(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、処理装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における処理装置の一例を示す斜視図(
図1(a))、およびそのIb−Ib線による断面図(
図1(b))である。ただし、
図1(b)においては、バルブの断面は省略している。
【0030】
図2は、本実施の形態における処理装置のフィルタを斜め上方からみた斜視図(
図2(a))、反射部材を斜め上方からみた斜視図、(
図2(b))、反射部材と、反射部材上に配置された状態のフィルタとを斜め上方からみた斜視図(
図2(c))、および反射部材と、反射部材上に配置された状態のフィルタとを斜め下方からみた斜視図(
図2(d))である。
【0031】
処理装置1は、容器101、照射手段102、バルブ103、フィルタ105、および反射部材106を備えている。容器101は、排出口1011、供給口1012、および照射開口部1013を有している。
【0032】
本実施の形態の処理装置1は、固相樹脂に結合されたペプチドを合成する固相合成に用いられる処理装置である。以下、固相合成の一例について簡単に説明する。ただし、本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる固相合成は、以下に述べる固相合成に限定されるものではなく、他の固相合成であっても良い。例えば、以下に述べる物質以外の物質を用いて行なわれる固相合成であっても良い。
【0033】
固相合成は、ペプチドを化学的に合成する方法のひとつであり、ペプチド固相合成法とも呼ばれる。固相合成においては、固相の樹脂を用い、適切な溶媒に懸濁させた固相樹脂の表面に所望のアミノ基を結合させ、そのアミノ酸に対して更に所望のアミノ酸を順次、脱水反応によって結合させて、アミノ酸鎖を伸長することで、固相樹脂に結合されたペプチドを合成する。そして、例えば、この固相樹脂に結合されたペプチドを固相樹脂から切り離すことで、目的のペプチドを得ることができる。
【0034】
固相合成においては、C末端側からN末端側へ向かってペプチドの合成が進められるため、まず、固相樹脂の表面に、C末端アミノ酸を結合させることで、合成が開始される。固相表面とアミノ酸との反応が終了した後、固相樹脂を溶媒で洗浄して、残ったアミノ酸などを除去する。除去後、固相樹脂に結合しているアミノ酸の保護基を除去(脱保護)すると、次の反応点となるアミノ基が再び固相樹脂の表面に出現する。更に、N末端が保護されたアミノ酸を加えて、固相樹脂の表面に出現したアミノ酸のN末端側に、N末端が保護されたアミノ酸のC末端側を脱水反応により結合させる。そして、使用するアミノ酸を順次変更しながらこれらの手順を繰り返すことで、目指す配列をもつペプチドを精度よく合成することができる。
【0035】
上記の固相合成に用いられる材料等について一例を説明する。固相樹脂としては、例えば、ポリスチレンや、ポリアミド等のポリマーが用いられる。ただし、固相樹脂はこれら以外の樹脂であっても良い。固相樹脂としては、例えば、直径が10μm〜1000μmの粒状(例えば、ビーズ状)の樹脂が用いられる。固相樹脂を懸濁させる溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミドまたはDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)が用いられる。ただし、他の溶媒を用いても良い。
【0036】
なお、固相樹脂にC末端アミノ酸を直接、結合させる代りに、リンカー分子等を介して固相樹脂とC末端アミノ酸とを間接的に結合させても良い。リンカー分子としては、例えば、4−ヒドロキシメチルフェノキシアセチル−4'−メチルベンジヒドリルアミン(HMP)のようなペプチド酸、又はベンズヒドリルアミン誘導体のようなペプチドアミドが挙げられる。
【0037】
アミノ酸の保護基としては、例えば、Boc(Nα'−t−ブトキシカルボニル)や、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)等が利用される。
【0038】
保護基の除去、即ち脱保護は、例えば、ピクロジンまたはピペリジン等を脱保護剤として用いた緩塩基処理によって行なわれる。
【0039】
固相樹脂にアミノ酸を順次結合していく処理は、アミノ酸を含む溶液内において行なわれる。例えば、固相樹脂にアミノ酸を順次結合していく処理は、アミノ酸と、活性化剤と、ラセミ化抑制剤等を有する溶液内で行なわれる。活性化剤は、脱保護された固相樹脂に結合されたアミノ酸(固相樹脂に結合しているペプチドの末端のアミノ酸も含む)と、溶液中のN末端が保護されたアミノ酸との結合を促進するために用いられる。活性化剤は、縮合剤とも呼ばれる。また、ラセミ化抑制剤は、ラセミ化の発生を抑制して、ラセミ化による反応の低下等を防ぐために用いられる。活性化剤としては、例えば、DIPCI(N,N'−ジプロピルカルボジイミド)またはHBTU(N,N,N',N'−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスファート)等が用いられる。また、ラセミ化抑制剤としては、例えば、Oxyma(エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート)等が用いられる。
【0040】
固相合成において行なわれる様々な処理においては、マイクロ波を照射することで、処理の促進や、処理の高速化を図ることができる。例えば、特許文献1等にも開示されているように、固相樹脂に結合しているアミノ酸のN末端から、保護基を除去する際、即ち脱保護する際に、マイクロ波を照射することにより、脱保護の工程を促進して、処理時間を短縮することができることが知られている。なお、固相樹脂に結合しているアミノ酸とは、固相樹脂に結合しているペプチドの末端のアミノ酸も含むと考えてよい。かかることは以下においても同様である。また、固相樹脂に結合している脱保護したアミノ酸と、溶液中のアミノ酸とを縮合させる際に、マイクロ波を照射することにより、縮合の処理時間を短縮させることができることが知られている。
【0041】
本実施の形態の処理装置1は、このような固相合成を構成する複数の処理の1以上を実行するために用いられる装置である。例えば、本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる2以上の処理は、連続した2以上の処理であってもよく、不連続の2以上の処理であっても良い。本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる1以上の処理は、固相合成の複数の処理のうちのどの処理であっても良い。本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる1以上の処理は、例えば、固相樹脂を懸濁した液に対して、マイクロ波照射が行なわれる処理を含む1以上の処理であることが好ましい。例えば、この1以上の処理は、固相樹脂に結合されたN末端が保護されたアミノ酸に対して、脱保護を行なう処理を含んでいても良い。また、この1以上の処理は、固相樹脂に結合された脱保護されたアミノ酸に対して、脱水反応を行なうことによって、アミノ酸を縮合させる処理を含んでいても良い。また、本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる1以上の処理は、固相樹脂を濾過により分離する処理を含む1以上の処理であることが好ましい。ここでの固相樹脂は、例えば、1以上のアミノ酸が連結された固相樹脂である。例えば、アミノ酸を結合させた後の固相樹脂が懸濁された液から、固相樹脂を濾過する処理であってもよく、N末端が保護されたアミノ酸が結合された固相樹脂に対して脱保護の処理を行なった後、固相樹脂が懸濁された液から、固相樹脂を濾過により分離する処理であってもよい。また、固相樹脂を洗浄用の液体(例えば溶媒)等で洗浄した後、固相樹脂を濾過する処理であっても良い。また、本実施の形態の処理装置1で行なわれる1以上の処理は、上記で述べた処理の2以上の組合せであっても良い。例えば、本実施の形態の処理装置1を用いて行なわれる1以上の処理は、N末端が保護されたアミノ酸が結合された固相樹脂に対して脱保護を行なう処理と、脱保護を行なった固相樹脂を濾過し、洗浄する処理と、洗浄後の固相樹脂の脱保護されたアミノ酸に、N末端が保護されたアミノ酸を縮合させる処理と、この固相樹脂を濾過し、洗浄する処理と、で構成される一のアミノ酸鎖の伸長処理の繰り返し等であっても良い。
【0042】
容器101は、固相合成の1以上の処理が内部で行なわれる容器である。容器101内には、例えば、固相合成に用いられる物質や、中間生成物や、溶媒等が供給され、保持される。固相合成に用いられる物質は、例えば、固相樹脂、アミノ酸、脱保護剤、活性化剤、ラセミ化抑制剤等である。この固相樹脂は、例えば、1以上のアミノ酸が予め連結済みの固相樹脂であってもよく、リンカー分子と、1以上のアミノ酸とが連結済みの固相樹脂であってもよく、アミノ酸が連結されていない固相樹脂であっても良い。また、この固相樹脂は、リンカー分子だけが結合された状態の固相樹脂であっても良い。例えば、容器101にはこれらの物質や中間生成物が、適切な溶媒とともに保持される。また容器101内には、例えば、固相合成において洗浄等に用いられる液体や撹拌等に用いられる気体等が外部から供給されてもよい。
