【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した触媒材料スラリーは以下の方法により調製した。
【0049】
(調製例1)
<酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物粉末の調製>
クエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業(株)製、試薬、褐色、鉄含量:16〜19%)333.8g、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾル(日産化学工業(株)製「ナノユースZR30−BS」、ゾル粒子径:30〜80nm、ZrO
2固形分濃度:30.8%、Zr:Y(原子比)=1:0.109、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含有。)223.5g、及び蒸留水179.1gを容量1Lのポリエチレン製ビーカーに仕込んだ。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比はFe:Zr:Y=2.00:1.00:0.109であり、Fe
2O
3、ZrO
2及びY
2O
3の含有量はFe
2O
3:ZrO
2:Y
2O
3(質量%)=54.09:41.74:4.17であった。
【0050】
この混合物をプロペラ攪拌機で十分に撹拌し、さらにホモジナイザー(IKA社製「T25」、シャフトジェネレータはIKA社製「S25N−25F」を使用)を用いて回転数20000rpmで1回あたり1分間の撹拌を3回行なった。その後、ろ紙(5種C、粒子保持能:2.5μm、直径:70mmφ)を用いて吸引ろ過を行い、不純物を除去し、クエン酸鉄(III)アンモニウムが溶解したイットリア含有ジルコニアゾル水懸濁液をガラス製ビーカーに回収した。
【0051】
この水懸濁液をテフロン(登録商標)で被覆されたプロペラ攪拌機を用いて撹拌しながら、250℃に設定したホットスターラーで加熱することにより濃縮した。水懸濁液の粘度が高くなり撹拌が困難となる手前で撹拌を停止し、濃縮物をプロペラ翼とともに120℃の乾燥機に入れ、12時間以上乾燥させた。得られた粉末をるつぼに入れ、粉末を完全に酸化させるために、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で鞘鉢に入れた。この鞘鉢を大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、大気中、150℃で3時間→250℃で2時間→400℃で2時間→500℃で5時間の条件で粉末を仮焼成した。
【0052】
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉から鞘鉢を取り出し、粉末を75μm以下の大きさになるまでメノウ乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物をるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、900℃で5時間焼成して酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物粉末(以下、「FZ粉末」という。)を得た。このFZ粉末の体積基準の粒度分布を動的光散乱法により測定し、平均粒径D50(累積頻度50%における粒径)を求めたところ、34μmであった。
【0053】
(調製例2)
<酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物スラリーの調製>
調製例1で得られたFZ粉末100質量部、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、固形分濃度:10.8%)10質量部及び水を固形分濃度が40質量%となるように混合した後、ホモジナイザーを用いて2分間撹拌して酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物スラリー(以下、「FZスラリー」という。)を得た。このFZスラリーの体積基準の粒度分布を動的光散乱法により測定し、平均粒径D50(累積頻度50%における粒径)を求めたところ、11μmであった。また、E型粘度計(東機産業(株)製「TVE−35H型」)を用いて25℃における粘度を測定したところ、
図2に示すように、ずり速度10〜300/秒の範囲において100mPa・s以下であった。
【0054】
(調製例3)
<ロジウム担持アルミナ粉末の調製>
ランタン安定化Θ−アルミナ粉末((株)キャタラー製、ランタン含有量:1質量%、比表面積:約100m
2/g)を粉砕機(アズワン(株)製「ワンダーブレンダー」)を用いて篩で粒径が25μm以下となるように粉砕した。得られた粉砕物40gに蒸留水100mlを添加し、さらに、ロジウム(Rh)を金属換算で0.06009g含有する硝酸ロジウム溶液2.114mlを添加して、La安定化Θ−アルミナ粉末に硝酸ロジウム溶液を含浸させた後、110〜150℃に徐々に温度を高めながらセットしたホットスターラー上で蒸発乾固させ、さらに、大気中、110℃で16時間乾燥させ、凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、500℃で1時間焼成することにより、Rhが担持されたLa安定化Θ−アルミナ粉末(以下、「Rh/Θ−アルミナ粉末」という。)を得た。得られたRh/Θ−アルミナ粉末を75μm以下の大きさになるまでメノウ乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物の体積基準の粒度分布を動的光散乱法により測定し、平均粒径D50(累積頻度50%における粒径)を求めたところ、13μmであった。なお、得られたRh/Θ−アルミナ粉末におけるロジウム担持量は0.15質量%であった。
