(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該ラック部と該ギヤ部とは、該移動部が該往復動可能な範囲のいずれの位置にある場合であっても、該ラック部と該ギヤ部との噛合が維持されるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の打込機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述の打込機においては、フライホイールに蓄積された回転エネルギを従動回転軸に伝達し、駆動子を高速移動させて止具を打込む構成であるため、クラッチリング、ソレノイド等の様々な部品が必要であり、構造が複雑化するという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、構造を簡素化し、軽量で使い勝手の良い打込機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に収容され出力軸を有し該出力軸を回転させる駆動源と、止具を打出す打出孔が形成されたノーズ部と、該ハウジング内に往復動可能に設けられ、該往復動方向における打撃方向への移動によって該ノーズ部に位置する該止具を打撃する移動部と、該出力軸の回転によって該移動部を反打撃方向に移動させる駆動伝達機構と、該移動部の該反打撃方向への移動によってエネルギが蓄積され、蓄積されたエネルギの解放によって該移動部を該打撃方向に移動させるエネルギ蓄積部と、該出力軸と該駆動伝達機構との接続を選択的に遮断するクラッチ機構と
、該移動部の該反打撃方向への移動を規制する規制部と、該移動部が該規制部に当接している状態を検出する当接検出部と、該移動部と該規制部との当接が解除された場合に該出力軸の回転を停止させる停止手段と、を備え、該駆動伝達機構は、該往復動方向に沿って延び該移動部に固定されたラック部と、該ラック部と噛合し該ハウジングに回転可能に支持され自身の回転によって該ラック部を介して該移動部を該反打撃方向に移動させるギヤ部と、を有し、該クラッチ機構は、該駆動伝達機構が該移動部を該反打撃方向に移動させ
該移動部が該規制部に当接した後に、該出力軸と該駆動伝達機構との接続を遮断するように構成されていることを特徴とする打込機を提供する。
【0007】
このような構成によると、駆動伝達機構は、ラック部及び当該ラック部と噛合するギヤ部、いわゆるラックアンドピニオン機構を備え、当該ラックアンドピニオン機構を用いて移動部を反打撃方向に移動させエネルギ蓄積部にエネルギを蓄積させることができる。また、クラッチ機構を用いて出力軸と駆動伝達機構との接続を遮断することで当該蓄積されたエネルギを解放して移動部を打撃方向に移動させることができる。これらにより、エネルギ蓄積部にエネルギを蓄積させるための構成及び移動部を打撃方向に移動させるための構成を簡素化することができ、打込機全体の構造を簡素化することができる。さらに、クラッチ機構を用いて駆動伝達機構と出力軸との接続を遮断することで移動部を打撃方向に移動させる構成、すなわち移動部を下方に移動させる際に移動部と他の部材との接続自体を必要としない構成であるため、構造を簡素化でき、軽量で使い勝手の良い打込機を実現することができる。
【0008】
上記構成において、該クラッチ機構は、該ハウジング内に回転可能に設けられ該駆動伝達機構と係合可能な係合部を有し、該係合部と該駆動伝達機構との係合によって該駆動伝達機構と該出力軸とを接続し、該係合部と該駆動伝達機構との係合の解除によって該駆動伝達機構と該出力軸との接続を遮断するように構成されていることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、係合部と駆動伝達機構と係合及び当該係合の解除という簡易な動作で駆動伝達機構と出力軸との接続及び当該接続の遮断を実現することができる。これによりクラッチ機構の構成を簡素化することができ、打込機全体の構造を簡素化することができる。
【0010】
また、該クラッチ機構は、該ハウジング内に回転可能に設けられ自身の回転によって該係合部を回転させる回転支持軸を有することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、回転支持軸を回転させるという簡易な構成で係合部を回転させることができる。
【0012】
また、該回転支持軸は、該移動部が該反打撃方向に移動するに従って、自身の回転トルクを増加させ、該係合部は、該回転支持軸の軸心方向に移動可能に設けられ、該回転トルクが所定値を超えた場合に、該軸心方向における該駆動伝達機構から離間する離間方向に移動を開始し、該係合部と該駆動伝達機構との係合は、該係合部の該離間方向への移動によって解除されるように構成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、当該所定値を調整することで、係合部と駆動伝達機構との係合が解除されるまでに移動部が反打撃方向へ移動する距離を調整することができる。これにより、移動部の打込時の移動距離(打撃ストローク)を調整でき、言い換えれば、打込機の打込力を調整でき、打込機の設計の自由度を向上させることができる。
【0014】
また、該クラッチ機構は、該係合部を反離間方向に付勢する付勢部を有し、該回転支持軸には、該軸心方向と交差する方向に延びるボール溝が外周面に形成され、該係合部は、該ボール溝に収容されたカムボールを介して該回転支持軸に設けられ、該カムボールの該ボール溝に沿った移動によって該付勢部の付勢力に抗して該離間方向に移動するように構成され、該所定値は、該ボール溝と該軸心方向との交差角度に依存することが好ましい。
【0015】
このような構成によると、当該所定値をボール溝と軸心方向との交差角度を変更するという簡易な設計変更で調整可能となる。これにより、移動部の打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち打込機の打込力を簡易な設計変更で調整可能となる。
【0016】
また、該クラッチ機構は、該係合部を反離間方向に付勢する付勢部を有し、該係合部は、該駆動伝達機構と係合している状態において該駆動伝達機構と当接し該軸心方向に対して傾斜する傾斜滑面を有し、該傾斜滑面が該駆動伝達機構に対して滑ることにより該付勢部の付勢力に抗して該離間方向に移動するように構成され、該所定値は、該軸心方向に対する該傾斜滑面の傾斜角度に依存することが好ましい。
【0017】
このような構成によると、当該所定値を軸心方向に対する傾斜滑面の傾斜角度を変更するという簡易な設計変更で調整可能となる。これにより、移動部の打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち打込機の打込力を簡易な設計変更で調整可能となる。
【0018】
また、該係合部は、該係合部と該駆動伝達機構とが係合した状態において該移動部を該反打撃方向に移動させるために第1回転方向に回転するように構成され、該ハウジングと該係合部との間には、該係合部の該第1回転方向への回転を許容し該第1回転方向とは逆方向の第2回転方向への回転を規制する逆回転規制機構が設けられていることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、逆回転規制機構が係合部の第2回転方向への回転を規制するため、係合部と駆動伝達機構とが係合した状態で係合部が第2回転方向に回転しながら移動部が打撃方向に移動して止具を打込んでしまうことを抑制することができる。これにより、仕上げ程度を良好に維持し且つ作業性を向上させることができる。
【0020】
また、該回転支持軸は、該係合部と該駆動伝達機構とが係合した状態において該移動部を該反打撃方向に移動させるために第1回転方向に回転するように構成され、該ハウジングと該回転支持軸との間には、該回転支持軸の該第1回転方向への回転を許容し該第1回転方向とは逆方向の第2回転方向への回転を規制する逆回転規制機構が設けられていることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、逆回転規制機構が回転支持軸の第2回転方向への回転を規制するため、係合部と駆動伝達機構とが係合した状態で係合部が第2回転方向に回転しながら移動部が打撃方向に移動して止具を打込んでしまうことを抑制することができる。これにより、仕上げ程度を良好に維持し且つ作業性を向上させることができる。
【0022】
また、該逆回転規制機構は、ワンウェイクラッチを有することが好ましい。
【0023】
このような構成によると、比較的簡易な構成であるワンウェイクラッチを用いて逆回転規制機構を実現することができる。
【0024】
