特許第6311954号(P6311954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6311954
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】グラウト装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20180409BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-553178(P2017-553178)
(86)(22)【出願日】2016年7月13日
(86)【国際出願番号】KR2016007628
(87)【国際公開番号】WO2017014488
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0103580
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517349809
【氏名又は名称】ユグ イーアンドシー
(73)【特許権者】
【識別番号】517065242
【氏名又は名称】ファン ウンシク
(73)【特許権者】
【識別番号】597164943
【氏名又は名称】協和設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウンシク
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−208633(JP,A)
【文献】 特開2000−045673(JP,A)
【文献】 特開2010−168764(JP,A)
【文献】 特開2003−013444(JP,A)
【文献】 特開2004−052393(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0989585(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−1371597(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00− 3/12
E02D 5/22− 5/80
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強材注入のための注入孔が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、
前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;
一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記注入孔に挿入され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記対象体に注入する注入管;
振動を発生させる振動発生部;及び
一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端に結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含み、
前記振動ワイヤは、前記注入管の長さ方向に沿って前記注入管の外側に密着され、螺旋状に巻かれていることを特徴とするグラウト装置。
【請求項2】
前記対象体に複数形成された注入孔に各々補強材が注入できるよう前記注入管は複数形成されており、
前記振動発生部から発生した振動を複数の前記注入管に伝達するために、前記振動ワイヤが複数形成されることを特徴とする請求項1に記載のグラウト装置。
【請求項3】
前記振動発生部は、
振動を発生させるメイン部;
前記メイン部に結合され、前記メイン部から発生した振動を前記振動ワイヤに伝達し、複数の前記振動ワイヤ全てが配置できるように板状に形成された振動伝達板を含むことを特徴とする請求項2に記載のグラウト装置。
【請求項4】
補強材注入のための注入孔が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、
前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;
一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記注入孔に挿入され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記対象体に注入する注入管;
振動を発生させる振動発生部;
前記注入管の先端に装着され、前記注入管と前記注入孔の内壁との間を密閉するためのパッカー;及び
一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端又は前記パッカーに結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含み、
前記振動ワイヤは、前記注入管の長さ方向に沿って前記注入管の外側に密着され、螺旋状に巻かれていることを特徴とするグラウト装置。
