【実施例1】
【0018】
始めに、実施例1のシート1の構成について、
図1〜
図15を用いて説明する。本実施例のシート1は、
図1に示すように、自動車の右席(図示向かって左側の座席)として構成されており、同列の左席100(図示向かって右側の座席)との間に、横幅の狭い中央席の領域1Aを延ばす形で一体的に備える、いわゆるベンチシートとして構成されている。上記シート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、頭凭れとなる図示しないヘッドレストと、を備えた構成となっている。
【0019】
上記シートバック2には、その中央席の領域1Aに、同領域に人が座っていない時に前倒しして肘置きとして使用できる状態に切り換えられるアームレスト20が備え付けられている。上記アームレスト20は、
図2の仮想線状態で示すように、その不使用時には、シートバック2の中央席の領域1Aに形成された凹部2A内に嵌め込まれて面一状の形に収容された状態として保持されている。
【0020】
上記アームレスト20は、上記凹部2A内の収容状態から、使用者がアームレスト20を手で掴んで前に引き出すように操作することにより、その凹部2A内の下端側に位置する回転軸20Aを中心に前に倒し込まれるようになっている。そして、上記アームレスト20は、概ね水平姿勢の角度位置まで倒し込まれたところで、その前倒れの回転が止められるようになっている。上記の展開操作により、アームレスト20は、
図2の実線状態で示すように、その天板面上に使用者の肘を快適に置くことができる形に引き出された状態となって保持される。また、上記アームレスト20は、上記前倒しされた使用状態からは、使用者が上記とは逆にアームレスト20を後側に起こし上げるように操作することにより、上述した回転軸20Aを中心に後側に起こし上げられて、再び上記凹部2A内に嵌め込まれて面一状の形に収容された状態へと戻されるようになっている。
【0021】
ここで、上記アームレスト20は、その外周面部全体が、後述するクッション構造(アームパッド22)によって覆われていることにより、外部から受ける荷重を柔らかく撓んで受け止めることができるようになっている。これにより、アームレスト20は、上述したシートバック2の凹部2A内に収容された状態時には、シートバック2と共に、着座者の背凭れ荷重を和らげて受け止められるように機能するようになっている。また、上記アームレスト20は、上記シートバック2の凹部2A内から前に倒し出された使用状態時では、その天板面上に置かれた肘から受ける荷重を和らげて受け止めることができるようになっている。
【0022】
一方、上記アームレスト20を受け入れる凹部2Aも同様に、その外部から見える内周面部全体が、後述するクッション構造(バックパッド12)によって覆われていることにより、外部から受ける荷重を柔らかく撓んで受け止めることができる構成とされている。そして、上記アームレスト20とシートバック2の凹部2Aとの寸法関係は、互いを嵌め合わせることによって、互いのクッション構造(アームパッド22とバックパッド12)同士がシート幅方向に僅かに干渉し合って撓みながら、互いにシート幅方向の弾発力を作用させ合って嵌合される、締まり嵌めの寸法関係とされている。
【0023】
したがって、上記アームレスト20をシートバック2の凹部2A内に押し込むことにより、アームレスト20とシートバック2の凹部2Aとが上述したクッション構造(アームパッド22とバックパッド12)同士の干渉により、互いに擦り合わされて弾発力に伴う係止力を及ぼし合う状態に嵌合された状態となる。これにより、アームレスト20が、シートバック2の凹部2A内に留められた状態に保持されるようになっている。
【0024】
上述したアームレスト20とシートバック2の凹部2Aとは、アームレスト20が使用状態或いは展開途中の状態であっても、互いに嵌合しているアームレスト20の回転中心(回転軸20A)の近傍領域では、互いにシート幅方向に嵌まり合う弾発力を作用させ合うようになっている。これにより、アームレスト20とシートバック2の凹部2Aとの間の、シート幅方向の隙間が詰められた状態に保持されるようになっている。しかし、上述したシート幅方向の隙間を詰める弾発力は、互いのクッション構造(アームパッド22とバックパッド12)間で発揮される弾発力であり、アームレスト20をシートバック2の凹部2A内に収め入れる操作を阻害しない程度の弱いものであるため、これらの干渉し合っている隙間内に何らかの異物が押し込まれてしまう事態が考えられる。
【0025】
