【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る副生塩の製造方法は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを酸洗浄水、水酸化ナトリウムを含むアルカリ洗浄水で順次洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する。
【0013】
<第一発明>
かかる副生塩の製造方法において、本第一発明では、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、
カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴としている。
【0014】
このような工程を経ることとした本第一発明によると、廃棄物のガス化により生じた塩化水素やフッ素を含むガスを洗浄処理してカルシウムを含む酸洗浄処理水とフッ素を含むアルカリ洗浄処理水の混合処理水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の混合処理水は、次にカルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0015】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに洗浄処理水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む洗浄処理水に、カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去する。本第一発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、このカルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0016】
したがって、カルシウム除去工程では、炭酸源は適量に供給されて過剰となることはないので、混合処理水に残存しているフッ化カルシウムが分解されることがないため、分解されフッ素が生成してフッ素が十分に除去できなくなるといった事態が生じなくなる。
【0017】
このようにして、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在しているので、このカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去して混合洗浄処理水からフッ素を除去し、フッ素の少ない副生塩を製造することができるようになる。
【0018】
第一発明において、炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることができる。
【0019】
このように炭酸源供給量を制御することにより、炭酸源供給量が過剰となり、炭酸カルシウムの析出が多くなり、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素とカルシウム除去工程で反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足し、フッ素を十分に除去できなくなることや、混合処理水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されて、フッ素を十分に除去できなくなることを防ぐことができる。
【0020】
<第二発明>
第二発明では、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第一カルシウム除去工程と、
第一カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水から水分を低減して濃縮混合処理水を生成する濃縮工程と、
濃縮混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加してさらに炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第二カルシウム除去工程と、
第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、第二カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴としている。
【0021】
このような工程を経ることとした本第二発明によると、廃棄物のガス化により生じた塩化水素やフッ素を含むガスを洗浄処理してカルシウムを含む酸洗浄処理水とフッ素を含むアルカリ洗浄処理水の混合処理水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の混合処理水は、次に第一カルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去される。しかる後、混合処理水は濃縮工程で水分が低減されて濃縮され、第二カルシウム除去工程へもたらされる。第二カルシウム除去工程では、濃縮された混合処理水は水酸化ナトリウムと炭酸源が添加されて、さらに炭酸カルシウムを析出して、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0022】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに混合処理水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む混合処理水に、第一カルシウム除去工程と第二カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去することができる。本第二発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、この第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、第二カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0023】
したがって、第二カルシウム除去工程では、炭酸源は適量に供給されて過剰となることはないので、混合処理水に残存しているフッ化カルシウムが分解されることなく、分解されてしまってフッ素が十分に除去できなくなるといった事態が生じなくなる。
【0024】
このようにして、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在しているので、このカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去して混合処理水からフッ素を除去し、フッ素の少ない副生塩を製造することができるようになる。
【0025】
本第二発明において、炭酸源供給量制御工程は、第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることができる。
【0026】
本第二発明において、第一カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離してカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように、炭酸源の添加量の調整を行うことが好ましい。
【0027】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。また、洗浄処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が下限値の10mg/Lより低いと、第二カルシウム除去工程で炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の50mg/Lより高いと第二カルシウム除去工程で炭酸源を多く添加する必要があり、炭酸源により析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。
【0028】
このようにpHが調整された混合洗浄処理水にカルシウムを上述の所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整して、カルシウム濃度を所定濃度範囲に調整することにより、残存するフッ素と反応してフッ化カルシウムを析出するカルシウムを炭酸源を添加した混合処理水中に存在させることができ、濃縮工程により濃度を高くした濃縮混合処理水に、第二カルシウム除去工程において炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極めて低い濃度にまで低減することができる。
【0029】
第一カルシウム除去工程では、混合処理水にカルシウムを所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整するので、炭酸源を過剰に添加することがないため、混合洗浄水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解され、フッ素が生成されてしまうことを防止できる。
【0030】
本第二発明において、第二カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することが好ましい。
【0031】
酸洗浄水には、廃棄物に含まれる珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K
2(SiF
6)、Na
2(SiF
6))が含まれており、混合処理水に含まれるこれらのケイフッ化塩を第二カルシウム除去工程で除去する。濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下の高pHとすることにより、ケイフッ化塩を次の反応式のように分解し、さらにカルシウムと反応させ、フッ化カルシウムCaF
2を生成して炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去する。
【0032】
Na
2(SiF
6)+2H
2O→6HF+SiO
2
HF+Ca
+→2H
++CaF
2
K
2(SiF
6)も同様に分解する。
【0033】
濃縮混合処理水のpHが下限値の10.5より低いとケイフッ化塩の分解が困難であり、上限値の11.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0034】
以上のような第一及び第二発明において、炭酸源は、二酸化炭素含有ガス、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つとすることができる。また、二酸化炭素含有ガスとして燃焼炉、焼却炉から排出される二酸化炭素含有排ガスを用いてもよく、排ガスを有効利用でき、処理コストを低減できる。
【0035】
第一及び第二発明は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する方法に係るものであるが、混合処理水はフッ素とカルシウムを含む塩水であって、このような塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理方法に係るものを第三発明とする。
【0036】
<第三発明>
フッ素とカルシウムを含む塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理方法において、塩水に水酸化ナトリウムを添加して、該塩水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した塩水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有し、炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることを特徴としている。
【0037】
このような工程を経ることとした本第三発明によると、フッ素とカルシウムを含む塩水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の塩水は、次にカルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0038】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに塩水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む塩水に、カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去する。本第三発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、このカルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0039】
さらに、炭酸源供給量制御工程では、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させるように制御する。
【0040】
このようにして、フッ素とカルシウムを含む塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理を行うことができ、さらに、炭酸源供給量を制御することにより、炭酸源供給量が過剰となり、炭酸カルシウムの析出が多くなり、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素とカルシウム除去工程で反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足し、フッ素を十分に除去できなくなることや、塩水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されて、フッ素を十分に除去できなくなることを防ぐことができる。