【請求項5】
前記対象体に複数形成された注入孔に各々補強材が注入できるよう前記注入管は複数形成されており、
前記振動発生部から発生した振動を複数の前記注入管に伝達するために、前記振動ワイヤが複数形成されることを特徴とする請求項4に記載のグラウト装置。
【請求項6】
補強材注入のための亀裂が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、
前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;
一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記亀裂の入口に連結され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記亀裂に注入する注入管;
振動を発生させる振動発生部;及び
一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端に結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含み、
前記振動ワイヤは、前記注入管の長さ方向に沿って前記注入管の外側に密着され、螺旋状に巻かれていることを特徴とするグラウト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の亀裂又は地盤にセメントミルクなどの補強材を注入して地盤を補強、又は構造物の亀裂を補強するのに用いられるグラウト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラウト工法は、構造物の軟弱部分にセメントミルク、モルタル、懸濁液などの補強材を注入して軟弱部分を補強するためのものである。
【0003】
グラウト工法の用途は非常に様々であるが、2つに大別することができる。第1は、地盤に補強材を注入する場合である。例えば、軟弱地盤の場合は、地盤に一定間隔で複数の穿孔ホールを形成した後、補強材を圧力式で注入するが、穿孔ホールに注入された後の補強材が土砂の孔隙に沿って周辺地盤に浸透することにより、地盤が安定化する。したがって、グラウトを利用した地盤補強工法において最も重要な事項は、補強材が穿孔ホールの周辺地盤にどれだけ深く浸透できるかである。
【0004】
一方、グラウト工法の第2の用途は、構造物の亀裂を補強する場合である。建物、トンネル、地下共同施設物などの構造物に亀裂が形成されると、それ自体で構造物の安全性に危険が生じ得る。さらに、地下構造物の場合、割れた隙間から地下水などが流入することにより、構造物の安全性に深刻な危険をもたらすことになる。このため、グラウト工法を用いて構造物の割れた隙間に懸濁液、セメント薬液などの補強材を注入して亀裂を埋めるのである。構造物の補強においても最も重要な事項は、補強材が亀裂の内部まで深く浸透できるかである。
【0005】
しかしながら、圧力だけに依存して補強材を注入すると、補強材が早く硬化し、又は補強材の流動性が急激に弱化することにより、補強材が地盤の深くまで浸透できないことや対象体の隙間の閉塞現象などが起こり、注入が円滑に行われない現象が発生する。補強材注入が円滑に行われないと、結果的に穿孔ホールの内側に注入された補強材が不均一に分布され、又は土砂内の孔隙もしくは微細な亀裂に補強材が浸透できないことにより、構造物の補強が十分に行われない可能性がある。
【0006】
本発明の発明者等は、このような問題点を効果的に解決するために、長い間研究を進めてきて本発明の完成に至った。関連する技術としては、大韓民国登録特許公報第10−0869566号(2008.11.28登録公告、亀裂補強装置及びそれを用いた亀裂補強方法)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、穿孔ホールに補強材を注入する場合、補強材を注入する各種の鋼管、低圧又は高圧ホース、各種の注入パイプなどを含む注入管に、鉄線、鋼線、振動の伝達が容易な引張力の強い各種の合金及び特殊融合材料などを含む振動ワイヤが長さ方向に沿って密着結合され、注入管及び補強材を直接振動させることにより、地盤の穿孔ホールに補強材を円滑かつ均一に注入することができ、浸透力の向上によって微細な隙間にまで深く補強材を浸透させることのできるグラウト装置を提供することにある。
【0008】
また、1つの振動発生部に結合された多数の振動ワイヤを備えることにより、一度の振動発生で多数の穿孔ホールに補強材を均一に注入することのできるグラウト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための本発明の一実施例によると、補強材注入のための注入孔が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記注入孔に挿入され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記対象体に注入する注入管;振動を発生させる振動発生部;及び一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端に結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含むことを特徴とするグラウト装置が提供される。