また、該ラック部と該ギヤ部とは、該移動部が該往復動可能な範囲のいずれの位置にある場合であっても、該ラック部と該ギヤ部との噛合が維持されるように構成されていることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、移動部の位置によらずラック部とギヤ部との噛合が常に維持されているため、ラック部とギヤ部との噛合及び当該噛合の解除が繰り返されることがない。これにより、当該噛合が解除されている状態から再度噛合する際に発生し得るラック部の歯の先端部とギヤ部の歯の先端部との衝突による破損を抑制することができる。また、再度の噛合を行う際のそれぞれの歯の先端部どうしの衝突を回避するために、ラック部とギヤ部との位置関係を細かく調整する必要がない。
【0026】
また、該移動部の該反打撃方向への移動を規制する規制部をさらに備え、該クラッチ機構は、該移動部が該規制部に当接した後に該出力軸と該駆動伝達機構との接続を遮断するように構成されていることが好ましい。
【0027】
このような構成によると、規制部によって移動部の反打撃方向への移動距離が規制され、且つ移動部が規制部に当接した後に出力軸と駆動伝達機構との接続が遮断されるため、移動部の打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち打込機の打込力を一定に保つことができる。これにより、作業の安定性を向上させることができ、作業の仕上げ程度をより良好にすることができる。
【0028】
また、該移動部が該規制部に当接している状態を検出する当接検出部と、該移動部と該規制部との当接が解除された場合に該出力軸の回転を停止させる停止手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0029】
このような構成によると、クラッチ機構が出力軸と駆動伝達機構との接続を遮断した際、すなわち移動部が打撃方向に移動を開始した際に出力軸の回転を停止することができる。これにより、打込動作が完了後に回転軸3Aが回転を継続して打込動作が再度開始される誤動作すなわち二度打ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の打込機によれば、構造を簡素化し、軽量で使い勝手の良い打込機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について
図1乃至
図16を参照しながら説明する。以下の説明において、具体的な数値に言及した場合、例えば、角度について「90°」、回転数について「2000rpm」、時間について「20ms」等のように言及した場合、当該数値と完全に一致する場合だけでなく、当該数値と略同一である場合も含むものとする。また、位置関係等に言及した場合、例えば、平行、直交、反対等のように言及した場合、完全に平行、直交、反対等である場合だけでなく、略平行、略直交、略反対等である場合を含むものとする。
【0033】
最初に、本発明の第1の実施の形態による打込機の一例である釘打機1について
図1乃至
図7を参照しながら説明する。
【0034】
図1及び
図2に示されているように釘打機1は、ハウジング2と、モータ3と、動力伝達部4と、ピストン5Aを有する打撃部5と、ノーズ部6と、マガジン7とを備えている。釘打機1は、電動式であって、打撃部5が上死点から下死点へ高速で移動することで釘Nを木材等の被打込材に打込む工具である。
図1は、釘打機1全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、ピストン5Aが上死点に位置している状態を示す図である。
図2は、釘打機の前部を示す
図4のII−II断面図であり、ピストン5Aが下死点に位置している状態を示す図である。なお、
図1においてノーズ部6に対してマガジン7が設けられている方向を後方向、後方向と逆の方向を前方向と定義する。また、モータ3に対してマガジン7が設けられている方向を下方向と定義し、下方向と逆の方向を上方向と定義する。さらに、釘打機1を後方から見た場合の左を左方向、右を右方向と定義する。
【0035】
ハウジング2は、釘打機1の外郭をなす部分であり、ナイロンまたはポリカーボネイト等の樹脂から構成されている。ハウジング2は、ハンドル部21と、モータ収容部22と、後部接続部23と、打撃部収容部24とを有している。
【0036】
ハンドル部21は、釘打機1が使用される際にユーザによって把持される部分であり、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。ハンドル部21は、トリガ21A及びスイッチ機構21Bを備えている。トリガ21Aは、モータ3の駆動を操作するためのスイッチであり、ハンドル部21の前部下側に設けられている。スイッチ機構21Bは、ハンドル部21内部の前部に収容されており、トリガ21Aが上方に押し込まれた場合にオンとなる。
【0037】
モータ収容部22は、前後方向に延びており、モータ3及び動力伝達部4を備えている。モータ3は、モータ収容部22内部の後方に収容されており、回転軸3Aを有している。回転軸3Aは、前後方向に延びる軸であってモータ3の駆動によって回転する。モータ3は本発明の駆動源の一例であり、回転軸3Aは本発明の出力軸の一例である。
【0038】
動力伝達部4は、減速機構41と、クラッチ機構42と、駆動部43とを備えており、モータ3の回転軸3Aの回転力(動力)を打撃部5に伝達する。
【0039】
減速機構41は、回転軸3Aの回転をその回転速度よりも遅い回転速度でクラッチ機構42に伝達する遊星歯車機構であり、モータ収容部22内部においてモータ3の前方に設けられている。減速機構41は、回転軸3Aの周囲に配置され回転軸3Aと噛合した複数の遊星ギヤと、回転軸3Aと同軸に配置されたリングギヤと、回転軸3Aと同軸に設けられたキャリア41Aを有している。キャリア41Aは、その前端が動力伝達部4と接続されており、減速された回転軸3Aの回転を動力伝達部4に伝達する。またキャリア41Aは、モータ3が駆動して回転軸3Aが回転することによって前面視において時計回りに回転する。本実施の形態において減速機構41は、多段の遊星歯車機構であるが一段の遊星歯車機構であっても良い。
【0040】
図3に示されているようにクラッチ機構42は、モータ収容部22内部において減速機構41の前方に設けられており、回転支持軸44と、第1カムボール45と、第2カムボール46と、係合部47と、スプリング48とを備えている。クラッチ機構42は、回転軸3Aの回転(回転力)を減速機構41を介して駆動部43に伝達するとともに当該伝達を遮断可能に構成されている。言い換えれば、クラッチ機構42は、モータ3の回転軸3Aと駆動部43とが接続された状態と当該接続が遮断された状態とを選択的に切替可能に構成されている。
図3は、釘打機1のクラッチ機構42及び駆動部43を示す
図1の部分拡大図である。
【0041】
回転支持軸44は、キャリア41Aの前端から前方に延びる軸であって、キャリア41Aと同軸に一体回転するようにボールベアリング22Aに支承されている。回転支持軸44は、モータ3の駆動すなわち回転軸3Aの回転によって
図3に示されている軸Aを中心に回転方向R(前面視において時計回り)に回転する。また、回転支持軸44には第1溝44a及び第2溝44bが形成されている。
【0042】
第1溝44aは、回転支持軸44の外周面の前後方向略中央において、回転支持軸44の半径方向内方に窪んで形成されている。また第1溝44aは、回転支持軸44の回転方向(前面視おける時計回り)において上流側から下流側に向かうに従って前方に向かうように形成されており、側面視において回転支持軸44の軸心方向(軸Aの延びる方向、前後方向)と交差している。第2溝44bは、第1溝44aと同一形状をなし、回転支持軸44の外周面において回転支持軸44の軸心に関して対称な位置に形成されている。第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれは、本発明のボール溝の一例である。
【0043】
第1カムボール45は、略球形状をなす金属部材であり、第1溝44aにその一部が収容されており、第1溝44aに沿って移動可能に設けられている。第2カムボール46は、第1カムボール45と同一形状をなす金属部材であり、第2溝44bにその一部が収容されており、第2溝44bに沿って移動可能に設けられている。第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれは、本発明のカムボールの一例である。
【0044】
係合部47は、回転支持軸44上に第1カムボール45及び第2カムボール46を介して設けられており、円筒部47Aと拡径部47Bとを備えている。また係合部47は、回転支持軸44に対して前後方向に所定量相対移動可能であり、且つ所定量相対回転可能である。円筒部47Aは、前後方向に延びる筒形状をなしており、その内壁には半径方向外方に窪む第1スプライン溝47a及び第2スプライン溝47bが形成されている。
