特許第6311721号(P6311721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6311721マルチブロックコポリマーおよびポリマー電解質材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311721
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】マルチブロックコポリマーおよびポリマー電解質材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20180409BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20180409BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20180409BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20180409BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20180409BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C08L53/00
   C08K3/00
   H01M10/0565
   H01B1/06 A
   H01B1/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-546834(P2015-546834)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公表番号】特表2016-507599(P2016-507599A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】CN2013089237
(87)【国際公開番号】WO2014090178
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年11月1日
(31)【優先権主張番号】201210537214.3
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201210537254.8
(32)【優先日】2012年12月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ショフ
(72)【発明者】
【氏名】チン チョー
(72)【発明者】
【氏名】ウー ガン
(72)【発明者】
【氏名】出原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梅田 浩明
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−241734(JP,A)
【文献】 特開平10−245427(JP,A)
【文献】 特開平10−208545(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/027144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00−297/08
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
H01B 1/06−1/12
H01M 10/0565
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(P1):
−(A−B)−A (P1)
で示されるマルチブロックコポリマーであって、式(I):
【化1】
(式中、R〜Rは、独立してHまたはC1−C10アルキルであり、Rは、
【化2】
または
【化3】
であり、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたはフェニルであり、mは2〜50の整数であり、nは10〜500の整数である)
として示される構造を有するセグメントA、および式(II):
【化4】
(式中、R〜Rは、独立してHまたはC1−C10アルキルであり、Rは、フェニル、p−メチルフェニル、m−メチルスチレン、p−フルオロフェニル、ニトリルまたはカルボメトキシであり、nは10〜500の整数である)
として示される構造を有するセグメントB
を含み、
nは正の整数であり、
そしてn≧2のとき、aおよびbは独立して0または1であり、n=1のとき、a=b=1である、マルチブロックコポリマー。
【請求項2】
前記式(I)において、〜Rが、独立してH、メチルまたはエチルであり、Rが、
【化5】
または
【化6】
であり、Rが、H、メチルまたはエチルであり、mが5〜30の整数であり、nが20〜300の整数である、請求項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項3】
前記式(II)において、〜Rが、独立してH、メチルまたはエチルであり、Rが、フェニル、p−メチルフェニルまたはカルボメトキシであり、nが20〜300の整数である、請求項1または2に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項4】
前記マルチブロックコポリマーが共連続相分離形態を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のマルチブロックコポリマー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のマルチブロックコポリマーおよび電解質塩を含むポリマー電解質材料。
【請求項6】
前記ポリマー電解質材料が共連続相分離形態を有する、請求項に記載のポリマー電解質材料。
【請求項7】
前記電解質塩がリチウム塩である、請求項5または6に記載のポリマー電解質材料。
【請求項8】
前記リチウム塩が、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリ−フルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ヘキサ−フルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラ−フルオロホウ酸リチウム(LiBF)およびその混合物から成る群から選択される、請求項に記載のポリマー電解質材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に使用されるマルチブロックコポリマーおよびポリマー電解質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、他の二次電池よりもエネルギー密度が高く、出力電圧が高く、そして充電時間が短い、環境に配慮した有望な化学的動力源であるため、多大な経済的および社会的な利益を有する。リチウムイオン二次電池の電解質については、液体電解質が慣例的に使用されてきた。しかしながら、この液体電解質は漏出し易いため、安全性の問題を引き起こし、長期にわたる信頼性を損なうことがあり得る。
【0003】
現時点で、最も有望な解決策は、液体電解質ではなく無機電解質またはポリマー電解質(固体)などの固体電解質材料の適用である。無機固体電解質は、固体電解質材料の中でも最高のリチウムイオン伝導性を有する可能性がある。しかしながら、この無機固体電解質は、加工性が低く、電極に対する界面抵抗が高いという欠点を有する。したがって、重量、可撓性および加工性の点で有利であることから、固体ポリマー電解質の研究および開発が積極的に遂行されてきた。
【0004】
固体ポリマー電解質材料として、リチウムイオン伝導性を有する、リチウム塩などの電解質塩との錯体を形成することができるポリエチレンオキシド(またはポリオキシエチレン、略してPEO)を使用するのが一般的である。しかしながら、この材料は非常に高い結晶性を有するため、PEO鎖の動きが極度に制限され、その結果、リチウムイオン伝導性は低くなる。
【0005】
PEO単位を含むポリマー電解質の結晶性を低減し、リチウムイオン伝導性を改善するために、2方向の研究が行われてきた。一つは、ポリマーの主鎖へのPEO単位の導入であり、もう一つは側鎖へのPEO単位の導入である。主鎖にPEO単位を含むポリマー電解質に関する研究について、ある一定のPEO含有量を有するPEO−b−ポリスチレン(略してPS) ジブロックコポリマーは、層状相分離形態を示した(非特許文献1)。さらに、様々な相分離形態、機械的および電気化学的特性を示すPS−b−PEO−b−PS トリブロックコポリマーが報告された(特許文献1)。しかしながら、それらのジブロックおよびトリブロックコポリマーは、依然として周囲温度で1×10−5S/cmより低いリチウムイオン伝導性を示していた。これは、恐らく主鎖でのPEO単位の移動度が限られており、その結果リチウムイオン伝導性が低くなるためであると考えられる。
【0006】
