特許第6311931号(P6311931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311931
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】副生塩の製造方法及び塩水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20180409BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20180409BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   C02F1/58 MZAB
   C02F1/58 J
   B01D53/50 290
   B01D53/14 200
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-234432(P2014-234432)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-97330(P2016-97330A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】三好 史洋
(72)【発明者】
【氏名】平田 修一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬司
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−088102(JP,A)
【文献】 特開2006−130498(JP,A)
【文献】 特開平06−015295(JP,A)
【文献】 特開2005−305273(JP,A)
【文献】 特開2002−035766(JP,A)
【文献】 特開昭58−089985(JP,A)
【文献】 特開2016−098125(JP,A)
【文献】 特開2012−055851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58
B01D 53/14
B01D 53/50
B01D 53/68
C01D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含み、廃棄物の灰成分に由来するカルシウムを含むガスを酸洗浄水次いで水酸化ナトリウムを含むアルカリ洗浄水で順次洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する副生塩の製造方法において、
酸洗浄処理水がカルシウムを、アルカリ洗浄処理水がフッ素をそれぞれ含有していて、混合処理水はフッ素とカルシウムを含有しており、
混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、
カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴とする副生塩の製造方法。
【請求項2】
炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることとする請求項1に記載の副生塩の製造方法。
【請求項3】
フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含み、廃棄物の灰成分に由来するカルシウムを含むガスを酸洗浄水次いで水酸化ナトリウムを含むアルカリ洗浄水で順次洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する副生塩の製造方法において、
酸洗浄処理水がカルシウムを、アルカリ洗浄処理水がフッ素をそれぞれ含有していて、混合処理水はフッ素とカルシウムを含有しており、
混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第一カルシウム除去工程と、
第一カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水から水分を低減して濃縮混合処理水を生成する濃縮工程と、
濃縮混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加してさらに炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第二カルシウム除去工程と、
第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、第二カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴とする副生塩の製造方法。
【請求項4】
炭酸源供給量制御工程は、第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることとする請求項3に記載の副生塩の製造方法。
【請求項5】
第一カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離してカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように、炭酸源の添加量の調整を行うこととする請求項3に記載の副生塩の製造方法。
【請求項6】
第二カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することとする請求項3に記載の副生塩の製造方法。
【請求項7】
炭酸源は、二酸化炭素含有ガス、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つとする請求項1ないし請求項6のうちの一つに記載の副生塩の製造方法。
【請求項8】
フッ素とカルシウムを含む塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理方法において、
塩水に水酸化ナトリウムを添加して、該塩水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した塩水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、
カルシウム除去工程で炭酸カルシウムを除去した塩水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有し、
炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることを特徴とする塩水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物のガス化により生成された塩化水素を含むガスを水酸化ナトリウムを含む洗浄水で洗浄処理することにより洗浄処理水として得られる塩水から副生塩を製造する方法に関し、特に廃棄物がフッ素を含有していて、塩水に含まれるフッ素を除去しフッ素を含まない副生塩を製造する方法及び塩水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物ガス化炉などにより廃棄物をガス化して発生するガスに含まれる塩化水素を除去するために、水酸化ナトリウムを含む洗浄水により該ガスを洗浄して塩化水素を中和するガス洗浄が知られている。この場合、ガス洗浄後の洗浄処理水には塩化水素と水酸化ナトリウムの反応生成物である塩化ナトリウムを主成分とする塩が副生塩として含まれており、この副生塩を工業用原料や凍結防止剤の原料などとして使用することが試みられている。