【0045】
第1スプライン溝47aは、円筒部47Aの内周面の前端から後方に延びる溝であり、円筒部47Aの前後方向長よりも短く形成されている。第1スプライン溝47aは、第1カムボール45の一部を収容しており、回転方向Rにおける円筒部47Aと第1カムボール45との相対移動を規制している。また、第1スプライン溝47aの後端部と第1カムボール45とが当接した状態(
図3の状態)において、円筒部47Aの第1カムボール45に対する前方への移動は規制されている。第2スプライン溝47bは、第1スプライン溝47aと同一形状をなし、円筒部47Aの軸心(軸A)に関して対称に形成されている。また、第2スプライン溝47bと第2カムボール46との関係は、第1スプライン溝47aと第1カムボール45との関係と同様である。
【0046】
拡径部47Bは、円筒部47Aの前端部の外周面から半径方向外方に拡径しており、円筒部47Aと一体に形成されている。また拡径部47Bは、係合爪47Cを備えている。係合爪47Cは、拡径部47Bの前面から前方に突出しており、回転方向Rにおける係合爪47Cの下流側の面は駆動部43と係合可能に構成されている。また、係合爪47Cの前後方向の長さは、係合部47の前後方向における回転支持軸44に対する相対移動可能な距離よりも短く構成されている。
【0047】
スプリング48は、前後方向に延びる圧縮コイルバネであり、所定量圧縮された状態で回転支持軸44に設けられており、係合部47を前方に付勢している。スプリング48の後端部はキャリア41Aの前端面と当接し、スプリング48の前端部は円筒部47Aの後端面と当接している。スプリング48は、本発明の付勢部の一例である。
【0048】
駆動部43は、ハウジング2のモータ収容部22の内部においてクラッチ機構42の前方に位置しており、被係合部43A及びギヤ部43Bを備えている。
【0049】
被係合部43Aは、ギヤ部43Bと一体に形成された略円筒形状をなす部分であり、ボールベアリング22B及び軸受22Cを介して回転支持軸44上に回転支持軸44に対して相対回転可能に設けられている。また被係合部43Aは、被係合爪43Cを備えている。
【0050】
被係合爪43Cは、被係合部43Aの後面から後方に突出しており、被係合爪43Cの回転方向Rにおける上流側の面は、係合部47の係合爪47Cと係合可能に構成されている。また、被係合爪43Cの前後方向の長さは係合爪47Cの前後方向の長さと略等しく構成されている。
【0051】
ギヤ部43Bは、前面視において略円形状をなしており、被係合部43Aと一体に形成され、回転支持軸44にボールベアリング22Aを介して被係合部43Aと一体回転可能に支承されている。ギヤ部43B及び被係合部43Aは、係合爪47Cと被係合爪43Cとが係合した状態(
図3の状態)でモータ3が駆動し回転軸3Aが回転することによって軸Aを中心に回転方向Rに一体に回転する。
図3及び
図4に示されているようにギヤ部43Bの外周面には、歯部43Dが形成されており、後述のロッド5Bのラック部5Cと噛合している。なお、
図4は打撃部5及び駆動部43を示す
図2のIV−IV断面図であり、(a)は打撃部5が下死点に位置する場合、(b)は打撃部5が上死点に位置する場合を示している。
【0052】
図1に示されているように後部接続部23は、上下方向に延び、ハンドル部21の後部とモータ収容部22の後部とを接続している。後部接続部23は、制御部23A及び電源接続部23Bを備えている。制御部23Aは、図示せぬ電気回路及びFET等のスイッチング素子を含む平板形状の基板であって、後部接続部23内部に収容されている。制御部23Aは、モータ3、スイッチ機構21B、後述の位置検出部25Bのそれぞれと接続されており、スイッチ機構21B及び位置検出部25Bのそれぞれが出力する信号に基づいてモータ3の制御を行う。
【0053】
電源接続部23Bは、後部接続部23の後面に上下方向に延びて形成されており、電池パックPを装着可能である。電池パックPは、その内部にモータ3の電力源となる複数の二次電池セルを有している。電源接続部23Bは、電池パックPが装着された状態で当該二次電池セルの電力をモータ3及び制御部23Aに供給可能に構成されている。
【0054】
図1、
図2及び
図4に示されているように打撃部収容部24は、上下方向に延び、ハンドル部21の前部及びモータ収容部22の前部に接続されている。打撃部収容部24は、シリンダ25と、ピストンバンパ26と、打撃部5とを備えている。また、打撃部収容部24の内部には蓄圧室24aが画成されている。
【0055】
シリンダ25は、打撃部収容部24の内部に配置され、上下方向に延びる略円管形状をなしており、移動規制部25A及び位置検出部25Bを備えている。シリンダ25は、後述のピストン5Aの上下方向の移動を案内するとともに、ピストン5Aの上下方向以外の方向への移動を規制する。上下方向は、本発明の往復動方向の一例である。
【0056】
移動規制部25Aは、シリンダ25の上端部の内面からシリンダ25の半径方向内方に突出するように形成されており、上面視において環形状をなしている。移動規制部25Aの内径は、シリンダ25の移動規制部25Aが形成されていない部分の内径よりも小さく構成されており、ピストン5Aの上方向への移動を規制している。移動規制部25Aは、本発明の規制部の一例である。
【0057】
位置検出部25Bは、打撃部5が上死点に位置していること、すなわちピストン5Aが移動規制部25Aに当接していることを検出するマイクロスイッチであって、シリンダ25の上端部に設けられている。位置検出部25Bは、打撃部5と当接可能な腕部25Cを有しており、腕部25Cが打撃部5と当接し押し上げられている状態でオン状態となる。位置検出部25Bは、当該オン状態である間、制御部23Aに信号を出力し続ける。位置検出部25Bは、本発明の当接検出部の一例である。
【0058】
ピストンバンパ26は、シリンダ25の下端部に設けられた緩衝材であって、打込時にピストン5Aが下方に移動した際にピストン5Aと当接し、圧縮されることで衝撃を吸収する。また、ピストンバンパ26は、ピストン5Aの下方への移動を規制している。
【0059】
打撃部5は、下方へ移動して釘Nを打撃し被打込材へ釘Nを打込む部材であって、ピストン5Aと、ロッド5Bと、ラック部5Cとを備えている。ピストン5Aは、上下方向に延びる筒状部の下部が閉塞された形状をなしており、シリンダ25の上端部に位置する上死点と下部に位置する下死点との間を往復摺動可能にシリンダ25内に支持されている。ピストン5Aの筒状部には、ピストン5Aが上死点に位置する場合に位置検出部25Bの腕部25Cを押し上げる突起5Dが形成されている。ピストン5Aの外周面には図示せぬOリングが設けられており、Oリングは、シリンダ25内におけるピストン5Aの上側の空間と下側の空間との連通を遮断している。下方は本発明の打撃方向の一例であり、上方は反打撃方向の一例である。また釘Nは、本発明の止具の一例である。
【0060】
ロッド5Bは、ピストン5Aの底面から下方に延出する棒状の部材であり、ピストン5Aと一体に上死点と下死点との間を往復動可能に構成されており、下死点への移動すなわち下方への移動によってノーズ部6に配置された釘Nを打撃する。ロッド5Bの下端部は、打撃部5が上死点に位置する状態すなわちピストン5Aが上死点に位置する状態(
図1の状態)においてノーズ部6の上部に位置し、打撃部5が下死点に位置する状態すなわちピストン5Aが下死点に位置する状態(
図2の状態)において、ノーズ部6の下端よりも下方に僅かに突出するように構成されている。ピストン5A及びロッド5Bは、本発明の移動部の一例である。
【0061】
ラック部5Cは、ロッド5Bの後部に固定された上下方向に沿って延びる部分であり、ギヤ部43Bの歯部43Dと噛合している。ラック部5Cは、ギヤ部43Bとともにいわゆるラックアンドピニオンを構成している。ラック部5Cは、駆動部43が回転方向Rに回転することでロッド5B及びピストン5Aと一体に上死点(上方)に向かってに移動する。すなわち、駆動部43の回転方向Rへの回転によって、打撃部5は上死点に移動する。また、ラック部5Cとギヤ部43Bの歯部43Dとの噛合は、打撃部5が移動可能ないずれの位置にある場合(上死点から下死点までのいずれの位置にある場合)であっても維持されるように構成されている。ラック部5C及び駆動部43は、本発明の駆動伝達機構として機能する。
【0062】
蓄圧室24aは、打撃部収容部24内におけるシリンダ25の上方に形成されている。蓄圧室24aは、シリンダ25内のピストン5Aの上側の空間と連通しており、当該空間と一体の空間を画成している。また蓄圧室24aには、窒素等の圧縮された気体が封入されており、ピストン5Aが上方に移動することで当該気体が圧縮される。すなわち、打撃部5の上方への移動によって蓄圧室24aにエネルギが蓄積され、当該蓄積されたエネルギの解放によって打撃部5を下方に付勢し且つ高速で移動させる。蓄圧室24aは、本発明のエネルギ蓄積部の一例である。