【0010】
前記振動ワイヤは、前記注入管の長さ方向に沿って前記注入管に密着されている。
【0011】
本発明は、前記振動ワイヤと前記注入管とが密着するよう前記振動ワイヤと前記注入管の外周を取り囲むバンドをさらに含むことができる。
【0012】
前記バンドは、前記注入管の長さ方向に沿って複数設けることができる。
【0013】
前記振動ワイヤは、前記注入管に沿って螺旋状に巻かれている。
【0014】
前記振動発生部は、前記注入孔の外側に露出された前記注入管の一部と結合され、前記注入管に振動を伝達することができる。
【0015】
前記対象体に複数形成された注入孔に各々補強材が注入できるよう前記注入管は複数形成されており、前記振動発生部から発生した振動を複数の前記注入管に伝達するために、前記振動ワイヤは複数形成することができる。
【0016】
この際、前記振動発生部は、振動を発生させるメイン部;前記メイン部に結合され前記メイン部から発生した振動を前記振動ワイヤに伝達するが、複数の前記振動ワイヤ全てが配置できるように板状に形成された振動伝達板を含むことができる。
【0017】
本発明の他の実施例によると、補強材注入のための注入孔が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記注入孔に挿入され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記対象体に注入する注入管;振動を発生させる振動発生部;前記注入管の先端に装着され、前記注入管と前記注入孔の内壁との間を密閉するためのパッカー;及び一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端又は前記パッカーに結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含むことができる。
【0018】
前記振動ワイヤは、前記注入管の長さ方向に沿って前記注入管に密着されている。前記対象体に複数形成された注入孔に各々補強材が注入できるよう前記注入管は複数形成されており、前記振動発生部から発生した振動を複数の前記注入管に伝達するために、前記振動ワイヤは複数形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
前記の本発明に係るグラウト装置は、構造物や地盤の隙間に補強材を注入する際、注入管に密着させて振動ワイヤを直接結合し、振動発生部から発生した振動を注入管に伝達してこれを振動させることにより、地盤の穿孔ホールに補強材を円滑かつ均一に注入することができ、構造物の微細な隙間にまで深く補強材を浸透させることができるようになる。
【0020】
また、振動発生部と注入管も密着結合し、振動発生部の振動を注入管に直接伝達することができる。
【0021】
また、1つの振動発生部に結合された多数の振動ワイヤを備えることにより、一度の振動発生で多数の穿孔ホール又は隙間に補強材が円滑に注入できるようになる。
【0022】
一方、ここにおいて明示的に言及していない効果であっても、本発明の技術的特徴にしたがって期待される以下の明細書に記載された効果及びその暫定的効果は、本発明の明細書に記載されたものと同等に取り扱われることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例に係るグラウト装置が地面に設けられていることを示す図。
図2】本発明の一実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤと注入管の結合関係を示す図。
図3】本発明の他の実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤと注入管の結合関係を示す図。
図4】本発明のさらなる他の実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤと注入管の結合関係を示す図。
図5】本発明のさらなる他の実施例にしたがって、複数の注入管と振動ワイヤを有するグラウト装置が地面に設けられていることを示す図。
図6】本発明のさらなる他の実施例に係る振動発生部に配置された複数の振動ワイヤと注入管を示す図。
図7図6のA−A’断面図。
図8図6のB−B’断面図。
図9】本発明の一実施例にしたがって、グラウト装置を利用して対象体に形成された多数の亀裂に補強材を注入することを示す図。
【0024】