PEO単位の移動度を改善し、より高いリチウムイオン伝導性を実現するため、側鎖にPEO単位を有するポリマー電解質が研究されてきた。例えば、ABAタイプ(イオン伝導のためのブロックとしてのポリオキシエチレンイオン伝導性単位を含むメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(A)およびイオン伝導性単位を含まない電解質の機械的特性のためのブロックとしてのスチレン(B))(非特許文献2)またはBABタイプ(特許文献2および非特許文献3)のコポリマーを含むポリマー電解質のリチウムイオン伝導性は、主鎖にPEO単位を有するポリマーを含むものに対し10〜100倍も改善され、1×10−4S/cmに達した。電解質のリチウムイオン伝導性および機械的特性をさらに改善するためには、相分離形態の制御は不可欠である。特許(特許文献2)での報告によると、共連続相分離形態は、電解質のイオン伝導性および機械的特性間における適合性に適している。しかしながら、非特許文献3で報告されたところによると、共連続相分離形態が達成され得るのは、70%より高い含有量のセグメントAおよびポリマー電解質膜の機械的特性を低いものにし得る、より低含有量のセグメントBを有するトリブロックポリマーの場合のみである。
【0007】
上記のように、先行技術のポリマー電解質材料は、電解質膜のリチウムイオン伝導性および機械的特性を同時に維持するには不十分なものであるため、リチウムイオン電池についての長期耐久性および工業的に有用な材料を達成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中華人民共和国特許出願番号第200780020101.3号
【特許文献2】中華人民共和国特許出願番号第0381732.3号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules、2007(40)、4578〜4585
【非特許文献2】Makromol.Chem.、1989(190)1069〜1078
【非特許文献3】Journal of Power Sources、2005(146)386〜390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の到達水準を考慮に入れると、本発明の目的は、高いリチウムイオン伝導性および優れた機械的特性の両方を有するもので、エネルギー密度が高く、出力電圧が高く、充電時間が短く、信頼性の高いポリマー固体電解質電池の形成を達成する、ポリマー電解質材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を果たすために以下の手段を採用する。すなわち、本発明のポリマーは、側鎖にPEO反復単位を有するマルチブロックコポリマーであり、全範囲のセグメント含有量において共連続相分離形態を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、高いリチウムイオン伝導性および優れた機械的強度を同時に有し、またエネルギー密度が高く、出力電圧が高く、充電時間が短く、信頼性の高いポリマー固体電解質電池を形成することができる、ポリマー電解質材料を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、以下の特徴を有する:
マルチブロックコポリマーは、式(P1):
−(A−B)−A (P1)
(式中、セグメントAは、その側鎖にポリオキシエチレン反復単位を有し、セグメントBは、ポリオキシエチレン反復単位を有さず、nは正の整数であり、n≧2のとき、aおよびbは独立して0または1であり、n=1のとき、a=b=1である)
で示される構造を有する。
【0015】
式(P1)において、共連続相分離形態を得るためにはnは大きい方がよい。共連続相分離形態は、相分離についての形態学的構造の1種である。形態のタイプは、基本的にコポリマー中のセグメントAまたはBの含有量に左右される。例えば、Macromolecules、2007、40、4578−4585;Annual Review of Physical Chemistry、41、1990、525での報告によると、球状、円筒状、層状などの相分離形態の種類は、AまたはBのセグメント含有量により変化する。そして一般に、共連続相分離形態は、狭い範囲のセグメント含有量の場合のみ達成され得、常にセグメント含有量に左右される。しかしながら、本発明者らは、式(P1)で示されているように交互に繰り返されるセグメントを4つより多く有するマルチブロックコポリマーを作製することにより困難を克服した。
【0016】
式(P1)において、セグメントは、2000を超える式量を有し、1種以上の反復単位を合わせ持つマルチブロックポリマーの部分的構造を意味する。
【0017】
式(P1)におけるPEO反復単位は、式(Z1):
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、R〜Rは、独立してHまたはC1−C10アルキルであり、pは正の整数である)
で描かれる。
【0020】
式(Z1)では、R〜Rは、製造費用の点からみると、好ましくはHまたはC1−C5アルキルであり、リチウムイオン伝導性の点からみると、さらに好ましくはHまたはC1−C3アルキルである。pは、結晶性および製造費用の点からみると、好ましくは2〜50の正の整数であり、イオン伝導性の点からみると、さらに好ましくは5〜30である。
【0021】
セグメントAについてのさらに好ましい構造は以下のとおりである:
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、R〜Rは、独立してHまたはC1−C10アルキルであり、Rは、
【0024】
【化3】
【0025】
または
【0026】
【化4】
【0027】
であり、Rは、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシルまたはフェニルであり、mは2〜50の整数であり、nは10〜500の整数である)。
【0028】
式(I)において、R〜Rは、製造費用の点からみると、好ましくはHまたはC1−C5アルキルであり、リチウムイオン伝導性の点からみると、さらに好ましくはH、メチル、エチルである。費用およびイオン伝導性の理由から、Rは、好ましくはH、メチル、またはエチルである。製造費用の点からみると、mは好ましくは5〜30の正の整数であり、nは好ましくは20〜300の正の整数である。
【0029】
本コポリマーは、交互に繰り返されるセグメント(ABAB、BABA)を4つより多く有し、PEO単位はその側鎖に位置するため、本コポリマーの結晶性は低減され、したがって、より高いリチウムイオン伝導性が達成される。
【0030】
式(P1)において、ポリオキシエチレン反復単位を有しないセグメントBの構造は、式(II):
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、R〜Rは、独立してHまたはC1−C10アルキルであり、Rは、フェニル、p−メチルフェニル、m−メチルスチレン、p−フルオロフェニル、ニトリルまたはカルボメトキシであり、nは10〜500の正の整数である)
により示され得る。
【0033】
式(II)では、製造および費用上の利点からみると、R〜Rは、好ましくはH、メチルまたはエチルである。費用上の利点からみると、Rは、好ましくはフェニル、p−メチルフェニルまたはカルボメトキシである。イオン伝導性と機械的特性の適合性の点からみると、nは好ましくは20〜300である。
【0034】
本発明におけるマルチブロックコポリマーは、リビングラジカル重合法、好ましくは原子移動ラジカル重合法(ATRP)により調製され得る。ブロック数および反応段階は、有機ハロゲン開始剤のハロゲン原子により調整され得る。
【0035】
遷移金属錯体(遷移金属ハロゲン化物/リガンド錯体)は、触媒として使用され得る。遷移金属ハロゲン化物については、銅、ルテニウム、鉄、レニウム、ニッケルまたはパラジウムのハロゲン化物であり得る。特にこれは、好ましくは臭化銅、塩化銅、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、塩化鉄(II)および臭化鉄(II)から成る群より選択される。リガンドについては、アミンまたはホスフィンであり得る。特にこれは、好ましくは4,4’−ビピリジン(bpy)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリメチルシリル−ジエチルアミン(MeTREN)、4,4’−ビス(ノニル)−2,2’−ビピリジン(dNbpy)およびトリス(2−ピリジルメチル)アミン(TPMA)から成る群より選択される。
【0036】
リビングラジカル重合に使用される開始剤は、1または2個のハロゲン原子を含む有機ハロゲン化合物であり得る。特にこれは、好ましくはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,2−ジクロロアセトフェノン、2−ブロモプロピオン酸エチル、ジフェニルメタン、ブロモジフェニルメタンおよび塩化パラトルエンスルホニルから成る群から選択される。さらに、ハロゲン原子の数は、重合過程およびブロック数に1つの影響を及ぼすことになる。具体的には、1個のハロゲン原子を有する有機ハロゲン化合物を使用するとき、式(P1)のマルチブロックコポリマーを得るためには、反応過程は当然(a+b+2n)段階を有することになる。2個のハロゲン原子を有する有機ハロゲン化合物を使用するとき、同じポリマーを得るのに必要とされるのはn段階のみである。本明細書で述べるハロゲン原子の数とは、有効に誘導され得るハロゲン原子の数をいうのであって、活性を伴わないものは含まず、例えば、塩化アシルのハロゲン原子は、反応開始についての活性が無いため、数に入れることはできない。