そこで、本実施例では、上述したアームレスト20とアームレスト20の回転軸20Aを左右両側から支える金属製の外側支持ブラケット11H及び内側支持ブラケット11Kとの間に、上述した異物が押し込まれるような隙間が形成されないよう、これらの間を適切に隙詰めした構成となっている。具体的には、
図3〜
図4及び
図7〜
図12に示すように、アームレスト20の車両外側(図示向かって左側)の側部は、同側のシートバック2に固定されている外側支持ブラケット11Hに対して、予めアームレスト20に一体的に結合された固定ピンP(回転軸20A)を差し込むのみ簡単なの軸連結構造によって、軸方向に移動できる状態に連結された状態とされている。ここで、固定ピンPが本発明の「連結軸」に相当する。
【0026】
一方、アームレスト20の車両内側(図示向かって右側)の側部は、同側のシートバック2に固定された内側支持ブラケット11Kに対して、別途差し込まれる段付きボルトQ1(回転軸20A)とナットQ2との軸連結構造によって、軸方向の隙間が小さくなる状態に詰められて軸連結された状態とされている。このように組み付けられていることによって、アームレスト20の内側支持ブラケット11Kに対する組み付け位置を基準として生じる車両外側での軸方向の組み付け位置の誤差を、アームレスト20の車両外側(図示左側)の固定ピンP(回転軸20A)が外側支持ブラケット11Hに対して軸方向に移動することによって吸収できるようになっている。
【0027】
しかし、上記のようにアームレスト20の車両外側(図示向かって左側)の組み付け構造を、軸方向の組み付け位置の誤差を吸収できる構造とすることで、
図12に示すように、アームレスト20の車両外側の側部と外側支持ブラケット11Hとの間には、上述した異物が押し込まれ得る大きさの軸方向の隙間S1が空いてしまう。そこで、この隙間S1から異物が入り込んで金属製の外側支持ブラケット11Hに噛み込むなどの不具合が生じないよう、アームレスト20の車両外側の側部には、外側支持ブラケット11Hを車両内側(図示向かって右側)から覆う樹脂製の保護部材24が取り付けられている(
図7〜
図11参照)。ここで、上記外側支持ブラケット11Hが本発明の「ブラケット」に相当する。
【0028】
上述した保護部材24は、
図7〜
図11に示すように、略扇形の板形状をしており、アームレスト20の車両外側(図示向かって左側)の側部に重ねられる形でアームレスト20に回転方向に一体的な状態に取り付けられた状態とされている。上記保護部材24は、
図8及び
図11に示すように、アームレスト20が上述したシートバック2の凹部2A内に収納された状態では、外側支持ブラケット11Hの車両内側(図示向かって右側)の側部の略下側半分の領域を覆った状態とされるようになっている。上記保護部材24は、
図9及び
図13に示すように、アームレスト20が使用状態まで展開されることにより、外側支持ブラケット11Hの車両内側の側部(後述する側板部11H2)を僅かに上方側に突き出て車両内側から広く覆った状態とされるようになっている。これにより、アームレスト20が展開された状態において、異物が金属製の外側支持ブラケット11Hに直接接触することが適切に防止されるようになっている。
【0029】
以下、上述した保護部材24の具体的な構成について、シートバック2の基本構造と併せて詳しく説明していく。先ず、
図2〜
図7を用いて、シートバック2の基本構造について説明する。シートバック2は、
図2及び
図6に示すように、その内部の骨格構造を構成する金属製のバックフレーム11と、バックフレーム11全体をシート前方側から覆うように組み付けられて着座者の体圧を和らげて受け止める発泡ウレタン製のバックパッド12と、シートバック2全体を外周側から覆う布製のバックカバー13と、中央席の領域1Aに設けられたアームレスト20と、を有する構成となっている。
【0030】
上述したバックフレーム11は、
図6に示すように、左右一対の縦長状の鋼板材から成るサイドフレーム11Aと、各サイドフレーム11Aの上端部間に一体的に架橋された逆U字状に曲げられた円鋼管材から成るアッパパイプ11Bと、アッパパイプ11Bの両脚部間に一体的に架橋された横長状の鋼板材から成るアッパプレート11Cと、各サイドフレーム11Aの下端部間に一体的に架橋された横長状の鋼板材から成るロアプレート11Dと、によって、右席(図示向かって左側の席)側のフレーム構造が正面視四角枠状の形に組まれた構成となっている。
【0031】