【0003】
特許文献1に記載の廃棄物からの混合塩製造方法では、ガス化溶融炉で廃棄物を熱分解・ガス化して発生したガスは、酸洗浄され、次いでアルカリ洗浄され、該ガスに含まれる塩化水素ガスなどの酸性ガスが中和除去されて精製ガスとされ、洗浄後の酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水の混合処理水から塩化ナトリウムが生成し、該塩化ナトリウムを含む混合処理水が水処理装置から塩製造装置に送られて、副生塩が製造される。
【0004】
廃棄物にフッ素が含まれていると、製造された副生塩にフッ素が含まれてこれが不純物となり、副生塩を工業用原料などとして使用する際に支障が生じる。そのため、副生塩に含まれるフッ素濃度を小さくする検討がなされ、特許文献2に記載の廃棄物処理方法では、フッ素を含む廃棄物を熱分解・ガス化し発生したガスを改質し、改質ガスを洗浄した洗浄処理水にカルシウム化合物を添加しフッ化カルシウムを析出分離してフッ素を除去して、フッ素の少ない副生塩を得ることとしている。
【0005】
特許文献2はその図2に示されているように、洗浄処理水からのフッ素除去工程において、副生塩に含まれるフッ素を極力低減するために、改質ガスを洗浄した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水に塩化カルシウムを添加し、混合処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去する。このフッ素除去工程で、混合処理水中のフッ素量に対して過剰なカルシウム量となるように塩化カルシウムを添加しフッ化カルシウムを析出させ分離除去する。一方、最終的に製造される副生塩に含まれるカルシウムを極力低減するために、カルシウム・マグネシウム除去工程において混合処理水に炭酸源を十分に添加しカルシウムとの反応により炭酸カルシウムを析出させカルシウムを分離除去し、さらに、フッ素除去工程では十分に沈殿除去できず残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させ除去している。
【0006】
特許文献2の図2に示されている副生塩を製造する方法を実施する際には、混合処理水に外部から塩化カルシウムを添加するため、塩化カルシウムの購入費用が必要である。そこで、発明者等は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在することに着目し、この酸洗浄処理水中のカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応により、酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水との混合処理水にてフッ化カルシウムを析出させ分離除去して該混合処理水からフッ素を除去するフッ素除去工程と、フッ素除去後の混合処理水に炭酸源を供給し炭酸カルシムを析出させ分離除去してカルシウムを除去するカルシウム除去工程とにより、塩化カルシウムを添加せずにフッ素の少ない副生塩を製造する方法を導き出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−195400
【特許文献2】特開2013−088102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸洗浄処理水に含まれるカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応により、酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水との混合処理水にてフッ化カルシウムを析出させ分離除去して該混合処理水からフッ素を除去し、フッ素の少ない副生塩を製造する方法を実施する際に次のような問題が生じる。
【0009】
副生塩を工業原料等に用いるときに副生塩に対して不純物となるカルシウムを極力低減するために、カルシウム除去工程において混合処理水に炭酸源を多量に添加すると炭酸カルシウムの析出が多くなりカルシウムの除去は促進されるが、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素とカルシウム除去工程で反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足することとなり、その結果、フッ素を十分に除去できないという問題が生じる。
【0010】
また、カルシウム除去工程において炭酸源を多量に添加すると、次の反応式に見られるように、混合処理水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されてしまい、その結果、フッ素を十分に除去することができないという問題が生じる。
CaF+CO32−→CaCO3+2F-
【0011】
このような事情に鑑みて、本発明は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを、水酸化ナトリウムを含む洗浄水で洗浄処理することにより洗浄処理水として得られる塩水に対して、フッ素除去工程そしてカルシウム除去工程を経て該塩水からフッ素の少ない副生塩を製造する際に、カルシウム除去工程で炭酸源を適量に供給する副生塩の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る副生塩の製造方法は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを酸洗浄水、水酸化ナトリウムを含むアルカリ洗浄水で順次洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する。
【0013】
<第一発明>
かかる副生塩の製造方法において、本第一発明では、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、
カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴としている。
【0014】
このような工程を経ることとした本第一発明によると、廃棄物のガス化により生じた塩化水素やフッ素を含むガスを洗浄処理してカルシウムを含む酸洗浄処理水とフッ素を含むアルカリ洗浄処理水の混合処理水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の混合処理水は、次にカルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0015】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに洗浄処理水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む洗浄処理水に、カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去する。本第一発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、このカルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0016】
したがって、カルシウム除去工程では、炭酸源は適量に供給されて過剰となることはないので、混合処理水に残存しているフッ化カルシウムが分解されることがないため、分解されフッ素が生成してフッ素が十分に除去できなくなるといった事態が生じなくなる。