【0037】
A−B−AまたはB−A−B トリブロックコポリマーについての慣用的合成に対して、ブロック数が3を超えるマルチブロックコポリマーの調製に使用される重合条件は、当然より厳密で複雑なものとなる。分子量が増大するにつれて新たなセグメントの成長がより困難になるため、かかるマルチブロックコポリマーを、慣用的反応条件により恒常的に得ることはできない。ブロック数が3を超えるマルチブロックコポリマーを調製するためには、特殊な過程または方法を導入するべきであり、例えば、勾配温度を用いて均一な反応系またはバルク重合を達成し、活性を増大させる。例えば、A−B−A−Bタイプのテトラブロックコポリマーを合成するために、1個のハロゲン原子を有するA−B−Aタイプのトリブロックコポリマーを高分子開始剤として使用するが、これはMが高いためそれほど溶解度が良好なものではない。直接加熱による一般的な方法で合成を行う場合、高分子開始剤のほとんどは不溶性であるため、不斉反応系が形成される。したがって、この系をまず、50℃および3℃/分などの低温低速で加熱することにより、高分子開始剤を完全に溶解させる。次いで、この系を、依然として低速で最終反応温度までさらに加熱し、重合を行わせる。系または反応性についての均一性を高めるのに有効である方法であれば、本発明で提供されるマルチブロックコポリマーの調製に使用することができる。
【0038】
本発明の別の目的は、上記マルチブロックコポリマーおよび電解質塩を含むポリマー電解質を提供することである。ブロック数が3を超える場合、共連続相分離形態は広範囲のセグメントA含有量で達成され得る。この結果、ポリマー電解質のイオン伝導性および機械的特性の調整が容易になるため、ポリマー電解質の全体的性能が大きく改善され得る。
【0039】
本発明で使用される電解質塩については、特別な制限は無い。適切な例としては、アルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩または遷移金属塩が挙げられる。ポリマー電解質内で大きな解離定数を示す電解質については、リチウム塩が好ましい。費用および性能上の利点のためには、好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリ−フルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ヘキサ−フルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラ−フルオロホウ酸リチウム(LiBF)およびその混合物から成る群から選択されるリチウム塩が使用される。
【0040】
電解質塩の添加量は、本コポリマー中のポリオキシエチレン単位のモル量に対して、典型的には0.005〜80mol%の範囲内である。イオン伝導性と機械的特性のバランスを考えると、電解質塩の量は、好ましくは0.01〜20mol%である。電解質塩を本コポリマーに添加する方法は限定されない。好ましくは、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N−メチルピロリドンまたはトルエン中の溶液が使用されるが、室温で、または加熱下での機械的混合もまた適用され得る。
【0041】
従来型のポリマー電解質とは異なり、ミクロ相分離形態、特に共連続相分離形態は、広範囲のセグメントA含有量において達成され得る。同時に、高いリチウムイオン伝導性の点からみて好ましい50〜99%のセグメントAの含有量は、共連続相分離形態により達成され得る。ミクロ相分離形態、特に共連続相分離形態は、セグメントAの輸送(イオン伝導的)特性を保ち、同時にセグメントBの(機械的)特性を支える助けとなる。
【0042】
前述の固体ポリマー電解質をシート、膜またはフィルム形態に成形することは、加工性の点からみて特に望ましい。シート様固体ポリマー電解質は、ロールコーティング、カーテンコーティング、スピンコーティング、ディップ法または鋳造法などの任意のコーティング技術により製造され得る。これらの技術の一つを用いて、ポリマー固体電解質のフィルムが基材の表面上に形成され、それに続いて基材を除去すると、固体ポリマー電解質シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、実施例1における電解質フィルムの断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。共連続相分離形態が観察され得る。
図2図2は、実施例2における電解質フィルムの断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。共連続相分離形態が観察され得る。
図3図3は、比較例1におけるマルチブロックコポリマーの断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。主鎖にポリオキシエチレン単位を有するマルチブロックコポリマーの場合、層状相形態が観察され得る。
図4図4は、比較例3における電解質フィルムの断面を示す透過型電子顕微鏡写真である。セグメントAの含有量が11.8重量%であるとき、「海−島」相形態が観察され得る。
【実施例】
【0044】
一連の例を用いて以下のように、本発明のより詳細な記載を示すが、本発明はそれに限定されるわけではない。
使用した原材料:
1.セグメントAに対応するモノマー:
(a)ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート
【0045】
【化6】
【0046】
PEGMA−1(m=20、M=980)
【0047】
【化7】
【0048】
PEGMA−2(m=8、M=450)、
(b)ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン
【0049】
【化8】
【0050】
(m=30、M=1520)、
(c)ポリ(エチレングリコール)メタクリレート
【0051】
【化9】
【0052】
(m=50、M=2300)、
(d)ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート
【0053】
【化10】
【0054】
(m=2、M=240)、
(e)ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル
【0055】
【化11】
【0056】
(M=4000)。
【0057】
モノマーは全て、Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入した。
【0058】
2.セグメントBに対応するモノマー:
(a)スチレン(St)
【0059】
【化12】
【0060】
(b)アクリロニトリル(AN)
【0061】
【化13】
【0062】
(c)メチルアクリレート
【0063】
【化14】
【0064】
(d)4−メチルフェニル−3−オクチレン
【0065】
【化15】
【0066】
モノマーは全て、Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入した。
【0067】
3.開始剤
ジクロロベンゼン、2,2−ジクロロアセトフェノン、2−ブロモプロピオン酸エチル:Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入。
【0068】
ジクロロメタン:Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から購入、使用前にNaと還流して脱水することにより精製。
【0069】
4.遷移金属ハロゲン化物
CuBr、CuCl:Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から購入、使用前に酢酸およびメタノールで精製。
【0070】
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、臭化鉄(II):Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入、それ以上精製せずに使用。
【0071】
5.リガンド
4,4’−ビピリジン(bpy)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリメチルシリル−ジエチルアミン(MeTREN):Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入、それ以上精製せずに使用。
【0072】
6.リチウム塩
ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)リチウム(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、トリ−フルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラ−フルオロホウ酸リチウム(LiBF):Sigma−Aldrich Co.Ltd.から購入、それ以上精製せずに使用。
【0073】
7.他の試薬
トルエン:Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から購入、使用前にNaと還流して脱水することにより精製。
【0074】
テトラヒドロフラン(THF)、無水ジエチルエーテル、n−ヘキサン、酸化アルミニウム、N−メチルピロリドン(NMP)、重水素化クロロホルム、アルミニウムイソプロポキシド、エチレンオキシド、120#ガソリン:Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.から購入、それ以上精製せずに使用。
【0075】
使用した様々な特性についての測定条件:
A.ポリマーの数平均分子量:ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(LC−20、日本国)、溶媒および移動相としてテトラヒドロフラン。
【0076】
B.ポリマー中におけるセグメントAの含有量(重量%):H NMR(JEOL ECX−400P、日本国)、溶媒として重水素化クロロホルム。
【0077】
C.相形態:透過型電子顕微鏡(TEM)(JEM2010、日本国)、−80℃にて氷包埋し、薄く切ることにより試料採取。
【0078】
D.結晶性:示差走査熱量計(DSC)(Q100、米国)、N保護、−80℃〜200℃、20℃/分。
【0079】
E.機械的特性:動的機械分析計(DMA)(TA DMA Q800、米国)、伸張モード、1Hz、室温〜400℃、3℃/分。
【0080】
F.リチウムイオン伝導性:電気化学ワークステーション(VSP Japan)、ポリマー電解質膜を、グローブボックス中の試験ユニット(HS試験セル、宝泉株式会社、日本国)に投入し、次いで周囲温度(23℃)にて1時間超保った後試験する。
【0081】
[実施例1](A−B−A−Bタイプのテトラブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、ポリ(ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート)(P(PEGMA)として示される))をセグメントAとして使用し、ポリスチレン(PSとして示される)をセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
15mlのトルエンに、15.5gのポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(PEGMA−1、M=980、m=20、15.8mmol)を加え、N雰囲気下で溶解させた。次いで、45.3mg(0.316mmol)のCuBrおよび98.65mg(0.732mmol)のbpyをその溶液中に添加した。10分間撹拌後、57.2mg(0.316mmol)の2−ブロモプロピオン酸エチルを加え、90℃に加熱した。30時間重合させた後、溶液を氷/水浴中で直ちに冷却して反応を止めた。次いで、溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して未反応のモノマーを除去し、精製P(PEGMA)−1を得た。このP(PEGMA)−1は、42000のMおよび1.12のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0082】
(2)A−Bタイプのジブロックコポリマーの合成
の保護下、8.0g(0.094mmol)のP(PEGMA)−1、9.31mg(0.094mmol)のCuCl、16.33mg(0.094mmol)のPMDETAおよび10g(0.096mmol)のStを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、反応温度を撹拌下で110℃に上昇させた。重合を3時間行った。次いで、反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のStを除去し、P(PEGMA)−b−PS ジブロックコポリマー(A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このジブロックコポリマーは、80000のMおよび1.32のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は52.5重量%であった。
【0083】
(3)A−B−Aタイプのトリブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、10.92mg(0.075mmol)のCuBrおよび23.77mg(0.15mmol)のbpyを、10mlのトルエンに加えて、反応系を形成させた。10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。3.13g(3.0mmol)のPEGMA−1(M=980、m=20)を添加し、アルゴン雰囲気下で15分間撹拌しながら溶解させた。次いで、1.2g(0.015mmol)の高分子開始剤P(PEGMA)−b−PSを反応系に添加した。次いで、反応系を密閉状態にした。ジブロックコポリマーを完全に溶解させた後、反応温度を90℃に高めた。重合を40時間行った。次いで、反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)トリブロックコポリマー(A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、125000のMおよび1.48のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は69.6重量%であった。
【0084】
(4)A−B−A−Bタイプのテトラブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、11.75g(0.094mmol)の高分子開始剤P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)、9.31mg(0.094mmol)のCuCl、16.33mg(0.094mmol)のPMDETAおよび10g(0.096mol)のStを、10mlのトルエンに加えて反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、反応温度を3℃/分の速度で50℃に上昇させた。30分間かき混ぜて高分子開始剤を完全に溶解させた後、反応温度を3℃/分の速度にてさらに110℃に上昇させ、重合を3時間行った。次いで、反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応モノマーを除去し、P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PS テトラブロックコポリマー(A−B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このテトラブロックコポリマーは、160000のMおよび1.39のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は54.4重量%であった。
【0085】
(5)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥テトラブロックコポリマーを15mlのトルエンに溶かし、0.35gのLiTFSI(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して10mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。かくして得られたポリマー固体電解質膜の厚さは40μmであった。
【0086】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0087】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、ポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0088】
DMAの結果によると、ポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは4.2MPaであった。
【0089】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れ、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより8.9×10−4S/cmであることが見出された。
【0090】
[実施例2](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、P(PEGMA)をセグメントAとして使用し、PSをセグメントBとして使用した)