添付の図面は、本発明の技術的思想に対する理解のために参照として例示したものであることをここに明らかにし、それによって本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、様々な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明において詳しく説明したいと思う。しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物又は代替物を含むものとして理解されなければならない。本発明を説明するにあたって、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にする可能性があると判断される場合は、その詳しい説明を省略する。
【0026】
本出願において使用する用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上で明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加的な可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。
【0027】
以下、本発明に係るグラウト装置を、添付図面を参照として詳しく説明することとし、添付図面を参照として説明するにあたって、同一また対応する構成要素は同じ図面番号を付し、それに対する重複説明は省略する。
【0028】
本発明は、地盤又は構造物などの対象体に穿孔機を用いて注入孔を形成し、注入管を注入孔に挿入し、補強材を注入孔に注入して対象体を補強するグラウト装置に関するものである。
【0029】
補強材を注入孔に注入する際、注入圧力によって対象体に注入されるようになるが、前記の説明の通り、補強材の硬化、補強材の流動性の弱化などにより、注入が円滑に行われないことがある。また、補強材が対象体の表面に吸着して節理及び間隙などの隙間に閉塞現象が起こり、これに伴い、注入孔内の微細な隙間に補強材が浸透できない場合もある。
【0030】
よって、本発明は、注入管を通じた補強材の注入時に、注入管を振動させ、注入管の先端からの補強材の噴射を円滑にすることで、補強材を注入孔に均一に分布させ、また振動によって補強材の流動性と浸透性とを上昇させることにより、土砂内の孔隙、岩盤の節理などの微細な隙間にまで補強材を浸透させることのできるグラウト装置を提供するものである。
【0031】
本発明において、補強材が注入される客体、すなわち「対象体」は土砂からなる地盤、岩盤又は建築/土木構造物など様々である。
【0032】
ただ、グラウトは、軟弱地盤を補強するための場合と、構造物の亀裂を埋めるための場合とに主に用いられるため、以下の実施例では前記の2つの場合について例をあげて説明するものとする。
【0033】
図1は、本発明の一実施例に係るグラウト装置を利用しての地盤補強工法に用いた例を説明するための図である。図1から図7では、本発明において補強材の注入対象となる対象体は「地盤」を前提にして説明する。
【0034】
本発明に係るグラウト装置は、ポンプ部100、注入管200、振動発生部500及び振動ワイヤ600を含む。
【0035】
まず、注入管200は、補強材を地盤に注入するための中空状の管であって、各種の鋼管、高圧ホース、Manjet Tube管、可撓性管など、各種の注入パイプなどを用いることができる。注入管200の上部はポンプ部100と連通し、他の部分は注入孔H内に挿入される。後述するポンプ部100は、注入孔Hの外側、すなわち地上に設けられるため、ポンプ部100に連通する注入管200の上部は必然的に地上に露出されざるを得ない。本発明において注入管200の上部が地上に露出されることは、単に配置の問題ではなく、振動を与えることにおいて非常に重要な意味を有するところ、これについては改めて後述する。
【0036】
ポンプ部100は、設定された圧力下で、補強材をポンピングして注入管200を介して注入孔Hに移送させるためのものである。ポンプ部100でポンピングされた補強材は、注入管200を通って注入孔Hに注入されるが、本実施例では、流量計(図示せず)をポンプ部100の出口側又は注入管200に設け、注入管200を介して移動する補強材の流量をリアルタイムで把握することができる。
【0037】
振動発生部500は、注入孔Hの外側、すなわち地上に設けられ、振動を発生させるためのものであって、主にモータが用いられる。また、偏心カムや様々な機構的組み合わせにより、モータの振動方向を上下、左右に形成し、又は規則的、不規則的に振動を与えることができる。また、モータの出力などを調節して振動の強さや周波数を様々に変化させることができる。すなわち、補強材の種類や注入対象に応じて、振動発生部は様々な強さと方向を有する振動を発生させることができる。振動発生部500から発生した振動は、後述する振動ワイヤ600に印加された後、補強材に伝達される。
【0038】
振動ワイヤ600は、一端が振動発生部500と結合され、他端が注入管200の長さ方向に沿って延長されて注入管200の先端又は後述するパッカー400と結合するようになる。これにより、振動ワイヤ600は、振動発生部500から発生した振動を注入管200に伝達する機能を有する。
【0039】
振動ワイヤ600は、例えば、鉄線、鋼線などの、振動伝達力に優れて引張力の強い各種の合金及び特殊融合材料などを用いることができる。