【0017】
このようにして、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在しているので、このカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去して混合洗浄処理水からフッ素を除去し、フッ素の少ない副生塩を製造することができるようになる。
【0018】
第一発明において、炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることができる。
【0019】
このように炭酸源供給量を制御することにより、炭酸源供給量が過剰となり、炭酸カルシウムの析出が多くなり、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素とカルシウム除去工程で反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足し、フッ素を十分に除去できなくなることや、混合処理水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されて、フッ素を十分に除去できなくなることを防ぐことができる。
【0020】
<第二発明>
第二発明では、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加して、該混合処理水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、
フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第一カルシウム除去工程と、
第一カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水から水分を低減して濃縮混合処理水を生成する濃縮工程と、
濃縮混合処理水に水酸化ナトリウムと炭酸源を添加してさらに炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去する第二カルシウム除去工程と、
第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、第二カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有することを特徴としている。
【0021】
このような工程を経ることとした本第二発明によると、廃棄物のガス化により生じた塩化水素やフッ素を含むガスを洗浄処理してカルシウムを含む酸洗浄処理水とフッ素を含むアルカリ洗浄処理水の混合処理水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の混合処理水は、次に第一カルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去される。しかる後、混合処理水は濃縮工程で水分が低減されて濃縮され、第二カルシウム除去工程へもたらされる。第二カルシウム除去工程では、濃縮された混合処理水は水酸化ナトリウムと炭酸源が添加されて、さらに炭酸カルシウムを析出して、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0022】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに混合処理水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む混合処理水に、第一カルシウム除去工程と第二カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去することができる。本第二発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、この第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、第二カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0023】
したがって、第二カルシウム除去工程では、炭酸源は適量に供給されて過剰となることはないので、混合処理水に残存しているフッ化カルシウムが分解されることなく、分解されてしまってフッ素が十分に除去できなくなるといった事態が生じなくなる。
【0024】
このようにして、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成されたガスを、冷却・酸洗浄した酸洗浄処理水にはカルシウムが存在しているので、このカルシウムとアルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素との反応によりフッ化カルシウムを析出させ分離除去して混合処理水からフッ素を除去し、フッ素の少ない副生塩を製造することができるようになる。
【0025】
本第二発明において、炭酸源供給量制御工程は、第二カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることができる。
【0026】
本第二発明において、第一カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離してカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように、炭酸源の添加量の調整を行うことが好ましい。
【0027】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。また、洗浄処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が下限値の10mg/Lより低いと、第二カルシウム除去工程で炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の50mg/Lより高いと第二カルシウム除去工程で炭酸源を多く添加する必要があり、炭酸源により析出しているフッ化カルシウムが分解されてしまうので好ましくない。
【0028】
このようにpHが調整された混合洗浄処理水にカルシウムを上述の所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整して、カルシウム濃度を所定濃度範囲に調整することにより、残存するフッ素と反応してフッ化カルシウムを析出するカルシウムを炭酸源を添加した混合処理水中に存在させることができ、濃縮工程により濃度を高くした濃縮混合処理水に、第二カルシウム除去工程において炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極めて低い濃度にまで低減することができる。
【0029】
第一カルシウム除去工程では、混合処理水にカルシウムを所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整するので、炭酸源を過剰に添加することがないため、混合洗浄水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解され、フッ素が生成されてしまうことを防止できる。
【0030】
本第二発明において、第二カルシウム除去工程は、水酸化ナトリウムを添加することで、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することが好ましい。
【0031】