【0043】
容器101は、マイクロ波反射性を有する材料により構成されている。マイクロ波反射性を有する材料とは、例えば、導電体である。導電体は、例えば、金属である。容器101は、耐腐食性に優れた材料であることが好ましい。例えば、容器101は、ステンレス製であることが好ましい。容器101の外壁等の厚さは問わない。容器101の内壁は、マイクロ波透過性が高く、耐腐食性等に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やガラス等の材料でコーティングされていても良い。例えば、容器101は、内壁が、これらのマイクロ波透過性が高く、耐腐食性等に優れた材料で構成され、外壁が、ステンレス等のマイクロ波反射性材料で構成された二重構造の容器であってもよい。
【0044】
容器101は、内部にマイクロ波を照射している際に、マイクロ波を外部に漏洩しない構造であることが好ましい。例えば、容器101は、マイクロ波を照射中に、容器101内部が密封可能な構造であることが好ましい。
【0045】
容器101は、縦型の容器である。縦型の容器とは、長手方向が略鉛直方向である容器である。容器101は、上下が半球形状であり、その間の部分が円筒形状であるカプセル形状を有している。このため、容器101の鉛直方向に切断した断面形状は、
図1(b)に示すように、長手方向の端部が、半円形状を有している。
【0046】
ただし、容器101は、上記以外のどのような形状としても良い。例えば、容器101の下部に設けられた排出口1011から、容器101内の溶媒等の液体を排出すること、固相樹脂を濾過により分離するフィルタ105を配置しやすいこと等から考えると、容器101の形状は、本実施の形態のように縦型であることが好ましいが、容器101の形状は横型の容器、即ち長手方向が略水平方向である容器であっても良い。ただし、容器101は、長手方向が、水平方向に対して、30度程度まで傾斜していてもよい。
【0047】
また、容器101は、円筒形状であっても良く、多角形柱形状であっても良く、円錐形状であっても良く、これらの形状の組合せ等であっても良い。容器101は、例えば、鉛直方向または水平方向に伸びる軸を回転の中心として、所望の形状(例えば、円形や楕円や角丸四角形等)を回転させた形状を有していることが好ましいが、回転させた形状を有していなくても良い。また、容器101は、長手方向に対して垂直な面に対して、面対称となる形状であっても良く、面対称となる形状でなくても良い。
【0048】
本実施の形態の容器101のサイズは、直径が1m、高さが2mであるが、このサイズは、一例であり、容器101は、これよりも大きくても良く、小さくても良く、容器101の大きさは問わない。また、容器101の高さと、幅と、奥行きの比率等は問わない。
【0049】
容器101の形状や、大きさ等は、例えば、容器101に照射されるマイクロ波の分布等に応じて決定される。例えば、容器101の形状や大きさは、容器101内におけるマイクロ波のモードがマルチモードとなるように、形状や大きさが設定されていることが好ましい。マイクロ波のマルチモードとは、例えば、容器101内でマイクロ波の定在波が発生しないモードである。
【0050】
容器101の外周には、図示していないが、容器101の温度を調整するための温水ジャケットや、冷水ジャケット、ヒータ等が設けられていても良い。
【0051】
容器101の下部には、排出口1011が設けられている。排出口1011は、容器101の内容物を排出するための開口部である。ここでの内容物の排出は、内容物の全ての排出でなくてもよい。容器101内の内容物とは、例えば、上述したような固相合成に用いられる物質や、溶媒等や、洗浄用の液体(例えば溶媒)等である。液状の内容物は、溶液および懸濁液等を含む概念である。排出口1011から排出される内容物は、例えば、排出前に容器101内に保持されていた内容物から、後述するフィルタ105で濾過された部分であり、内容物から濾過により分離された固相樹脂を除いた部分である。ここでは、排出口1011が一つ設けられている例を示しているが、複数の排出口1011が設けられていても良い。排出口1011は、容器101内の内容物が、自然に排出されるよう、容器101の最下部に設けられていることが好ましい。排出口1011のサイズおよび形状は問わない。
【0052】
容器101には、容器101内に、固相合成に用いられる物質や溶媒、洗浄用の液体、気体等を容器101内に供給するための供給口1012が設けられている。供給口1012のサイズ等は問わない。ここでは、供給口1012が、容器101の上部に設けられている例を示しているが、供給口1012は、上部以外の位置(例えば、容器101の側部や下部等)に設けられていても良い。ただし、少なくとも、後述するフィルタ105よりも上方に固相樹脂が供給できるよう、固相樹脂を供給する供給口1012は、フィルタ105よりも上方に設けられていることが好ましい。供給口1012は、供給時以外は、図示しないキャップや、栓等により塞ぐことが可能なものであることが好ましい。ここでは、供給口1012が一つである場合を例に挙げて示したが、供給口1012は、複数であっても良い。供給口1012は、容器101内に供給する内容物を供給口1012まで送るための配管(図示せず)等が接続されていてもよい。また、供給口1012には、容器101内に内容物等を供給するための、容器101内に向かって伸びる1以上のノズル(図示せず)等が設けられていても良い。このノズルは着脱可能なものであっても良い。ここでは、供給口1012が開閉可能な蓋1012aで閉じられている場合を示している。
【0053】
なお、本実施の形態においては、供給口1012を設けた場合について説明したが、容器101内に固相合成に用いられる物質や液体等が供給可能であれば、供給口1012を有していなくても良い。例えば、容器101の上部や側面等が着脱可能な構造である場合、供給口1012は省略しても良い。
【0054】
なお、容器101内には、内容物を撹拌する撹拌手段(図示せず)が設けられていても良い。撹拌手段は、例えば、撹拌翼と、この撹拌翼の回転中心に取付けられた回転軸と、この回転軸を回転させるモータ等の回転装置とで実現されても良い。撹拌翼の数や、形状等は問わない。また、回転軸の伸びる方向は、鉛直方向であっても良く、水平方向であっても良く、これら以外の方向であっても良い。また、撹拌手段は、液状の内容物内に気泡を噴出させることで内容物を気泡により撹拌(即ち、バブリングにより撹拌)する手段であってもよい。撹拌手段は、例えば、内容物の下部や、側面等に設けられた、窒素等の不活性ガスを吹き出す開口部やノズルと、これらと配管等を介して接続され、これらに対してガスを供給するボンベ等のガス供給手段との組み合わせ等であっても良い。なお、不活性ガスの代りに、固相合成に影響を与えない、あるいは影響が少ないガスを用いても良い。
【0055】
なお、容器101は、内部や外部に、温度センサ等の容器101内の温度を測定するための手段(図示せず)を備えていても良い。また、容器101内の温度を、この温度を測定する手段が取得した値を用いてフィードバック制御するようにしても良い。また、容器内に101には、圧力センサ等の温度センサ以外のセンサ等が設けられていてもよい。また、容器101には、容器101の内部をのぞくためのぞき窓(図示せず)が設けられていても良い。のぞき窓は、例えば、マイクロ波反射性の高い材料で構成されており、容器101内のマイクロ波が漏洩しないようなサイズを有しており、ガラス等で塞がれている筒状の部材で実現可能である。ただし、のぞき窓の構造等は問わない。また、容器101は内部の圧力を変更可能なものであっても良い。例えば、容器101は、内部を減圧したり、加圧したりできるものであっても良い。容器101は、例えば、容器101内の圧力を変更するポンプ等の手段(図示せず)等と接続されていても良い。
【0056】
照射手段102は、マイクロ波発振器1021と、導波管1022との組を3組有しており、3箇所から容器101内にマイクロ波を照射する。照射手段102の3つの導波管1022は、それぞれの端部の開口部が、容器101の異なる3箇所に設けられた開口部である照射開口部1013と連通するよう、容器101に取り付けられている。照射開口部1013は、容器101の内部と外部とを連通するよう開口している。各導波管1022の容器101の照射開口部1013と接続された端部は、例えば、各導波管1022の、マイクロ波発信器1021と接続された端部とは反対側の端部である。各導波管1022の容器101の照射開口部1013と接続された端部が、照射手段102がマイクロ波を出射する端部であり、この端部が接続されている位置が、例えば、照射手段102がマイクロ波を出射する位置である。ここでは、例えば、3つの導波管1022の端部が、容器101の上部の同じ高さ位置に、互いに等間隔となるよう容器101の縦方向に伸びる仮想の中心軸の周りに配列されるよう接続されている。