【0055】
(調製例4)
<ロジウム担持アルミナスラリーの調製>
調製例3で得られたRh/Θ−アルミナ粉末100質量部、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、固形分濃度:10.8%)10質量部及び水を固形分濃度が30質量%となるように混合した後、ホモジナイザーを用いて2分間撹拌してロジウム担持アルミナスラリー(以下、「Rh/アルミナスラリー」という。)を得た。このRh/アルミナスラリーの体積基準の粒度分布を動的光散乱法により測定し、平均粒径D50(累積頻度50%における粒径)を求めたところ、12μmであった。また、調製例2と同様に、25℃における粘度を測定したところ、
図2に示すように、ずり速度10〜300/秒の範囲において100mPa・s以下であった。
【0056】
(調製例5)
<パラジウム担持セリア−ジルコニア複合酸化物粉末の調製>
硝酸酸性のパラジウム担持水溶液((株)キャタラー製、Pd含有量:8.2質量%)12.195g(Pdとして1g)に、25μm以下の大きさに粉砕したセリア−ジルコニアを含む複合酸化物粉末(平均粒径(D50):7.5μm、CeO
2:ZrO
2:その他の希土類酸化物=60質量%:30質量%:10質量%、以下、「CZ粉末」という。)99gを浸漬してCZ粉末に硝酸酸性のパラジウム担持水溶液を含浸させた後、120〜220℃に徐々に温度を高めながらセットしたホットスターラー上で蒸発乾固させ、さらに、大気中、500℃で1時間焼成することにより、Pdが担持されたセリア−ジルコニア複合酸化物粉末(以下、「Pd/CZ粉末」という。)を得た。なお、前記CZ粉末の平均粒径(D50)は、動的光散乱法により測定したCZ粉末の体積基準の粒度分布の累積頻度50%における粒径である。
【0057】
(調製例6)
<パラジウム担持セリア−ジルコニア複合酸化物粉末とアルミナ粉末との混合スラリーの調製>
調製例5で得られたPd/CZ粉末100質量部、25μm以下の大きさに粉砕したランタン安定化Θ−アルミナ粉末((株)キャタラー製、平均粒径(D50):約17μm、ランタン含有量:4質量%、比表面積:約100m
2/g)100質量部、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、固形分濃度:10.8%)20質量部及び水を固形分濃度が30質量%となるように混合した後、ホモジナイザーを用いて2分間撹拌してPd/CZ粉末とΘ−アルミナ粉末とを含有する混合スラリー(以下、「Pd/CZ+アルミナ混合スラリー」という。)を得た。なお、前記ランタン安定化Θ−アルミナ粉末の平均粒径(D50)は、動的光散乱法により測定したCZ粉末の体積基準の粒度分布の累積頻度50%における粒径である。
【0058】
(調製例7)
<酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物粉末とロジウム担持アルミナ粉末との混合スラリーの調製>
調製例1で得られたFZ粉末125質量部、調製例3で得られたRh/Θ−アルミナ粉末100質量部、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、固形分濃度:10.8%)22.5質量部及び水を固形分濃度が36質量%となるように混合した後、ホモジナイザーを用いて2分間撹拌してFZ粉末とRh/Θ−アルミナ粉末とを含有する混合スラリー(以下、「FZ+Rh/アルミナ混合スラリー」という。)を得た。このFZ+Rh/アルミナ混合スラリーの体積基準の粒度分布を動的光散乱法により測定し、平均粒径D50(累積頻度50%における粒径)を求めたところ、15.5μmであった。また、調製例2と同様に、25℃における粘度を測定したところ、
図2に示すように、ずり速度10〜300/秒の範囲において100mPa・s以下であった。
【0059】
(調製例8)
<パラジウム担持セリア−ジルコニア複合酸化物粉末とロジウム担持アルミナ粉末との混合スラリーの調製>
調製例4で得られたRh/アルミナスラリー60質量部と調製例6で得られたPd/CZ+アルミナ混合スラリー80質量部とを混合した後、撹拌してPd/CZ粉末とRh/Θ−アルミナ粉末とを含有する混合スラリー(以下、「Pd/CZ+Rh/アルミナ混合スラリー」という。)を得た。
【0060】
(実施例1)
図3に示すように、ハニカム状基材(コージェライト製、基材サイズ:縦10mm×横10mm×長さ49mm、容量:約5ml、セル形状:4角セル、セル数:200セル/インチ、セル厚:12ミル、セルピッチ:1.9mm×1.9mm)の25個のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にFZ層(触媒A層101A)を形成し、このFZ層に対向する残りの領域にRh/アルミナ層(触媒B層101B)を形成した。これらの分離コート触媒層は、合計コート量が約0.6g(ハニカム状基材1Lに対して約120g/L−cat)であった。また、FZ層とRh/アルミナ層との質量比はFZ:Rh/アルミナ=5:4となるように形成した。
