【実施例1】
【0014】
始めに、実施例1のリベット20の構成について、
図1〜
図12を用いて説明する。本実施例のリベット20は、
図1に示すように、自動車の左側座席として構成されたシート1(乗物用シート)の内部に適用されている。上述したシート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えた構成となっている。なお、以下の説明において、「シート前方側」や「シート後方側」等、各種方向に「シート」を付して記載する場合には、シート1に対する各種方向を示すものとする。
【0015】
(シートバックについて)
上述したシートバック2は、その内部の骨組みを構成する逆U字形状に組まれた金属製のバックフレーム2Fと、バックフレーム2F全体をシート前方側から覆うように組み付けられて着座者の体圧を和らげて受け止める発泡ウレタン製のバックパッド2Pと、バックパッド2Pの表面全体に被覆された布製のバックカバー2Cと、を有する構成となっている。上記シートバック2の車両外側の側部箇所には、車両の側部衝突の発生時にエアバッグをシート前方側に膨張展開させて、着座者の身体を側方から保護するサイドエアバッグ装置S/Aが内装されている。上記サイドエアバッグ装置S/Aは、
図2に示すように、上述したバックフレーム2Fの車両外側のサイドフレーム2Fsの外側部に一体的に取り付けられている。
【0016】
(サイドエアバッグ装置について)
上述したサイドエアバッグ装置S/Aは、常時は、上述したサイドフレーム2Fsをシート前方側から外周側(車両外側)を通ってシート後方側からも包むように組み付けられたバックパッド2Pのサイド領域2Ps内に包み込まれた形となって配設されている。上記サイドエアバッグ装置S/Aは、車両の側部衝突が発生する(もしくは検知される)ことにより、瞬時にエアバッグをシート前方側に膨張展開させて、着座者の身体を衝突から保護するようになっている。
【0017】
その時、サイドエアバッグ装置S/Aは、エアバッグの膨張展開に伴い、エアバッグのシート前方側に位置するバックパッド2Pのサイド領域2Psや同サイド領域2Psを表面側から覆うバックカバー2Cのサイド被覆部2Csに内側から強い展開圧をかけて、これらを破断させながらエアバッグをシート前方側に膨張展開させるようになっている。そのため、上記サイドエアバッグ装置S/Aを外周側から包むバックパッド2Pのサイド領域2Psには、上記エアバッグの膨張展開を狙った位置から的確に行えるように制御するために、バックカバー2Cのサイド被覆部2Csを狙った位置で破断させられるように補強する帯状の第1の力布2B1と第2の力布2B2とが敷設されている。ここで、第1の力布2B1と第2の力布2B2とが、それぞれ本発明の「補強布」に相当する。
【0018】
(第1の力布と第2の力布について)
上述した第1の力布2B1と第2の力布2B2は、それぞれ、バックカバー2Cよりも伸張性が低く引張り強度に優れた布材により形成されている。上記第1の力布2B1と第2の力布2B2とは、それぞれ、バックカバー2Cのサイド被覆部2Csを構成する前側(天板サイド側)のカバーピース2Cs1と框側のカバーピース2Cs2との縫合部位2Caにエアバッグの膨張展開に伴う負荷応力を集中させて、縫合部位2Caにて破断を生じさせられるよう各カバーピース2Cs1,2Cs2を補強した構成となっている。
【0019】
具体的には、上述した第1の力布2B1は、そのシート後方側の縁部位が、同縁部位に沿って長尺な形に結合された略J字板形状の第1のJフック2J1により、サイドフレーム2Fsに対して樹脂製のクリップ10を介して取り付けられた状態とされている。そして、上記第1の力布2B1は、上記結合された箇所からバックパッド2Pのサイド領域2Psの内周側を通って途中から外周側へ抜けるように通されて、同サイド領域2Psを表面側から覆うバックカバー2Cの框側のカバーピース2Cs2の内周面に沿って通されて、そのシート前方側の縁部位が縫合部位2Caに共縫いされている。
【0020】
また、第2の力布2B2は、そのシート後方側の縁部位が、同縁部位に沿って長尺な形に結合された略J字板形状の第2のJフック2J2により、サイドフレーム2Fsに対して上述した樹脂製のクリップ10を介して取り付けられた状態とされている。そして、上記第2の力布2B2は、上記結合された箇所からバックパッド2Pのサイド領域2Psと中央領域2Pcとの間を通ってサイド領域2Psの外周側へ抜けるように通されて、同サイド領域2Psを覆うバックカバー2Cの前側(天板サイド側)のカバーピース2Cs1の内周面に沿って通されて、そのシート前方側の縁部位が縫合部位2Caに共縫いされている。
