特許第6311939号(P6311939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000002
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000003
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000004
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000005
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000006
  • 特許6311939-雌端子の製造方法、及び、雌端子 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311939
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】雌端子の製造方法、及び、雌端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/16 20060101AFI20180409BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   H01R43/16
   H01R13/11 301D
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-55924(P2015-55924)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-177936(P2016-177936A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 寛二
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敦
(72)【発明者】
【氏名】植松 紀行
(72)【発明者】
【氏名】高田 憲作
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/190947(WO,A1)
【文献】 特開2014−089810(JP,A)
【文献】 特開2013−062230(JP,A)
【文献】 特開平06−020736(JP,A)
【文献】 特開平04−147580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/16
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を筒状に曲げてなる筒部と、
前記筒部から前記筒部の軸方向に延出して前記筒部の内側に折り返されており、前記筒部の内側において相手側端子に弾性接触する弾性接触片と、
を備える雌端子の製造方法であって、
前記金属板より板厚が薄い金属部材を前記金属板に接合する接合工程と、
前記金属板に接合された前記金属部材を曲げて前記弾性接触片として成形する成形工程と、
を含む、雌端子の製造方法。
【請求項2】
前記接合工程において、溶接によって前記金属部材を前記金属板に接合する、請求項1に記載の雌端子の製造方法。
【請求項3】
前記接合工程において、かしめによって前記金属部材を前記金属板に接合する、請求項1に記載の雌端子の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程の前に、前記金属板において前記金属部材が接合される部分をプレスして板厚を薄くするプレス工程を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の雌端子の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程において、前記金属板の面のうち前記筒部の外面となる面に前記金属部材を接合する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の雌端子の製造方法。
【請求項6】
金型を用いて平板状の金属を打ち抜くことによって前記金属板を形成する打ち抜き工程を含み、
前記接合工程において、前記金型に設けられている接合装置を用いて前記金属部材を前記金属板に接合する、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の雌端子の製造方法。
【請求項7】
筒部と、
前記筒部に接合されている弾性接触片であって、前記筒部から前記筒部の軸方向に延出して前記筒部の内側に折り返されており、前記筒部の内側において相手側端子に弾性接触する弾性接触片と、
を備え、
前記弾性接触片の板厚が前記筒部の板厚より薄い、雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
雌端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等に用いられるコネクタの雌端子として、筒状に形成された筒部と弾性接触片とを備え、筒部の内側において弾性接触片が相手側端子に弾性接触するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のコネクタ端子(雌端子)は一枚の金属板をプレス加工することによって形成されたものであり、弾性接触片はU字形状に折り返されることによって弾性が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−147580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筒部の板厚を厚くすると電気抵抗が小さくなるので導電率が向上する上、温度が上昇し難くなるので温度上昇性能が向上する。しかしながら、厚さが均一の金属板から雌端子を形成する場合は、筒部の板厚を厚くするために金属板の板厚を厚くすると弾性接触片が大型化し、それにより雌端子の体格が大きくなってしまう。
【0005】