【0040】
本発明では、振動発生部500から発生した振動を補強材に効果的に伝達するために、振動ワイヤと注入管200とが密着するようにした。すなわち、振動ワイヤ600は、注入管200の長さ方向に沿って配置され、注入管200に密着接触する。これにより、振動発生部500から発生した振動は注入管200の長さ方向に沿って持続的に印加されることにより、振動ワイヤ600と密着接触された注入管200には絶えず振動が伝達されるようになり、このような振動が注入管200の内部を移動する補強材に伝達され、補強材の流動性が向上する。従来のグラウト装置では、ポンプ部内側に振動発生器を配置して補強材に直接振動を印加する方式を採用していたが、本発明のように、振動ワイヤを媒介体として注入管全体に振動を与える方が、従来の方式より補強材の振動効果が遥かに優れていることを確認した。特に、本発明では、振動ワイヤが注入管の長さ方向全体にかけて密着接触することにより、振動発生部から発生した振動の損失を最小化して補強材に伝達することができるという利点がある。つまるところ、本発明では、振動発生部の振動を振動ワイヤと注入管を媒介として補強材に伝達する構造であるため、振動ワイヤと注入管の結合構造が技術的に非常に重要である。これについて図面を参考として具体的に説明する。
【0041】
図2は、本発明の一実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤ600と注入管200の結合関係を示す図である。
【0042】
図2を参照すると、本発明に係る振動ワイヤ600は注入管200と並行して延長され、注入管200に密着している。この際、振動ワイヤ600の端部は、注入管200の先端又はパッカー400に結合することができる。この際、注入管200と振動ワイヤ600とが密着するよう振動ワイヤ600と注入管200の外周を取り囲むバンドBを複数含むことができる。すなわち、注入管200に沿って振動ワイヤ600を並べて配置し、注入管200と振動ワイヤ600の外周に複数のバンドBを一定間隔離隔して形成する。このようなバンドBによって注入管200と振動ワイヤ600とが互いに密着するようになる。これにより、振動ワイヤ600と注入管200は、振動発生部500から発生した振動に対して一体として反応することができるようになる。したがって、振動ワイヤ600を介した注入管200への振動の伝達が非常に効果的になされるようになる。
【0043】
図3は本発明の他の実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤ600と注入管200の結合関係を示す図であり、図4は本発明のさらなる他の実施例に係るグラウト装置の振動ワイヤ600と注入管200の結合関係を示す図である。
【0044】
図3から図4を参照すると、振動ワイヤ600が注入管200の長さ方向に沿って密着することは、前記の説明と同様である。しかしながら、図3から図4の例では、振動ワイヤ600が注入管200に螺旋状に巻かれているところに特徴がある。すなわち、図3のように、振動ワイヤ600がより広い間隔の螺旋状に注入管200に巻線なされ得るし、図4のように、より狭い間隔の螺旋状に細かく注入管200に巻線なされ得ることもある。両方の場合ともに、振動ワイヤ600が注入管200にとても近く密着するようになり、これにより、振動ワイヤ600と注入管200は一体として挙動するものと見ることもできる。前記の実施例では、振動ワイヤが注入管と並行して配置されるが、本実施例では、螺旋状に巻かれているため、振動が印加される領域がより広がるという利点がある。したがって、振動発生部500から発生して振動ワイヤ600に伝達される振動が、注入管200に直接的に伝達されるという効果がさらに大きく現れ得る。振動ワイヤ600の螺旋状の間隔は必要に応じて狭く又は広く調節できることは自明である。
【0045】
前記のように、本発明では、振動発生部の振動を振動ワイヤに印加し、振動ワイヤは、一直線状又は螺旋状をなして注入管の全体にかけて密着されることにより、補強材を効果的に振動させることができる。これにより、注入管200の先端から噴射される補強材は流動性が大幅に増大し、注入孔の周辺地盤に深くまで浸透することができる。
【0046】
図1に示した地盤補強工法を例にあげて説明する。
【0047】
穿孔ホールの周辺地盤は、一般に一定深度までは主に土砂からなり、土壌粒子の間には孔隙が形成されている。軟弱地盤とは、土壌粒子の間の孔隙率が高く土砂の強度が脆い場合をいう。したがって、地盤補強工法では、まず、軟弱地盤にマトリックス形態で一定の間隔で注入ホールを形成する。その後、グラウト装置を用いてこの注入ホールに補強材を加圧して注入することにより、補強材を周辺地盤に浸透させる。圧力を加えて補強材を地盤に浸透させるためには、補強材が注入される空間が密閉されていなければならない。このために、本実施例に係るグラウト注入装置はパッカー400を備える。
【0048】