実施例1で調製したP(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PSのテトラブロックコポリマー(A−B−A−Bタイプ)を高分子開始剤として使用することにより、ペンタブロックコポリマーを調製した。
【0091】
(1)A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、10.92mg(0.075mmol)のCuBrおよび23.77mg(0.15mmol)のbpyを、5.2mlのトルエンに加えて、反応系を形成させた。10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。3.13g(3.0mmol)のPEGMA−1(M=980、m=20)を添加し、15分間撹拌しながら溶解させた。次いで、反応系を密閉状態にし、高分子開始剤を完全に溶解させた後、反応温度を90℃に上昇させた。重合を100時間行った。次いで、反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA) ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このペンタブロックコポリマーは、320000のMおよび1.41のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は77.2重量%であった。
【0092】
実施例1−(4)および実施例2−(1)を繰り返すことにより、6、7、8またはそれより多いブロック数を有するマルチブロックコポリマーを得ることができる。
【0093】
(2)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを10mlのNMPに溶かし、0.33gのLiBF(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して20mol%である)を溶液に添加した。次いで、溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは40μmであった。
【0094】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0095】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、ポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0096】
DMAの結果によると、ポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは3.7MPaであった。
【0097】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより3.5×10−3S/cmであることが見出された。
【0098】
[実施例3](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、P(PEGMA)をセグメントAとして使用し、PSをセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
25mlのトルエンに、18.0gのPEGMA−2(M=450、m=8、40.0mmol)を加え、N雰囲気下で溶解させた。次いで、57.34mg(0.40mmol)のCuBrおよび107.82mg(0.80mmol)のbpyをその溶液中に添加した。10分間撹拌後、75.57mg(0.40mmol)の2,2−ジクロロアセトフェノンを加え、90℃に加熱した。25時間重合させた後、この溶液を氷/水浴中で直ちに冷却して反応を止めた。次いで、この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して未反応のモノマーを除去し、精製P(PEGMA)−2を得た。このP(PEGMA)−2は、6000のMおよび1.14のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0099】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
の保護下、0.43g(0.071mmol)のP(PEGMA)−2、20.28mg(0.141mmol)のCuBr、24.50mg(0.141mmol)のPMDETAおよび20.56g(0.197mmol)のStを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、10分間の撹拌後、反応温度を110℃に上昇させた。重合を5時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のStを除去し、PS−b−P(PEGMA)−b−PS トリブロックコポリマー(B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、51000のMおよび1.32のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は11.8重量%であった。
【0100】
(3)A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、13.10mg(0.09mmol)のCuBrおよび28.52mg(0.18mmol)のbpyを、3mlのトルエンに加えて、反応系を形成させた。10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。1.62g(3.6mmol)のPEGMA−2(M=450、m=20)を添加し、15分間の撹拌により溶解させた。次いで、0.92g(0.018mmol)の高分子開始剤PS−b−P(PEGMA)−b−PSを反応系に添加した。次いで、この反応系を密閉状態にし、トリブロックコポリマーを完全に溶解させた後、反応温度を1.5℃/分の速度で90℃に上昇させた。重合を100時間行った。次いで、反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA) ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このペンタブロックコポリマーは、59000のMおよび1.37のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は23.7重量%であった。
【0101】
(4)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、0.03gのLiTFSI(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して2mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは40μmであった。
【0102】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0103】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、このポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0104】
DMAの結果によると、ポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは3.9MPaであった。
【0105】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより4.5×10−4S/cmであることが見出された。
【0106】
[実施例4](B−A−B−A−B−A−Bタイプのヘプタブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、P(PEGMA)をAセグメントとして使用し、PSをBセグメントとして使用した)
実施例3で調製したP(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)のペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)を高分子開始剤として使用することにより、ヘプタブロックコポリマーを調製した。
【0107】
(1)B−A−B−A−B−A−Bタイプのヘプタブロックコポリマーの合成
の保護下、4.40g(0.071mmol)の高分子開始剤(A−B−A−B−Aタイプ)、20.28mg(0.141mmol)のCuBr、24.50mg(0.141mmol)のPMDETAおよび14.69g(0.141mmol)のStを混和して反応系を形成させた。次いで、かくして形成された反応系を密閉状態にし、撹拌下、3℃/分の速度で反応温度を50℃に上昇させた。20分間撹拌して高分子開始剤を完全に溶解させた後、反応温度をさらに3℃/分の速度で110℃に上昇させた。重合を12時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のStを除去し、ヘプタブロックコポリマー(B−A−B−A−B−A−Bタイプ)としてPS−b−P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PS−b−P(PEGMA)−b−PSの精製白色粉末を得た。このヘプタブロックコポリマーは、128000のMおよび1.26のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は10.9重量%であった。