【0063】
ノーズ部6は、打撃部収容部24の下端から下方に延びて設けられており、その内部には上下方向に延びる打出孔6aが形成されている。打出孔6aは、釘Nを収容可能、且つロッド5B及びラック部5Cが挿通可能に構成されている。打出孔6aに収容された釘Nは、ロッド5Bに打撃され打出孔6aの下端から打出される。
【0064】
マガジン7は、ハウジング2の下方で、且つノーズ部6の後部から後方に延出し、ノーズ部6とモータ収容部22の後部とを接続するように設けられている。マガジン7内には釘Nが束状に複数本内蔵されており、ノーズ部6の打出孔6a内に釘Nを供給するように構成されている。
【0065】
次に、釘打機1の打込動作について説明する。
【0066】
ノーズ部6の下端部を被打込材に押し当てた状態で、ユーザがトリガ21Aを上方に押込むとモータ3に電池パックPから電力が供給され、モータ3の回転軸3Aが回転を開始する。回転軸3Aが回転を開始すると、回転軸3Aの回転(回転力)は減速機構41を介して回転支持軸44に伝達され、回転支持軸44が軸Aを中心に回転方向Rに回転を開始する。なお、回転軸3Aの回転開始時すなわち初期状態において、打撃部5は
図2及び
図4(a)に示されているように下死点に位置している。
【0067】
回転支持軸44が回転すると、第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれは、回転支持軸44の第1溝44a及び第2溝44bの回転方向Rにおけるそれぞれの上流側縁部から回転方向Rの力(第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれを回転方向Rに回転させようとする力)を受け、回転支持軸44及び係合部47と一体に軸Aを中心に回転方向Rに回転する。このとき、第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれは、第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれの上流側縁部から回転方向Rの力を受けると同時に回転支持軸44の回転トルクに応じた大きさの後方向の力(第1カムボール45及び第2カムボール46を後方に移動させようとする力)も受ける。しかし、第1カムボール45及び第2カムボール46は、係合部47を介してスプリング48によって前方に付勢されているため、前後方向において変位しない。
【0068】
回転支持軸44、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47が一体に回転すると、
図5(a)乃至(c)に示されているように係合部47の係合爪47Cは、被係合部43Aの被係合爪43Cに当接且つ係合する。すなわち回転軸3Aが回転を開始し、
図5の状態となったときにモータ3の回転軸3Aと駆動部43とが接続される。また当該状態において係合爪47C及び被係合爪43Cは軸Aの左方に位置している。なお、
図5は係合部47と被係合部43Aとが係合した瞬間のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42及び駆動部43の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42及び駆動部43を示す部分断面上面図である。
【0069】
係合爪47Cと被係合爪43Cとが係合した状態(回転軸3Aと駆動部43とが接続された状態)で回転支持軸44、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47が一体に回転すると、駆動部43のギヤ部43Bが係合部47と一体に回転方向Rに回転する。駆動部43が回転方向Rに回転すると、
図6(a)乃至(c)の状態となるとともにギヤ部43Bと噛合しているラック部5Cが上方に押し上げられ、打撃部5全体が上方に移動する。当該状態においては、打撃部5が上方に移動しているため蓄圧室24aに封入された気体が圧縮され蓄圧室24aにエネルギがある程度蓄積されている状態となる。このため、
図5の状態と比較して打撃部5を下方に付勢する力が大きくなり、当該付勢力の増加に伴ってラック部5C及び駆動部43を介して係合部47を回転方向Rの逆方向に回転させようとする力も大きくなり、回転支持軸44の回転トルクも増加する。すなわち、ピストン5Aが上方に移動するに従って回転支持軸44の回転トルクは増加する。このとき、回転支持軸44の回転トルクの増加によって、第1カムボール45及び第2カムボール46が受ける後方向の力も大きくなるがスプリング48の前方向への付勢力を超えるものではないため、
図6の状態においも第1カムボール45及び第2カムボール46の前後方向の位置は変位しない。なお、
図6は、係合部47と駆動部43とが一体に回転している状態のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42及び駆動部43の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42及び駆動部43を示す部分断面上面図である。
【0070】
図6の状態からさらに係合部47と駆動部43(ギヤ部43B)とが一体に回転方向Rに回転すると、打撃部5はさらに上方に移動し、蓄圧室24aに封入された気体はさらに圧縮され、回転支持軸44の回転トルクもさらに増大する。
図6の状態から係合部47と駆動部43とが僅かに回転した状態となったとき、回転支持軸44の回転トルクが所定値を超え、第1カムボール45及び第2カムボール46が受ける後方向の力はスプリング48の前方向への付勢力を超える。当該後方向の力がスプリング48の付勢力を超えると、第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれは、第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれに沿って移動し、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47が一体となってスプリング48の付勢力に抗して後方向に移動しながら回転する。なお、上述の所定値は、第1溝44a及び第2溝44bと軸Aとの交差角度、スプリング48のバネ定数等に依存している。
【0071】
回転支持軸44の回転トルクが所定値を超えてからもなお、係合部47と駆動部43とが一体に回転方向Rに回転すると、
図7(a)乃至(c)の状態となる。当該状態は、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47は
図5の状態から回転方向Rに270°回転した状態、回転支持軸44は
図5の状態から315°回転した状態であり、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47は後方向に移動し、係合爪47Cと被係合爪43Cとは僅かに係合している状態となる。また当該状態において、打撃部5は上死点に達してピストン5Aが移動規制部25Aに当接した状態(
図1、
図4(b)の状態)となり、蓄圧室24aに封入された気体は
図6の状態よりもさらに圧縮され蓄積されたエネルギが最大となる。このとき、ピストン5Aの突起5Dは位置検出部25Bの腕部25Cを上方に押上げた状態となり、位置検出部25Bは制御部23Aにピストン5Aが移動規制部25Aに当接していること(打撃部5が上死点に位置していること)を示す信号を出力する。
図7は、係合部47と駆動部43との係合が解除される直前のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42を示す部分断面上面図である。
【0072】
図7の状態となった後は、すなわち打撃部5のピストン5Aが移動規制部25Aに当接した後は、打撃部5は当該状態よりも上方に移動できないため、打撃部5のラック部5Cと噛合しているギヤ部43Bは回転方向Rに回転不能となる。このため、
図7の状態から係合部47及び駆動部43は回転せず回転支持軸44のみがさらに回転方向Rに回転すると、回転支持軸44の回転トルクは最大となり、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47は
図7の状態よりもさらに後方に移動し、係合爪47Cと被係合爪43Cとの係合、すなわち回転軸3Aと駆動部43との接続が遮断される。このとき回転支持軸44は