更に、上記バックフレーム11は、その車両内側(図示向かって右側)の側部から車両内側に向かって横向きのU字状に一体的に張り出す、円鋼管材から成る延長パイプ11Eを一体的に有した構成となっている。上記延長パイプ11Eは、シートバック2の中央席の領域1Aの骨格を成す部材となっており、その上枠部分の車両外側(図示向かって左側)の端部が、アッパパイプ11Bの車両内側の肩口部に上側受けブラケット11Fを介して溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。また、延長パイプ11Eは、その下枠部分の車両外側の端部が、車両内側のサイドフレーム11Aの肩口部に下側受けブラケット11Gを介して溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。
【0032】
上述した上側受けブラケット11Fは、アッパパイプ11Bの車両内側の肩口部と延長パイプ11Eの上枠部分の車両外側の端部とにそれぞれ背面側からあてがわれて溶着された状態とされている。また、下側受けブラケット11Gは、側板の付いたU字板状の形に形成されており、側板が車両内側のサイドフレーム11Aの外側部にあてがわれて溶着された状態として、そのU字板の内部に延長パイプ11Eの下枠部分の車両外側の端部が嵌め込まれて下支えされた状態として溶着された状態とされている。
【0033】
また、上記延長パイプ11Eの縦枠部分の上部領域とアッパパイプ11Bの車両内側(図示向かって右側)の脚部との間には、横長状の円鋼管材から成る補強パイプ11E1が一体的に架橋されている。上記補強パイプ11E1は、その両端部が板状に押し潰された形とされて、延長パイプ11Eの縦枠部分とアッパパイプ11Bの車両内側の脚部とにシート前方側からあてがわれて溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。
【0034】
図2に示すように、バックパッド12は、ウレタン樹脂をシートバック2の基本的な外形を成す形に発泡成形させて形成したものである。上記バックパッド12は、上述したバックフレーム11にシート前方側から組み付けられることで、バックフレーム11全体をシート前方側から広く覆うと共に、その上下左右の各周縁部に形成されたシート後方側へ巻き込み状に延びる各延長部形状によって、バックフレーム11の枠形状全体を上下左右の各外周側からやシート後方側からも広く覆った状態にセットされた状態とされている。そして、上記バックパッド12は、上記バックフレーム11への組み付け後に、袋状に縫製されたバックカバー13が上方側から被せ付けられて、その所々の箇所がバックパッド12内に吊り込まれたりバックフレーム11に止着されたりすることによって、バックカバー13の張設力によってバックフレーム11に押さえ付けられて保持された状態とされている。
【0035】
バックカバー13は、シートバック2の各面の形に合わせてカットされた複数枚のカバーピースが1枚の袋形状に縫い合わされて形成されたものである。上記バックカバー13は、上記組み付けられたバックパッド12に上方側から袋を被せるように組み付けられた後、そのバックパッド12の背裏面に被せ付けられた背裏側の上部ピースが、バックパッド12の前面側から下方側を通ってシート後方側に回し込まれた背裏側の下部ピースと止着されることにより、シートバック2の外周面に浮きや皺を生じさせない形に張設された状態とされている。
【0036】
詳しくは、上記バックカバー13は、上述したシートバック2の中央席の領域1Aに形成された凹部2Aの形にも合わせて、凹部2A内の各縁部に吊り込まれて凹部2Aの内周面に広く密着した状態に張設された状態とされている。ここで、上述した凹部2Aは、シートバック2の車両内側(図示向かって右側)のサイドフレーム11Aよりも車両内側に寄った、車両内側寄りの領域から、シートバック2の車両内側の端領域まで延びて開口する形に形成されている。上記凹部2Aは、シート前方側に開口している他、車両内側にも開口した形となって形成されている。
【0037】
アームレスト20は、
図6〜
図9に示すように、その内部の骨格構造を構成する金属製のアームフレーム21と、アームフレーム21全体を外周側から覆うように組み付けられて外荷重を柔らかく受け止める発泡ウレタン製のアームパッド22と、アームレスト20全体を外周側から覆う布製のアームカバー23と、アームフレーム21の車両外側(図示向かって左側)の側部に取り付けられた樹脂製の保護部材24と、を有する構成となっている。
【0038】
上述したアームフレーム21は、左右一対の長尺な鋼板材から成るサイドフレーム21Aと、各サイドフレーム21Aの先端部間に一体的に架橋された逆U字状に曲げられた円鋼管材から成る架橋パイプ21Bと、によって、逆U字状に組まれた構成となっている。上述した各サイドフレーム21Aは、それぞれ、アームレスト20の左右両側の側部領域の骨格を成す部材として構成されている。各サイドフレーム21Aは、それぞれ、長尺な形にカットされた1枚の鋼板材により形成されており、互いに向かい合うシート内側(シート幅方向の内側)に互いの内側面を向けて配設された状態とされている。各サイドフレーム21Aは、それぞれ、それらの短手方向の各縁部位がシート内側に折り曲げられた横断面U字形状とされて、それぞれのエッジが外部に出にくいように丸められていると共に、構造全体としての曲げや捩りに対する強度が高められた構成となっている。