【0021】
上記第1の力布2B1と第2の力布2B2とによる補強構造により、サイドエアバッグ装置S/Aは、エアバッグを膨張展開させることにより、その展開に伴う膨張圧を、バックカバー2Cのサイド被覆部2Csの縫合部位2Caが位置する箇所に集中的に作用させて、縫合部位2Caを破断させることができるようになっている。その際、上記第1の力布2B1と第2の力布2B2とに掛けられるエアバッグの膨張展開に伴う引張り力は、これらのシート後方側の縁部位に結合された第1のJフック2J1や第2のJフック2J2をサイドフレーム2Fsに対して取り付けているクリップ10の構造強度により強く受け止められるようになっている。ここで、第1のJフック2J1と第2のJフック2J2がそれぞれ本発明の「フック」に相当する。
【0022】
具体的には、
図3に示すように、上記クリップ10には、その第1のJフック2J1と第2のJフック2J2とが取り付けられる各部位に、各部位の開きを防止して第1のJフック2J1と第2のJフック2J2とを外しにくくするリベット20が締結されている。これらリベット20は、それぞれ、POM樹脂により形成されており、クリップ10に対して一方側からのみの差し込みによってクリップ10の開きを防止した状態に締結されるようになっている。
【0023】
(クリップについて)
以下、上述した各リベット20の具体的な構成について、クリップ10の基本構造と併せて詳しく説明していく。先ず、クリップ10の構成について説明する。クリップ10は、
図3に示すように、上述した第1のJフック2J1や第2のJフック2J2よりも長尺な略板状の形に形成されている。具体的には、上記クリップ10は、略平板形状を成す本体片11と、本体片11の一方側の側面から横断面J字状の形に張り出す第1の挟持片12と、本体片11の他方側の側面から横断面J字状の形に張り出す第2の挟持片13と、本体片11の根元側の端部から横断面挟み状の形に張り出すフレーム嵌合部14と、を有する横断面形状に形成されている。上記クリップ10は、上述した横断面形状が長手方向に略一様な形で真っ直ぐに延びる形状とされている。ここで、第1の挟持片12と第2の挟持片13とから成る2枚の挟持片が本発明の「2枚の挟持片」に相当する。
【0024】
詳しくは、上述した第1の挟持片12は、上述した本体片11の横断面の長手方向の略中央箇所の一方側の側面から本体片11と平行に横断面の長手方向の先端側に向かって略J字状の形に延び出す形状とされている。そして、上記第1の挟持片12の延び出した先の端部には、本体片11との間の隙間方向に向かって突出する横断面垂直三角形状の掛止爪12Aが形成されている。上記掛止爪12Aは、第1の挟持片12の延び出す先端側に向かって先細り状となる横断面形状に形成されている。
【0025】
上述した第1の挟持片12は、上述した第1の力布2B1の縁部位に沿って結合された略J字板形状の第1のJフック2J1を本体片11との間に横断面の長手方向の先端側から差し込むことにより、第1のJフック2J1を本体片11との間に挟み込んだ状態に引掛けて保持することができるようになっている。具体的には、上述した第1のJフック2J1の先端側の端部にも、第1の挟持片12の先端側の端部に形成された掛止爪12Aと掛かり合うことのできる対称な形をした掛止爪2J1aが突出して形成されている。そのため、第1のJフック2J1を第1の挟持片12と本体片11との間に差し込むことにより、第1のJフック2J1の掛止爪2J1aが第1の挟持片12の掛止爪12Aに対して互いの根元側の垂直面同士が面当接する状態に掛かり合い、第1のJフック2J1が第1の挟持片12と本体片11との間に挟み込まれた状態に保持される。
【0026】
一方、第2の挟持片13は、上述した本体片11の横断面の長手方向の先端箇所の他方側の側面から本体片11と平行に横断面の長手方向の根元側に向かって略J字状の形に延び出す形状とされている。そして、上記第2の挟持片13の延び出した先の端部には、本体片11との間の隙間方向に向かって突出する横断面垂直三角形状の掛止爪13Aが形成されている。上記掛止爪13Aは、第2の挟持片13の延び出す先端側に向かって先細り状となる横断面形状に形成されている。