【0108】
実施例3−(3)および実施例4−(1)を繰り返すことにより、9、11、13またはそれより多いブロック数を有するマルチブロックコポリマーを得ることができる。
【0109】
(2)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
10gの乾燥ヘプタブロックコポリマーを100mlのNMPに溶かし、0.26mgのLiClO(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して0.01mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは50μmであった。
【0110】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0111】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、このポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0112】
DMAの結果によると、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは4.7MPaであった。
【0113】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより9.6×10−4S/cmであることが見出された。
【0114】
[実施例5](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、ポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン)をセグメントAとして使用し、ポリ(アクリロニトリル)(PANとして示される)をセグメントBとして使用した)
(1)Aセグメントの合成
50mlのトルエンに、60.8gのポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン(M=1520、m=30、40.0mmol)を加え、N雰囲気下で溶解させた。次いで、57.34mg(0.40mmol)のCuBrおよび107.82mg(0.80mmol)のbpyをその溶液中に添加した。10分間撹拌後、33.97mg(0.40mmol)のジクロロメタンを加え、90℃に加熱した。45時間重合させた後、この溶液を氷/水浴中で直ちに冷却して反応を止めた。次いで、この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して未反応のモノマーを除去し、精製ポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン)を得た。M=54000、M/M=1.21、GPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0115】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
の保護下、3.83g(0.071mmol)のポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン)、20.28mg(0.141mmol)のCuBr、24.50mg(0.141mmol)のPMDETAおよび10.44g(0.197mmol)のANを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、10分間の撹拌後、反応温度を110℃に上昇させた。重合を10時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のモノマーを除去し、トリブロックコポリマー(B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、73000のMおよび1.35のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0116】
(3)A−B−A―B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、13.10mg(0.09mmol)のCuBrおよび28.52mg(0.18mmol)のbpyを、5mlのトルエンに加えて、反応系を形成させた。10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。5.47g(3.6mmol)のポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン(M=1520、m=30)を添加し、15分間撹拌しながら溶解させた。次いで、1.31g(0.018mmol)の実施例5−(2)で調製したトリブロックコポリマーの高分子開始剤をこの反応系に添加した。次いで、この反応系を密閉状態にし、トリブロックコポリマーを完全に溶解させた後、1.5℃/分の速度で反応温度を90℃に上昇させた。重合を100時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、ポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン)−b−PAN−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン)−b−PAN−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)エチリックエーテルアリルベンゼン) ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このペンタブロックコポリマーは、96000のMおよび1.56のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は80.2重量%であった。
【0117】
(4)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを12mlのNMPに溶かし、0.14mgのLiPF(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して0.005mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは50μmであった。
【0118】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0119】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、このポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0120】
DMAの結果によると、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは2.8MPaであった。
【0121】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより6.2×10−4S/cmであることが見出された。
【0122】
[実施例6](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、ポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)をセグメントAとして使用し、ポリ(メチルアクリレート)をセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
100mlのトルエンに、92.0gのポリ(エチレングリコール)メタクリレート(M=2300、m=50、40.0mmol)を加え、N雰囲気下で溶解させた。次いで、383.53mg(0.40mmol)のジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムおよび184.32mg(0.80mmol)のMeTRENをその溶液中に添加した。10分間撹拌後、75.57mg(0.40mmol)の2,2−ジクロロアセトフェノンを加え、90℃に加熱した。45時間重合させた後、この溶液を氷/水浴中で直ちに冷却して重合を止めた。次いで、この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して未反応のモノマーを除去し、精製ポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)を得た。このポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)は、75000のMおよび1.24のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0123】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
