(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散相が、前記ポリアミド樹脂を含む母相と、該母相の中に分散された、前記反応性を有する前記エラストマーを含む微分散相とを有し、発泡された気泡は前記分散相及び前記微分散相ではなく前記連続相のみにある請求項1に記載の発泡樹脂成形体。
前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M−5T及びポリアミド9T/2M−8Tから選ばれた少なくとも1つである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発泡樹脂成形体。
前記反応性基を有する前記エラストマーが、エチレン又はプロピレンに由来する構造単位を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー又は芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含むスチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発泡樹脂成形体。
前記反応性基を有する前記エラストマーが、酸無水物変性エラストマー、カルボン酸変性エラストマー、エポキシ変性エラストマー及びオキサゾリン変性エラストマーから選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発泡樹脂成形体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで示される事項は、例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって、本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0009】
1.発泡樹脂成形体
本発明の発泡樹脂成形体(1)は、オレフィン樹脂(以下、「オレフィン樹脂(A)」という)及びポリアミド樹脂(以下、「ポリアミド樹脂(B)」という)を含有し、特定構造を有するオレフィン系樹脂組成物、即ち、オレフィン樹脂(A)を含む連続相(X)と、この連続相(X)の中に分散されたポリアミド樹脂を含む分散相(Y)とを備え、分散相(Y)は、ポリアミド樹脂(B)と、該ポリアミド樹脂(B)に対する反応性基を有するエラストマー(以下、「変性エラストマー」という)との溶融混練物を含むことを特徴とする(
図1参照)。本発明の発泡樹脂成形体は、スキン層及びセル壁を有し、これらの部位が上記オレフィン系樹脂組成物により形成されている。
【0010】
上記オレフィン系樹脂組成物は、好ましくは熱可塑性樹脂組成物である。このオレフィン系樹脂組成物を構成する連続相(X)は、オレフィン樹脂(A)を含み、目的、用途等に応じて、更に、他の樹脂(後述)を含んでもよい。また、上記連続相の構造は、特に限定されず、架橋構造及び非架橋構造のいずれでもよい。
【0011】
上記オレフィン樹脂(A)は、特に限定されず、成形品の形成に用いられる、従来、公知のポリオレフィンを用いることができる。例えば、エチレン単独重合体、エチレンと、炭素原子数3以上の不飽和炭化水素(以下、「α−オレフィン」という)との共重合体、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンの2種以上からなる共重合体等を、単独で、又は、2種以上の組合せで用いることができる。
尚、上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
上記オレフィン樹脂(A)としては、α−オレフィンの単独重合体又は共重合体が好ましく、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体等がより好ましく、プロピレンに由来する構造単位を含む重合体が特に好ましい。
【0012】
更に、オレフィン樹脂は、発泡成形性の観点からは、異なる2種以上のオレフィン樹脂を含むことが好ましい。具体的には、例えば、相対的に一方のオレフィン樹脂に対して、他方のオレフィン樹脂の流動性が高いオレフィン樹脂同士を採用することができる。この流動性の差異は、一定温度且つ剪断速度0sec
−1の状況で比較した場合の流動性の高低で評価することができる。具体的には、MFR(温度230℃、2.16kg荷重)差が15g/10min以上(通常、60g/10min以下)である互いに異なるオレフィン樹脂を採用でき、更には、流動性が低いオレフィン樹脂としてMFR(温度230℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下(通常、1g/10min以上)のオレフィン樹脂を採用でき、流動性が高いオレフィン樹脂としてMFR(温度230℃、2.16kg荷重)が45g/10min以上(通常、90g/10min以下)のオレフィン樹脂を採用できる。更には、後述のように、流動性が低いオレフィン樹脂としてプロピレンホモポリマーを採用し、流動性が高いオレフィン樹脂としてプロピレンブロックポリマーを採用することができる。
【0013】
上記オレフィン樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、発泡樹脂成形体の発泡セルの安定性、耐衝撃性及び剛性の観点から、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは100,000〜450,000、更に好ましくは200,000〜400,000である。
【0014】
上記連続相(X)は、オレフィン樹脂(A)のみからなるものであってよいし、上記のように、オレフィン樹脂(A)とともに連続相を形成する限りにおいて、他の樹脂を更に含むものであってもよい。後者の場合、他の樹脂は、オレフィン樹脂(A)と相容性を有し、ポリアミド樹脂(B)と非相容性を有する樹脂であることが好ましい。
上記連続相は、分散相を含むが、後述する添加剤を、分散状態で含んでもよい。
【0015】
上記分散相(Y)は、ポリアミド樹脂(B)と、変性エラストマーとの溶融混練物を含む。この分散相の好ましい構造は、後述される。
【0016】
上記ポリアミド樹脂(B)は、主鎖にアミド結合(−NH−CO−)を有するものであれば、特に限定されず、従来、公知の方法、例えば、ラクタム類の開環重合、アミノ酸の脱水縮合、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等によって得られた樹脂を、単独で、又は、2種以上の組合せで用いることができる。
【0017】
以下、ポリアミド樹脂(B)の製造に用いられる原料化合物を例示するが、上記ポリアミド樹脂(B)は、各原料化合物を単独で用いたものであってよいし、2つ以上を用いて得られたものであってもよい。
上記ラクタム類としては、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
上記アミノ酸としては、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
上記ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0018】
上記ポリアミド樹脂(B)としては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M−5T、ポリアミド9T/2M−8T等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、ポリアミド11が特に好ましく、このポリアミド11を単独で用いる態様、及び、このポリアミド11と、他のポリアミド樹脂とを併用する態様のいずれも好ましい。
【0019】
上記ポリアミド樹脂のうち、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド614及びポリアミド10Tは、植物由来ポリアミド樹脂である。植物由来ポリアミド樹脂は、植物油等の植物に由来する成分から得られた単量体を用いる樹脂であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。
【0020】