【0061】
先ず、前記ハニカム状基材を水洗し、乾燥後、大気中、1000℃で3時間焼成した。
図4Aに示すように、先端部の外周面の一部に材料吐出口2が設けられている吐出管3(外径:1.07mm、内径:0.69mm)を、前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル1a内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次に、
図4Bに示すように、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例2で得られたFZスラリーを0.03mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にFZスラリーが塗布され、FZスラリー層(触媒材料A層102A)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にFZスラリーを塗布し、FZスラリー層(触媒材料A層102A)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材1のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域に幅が約1.5mmのFZ層(触媒A層101A)が形成された。
【0062】
次に、吐出管3の材料吐出口2の向きを180°回転させた後、
図4Cに示すように、吐出管3を前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次いで、
図4Dに示すように、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例4で得られたRh/アルミナスラリーを0.06mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の前記FZ層に対向する残りの領域にRh/アルミナスラリーが塗布され、Rh/アルミナスラリー層(触媒材料B層102B)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の前記FZ層に対向する残りの領域にRh/アルミナスラリーを塗布し、Rh/アルミナスラリー層(触媒材料B層102B)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材1のセルの内壁1bの内周方向の前記FZ層(触媒A層101A)に対向する残りの領域に幅が約1.5mmのRh/アルミナ層(触媒B層101B)が形成された。
【0063】
(比較例1)
図5に示すように、ハニカム状基材(コージェライト製、基材サイズ:縦10mm×横10mm×長さ49mm、容量:約5ml、セル形状:4角セル、セル数:200セル/インチ、セル厚:12ミル、セルピッチ:1.9mm×1.9mm)の25個のセルの内壁1bに、実施例1と同様の方法を用いて、2本のFZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A及び104B)を、これらの層が対向するように形成した。これらの混合触媒層は、合計コート量が約0.55g(ハニカム状基材1Lに対して約110g/L−cat)であった。また、混合層中のFZとRh/アルミナとの質量比はFZ:Rh/アルミナ=5:4となるように形成した。
【0064】
先ず、前記ハニカム状基材を水洗し、乾燥後、大気中、1000℃で3時間焼成した。
図4Aに示すように、先端部の外周面の一部に材料吐出口2が設けられている吐出管3(外径:1.07mm、内径:0.69mm)を前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル1a内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次に、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例7で得られたFZ+Rh/アルミナ混合スラリーを0.04mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にFZ+Rh/アルミナ混合スラリーが塗布され、FZ+Rh/アルミナ混合スラリー層(混合触媒材料層)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にFZ+Rh/アルミナ混合スラリーを塗布し、FZ+Rh/アルミナ混合スラリー層(混合触媒材料層)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域に幅が約1.5mmのFZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A)が形成された。
【0065】