【0057】
各マイクロ波発信器1021は、マイクロ波を発生する。各マイクロ波発信器1021が発生したマイクロ波は、各マイクロ波発信器1021に接続された導波管1022を伝送され、各導波管1022の、容器101の接続された端部から、照射開口部1013を介して容器101内にそれぞれ出射される。このため、各マイクロ波発信器1021が発生するマイクロ波が、照射手段102が出射するマイクロ波となる。各マイクロ波発信器1021が出射するマイクロ波の周波数や強度等は問わない。各マイクロ波発信器1021が出射するマイクロ波の周波数は、例えば、915MHzであっても良く、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であっても良い。マイクロ波発振器1021は、例えば、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン、または半導体型発振器等である。
【0058】
導波管1022は、マイクロ波を伝送する伝送部として用いられる。導波管1022は、通常、マイクロ波発信器1021が発生するマイクロ波の周波数に合わせた形状のものが用いられる。なお、導波管1022の端部と接続される照射開口部1013は、マイクロ波透過性の高いPTFE等のフッ素化ポリマー、ガラス、ゴム、およびナイロン等の材料で塞がれていても良い。例えば、これらの材料で構成されたプレート等で塞がれていても良い。照射手段1022が、容器101内にマイクロ波を出射する位置は、例えば、導波管1022の容器101と接続される端部の開口部の中心と考えてもよい。なお、導波管1022は、容器101側の端部が、容器101内に突出するよう容器101に取付けられていてもよい。例えば、導波管1022の容器101側の端部が、照射開口部1013内を通って、容器101内に露出していても良い。また、導波管1022は、マイクロ波透過性の高いPTFE等のフッ素化ポリマー、ガラス、ゴム、およびナイロン等の材料で塞がれていても良い。例えば、これらの材料で構成されたプレート等で塞がれていても良い。導波管1022を塞ぐ位置は、容器101側の部分(例えば、容器101側の端部)であっても良く、マイクロ波発振器1021側の部分であってもよく、その位置は問わない。
【0059】
なお、照射手段1022は、マイクロ波を容器101内に照射可能なものであれば、上記以外のものであっても良い。
【0060】
例えば、照射手段1022は、3カ所から容器101内にマイクロ波を照射するものに限られるものではなく、容器101内に、1または2以上の位置からマイクロ波を照射するものであれば良い。例えば、照射手段1022は、マイクロ波発信器1021と、容器101に設けられた照射開口部1013と接続された導波管1022との、1または2以上の組を有しており、各マイクロは発信器1021が発生するマイクロ波を、導波管1022から容器101内に出射するようにしても良い。
【0061】
また、一のマイクロ波発信器1021に対して、一の導波管1022を接続する代わりに、一のマイクロ波発振器1021に対して、2以上に分岐した構造を有する導波管1022を接続するようにし、分岐した導波管1022の端部を容器101に設けられた異なる照射開口部1013に接続し、一のマイクロ波発振器1021から発生したマイクロ波を、導波管1022により複数に分岐して、容器101の複数の位置から、容器101内に出射するようにしても良い。
【0062】
また、1または2以上の導波管1022の端部が容器101と接続される位置、すなわち、照射手段1022が容器101と接続される位置は、後述するフィルタ105よりも上方であれば、容器101の上部でなくても良く、例えば、容器101の側部等に接続されていてもよい。この接続される位置は、例えば、容器101の形状や、容器101に保持される内容物の高さ、照射手段102が出射するマイクロ波の波長等に応じて決定される。
【0063】
また、照射手段102は、例えば、導波管1022の容器101と接続された端部、あるいは、この端部が接続された照射開口部1013に接続されたアンテナ(図示せず)を更に有していても良い。このアンテナは、マイクロ波を容器101に出射するためのものであり、容器101内に設置される。この場合、このアンテナが照射手段1022のマイクロ波を出射する部分となり、照射手段102がマイクロ波を出射する位置は、例えば、このアンテナのマイクロ波を出射する位置と考えてもよい。
【0064】
また、上記の照射手段102において、マイクロ波発信器1021が発生するマイクロ波を伝送する伝送路として、導波管1022の代わりに、同軸ケーブル等の他の伝送部を用いるようにしても良い。例えば、一端をマイクロ波発信器1021と接続した同軸ケーブルの他端を、容器101に設けられた照射開口部1013に挿入することで、同軸ケーブルを介して容器101内にマイクロ波を照射することが可能となる。また、導波管1022等の伝送部を使用せずにマイクロ波発信器1021が発生するマイクロ波を容器101内に照射できる場合、伝送部は省略しても良い。
【0065】
また、照射手段102は、例えば、同軸ケーブル等の伝送部の、容器101と接続された端部(あるいは、この端部と接続された照射開口部1013)に接続されたアンテナ(図示せず)を更に有していても良い。このアンテナは、マイクロ波を容器101に出射するためのものであり、容器101内に設置される。この場合、このアンテナが照射手段1022のマイクロ波を出射する部分となり、照射手段102がマイクロ波を出射する位置は、例えば、このアンテナのマイクロ波を出射する位置と考えてもよい。
【0066】
また、照射手段102は、異なる周波数のマイクロ波を容器101内に出射するものであっても良い。例えば、照射手段102が有する複数のマイクロ波発振器1021として、発生するマイクロ波の周波数が異なる複数のマイクロ波発振器1021を用いても良い。なお、照射手段102は、異なる周波数のマイクロ波を、容器101内に同時に出射しても良く、異なる周波数のマイクロ波を切替えて異なるタイミングに出射するようにしてもよい。
【0067】
容器101の排出口1011には、バルブ103が取付けられている。バルブ103は、更に配管104と接続されている。バルブ103は、排出口1011からの容器101内の内容物の排出を制御するための排出手段として用いられる。バルブ103を開くことで、容器101内の内容物が、バルブ103に接続された配管104を通って、容器101内から排出される。バルブ103を閉じることで、容器101内に内容物が保持される。バルブ103は、手動弁であっても良く、電磁弁等の自動弁であってもよい。バルブ103の材料は問わない。バルブ103から容器101内の内容物を直接排出する場合、配管104を省略しても良い。また、バルブ103は、上記のように、排出口1011に直接取付けられても良く、図示しない配管等を介して間接的に取付けられても良い。
【0068】
また、本実施の形態においては、バルブ103を設けた場合について説明したが、容器101の排出口1011に取付けられ、容器101内の内容物の排出を制御することができる排出手段であれば、バルブ103以外の他の排出手段を設けるようにしても良い。例えば、排出手段として、排出口1011を開閉可能な栓や蓋等を設けるようにしても良い。例えば、容器101の排出口1011を開閉可能な自動排水栓等を排出手段として排出口1011に取付けてもよい。なお、本実施の形態においては、バルブ103が、処理装置1の一部である場合を例に挙げて説明したが、バルブ103等の排出手段は、処理装置1の一部と考えても良く、処理装置1の一部ではなく、処理装置1の外部に取付けられているもの等と考えてもよい。
【0069】
フィルタ105は、固相合成に用いられる固相樹脂を容器101内の内容物から分離するものである。フィルタ105は、例えば、濾過によって、内容物から固相樹脂よりもサイズ(例えば粒径等)が小さいもの(例えば、液体や、固相樹脂よりもサイズが小さい固体等)を濾過して、固相樹脂以上の大きさの固体を分離するためのものである。フィルタ105は、マイクロ波透過性材料により構成されている。マイクロ波透過性材料とは、例えば、マイクロ波透過性が高い材料である。マイクロ波透過性が高い材料は、例えば、比誘電損失が小さい材料である。また、マイクロ波透過性材料は、例えば、耐腐食性に優れた化学的に不活性な材料で構成されていることが好ましい。例えば、フィルタ105は、PTFE等のフッ素化ポリマーや、ポリプロピレン、石英、ガラス、ナイロン、ゴム等で構成されている。
【0070】