ポリアミド11は、炭素原子数11である単量体がアミド結合を介して結合された構造を有する。ポリアミド11には、単量体として、ヒマシ油を原料とするアミノウンデカン酸を用いることができる。炭素原子数が11である単量体に由来する構成単位の含有割合は、ポリアミド11の全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
ポリアミド610は、炭素原子数6である単量体と、炭素原子数10である単量体と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。ポリアミド610の形成には、単量体として、ヒマシ油を原料とするセバシン酸を用いることができる。炭素原子数6である単量体に由来する構成単位、及び、炭素原子数10である単量体に由来する構成単位の含有量の合計は、ポリアミド610の全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
ポリアミド1010は、炭素原子数10であるジアミンと、炭素原子数10であるジカルボン酸と、が共重合された構造を有する。ポリアミド1010の形成には、単量体として、ヒマシ油を原料とする1,10−デカンジアミン(デカメチレンジアミン)及びセバシン酸を用いることができる。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位、及び、炭素原子数10であるジカルボン酸に由来する構成単位の合計は、ポリアミド1010の全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0021】
ポリアミド614は、炭素原子数6である単量体と、炭素原子数14である単量体と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。ポリアミド614の形成には、単量体として、植物由来であり炭素原子数14のジカルボン酸を用いることができる。これらの炭素原子数6である単量体に由来する構成単位、及び、炭素原子数14である単量体に由来する構成単位の合計は、ポリアミド614の全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
ポリアミド10Tは、炭素原子数10であるジアミンと、テレフタル酸と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。ポリアミド10Tの形成には、単量体として、ヒマシ油を原料とする1,10−デカンジアミン(デカメチレンジアミン)を用いることができる。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位、及び、テレフタル酸に由来する構成単位は、ポリアミド10Tの全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0022】
上記5種の植物由来ポリアミド樹脂のなかでも、ポリアミド11は、他の4種の植物由来ポリアミド樹脂に対し、低吸水性、低比重及び植物化度の高さの観点においてより優れている。
ポリアミド610は、吸水率、耐薬品性及び衝撃強度の点ではポリアミド11よりも劣るが、耐熱性(融点)及び剛性(強度)の観点において優れている。更には、ポリアミド6やポリアミド66と比べ、低吸水性で寸法安定性が良いため、ポリアミド6やポリアミド66の代替材として使用することができる。
ポリアミド1010は、ポリアミド11に比べて、耐熱性及び剛性の観点において優れている。更には、植物化度もポリアミド11と同等であり、より耐久性の必要な部位に使用することができる。
ポリアミド10Tは、分子骨格に芳香環を含むため、ポリアミド1010に比べて、より融点が高く高剛性である。そのため、過酷環境下での使用(耐熱部位、強度入力部位)が可能である。
【0023】
また、上記変性エラストマーは、ポリアミド樹脂(B)に対する反応性基を有するものであり、この反応性基としては、酸無水物基(−CO−O−OC−)、カルボキシル基(−COOH)及びエポキシ基(−C
2O(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造))、オキサゾリン基(−C
3H
4NO)、イソシアネート基(−NCO)等が挙げられる。上記変性エラストマーに含まれる反応性基は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
また、上記変性エラストマーの変性量(反応性基の数)は、特に限定されず、好ましくは1〜50、より好ましくは3〜30、更に好ましくは5〜20である。
【0024】
上記変性エラストマーとしては、反応性基を有する単量体を用いて得られた(共)重合体からなる変性エラストマー、(共)重合体の酸化分解により、反応性基を形成させて得られた変性エラストマー、(共)重合体に対する有機酸を用いてグラフト重合して得られた変性エラストマー等が挙げられる。単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記変性エラストマーは、好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン系熱可塑性エラストマーに上記反応性基を付与したものである。
【0026】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、好ましくは、炭素原子数が3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位を含むα−オレフィン系共重合体であり、より好ましくは、エチレン又はプロピレンに由来する構造単位を含む、エチレン・α−オレフィン共重合体、α−オレフィン共重合体、α−オレフィン・非共役ジエン共重合体、又は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体である。これらのうち、エチレン・α−オレフィン共重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体が特に好ましい。尚、非共役ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等が挙げられる。
【0027】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体等が挙げられる。エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体及びエチレン・1−オクテン共重合体が好ましい。
【0028】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは20,000〜500,000、更に好ましくは30,000〜300,000である。
【0029】
また、上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、芳香族ビニル化合物と、共役ジエン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキルスチレン;p−メトキシスチレン、ビニルナフタレン等から選ばれた少なくとも1種とすることができる。
また、上記共役ジエン化合物は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等から選ばれた少なくとも1種とすることができる。
【0030】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・エチレン/ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン/プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0031】
上記変性エラストマーは、より好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマーの変性物であって、酸無水物変性オレフィン系エラストマー、カルボン酸変性オレフィン系エラストマー、エポキシ変性オレフィン系エラストマー及びオキサゾリン変性オレフィン系エラストマーから選ばれた少なくとも1種である。これらのうち、酸無水物変性オレフィン系エラストマー及びカルボン酸変性オレフィン系エラストマーが特に好ましい。以下、これらを、「酸変性オレフィン系エラストマー」という。