【0027】
上述した第2の挟持片13は、上述した第2の力布2B2の縁部位に沿って結合された略J字板形状の第2のJフック2J2を本体片11との間に横断面の長手方向の根元側から差し込むことにより、第2のJフック2J2を本体片11との間に挟み込んだ状態に引掛けて保持することができるようになっている。具体的には、上述した第2のJフック2J2の先端側の端部にも、第2の挟持片13の先端側の端部に形成された掛止爪13Aと掛かり合うことのできる対称な形をした掛止爪2J2aが突出して形成されている。そのため、第2のJフック2J2を第2の挟持片13と本体片11との間に差し込むことにより、第2のJフック2J2の掛止爪2J2aが第2の挟持片13の掛止爪13Aに対して互いの根元側の垂直面同士が面当接する状態に掛かり合い、第2のJフック2J2が第2の挟持片13と本体片11との間に挟み込まれた状態に保持される。
【0028】
フレーム嵌合部14は、上述した本体片11の横断面の長手方向の末端箇所の他方側の側面から略垂直な方向に略J字状の形に延び出す形状とされている。上記フレーム嵌合部14は、サイドフレーム2Fsのシート後方側の縁部2Fs1(
図2参照)を嵌合させた状態に受け入れられる溝形状と、受け入れたサイドフレーム2Fsに横から強い弾発力を作用させる押圧形状と、を有する横断面形状に形成されている。上記横断面形状により、フレーム嵌合部14は、サイドフレーム2Fsのシート後方側の縁部2Fs1に差し込まれることで、同縁部2Fs1に強く一体的に嵌合した状態に取り付けられるようになっている。
【0029】
上記構成のクリップ10は、上述した第1の挟持片12に引掛けた第1のJフック2J1や第2の挟持片13に引掛けた第2のJフック2J2を、それぞれ、エアバッグ(
図2参照)の膨張展開圧を受けても外さないように強く保持することができるようになっている。具体的には、上記クリップ10は、
図3〜
図4に示すように、上述した第1の挟持片12と本体片11と第2の挟持片13とに貫通して差し込まれた上下2本のリベット20によって、第1の挟持片12と第2の挟持片13とがエアバッグの膨張展開圧を受けても本体片11から押し開かれないように強く保持される構成となっている。
【0030】
(リベットについて)
上記各リベット20は、上述したクリップ10の第1のJフック2J1や第2のJフック2J2が引掛けられる領域の両サイドの領域に通されて設けられている。具体的には、上述した各リベット20は、それぞれ、
図4及び
図11〜
図12に示すように、丸棒状の芯部材21と、芯部材21の外周部に装着された円筒状の外筒部材22と、を有する2重の軸構造により構成されている。各リベット20は、それぞれ、上述した第1の挟持片12と本体片11と第2の挟持片13とに貫通して空けられた丸孔形状の貫通孔12B,11A,13B内に貫通して差し込まれた後、芯部材21の頭部21Bを外筒部材22の頭部22Bに更に押し付けるように力を掛けることにより、クリップ10に対して抜け止めされた状態に形を変えて装着されるようになっている。この装着により、上述したクリップ10の第1の挟持片12と第2の挟持片13とがそれぞれ本体片11からの開き変形が抑止された状態に保持されるようになっている。
【0031】
上述した各リベット20は、
図11〜
図12に示すように、上述した芯部材21や外筒部材22が、それぞれ、クリップ10の第1の挟持片12から第2の挟持片13までを貫通して挿通される、クリップ10の差し込み幅ARよりも長尺な差し込み長を有した形に形成されている。
【0032】
(芯部材について)
上述した芯部材21は、
図5〜
図7(特に
図7)に示すように、丸棒形状の軸部21Aと、軸部21Aの根元側の端部に拡径されて形成された円板形状の頭部21Bと、軸部21Aの差し込み方向の先端側の端部に形成された先細り形状の先端部21Cと、先端部21Cより根元側の領域に縮径された形に形成されたくびれ部21Dと、くびれ部21Dより根元側の領域に軸部21Aと略同径となる大きさまで拡径されて形成された押し出し部21Eと、押し出し部21Eより根元側の領域に僅かに縮径された形に形成された引き込み部21Fと、を有する形に形成されている。ここで、軸部21Aが本発明の「軸部」に相当する。