筒部の板厚に比べて弾性接触片の板厚を薄くすると、導電率や温度上昇性能を向上させつつ雌端子の体格を小さくすることができる。弾性接触片の板厚を薄くする方法としては、雌端子として成形される前の金属板において弾性接触片として成形される部分をプレス加工によって薄くする方法が考えられる。しかしながら、プレス加工によって弾性接触片の板厚を薄くすると弾性接触片の強度が低下してしまう虞がある。
【0006】
本明細書では、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する雌端子の製造方法は、金属板を筒状に曲げてなる筒部と、前記筒部から前記筒部の軸方向に延出して前記筒部の内側に折り返されており、前記筒部の内側において相手側端子に弾性接触する弾性接触片と、を備える雌端子の製造方法であって、前記金属板より板厚が薄い金属部材を前記金属板に接合する接合工程と、前記金属板に接合された前記金属部材を曲げて前記弾性接触片として成形する成形工程と、を含む。
【0008】
金属板より板厚が薄い長板状の金属部材を金属板に接合し、その金属部材を曲げて弾性接触片として成形すると、厚さが均一の一枚の金属板から雌端子を形成する場合であって当該金属板において弾性接触片として成形される部分をプレス加工によって薄くし、その薄くした部分を曲げて弾性接触片として成形する場合に比べ、弾性接触片の強度の低下を抑制できる。
よって上記の製造方法によると、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くすることができる。
【0009】
また、前記接合工程において、溶接によって前記金属部材を前記金属板に接合してもよい。
【0010】
一般に溶接は低コストであるので、金属部材を溶接によって金属板に接合すると、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くするためのコストを低減できる。
【0011】
また、前記接合工程において、かしめによって前記金属部材を前記金属板に接合してもよい。
【0012】
一般にかしめは低コストであるので、金属部材をかしめによって金属板に接合すると、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くするためのコストを低減できる。
【0013】
また、前記接合工程の前に、前記金属板において前記金属部材が接合される部分をプレスして板厚を薄くするプレス工程を含んでもよい。
【0014】
例えば金属部材が接合される部分の板厚を薄くせず、金属板において筒部の外面となる面に金属部材を接合したとすると、金属部材の板厚の分だけ雌端子の体格が大きくなってしまう。また、金属板において筒部の内面となる面に金属部材を接合すると、弾性接触片と相手側端子との間隔を確保するために筒部の内径を大きくしなければならず、やはり雌端子の体格が大きくなってしまう。
上記の製造方法によると、金属板において金属部材が接合される部分をプレスして板厚を薄くするので、雌端子の体格が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0015】
また、前記接合工程において、前記金属板の面のうち前記筒部の外面となる面に前記金属部材を接合してもよい。
【0016】
金属板において筒部の内面となる面に金属部材を接合すると、弾性接触片と相手側端子との間隔を確保するために筒部の内径を大きくしなければならず、それにより雌端子の体格が大きくなってしまう。筒部の外面となる面に金属部材を接合すると、筒部の内径を大きくしなくてよいので、内面となる面に接合する場合に比べて雌端子の体格が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0017】
また、金型を用いて平板状の金属を打ち抜くことによって前記金属板を形成する打ち抜き工程を含み、前記接合工程において、前記金型に設けられている接合装置を用いて前記金属部材を前記金属板に接合してもよい。
【0018】
上記の製造方法によると、打ち抜き工程と接合工程とを金型内で行うことができるので、雌端子の生産性を向上させることができる。
【0019】
また、本明細書で開示する雌端子は、金属板を筒状に折り曲げてなる筒部と、前記筒部に接合されている弾性接触片であって、前記筒部から前記筒部の軸方向に延出して前記筒部の内側に折り返されており、前記筒部の内側において相手側端子に弾性接触する弾性接触片と、を備え、前記弾性接触片の板厚が前記筒部の板厚より薄い。
【0020】
上記の雌端子によると、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示する雌端子の製造方法、及び、雌端子によれば、弾性接触片の強度の低下を抑制しつつ弾性接触片を薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係る多接点型端子の側面図
図2】多接点型端子を前側から見た正面図
図3】多接点型端子の図2に示すA−A線の断面図
図4】実施形態2に係る多接点型端子の断面図
図5】多接点型端子の側面図
図6】他の実施形態に係る多接点型端子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図3によって説明する。以降の説明において前後方向とは図1に示す前後方向を基準とする。
【0024】
先ず、図1及び図2を参照して、実施形態1に係る雌端子としての多接点型端子1の概略について説明する。多接点型端子1は電気自動車やハイブリッド自動車等の電力供給線等に用いられる大電流端子である。
多接点型端子1は7角筒状をなす角筒部11と7つの板ばね12とを有しており、図示しない丸棒状の雄端子が前側から挿入される。雄端子が挿入されると角筒部11の内側において7つの板ばね12が雄端子の外周面に弾性接触し、雄端子と多接点型端子1とが電気的に導通する。角筒部11は筒部の一例である。板ばね12は弾性接触片の一例である。また、雄端子は相手側端子の一例である。
【0025】
(1)多接点型端子の構成