【0039】
架橋パイプ21Bは、アームレスト20の先端側領域の骨格を成す部材として構成されている。上記架橋パイプ21Bは、その左右両側の折り曲げられた先の各端部が、それぞれ、上述した各サイドフレーム21Aの先端部に形成された横断面U字状に曲げられた形状部位に嵌め込まれて、溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。上記結合により、架橋パイプ21Bは、上述した各サイドフレーム21Aの先端部間を繋ぐ形で、これらの間に強固に一体的に架橋された状態とされている。
【0040】
上述したアームフレーム21は、
図7〜
図8に示すように、その車両外側(図示向かって左側)のサイドフレーム21Aの根元部が、車両内側のサイドフレーム21Aの外側部に結合された外側支持ブラケット11Hに対して、回転軸20Aとして機能する固定ピンPの差し込みにより回転可能に軸連結された状態とされている。また、アームフレーム21は、その車両内側(図示向かって右側)のサイドフレーム21Aの根元部が、延長パイプ11Eの車両内側の縦枠部分の下部に結合された内側支持ブラケット11Kに対して、回転軸20Aとして機能する段付きボルトQ1の差し込みにより回転可能に軸連結された状態とされている。これらの連結により、アームフレーム21は、各回転軸20A(固定ピンPや段付きボルトQ1)を中心に、外側支持ブラケット11Hや内側支持ブラケット11Kに対して、前後に起倒回転することができる状態とされている。
【0041】
上述したアームフレーム21の外側支持ブラケット11Hや内側支持ブラケット11Kに対する前倒れ回転は、
図7に示すように、各サイドフレーム21Aの末端部からシート外側(シート幅方向の外側)に折り曲げられて形成された各ストッパ21A1が、外側支持ブラケット11Hに形成された長孔11H5や内側支持ブラケット11Kに形成された長孔11K1内を通ってこれらの端部11H5a,11K1aに当たることで、止められるようになっている(
図9参照)。
【0042】
図8に示すように、上述した内側支持ブラケット11Kは、その取り付けられた延長パイプ11Eの車両内側の縦枠部分の下部から前方側に張り出した形状となっており、シートバック2の凹部2A内の前方側を向く面部を構成するバックパッド12やバックカバー13よりも前方側に突出した形となって設けられている。しかし、内側支持ブラケット11Kは、その車両内側の側部に樹脂製のシールド2Bが取り付けられている。上記シールド2Bは、その外周縁部が車両外側に折り曲げられた囲いのある形に形成されていて、内側支持ブラケット11Kを外周側から囲い込んだ状態となって取り付けられている。上記シールド2Bの外周側の囲いは、アームレスト20の車両内側の側部との隙間を詰める形に張り出している。
【0043】
上記シールド2Bの取り付けによって、内側支持ブラケット11Kは、外部から見えないように被覆された状態として設けられている。上記内側支持ブラケット11Kは、アームレスト20の膨らみのある形状によって、
図8〜
図9に示すように、アームレスト20が収納位置と使用位置との間の回転域で回転しても、アームレスト20の車両内側の外側部によって外部に露出しない状態に覆われるようになっている。なお、本実施例では、アームレスト20が、シートバック2の凹部2A内に面一状の状態に収納された位置から約110度前倒れして肘置きとして使用可能な位置に展開されるようになっている。
【0044】
また、外側支持ブラケット11Hも同様に、その取り付けられたシートバック2の車両内側のサイドフレーム11Aから車両内側に張り出した状態として設けられており、シートバック2の凹部2A内の前方側を向く面部に張られるバックパッド12やバックカバー13よりも前方側に突出した形となって設けられている。しかし、外側支持ブラケット11Hは、その車両内側の側部にアームレスト20が隣接して設けられている。また、外側支持ブラケット11Hの上下部や前部には、シートバック2の凹部2A内の車両内側を向く面部を構成するバックパッド12やバックカバー13が略面一状に設けられた状態とされている。上記構造によって、外側支持ブラケット11Hは、外部から見えないように被覆された状態として設けられている。上記外側支持ブラケット11Hは、アームレスト20の膨らみのある形状によって、アームレスト20が収納位置と使用位置との間で回転しても、アームレスト20の車両外側の外側部によって外部に露出しない状態に覆われるようになっている。