【0033】
上述した芯部材21は、軸回転対称な形に形成されている。上述した軸部21Aと先端部21Cと押し出し部21Eとは、それぞれ、互いに略同径となる直径を有した形に形成されている。くびれ部21Dは、上述した先端部21Cと押し出し部21Eとの間に位置し、これらの間の領域を外周側から凹ませてくびれさせた形にしている。上記くびれ部21Dは、その凹みの差し込み方向の先端側の立壁面が半径方向の外側に垂直に立ち上がる形に形成されている。しかし、上記くびれ部21Dの押し出し部21Eへと繋がる根元側の立壁面は、半径方向の外側に面を向ける形に傾斜して立ち上がる形に形成されている。上記くびれ部21Dの両立壁面間の凹み領域は、後述する外筒部材22の突起22D全体を完全に受け入れられる大きさとなっている。
【0034】
引き込み部21Fは、押し出し部21Eの根元側に位置し、同領域を外周側から凹ませてくびれさせた形にしている。上記引き込み部21Fは、くびれ部21Dよりは凹みの深さが浅いものの、くびれ部21Dと同じような横断面形状に形成されている。具体的には、引き込み部21Fは、その凹みの差し込み方向の先端側の立壁面が半径方向の外側に垂直に立ち上がる形に形成されている。その一方で、引き込み部21Fの根元側の立壁面は、半径方向の外側に面を向ける形に傾斜して立ち上がる形に形成されている。
【0035】
(外筒部材について)
外筒部材22は、円筒状の筒部22Aと、筒部22Aの根元側の端部に拡径されて形成された中空円板形状の頭部22Bと、筒部22Aの差し込み方向の先端側の端部の円周方向の3箇所の部位に切り込まれたスリット22Cと、これらスリット22Cによって切り分けられた筒部22Aの各撓み片22Aaの内周面上に突出して形成された突起22Dと、を有する形に形成されている。上述した外筒部材22は、上述した各スリット22Cによって切り込まれた形状以外は軸回転対称な形に形成されている。ここで、筒部22Aが本発明の「筒部」に相当し、頭部22Bが本発明の「頭部」に相当する。
【0036】
上述した筒部22Aは、
図11〜
図12に示すように、その円筒の外径が、上述したクリップ10の第1の挟持片12と本体片11と第2の挟持片13とに貫通して形成された丸孔状の各貫通孔12B,11A,13Bの孔径と略同じ大きさ(僅かに隙間ができる大きさ)となっており、各貫通孔12B,11A,13B内に緩やかに嵌合する形に差し込まれる構成となっている。
【0037】
また、
図7〜
図8に示すように、上記筒部22Aは、その円筒の内径が、上述した芯部材21の軸部21Aの外径と略同じ大きさ(僅かに隙間ができる大きさ)となっており、その円筒内に通された芯部材21の軸部21Aを軸方向にスライド可能にガイドした状態に嵌合させられる構成となっている。上記筒部22Aの差し込み方向の先端側部位の外周面領域は、先細り状に面取りされた形に形成されている。頭部22Bは、上述した芯部材21の頭部21Bと同じ外径を有した中空円板状の形に形成されている。
【0038】
各スリット22Cは、筒部22Aの差し込み方向の先端側部位を円周方向に3等分割する形に切り込んだ構成となっている。詳しくは、上記各スリット22Cは、筒部22Aの差し込み方向の先端側部位から根元側の中間部位までを軸方向に真っ直ぐに切り込んだ形に形成されている。具体的には、上記各スリット22Cは、
図12に示すように、外筒部材22の筒部22Aを頭部22Bがクリップ10の第1の挟持片12と当接する位置まで各貫通孔12B,11A,13B内に差し込んだ時に、第2の挟持片13の貫通孔13B内に差し込まれた状態となる差し込み領域22A2まで切り込みが延びる形に形成されている。
【0039】
上記各スリット22Cの形成により、筒部22Aは、その先端側部位から根元側の途中部位までが円周方向に3つの撓み片22Aaに切り分けられた状態として、それぞれが単独で片持ち梁のように半径方向の内外側に撓みやすい形に形成された状態とされている。上記各スリット22Cは、
図9〜
図10に示すように、それぞれが円周方向に広い切り幅を有した形に形成されており、各スリット22Cによって切り分けられた各撓み片22Aaが半径方向の内外方に撓む際に互いの側部同士が擦れ合わないように円周方向に離間した形に形成された状態とされている。上記筒部22Aは、各スリット22Cによって切り分けられた領域(各撓み片22Aa)は半径方向の内外方に撓みやすく構成されているが、それ以外の領域は横断面が全周に亘って繋がった閉断面形状となっているため撓みにくくなっている。