次に、吐出管3の材料吐出口2の向きを180°回転させた後、吐出管3を前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次いで、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例7で得られたFZ+Rh/アルミナ混合スラリーを0.04mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の前記FZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A)に対向する残りの領域にFZ+Rh/アルミナ混合スラリーが塗布され、FZ+Rh/アルミナ混合スラリー層(混合触媒材料層)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の前記FZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A)に対向する残りの領域にFZ+Rh/アルミナ混合スラリーを塗布し、FZ+Rh/アルミナ混合スラリー層(混合触媒材料層)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材のセルの内壁1bの内周方向の前記FZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A)に対向する残りの領域に幅が約1.5mmのFZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104B)が形成された。これにより、幅が約1.5mmの2本のFZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A及び104B)が対向するように前記ハニカム状基材のセルの内壁1bに形成された。
【0066】
<耐熱試験(1)>
内径約30mmの反応管に、実施例1及び比較例1で得られたハニカム状触媒を同時に4本装着した。このとき、反応管に導入されるガスがハニカム状触媒内を十分に流通するように、反応管とハニカム状触媒との間の隙間を石英ウールで充填した。還元ガス〔CO(1容量%)+H
2O(3容量%)+N
2(残部)〕を10L/分で流通させながら、前記反応管を1000℃で5時間加熱して、還元雰囲気下でハニカム状触媒に耐熱試験を施した。
【0067】
<CO及びNOの50%浄化温度>
耐熱試験(1)後のハニカム状触媒を装着した前記反応管に、評価ガス〔NO(約0.1容量%)+CO(約0.45容量%)+H
2O(3容量%)+O
2(所定流量)+N
2(残部)〕を、150℃から600℃まで24℃/分の昇温速度で加熱しながら、15L/分で流通させ、各触媒入りガス温度において触媒入りガス及び触媒出ガス中のCO及びNOの濃度を測定してそれらの浄化率を算出し、CO及びNOが50%浄化された時点の触媒温度(CO及びNOの50%浄化温度)を求めた。その結果を
図6及び表1に示す。なお、O
2ガスの流量は、触媒入りガスの空燃比が約0.999になるように適宜調整した。
【0068】
<CO及びNOの平均浄化率>
耐熱試験(1)後のハニカム状触媒を装着した前記反応管に、触媒入りガス温度280℃で、定常ガス〔NO(約0.045容量%)+H
2O(3容量%)+N
2(残部)〕を15L/分で流通させながら、リッチガス(CO(約0.2容量%)+N
2(残部))を15L/分で1分間流通させた後、リーンガス(O
2(約0.05容量%)+N
2(残部))を15L/分で1分間流通させた。この操作を2回繰り返し、合計4分間(2周期分)の触媒入りガス及び触媒出ガス中のCO及びNOの平均濃度を測定してCO及びNOの平均浄化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
図6及び表1に示した結果から明らかなように、FZ層とRh/アルミナ層とをセルの内壁に内周方向に分離して形成した本発明のハニカム状触媒(実施例1:分離コート)は、2本のFZ+Rh/アルミナ混合層を対向するようにセルの内壁に形成したハニカム状触媒(比較例1:混合スラリーコート)に比べて、低い触媒入りガス温度でCO及びNOを浄化することができ、触媒活性に優れていることがわかった。
【0071】
また、表1に示した結果から明らかなように、FZ層とRh/アルミナ層とをセルの内壁に内周方向に分離して形成した本発明のハニカム状触媒(実施例1:分離コート)は、2本のFZ+Rh/アルミナ混合層を対向するようにセルの内壁に形成したハニカム状触媒(比較例1:混合スラリーコート)に比べて、CO及びNOの平均浄化率が高く、排ガス浄化性能に優れていることがわかった。
【0072】
<触媒層のX線回折測定>
ハニカム状基材(コージェライト製、セル形状:6角セル、セル間隔:1.3mm)から切り出したハニカム状平板(20mm×50mm)上に、
図7に示すように、FZ層105Aとアルミナ層105Bとを交互に形成した。すなわち、前記ハニカム状平板上に、調製例2で得られたFZスラリーとRhが担持されていないランタン安定化Θ−アルミナ粉末((株)キャタラー製、ランタン含有量:1質量%、比表面積:約100m
2/g)を含有するスラリーとを1セル分ずつ交互に塗布し、大気中、500℃で1時間焼成した。これにより、前記ハニカム状平板上に、セルの長軸方向に垂直な方向にFZ層とアルミナ層とが1セル分ずつ交互に分離して配置されている試験片(以下、「分離コート試験片」という。)を得た。
【0073】
また、前記ハニカム状平板上の全面に、調製例1で得られたFZ粉末とRhが担持されていないランタン安定化Θ−アルミナ粉末((株)キャタラー製、ランタン含有量:1質量%、比表面積:約100m