図1に示すように、多接点型端子1は本体部20と電線接続部22とが繋ぎ部21を介して前後に連なった形態をなしている。
【0026】
本体部20は前述した角筒部11と7つの板ばね12とを備えている。7つの板ばね12は溶接によって角筒部11に接合されたものである。
角筒部11は金属板を曲げ加工することによって7角筒状に形成されている。図示されていないが、角筒部11の曲げ方向における一端側には当該一端側から曲げ方向に延出しているロ字形状の係止片が形成されている。一方、角筒部11の曲げ方向における他端側には外側に向けて突出している係止凸部が切り起こし形成されている。角筒部11は7角筒状に折り曲げられた後、外側に向けて突出している係止凸部に係止片を外側から被せるようにやや屈曲させつつ外嵌させることによって開き止めされている。
【0027】
7つの板ばね12は角筒部11の各側壁11Aの前側の開口縁部から前方(角筒部11の軸方向前側)に向けて延出している。図3に示すように、板ばね12は前方に向けて延出した後、角筒部11の内側にU字状に折り返されている。板ばね12において内側に折り返された部分は後側に向けて斜め内側に延びるとともに、先端部が斜め外側に向けて延びるように屈曲した形状とされている。板ばね12において内側に最も膨出した部分(屈曲部分)は雄端子に接触する接点部とされている。
7つの板ばね12は、長さ、幅、屈曲形状等、全て同形状に形成されている。また、各板ばね12の幅は各側壁の幅より小さく設定されている。
【0028】
前述したように板ばね12は角筒部11に溶接によって接合されている。具体的には、図3に示すように、角筒部11の前側の開口縁部は角筒部11の他の部分に比べて外面が概ね板ばね12の板厚に相当する分だけ内面側に低くなる薄肉部11Bとされている。そして、その薄肉部11Bの外面に板ばね12がレーザ溶接によって接合されている。
【0029】
また、図3に示すように、板ばね12の板厚は角筒部11の板厚(言い換えると金属板の板厚)より薄くなっている。ここで角筒部11の板厚とは、角筒部11において最も板厚が厚い部分の板厚のことをいうものとする。具体的には、角筒部11において薄肉部11B以外の部分の板厚は薄肉部11Bの板厚より厚いので、薄肉部11B以外の部分が最も板厚が厚い部分である。つまり、本実施形態では板ばね12の板厚は角筒部11における薄肉部11B以外の部分の板厚より薄くなっている。
【0030】
図1に示すように、角筒部11の前側の開口縁部において隣り合う板ばね12の間には前方に向けて延びる拡張部11Cが設けられている。拡張部11Cの板厚は薄肉部11Bの板厚と同じである。角筒部11はこれらの拡張部11Cにおいて曲げ方向に折り曲げられて7角筒状とされている。図1に示すように板ばね12の前端は拡張部11Cの前端より後方に位置している。
【0031】
繋ぎ部21は角筒部11の7つの側壁11Aのうち連続する3つの側壁11Aの後端縁から後方に向けて延出されている。
電線接続部22は繋ぎ部21の後端縁から後方に向けて延出されている。電線接続部22には図示しない電線が溶着される。
【0032】
(2)多接点型端子の製造工程
多接点型端子1の製造工程では、先ず、厚さが均一の平板状の金属が金型を用いて打ち抜かれることによって角筒部11の形状に応じた金属板が形成される(打ち抜き工程)
【0033】
次に、打ち抜き工程によって形成された金属板において、角筒部11の前側の開口縁部に相当する部分がプレス装置によって薄くされ、前述した薄肉部11Bが形成される(プレス工程)。
【0034】
次に、プレス工程によって形成された薄肉部11Bの外面に、板ばね12として成形される前の長板状の金属部材がレーザ溶接装置によって金属板にレーザ溶接される(接合工程)。これにより金属板に金属部材が接合される。レーザ溶接装置は接合装置の一例である。
【0035】
なお、前述したプレス工程で用いられるプレス装置、及び、接合工程で用いられるレーザ溶接装置は、打ち抜き工程で用いられる金型に組み込まれていてもよい。その場合は、金型に平板状の金属と金属部材とがセットされ、平板状の金属が金型によって打ち抜かれて金属板が形成される。そして、その金属板において角筒部11の前側の開口縁部に相当する部分が、金型内に設けられているプレス装置によって薄くされ、その後に、金型内に設けられているレーザ溶接装置によって金属部材が金属板にレーザ溶接される。
【0036】
次に、接合工程によって接合された金属部材がプレス装置によって曲げ加工され、板ばね12として成形される(成形工程)。
【0037】
次に、金属板において繋ぎ部21に相当する部分がプレス装置によって曲げ加工されて繋ぎ部21として成形されるとともに、拡張部11Cに相当する位置でプレス装置によって金属板が曲げ方向に折り曲げ加工されて角筒部11として成形される(筒部成形工程)。
【0038】
(3)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係る多接点型端子1の製造方法によると、金属板より板厚が薄い金属部材を金属板に接合し、その金属部材を曲げて板ばね12として成形するので、厚さが均一の一枚の金属板から多接点型端子を形成する場合であって当該金属板において板ばねとして成形される部分をプレス加工によって薄くし、その薄くした部分を曲げて板ばねとして成形する場合に比べ、板ばね12の強度の低下を抑制できる。よって実施形態1に係る製造方法によると、板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くすることができる。
【0039】
更に、実施形態1に係る製造方法によると、接合工程において金属部材を金属板にレーザ溶接するので、異形材を用いる場合に比べ、板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くするためのコストを低減できる。以下、具体的に説明する。
【0040】