酸洗浄水には、廃棄物に含まれる珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K(SiF)、Na(SiF))が含まれており、混合処理水に含まれるこれらのケイフッ化塩を第二カルシウム除去工程で除去する。濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下の高pHとすることにより、ケイフッ化塩を次の反応式のように分解し、さらにカルシウムと反応させ、フッ化カルシウムCaFを生成して炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去する。
【0032】
Na(SiF)+2HO→6HF+SiO
HF+Ca+→2H++CaF
(SiF)も同様に分解する。
【0033】
濃縮混合処理水のpHが下限値の10.5より低いとケイフッ化塩の分解が困難であり、上限値の11.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0034】
以上のような第一及び第二発明において、炭酸源は、二酸化炭素含有ガス、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つとすることができる。また、二酸化炭素含有ガスとして燃焼炉、焼却炉から排出される二酸化炭素含有排ガスを用いてもよく、排ガスを有効利用でき、処理コストを低減できる。
【0035】
第一及び第二発明は、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを洗浄する洗浄処理に供した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄処理水とを混合した混合処理水から副生塩を製造する方法に係るものであるが、混合処理水はフッ素とカルシウムを含む塩水であって、このような塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理方法に係るものを第三発明とする。
【0036】
<第三発明>
フッ素とカルシウムを含む塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理方法において、塩水に水酸化ナトリウムを添加して、該塩水中のフッ素とカルシウムとを反応させフッ化カルシウムを析出して該フッ化カルシウムを分離除去し、フッ素を除去するフッ素除去工程と、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを除去した塩水に水酸化ナトリウムと炭酸源を供給して炭酸カルシウムを析出して該炭酸カルシウムを分離除去し、カルシウムを除去するカルシウム除去工程と、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する炭酸源供給量制御工程とを有し、炭酸源供給量制御工程は、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させることを特徴としている。
【0037】
このような工程を経ることとした本第三発明によると、フッ素とカルシウムを含む塩水は、フッ素除去工程で水酸化ナトリウムの添加により、フッ化カルシウムを析出し、このフッ化カルシウムが分離除去される。このフッ化カルシウムが除去された後の塩水は、次にカルシウム除去工程にて、水酸化ナトリウムと炭酸源の添加を受けて、炭酸カルシウムを析出し、これが分離除去されることでカルシウムが除去される。
【0038】
かかる工程を経る過程にて、カルシウムとフッ素との反応により析出するフッ化カルシウムは微粒子であるので、速やかに沈殿させ分離除去することが困難であり、フッ素除去工程でフッ化カルシウムを析出し或る程度は分離できるが、十分に除去できずに塩水にはフッ化カルシウム微粒子が残存してしまう。このように、フッ素除去工程の後にフッ化カルシウム微粒子が残存しカルシウムを含む塩水に、カルシウム除去工程で、炭酸源を添加し炭酸カルシウム粒子を析出させ分離除去するとともに、フッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子により共沈させ分離除去する。本第三発明では、さらに、炭酸源供給量制御工程にて、このカルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度を測定し、フッ素濃度測定値に基づき、カルシウム除去工程で供給する炭酸源供給量を制御する。
【0039】
さらに、炭酸源供給量制御工程では、カルシウム除去工程でカルシウムを除去した塩水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させるように制御する。
【0040】
このようにして、フッ素とカルシウムを含む塩水からフッ素とカルシウムを除去する塩水の処理を行うことができ、さらに、炭酸源供給量を制御することにより、炭酸源供給量が過剰となり、炭酸カルシウムの析出が多くなり、前段のフッ素除去工程で沈殿除去しきれなかった残存フッ素とカルシウム除去工程で反応しフッ化カルシウムを生成するためのカルシウム量が不足し、フッ素を十分に除去できなくなることや、塩水に残存するフッ化カルシウムが炭酸源により分解されてフッ素が生成されて、フッ素を十分に除去できなくなることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上のように、本発明では、フッ素を含む廃棄物のガス化により生成される塩化水素とフッ素を含むガスを酸洗浄した酸洗浄処理水とアルカリ洗浄したアルカリ洗浄処理水の混合処理水としての塩水を、フッ素除去工程後に、第一発明ではカルシウム除去工程そして炭酸源供給量制御工程を経て、そして第二発明では、第一カルシウム除去工程、濃縮工程そして第二カルシウム除去工程そして炭酸源供給量制御工程を経て処理され、処理に際し、炭酸源と水酸化ナトリウムの添加を受けることとしたので、従来のように混合処理水に塩化カルシウムを添加せずともフッ素の少ない副生塩を製造することができ、さらには炭酸源を適量に供給して過剰となることがないので、混合処理水は残存しているフッ化カルシウムが分解されることなく、分解されてしまってフッ素が除去できなくなるといった事態が生じなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第一実施形態に係る副生塩の製造方法の工程を示すブロック図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る副生塩の製造方法の工程を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面にもとづいて、本発明に係る副生塩の製造方法の実施形態を説明する。
【0044】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る副生塩の製造方法の工程を示すブロック図である。
【0045】
図1には、外部から供給されたフッ素を含む廃棄物を熱分解・部分酸化させることによりガス化して生成したガス化ガス(粗ガス)を酸洗浄水及びアルカリ洗浄水によって洗浄して精製ガスを生成するガス精製工程Iと、該ガス精製工程で使用された洗浄処理水から副生塩を製造する副生塩製造工程IIとが示されている。本実施形態に係る副生塩の製造方法は、上記副生塩製造工程IIにより構成されている。
【0046】
[ガス化ガス]