の保護下、5.33g(0.071mmol)のポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)、30.41mg(0.141mmol)の臭化鉄(II)、24.50mg(0.141mmol)のPMDETA、13.41g(0.197mmol)のメチルアクリレートおよび15mlのトルエンを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、10分間の撹拌後、反応温度を110℃に上昇させた。重合を10時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のモノマーを除去し、トリブロックコポリマー(B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、170000のMおよび1.43のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0124】
(3)A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、13.10mg(0.09mmol)のCuBrおよび28.52mg(0.18mmol)のbpyを、8mlのトルエンに加えて、反応系を形成させた。10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。8.28g(3.6mmol)のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(M=2300、m=50)を添加し、15分間撹拌しながら溶解させた。次いで、1.31g(0.018mmol)の実施例6−(2)で調製したトリブロックコポリマーの高分子開始剤を反応系に添加した。次いで、この反応系を密閉状態にし、トリブロックコポリマーを完全に溶解させた後、反応温度を1.5℃/分の速度で90℃に上昇させた。重合を100時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、ポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)−b−ポリ(メチルアクリレート)−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)−b−ポリ(メチルアクリレート)−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート) ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このペンタブロックコポリマーは、430000のMおよび1.48のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は77.9重量%であった。
【0125】
(4)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、0.05gのLiTFSI(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して1mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間にわたって撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは50μmであった。
【0126】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0127】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、このポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0128】
DMAの結果によると、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは1.9MPaであった。
【0129】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより5.3×10−4S/cmであることが見出された。
【0130】
[実施例7](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーおよび対応するポリマー固体電解質の調製、この場合、ポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)をセグメントAとして使用し、ポリ(4−メチルフェニル−3−オクチレン)をセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
10mlのトルエンに、9.60gのポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート(M=240、m=2、40.0mmol)を加え、N雰囲気下で溶解させた。次いで、57.34mg(0.40mmol)のCuBrおよび107.82mg(0.80mmol)のbpyをその溶液中に添加した。10分間撹拌後、58.8mg(0.40mmol)のジクロロベンゼンを加え、90℃に加熱した。45時間重合させた後、この溶液を氷/水浴中で直ちに冷却して重合を止めた。次いで、この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して未反応のモノマーを除去し、精製ポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)を得た。このポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)は、11000のMおよび1.15のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0131】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
の保護下、0.78g(0.071mmol)のポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)、20.28mg(0.141mmol)のCuBr、24.50mg(0.141mmol)のPMDETA、14.27g(0.197mmol)の4−メチルフェニル−3−オクチレンおよび15mlのトルエンを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、10分間の撹拌後、反応温度を110℃に上昇させた。重合を10時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、反応生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のモノマーを除去し、トリブロックコポリマー(B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、48000のMおよび1.39のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0132】
(3)A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
アルゴン雰囲気下、13.10mg(0.09mmol)のCuBrおよび28.52mg(0.18mmol)のbpyを、3mlのトルエンに加えて、反応系を形成させ、10分間の撹拌後、触媒/リガンド錯体が形成された。1.73g(7.2mmol)のポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート(M=240、m=2)を添加し、15分間撹拌しながら溶解させた。次いで、0.86g(0.018mmol)の実施例7−(2)で調製したトリブロックコポリマーの高分子開始剤を反応系に添加した。次いで、この反応系を密閉状態にし、トリブロックコポリマーを完全に溶解させた後、反応温度を1.5℃/分の速度で90℃に上昇させた。重合を100時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、この反応生成物を無水ジエチルエーテルで洗浄して、未反応モノマーを除去し、ポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)−b−ポリ(4−メチルフェニル−3−オクチレン)−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート)−b−ポリ(4−メチルフェニル−3−オクチレン)−b−ポリ(ポリ(エチレングリコール)フェノキシアクリレート) ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)の精製白色粉末を得た。このペンタブロックコポリマーは、83000のMおよび1.54のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は55.4重量%であった。