フィルタ105は、固相合成に用いられる固相樹脂を容器101内の内容物から分離するための複数の孔を有する。孔は、例えば、上面1051から裏面に連通している孔である。フィルタ105は、例えば、多孔質材料により構成されている。ただし、フィルタ105は、メッシュ等であっても良い。容器101内の内容物は、例えば、上述したような、固相合成を行なうために用いられる固相樹脂を含む液体(例えば、懸濁液)である。この液体は、例えば、固相合成に用いられる上述したような活性化剤やアミノ酸等が溶解または懸濁している液体である。また、固相樹脂を含む液体は、固相樹脂と固相樹脂を洗浄するための溶媒等の液体の懸濁液等であっても良い。フィルタ105が有する複数の孔は、例えば、内容物に含まれる固相樹脂を通過させないサイズの孔であって、内容物の固相樹脂以外を通過させることができるサイズの孔である。内容物の固相樹脂以外とは、例えば、溶媒や、溶媒に溶けた状態の固相合成に用いられる活性化剤、脱保護剤等の物質や、溶媒に溶解または懸濁している状態のアミノ酸等である。フィルタ105が有する複数の孔は、例えば、内容物に含まれる固相樹脂よりもサイズが小さく、内容物の固相樹脂以外よりもサイズが大きい孔である。例えば、フィルタ105が有する複数の孔は、内容物に含まれる固相樹脂の粒径よりもサイズが小さい孔である。これにより、容器101内の内容物のうちの、固相樹脂だけが、濾過により分離されてフィルタ105の上面1051に残り、溶媒に溶解している活性化剤や脱保護剤等や、溶媒に溶解または懸濁しているアミノ酸等は、溶媒とともに、フィルタ105が有する孔を通過することとなる。例えば、固相樹脂として、直径が50μm〜150μmの粒状の固相樹脂を用いる場合、フィルタ105の孔の直径は、これらよりも小さい値、例えば、50μm未満等であることが好ましい。
【0071】
なお、フィルタ105により濾過されて分離される固相樹脂とは、固相樹脂単体であっても良く、リンカー分子や、1以上のアミノ酸や、ペプチド等が結合した状態の固相樹脂であってもよい。例えば、上述したフィルタ105は、アミノ酸やペプチドが結合した状態の固相樹脂を、容器101内の内容物から分離するための複数の孔を有しているものと考えてもよい。内容物からフィルタ105で分離される固相樹脂を、リンカー分子や、1以上のアミノ酸や、ペプチド等が結合されているか否かに関わらず、固相樹脂を含有する固体である樹脂含有固体と呼ぶようにしても良い。例えば、フィルタ105は、容器101内の内容物から樹脂含有固体を分離するものと考えてもよい。かかることは、後述する反射部材106の説明においても同様である。
【0072】
フィルタ105は、排出口1011と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に、容器101を仕切るよう配置されている。本実施の形態においては、フィルタ105は、排出口1011と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間の位置において、容器101を上下の2つの領域に仕切るように配置されている。フィルタ105により容器101を仕切るということは、例えば、フィルタ105で仕切られた2つの領域間において、容器101内の内容物がフィルタを通ることなく移動しないようにフィルタ105を設けることである。本実施の形態においては、フィルタ105の外周部分と容器101の側面との間に間隙が生じないようフィルタ105が設けられている例を示している。フィルタ105が、排出口1011と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に、容器101を仕切るよう配置されている、ということは、例えば、フィルタ105が、排出口1011と、照射手段102がマイクロ波を出射する位置と、の間に配置されるとともに、容器101の内容物が、フィルタ105に対して照射手段102側となる領域と、フィルタ105に対して排出口1011側となる領域との間で、フィルタ105を通ることなく移動しないように、フィルタ105が配置されることである。
【0073】
本実施の形態においては、一例として、PTFE製の多孔質材料で構成されるシート状のフィルタ105を用いている場合について説明する。フィルタ105は、上面1051が略平坦であり、上面1051が水平となるよう、容器101内に配置されている。本実施の形態においては、このようにフィルタ105を配置することで、フィルタ105で容器101を上下に仕切っている。ただし、フィルタ105の上面1051は、略平坦でなくても良く、例えば、凹凸が設けられていてもよい。また、フィルタ105は、上面1051が水平に対して傾斜して配置されていても良い。
【0074】
なお、ここではフィルタ105がシート状である場合について説明しているが、フィルタ105は、平板状等のシート状以外の形状のフィルタであっても良い。また、フィルタ105の厚さや、強度等は問わない。フィルタ105は、略均等な厚さを有していることが好ましいが、不均一な厚さを有していても良い。
【0075】
反射部材106は、容器101内のフィルタ105と排出口1011との間に、容器101を仕切るように配置されている。反射部材106は、高さ方向において排出口1011から離れた位置に配置されている。反射部材106上には、フィルタ105が重ねて配置されている。反射部材106上に配置されるということは、例えば、反射部材106の上面1061に配置されることである。ここでは、反射部材106は、平板状の部材であり、その上面1061は略平坦であり、上面1061が水平となるよう容器101内に配置されており、その上面1061上にフィルタ105が重ねて配置されている。なお、反射部材106の上面1061は、略平坦でなくても良い。また、反射部材106は、上面1061が水平に配置されていなくても良い。また、反射部材106は、平板状の部材でなくても良い。反射部材106の上面1061は、シート状や平板状のフィルタ105が安定して載置可能な形状であることが好ましい。
【0076】
反射部材106の材料は、マイクロ波反射性を有する材料であるステンレスである。反射部材106は、少なくともフィルタ105を通過する容器101内の内容物が通過可能なサイズの、平面形状が円形である複数の孔106aを有している。孔106aは、例えば、上面1061から裏面1062に連通している孔である。各孔106aの直径は、少なくともフィルタ105を通過する容器101内の内容物が通過可能なサイズで、かつ、照射手段102が出射するマイクロ波を反射させるサイズに設定されている。少なくともフィルタ105を通過する容器101内の内容物が通過可能なサイズとは、例えば、容器101内の内容物のうちの、フィルタ105を通過する内容物が通過可能なサイズ以上のサイズであれば良く、例えば、容器101内の内容物の、フィルタ105で分離される固相樹脂を除いた部分が通過可能なサイズであっても良く、固相樹脂も含めた内容物が通過可能なサイズであっても良い。マイクロ波反射性を有する材料で構成されたプレートに設けられた孔の直径や、マイクロ波反射性を有する材料で構成されたメッシュの開口部の最も広い部分の幅が、照射手段102が出射するマイクロ波の半波長よりも小さければ、このプレートや、メッシュにおいてマイクロ波が反射されることから、反射部材106に設けられた複数の孔106aの直径を、例えば、照射手段102が出射するマイクロ波の半波長よりも小さく、フィルタ105を通過する内容物が通過可能なサイズよりも大きいサイズとすればよい。なお、反射部材106の孔106aのサイズは、例えば、照射手段102が出射するマイクロ波の半波長よりも小さいサイズであって、フィルタ105を通過した内容物の通過を妨げないサイズであることが好ましい。複数の孔106aの数や配列パターン等は問わない。本実施の形態においては、反射部材106の一例として、複数の孔106aを有するステンレス製のパンチングメタルを用いている。通常の固相合成においては、固相樹脂が、容器101内の内容物の中ではサイズが最も大きいため、反射部材106を固相樹脂が通過可能であれば、固相樹脂以外の内容物も反射部材106を通過可能となる。なお、
図2(b)、
図2(d)等は説明のための図であって、これらの図の反射部材106に設けられている複数の孔のサイズと、反射部材106のサイズとの関係や、孔106aの配置や、孔106aの数等は、説明のためのものであり、実際の反射部材106とは必ずしも同じではない。
【0077】
反射部材106は、上記のように、ステンレス製であって、照射手段102が出射するマイクロ波を反射させるサイズの複数の孔が設けられていることから、反射部材106は、照射手段102が出射するマイクロ波を反射するようになっている。なお、ここでの反射部材106によるマイクロ波の反射は、反射部材106に照射されたマイクロ波の全ての反射であっても良いが、全ての反射でなくても良い。例えば、照射されたマイクロ波の一部が反射部材106を通過して、その残りが反射しても良く、また、照射されたマイクロ波の一部が、反射部材106によって吸収されてもよい。
【0078】