【0045】
上述したシートバック2の凹部2Aの基本的な外形を作るバックパッド12は、アームレスト20が使用位置に展開された状態時に外部に露出する領域には形状を有しているが、アームレスト20によって被覆される領域には形状を有していない。また、バックパッド12に張設されるバックカバー13は、アームレスト20が使用位置に展開された状態時に外部に露出する領域に広く張設されているが、上述した内側支持ブラケット11Kが突出する領域や、外側支持ブラケット11Hの後述する側板部11H2が配置される領域には孔が空けられており、内側支持ブラケット11Kが突出した状態に通されたり、外側支持ブラケット11Hの側板部11H2の周囲は覆うが側板部11H2は覆わない状態となったりしている。
【0046】
ここで、上述したアームフレーム21は、
図12において前述したように、車両内側(図示向かって右側)のサイドフレーム21Aが、同側の内側支持ブラケット11Kに対して、段付きボルトQ1とナットQ2との締結構造によって、軸方向の隙間が小さく詰められた状態に軸連結された状態とされている。具体的には、
図7に示すように、車両内側のサイドフレーム21Aは、内側支持ブラケット11Kに対して、車両外側(図示向かって左側)からあてがわれた状態として、これらに跨って貫通するように段付きボルトQ1が車両内側から差し込まれ、その差し込まれた先の端部にナットQ2が締結されることにより、段付きボルトQ1の段部によってナットQ2の締め付けられる最大位置が規制されて、軸方向に僅かな隙間が確保された状態として軸回転可能に連結された状態とされている。
【0047】
一方、車両外側(図示向かって左側)のサイドフレーム21Aは、
図12に示すように、同側の外側支持ブラケット11Hに対して、同サイドフレーム21Aに予め溶着された固定ピンPの差し込み構造によって、軸方向に組み付け位置の誤差を吸収するための隙間S1が生じる形に軸連結された状態とされている。具体的には、
図7に示すように、車両外側のサイドフレーム21Aは、その車両内側(図示向かって右側)から差し込まれて車両外側に突出した状態として溶着された固定ピンPが、外側支持ブラケット11Hに差し込まれることにより、外側支持ブラケット11Hに対して軸方向に移動可能かつ軸回転可能に連結された状態とされている。このような連結とされていることにより、
図12に示すように、車両外側のサイドフレーム21Aは、外側支持ブラケット11Hに対して、前述した車両内側のサイドフレーム21Aと内側支持ブラケット11Kとの連結位置を基準とした軸方向の組み付け位置の誤差を吸収するための隙間S1が生じる形に軸連結された状態とされている。
【0048】
しかし、上述した車両外側(図示向かって左側)のサイドフレーム21Aには、その外側部に、上記の隙間S1を詰めて外側支持ブラケット11Hを車両内側(図示向かって右側)から覆う樹脂製の保護部材24が取り付けられている。これにより、上述した車両外側のサイドフレーム21Aが外側支持ブラケット11Hに対して軸方向の隙間S1が生じる状態に連結されていても、金属製の外側支持ブラケット11Hに異物が直接接触することが適切に防止されるようになっている。
【0049】
上述した保護部材24は、
図10に示すように、略扇形の板形状に形成されている。上記保護部材24は、上述した車両外側のサイドフレーム21Aの外側部に取り付けられた後、アームフレーム21にアームパッド22とアームカバー23とが被せ付けられることにより、その大部分がアームカバー23によって覆われたアームレスト20の内部に埋め込まれた状態として設けられている(
図5参照)。具体的には、上述した保護部材24は、
図10に示すように、扇形の板形状に形成された本体板24Aと、本体板24Aの扇形の中心角部から板厚方向に円筒状に突出するブッシュ24Bと、本体板24Aの扇形の外周領域において板厚方向に貫通する形に形成された嵌合孔24Cと、を有する形に形成されている。ここで、本体板24Aが本発明の「蓋部位」に相当する。
【0050】
上述したブッシュ24Bは、保護部材24の本体板24Aから車両外側に突出する形に形成されている。上記ブッシュ24Bは、その外周部が、固定ピンPの差し込まれる外側支持ブラケット11Hの丸孔11H4内に相対回転可能に嵌合させることのできる円筒形状に形成されている。上記ブッシュ24Bの円筒状に突出した先の端面部24B1は、その外周面部が先細り状に面取りされて傾斜した形に形成されている。また、ブッシュ24Bの円筒内部は、固定ピンPを軸方向に挿通して嵌合させることのできる丸孔状に貫通した形に形成されている。