【0133】
(4)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、0.02gのLiCFSO(Li塩の添加量は、ポリオキシエチレン反復単位に対して1mol%である)を溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは50μmであった。
【0134】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、共連続相分離形態を示していた。
【0135】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質について融解ピークは観察されず、この事実は、このポリマー固体電解質が結晶性を有しないことを意味した。
【0136】
DMAの結果によると、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは3.1MPaであった。
【0137】
この膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより9.2×10−4S/cmであることが見出された。
【0138】
[比較例1](A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの調製、この場合、ポリオキシエチレンをセグメントAとして使用し、PSをセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
雰囲気下、120#ガソリンをまず加え、次いで0.42g(2.04mmol)のアルミニウムイソプロポキシドを触媒として撹拌しながら添加した。次いで、8.81g(0.2mol)のエチレンオキシドを含有するトルエン溶液を、この触媒溶液に添加した。重合を15℃で4時間、次いで40℃で3時間行った。重合の後、溶媒を除去し、生成物溶液を濾過した。冷却過程の間に成長させた精製ポリオキシエチレン結晶を得た。このポリオキシエチレン結晶は、6000のMおよび1.14のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0139】
加水分解反応により、両末端にヒドロキシル基を有するポリオキシエチレンが調製され得る。
【0140】
ヒドロキシル基と臭化アシルの反応により、両末端に臭素基を有するポリオキシエチレンが調製され得る。
【0141】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
の保護下、0.43g(0.071mmol)のポリオキシエチレン、20.28mg(0.141mmol)のCuBr、24.50mg(0.141mmol)のPMDETA、20.56g(0.197mmol)のStを混和して反応系を形成させた。次いで、この反応系を密閉状態にし、10分間の撹拌後、反応温度を110℃に上昇させた。重合を5時間行った。次いで、この反応系を氷/水浴中で直ちに冷却することにより、重合を止めた。この溶液をTHFで希釈し、Alカラムに通して触媒/リガンドを除去することにより精製した。溶媒を除去した後、生成物をn−ヘキサンで洗浄して未反応のモノマーを除去し、トリブロックコポリマー(B−A−Bタイプ)の精製白色粉末を得た。このトリブロックコポリマーは、51000のMおよび1.25のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示した。
【0142】
(3)A−B−A−B−Aタイプのペンタブロックコポリマーの合成
1個のヒドロキシル基を有する市販のポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(M=4000)および比較例1−(2)で調製したトリブロックコポリマーをTHFに溶解し、130℃の高温のもとでHBrを排除した。精製後、精製ペンタブロックコポリマー(A−B−A−B−Aタイプ)が得られた。このペンタブロックコポリマーは、59000のMおよび1.29のM/Mを有し、そのGPC曲線は単一の対称ピークを示し、セグメントAの含有量(f)は23.7重量%であった。
【0143】
(4)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ペンタブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、完全に溶解後、この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは40μmであった。
【0144】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、層状相形態を示していた。
【0145】
DSCの結果によると、このポリマー固体電解質は、12.3%の結晶度を有していた。
【0146】
[比較例2](A−Bタイプのジブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、P(PEGMA)をセグメントAとして使用し、PSをセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
セグメントAを実施例1(1)と同様にして合成した。
【0147】
(2)A−Bタイプのジブロックコポリマーの合成
A−Bタイプのジブロックコポリマーを実施例1(2)と同様にして合成した。
【0148】
供給量および反応時間を調整することにより、f=10〜70重量%のジブロックコポリマーを調製した。
【0149】
ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥ジブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、LiTFSIを、ポリオキシエチレン反復単位の10mol%の割合で、溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは40〜50μmであった。
【0150】
この膜の相形態をTEMにより観察したところ、ミクロ相形態は観察されなかった。
【0151】
DSCの結果によると、f=10〜70重量%であるポリマー固体電解質は、2〜24.6%の結晶度範囲で変化していた。
【0152】
DMAの結果によると、f=54.4重量%のとき、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは0.8MPaであった。
【0153】
=54.4重量%であるポリマー固体電解質膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより3.6×10−6S/cmであることが見出された。
【0154】
[比較例3](A−B−Aタイプのトリブロックコポリマーおよび対応するポリマー電解質の調製、この場合、P(PEGMA)をセグメントAとして使用し、PSをセグメントBとして使用した)
(1)セグメントAの合成
セグメントAを実施例3(1)と同様にして合成した。
【0155】
(2)B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーの合成
B−A−Bタイプのトリブロックコポリマーを実施例3(2)と同様にして合成した。
【0156】
供給量および反応時間を調整することにより、f=10〜80重量%のトリブロックコポリマーを調製した。
【0157】
(3)ポリマー固体電解質膜の調製および特性の評価
1gの乾燥トリブロックコポリマーを15mlのNMPに溶かし、LiTFSIを、ポリオキシエチレン反復単位の10mol%の割合で、溶液に添加した。次いで、この溶液を三角フラスコ中で密閉状態にし、24時間撹拌した。この溶液をシリカウェハにて鋳造し、溶媒を60℃下で除去した。得られたポリマー固体電解質膜の厚さは25〜50μmであった。
【0158】
この膜の相形態をTEMにより観察した。この膜は共連続相分離形態を有し、そのfは20〜25重量%および60〜65重量%の範囲であった。上記範囲外のfを有するポリマー固体電解質は、「海−島」または層状相形態を有していた。
【0159】
DSCの結果によると、f=10〜80重量%であるポリマー固体電解質は、0.7〜21.5%の結晶度範囲で変化していた。
【0160】
DMAの結果によると、f=23.7重量%のとき、このポリマー固体電解質膜の初期モジュラスは1.2MPaであった。
【0161】
=23.7重量%であるポリマー固体電解質膜を、1週間を超える期間グローブボックス中に入れて、水または溶媒を完全に除去し、次いでUFOセルにて構築した。そのリチウムイオン伝導性は、電気化学ワークステーションを用いて23℃で測定することにより1.9×10−5S/cmであることが見出された。
図1
図2
図3
図4