【0040】
各突起22Dは、
図12で上述した筒部22Aの各撓み片22Aaの第2の挟持片13の貫通孔13Bを通り抜けた先の領域(先端領域22A1)の内周面上の位置に突出して形成されている。上記各突起22Dは、
図7及び
図10に示すように、各撓み片22Aaの内周面上の円周方向の略全域に亘って一様な形に突出して形成されている。上記各突起22Dは、
図7に示すように、それらの突出した差し込み方向の先端側の立壁面が軸方向に真っ直ぐに面を向けた垂直面となって形成されている。しかし、各突起22Dは、それらの突出した根元側の立壁面は、半径方向の内側に斜めに面を向けた傾斜面となって形成されている。
【0041】
(リベットの初期状態について)
上記構成の各リベット20は、上述した芯部材21の軸部21Aを外筒部材22の筒部22A内に頭部22Bのある側から差し込んで、芯部材21の先端部21Cによって外筒部材22の各撓み片22Aa内に突出する各突起22Dを押圧して各撓み片22Aaを半径方向の外側に押し撓ませた後、更なる差し込みによって芯部材21のくびれ部21D内に各突起22Dを各撓み片22Aaの復元変形によって受け入れた状態とすることにより、芯部材21の軸部21Aが外筒部材22の筒部22A内に差し込まれた状態として一体的に組み付けられた状態(初期状態)に保持されるようになっている。
【0042】
上記芯部材21のくびれ部21Dは、外筒部材22の各撓み片22Aa内に突出する各突起22Dを、半径方向に僅かな隙間を有した状態、すなわち各突起22Dに内側からの押圧力を掛けない状態でこれらを内部に受け入れられるよう、各突起22Dの半径方向の突出長さよりも大きく凹んだ形に形成されている。また、上記初期状態では、芯部材21の頭部21Bは、外筒部材22の頭部22Bから軸方向に浮いた状態とされるようになっている。
【0043】
上記芯部材21の軸部21Aが外筒部材22の筒部22A内に組み付けられた初期の状態では、外筒部材22の各撓み片22Aa内に突出する各突起22Dが芯部材21のくびれ部21D内に嵌め込まれた状態として、互いの軸方向の相対移動が規制された状態に保持されるようになっている。したがって、
図11に示すように、上記芯部材21を外筒部材22に一体的に組み付けた状態のまま、これらをひとまとめにクリップ10の各貫通孔12B,11A,13B内に差し込んでいくことができる。
【0044】
(リベットのクリップへの差し込みについて)
具体的には、上記各リベット20は、次のようにクリップ10の各貫通孔12B,11A,13B内に差し込まれるようになっている。先ず、上述した芯部材21と一体的な状態に組まれた外筒部材22の筒部22Aをクリップ10の各貫通孔12B,11A,13B内に差し込んでいく。そして、
図12に示すように、外筒部材22の頭部22Bをクリップ10の第1の挟持片12に面当接させた状態にする。上記の差し込みは、
図11に示すように、上記外筒部材22と一体的な状態となっている芯部材21の頭部21Bに差し込み方向の押圧力を掛けることで行うことができる。
【0045】
その際、上記の押し込み力によって、芯部材21の押し出し部21Eから外筒部材22の各突起22Dに軸方向の押圧力が掛けられると、これらの傾斜面同士の当たり構造によって、外筒部材22のスリット22Cによって切り分けられた各撓み片22Aaに半径方向の外側に押圧される力が掛けられることがある。しかし、この力は、外筒部材22の頭部22Bがクリップ10の第1の挟持片12に面当接する位置までは外筒部材22が差し込み方向に移動することができるようになっていることで逃がされるようになっている。また、仮に、外筒部材22の各撓み片22Aaに半径方向の外側への押圧力が掛けられたとしても、各撓み片22Aaがこれらの通るクリップ10の各貫通孔12B,11A,13Bの内周面によって半径方向の外側から受け止められるようになっていることで、撓みが抑えられるようになっている。
【0046】
したがって、上記の差し込みによって、外筒部材22の頭部22Bが