【0051】
嵌合孔24Cは、上述したサイドフレーム21Aの末端部に形成されたストッパ21A1を軸方向に挿通して嵌合させることのできるスリット状の孔形状を備えた形状とされている。更に、上記嵌合孔24Cは、扇形の中心側に向かって長円状に孔を延長させる逃がし孔部24C1を備えた形状とされている。上記逃がし孔部24C1は、嵌合孔24Cにストッパ21A1を挿通して嵌合させた際に、ストッパ21A1の折り曲げられた根元側の内角部に膨らんで形成されているスプリングバック阻止用のビード21A2を受け入れるように機能するものとなっている。上述した逃がし孔部24C1があることで、ストッパ21A1の根元側の内角部にビード21A2が突出して形成されていても、保護部材24の本体板24Aをサイドフレーム21Aの外側部に当接させられる深い位置まで嵌合孔24Cにストッパ21A1を差し込むことができるようになっている(
図11参照)。
【0052】
上述した保護部材24は、上述したサイドフレーム21Aに対して、ブッシュ24Bの円筒内に固定ピンPを差し込みながら、嵌合孔24C内にストッパ21A1を差し込むことにより、固定ピンPとストッパ21A1とに嵌合した状態として、本体板24Aをサイドフレーム21Aの外側部に当接させる位置まで差し込まれるようになっている。この差し込みにより、保護部材24は、サイドフレーム21Aに対して回転方向に一体的に係合した状態として、本体板24Aをサイドフレーム21Aの外側部に当接させた状態に取り付けられた状態となる。上記保護部材24は、上記取り付けた後、アームフレーム21にアームパッド22とアームカバー23とが被せ付けられることにより、アームカバー23によって外周側から覆い被された状態としてサイドフレーム21Aに押し付けられた状態に保持されるようになっている(
図5参照)。
【0053】
上述した保護部材24は、上述したようにアームレスト20の車両外側の側部に取り付けられた状態では、固定ピンPに通されたブッシュ24Bがアームカバー23から車両外側に突出した状態として設けられた状態とされている。そして、上記保護部材24は、
図11に示すように、上記固定ピンPが外側支持ブラケット11Hの丸孔11H4内に通されるのに伴って、ブッシュ24Bが固定ピンPと共に外側支持ブラケット11Hの丸孔11H4内に通されて相対回転可能な状態に嵌合されるようになっている。これにより、アームレスト20が、上記樹脂製の保護部材24のブッシュ24Bを介して、外側支持ブラケット11Hに対して円滑に回転することができる状態に軸連結された状態とされている。上記差し込み時には、ブッシュ24Bの突出した先の端面部24B1が先細り状に傾斜した形となっていることにより、ブッシュ24Bを外側支持ブラケット11Hの丸孔11H4内にスムーズに通し入れることができるようになっている。
【0054】
上記連結により、保護部材24は、本体板24Aが外側支持ブラケット11Hの側板部11H2に車両内側からあてがわれた状態に組み付けられた状態となる。具体的には、上記保護部材24は、アームレスト20がシートバック2の凹部2A内に収納された状態において、アームレスト20の車両外側のサイドフレーム21Aの外側部の、固定ピンPを含む固定ピンPを中心とした後下側の約90度の領域を本体板24Aによって覆った形に取り付けられている。上記保護部材24は、アームレスト20がシートバック2の凹部2A内に収納された状態時には、本体板24Aによって外側支持ブラケット11Hの側板部11H2の略下側半分の領域を車両内側から覆った状態とされるようになっている。そして、上記保護部材24は、
図13に示すように、アームレスト20が使用位置まで前倒しされる回転によって、アームレスト20と一体的となって回転し、本体板24Aが外側支持ブラケット11Hの側板部11H2を車両内側から広く覆った状態へと変えられるようになっている。
【0055】
このような構成となっていることにより、保護部材24は、
図11に示すように、アームレスト20がシートバック2の凹部2A内に収納された状態時には、そのシートバック2と面一状の背凭れ面を成す前面に背凭れ荷重がかけられても、保護部材24が奥の方にあるために乗員の背部と干渉しにくく、異物感を感じさせにくい構成となっている。なおかつ、異物感を感じにくい構成であっても、アームレスト20が
図13に示すように使用位置に展開されるのに伴って、外側支持ブラケット11Hの側板部11H2を車両内側から広く覆った状態へと変えられるようになっている。
【0056】
ここで、上述した外側支持ブラケット11Hは、