【0032】
上記酸変性オレフィン系エラストマーは、好ましくは、酸無水物又はカルボン酸を用いて変性された、分子の側鎖若しくは末端に、酸無水物基又はカルボキシル基を有するエラストマーである。酸変性量について、発泡樹脂成形体の発泡セルの安定性、耐衝撃性及び剛性の観点から、1分子の酸変性オレフィン系エラストマーに含まれる酸無水物基又はカルボキシル基の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2〜50、更に好ましくは3〜30、特に好ましくは5〜20である。
【0033】
酸変性用の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等が挙げられる。これらのうち、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水イタコン酸が好ましい。
また、カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0034】
上記酸変性オレフィン系エラストマーとしては、酸無水物により変性されたエラストマーが好ましく、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・1−ヘキセン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・1−オクテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン・1−ブテン共重合体等の、無水マレイン酸により変性されたエラストマーが好ましい。
上記酸変性オレフィン系エラストマーは、単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
他の変性エラストマーとして、上記エポキシ変性オレフィン系エラストマーとする際に用いる変性用化合物としては、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル等の、重合性不飽和結合及びエポキシ結合を有する化合物を用いることができる。
また、上記オキサゾリン変性オレフィン系エラストマーとする際に用いる変性用化合物としては、ビニルオキサゾリン化合物等の、重合性不飽和結合及びオキサゾリル基を有する化合物を用いることができる。
【0036】
上記変性エラストマーのGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは35,000〜500,000、更に好ましくは35,000〜300,000である。
【0037】
発泡樹脂成形体(オレフィン系樹脂組成物)に含まれるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合、ポリアミド樹脂は、好ましくは0.3〜60質量%、好ましくは0.5〜55質量%、より好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは1.5〜40質量%、より更に好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは2.5〜20質量%、最も好ましくは3〜15質量%である。また、変性エラストマーは、好ましくは0.2〜55質量%、好ましくは0.4〜50質量%、より好ましくは0.8〜45質量%、更に好ましくは1.2〜35質量%、より更に好ましくは1.5〜25質量%、特に好ましくは1.8〜17質量%、最も好ましくは2〜12質量%である。更に、オレフィン樹脂は、好ましくは50〜99.5質量%、より好ましくは57〜98質量%、更に好ましくは62〜96質量%、より更に好ましくは67〜95質量%、特に好ましくは72〜94質量%、最も好ましくは75〜93質量%である。
【0038】
上記分散相(Y)は、ポリアミド樹脂(B)と、変性エラストマーとを、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜80質量%及び20〜90質量%、より好ましくは12〜78質量%及び22〜88質量%、更に好ましくは14〜75質量%及び25〜86質量%より更に好ましくは20〜70質量%及び30〜80質量%、特に好ましくは50〜65質量%及び35〜50質量%となる量比で溶融混練され、得られたものである。
【0039】
上記分散相(Y)は、好ましくは、ポリアミド樹脂(B)を含む母相(Y
1)の中に、上記ポリアミド樹脂(B)の一部と変性エラストマーとの反応生成物からなる微分散相(Y
2)を含む構造を有する(
図1参照)。上記母相(Y
1)は、ポリアミド樹脂(B)のみからなる相であってよいし、目的、用途等に応じて、更に、他の樹脂(上記オレフィン樹脂(A)を除く)を含んでもよい。他の樹脂は、ポリアミド樹脂(B)と相容性を有し、ポリオレフィン樹脂(A)と非相容性を有する樹脂であることが好ましい。また、上記母相の構造は、特に限定されず、架橋構造及び非架橋構造のいずれでもよい。
【0040】
本発明の発泡樹脂成形体(1)では、連続相(X)を構成するオレフィン樹脂が発泡している。即ち、発泡樹脂成形体(1)は、オレフィン系樹脂組成物から構成され、このオレフィン系樹脂組成物は、連続相(X)と、連続相(X)の中に分散された分散相(Y)とを有する。更に、オレフィン系樹脂組成物は、気泡(Z)を内包する。この気泡(Z)は、どこに位置されてもよいが、連続相(X)内に存在することが好ましい。この場合、換言すれば、連続相(X)内には、分散相(Y)と気泡(Z)とが分散されているといえる。更に、本発泡樹脂成形体(1)では、分散相(Y)が、ポリアミド樹脂を含む母相(Y
1)と、母相(Y
1)の中に分散された、エラストマーを含む微分散相(Y
2)とを有し、発泡された気泡(Z)が、分散相(Y)及び微分散相(Y
2)ではなく、連続相(X)のみにある形態であることが特に好ましい(
図1参照)。このような構造であることにより、分散相(Y)や微分散相(Y
2)といった相構造(サラミ構造)を保持した状態で発泡するため、本発明の発泡樹脂成形体は、耐衝撃性に優れる。
また、分散相(Y)及び微分散相(Y
2)の概形は限定されず、例えば、
図1(a)に示すように、略円形状の断面(三次元的には略球形状)をなしてもよいし、例えば、
図1(b)に示すように、気泡(Z)の形成に伴って、略楕円形や偏平形状へと変形した(伸びた)形状であってもよい。
本発明の発泡樹脂成形体の相構造としては、第1の樹脂からなる連続相A1と第2の樹脂からなる連続相A2とからなる共連続相をとることもできる。共連続相とは、2種以上の連続相(連続相A1及びA2)が3次元的に連続してつながっている構造をいう。
【0041】
上記母相(Y
1)の中には、ポリアミド樹脂(B)及び変性エラストマーの溶融混練物からなる微分散相(Y
2)が含まれる。
【0042】
上記微分散相(Y
2)を構成する反応生成物は、変性エラストマーに含まれた反応性基及びポリアミド樹脂のアミド結合の等モル反応生成物である。また、上記微分散相(Y
2)の形状及び大きさは、特に限定されないが、発泡樹脂成形体の発泡セルの安定性、耐衝撃性及び剛性の観点から、平均径(平均粒子径)は、5〜1200nmであり、好ましくは5〜1000nm、より好ましくは5〜600nm、更に好ましくは10〜400nm、特に好ましくは15〜350nmである。尚、この微分散相(Y
2)の平均径は、電子顕微鏡等の画像等から得られた測定値とすることができる。より具体的には、下記1000倍以上の拡大画像内の所定の領域内から無作為に選択された20個の微分散相(Y
2)の各々の最長径を測定し、得られた最長径の平均値を第1平均値とする。そして、画像内の異なる5つの領域において測定された第1平均値の更なる平均値が、微分散相(Y
2)の上記平均径(長軸平均分散径)となる。上記拡大画像としては、酸素プラズマエッチング処理した後、更に、オスミウムコート処理を施した試験片(発泡樹脂成形体の試験片)の処理面を電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により拡大した拡大画像が利用できる。