図5の状態から320°回転した状態となる。また、係合爪47Cと被係合爪43Cとの係合の解除のタイミングは、上述の回転支持軸44の回転トルクの所定値、係合爪47C及び被係合爪43Cの前後方向の長さ等によって決定される。後方向は本発明の離間方向の一例であり、前方向は本発明の反離間方向の一例である。
【0073】
係合爪47Cと被係合爪43Cとの係合が解除されると、駆動部43は回転方向Rの逆方向に回転可能となるとともにラック部5Cは下方に移動可能な状態となり、打撃部5は蓄圧室24aの最大に圧力の高まった気体によって下方に付勢され、加速しながら下方に移動する。言い換えれば、モータ3の回転軸3Aと駆動部43との接続が遮断されることで蓄圧室24aに蓄積されたエネルギが解放され、打撃部5が下方に移動する。
【0074】
打撃部5が上死点から下方に移動すると、打撃部5によってノーズ部6の打出孔6a内に収容されている釘Nが打撃され被打込材方向に打ち出され、被打込材に釘Nが打込まれる。当該打込みが終了すると打撃部5は下死点(
図2、
図4(a)の状態)に戻る。また、駆動部43は、打撃部5の上死点から下死点への移動に伴って
図7の状態から回転方向Rの逆方向に回転して
図5の状態に戻る。
【0075】
また係合爪47Cと被係合爪43Cとの係合が解除されると、打撃部5の下方への移動と略同時に被係合爪43Cとの係合が解除された係合爪47Cは被係合爪43Cを乗り越え、係合部47、第1カムボール45及び第2カムボール46は一体となってスプリング48の前方への付勢力によって回転方向Rに回転しながら前方に移動する。当該移動は、第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれが第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれの前端部に当接する位置で停止する。さらに、このとき位置検出部25Bの腕部25Cとピストン5Aの突起5Dとの当接が解除され、位置検出部25Bはオフ状態となり制御部23Aへの信号出力を停止する。制御部23Aは位置検出部25Bからの信号入力が有る状態から無い状態に変化したことを検知し、すなわち打撃部5が上死点から下死点へと移動を開始したことを検知して、モータ3の駆動を停止させて回転軸3Aの回転を停止させる。モータ3の駆動停止後、回転軸3A及び回転支持軸44は慣性力で僅かに回転し、
図5の状態から325°〜335°回転した状態で回転を停止する。制御部23Aは、本発明の停止手段として機能する。
【0076】
上述したように、本発明の第1の実施の形態による打込機である釘打機1は、ラック部5C及びラック部5Cと噛合するギヤ部43Bを備え、言い換えれば、いわゆるラックアンドピニオン機構を備え、回転軸3Aが回転することでギヤ部43Bが回転し、ギヤ部43Bの回転によってラック部5Cを介してピストン5A及びロッド5Bを上方(反打撃方向)に移動させて蓄圧室24aにエネルギを蓄積させることができる。また、クラッチ機構42を用いて回転軸3Aと駆動部43との接続を遮断することで蓄圧室24aに蓄積されたエネルギを解放してピストン5A及びロッド5Bを下方(打撃方向)に移動させることができる。これらにより、蓄圧室24aにエネルギを蓄積させるための構成及びピストン5A及びロッド5Bを下方に移動させるための構成を簡素化することができ、釘打機1全体の構造を簡素化することができる。さらに、クラッチ機構42を用いて回転軸3Aと駆動部43との接続を遮断することでピストン5A及びロッド5Bを下方に移動させる構成、すなわちピストン5A及びロッド5Bを下方に移動させる際にピストン5A及びロッド5Bと他の部材との接続自体を必要としない構成であるため、ピストン5A及びロッド5Bに他の部材を急激に接続してピストン5A及びロッド5Bを下方に移動させる複雑な機構が必要なく、釘打機1の構造を簡素化でき、軽量化することができる。
【0077】
また、釘打機1のクラッチ機構42は、係合部47と駆動部43との係合によって駆動部43と回転軸3Aとを接続し、係合部47と駆動部43との係合の解除によって駆動部43と回転軸3Aとの接続を遮断するように構成されているため、係合部47と駆動部43との係合及び当該係合の解除という簡易な動作で駆動部43と回転軸3Aとの接続及び当該接続の遮断を実現することができる。これによりクラッチ機構42の構成を簡素化することができ、釘打機1全体の構造を簡素化することができる。
【0078】
また、釘打機1のクラッチ機構42は、ハウジング2内に回転可能に設けられ且つ自身の回転によって係合部47を回転させる回転支持軸44を有しているため、回転支持軸44を回転させるという簡易な構成で係合部47を回転させることができる。
【0079】
また、釘打機1において回転支持軸44は、ピストン5A及びロッド5Bが上方に移動するに従って回転支持軸44の回転トルクを増加させ、係合部47は、軸A(前後方向)に移動可能に設けられており、回転支持軸44の回転トルクが所定値を超えた場合に、軸A(前後方向)における駆動部43から離間する後方向(離間方向)に移動を開始し、係合部47と駆動部43との係合は、係合部47の後方向への移動によって解除されるように構成されている。このため、当該所定値を調整することで、係合部47と駆動部43との係合が解除されるまでにピストン5A及びロッド5Bが上方へ移動する距離を調整することができる。これにより、ピストン5A及びロッド5Bの打込時の移動距離(打撃ストローク)を調整でき、言い換えれば、釘打機1の打込力を調整でき、釘打機1の設計の自由度を向上させることができる。
【0080】
また、釘打機1においてクラッチ機構42は、係合部47を前方向(反離間方向)に付勢するスプリング48を有し、回転支持軸44には軸Aと交差する方向に延びる第1溝44a及び第2溝44bが外周面に形成され、係合部47は第1溝44aに収容された第1カムボール45及び第2溝44bに収容された第2カムボール46を介して回転支持軸44に設けられ、第1カムボール45及び第2カムボール46のそれぞれの第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれに沿った移動によってスプリング48の付勢力に抗して後方向(離間方向)に移動するように構成されており、上述の所定値は、第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれと軸Aとの交差角度に依存している。このため、当該所定値を第1溝44a及び第2溝44bのそれぞれと軸Aとの交差角度を変更するという簡易な設計変更で調整可能となる。これにより、ピストン5A及びロッド5Bの打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち釘打機1の打込力を簡易な設計変更で調整可能となる。
【0081】
また、釘打機1においてラック部5Cとギヤ部43Bとは、ピストン5A及びロッド5Bが往復動可能な範囲、すなわち上死点下死点間のいずれの位置にある場合であっても、ラック部5Cとギヤ部43Bとの噛合が維持されるように構成されているため、ピストン5A及びロッド5Bの位置によらずラック部5Cとギヤ部43Bとの噛合が常に維持され、ラック部5Cとギヤ部43Bとの噛合及び当該噛合の解除が繰り返されることがない。これにより、当該噛合が解除されている状態から再度噛合する際に発生し得るラック部5Cの歯の先端部とギヤ部43Bの歯の先端部との衝突を抑制することができる。また、再度の噛合を行う際のそれぞれの歯の先端部どうしの衝突を回避するために、ラック部5Cとギヤ部43Bとの位置関係を細かく調整する必要がない。
【0082】
また、釘打機1は、ピストン5A及びロッド5Bの上方への移動を規制する移動規制部25Aを備えており、移動規制部25Aによってピストン5A及びロッド5Bの上方への移動距離が規制され、且つピストン5Aが移動規制部25Aに当接した後に回転軸3Aと駆動部43との接続が遮断されるため、ピストン5A及びロッド5Bの打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち釘打機1の打込力を一定に保つことができる。これにより、作業の安定性を向上させることができ、作業の仕上げ程度をより良好にすることができる。
【0083】
また、釘打機1は、ピストン5Aが移動規制部25Aに当接している状態を検出する位置検出部25Bと、ピストン5Aと移動規制部25Aとの当接が解除された場合に回転軸3Aの回転を停止させる制御部23Aとを備えているため、クラッチ機構42が回転軸3Aと駆動部43との接続を遮断した際、すなわちピストン5A及びロッド5Bが下方に移動を開始した際に回転軸3Aの回転を停止することができる。これにより、打込動作が完了後に回転軸3Aが回転を継続して打込動作が再度開始される誤動作すなわち二度打ちを抑制することができる。
【0084】
次に、