図10に示すように、シート高さ方向に面を向ける底板部11H1と、底板部11H1の車両内側の縁部から立ち上がる側板部11H2と、底板部11H1の後側の縁部から立ち上がり側板部11H2の後側の縁部と形状を繋ぐ背板部11H3と、を有する形状とされている。上記外側支持ブラケット11Hの側板部11H2の上縁部、背板部11H3の上縁部、それに側板部11H2の前縁部は、それぞれ、車両内側に曲げられた形とされて、これらのエッジが上部や前部に立たない形に丸められた構成とされている。
【0057】
上記外側支持ブラケット11Hは、支持具11Jを介してシートバック2の車両内側のサイドフレーム11Aの外側部に結合されている。具体的には、上記支持具11Jは、L字板状の形に形成されており、L字の側板部が車両内側のサイドフレーム11Aの外側部にあてがわれて溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。そして、外側支持ブラケット11Hは、
図11に示すように、上記支持具11JのL字の前板部に対して、背板部11H3が前側からあてがわれて溶接により強固に一体的に結合された状態とされている。これにより、外側支持ブラケット11Hは、車両内側のサイドフレーム11Aから車両内側に離れた位置に側板部11H2をサイドフレーム11Aと略平行向きに有した形に設けられた状態とされている。
【0058】
上述した外側支持ブラケット11Hには、側板部11H2と底板部11H1とに跨って下方側から貫通する形に空けられた長孔11H5が形成されている。上記長孔11H5は、
図13に示すように、アームレスト20が前倒しされる動きによって、アームフレーム21の車両外側のサイドフレーム21Aに形成されたストッパ21A1を下方側から受け入れて、アームレスト20の使用位置までの前倒れ回転を逃がすように機能するものとなっている。また、上記長孔11H5は、アームレスト20が使用位置まで倒し込まれることにより、その上側の端部11H5aにストッパ21A1を当てさせて、アームレスト20の回転を止めるように機能するものとなっている。上記長孔11H5が外側支持ブラケット11Hの底板部11H1にも跨って下方側に開口する形に形成されているのは、側板部11H2よりも車両外側に張り出す形で組み付けられたストッパ21A1を下方側から受け入れられるようにするためである。
【0059】
上述した外側支持ブラケット11Hに対し、保護部材24は、
図11に示すように、アームレスト20がシートバック2の凹部2A内に収納された姿勢状態の時には、本体板24Aが外側支持ブラケット11Hの長孔11H5の略下側半分の領域を車両内側から覆う形で、外側支持ブラケット11Hの側板部11H2の略下側半分の領域を車両内側から覆った状態とされるようになっている。そして、上記保護部材24は、アームレスト20が前倒しされる動きによって、徐々に本体板24Aが長孔11H5を広く覆った状態へと変えられていくようになっている。そして、上記保護部材24は、
図13に示すように、アームレスト20が使用位置まで倒し込まれることによって、本体板24Aの扇形の一辺がブッシュ24B(回転軸20A)から真っ直ぐ上方側に起立した姿勢状態となって、本体板24Aの上縁部の領域が外側支持ブラケット11Hの側板部11H2を上方側に越えた状態へと変えられるようになっている。上記状態により、保護部材24は、本体板24Aによって、外側支持ブラケット11Hに形成された長孔11H5に対する上方側や前方側からの異物の入り込みを適切に抑えることのできる状態となる。
【0060】
上述した保護部材24は、詳しくは、
図14〜
図15に示すように、アームレスト20がシートバック2の凹部2A内から凹部2Aとの間に外部から見える上側の隙間S2(約100mm)を形成する位置まで倒し込まれた状態となることにより、本体板24Aが外側支持ブラケット11Hの側板部11H2に形成された長孔11H5を車両内側から完全に覆った状態となるように、その扇形状が定められている。こうすることにより、アームレスト20の前倒しによって凹部2Aとの間に異物が入り込み得る僅かな隙間S2が形成された段階から、保護部材24によって異物が支持ブラケットの長孔11H5内に入り込むことを適切に防止することができる。
【0061】
以上をまとめると、本実施例のシート1(乗物用シート)は、次のような構成となっている。すなわち、シートバック2に固定された外側支持ブラケット11H(ブラケット)にアームレスト20が軸回転可能な状態にヒンジ連結されたシート1であって、外側支持ブラケット11Hとアームレスト20との間の軸方向の隙間S1(
