例11)。
【0085】
<変形例12>
また、前述の実施形態のように、被給電素子21とグランドパターン11との間を接続するフィルタ16a、16bと、無給電素子22とグランドパターン11との間を接続するフィルタ16c、16dを備えることが好ましい。しかし、被給電素子21とグランドパターン11との間、および、無給電素子22とグランドパターン11との間のいずれか一方のみをフィルタ16により接続してもよい。この場合でも、グランドとして機能する面積をグランドパターン11よりも大きくする効果は得られるからである。
【0086】
<変形例13>
前述の実施形態では、基板2に対して、パッチアンテナ素子12を、グランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22等と同じ側に配置していた。しかし、これに限られず、基板2の一方の面にパッチアンテナ素子12を配置し、他方の面にグランドパターン11、被給電素子21、無給電素子22等を配置してもよい。
【0087】
<変形例14>
第2アンテナ素子である被給電素子21、無給電素子22がグランドパターン11の外側に配置されていれば、グランドが大きくなる効果は得られる。したがって、必ずしもグランドパターン11と被給電素子21、無給電素子22が同一平面上に配置されている必要はない。たとえば、被給電素子21、無給電素子22を、基板2においてグランドパターン11が配置されている側とは反対側の面に配置してもよい。