【0043】
上記分散相は、上記微分散相のみを含むものであってよいし、更に、エラストマー成分を含むものであってもよい。エラストマー成分としては、スチレン系エラストマー、非変性オレフィンエラストマー等を用いることができる。
上記分散相は、後述する添加剤を、分散状態で含んでもよい。
【0044】
上記分散相の形状は、球形、楕円球形等の定形、又は、これらの変形物(不定形)とすることができ、表面に凹部又は凸部を有していてもよい。
また、上記分散相の最大径の上限は、発泡樹脂成形体の形状安定性、耐衝撃性及び剛性の観点から、好ましくは10,000nm、より好ましくは8,000nm、更に好ましくは4,000nmである。また、下限は、通常、50nmであり、好ましくは100nmである。上記最大径は、電子顕微鏡画像から得られた測定値とすることができる。
【0045】
上記オレフィン系樹脂組成物は、連続相と、この連続相の中に分散された分散相とを備える。
上記連続相及び上記分散相の質量割合は、発泡樹脂成形体の発泡セルの安定性、耐衝撃性、剛性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは30質量%以上及び70質量%以下、より好ましくは50〜99.5質量%及び0.5〜50質量%、更に好ましくは52〜98質量%及び2〜48質量%、特に好ましくは55〜96質量%及び4〜45質量%である。
【0046】
本発明の発泡樹脂成形体において、この分散相は、そのまま連続相の中に含まれていてよいし、上記連続相と、分散相との界面の少なくとも一部に改質層を有する状態で含まれてもよい。
【0047】
上記改質層は、変性エラストマー又はスチレン系エラストマーからなるものとすることができる。これらの材料は、上記記載のものであってもよい。上記改質層の厚さは、特に限定されない。
【0048】
本発明の発泡樹脂成形体は、上記オレフィン系樹脂組成物からなるスキン層及びセル壁を備える。スキン層の厚さは、特に限定されないが、発泡樹脂成形体の発泡セルの安定性、耐衝撃性及び剛性の観点から、好ましくは0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。
【0049】
上記連続相又は分散相が含有することができる添加剤としては、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
【0050】
上記造核剤としては、タルク、シリカ、クレー、モンモリロナイト、カオリン等のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;硫酸バリウム等の硫化物;木炭、竹炭等の炭化物;チタン酸カリウム、チタン酸バリウム等のチタン化物;セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類;ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアリレート繊維等の樹脂繊維;フラーレン、カーボンナノチューブ等のカーボン類等が挙げられる。
【0051】
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
上記熱安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。
上記金属不活性剤としては、ヒドラジン系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
上記難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物(窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル等)、窒素系化合物(グアニジン、トリアジン、メラミン又はこれらの誘導体等)、無機化合物(金属水酸化物等)、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。
上記難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。
【0052】
本発明の発泡樹脂成形体は、前述のオレフィン系樹脂組成物が発泡されたものといえる。即ち、例えば、発泡剤を用いて、オレフィン系樹脂組成物を、化学発泡又は物理発泡させることにより得られたものとすることができる。この発泡樹脂成形体は、どのような方法で発泡させてもよく、従来、公知の方法を用いることができる。また、発泡剤を用いる場合、発泡剤は、従来、公知のものであれば、分解性発泡剤及び揮発性発泡薬品(揮発性発泡剤を含む)のいずれでもよい。具体的な化合物は、「2.発泡樹脂成形体の製造方法」において記載する。
本発明の発泡樹脂成形体の発泡倍率は、好ましくは1.2〜3.5倍、より好ましくは、1.3〜2.5倍、更に好ましくは1.4〜2.0倍、特に好ましくは1.5〜1.8倍である。また、本発明の発泡樹脂成形体の目付は、好ましくは0.1〜2.1g/m
2、より好ましくは、0.5〜2.0g/m
2、更に好ましくは0.8〜1.9g/m
2、特に好ましくは1.0〜1.8g/m
2である。
尚、本発泡樹脂成形体における中実部体積をV
0とし、中空部体積をV
1とした場合に、上記発泡倍率は「(V
0+V
1)/V
0」で表される。即ち、相構造を用いて説明すると、連続相(X)と分散相(Y)との合計体積が中実部体積V
0に相当し、気泡(Z)の体積が中空部体積V
1に相当する。
【0053】
本発明の発泡樹脂成形体は、好ましくは独立気泡を有するものであり、スキン層及びセル壁により形成される発泡セルの内部には、通常、発泡剤の分解ガス又は揮発ガスが含まれる。
上記発泡セルの大きさは、特に限定されないが、本発明の発泡樹脂成形体では、サイズは不均一ではあるが微細な発泡セルが形成されている。
【0054】
2.発泡樹脂成形体の製造方法
本発明において、発泡樹脂成形体の製造方法は、ポリアミド樹脂と、該ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマー(変性エラストマー)とを溶融混練する第1溶融混練工程と、該第1溶融混練工程により得られた第1溶融混練物と、オレフィン樹脂とを溶融混練する第2溶融混練工程とを備える方法(調製方法)により得られた製造原料を、発泡させることを特徴とする。本製造方法における発泡は、結果的に発泡されていればよく、例えば、化学発泡であってもよく、物理発泡であってもよい。また、この製造方法では、必要に応じて、他の成分を配合する工程を更に備えることができる。
【0055】
上記製造原料は、好ましくは、熱可塑性樹脂を主とし、化学発泡用の発泡剤又は物理発泡用の発泡剤(いずれも後述)を含有する組成物である。そして、添加剤を除く場合の特に好ましい製造原料は、上記本発明の発泡樹脂成形体を構成するオレフィン系樹脂組成物と同じ構成を有する。この場合の製造原料は、他の樹脂を含有することができる。
【0056】
上記第1溶融混練工程は、好ましくは、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む第1原料を溶融混練する工程である。第1原料は、他の樹脂、添加剤等を更に含むことができる。
【0057】
上記変性エラストマーは、好ましくは、オレフィン系熱可塑性エラストマーの変性物であり、特に、炭素原子数が3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位を含むα−オレフィン系共重合体の変性物(酸無水物変性オレフィンエラストマー、カルボン酸変性オレフィンエラストマー、エポキシ変性オレフィンエラストマー、オキサゾリン変性オレフィンエラストマー等)であることが好ましく、上記記載のものが適用される。
【0058】