図12参照)を詰めて外側支持ブラケット11Hを保護する保護部材24を有する。アームレスト20は、軸方向に突出して外側支持ブラケット11Hに差し込まれて回転可能に連結される固定ピンP(連結軸)と、アームレスト20の回転を外側支持ブラケット11Hとの当接によって規制するストッパ21A1と、を有する。保護部材24が、固定ピンPとストッパ21A1とを外周側から覆った状態として、アームレスト20に回転方向に一体的な状態に取り付けられている。
【0062】
このように、保護部材24がアームレスト20に対して回転方向に一体的な状態に取り付けられることにより、アームレスト20が回転しても保護部材24がアームレスト20と擦れなくなる。上記保護部材24は、アームレスト20の固定ピンPとストッパ21A1とを外周側から覆った状態として外側支持ブラケット11Hとアームレスト20との間に軸方向に介在することにより、これらの間の隙間S1を適切に詰めて外側支持ブラケット11Hを保護することができる。
【0063】
また、保護部材24が、固定ピンPの外周部に嵌め込まれて固定ピンPと共に外側支持ブラケット11Hに差し込まれるブッシュ24Bを備えた構成となっている。このような構成となっていることにより、保護部材24がアームレスト20の固定ピンPを外周側から覆うように取り付けられる構成を利用して、固定ピンPと共に外側支持ブラケット11Hに差し込まれるブッシュ24Bを合理的に形成することができる。
【0064】
また、保護部材24とアームレスト20との間に、互いに軸方向の嵌め込みによって回転方向に一体的な状態に嵌合される嵌合構造が設けられている。このような構成となっていることにより、保護部材24をアームレスト20に対して簡便に取り付けることができる。
【0065】
また、ストッパ21A1が、アームレスト20から軸方向に突出し、外側支持ブラケット11Hに形成された長孔11H5内に通されて、長孔11H5の端部11H5aとの当接によってアームレスト20の回転を規制する構成となっている。保護部材24は、アームレスト20がシートバック2から前に傾けられた所定の回転域を回転する時に長孔11H5の軸方向の開口を覆う形の本体板24A(蓋部位)を備えた構成となっている。このような構成となっていることにより、アームレスト20がシートバック2から前に傾けられてアームレスト20との間に隙間S2(
図15参照)を形成した状態となっても、何らかの異物が外側支持ブラケット11Hの長孔11H5に直接接触することを適切に防止することができる。
【0066】
また、ストッパ21A1が、アームレスト20のサイドフレーム21Aから曲げ起こされて形成されている。上記曲げ起こしの内角部には、ストッパ21A1のスプリングバックを阻止するためのビード21A2が突出して形成されている。保護部材24は、ストッパ21A1に軸方向に嵌め込まれて嵌合する嵌合孔24Cを有し、嵌合孔24Cがビード21A2を回避する逃がし孔部24C1を有した形状とされている。このような構成となっていることにより、ストッパ21A1の根元部にスプリングバックを阻止するためのビード21A2が突出して形成されていても、保護部材24をストッパ21A1の根元部まで深く差し込んで嵌合させることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、自動車の右席以外のシートにも適用することができるほか、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートであってもよく、また、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。
【0068】
また、アームレストは、シートバックに対して埋め込まれる形に設けられるのではなく、シートバックの側部に片持ち状に連結されて設けられる構成であってもよい。また、保護部材は、ゴムや金属等の樹脂以外の材料から成るものであってもよい。また、保護部材は、アームレストに対して、接着やビス締結、圧着や嵌合等の種々の結合手段によって回転方向に一体的な状態に取り付けられるものであってもよい。また、保護部材は、必ずしも連結軸のブッシュとして機能する部位を備えた構成でなくてもよい。また、保護部材の形は、扇形以外の形状であってもよい。
【0069】
また、アームレストのストッパは、アームレストの収納方向の回転を止めるために機能するものであってもよい。また、アームレストに形成されるストッパは、突起ではなく凹みや孔として形成されるものであってもよい。すなわち、アームレストに形成されるストッパは、ブラケットから突出する凸部を受け入れて、アームレストの回転により凸部と当接して、アームレストの回転を止めるようになっているものであればよい。そして、このような凹みや孔として形成されるストッパに対して保護部材を嵌合させるなりして回転方向に一体的な状態に取り付けるために係合させるようにしてもよい。