なお、反射部材106は、照射手段102が出射するマイクロ波を反射するものであれば、どのような材料で構成されていてもよく、また、どのような形状およびサイズを有していても良い。例えば、反射部材106は、ステンレス以外のマイクロ波反射性の材料(例えば、ステンレス以外の金属等)で構成されていても良い。ただし、反射部材106の材料は、耐腐食性に優れ、化学的に安定な材料であることが好ましい。なお、反射部材106の材料として、金属を用いるとともに、その表面を、PTFE等の耐腐食性を有するマイクロ波透過性を有する材料でコーティングすることで、マイクロ波反射性を損ねることなく、耐腐食性を向上させても良い。また、反射部材106に設けられた複数の孔の平面形状は、マイクロ波を反射可能なサイズを有するものであれば、上述した丸形以外の形状(例えば、多角形形状)であってもよい。例えば、反射部材106は、マイクロ波反射性を有する材料で構成されており、照射手段102が出射するマイクロ波を透過させない複数の孔を備えた板状の形状を有している部材であってもよい。
【0079】
また、反射部材106は、少なくともフィルタ105を通過した容器101内の内容物が通過可能であって、マイクロ波を反射可能な形状を有するものであれば、上記のような複数の孔を有する平板状の部材でなくても良く、どのような形状およびサイズを有するものであっても良い。例えば、反射部材106は、マイクロ波を通過させないサイズの開口部を複数有するメッシュ等であっても良い。また、反射部材106は、少なくともフィルタ105を通過した内容物が通過可能であって、マイクロ波を反射可能なものであれば、上記以外のものであってもよく、例えば、固相樹脂を通過可能な孔を有する多孔質の金属製のフィルタ等であっても良い。なお、反射部材106によって、フィルタ105を下から補強し、支持する場合、反射部材106の材料は、金属等の強度の高い材料であることが好ましい。
【0080】
フィルタ105は、容器101の高さの1/4以下の高さとなる位置に配置されることが、固相成長の処理が行なわれる領域を十分に確保するうえで好ましいが、1/4より高い高さ位置にフィルタ105を配置しても良い。
【0081】
反射部材106は、容器101を上下に仕切るように配置されている。反射部材106が容器101を仕切るように配置されているということは、例えば、反射部材106の上方から容器101内に出射されたマイクロ波が、反射部材106よりも下方に透過しないように、反射部材106が容器内に配置されていることである。また、容器101を上下に仕切るということは、例えば、容器101内を上下の領域に仕切ることと考えてもよい。例えば、本実施の形態においては、反射部材106の上面1061が水平となるよう、容器101内に反射部材106を配置することにより、反射部材106が、容器101を上下方向に仕切っており、反射部材106により、容器101内は、上部の領域101aと、下部の領域101bとに仕切られている。
【0082】
本実施の形態の処理装置1においては、マイクロ波反射性の材料により構成された容器101内に、照射手段102からマイクロ波を照射することにより、容器101内にマイクロ波を閉じ込めることができ、内容物に効率良くマイクロ波を照射することができる。また、容器101内のマイクロ波をマルチモードとすることができ、シングルモードと比べて、一箇所にマイクロ波を集中させないようにすることができ、内容物に対して、シングルモードの場合よりも均等にマイクロ波を照射することができる。このため、容器101を大型化しても効率良く均等にマイクロ波を内容物に照射することができることとなる。これにより、本実施の形態においては、容器101を大型化して、固相合成によるペプチド等の処理量を増加させることが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態の処理装置1は、フィルタ105を備えていることにより、内容物から固相樹脂を分離して容器101内に残すことができる。これにより、固相樹脂を分離した容器内101に、洗浄用の溶媒を供給して、固相樹脂を洗浄したり、固相樹脂を分離した容器101内に他の材料や溶媒、溶液等を供給して、一旦、固相樹脂を取り出すことなく、固相合成を構成する他の処理を行なうことが可能となる。
【0084】
ここで、大量の内容物を処理可能な大型の容器においては、排出口の大きさは、容器全体の大きさに対して小さくなる場合が多い。このため、本実施の形態の処理装置1のように、排出時に内容物が排出しやすいよう、容器101の下部が、上方から排出口1011に向かうに従って、太さが細くなる形状とする場合が多い。このような場合、上記のような固相樹脂を分離するためのフィルタ105を、排出口1011に近い場所に、容器101を上下に仕切るように配置すると、フィルタ105を排出口1011から離れた位置に配置した場合に比べて、フィルタ105の上面の面積が小さくなってしまう。このようにフィルタ105の上面1051の面積が小さくなると、内容物を排出する際に、内容物を濾過するスピードが低下するとともに、濾過されてフィルタ105上に残る固相樹脂によって、フィルタ105の孔が塞がれやすくなり、濾過のスピードが更に遅くなったり、濾過が止まってしまうことが考えられる。このため、本実施の形態のように、フィルタ105は、上記のように、排出口1011から高さ方向において離れた位置に容器101を上下に仕切るように配置することが、フィルタ105の上面の面積を広くするうえで好ましい。
【0085】
このような処理装置1において、固相合成に用いられる固相樹脂や溶媒等を含む内容物が、フィルタ105よりも上方の領域101aに供給されると、容器101内のフィルタ105よりも下方の領域101bには、フィルタ105が設けられているため、フィルタ105の上方の領域101aに保持される内容物から固相樹脂を除いたものがフィルタ105を通して供給されることとなる。なお、ここでの領域は、空間と考えてもよい。
【0086】
しかしながら、本実施の形態の処理装置1のように、固相樹脂を通過させないフィルタ105がマイクロ波透過性を有しており、容器101が反射性材料により構成されている処理装置においては、反射部材106を設けなかった場合、固相合成の処理を促進するために、フィルタの上方から照射されたマイクロ波は、マイクロ波透過性を有するフィルタ105を透過して、フィルタ105の下方の領域101bの内容物にも照射されることとなる。このフィルタ105の下方の領域101bの内容物には、アミノ酸の結合に用いられる固相樹脂を含まないため、このフィルタ105の下方の領域101bの内容物にマイクロ波を照射しても、固相合成の処理が行なわれることはなく、マイクロ波が、直接、固相合成に寄与せず、無駄なエネルギーを消費することとなる。特に、固相合成の処理量を増加させるために、容器101を大型化した場合、フィルタ105の下方の領域101bも大型化すると考えられることから、マイクロ波を効率的に利用できなくなることが考えられる。
【0087】
これに対し、本実施の形態の処理装置1においては、フィルタ105の下に、マイクロ波を反射する反射部材106を設けていることにより、フィルタ105の上方から照射されたマイクロ波は、マイクロ波透過性を有するフィルタ105を透過するが、その下の反射部材106で反射されて、固相樹脂を含む内容物が保持されているフィルタ105よりも上方の領域101aに戻されることとなるため、マイクロ波は、フィルタ105よりも下方の固相合成が行なわれない領域に照射されにくくすることができるとともに、反射部材106で反射されたマイクロ波も固相合成に利用でき、マイクロ波を効率的に固相合成に利用することが可能となる。特に、固相合成の処理量を増加させるために、容器101を大型化した場合、フィルタ105の下方の領域101bも大型化すると考えられることから、本実施の形態の処理装置1においては、無駄なエネルギー消費を抑えて、効率良く固相合成を行なうことが可能となる。また、反射部材106は、フィルタ105を通過した内容物が通過可能な形状およびサイズを有しているため、反射部材106が、内容物の排出等を妨げることはない。
【0088】
また、本実施の形態の処理装置1においては、フィルタ105が、金属等の反射性材料で構成された反射部材106上に重ねて配置されるため、反射部材106によって、その上面1061に配置されるフィルタ105を補強し、支持することができる。このため、例えば、単独では容器101を仕切るように配置することが困難な硬度の低い材料で構成されたフィルタ105や、シート状のフィルタ105等を、容器101内を仕切るように配置することができる。これにより、フィルタ105の選択の幅を広げることができる。
【0089】
以下、本実施の形態の処理装置1を用いた固相合成の処理の一例について説明する。ここでは、N末端が保護されたアミノ基が結合されている固相樹脂に対して、脱保護を行なって、更にアミノ基を脱水反応により結合させる処理について説明する。ただし、ここで固相合成に用いられる物質や、その配合等は一例であり、これ以外の物質等を用いても良いことはいうまでもない。また、ここで行なわれる処理の手順等も一例であり、これ以外の手順で処理を行なっても良い。また、容器101内において、ここで述べる処理以外の固相合成の処理を行なっても良いことはいうまでもなく、ここで述べる処理の一部の処理だけを行なっても良いことはいうまでもない。
【0090】