フッ素を含む廃棄物を熱分解・部分酸化させることによりガス化して生成したガス化ガスには、水素、一酸化炭素、炭化水素の可燃ガス、硫化水素(HS)、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、金属類、廃棄物の灰成分に由来するカルシウム(Ca)、珪素(Si)等が含まれている。
【0047】
「ガス精製工程」
上記ガス精製工程Iは、上記ガス化ガスを酸洗浄水により冷却そして洗浄する冷却・酸洗浄工程11と、該冷却・酸洗浄工程11からのガス化ガスをアルカリ洗浄水により洗浄するアルカリ洗浄工程12と、該アルカリ洗浄工程12からのガス化ガスに脱硫液による脱硫処理を施す脱硫工程13と、水分を除去する除湿工程14とを有しており、これらの工程で、ガス化ガスは次のごとく処理されて精製ガスとなる。
【0048】
[冷却・酸洗浄工程]
冷却・酸洗浄工程11は、ガス化ガスにpH2〜6の酸洗浄水を噴霧するなどして接触させ、該ガス化ガスを冷却および洗浄する冷却・酸洗浄を行い、ガス化ガス中の金属類、そしてカルシウム、珪素を酸洗浄水に溶解あるいは捕捉させて、該ガス化ガス中から除去し、洗浄後の酸洗浄処理水にこの除去成分を溶解含有せしめる。
【0049】
冷却・酸洗浄工程でのガス洗浄に使用された酸洗浄処理水は回収され、再度、該冷却・酸洗浄工程に供給されることにより該酸洗浄水として循環使用されている。上記ガス洗浄に使用された酸洗浄処理水には、ガス化ガスから除去した上記除去成分が蓄積される。該酸洗浄処理水は一部が抜き出されて副生塩製造工程IIへ送られ、後述するように、中和処理そして副生塩製造処理が行われる。
【0050】
[アルカリ洗浄工程]
アルカリ洗浄工程12は、上記冷却・酸洗浄工程11で冷却・酸洗浄されたガス化ガスにアルカリ洗浄水を噴霧するなどして接触させ、該ガス化ガスを洗浄するアルカリ洗浄を行い、該ガス化ガス中の塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)をアルカリ洗浄水に溶解させて該ガス化ガスから除去し、洗浄後のアルカリ洗浄処理水にこの除去成分を溶解含有せしめる。
【0051】
アルカリ洗浄工程12でのガス洗浄に使用されたアルカリ洗浄処理水は回収され、再度、該アルカリ洗浄工程12に供給されることによりアルカリ洗浄水として循環使用されている。上記アルカリ洗浄工程12で供給されるアルカリ洗浄水は、好ましい形態として、ガス化ガスの洗浄に先立ち水酸化ナトリウム(NaOH)が添加されることによりpHが7〜8.5に調整されている。また、上記アルカリ洗浄工程でのガス洗浄に使用されたアルカリ洗浄処理水には、ガス化ガスから除去した塩化水素(HCl)が水酸化ナトリウムと反応して生成された塩化ナトリウム(NaCl)と、フッ化水素(HF)が水酸化ナトリウムと反応して生成されたフッ化ナトリウム(NaF)がそれぞれ溶解して蓄積される。アルカリ洗浄処理水は一部が抜き出されて副生塩製造工程IIへ送られ、後述するように、副生塩製造処理が行われる。
【0052】
[脱硫工程]
脱硫工程13は、アルカリ洗浄工程12で洗浄されたガス化ガスに鉄キレート剤(鉄キレート錯体)を含む脱硫液を接触させ、該ガス化ガスから硫化水素(HS)を除去する。そして、硫化水素が除去されたガス化ガスは精製ガスとして該脱硫工程13から送り出される。脱硫液として鉄キレート剤を使用する脱硫方法は公知であるので、ここでは説明を省略する。本実施形態では、鉄キレート剤を用いて脱硫することとしたが、脱硫方法はこれに限られず、例えば、ナフトキノンスルホン酸ナトリウムを用いる脱硫、ピクリン酸を用いる脱硫、タカハックス、フマックスロダックスなどの方法を適用することができる。
【0053】
[除湿工程]
脱硫工程13で硫化水素が除去されたガス化ガスは、除湿工程14にて水分を除去され、精製ガスとして送り出される。
【0054】
このように、上記ガス化ガスは、上記冷却・酸洗浄工程11、アルカリ洗浄工程12、脱硫工程13そして除湿工程14を経て精製される。精製されたガス化ガスは燃料用ガスなどとして利用される。
【0055】
「副生塩製造工程」
次に、上述のガス精製工程Iにてガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水から副生塩を製造するための副生塩製造工程IIについて説明する。
【0056】
ガス化ガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水には、該ガス化ガスから除去した成分が蓄積されており、上記副生塩製造工程IIは上記酸洗浄処理水およびアルカリ洗浄処理水から、ガス化ガスから除去した成分のうち副生塩の不純物となる成分を除去して副生塩を製造する。
【0057】
副生塩製造工程IIは、後述の酸洗浄処理水の固液分離工程21、混合工程22、フッ素除去工程23、カルシウム除去工程24、濃縮工程25、晶析工程27及び脱水工程28を順に有している。以下、各工程について説明する。
【0058】
[酸洗浄処理水の固液分離工程]
酸洗浄処理水の固液分離工程21では、冷却・酸洗浄工程11でガス化ガスの洗浄に使用された酸洗浄処理水に含まれるダスト等固形物を固液分離し、残部の酸洗浄処理水を混合工程22へ供給する。固液分離装置21の形態は特に制限を受けるものではなく、比重沈降分離装置、遠心分離装置、ろ過装置、精密ろ過膜装置、限外ろ過膜装置などを用いた膜分離装置とすることができる。また、後述の工程で用いる固液分離装置についても同様である。
【0059】
[混合工程]
混合工程22では、上記固液分離工程21で固液分離処理された酸洗浄処理水と、ガス精製工程Iのアルカリ洗浄工程12で一部抜き出されたアルカリ洗浄処理水とを混合して混合処理水とする。該酸洗浄処理水には、金属類、カルシウムシウムなどの不純物成分が蓄積されている。また、酸洗浄処理水には、廃棄物に含まれる珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K(SiF)、Na(SiF))が含まれている。
【0060】
また、上記アルカリ洗浄処理水には塩化ナトリウム、フッ素が蓄積されている。該混合処理水は副生塩である塩化ナトリウムを主成分とし、金属類、カルシウム、フッ素、ケイフッ化塩などの不純物成分も含んでいる。本実施形態では、以下の工程で該不純物成分が分離除去されることにより、塩化ナトリウムの純度を高める副生塩の製造処理が行われる。
【0061】
[フッ素除去工程]
フッ素除去工程23では、該フッ素除去工程23のための反応槽(図示せず)にて、pHの低い混合処理水に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加しpHを5〜7に調整して、混合処理水に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加しpHが調整されて、アルカリ洗浄処理水に含まれるフッ素と、酸洗浄処理水に含まれるカルシウムとの反応によりフッ化カルシウムが生成され析出される。そして、フッ素除去工程23のための固液分離装置(図示せず)にて上記フッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が分離された混合処理水は次段のカルシウム除去工程24へ供給される。析出したフッ化カルシウムは微粒子であるため、沈殿除去に時間がかり、固液分離装置にて完全には分離除去されず、混合処理水に残存するが、後述するカルシウム除去工程にて析出させる炭酸カルシウムと共沈させることにより、分離除去を十分に行う。また、フッ化カルシウムの析出に到らずフッ素として残存するものもあるが、後述するカルシウム除去工程にてフッ化カルシウムとして析出させ炭酸カルシウムと共沈させて、分離除去し、フッ素の除去を確実に行う。