尚、ポリアミド樹脂は、その種類により性能が異なることがあり、本発明の効果を得るための好ましい使用量は、以下に示される。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド6を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド610を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド11を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜55質量%、より好ましくは10〜55質量%、更に好ましくは15〜55質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド12を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜35質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド1010を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜55質量%、より好ましくは5〜55質量%、更に好ましくは10〜55質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミド10Tを用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜45質量%、より好ましくは5〜45質量%、更に好ましくは10〜45質量%である。
上記ポリアミド樹脂として、ポリアミドMXD6を用いる場合、その使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合に、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜40質量%である。
【0059】
上記第2溶融混練工程は、第1溶融混練工程により得られた第1溶融混練物と、オレフィン樹脂とを含む第2原料を溶融混練する工程である。第2原料は、他の樹脂、添加剤等を更に含むことができる。
【0060】
上記オレフィン樹脂としては、上記オレフィン樹脂(A)をそのまま用いてよいし、上記オレフィン樹脂(A)として、ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体が好ましいことから、例えば、「ブロックタイプポリプロピレン」として知られる、ポリプロピレン、ポリエチレン及びエチレン・プロピレンゴム(非変性オレフィンエラストマー)からなる混合樹脂を用いてもよい。上述のブロックタイプポリプロピレン(即ち、プロピレンブロックポリマー)は、その他、インパクトコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、ヘテロファジックポリプロピレン、ヘテロファジックブロックポリプロピレン等とも称され得る。
【0061】
上記第1溶融混練工程及び第2溶融混練工程における溶融混練は、いずれも、押出機(一軸スクリュー押出機、二軸混練押出機等)、ニーダー、ミキサー(高速流動式ミキサー、バドルミキサー、リボンミキサー等)等の混練装置を用いて行うことができる。
【0062】
上記第1溶融混練工程において、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーの溶融混練は、これらの全量を一括して行ってよいし、いずれか一方を分割して添加しながら行ってもよい。尚、混練温度は、好ましくは190℃〜250℃、より好ましくは200℃〜230℃、更に好ましくは205℃〜220℃である。
また、上記第2溶融混練工程において、第1溶融混練物及びオレフィン樹脂を含む第2原料の溶融混練は、これらの全量を一括して行ってよいし、いずれか一方を分割して添加しながら行ってもよい。尚、混練温度は、好ましくは190℃〜250℃、より好ましくは200℃〜230℃、更に好ましくは205℃〜220℃である。
【0063】
本方法で用いるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の割合は特に限定されず、例えば、前述した発泡樹脂成形体(オレフィン系樹脂組成物)に含まれるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合の各成分の割合となるように配合されればよい。そのうえで、上記第1溶融混練工程及び第2溶融混練工程における、製造原料の主成分であるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の使用量は、以下の通りである。即ち、これらの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の使用量は、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%、より更に好ましくは7〜40質量%、特に好ましくは9〜35質量%、最も好ましくは12〜30質量%であり、変性エラストマーの使用量は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは2〜65質量%、更に好ましくは3〜60質量%、より更に好ましくは5〜55質量%、更により好ましくは7〜50質量%、特に好ましくは13〜47質量%、最も好ましくは17〜45質量%である。
【0064】
上記製造原料としては、第1溶融混練工程及び第2溶融混練工程により得られた組成物を用いることができるが、第2溶融混練工程により得られた第2溶融混練物とオレフィン樹脂とを混合する工程(以下、「混合工程」という)を、第2溶融混練工程の後に行って得られた混合物を用いることができる。また、発泡剤を用いる場合には、この混合工程では、第2溶融混練物と、オレフィン樹脂及び発泡剤のいずれか一方とを混合してよいし、第2溶融混練物と、オレフィン樹脂及び発泡剤の両方とを混合してもよい。また、上記混合工程において用いるオレフィン樹脂は、第2溶融混練工程において用いるオレフィン樹脂と同一でも異なってもよい。即ち、本発明の発泡樹脂成形体は、前述したオレフィン系樹脂組成物を発泡させて得ることもできる。また、前述のオレフィン系樹脂組成物に含まれるオレフィン樹脂の一部を、後添加したうえで、得られた混合物を発泡させて得ることもできる。また、上述の通り、混合工程は、第2溶融混練物と、オレフィン樹脂とを混合する工程であるが、この混合工程で、発泡剤を用いる場合には、第2溶融混練物とオレフィン樹脂(後添加オレフィン樹脂)と発泡剤とがそのまま混合(ドライブレンド)されてもよいし、例えば、後添加オレフィン内に発泡剤を予め配合(混練)した発泡剤配合済みの後添加オレフィン樹脂と、第2溶融混練物と、を混合(ドライブレンド)してもよい。
尚、「互いに異なるオレフィン樹脂」とは、互いに種類が異なるオレフィン樹脂、又は、種類が同一であっても、流動性等が互いに異なるオレフィン樹脂を意味する。互いに異なるオレフィン樹脂を用いる場合、種類が同一であるか否かに関わらず、混合工程で用いるオレフィン樹脂の流動性が、第2溶融混練工程で用いるオレフィン樹脂の流動性より高いものを用いることが好ましい。
【0065】
上述した流動性の差異は、一定温度且つ剪断速度0sec
−1の状況で比較した場合の流動性の高低で評価できる。具体的には、MFR(温度230℃、2.16kg荷重)により比較できる。即ち、相対的なMFR値が大きいオレフィン樹脂は、比較対象である他方のオレフィン樹脂に対して流動性が高いオレフィン樹脂といえる。また、相対的なMFR値が小さいオレフィン樹脂は、比較対象である他方のオレフィン樹脂に対して流動性が低いオレフィン樹脂といえる。このMFR(温度230℃、2.16kg荷重)差は、特に限定されないが、15g/10min以上(通常、60g/10min以下)とすることができる。更に、これらのMFR値の具体的な範囲は特に限定されないが、例えば、低流動性オレフィン樹脂としては、MFR(温度230℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下(通常、1g/10min以上)のオレフィン樹脂を採用できる。一方、高流動性オレフィン樹脂としては、MFR(温度230℃、2.16kg荷重)が45g/10min以上(通常、90g/10min以下)のオレフィン樹脂を採用できる。更には、低流動性オレフィン樹脂としてプロピレンホモポリマーを採用し、高流動性オレフィン樹脂としてプロピレンブロックポリマーを採用することができる。このように、オレフィン樹脂として、高流動性オレフィン樹脂と低流動性オレフィン樹脂とを併用することにより、得られる発泡成形体の発泡成形性が良くなるようコントロールできる。