板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くする方法としては、板ばね12と角筒部11とを一枚の金属板から成形する方法であって、その金属板として、板ばね12として成形される部分の板厚が予め薄くなっている異形材を用いる方法も考えられる。ここでいう異形材とは、板ばね12として成形される部分を切削したり、あるいは板ばね12として成形される部分の板厚が薄くなるように金型を用いて鋳造したりすることにより、板ばね12として成形される部分をプレス加工によらず薄くしたものである。
【0041】
一般にレーザ溶接によって金属部材を金属板に接合するコストは異形材を用いる場合のコストに比べて低い。このため、レーザ溶接によって金属部材を金属板に接合すると、異形材を用いる場合に比べ、板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くするためのコストを低減できる。
【0042】
更に、実施形態1に係る製造方法によると、接合工程の前に金属板に薄肉部11Bを形成するプレス工程を含む。例えば薄肉部11Bを形成せず、金属板において角筒部11の外面となる面に金属部材を接合したとすると、金属部材の板厚の分だけ多接点型端子1の体格が大きくなってしまう。また、金属板において角筒部11の内面となる面に金属部材を接合したとすると、板ばね12と相手側端子との間隔を確保するために筒部の内径を大きくしなければならず、やはり多接点型端子1の体格が大きくなってしまう。薄肉部11Bを形成すると、多接点型端子1の体格が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0043】
更に、実施形態1に係る製造方法によると、接合工程において、金属板の面のうち角筒部11の外面となる面に金属部材を接合する。金属板において角筒部11の内面となる面に金属部材を接合すると、板ばね12と相手側端子との間隔を確保するために角筒部11の内径を大きくしなければならず、それにより多接点型端子1の体格が大きくなってしまう。角筒部11の外面となる面に金属部材を接合すると、角筒部11の内径を大きくしなくてよいので、内面となる面に接合する場合に比べて多接点型端子1の体格が大きくなってしまうことを抑制できる。
【0044】
更に、実施形態1に係る製造方法によると、打ち抜き工程と接合工程とを金型内で行うことができるので、雌端子の生産性を向上させることができる。
【0045】
また、実施形態1に係る多接点型端子1によると、板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くすることができる。
【0046】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図4ないし図5によって説明する。
実施形態2に係る多接点型端子201は、レーザ溶接ではなく、かしめによって板ばね12が角筒部11に接合されている。
【0047】
図4に示すように、実施形態2に係る金属板の薄肉部11Bには板厚方向に貫通する円形の貫通穴11Dが形成されている。そして、図4に示すように、実施形態2に係る接合工程では板ばね12として成形される長板状の金属部材において貫通穴11Dに対応する位置がプレス装置によって外面側から円形状にプレスされる(図5参照)。
【0048】
図4に示すように、プレス装置によって金属部材がプレスされると金属部材の肉が薄肉部11Bの貫通穴11Dに入り込み、入り込んだ肉によって貫通穴11Dの内側から薄肉部11Bがかしめられる。これにより金属部材が金属板に接合される。
実施形態2はその他の点において実施形態1と実質的に同一である。
【0049】
以上説明した実施形態2に係る多接点型端子201によると、かしめによって金属部材を金属板に接合する。一般にかしめによって金属部材を金属板に接合するコストは異形材を用いる場合のコストに比べて低い。このため、かしめによって金属部材を金属板に接合すると、異形材を用いる場合に比べ、板ばね12の強度の低下を抑制しつつ板ばね12を薄くするためのコストを低減できる。
【0050】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)上記実施形態1では金属板に薄肉部11Bを形成し、その薄肉部11Bに金属部材を接合する場合を例に説明した。これに対し、図6に示す多接点型端子301のように、金属板に薄肉部11Bを形成せずに金属部材を接合してもよい。実施形態2についても同様である。
【0052】
(2)上記実施形態1ではレーザ溶接によって金属部材を金属板に接合する場合を例に説明した。しかしながら、溶接はレーザ溶接に限られるものではなく、任意の方法によって溶接することができる。
また、実施形態1では溶接によって金属部材を金属板に接合する場合を例に説明したが、半田付けやロウ付けなどの公知の技術によって接合してもよいし、圧着によって接合してもよいし、導電性の接着剤によって接合してもよい。ただし、異形材を用いる場合に比べて製造コストを低減できる方法であることが望ましい。
【0053】
(3)上記実施形態2では金属板に貫通穴11Dが形成されており、金属部材の肉を金属板の貫通穴11Dに入り込ませることによってかしめる場合を例に説明した。これとは逆に、金属部材に貫通穴が形成されており、金属板の肉を金属部材の貫通穴に入り込ませることによってかしめてもよい。
また、かしめの方法は実施形態2に記載した方法に限られるものではなく、任意の方法によってかしめることができる。
【0054】
(4)上記実施形態では金属板において角筒部11の外面となる面に金属部材を接合する場合を例に説明した。これに対し、金属板において角筒部11の内面となる面に金属部材を接合してもよい。
【0055】
(5)上記実施形態では雌端子として7つの弾性接触片を備える多接点型端子を例に説明したが、弾性接触片の数は7つに限定されるものではなく、適宜に選択可能である。
【符号の説明】
【0056】
1・・・多接点型端子(雌端子)、11・・・角筒部(筒部)、12・・・板ばね(弾性接触片)、201・・・多接点型端子(雌端子)、301・・・多接点型端子(雌端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6