【0062】
フッ素除去工程23にて、酸洗浄処理水に含まれるカルシウムイオンと、アルカリ洗浄処理水のフッ素とが反応しフッ化カルシウムが生成されるが、外部からの塩化カルシウムの添加によるカルシウム量の増加に依ることなく、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で、混合処理水中のフッ素と反応させフッ化カルシウムを生成し析出し分離する。後述するカルシウム除去工程において炭酸カルシウムを析出させるとともに、フッ化カルシウム微粒子を共沈させ分離することにより、フッ化カルシウム析出によるフッ素除去を促進させるため、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で十分にフッ化カルシウムを析出させフッ素を除去することができる。
【0063】
外部から塩化カルシウムを添加する必要がないため、フッ素除去のためのコストを低減することができる。
【0064】
フッ素除去工程23においては、混合処理水から亜鉛・鉛等の金属類も除去される。フッ素除去工程23では、該フッ素除去工程23のための反応槽(図示せず)にて、混合処理水に水酸化ナトリウムを添加しpHを5〜7に調整して、混合処理水中の亜鉛イオン、鉛イオンが水酸化物すなわち水酸化亜鉛(Zn(OH))および水酸化鉛(Pb(OH))として析出される。そして、フッ素除去工程23のための固液分離装置(図示せず)にてこれらの水酸化物も固形分として分離除去される。
【0065】
[カルシウム除去工程]
カルシウム除去工程24では、該カルシウム除去工程24のための反応槽(図示せず)にて、フッ素除去工程23から供給される混合処理水に、炭酸源として二酸化炭素(CO)を含む排ガス、炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)のいずれかを添加して、さらに水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、好ましくは、混合処理水のpHを8.5〜9.5に調整して、混合処理水中に含まれているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO)として析出する。また、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させる。そして、カルシウム除去工程24のための固液分離装置(図示せず)にて炭酸カルシウムとフッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が除去された混合処理水は次の濃縮工程25に供給される。
【0066】
カルシウム除去工程24において、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整する。
【0067】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0068】
[炭酸源供給量制御工程]
カルシウム除去工程24でカルシウムが除去された混合処理水は、濃縮工程25へもたらされる前に、フッ素濃度計Aによりフッ素濃度が常時もしくは断続的に時間間隔をもって測定されている。フッ素濃度計Aは、イオンクロマト法、イオン電極法などの公知の測定方法で用いられる濃度計であって、カルシウム除去工程24でカルシウムが除去された混合処理水のフッ素濃度が測定される。カルシウム除去工程24において混合処理水へ供給される炭酸源供給量が、測定されたフッ素濃度にもとづき炭酸源供給量制御工程31で制御される。
【0069】
カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度は、カルシウム除去前の混合処理水の状況(フッ素濃度、カルシウム濃度)によって異なる。しかし、いずれの状況にあっても、フッ素濃度は、カルシウム除去工程24における炭酸源供給量と相関関係にある。カルシウム除去工程24において、フッ素とカルシウムとが反応して生成したフッ化カルシウムは、炭酸カルシウムと共沈し分離されるが、炭酸源供給量が増大し炭酸カルシウムの生成が増大すると、共沈するフッ化カルシウムも増加するため、混合処理水のフッ素濃度は低下する傾向を示す。炭酸源供給量がさらに増大すると、炭酸カルシウムの生成がさらに増大して、フッ素と反応してフッ化カルシウムを生成するためのカルシウムが不足しフッ素が残存したり、炭酸源によりフッ化カルシウムが分解されフッ素が生成して、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が高くなる傾向をとるようになる。そこで、炭酸源供給量制御工程31では、カルシウム除去前の混合処理水が上述したいずれの状況にあっても、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が高くなる傾向とならないように炭酸源供給量の制御を行う。
【0070】
この制御のために、上述のように、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が常時あるいは断続的に時間間隔をもって測定されている。カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させるように炭酸源供給量の制御を行う。
【0071】
このように炭酸源供給量制御工程により、混合処理水にフッ素と反応してフッ化カルシウムを生成するためのカルシウムを残存させ、さらに、フッ化カルシウムを分解してフッ素を生成しないように添加する炭酸源量を調整して、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が増大する傾向とならないようにすることができる。炭酸源供給量制御工程によりカルシウム除去工程24において混合処理水に添加する炭酸源供給量を制御して、炭酸カルシウム粒子を析出させ、沈殿せず残存していたフッ化カルシウム微粒子と、この工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、さらに、フッ化カルシウムの分解によりフッ素が生成することを抑制でき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極力低減することができる。炭酸源として二酸化炭素を含む排ガスを用いることにより、炭酸源を供給する費用を低くすることができる。二酸化炭素を含む排ガスとして、廃棄物ガス化炉で生成したガス化ガスを燃焼した排ガス、焼却炉排ガスを用いることができる。
【0072】
[濃縮工程]
濃縮工程25では、混合処理水を加熱して水分を蒸発させて濃縮することにより濃縮混合処理水を生成する。濃縮方法としては、多重効用缶により混合処理水を加熱して水分を蒸発させる方法、逆浸透膜、電気透析などを用いることができる。
【0073】
混合処理水にアンモニウムイオンが含まれている場合には、真空蒸発によりアンモニアを除去する、いわゆるストリッピングを行うことが好ましい。上記濃縮混合処理水は次の第二カルシウム除去工程26に供給される。
【0074】
[晶析工程]
晶析工程27では、濃縮混合処理水を蒸発缶によって蒸発濃縮するか、冷却することにより、該濃縮混合処理水中に溶解している塩の濃度を飽和溶解度以上に高くして塩結晶を析出させ、塩化ナトリウムを晶析させて塩スラリーとして取り出す。該塩スラリーは次の脱水工程28に供給される。既述したフッ素、カルシウムの不純物成分の大部分は、フッ素除去工程23とカルシウム除去工程24で除去されているが、晶析工程27を経ることにより残存する不純物を分離して、純度の高い塩化ナトリウムを得ることができる。