まず、バルブ103を閉じて排出口1011から内容物が排出されないようにした状態で、フィルタ105よりも上方に設けられた供給口1012を介して、DMF等を溶媒としたペピリジン溶液等の脱保護溶液と、N末端がfmoc等で保護されたアミノ基が結合されている固相樹脂と、を容器101内に供給する。そして、図示しないノズル等を介して窒素ガスを容器101内の内容物に供給して気泡により撹拌しながら、照射手段102から915MHzのマイクロ波を照射して、脱保護処理を行なう。容器101には、フィルタ105が設けられているため、フィルタ105の上方には、脱保護溶液と固相樹脂とが保持され、フィルタ105の下方には脱保護溶液だけが保持される。ただし、脱保護溶液は、フィルタ105や反射部材106を通過して移動する。照射手段102が出射したマイクロ波は反射部材106によりフィルタ105の上方の領域101aに反射されて、フィルタ105よりも下方の固相樹脂が存在しない領域101b、即ち脱保護処理が不要な領域には、マイクロ波は照射されにくくすることができる。
【0091】
脱保護処理が完了した後、バルブ103を開くと、容器101内の内容物のうちの、フィルタ105の下方に脱保護溶液は、排出口1011、バルブ103、および配管104を経て外部に排出され、フィルタ105の下方に脱保護溶液は、フィルタ105と、反射部材106とを通過後、排出口1011、バルブ103、および配管104を経て外部に排出される。容器101内の内容物のうちの脱保護された固相樹脂は、脱保護溶液から分離されて、フィルタ105の上面1051に残る。
【0092】
次に、容器101内に、DMFを供給して保持した後、DMFを排出して、フィルタ105の上面1051に残った脱保護された固相樹脂を洗浄する。この洗浄処理は複数回行なわれる。
【0093】
次に、脱保護された固相樹脂にアミノ酸を結合するために、HCTU(O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、DIPEA、FmocでN末端が保護された結合用のアミノ酸、および溶媒として用いられるDMFを、容器101内に供給し、DMFに、HCTU、DIPEA、結合用のアミノ酸を溶解し、照射手段102からマイクロ波を照射して、N末端が保護されたアミノ酸と、固相樹脂に結合された脱保護されたアミノ酸とを、脱水反応により結合する。上記と同様に、容器101には、フィルタ105が設けられているため、フィルタ105の上方の領域101aには、DMFに、HCTU、DIPEA、結合用のアミノ酸を溶解させた結合用の溶液と、脱保護された固相樹脂とが保持され、フィルタ105の下方の領域101bには結合用の溶液だけが保持される。ただし、結合用の溶液は、フィルタ105や反射部材106を通過して移動する。照射手段102が出射したマイクロ波は反射部材106により照射手段102の上方の領域101aに反射されて、照射手段102よりも下方の固相樹脂が存在しない領域101b、即ちアミノ酸を結合する処理が不要な領域には、マイクロ波は照射されにくくすることができる。
【0094】
アミノ酸の結合が終了した後、バルブ103を開くと、結合用の溶液は、容器101内から排出され、フィルタ105上面1051に、N末端が保護されたアミノ酸が新たに結合された固相樹脂が排出されずに残る。
【0095】
その後、上記と同様にDMFを用いた洗浄処理を複数回繰り返す。
【0096】
これにより、フィルタ105上面1051に、固相樹脂と結合されたペプチドを得ることができる。
【0097】
更に、ペプチドに新たなアミノ酸を結合させる場合には、上記の脱保護の処理と、アミン酸を結合する一連の処理を繰り返すようにすればよい。
【0098】
フィルタ105の上面1051に残った固相樹脂に結合されたペプチドからの固相樹脂を切り離す場合、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)とH
2Oとでフィルタ105の上面1051に残った固相樹脂を処理すればよい。また、切り離したペプチドは、例えば、エチルエーテル等で沈殿させ、乾燥すること等により収集する。
【0099】
以上、本実施の形態によれば、マイクロ波反射性を有する容器101内に、マイクロ波を照射するようにしたことにより、容器101を大型化して、固相合成によるペプチド等の処理量を増加させることが可能となる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、反射部材106上に、フィルタ105を重ねて配置したことにより、反射部材106がフィルタ105を透過したマイクロ波を反射して、フィルタ105の下方の固相樹脂が含まれない内容物にマイクロ波が照射されにくくすることができ、マイクロ波を効率良く固相合成の処理に利用することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、反射部材106上に、フィルタ105を重ねて配置したことにより、反射部材106により、フィルタ105を補強することができ、これにより、例えば、フィルタ105に求められる強度や硬さ等の制限を緩和して、フィルタ105の選択の幅を広げることができる。
【0102】
(変形例)
図3(a)〜
図3(c)は、本実施の形態の処理装置の変形例を説明するための断面図であり、
図1(b)に相当する断面図である。
【0103】
上記実施の形態においては、フィルタ105を反射部材106上に重ねて配置した場合について説明したが、フィルタ105と、排出口1011との間に反射部材106が配置すれば、フィルタ105を反射部材106上に直接重ねて配置しなくてもよい。例えば、
図3(a)に示すように、フィルタ105と反射部材106とが直接重ならないよう配置しても良い。このような場合においても、フィルタ105を透過したマイクロ波を、フィルタ105の下方に配置された反射部材106で反射して、反射部材106よりも下方の領域101bにマイクロ波が照射されることを防いで、マイクロ波を効率的に固相合成に利用することができる。ただし、この場合、フィルタ105と、反射部材106との間の、固相樹脂を含まない内容物には、マイクロ波が照射されることとなるため、フィルタ105を反射部材106上に重ねた場合に比べて、マイクロ波を効率的に利用できないことが考えられる。また、この場合、反射部材106により、フィルタ105を補強できないため、フィルタ105として、補強しなくても十分な強度を有するフィルタ105を用いるか、フィルタ105に対して別途、マイクロ波透過性を有する材料の補強部材(例えば、補強フレーム等)を取付けるようにすること等が必要となり、フィルタ105として利用できる材料や構造に制限が生じたり、補強部材等を設けることで構成が複雑化してコスト等が上昇することが考えられる。
【0104】
また、フィルタ105と、排出口1011との間に反射部材106が配置する代りに、
図3(b)に示すように、フィルタ105と、照射手段102との間に反射部材106を配置してもよく、このような場合においても、反射部材106でマイクロ波を反射することで、フィルタ105よりも下方の領域101bに、マイクロ波が照射されにくくして、マイクロ波を効率良く利用することが可能となる。ただし、この場合、フィルタ105よりも上方の領域101aに固相樹脂が存在するよう、反射部材101は固相樹脂を通過可能なものとする。例えば、反射部材101として、固相樹脂を通過可能な形状およびサイズを有するものを用いるようにする。なお、この場合、反射部材106と、フィルタ105との間の固相樹脂を含む内容物に対して、マイクロ波が照射されにくくなるため、反射部材106とフィルタ105との間の距離が広くなると、固相合成の処理の効率が低下する可能性がある。
【0105】
また、フィルタ105と、照射手段102との間に反射部材106を配置する場合の一態様として、
図3(c)に示すように、フィルタ105の上面1051側に反射部材106を重ねて配置するようにしても良い。この場合、反射部材106とフィルタ105との間の距離をなくして、上記のような固相合成の処理の効率低下を防ぐことができるとともに、フィルタ105を、反射部材106の下面に対して、接着剤等で接着したり、図示しない留め具や、ネジ等で留めることによって固定することで、フィルタ105を、反射部材106で補強することが可能となる。
【0106】
(実施の形態2)
本実施の形態の処理装置は、上記実施の形態1において説明した処理装置1において、フィルタ105と反射部材106とを用いる代りに、マイクロ波を反射するフィルタを用いるようにしたものである。
【0107】
図4は、本実施の形態における処理装置の一例を示す斜視図(
図4(a))、およびそのIVb−IVb線による断面図(
図4(b))である。ただし、
図4(b)においては、バルブの断面は省略している。
【0108】
本実施の形態の処理装置2は、容器101、照射手段102、バルブ103、配管104、およびフィルタ205を備える。容器101は、排出口1011、供給口1012、照射開口部1013を備える。なお、フィルタ205以外の構成については、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0109】