【0066】
本発明において、混合工程でオレフィン樹脂及び発泡剤の両方を用いる場合、化学発泡による製造方法として特に好適である。そして、第2溶融混練物、オレフィン樹脂及び発泡剤をドライブレンドして得られた製造原料を用いることにより、本発明の効果を有する発泡樹脂成形体を効率よく製造することができる。
【0067】
本方法で用いるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の割合は特に限定されず、例えば、前述した発泡樹脂成形体(オレフィン系樹脂組成物)に含まれるポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の合計を100質量%とした場合の各成分の割合となるように配合されればよい。そのうで、上記混合工程において、オレフィン樹脂を用いた場合、製造原料を構成するポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の質量割合は、発泡成形性の観点から、以下の通りである。即ち、これらの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の割合は、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜22質量%、更に好ましくは2〜15質量%であり、変性エラストマーの割合は、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜22質量%、更に好ましくは2〜15質量%である。
また、上記発泡剤の使用量は、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及びオレフィン樹脂の全量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。尚、上記発泡剤は、好ましくは分解性発泡剤であり、後述される。
【0068】
その後、所定の製造原料を発泡させて、発泡樹脂成形体を得る。
上記製造原料を発泡させる場合、射出発泡成形、プレス発泡成形、押出発泡成形、スタンパブル発泡成形、加熱発泡成形等の、従来、公知の方法を適用することができる。本発明においては、射出発泡成形が好ましい。
【0069】
以下、射出発泡成形により発泡樹脂成形体を製造する方法について、詳述する。本発明の製造方法では、どのような発泡方法を用いてもよいが、化学発泡により発泡樹脂成形体の製造を行う場合、分解性発泡剤を含む製造原料が用いられる。一方、物理発泡により発泡樹脂成形体の製造を行う場合、揮発性発泡薬品や、揮発性発泡薬品が封入されたカプセルを含む製造原料が用いられる。更には、機械的な撹拌により、製造原料に雰囲気内の気体を、気泡として導入することもできる。
【0070】
上記分解性発泡剤は、これを非溶融状態の製造原料を射出成形機に供給して、射出成形機のシリンダー温度が、オレフィン樹脂の溶融温度以上である場合に分解又は反応するものが好ましく、二酸化炭素又は窒素を生成するものが特に好ましい。本発明においては、無機系発泡剤及び有機系発泡剤のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム(炭酸水素アンモニウム)、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。
有機系発泡剤としては、N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物;クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、フタル酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、イタコン酸、グルタル酸、グルコン酸、グルタコン酸、ペンテン二酸等の多価カルボン酸又はその塩等が挙げられる。
【0071】
上記揮発性発泡薬品は、これを溶融状態のオレフィン系樹脂組成物に吸収又は溶解させて調製した製造原料を射出成形機に供給して、金型内にて蒸発させるものである。本発明においては、不活性又は不燃性ガス(窒素、二酸化炭素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等);水;プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素;三塩化フッ化メタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類;アセトン等のケトン類等を用いることができる。これらのうち、二酸化炭素、窒素又はこれらの混合物は、安価であり安全性が高いために、好ましい。また、超臨界状態の二酸化炭素、超臨界状態の窒素又はこれらの混合物は、液体のような圧縮性及び気体のような拡散性があるため、樹脂内に気体の高拡散性と高溶解性を付与することができ、更に、サイズの小さい発泡セルの形成や、発泡倍率の高倍率化が進められることから、より好ましい。
更に、上述した揮発性発泡薬品が封入されたカプセルとしては、例えば、マイクロバルーンや中空気球等と称される材料を用いることができる。具体的には、ガスバリア性を有した熱可塑性樹脂組成物(例えば、ポリアクリルニトリル)により形成された外皮を有し、当該外皮内に上述した揮発性発泡薬品が封入されたカプセルが挙げられる。
【0072】
上記発泡剤の使用量は、製造原料に含まれる樹脂成分の全量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。
【0073】
射出発泡成形では、(1)金型のキャビティに発泡可能な状態とされた樹脂(例えば、発泡剤を含む樹脂)を射出した後、金型のキャビティ壁面を後退させてキャビティ容積を拡大させ、金型内の樹脂を発泡させる方法(コアバック法)、(2)金型のキャビティに発泡可能な状態とされた樹脂の充填終了直後の時点で、キャビティ容積すべてを樹脂で充填させ、冷却に伴う樹脂の収縮体積分を、膨張させて発泡させる方法(フルパック法)、(3)金型のキャビティ容積より少ない体積の発泡可能な状態とされた樹脂を射出し、膨張により金型のキャビティに樹脂を充填させ発泡させる方法(ショートショット法)、(4)金型に油圧装置を取り付け金型のキャビティに発泡可能な状態とされた樹脂を射出して樹脂を充填した後、油圧装置により金型のキャビティ壁面を部分的に後退させることにより膨張させ、金型内の樹脂を発泡させる方法等を適用することができる。
本発明においては、容易にスキン層を有する発泡樹脂成形体が得られ、発泡樹脂成形体全体の発泡倍率が容易に制御できるという観点から、コアバック法が好ましい。
【0074】
コアバック法による製造方法を、
図2を用いて説明する。
図2(A)は、固定型11、可動型12及びスプルー13を備える金型であって、固定型11と可動型12とを最も接近させて型締め状態とした金型の概略図を示す。固定型11及び可動型12の配置は、成形に使用する製造原料の全容積より小さい容積のキャビティ14(クリアランスL
0)を形成するようにしている。そして、スプルー13からキャビティ14に所定量の製造原料を導入(射出)して、可動型12を後退させながら、製造原料の充填を完了する(
図2(B))。これにより、クリアランスL
1の状態から製造原料の射出を開始する場合に比べて、早期にスキン層が形成され、外観性に優れた発泡樹脂成形体が得られる。
【0075】
射出する製造原料の温度は、好ましくは180℃〜240℃、より好ましくは200℃〜230℃、更に好ましくは210℃〜220℃である。固定型11及び可動型12の温度は、好ましくは10℃〜80℃、より好ましくは20℃〜70℃、更に好ましくは30℃〜50℃である。
型締め圧力より高い射出圧力で射出すると、製造原料の充填とともに、キャビティ14の断面の長さ(クリアランス)が増加する。キャビティ断面長さの制御は、型締め圧力が射出圧力に負けて受動的に開くようにしてもよいし、キャビティ断面長さの変化速度を能動的に制御してもよい。
【0076】