図8に基づいて本発明の第1の実施の形態の変形例による打込機である釘打機について説明する。第1の実施の形態の変形例による打込機である釘打機は、釘打機1が備えていたクラッチ機構42及び駆動部43に替えて、クラッチ機構142及び駆動部143を備えている。本発明の第1の実施の形態の変形例による釘打機におけるクラッチ機構142及び駆動部143以外の構成は、第1の実施の形態による釘打機1と同様である。また同様にクラッチ機構142及び駆動部143の動作以外の動作は釘打機1と同様である。なお、第1の実施の形態と同様の部材等には同じ参照番号を付し、説明を省略する。
図8は、クラッチ機構142及び駆動部143を示す一部断面側面図である。
【0085】
図8に示されているようにクラッチ機構142は、モータ収容部22内部において減速機構41の前方に設けられており、回転支持軸144と、係合部147と、スプリング148とを備えている。クラッチ機構142は、モータ3の回転軸3Aの回転(回転力)を減速機構41を介して駆動部143に伝達するとともに当該伝達を遮断可能に構成されている。言い換えれば、クラッチ機構142は、回転軸3Aと駆動部143とが接続された状態と当該接続が遮断された状態とを選択的に切替可能に構成されている。
【0086】
回転支持軸144は、キャリア41Aの前端から前方に延びる軸であって、キャリア41Aと同軸に一体回転するようにボールベアリング22Aに支承されている。回転支持軸144は、モータ3の回転軸3Aの回転によって
図8に示されている軸Aを中心に回転方向R(前面視において時計回り)に回転する。また、回転支持軸144の外周面には、前後方向に延び回転支持軸144の半径方向内方に窪んだスプライン溝144aが形成されている。
【0087】
係合部147は、回転支持軸144上に設けられており、円筒部147Aと拡径部147Bとを備えている。また係合部147は、回転支持軸144に対して前後方向に所定量相対移動可能であり、且つ相対回転不能である。円筒部147Aは、前後方向に延びる筒形状をなしており、突起状部147Cを有している。突起状部147Cは、円筒部147Aの内壁から半径方向内方に(軸Aに向かって)突出し前後方向に延びるように形成されており、回転支持軸144のスプライン溝144aと係合している。当該係合によって、円筒部147Aの回転支持軸144に対する相対回転は規制されている。
【0088】
拡径部147Bは、円筒部147Aの前端部の外周面から半径方向外方に拡径しており、円筒部147Aと一体に形成されている。また拡径部147Bは、係合突起147Dを備えている。係合突起147Dは、拡径部147Bの前面から前方に突出しており、直交面147E及び駆動部143と係合可能な係合傾斜面147Fを備えている。直交面147Eは、係合突起147Dの前端面であり、軸Aに直交する面である。係合傾斜面147Fは、回転方向Rにおける直交面147Eの下流側縁部と連続した面であり、回転方向Rにおける上流側から下流側に向かうに従って後方に向かうように傾斜した面である。係合突起147Dの前後方向の長さは、係合部147の前後方向における回転支持軸144に対する相対移動可能な距離よりも短く構成されている。係合傾斜面147Fは、本発明の傾斜滑面の一例である。
【0089】
スプリング148は、前後方向に延びる圧縮コイルバネであり、所定量圧縮された状態で回転支持軸144に設けられており、係合部147を前方に付勢している。スプリング148の後端部はキャリア41Aの前端面と当接し、スプリング148の前端部は円筒部147Aの後端面と当接している。スプリング148は、本発明の付勢部の一例である。
【0090】
駆動部143は、ハウジング2のモータ収容部22の内部においてクラッチ機構142の前方に位置しており、被係合部143A及びギヤ部143Bを備えている。
【0091】
被係合部143Aは、ギヤ部143Bと一体に形成された略円筒形状をなす部分であり、ボールベアリング22B及び軸受22Cを介して回転支持軸144上に回転支持軸144に対して相対回転可能に設けられている。また被係合部143Aは、被係合突起143Cを備えている。
【0092】
被係合突起143Cは、被係合部143Aの後面から後方に突出しており、対向面143E及び係合突起147Dの係合傾斜面147Fと係合可能な被係合傾斜面143Fを備えている。対向面143Eは、被係合突起143Cの後端面であり、係合部147と対向するとともに軸Aに直交する面である。被係合傾斜面143Fは、回転方向Rにおける対向面143Eの上流側縁部と連続した面であり、回転方向Rにおける下流側から上流側に向かうに従って前方に向かうように傾斜した面である。被係合傾斜面143Fは、係合部147の係合突起147Dと係合可能に構成されている。また、被係合突起143Cの前後方向の長さは、係合突起147Dの前後方向の長さと略等しく構成されている。
【0093】
ギヤ部143Bは、前面視において略円形状をなしており、被係合部143Aと一体に形成され、回転支持軸144にボールベアリング22Aを介して被係合部143Aと一体回転可能に支承されている。ギヤ部143B及び被係合部143Aは、係合突起147Dと被係合突起143Cとが係合した状態(
図8の状態)でモータ3が駆動し回転軸3Aが回転することによって軸Aを中心に回転方向Rに一体に回転する。またギヤ部143Bの外周面には、歯部143Dが形成されており、ロッド5Bのラック部5Cと噛合している。ラック部5C及び駆動部143は、本発明の駆動伝達機構として機能する。
【0094】
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例による打込機である釘打機のクラッチ機構142の動作について説明する。
【0095】
本発明の第1の実施の形態の変形例による打込機である釘打機の初期状態は、打撃部5が下死点に位置し、且つ係合部147と被係合部143Aとが係合していない状態である。当該初期状態からモータ3が駆動し回転軸3Aが回転すると、回転支持軸144と係合部147が一体となって回転方向Rに回転する。係合部147が所定角度回転すると、係合突起147Dの係合傾斜面147Fと被係合突起143Cの被係合傾斜面143Fとが当接且つ係合し、係合部147と被係合部143Aとが係合した状態で一体となって回転する。
【0096】
係合部147と被係合部143Aとが係合した状態で一体となって回転すると、打撃部5が上方に移動し、当該移動に伴って回転支持軸144の回転トルクが増大するとともに係合傾斜面147Fが被係合傾斜面143Fから受ける後方向の力が増大する。打撃部5が上死点付近に達する程度に係合部147と被係合部143Aと一体となって回転すると、回転支持軸144の回転トルクが所定値を超え、係合傾斜面147Fが受ける後方向の力がスプリング148の前方向への付勢力を上回り、係合傾斜面147Fが被係合傾斜面143Fに対して滑りながら係合部147は後方向に移動を開始する。当該所定値は、係合傾斜面147F及び被係合傾斜面143Fの軸Aに対する傾斜角度、スプリング148のバネ定数(付勢力)等に依存している。
【0097】
打撃部5が上死点に達するまで係合部147及び被係合部143Aが回転すると、打撃部5は移動規制部25Aと当接し、回転支持軸144の回転トルクは最大となる。打撃部5が上死点に達し回転支持軸144の回転トルクは最大となると、係合傾斜面147Fが被係合傾斜面143Fに対して滑りながら係合部147が後方向にさらに移動し、係合傾斜面147Fと被係合傾斜面143Fとの係合が解除される。すなわち係合部147と被係合部143Aとの係合が解除され、モータ3の回転軸3Aと駆動部143との接続が遮断される。回転軸3Aと駆動部143との接続が遮断されるタイミングは、上述の回転トルクの所定値、係合突起147D及び被係合突起143Cの前後方向における長さによって決定される。
【0098】
回転軸3Aと駆動部143との接続が遮断されると、打撃部5が上死点から下死点に向かって加速しながら移動し釘Nを打撃する。
【0099】
このように、本発明の第1の実施の形態の変形例による打込機である釘打機においては、クラッチ機構142は、係合部147を前方(反離間方向)に付勢するスプリング148を有し、係合部147は、駆動部143と係合している状態において駆動部143と当接し軸Aに対して傾斜する係合傾斜面147Fを有し、係合傾斜面147Fが駆動部143に対して滑ることによりスプリング148の付勢力に抗して後方(離間方向)に移動するように構成されており、上述の所定値は、軸Aに対する係合傾斜面147Fの傾斜角度に依存している。このため、当該所定値を軸Aに対する係合傾斜面147Fの傾斜角度を変更するという簡易な設計変更で調整可能となり、ピストン5A及びロッド5Bの打込時の移動距離(打撃ストローク)、すなわち第1の実施の形態の変形例による打込機の打込力を簡易な設計変更で調整可能となる。なお、第1の実施の形態の変形例による釘打機における第1の実施の形態による釘打機1と同様の構成及び動作は、釘打機1と同様の作用効果を奏する。