【0075】
[脱水工程]
脱水工程28では、上記晶析工程27にて晶析した塩を含む塩スラリーから脱水して塩化ナトリウム濃度の高い副生塩を得る。脱水工程28のための脱水装置(図示せず)としては回分式の固液分離装置を用いることが好ましく、遠心分離機、真空ろ過機等を用いることができる。
【0076】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図2にもとづき説明する。
【0077】
第一実施形態では、副生塩製造工程におけるカルシウム除去工程での炭酸源供給量を制御するように炭酸源供給量制御工程が設けられていたが、これに対し、第二実施形態では、フッ素除去工程後のカルシウム除去工程を第一カルシウム除去工程とし、次段の濃縮工程に次いで第二カルシウム除去工程を有し、この第二カルシウム除去工程に対して炭酸源供給量制御工程を設けることを特徴としている。
【0078】
第二実施形態では、ガス精製工程、すなわち冷却・酸洗浄工程から除湿工程までと、副生塩製造工程における固液分離工程からフッ素除去工程まで、そして晶析工程と脱水工程は第一実施形態と同じであり、各工程については、第一実施形態における工程と同一符号を付し、その説明は省略する。以下、第一実施形態とは相違する第一カルシウム除去工程から第二カルシウム除去工程について説明する。炭酸源供給量制御工程に関しては、それ自体の制御要領は第一実施形態の場合と同じであるが、第二カルシウム除去工程に対して設けられている点が第一実施形態と相違する。
【0079】
[第一カルシウム除去工程]
図2に示されている第一カルシウム除去工程24自体は第一実施形態(図1)のカルシウム除去工程24と同じであり、第二実施形態では、第一カルシウム除去工程24が炭酸源供給量制御装置31と制御対象となっていない点で第一実施形態とは相違している。
【0080】
第一カルシウム除去工程24では、該第一カルシウム除去工程24のための反応槽(図示せず)にて、フッ素除去工程23から供給される混合処理水に、炭酸源として二酸化炭素(CO)を含む排ガス、炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)のいずれかを添加して、さらに水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、好ましくは、混合処理水のpHを8.5〜9.5に調整して、混合処理水中に含まれているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO)として析出する。また、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させる。そして、第一カルシウム除去工程24のための固液分離装置(図示せず)にて炭酸カルシウムとフッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が除去された混合処理水は次の濃縮工程25に供給される。
【0081】
第一カルシウム除去工程24において、混合処理水のpHを8.5以上9.5以下に調整し、炭酸カルシウムを析出分離しカルシウムを除去する処理を行った後の混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を10mg/L以上50mg/L以下とするように添加する炭酸源量を調整するのが好ましい。
【0082】
混合処理水のpHが下限値の8.5より低いと炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の9.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。また、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が下限値の10mg/Lより低いと、第二カルシウム除去工程で炭酸カルシウムの析出が困難であり、上限値の50mg/Lより高いと第二カルシウム除去工程26で炭酸源を多く添加する必要があり、炭酸源により析出しているフッ化カルシウムが分解され、フッ素が生成するので好ましくない。混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を例えばICP発光分光分析法により測定して、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度が所定範囲となるように、添加する炭酸源量を調整する。
【0083】
このように混合処理水にカルシウムを所定濃度範囲で残存させるように添加する炭酸源量を調整して、第一カルシウム除去工程24で、混合処理水に残存して含まれるカルシウム濃度を調整することにより、フッ素除去工程23で除去しきれずに残存するフッ素と反応してフッ化カルシウムを析出するためのカルシウムを混合処理水中に存在させることができる。濃縮工程25により濃度が高められた濃縮混合処理水に、第二カルシウム除去工程26において炭酸源を添加し、炭酸カルシウム粒子を析出させ、沈殿せず残存していたフッ化カルシウム微粒子と、この工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極力低減することができる。炭酸源として二酸化炭素を含む排ガスを用いることにより、炭酸源を供給する費用を低くすることができる。二酸化炭素を含む排ガスとして、廃棄物ガス化炉で生成したガス化ガスを燃焼した排ガス、焼却炉排ガスを用いることができる。
【0084】
[濃縮工程]
濃縮工程25では、混合処理水を加熱して水分を蒸発させて濃縮することにより濃縮混合処理水を生成する。上記濃縮混合処理水は次の第二カルシウム除去工程26に供給される。濃縮することにより第一カルシウム除去工程24の処理後の混合処理水に残存するカルシウムとフッ素の濃度を高め、第二カルシウム除去工程26での炭酸カルシウムとフッ化カルシウムの析出を促進させる。濃縮方法としては、多重効用缶により混合処理水を加熱して水分を蒸発させる方法、逆浸透膜、電気透析などを用いることができる。
【0085】
混合処理水にアンモニウムイオンが含まれている場合には、真空蒸発によりアンモニアを除去する、いわゆるストリッピングを行うことが好ましい。
【0086】
[第二カルシウム除去工程]
第二カルシウム除去工程26では、該第二カルシウム除去工程26のための反応槽(図示せず)にて、濃縮工程25から供給される濃縮混合処理水に炭酸源として二酸化炭素を含む排ガス、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのいずれかを添加して、さらに水酸化ナトリウムを添加して濃縮混合処理水のpHを10.5〜11.5に調整して、濃縮混合処理水中に含まれているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO)として析出する。また、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子と、残存していたフッ素とカルシウムとの反応によりこの工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子と共沈させる。そして、第二カルシウム除去工程26のための固液分離装置(図示せず)にて炭酸カルシウムとフッ化カルシウムが固形分として分離除去される。該固形分が除去された濃縮混合処理水は次の晶析工程27に供給される。
【0087】