製造原料をキャビティ14に供給している際には、射出圧力及び充填圧力がかかっているため、発泡は全く又はほとんど発生しない。
【0077】
その後、可動型12を更に後退させ、製造原料を発泡させる。このとき、製造原料の更なる射出はなされないので、キャビティ14内が減圧となり、可動型12の移動に伴って発泡成形が進行する。尚、固定型11及び可動型12の内表面に接触している部分の製造原料は、冷却されているので発泡は全く又はほとんど進行せず、スキン層が形成され、製造原料部16の内部(コア層)が発泡して発泡樹脂成形体18が形成される(
図2(B)及び(C))。
【0078】
可動型12の後退の終了時点は、発泡樹脂成形体18の発泡倍率により決定することができる。即ち、高発泡倍率の発泡樹脂成形体18を製造する場合、後退距離を長くする。一般に、発泡成形では、発泡樹脂成形体18のコア層は冷却されにくく、スキン層は早く冷却されることから、発泡倍率の調整が難しいが、本発明に係る製造原料を用いて、上記好ましい条件で射出発泡成形することにより、発泡倍率を高くすることができ、変形歪みがなく、外観性に優れた発泡樹脂成形体18、即ち、固定型11と、後退後の可動型12とにより形成されるキャビティに準じた形状を有する発泡樹脂成形体18を効率よく得ることができる。
その後、型開により、発泡樹脂成形体18は回収される。
【0079】
以上のように、クリアランスL
0の状態から可動型12を後退させながら製造原料をキャビティ14に射出して充填する製造方法の場合、キャビティ14の容積が小さい状態から製造原料の射出充填が開始されるため、キャビティ14の内部における製造原料の流動速度が高く、シルバーストリークの原因となる流動中の発泡ガスの吹出しが抑制されるとともに、固定型11及び可動型12の内表面と接する製造原料は、速く充填され且つ速く冷却されるので、外観性に優れたスキン層を備え、高い衝撃を受けても破壊され難い発泡樹脂成形体18を得ることができる。
【0080】
また、発泡樹脂成形体を製造する他の方法としては、発泡剤として高圧ガスを用いる方法であって、予め、オレフィン系樹脂組成物を、シート状等の形状に成形して未発泡樹脂成形体(未発泡成形物)とした後、この未発泡樹脂成形体に、高圧のガスを含浸させ、圧力を解放することにより発泡させるバッチ式製造方法や、オレフィン系樹脂組成物を、加圧下、高圧のガスと共に混練し、成形すると同時に圧力を解放し、成形と発泡を同時に行う連続式製造方法とすることができる。
【0081】
発泡樹脂成形体を、バッチ式製造方法により製造する場合、未発泡樹脂成形体を載置した耐圧容器(高圧容器)の中に、二酸化炭素等の不活性ガスからなる高圧ガスを注入(導入)し、未発泡樹脂成形体中に高圧ガスを含浸させるガス含浸工程、十分に高圧ガスを含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、未発泡樹脂成形体中に気泡核を発生させる減圧工程、必要に応じて、加熱することにより気泡核を成長させる加熱工程、を、順次、進めて、未発泡樹脂成形体中に気泡を形成させることが好ましい。尚、加熱工程を設けずに、室温で気泡核を成長させてもよい。このようにして、気泡を成長させた後、必要により、冷水等により急速冷却し、形状を固定化することができる。
【0082】
また、発泡樹脂成形体を、連続式製造方法により製造する場合、発泡剤を含まない製造原料(樹脂組成物)を、押出機を用いて混練しながら、二酸化炭素等の不活性ガスからなる高圧ガスを注入(導入)し、混練物に、高圧ガスを含浸させる混練含浸工程、押出機の先端に設けられたダイス等を通して混練物を押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、成形と発泡を同時に行う成形減圧工程、を、順次、進めることができる。この成形減圧工程においては、必要に応じて、加熱操作を行って気泡を成長させてもよい。このようにして、気泡を成長させた後、必要により冷水等により急速冷却し、形状を固定化することができる。
【0083】
3.発泡樹脂成形体の用途
本発明の発泡樹脂成形体は、車両用部品(自動車用、自転車用)、船舶用部品、航空用部品、産業資材、事務部品、生活用品、玩具、スポーツ用品、建材部品、構造物、医療用品、農林水産業関連部品等に好適である。車両用部品、船舶用部品又は航空用部品では、外装部品、内装部品又はこれらの基材として好適である。
【0084】
車両用部品のうち、自動車関連部品としては、車体パネル、バンパー等の外装部品;ドアトリム、ポケット、加飾パネル、オーナメントパネル、EA材、クオータートリム、ピラーガーニッシュ、カウルサイドガーニッシュ、シールド、背裏ボード、サイドエアバッグ周辺部品、インストルメントパネル、センタークラスター、レジスター、センターボックス(ドア)、グラブドア、センターコンソール、オーバーヘッドコンソール、サンバイザー、デッキボード(ラゲージボード)、パッケージトレイ、ハイマウントストップランプカバー、CRSカバー、シートサイドガーニッシュ、CTRクラスタ、衝撃吸収体等の内装部品;クリーナーケース、フィルターケース等の電装部品等が挙げられる。
【0085】
産業資材としては、運搬用コンテナ、トレイ、台車、パイロン、センターポール、工事用器材等が挙げられる。
生活用品としては、食品トレイ、ヘルメット、靴、本立て、食器、掃除用具等が挙げられる。
スポーツ用品としては、プロテクター(野球、サッカー、モータースポーツ)、アウトドア用品、登山用具等が挙げられる。
【0086】
建材部品としては、断熱材等が挙げられる。
構造物としては、道路標識等が挙げられる。
医療用品としては、マウスピース、医療機器、医薬品容器等が挙げられる。
農林水産業関連部品としては、浮き具、植木鉢(プランタ)、養殖関係器具等が挙げられる。
【実施例】
【0087】
1.発泡樹脂成形体用製造原料の調製
調製例1
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット25質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット20質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)45質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃、MFR21g/10min)55質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)100質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C1)を得た。
【0088】
調製例2
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット22.5質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット18質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)40.5質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)49.5質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)90質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)10質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C2)を得た。
尚、混合工程で発泡剤とともに用いるポリプロピレン樹脂としては、上記ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名)に比べて、より発泡成形性の良いポリプロピレン樹脂を用いることもできる。具体的には、上述のように、MFR(温度230℃、2.16kg荷重)が29〜49g/10min大きいポリプロピレン樹脂を用いることができる。
【0089】
調製例3