フィルタ205は、マイクロ波反射性材料であるステンレスで構成されたフィルタであり、固相樹脂を容器101内の内容物から分離するための複数の孔を有している。また、フィルタ205は、マイクロ波を反射するものであれば、その材料および形状等は問わない。フィルタ205は、例えば、ステンレス以外の金属等のマイクロ波反射性材料で構成されていても良い。ただし、フィルタ205は、耐腐食性に優れた化学的に安定な材料で構成されていることが好ましい。例えば、フィルタ205は、表面を、PTFE等の耐腐食性を有するマイクロ波透過性を有する材料でコーティングした金属製のフィルタ等であっても良い。フィルタ205が有する固相樹脂を容器101内の内容物から分離するための複数の孔のサイズ等については、上記実施の形態のフィルタ105が有する孔と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。ステンレス等の金属製のフィルタとしては、例えば、複数の金属メッシュ等を重ねて焼結して一体化した金属フィルタ等が知られている。
【0110】
フィルタ205は、上記実施の形態のフィルタ105と同様に、排出口1011と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に、容器101を仕切るよう配置されている。
【0111】
なお、フィルタ205が、ステンレス等の金属製のフィルタである場合、厚さによっては単独で容器101内にフィルタを配置することが可能であるが、硬さや強度が不足していることにより、フィルタ205を、単独で容器101内に配置することが困難である場合には、補強用のフレーム等をフィルタ205に取付けるようにしてもよい。
【0112】
このような本実施の形態においても、上記実施の形態と同様に、容器101を大型化して、固相合成によるペプチド等の処理量を増加させることができるとともに、フィルタ205の下方の領域101bには、固相樹脂が含まれないため、、フィルタ205により、照射手段102から照射されたマイクロ波を、フィルタ205の上方の領域101aに反射することにより、フィルタ205の下方の固相樹脂が含まれない内容物にマイクロ波が照射されにくくすることができ、マイクロ波を効率良く固相合成の処理に利用することができる。
【0113】
なお、上記各実施の形態においては、処理装置1および2を固相樹脂に結合されたペプチドを合成する固相合成に用いる場合について説明したが、処理装置1および2を用いて行なわれる処理は、ペプチドの固相合成の処理に限られるものではない。
【0114】
例えば、上記各実施の形態においては、固形物である固相樹脂を分離するフィルタ105またはフィルタ205を用いて、内容物である分離対象である固相樹脂をフィルタ105またはフィルタ205で分離するようにしたが、上記各実施の形態において説明した処理装置1および2において、フィルタ105およびフィルタ205を、それぞれ、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタとすることで、処理装置1および2を、容器101内の内容物から、分離対象となる固形物を分離する工程を含む処理に利用できるようにしても良い。なお、この場合のフィルタ105およびフィルタ205は、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有する点を除けば、上記各実施の形態のフィルタ105および205と同様のものとする。例えば、この場合のフィルタ105およびフィルタ205の材質等は上記各実施の形態のフィルタ105および205と同じものとする。ここでの内容物は、例えば、液体を有する内容物である。この液体は、例えば、原料等の処理対象であってもよく、溶媒等であっても良く、その成分等は問わない。この液体は、例えば、溶媒等に物質が溶解した溶液であっても良い。ここでの固形物とは、例えば、固体の状態のものである。なお、固形物は、流動性を有さないものであって、フィルタ等で分離できるものと考えてもよい。例えば、ゲル状のものを、固形物と考えてもよい。分離対象となる固形物は、例えば、内容物の液体中において、流動性を有するような形状やサイズを有していることが好ましい。分離対象となる固形物は、態様の固形物であってもよく、例えば、粒状や、小片状、粉体状の固形物である。分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタ105および205は、例えば、液体および分離対象となる固形物よりも小さいサイズの固形物を通過させて、分離対象となる固形物以上のサイズの固形物を通過させないフィルタである。例えば、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタ105および205は、分離対象となる固形物のサイズよりも小さい孔であって、液体および分離対象となる固形物よりも小さいサイズの固形物を通過可能なサイズの孔を複数有するフィルタである。容器101内の内容物は、例えば、液体と、分離対象となる固形物とを有している。内容物は、例えば、分離対象となる固形物の懸濁液であっても良い。フィルタ105および205を通過する内容物は、例えば、内容物中の分離対象となる固形物を除いた部分である。フィルタ105および205を通過する内容物は、例えば、内容物中の液体である。なお、容器101内の内容物は、例えば、分離対象の固形物よりもサイズが小さい分離対象以外の固形物を有していても良い。この場合、フィルタ105および205を通過する内容物は、例えば、内容物中の液体および分離対象の固形物よりもサイズが小さい分離対象以外の固形物である。
【0115】
上記のようにフィルタ105およびフィルタ205を、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタとした処理装置1および2は、例えば、容器101内にマイクロ波を照射する工程と、容器101内の液体を有する内容物から、分離対象となる固形物を分離する工程とを含む処理に利用可能な装置である。ペプチドの固相合成もこのような処理の一例と考えてもよい。
【0116】
なお、上記実施の形態1の変形例において、反射部材106をフィルタ105と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に配置する際に、反射部材106として、固相樹脂を通過可能な反射部材106を用いるようにしたが、フィルタ105およびフィルタ205を、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタを用いる場合、フィルタ105と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に配置する反射部材106は、フィルタ105の分離対象となる固形物を通過可能な反射部材であればよい。この場合の反射部材106は、フィルタ105の分離対象となる固形物を通過可能なものである点を除けば、上記実施の形態1の変形例の反射部材106と同じものであれば良い。
【0117】
フィルタ105および205を用いて分離される分離対象となる固形物は、例えば、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた固形物であっても良く、容器101内においてマイクロ波を照射する処理等を行なうことによって生成された固形物であっても良い。
【0118】
マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた分離対象となる固形物とは、例えば、流動床の固体触媒や、マイクロ波の吸収性を調節するために用いられる流動性が得られるサイズ等を有するサセプタや、他の物質を吸着する吸着材や、固相単体等の処理に利用される固形物である。流動床の固体触媒としては、例えば、パラジウム炭素(Pd/C)触媒、白金炭素(Pt/C)触媒、固体酸触媒、ゼオライト系触媒等が挙げられる。また、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた分離対象となる固形物とは、固形状の不純物等であってもよい。
【0119】
マイクロ波を照射する処理等を行なうことによって生成された分離対象となる固形物とは、例えば、マイクロ波を照射した容器101内で、内容物中の液体から化学反応等により生成された固形物であってもよく、マイクロ波を照射した容器101内で、内容物中の液体が固化したり、結晶成長したりすることによって生成された固形物であっても良い。
【0120】
また、マイクロ波を照射する処理等を行なうことによって生成された固形物とは、例えば、マイクロ波を照射した容器101内で、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた固形物と他の物質とを化学反応させること等により生成した固形物であってもよく、マイクロ波を照射した容器101内で、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた固形物を化学反応させること等によって分解した固形物であってもよく、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれていた固形物の表面に、マイクロ波を照射して、同じ物質または異なる物質が、吸着、接着、成長させることで生成した固形物であってもよい。なお、ここで述べた他の物質や同じ物質は、固体であっても良く、液体であっても良く、気体であってもよい。なお、マイクロ波を照射する処理等を行なう前から内容物に含まれている固形物は、容器101内の少なくともフィルタ105および205の上方に入れられているようにすることが好ましい。