【0100】
次に、
図9乃至
図15に基づいて本発明の第2の実施の形態による打込機である釘打機201について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の部材等には同じ参照番号を付し、説明を省略する。
【0101】
図9乃至
図11、
図15に示されているように釘打機201は、ワンウェイクラッチ227と、支持部222Dと、マグネット243Gと、磁気検出部222Eとを備えている。
図9は釘打機201全体の内部構造を示す一部断面側面図であり、ピストン5Aが上死点に位置している状態を示す図である。
図10は、釘打機201のクラッチ機構42、駆動部43及びワンウェイクラッチ227を示す
図9の部分拡大図である。
図11は、打撃部5及び駆動部43を示す部分断面正面図であり、(a)は打撃部5が下死点に位置する場合、(b)は打撃部5が下死点と上死点との間に位置する場合、(c)は打撃部5が上死点に位置する場合を示している。
図15は、ワンウェイクラッチ227を示す部分拡大断面図であり、ワンウェイクラッチ227が係合部47の逆回転(回転方向Rとは逆方向(
図15の矢印が示す回転方向)への回転)を規制している状態を示す図である。
【0102】
図9及び
図10に示されているようにワンウェイクラッチ227は、モータ収容部22内部において、モータ収容部22内部の内壁から係合部47に向かって突出する支持部222Dと係合部47との間に設けられており、筒部227A及び複数のローラ227Bを備えている。ワンウェイクラッチ227は、クラッチ機構42の係合部47の回転方向R(打撃部5を上方に移動させるための回転方向)への回転を許容するとともに回転方向Rと逆方向の回転(逆回転)を規制する部材である。なお、ワンウェイクラッチ227は本発明の逆回転規制機構の一例、回転方向Rは本発明の第1回転方向の一例、回転方向Rとは逆方向の回転方向(逆回転方向)は本発明の第2回転方向の一例である。
【0103】
筒部227Aは、前後方向に延びる筒形状をなし、支持部222Dに対して固定されており、ハウジング2に対して相対回転不能である。また、
図15に示されているように筒部227Aの内周面には、複数の収容溝227aが形成されている。収容溝227aは、筒部227Aの内周面から筒部227Aの半径方向外方に窪んで形成された溝であって、前後方向に延びている。複数の収容溝227aのそれぞれにはローラ227Bが1個ずつ収容されている。
【0104】
ローラ227Bは、前後方向に延びる針状のコロであり、自己の軸心を中心に回転可能且つ係合部47の円筒部47Aの外周面に当接した状態で収容溝227aに収容されている。またローラ227Bは、収容溝227a内部において前後方向に移動不能且つ筒部227Aの周方向に所定量移動可能である。本実施の形態において当該所定量は、ローラ227Bの直径と略同一の長さである。
【0105】
収容溝227aの深さは、収容溝227aの回転方向Rにおける上流側から下流側に向かうに従って深くなっており、収容溝227aの上流側縁部の深さはローラ227Bの直径よりも短く、下流側縁部の深さはローラ227Bの直径と略同一である。また収容溝227aに収容されたローラ227Bと収容溝227aの下流側縁部との間には付勢部材すなわちスプリング227Cが設けられており、ローラ227Bは下流側縁部から上流側縁部に向かって付勢されている。
【0106】
ここで、ワンウェイクラッチ227の動作及び機能について説明する。係合部47が回転方向Rに回転を開始すると、係合部47の円筒部47Aの外周面と当接している複数のローラ227Bのそれぞれは、自己が収容されているそれぞれの収容溝227a内部で自己の軸心を中心に回転且つスプリング227Cの付勢力に抗しながら回転方向Rにおける上流側縁部から下流側縁部に向かって移動を開始する。ローラ227Bが収容溝227aの深さが最も深い下流側縁部に位置すると、円筒部47Aの外周面とローラ227Bとの接触面圧は小さくなる。当該状態における接触面圧によるそれぞれのローラ227Bと円筒部47Aの外周面との間の摩擦力は、係合部47の筒部227Aに対する回転方向Rへの回転を妨げる程度のものではなく、当該状態において係合部47は回転方向Rへの回転を継続することができる。すなわちワンウェイクラッチ227は、係合部47の回転方向Rへの回転を許容する。
【0107】
一方、係合部47が逆回転(
図15の矢印方向への回転)を開始すると、複数のローラ227Bのそれぞれは、自己が収容されているそれぞれの収容溝227a内部で自己の軸心を中心に回転且つスプリング227Cに付勢されながら回転方向Rにおける下流側縁部から上流側縁部に向かって移動を開始する。ローラ227Bが収容溝227aの深さが最も浅い上流側縁部に位置すると、円筒部47Aの外周面とローラ227Bとの接触面圧は最も大きくなる。当該状態においては、接触面圧によるそれぞれのローラ227Bと円筒部47Aの外周面との間の摩擦力は最大となり、係合部47は筒部227Aに対して逆回転不能となる(
図15の状態)。すなわちワンウェイクラッチ227は、係合部47の逆回転を規制する。
【0108】
図11の(a)乃至(c)に示されているようにマグネット243Gは、駆動部43の回転によって軸Aを中心に回転するように駆動部43のギヤ部43Bに設けられた磁石である。またマグネット243Gは、駆動部43が回転方向Rに回転して打撃部5を上死点に移動させた状態(
図11(c)の状態)において、正面視において回転支持軸44の上方に位置するように構成されている。
【0109】
磁気検出部222Eは、モータ収容部22の前部であり、且つ上下方向から見てギヤ部43Bの歯部43D及び回転支持軸44と重なる位置に配置されている。磁気検出部222Eは、磁気を検出するホール素子を有しており、マグネット243Gの磁気を検出する。また磁気検出部222Eは、制御部23Aと接続されており、駆動部43が回転してマグネット243Gが磁気検出部222Eに近接した場合にマグネット243Gの磁気を検出し、当該磁気が検出されている間、制御部23Aに信号を出力し続ける。すなわち、磁気検出部222Eは、打撃部5が下死点に位置している状態(
図11(a)の状態)から駆動部43が所定角度回転したことを検出する。さらに言い換えれば磁気検出部222Eは、打撃部5のピストン5Aが移動規制部25Aに当接している状態(上死点に位置している状態)を検出する。磁気検出部222Eは、本発明の当接検出部の一例である。
【0110】
次に釘打機201の動作について説明する。クラッチ機構42及び駆動部43の動作及び打込動作は第1の実施の形態による打込機である釘打機1と同様であるため、磁気検出部222Eの動作及びマグネット243Gの位置について主に説明する。
【0111】
モータ3が駆動を開始し回転軸3Aが回転を開始すると、回転軸3Aの回転が減速機構41を介して回転支持軸44に伝達され、回転支持軸44、第1カムボール45、第2カムボール46及び係合部47は一体に回転方向Rに回転を開始する。
【0112】
係合部47が回転を開始して係合部47の係合爪47Cと駆動部43の被係合爪43Cとが係合すると
図11(a)及び
図12(a)乃至(c)の状態となる。当該状態においてマグネット243Gは、正面視において回転支持軸44の左方に位置しており、磁気検出部222Eは磁気を検出していない。なお、
図12は釘打機201における係合部47と被係合部43Aとが係合した瞬間のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42及び駆動部43の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42及び駆動部43を示す部分断面上面図である。
【0113】
図11(a)及び
図12の状態から係合部47がさらに回転方向Rに回転すると、係合部47と駆動部43とが係合した状態で一体に回転して
図11(b)及び
図13(a)乃至(c)の状態となり、打撃部5は上方に移動する。当該状態においてマグネット243Gは、
図11(a)の状態よりもさらに磁気検出部222Eから離間した位置に移動しており、磁気検出部222Eは磁気を検出していない。なお、
図13は釘打機201における係合部47と駆動部43とが一体に回転している状態のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42及び駆動部43の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42及び駆動部43を示す部分断面上面図である。
【0114】
図11(b)及び
図13の状態から係合部47と駆動部43とがさらに一体に回転方向Rに回転すると、打撃部5は上死点に到達し、係合部47の係合爪47Cと駆動部43の被係合爪43Cとが僅かに係合した状態、すなわち