図12の仮想線で示すようにクリップ10の第1の挟持片12に面当接した状態となる。これにより、外筒部材22がクリップ10に対して差し込み方向の移動が規制された状態となり、外筒部材22の各撓み片22Aaの先端領域22A1がクリップ10の第2の挟持片13の貫通孔13Bを通り抜けた先の領域に張り出した状態となる。この状態では、外筒部材22の各撓み片22Aaの内周面上に突出して形成された各突起22Dも、第2の挟持片13の貫通孔13Bを通り抜けた先の領域(先端領域22A1)に位置した状態となる。
【0047】
(リベットのクリップへの締結について)
したがって、次に、上記状態の芯部材21の頭部21Bに更なる差し込み方向の押圧力を掛ける。これにより、芯部材21が、上述したクリップ10の第1の挟持片12に頭部22Bを当接させて差し込み方向の移動が規制されている外筒部材22に対して、単独で差し込み方向に押し込まれていくように操作される。そしてこれにより、芯部材21の押し出し部21Eが、外筒部材22の各突起22Dに差し込み方向の押圧力を掛けて、これらの傾斜面同士の当たり構造によって、各撓み片22Aaがそれぞれ半径方向の外側に押し撓まされる。
【0048】
この時、外筒部材22の各撓み片22Aaは、それらの各スリット22Cによる切り込みの根元側の端部が第2の挟持片13の貫通孔13B内に位置しているために、これら根元側の端部から先の領域全てが半径方向の外側に撓むのではなく、第2の挟持片13の貫通孔13Bを抜けた先の先端領域22A1のみが、第2の挟持片13の貫通孔13Bの端面(図示下側の角部)との当接点を起点に半径方向の外側に折り曲げられる態様で変形する。したがって、この変形により、外筒部材22の各撓み片22Aaが上記貫通孔13Bの端面(図示下側の角部)との当接点を起点に貫通孔13Bよりも半径方向の外側に張り出した形に折り曲げられた状態となる。
【0049】
そして、上記折り曲げられた後、更なる差し込み移動の進行により、
図12の実線で示すように、芯部材21の頭部21Bが外筒部材22の頭部22Bに当接する時には、外筒部材22の各撓み片22Aaの内周面上に突出して形成された各突起22Dが、芯部材21の押し出し部21Eを乗り越えて、僅かに変形を戻しながら(復元しながら)引き込み部21F内に引き込まれた状態となる。これにより、外筒部材22が、各撓み片22Aaを貫通孔13Bの端面(図示下側の角部)との当接点を起点に外側に折り曲げられた状態にロックされる。このロックにより、外筒部材22がクリップ10に対して差し込み方向にも抜き出し方向にも移動することができない状態にロックされた状態となる。
【0050】
したがって、上記ロックされた外筒部材22の頭部22Bと各撓み片22Aaの折り曲げられた先端領域22A1とによって、クリップ10の第1の挟持片12と第2の挟持片13とが挟持された状態となり、第1の挟持片12と第2の挟持片13とがそれぞれ本体片11から押し開かれないように強く保持された状態となる。
【0051】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施例のリベット20は、次の構成となっている。すなわち、互いに離間する第1の挟持片12と第2の挟持片13と(2枚の挟持片)に貫通して差し込まれ、これら第1の挟持片12と第2の挟持片13との間の開きを防止するリベット20であって、第1の挟持片12と第2の挟持片13とに貫通して差し込まれる軸部21Aと、軸部21Aの外周部に装着された筒部22Aと、筒部22Aの根元側の端部に拡径されて形成された頭部22Bと、を有する。
【0052】
筒部22Aの第1の挟持片12と第2の挟持片13とに貫通して差し込まれた先の先端領域22A1には、先端領域22A1を半径方向の外側に撓ませやすくするスリット22Cが第2の挟持片13(2枚目の挟持片)内の差し込み領域22A2まで軸方向に延びて形成されている。上記筒部22A内で軸部21Aが差し込み方向に動かされることにより、筒部22Aの先端領域22A1が軸部21Aにより半径方向の外側に押圧されて第2の挟持片13の差し込み先の角部との当接点を起点に折れ曲がる形に変形し、頭部22Bとの間に第1の挟持片12と第2の挟持片13とを挟んだ状態となる。
【0053】