【0121】
分離対象となる固形物は、処理装置1および2を用いた処理の対象となる固形物や、処理によって生成される固形物等の処理の目的物であっても良く、触媒やサセプタ等の処理に利用される固形物であっても良く、不要物であっても良く、これらの2以上が混合されているものであっても良い。分離対象となる固形物のサイズ等は問わない。分離対象となる固形物は、例えば、析出物であっても良い。分離対象となる固形物は、内容物中の、浮遊物や沈殿物であっても良い。処理装置1および2において行なわれる処理がペプチドの固相合成である場合の分離対象となる固形物は、例えば、固相樹脂である。
【0122】
容器101内の内容物には、マイクロ波を照射する処理等を行なう前に、予め分離対象となる固形物が含まれていても良く、含まれていなくても良い。
【0123】
上記のようにフィルタ105およびフィルタ205を、分離対象となる固形物を分離するための複数の孔を有するフィルタとした処理装置1および2を用いて行なわれる処理は、例えば、内容物から分離対象となる固形物を分離する工程を1以上含む処理であればよい。例えば、このような処理装置1および2を用いて行なわれる処理は、液体を含む内容物に対してマイクロ波を照射し、フィルタ105または205を用いて内容物から分離対象となる固形物を分離した後の処理として、容器101内に内容物として液体等を追加する工程と、容器101内にマイクロ波を照射する工程と、フィルタ105または205を用いて内容物から分離対象となる固形物を分離する工程と組、および容器101内に内容物として液体等を追加する工程と、フィルタ105または205を用いて内容物から分離対象となる固形物を分離する工程と組、の少なくとも一方が1以上行なわれる処理であってもよい。
【0124】
以下、上記各実施の形態において説明した処理装置1および2の処理装置を、ペプチドの固相合成以外の処理に用いる具体例について説明する。
【0125】
(A)固形物と液体とを用いて固形物を生成する処理に用いる例
上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、例えば、水熱合成によるゼオライト合成に用いても良い。例えば、Al(アルミニウム)源として、金属アルミニウムやアルミン酸ソーダ、水酸化アルミニウムなどを用い、Si(ケイ素)源としてシリカ粉末やシリカゲルなどを用い、アルカリ(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)と水存在下、マイクロ波照射による高温高圧熱水条件にて反応を行なうことで、結晶性アルミノケイ酸塩のゼオライト多結晶膜を生成することができる。処理が終了した後、フィルタ105または205で、固形物であるゼオライト多結晶膜を分離することで、生成された物質を内容物から分離することができる。この場合、フィルタ105またはフィルタ205としては、分離対象となる固形物であるゼオライト多結晶膜を分離するための複数の孔を備えたフィルタを用いる。
【0126】
(B)固形物の触媒を用いた処理に用いる例
(B−1)
上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、例えば、バイオディーゼル燃料として利用可能なメチルエステルを生成する処理に用いても良い。例えば、容器101に、廃食用油などの油脂(トリグリセリド)を多く含む物質と、流動床の固体触媒とを入れ、容器101内にマイクロ波を照射することで、上記の物質のエステル交換反応と、遊離脂肪酸のエステル化反応とが一の容器内で同時に行なわれて、メチルエステルが生成される。ここで用いる固体触媒は、例えば、照射するマイクロ波に適した誘電損失係数・磁性損失係数の大きい特性をもつ物質と反応活性点を有する物質を組み込んだハイブリッド固体触媒である。この処理においては、容器101内に処理対象となる物質等を入れるとともに、固体触媒を、フィルタ105または205の上方に入れるようにして、マイクロ波を照射し、生成物の生成が終了した後、フィルタ105または205で、固形物である固体触媒を分離することで、生成された物質を含む内容物から固体触媒を除去することができる。
【0127】
なお、フィルタ105またはフィルタ205としては、分離対象となる固形物である固体触媒を分離するための複数の孔を備えたフィルタを用いる。かかることは、以下に説明するような他の流動床の固体触媒を用いた処理においても同様である。
【0128】
(B−2)
上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、例えば、鈴木−宮浦カップリングに代表されるPd(パラジウム)固体触媒反応に用いても良い。この処理は、例えば、ハロゲン化合物と有機ボロン酸化合物を原料とし、マイクロ波の吸収能が高い活性炭などの表面に金属Pdを担持させた流動床のPd/C(パラジウム/カーボン)固体触媒を用いて、トルエン等のマイクロ波を吸収能の低い溶媒中でマイクロ波を照射してクロスカップリングを行なうことにより、ビアリール化合物などの芳香環−芳香環結合を有する物質を生成する処理である。この処理においては、この処理においては、容器101内に処理対象となる物質等を入れるとともに、固体触媒を、フィルタ105または205の上方に入れるようにして、マイクロ波を照射し、生成物の生成が終了した後、フィルタ105または205で、固形物である固体触媒を分離することで、生成された物質を含む内容物から固体触媒を除去することができる。
【0129】
(B−3)
上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、例えば、アルミナ、シリカゲルなどの固相担体の広い表面を利用した、マイクロ波照射無溶媒反応に用いても良い。例えば、アルミナ、シリカゲルなどの多孔質の固相担体と触媒と塩基とを混合した流動床の固体触媒に、原料を混合したものを用いて、無溶媒で、マイクロ波を照射して種々の有機合成を行なうことで、種々の合成生成物を得ることができる。この処理においては、固体触媒を、フィルタ105または205の上方に入れるようにして、マイクロ波を照射し、生成物の生成が終了した後、フィルタ105または205で、固形物である固体触媒を分離することで、生成された物質を含む内容物から固体触媒を除去することができる。
【0130】
(C)マイクロ波サセプタを用いた処理に用いる例
上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、例えば、マイクロ波を吸収しやすいSiC(炭化ケイ素)や、カーボン、フェライトなどのマイクロ波サセプタ(固形物)を利用する合成反応に用いても良い。例えば、マイクロ波吸収能の低いトルエン溶媒等の溶媒中において、原料と、マイクロ波サセプタの小片を共存させた状態で、マイクロ波を照射して加熱することで、種々の合成生成物を得ることができる。この処理において、原料を容器101内に入れるとともに、マイクロ波サセプタを、フィルタ105または205の上方に入れるようにしてマイクロ波を照射し、処理が終了した後、フィルタ105または205で、固形物であるマイクロ波サセプタを分離することで、生成された物質を含む内容物からマイクロ波サセプタを除去することができる。この場合、フィルタ105またはフィルタ205としては、分離対象となる固形物であるマイクロ波サセプタを分離するための複数の孔を備えたフィルタを用いる。
【0131】
(D)ペプチドの固相合成以外の固相合成に用いる例
例えば、上記各実施の形態において説明した処理装置1および2を、ペプチドの固相合成以外の固相樹脂等を用いた固相合成、例えば、DNAの固相合成に用いても良い。DNA等の固相合成については、公知技術であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0132】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【解決手段】マイクロ波反射性材料により構成されており、下部に排出口1011を有する容器101と、マイクロ波を容器内に照射する照射手段102と、排出口1011と照射手段102がマイクロ波を出射する位置との間に、容器101を仕切るよう配置されており、マイクロ波透過性材料により構成され、分離対象となる固形物を容器内の内容物から分離するための複数の孔を有するフィルタ105と、フィルタ105と排出口1011との間に、容器101を仕切るよう配置されており、フィルタ105を通過した内容物が通過可能であり、マイクロ波を反射する反射部材106とを備えた。