図11(c)及び
図14(a)乃至(c)の状態となる。当該状態においてマグネット243Gは、
図11(c)に示されているように正面視において磁気検出部222Eと回転支持軸44との間(磁気検出部222Eの下方且つ回転支持軸44の上方)に位置する。このとき磁気検出部222Eは、マグネット243Gの磁気を検出し、制御部23Aに信号を出力する。当該信号は、
図11(a)の状態から駆動部43が回転方向Rに所定角度回転したことを示す信号であり、且つ打撃部5のピストン5Aが移動規制部25Aに当接している状態を示す信号である。なお
図14は、釘打機201における係合部47と駆動部43との係合が解除される直前のクラッチ機構42及び駆動部43を示す図であり、(a)は第1カムボール45、第2カムボール46、係合爪47C及び被係合爪43Cの位置関係を示す図、(b)はクラッチ機構42の外観を示す上面図、(c)はクラッチ機構42を示す部分断面上面図である。
【0115】
図11(c)及び
図14の状態から、駆動部43及び係合部47は回転せず回転支持軸44のみが回転方向Rにさらに回転すると、係合部47と駆動部43との係合が解除され、すなわちモータ3の回転軸3Aと駆動部43との接続が遮断される。係合部47と駆動部43との係合が解除されると、打撃部5は上死点から下死点へと移動して釘Nを打撃し、釘Nは打出孔6aから打出され被打込材に打込まれる。また同時に、駆動部43は
図11(c)及び
図14の状態から逆回転(回転方向Rとは逆方向の回転)して
図11(a)及び
図12の状態に戻る。このとき磁気検出部222Eは、マグネット243Gの磁気を検出していない状態となり、制御部23Aへの信号出力を停止する。制御部23Aは磁気検出部222Eからの信号入力が有る状態から無い状態に変化したことを検知し、すなわち打撃部5が上死点から下死点へと移動を開始したことを検知して、モータ3の駆動を停止させて回転軸3Aの回転を停止させる。
【0116】
このように本発明の第2の実施の形態による打込機である釘打機201において、係合部47は、打撃部5を上方(上死点方向)に移動させるために駆動部43と係合した状態で回転方向Rに回転するように構成されており、且つ係合部47の逆回転を規制するワンウェイクラッチ227を備えているため、係合部47の一方向(回転方向R)への回転のみを許容することができる。
【0117】
詳細には、打撃部5の下死点から上死点までの移動途中(例えば、
図11(b)及び
図13の状態)に電池パックPの残量減少等によってモータ3の駆動が停止した場合、駆動部43は蓄圧室24aの圧力(下方への付勢力)に抗して打撃部5を上方に移動させる駆動力を失う。駆動部43が駆動力を失った状態で、打撃部5が蓄圧室24aの圧力によって下方(下死点方向)に付勢(押圧)されると、打撃部5のラック部5Cと駆動部43のギヤ部43Bとが噛合しているため、駆動部43及び駆動部43と係合している係合部47には、駆動部43及び係合部47を逆回転させようとする力が働く。このような場合に、係合部47が逆回転可能であると、打撃部5が上死点まで到達する前に、係合部47と駆動部43とが係合した状態で係合部47が逆回転しながら打撃部5が下死点に向かって移動し、上死点まで到達した場合よりも弱い打込力で釘Nを打込んでしまう虞がある。このような場合、完全に釘Nが打込めずに仕上げ程度が良好でなく、同時に釘Nの打ち直し等を行わねばならない等の作業性の悪化を招く虞がある。
【0118】
しかしながら、釘打機201はワンウェイクラッチ227を備えているため、係合部47の逆回転を規制することができ、下死点から上死点までの移動途中における打撃部5の下方への移動を規制することができる。これにより、上述のようなことがなく、仕上げ程度を良好に維持し且つ作業性を向上させることができる。また、第2の実施の形態による釘打機201における第1の実施の形態による釘打機1と同様の構成及び動作は、釘打機1と同様の作用効果を奏する。
【0119】
次に、
図16に基づいて本発明の第2の実施の形態の変形例による打込機である釘打機について説明する。第2の実施の形態の変形例による釘打機は、第2の実施の形態による釘打機201が備えていたクラッチ機構42及び駆動部43に替えて、クラッチ機構142及び駆動部143を備えている。本発明の第2の実施の形態の変形例による釘打機におけるクラッチ機構142及び駆動部143以外の構成は、第2の実施の形態による釘打機201と同様である。また同様にクラッチ機構142及び駆動部143の動作以外の動作は釘打機201と同様である。なお、第1の実施の形態と同様の部材等には同じ参照番号を付し、説明を省略する。
図16は、第2の実施の形態の変形例による釘打機のクラッチ機構142、駆動部143及びワンウェイクラッチ227を示す図であり、(a)は外観を示す側面図、(b)は一部断面側面図である。
【0120】
図16(a)及び(b)に示されているように第2の実施の形態の変形例による釘打機は、第1の実施の形態の変形例による釘打機が備えていたクラッチ機構142及び駆動部143を備えており、打込動作におけるクラッチ機構142及び駆動部143の動作は第1の実施の形態の変形例による釘打機と同様である。
【0121】
また第2の実施の形態の変形例による釘打機において、ワンウェイクラッチ227は、モータ収容部22内部において、モータ収容部22内部の内壁から係合部147に向かって突出する支持部222Dと係合部147との間に設けられている。ワンウェイクラッチ227は、係合部147の回転方向R(打撃部5を上方に移動させるための回転方向)への回転を許容するとともに回転方向Rとは逆方向の回転(逆回転)を規制する部材である。
【0122】
上述したように第2の実施の形態の変形例による釘打機においては、ワンウェイクラッチ227が係合部147の逆回転を規制するため、第2の実施の形態による釘打機201と同様の効果を得ることができる。また、第2の実施の形態の変形例による釘打機における第1の実施の形態による釘打機1、第1の実施の形態の変形例による釘打機及び第2の実施の形態による釘打機201と同様の構成及び動作は、釘打機1と同様の作用効果を奏する。
【0123】
本発明による打込機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記の実施の形態において、打込機の一例として、釘Nを打込む釘打機1及び釘打機201を例示したが、ねじ、ステープル等、機械的接合金具を打出す工具全般に対して適用可能である。なお、打出される止具の具体例としては、当該技術分野における一般的なもの全てが対象であり、例えば、釘、ねじ、ステープル、鋲、リベット等が考えられる。
【0124】
また、上述した実施の形態では、駆動源として、回転軸3Aを回転させる電動式のモータ3を用いた釘打機1及び釘打機201を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明はその他、エンジン、ソレノイド等の他の駆動源を備えた打込機にも適用可能である。
【0125】
また、上記の実施の形態においては、釘Nを打込むためのピストン5A及びロッド5Bの付勢手段として圧縮空気を用いたガススプリング方式の例を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コイルバネ等の他の付勢手段に適用可能であることは、当業者にとって自明な事項である。
【0126】
また、上記の実施の形態においては、移動規制部25Aを備えていたが、移動規制部25Aを備えていない構成であってもよい。この場合、ピストン5A及びロッド5Bの上死点の位置すなわち打込時の移動距離(打撃ストローク)は、係合部47と被係合部43Aとが係合した状態から係合部が後方に移動を開始する回転支持軸44の回転トルクの値すなわち上述の所定値に依存し、当該所定値を適宜変更することで打込機の打込力を調整することができる。
【0127】
上記の第2の実施の形態による釘打機201及びその変形例である釘打機においては、ローラ227Bを有するワンウェイクラッチ227を用いたが、係合部47又は係合部147の逆回転を規制し、且つ正回転を許容する構成であればよく、ボール及び内周面にボール溝が形成された筒部を有するボール式のワンウェイクラッチ等でもよい。また、ワンウェイクラッチ227は、係合部47又は係合部147の逆回転を規制する構成であったが、回転支持軸44又は回転支持軸144の逆回転を規制する構成であってもよい。特に、本発明の第2の実施の形態の変形例による釘打機のような回転支持軸144と係合部147とが相対回転不能な構成において、ワンウェイクラッチ227が回転支持軸144の逆回転を規制する構成と係合部147の逆回転を規制する構成とが同様の作用効果を奏することは当業者にとって自明な事項である。