このような構成となっていることにより、リベット20によって、互いに離間する第1の挟持片12と第2の挟持片13との間の幅を押し狭めることなくこれらの開きを適切に抑えることができる。詳しくは、スリット22Cが第2の挟持片13内の差し込み領域22A2まで延びる形状とされていることで、筒部22Aの先端領域22A1を第2の挟持片13の差し込み先の角部との当接点を起点に折り曲げることができる。したがって、筒部22Aを第2の挟持片13の差し込み先の角部との間に軸方向の隙間を生じさせない形に折り曲げることができ、第1の挟持片12と第2の挟持片13との間の開きをより高い精度で防止することができる。上記の開き防止は、スリット22Cの差し込み領域22A2まで延びる余長により、第1の挟持片12と第2の挟持片13との間に生じる差し込み幅ARの誤差を吸収して行うことができる。
【0054】
また、筒部22Aの先端領域22A1に、筒部22A内での軸部21Aの差し込み方向の移動により半径方向の内側から押圧される突起22Dが内周側に突出して形成されている。このような構成となっていることにより、軸部21Aの差し込み移動によって筒部22Aの先端領域22A1のみを適切に半径方向の外側に折り曲げることができる。
【0055】
また、第1の挟持片12と第2の挟持片13とがシート1(乗物用シート)に搭載されたサイドエアバッグ装置S/Aのエアバッグの展開経路に敷設される第1の力布2B1(補強布)及び第2の力布2B2(補強布)の各端末に設けられた第1のJフック2J1(フック)及び第2のJフック2J2(フック)を間に挟み込む形で止着させるための片として、互いに離間して対面した形に繋がった構成とされている。このような構成となっていることにより、エアバッグの展開圧により大きな引張り荷重を受ける第1の力布2B1や第2の力布2B2が別体で取り付けられる箇所であっても、同箇所の開き防止強度を簡便かつ効果的に高めることができる。
【0056】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「リベット」は、「互いに離間する2枚の挟持片に貫通して差し込まれ、当該2枚の挟持片間の開きを防止する」ものに使用されるものであればよく、必ずしも、上記実施例で示したような自動車のシートにおけるエアバッグの補強布の端末をフレームに引掛けるためのクリップに締結されて使用されるものでなくてもよい。また、シートにおける他の部位に使用されていてもよい。また、「シート」は、自動車の左側座席以外のシートであってもよい他、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートであってもよく、また、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートであってもよい。
【0057】
また、リベットは、POM樹脂以外の樹脂から成るものであってもよい。また、軸部や筒部は、それぞれ、丸棒や円筒以外の形状、例えば角棒や角筒などの形から成るものであってもよい。頭部も同様に、中空円板状以外の形から成るものであってもよい。また、スリットは、筒部の先端領域における少なくとも周方向の1箇所に形成されていればよく、複数箇所であってもよい。その場合において、筒部のスリットによって切り分けられる各撓み片は、少なくとも周方向の一部に形成されていればよく、必ずしも筒部の全周に亘って撓み片が分布するように切り分けられなくてもよい。また、スリットによって切り分けられる各撓み片は、必ずしもそれぞれが同じ形に切り分けられていなくてもよい。
【0058】
また、軸部の差し込みによって筒部の先端領域が半径方向の外側に押圧される構成は、筒部に突起を設けるのではなく、軸部に突起を設けて行うようにしてもよい。また、軸部の差し込みによって筒部の先端領域を折り曲げた際、その状態にロックするための構成は、軸部と筒部との間のいずれかの箇所に設けられていればよく、例えば両者の頭部間に互いに押し込まれることによって嵌合するロック構造を設けたものであってもよい。
【0059】
また、上記実施例では、本発明の「2枚の挟持片」として、間に本体片を有する第1の挟持片と第2の挟持片とを例示した。しかし、本発明が対象とする「2枚の挟持片」は、互いに離間してリベットの差し込みにより開きが防止される関係となる2枚の挟持片であればよく、例えば、上記実施例において第1の挟持片と本体片とを2枚の挟持片としたものであってもよいし、第2の挟持片と本体片とを2枚の挟持片としたものであってもよい。上記実施例では、これら2組の「2枚の挟持片」を1つのリベットの差し込みによってひとまとめに開きを防止した構成となっている。