2/g)とを質量比2:1で含有する混合スラリーを塗布し、大気中、500℃で1時間焼成した。これにより、前記ハニカム状平板上の全面に、FZ+アルミナ混合層が配置されている試験片(以下、「混合スラリーコート試験片」という。)を得た。
【0074】
また、前記ハニカム状平板上の全面に、Rhが担持されていないランタン安定化Θ−アルミナ粉末((株)キャタラー製、ランタン含有量:1質量%、比表面積:約100m
2/g)を含有するスラリーを塗布し、大気中、500℃で1時間焼成した。これにより、前記ハニカム状平板上の全面に、アルミナ層が配置されている試験片(以下、「アルミナスラリーコート試験片」という。)を得た。
【0075】
また、前記ハニカム状平板上の全面に、調製例2で得られたFZスラリーを塗布し、大気中、500℃で1時間焼成した。これにより、前記ハニカム状平板上の全面に、FZ層が配置されている試験片(以下、「FZスラリーコート試験片」という。)を得た。
【0076】
各試験片に前記耐熱試験(1)を施した後、触媒層を掻きとって回収し、得られた触媒粉末について粉末X線回折測定を行なった。その結果を
図8に示す。
図8に示したように、混合スラリーコート試験片においては、FeAl
2O
4に由来するX線回折ピークが見られ、FeとAlが反応してスピネル相(FeAl
2O
4)が形成していることが確認された。一方、分離コート試験片においては、FZスラリーコート試験片と同様に、Fe
3O
4に由来するX線回折ピークが見られたが、FeAl
2O
4に由来するX線回折ピークは見られなかった。これらの結果から、FZ+Rh/アルミナ混合層を備えるハニカム状触媒(比較例1:混合スラリーコート)においては、スピネル相(FeAl
2O
4)が生成してRhが失活し、触媒活性や排ガス浄化性能が低下したと考えられる。一方、分離コート試験片においては、FeAl
2O
4に由来するX線回折ピークが見られなかったことから、Rhが失活せず、優れた触媒活性や排ガス浄化性能が発現したと考えられる。
【0077】
(実施例2)
FZスラリーの代わりに調製例6で得られたPd/CZ+アルミナ混合スラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、
図3に示すように、ハニカム状基材の25個のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域に幅が約1.5mmのPd/CZ+アルミナ混合層(触媒A層101A)を形成し、このPd/CZ+アルミナ混合層に対向する残りの領域に幅が約1.5mmのRh/アルミナ層(触媒B層101B)を形成した。これらの分離コート触媒層は、合計コート量が約0.7g(ハニカム状基材1Lに対して約140g/L−cat)であった。また、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層との質量比はPd/CZ+アルミナ:Rh/アルミナ=4:3となるように形成した。
【0078】
(比較例2)
図9に示すように、ハニカム状基材(コージェライト製、基材サイズ:縦10mm×横10mm×長さ49mm、容量:約5ml、セル形状:4角セル、セル数:200セル/インチ、セル厚:12ミル、セルピッチ:1.9mm×1.9mm)の25個のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にPd/CZ+アルミナ混合層(触媒A層101A)を形成し、このPd/CZ+アルミナ混合層の上にRh/アルミナ層を積層した。これらの積層触媒層は、合計コート量が約0.7g(ハニカム状基材1Lに対して約140g/L−cat)であった。また、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層との質量比はPd/CZ+アルミナ:Rh/アルミナ=4:3となるように形成した。
【0079】
先ず、前記ハニカム状基材を水洗し、乾燥後、大気中、1000℃で3時間焼成した。
図4Aに示すように、先端部の外周面の一部に材料吐出口2が設けられている吐出管3(外径:1.07mm、内径:0.69mm)を、前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル1a内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次に、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例6で得られたPd/CZ+アルミナ混合スラリーを0.03mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にPd/CZ+アルミナ混合スラリーが塗布され、Pd/CZ+アルミナ混合スラリー層(触媒材料A層)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の約半分の領域にPd/CZ+アルミナ混合スラリーを塗布し、Pd/CZ+アルミナ混合スラリー層(触媒材料A層)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材1のセルの内壁1bの内周方向の約半分の領域に幅が約1.5mmのPd/CZ+アルミナ混合層(触媒A層101A)が形成された。