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット10質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット8質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)18質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)22質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)40質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)60質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C3)を得た。
【0090】
調製例4
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット5質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット4質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)9質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)11質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)20質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)80質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C4)を得た。
【0091】
調製例5
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット3.75質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット3質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)6.75質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)8.25質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)15質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)85質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C5)を得た。
【0092】
調製例6
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット2.5質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット2質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)4.5質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)5.5質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)10質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)90質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C6)を得た。
【0093】
調製例7
アルケマ社製ポリアミド11樹脂「Rilsan BMN O」(商品名、重量平均分子量17,000、融点190℃)からなるペレット1.25質量部と、三井化学社製無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体「タフマー MH7020」(商品名、重量平均分子量199,000)からなるペレット1質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)を得た。
次に、混合樹脂ペレット(第1溶融混練物)2.25質量部と、日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)2.75質量部とをドライブレンドした後、混合ペレットをコペリオン社製二軸溶融混練押出機(型式「ZSK50」)に投入し、混練温度210℃、押出速度150kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行った。そして、ペレタイザーを用いて混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)を得た。
その後、混合樹脂ペレット(第2溶融混練物)5質量部と、プロピレンブロックポリマー(MFR50〜70g/10min、融点165℃)95質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C7)を得た。
【0094】
調製例8
日本ポリプロ社製ポリプロピレン樹脂「ノバテック MA1B」(商品名、プロピレンホモポリマー、融点165℃)からなるペレット100質量部と、発泡剤としての炭酸水素ナトリウム4質量部とをドライブレンドし、混合物からなる製造原料(C8)を得た。
【0095】
2.発泡樹脂成形体の製造及び評価
実施例1〜7及び比較例1
上記の製造原料を射出発泡成形に供し、発泡倍率として、1.5倍、1.8倍又は2.4倍としたフロントドアトリム基材を得た。これらの実施例1〜7の発泡樹脂成形体では、酸素プラズマエッチング処理した後、更に、オスミウムコート処理を施した試験片(発泡樹脂成形体の試験片)の処理面を電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM)で観察することで、連続相(X)、分散相(Y)、母相(Y
1)及び微分散相(Y
2)の存在が確認される。特に、分散相及び微分散相は、1000倍以上(通常10,000倍以下)に拡大した画像で観察される。また、各相を構成する成分は、このFE−SEMを用いた観察時にエネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことで特定される。
【0096】
車両用ドアトリムに関係する衝突安全性能試験として、日本国において、自動車事故対策機構(JNCAP)が自動車アセスメントの一環として実施している側面衝突試験が知られている。
図3は、フロントドアへの側面衝突試験の概要を模式的に示している。この試験では、「ユーロSID−2」と呼ばれる大人の男性(身長約170cm、体重約72kg)を模擬したダミー40を用意し、このダミー40を静止状態の試験車の運転席に乗せ、運転席側から質量950kgの台車60を、時速55kmで試験車の側面に衝突させる。サイドエアバッグ30が装着されている場合、サイドエアバッグ30も作動することになる。そして、ダミー40の頭部、胸部、腹部、腰部に受けた衝撃をもとに、乗員保護性能が評価される。現在では、このような試験に基づき乗員保護性能の確保が求められている。本発明者は、このような試験やこれと同等の単品試験を実施し、フロントドアトリム基材20における破壊挙動の発生の有無を目視観察した。観察結果を下記基準で判定し、表1に示す。
○:衝突によりフロントドアトリム基材の破壊挙動が見られない又は破壊したが飛散しなかった
×:衝突によりフロントドアトリム基材の破壊挙動が見られ飛散した
【0097】
【表1】
【0098】
表1の結果から、ドアトリム基材が飛散することがないことが分かる。即ち、本発明の発泡樹脂成形体は、高い耐衝撃性を有することが分かる。即ち、発泡倍率が2.4倍未満において、本発泡樹脂成形体は、破壊挙動が認められない又は破壊されても飛散されないことが示された。即ち、第2溶融混練物の配合割合が5〜100質量%という広範な範囲で発泡樹脂成形体にすることが可能である。更に、発泡倍率2.4倍では、第2溶融混練物の配合割合を対応する領域で多くすることで、破壊挙動が認められない又は破壊されても飛散されないことが示された。
【0099】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。