第一カルシウム除去工程24と第二カルシウム除去工程26において、フッ素除去工程23で析出し残存するフッ化カルシウム微粒子を炭酸カルシウム粒子と共沈させ、固形分として分離除去することにより、フッ化カルシウム析出によるフッ素除去を促進させるため、酸洗浄処理水に含まれるカルシウム量で十分にフッ化カルシウムを析出させフッ素を除去することができる。そのため、外部から塩化カルシウムを添加する必要がないため、フッ素除去のためのコストを低減することができる。
【0088】
第一カルシウム除去工程24からの混合処理水が濃縮工程25で濃縮されて濃縮混合処理水にされることにより、該濃縮混合処理水中のカルシウム濃度が高くなるので、第二カルシウム除去工程26にて炭酸カルシウムが十分に析出して、濃縮混合処理水中に残存していたカルシウムを除去することができる。また、フッ化カルシウム濃度も高くなるので、炭酸カルシウムとの共沈が促進され効率よく除去される。
【0089】
第二カルシウム除去工程26において、濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下に調整することが好ましい。酸洗浄処理水には、廃棄物に含まれていた珪素(Si)とフッ素とカリウム又はナトリウムとが反応して生成したケイフッ化塩(K(SiF)、Na(SiF))が含まれており、混合処理水に含まれるこれらのケイフッ化塩を第二カルシウム除去工程26で除去する。濃縮混合処理水のpHを10.5以上11.5以下の高いpH値とすることにより、ケイフッ化塩を次式のように分解し、さらにカルシウムと反応させ、フッ化カルシウムCaFを生成して炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去する。
【0090】
Na(SiF)+2HO→6HF+SiO
HF+Ca+→2H++CaF
(SiF)も同様に分解する。
【0091】
濃縮混合処理水のpHが下限値10.5より低いとケイフッ化塩の分解が困難であり、上限値の11.5より高いと析出しているフッ化カルシウムが分解されるので好ましくない。
【0092】
第二カルシウム除去工程26において、混合処理水に添加する炭酸源として炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのいずれかのようにナトリウム塩を添加することにより、副生塩の主成分であるNaCl以外の成分を少なくすることができ、純度の高い副生塩を製造することができる。
【0093】
[炭酸源供給量制御工程]
図2に示される第二実施形態では、炭酸源供給量制御工程32は第二カルシウム除去工程26に対して設けられている点で第一実施形態と相違しているが、炭酸源供給量の制御自体に関しては第一実施形態の炭酸源供給量制御工程31と同じである。
【0094】
第二カルシウム除去工程26でカルシウムが除去された混合処理水は、晶析工程27へもたらされる前に、フッ素濃度計Aによりフッ素濃度が常時もしくは断続的に時間間隔をもって測定されている。フッ素濃度計Aは、イオンクロマト法、イオン電極法などの公知の測定方法で用いられる濃度計であって、第二カルシウム除去工程26でカルシウムが除去された混合処理水のフッ素濃度が測定される。第二カルシウム除去工程26において混合処理水へ供給される炭酸源供給量が、測定されたフッ素濃度にもとづき炭酸源供給量制御工程32で制御される。
【0095】
カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度は、カルシウム除去前の混合処理水の状況(フッ素濃度、カルシウム濃度)によって異なる。しかし、いずれの状況にあっても、フッ素濃度は、第二カルシウム除去工程26における炭酸源供給量と相関関係にある。第二カルシウム除去工程26において、フッ素とカルシウムとが反応して生成したフッ化カルシウムは、炭酸カルシウムと共沈し分離されるが、炭酸源供給量が増大し炭酸カルシウムの生成が増大すると、共沈するフッ化カルシウムも増加するため、混合処理水のフッ素濃度は低下する傾向を示す。炭酸源供給量がさらに増大すると、炭酸カルシウムの生成がさらに増大して、フッ素と反応してフッ化カルシウムを生成するためのカルシウムが不足しフッ素が残存したり、炭酸源によりフッ化カルシウムが分解されフッ素が生成して、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が高くなる傾向をとるようになる。そこで、炭酸源供給量制御工程32では、カルシウム除去前の混合処理水が上述したいずれの状況にあっても、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が高くなる傾向とならないように炭酸源供給量の制御を行う。
【0096】
この制御のために、上述のように、混合処理水のフッ素濃度が常時あるいは断続的に時間間隔をもって測定されている。カルシウム除去工程でカルシウムを除去した混合処理水のフッ素濃度の時間経過にともなう上昇傾向を認めたら、炭酸源供給量が過剰であると判定し、該フッ素濃度が時間経過にともない変化しないか、低下傾向になるまで炭酸源供給量を減少させるように炭酸源供給量の制御を行う。
【0097】
このように炭酸源供給量制御工程により、混合処理水にフッ素と反応してフッ化カルシウムを生成するためのカルシウムを残存させ、さらに、フッ化カルシウムを分解してフッ素を生成しないように添加する炭酸源量を調整して、カルシウム除去後の混合処理水のフッ素濃度が増大する傾向とならないようにすることができる。炭酸源供給量制御工程により第二カルシウム除去工程26において混合処理水に添加する炭酸源供給量を制御して、炭酸カルシウム粒子を析出させ、沈殿せず残存していたフッ化カルシウム微粒子と、この工程で析出したフッ化カルシウム微粒子とを炭酸カルシウム粒子により共沈させ除去することが効率よくでき、さらに、フッ化カルシウムの分解によりフッ素が生成することを抑制でき、副生塩に含まれるフッ素濃度を極力低減することができる。炭酸源として二酸化炭素を含む排ガスを用いることにより、炭酸源を供給する費用を低くすることができる。二酸化炭素を含む排ガスとして、廃棄物ガス化炉で生成したガス化ガスを燃焼した排ガス、焼却炉排ガスを用いることができる。
【0098】
第一及び第二実施形態において、炭酸源としては二酸化炭素含有ガスを用いることができるが、この二酸化炭素含有ガスとして、燃料ガスを燃焼して熱風を得る熱風炉から排出され熱風を用いる熱風利用装置から排出された熱風排ガスを用いてもよいし、熱風排ガスと空気との混合ガス、熱風排ガスと二酸化炭素濃度の高い排ガスとの混合ガスを用いてもよい。熱風排ガスと空気との混合ガスを用いる場合には、熱風炉に燃料ガスと燃焼用空気を供給し、燃焼して熱風を得て、この熱風を用いる熱風利用装置から排出された熱風排ガスを炭酸源供給装置へ送り、空気と混合し、二酸化炭素含有ガスとしてカルシウム除去工程の反応槽へ供給する。その際、混合処理水のフッ素濃度を測定し、測定値にもとづき熱風排ガスと空気の混合比を調整し、炭酸源供給量を制御する。
【0099】
熱風排ガスと二酸化炭素濃度の高い排ガスとの混合ガスを用いる場合には、二酸化炭素濃度の高い排ガスとして、熱風炉に熱風利用装置からの熱風排ガスを戻し、低空気比雰囲気で燃料ガスを燃焼して得る排ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
21 固液分離工程
22 混合工程
23 フッ素除去工程
24 (第一)カルシウム除去工程
25 濃縮工程
26 第二カルシウム除去工程
31,32 炭酸源供給量制御工程
図1
図2