【0080】
次に、吐出管3を、材料吐出口2の向きを変更せずに、前記ハニカム状基材1の一方の端面4からセル内に挿入し、先端部が他方の端面5に達するまで移動させた。次いで、吐出管3をセル1aの長軸方向に沿って5.0mm/秒の速さで端面5から端面4の方向に移動させ、かつ、セル1a内を吸引しながら、調製例4で得られたRh/アルミナスラリーを0.06mm/秒の速度でスラリー供給装置6から吐出管3に供給し、吐出管3の先端部の材料吐出口2から吐出させた。このとき、材料吐出口2が吐出管3の先端部の外周面の一部に設けられているため、セルの内壁1bの内周方向の前記Pd/CZ+アルミナ混合層の上にRh/アルミナスラリーが塗布され、Rh/アルミナスラリー層(触媒材料B層)が形成された。この操作を25個のセルについて行い、各セルの内壁1bの内周方向の前記Pd/CZ+アルミナ混合層上にRh/アルミナスラリーを塗布し、Rh/アルミナスラリー層(触媒材料B層)を形成した。その後、大気中、500℃で1時間焼成することにより、前記ハニカム状基材1のセルの内壁1bの内周方向の前記Pd/CZ+アルミナ混合層(触媒A層101A)上に幅が約1.5mmのRh/アルミナ層(触媒B層101B)が形成された。これにより、前記ハニカム状基材のセルの内壁1bに幅が約1.5mmのPd/CZ+アルミナ混合層(触媒A層101A)と幅が約1.5mmのRh/アルミナ層(触媒B層101B)とが積層された触媒層が形成された。
【0081】
(比較例3)
FZ+Rh/アルミナ混合スラリーの代わりに調製例8で得られたPd/CZ+Rh/アルミナ混合スラリーを用いた以外は比較例1と同様にして、
図5に示すように、ハニカム状基材の25個のセルの内壁1bに、2本のPd/CZ+Rh/アルミナ混合層(混合触媒層104A及び104B)を、これらの層が対向するように形成した。これらの混合触媒層は、合計コート量が約0.7g(ハニカム状基材1Lに対して約140g/L−cat)であった。また、混合層中のPd/CZとRh/アルミナとの質量比はPd/CZ:Rh/アルミナ=4:3となるように形成した。
【0082】
<耐熱試験(2)>
内径約30mmの反応管に、実施例2及び比較例2〜3で得られたハニカム状触媒を同時に4本装着した。このとき、反応管に導入されるガスがハニカム状触媒内を十分に流通するように、反応管とハニカム状触媒との間の隙間を石英ウールで充填した。リッチガス〔CO(1容量%)+H
2O(3容量%)+N
2(残部)〕とリーンガス〔O
2(1容量%)+H
2O(3容量%)+N
2(残部)〕を20L/分で1分毎に交互に流通させながら、前記反応管を1050℃で10時間加熱して、ハニカム状触媒に耐熱試験を施した。
【0083】
<酸素貯蔵量(OSC)>
耐熱試験(2)後のハニカム状触媒を1種類ずつ装着した内径15mmの反応管に、触媒入りガス温度600℃で、リッチガス〔CO(2容量%)+N
2(残部)〕を15L/分で1分間流通させた後、リーンガス〔O
2(1容量%)+N
2(残部)〕を15L/分で1分間流通させた。この操作を4回繰り返し、触媒入りガス中のCO量を100として後半2回(2周期)の合計4分間の触媒出ガス中のCO
2量を求め、これを酸素吸蔵量(OSC)の相対値として評価した。その結果を表2に示す。
【0084】
<NOの平均浄化率>
耐熱試験(2)後のハニカム状触媒を1種類ずつ装着した内径15mmの反応管に、触媒入りガス温度500℃、流量15L/分、空間速度18万/時間の条件で、定常ガス〔CO(0.65容量%)+NO(0.15容量%)+H
2O(5容量%)+CO
2(10容量%)+N
2(残部)〕を流通させながら、リッチガス〔O
2(0容量%)〕を3分間流通させた後、リーンガス〔O
2(0.65容量%)〕を3分間流通させた。この操作を繰り返し、安定した周期の次の周期のリッチガス流通開始から100秒間の触媒入りガス及び触媒出ガス中のNOの平均濃度を測定してNOの平均浄化率を算出した。その結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示した結果から明らかなように、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層とをセルの内壁に内周方向に分離して形成した本発明のハニカム状触媒(実施例2:分離コート)は、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層とが積層されたハニカム状触媒(比較例2:積層コート)に比べて、酸素貯蔵能に優れていることがわかった。
【0087】
また、表2に示した結果から明らかなように、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層とをセルの内壁に内周方向に分離して形成した本発明のハニカム状触媒(実施例2:分離コート)は、2本のPd/CZ+Rh/アルミナ混合層を対向するようにセルの内壁に形成したハニカム状触媒(比較例3:混合スラリーコート)に比べて、NOの平均浄化率が高く、排ガス浄化性能に優れていることがわかった。
【0088】
以上の結果から、ハニカム状基材のセルの内壁にFZ層とRh/アルミナ層とを、又は、Pd/CZ+アルミナ混合層とRh/アルミナ層とを、分離して配置することによって、高温で熱処理を施してもFeとAlとの反応やRhとPdやCZとの固溶や反応を抑制することができ、Rhの失活が抑制されることがわかった。