パッカー400は、注入管200の先端に装着され、注入管200の先端と注入孔Hの内壁との間を密閉する。パッカーは様々な形態があるが、一般に弾性的に膨張可能なゴム素材からなり、その内側に流体を注入すると、パッカーが膨張して注入孔の内壁に密着され、流体を排出すると縮小される。パッカーは公知の構成であるため、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0049】
前記のように、パッカーが膨張して注入孔の内壁に密着すると、パッカーの下端部から注入孔の底面までの空間は密閉される。また、注入管は、パッカーの内部を貫通してグラウト装置の最先端まで続く。パッカーの下部の空間が密閉された状態で、注入管を介して補強材を注入すると、補強材はまず注入孔を満たした後、継続的に圧力が印加されることによって注入孔の周辺の土砂層の孔隙に沿って地盤に浸透することになる。前記のように、注入孔の最下端部に補強材を注入した後には、パッカーを収縮させ、グラウト装置を上部の一定高さ程に牽引した後、再びパッカーを膨張させ、同じ作業を行う。すなわち、区間ごとに補強材を分割打設する方式で地盤補強を行う。
【0050】
本発明に係るグラウト注入装置は、孔隙を介して浸透する補強材に振動を非常に効果的に与えることにより、補強材の流動性と浸透性を向上させるものである。従来の技術のように補強材そのものに振動を直接与える方式に比べ、本発明のように振動ワイヤを用いて注入管全体に振動を与えるようになると、補強材の振動効果が遥かに大きく現れるため、地盤補強を円滑に行うことができる。
【0051】
今までは1つの注入孔を対象として本発明に係るグラウト注入装置の構成と機能について説明したが、本発明に係るグラウト注入装置は、複数の注入孔に対して同時に地盤補強が可能なところまで拡張することができる。
【0052】
図5は、本発明のさらなる他の実施例にしたがって、複数の注入管200と振動ワイヤ600を有するグラウト装置が地面に設けられていることを示す図である。図5を参照すると、本発明に係るグラウト装置は、地盤に複数形成された注入孔Hに各々補強材が注入できるよう注入管200が複数形成されており、これに応じて振動ワイヤ600の数も注入管200の数に合わせて形成することができる。
【0053】
この際、複数の注入管200はポンプ部100にそれぞれ結合され、ポンプ部100からの補強材を各注入孔Hに注入するようになり、複数の振動ワイヤ600は振動発生部500にそれぞれ結合され、振動発生部からの振動を各注入管200に伝達するようになる。すなわち、1つのポンプ部100から供給された補強材が各注入管200を通って各注入孔Hに注入され、1つの振動発生部500から発生した振動が各注入管200に伝達されるようになる。
【0054】
すなわち、1つのポンプ部100と振動発生部500を設け、多数の注入管200をポンプ部に連結させ、これに対応するように多数の振動ワイヤ600を振動発生部に連結することにより、多数の注入孔Hに補強材を効率よく充填することができる。地盤補強工法では、複数の注入孔を形成するため、本実施例のように、一度に複数の注入孔に対して工程を行うようになると工期が短縮できるという利点がある。また、岩盤の節理や構造物の亀裂は複数発生するのが一般的である。本発明は、このような場合に最適化され得る。
【0055】
この際、振動ワイヤ600は振動発生部500に着脱可能に結合され、必要な数、すなわち注入孔の数だけの振動ワイヤ600を結合して用いることができるようになる。また、一度の振動発生によって多数の注入孔を的確に補強できるようになり、時間の節約はもちろん作業の経済性をも大きく向上させることができる。
【0056】
このように、複数の注入孔に対する同時多発的な作業を行うことができるよう、本実施例に係る振動発生部500は、メイン部と振動伝達板とを含むことができる。すなわち、メイン部は振動を発生させる部分であり、振動伝達板はメイン部から発生した振動を振動ワイヤ600に伝達する役割をする。
【0057】
振動伝達板は、四角板状で形成することができ、この際、振動伝達板の上部には振動ワイヤ600を一定間隔離隔して配置することができる。すなわち、メイン部から発生した振動が振動伝達板に伝達されると、振動伝達板の上部に一定間隔離隔されて配置された複数の振動ワイヤ600に振動が再び伝達されるようになる。したがって、非常に容易に一度の振動発生で複数の振動ワイヤ600に振動を伝達することができるようになる。
【0058】
図6は本発明のさらなる他の実施例に係る振動発生部500に配置された複数の振動ワイヤ600と注入管200を示す図で、図7図6のA−A’断面図であり、図8図6のB−B’断面図である。
【0059】
図6から図8を参照すると、振動ワイヤ600が振動発生部500の上部に配置され、振動発生部500から発生した振動が上部に配置された振動ワイヤ600に伝達されるようになる。この際、振動発生部500の上部には注入孔Hの外側に露出された注入管200の一部が結合することもあり得る。すなわち、振動発生部500に直接注入管200を結合し、振動発生部500から発生した振動を直接注入管200に伝達することもできる。
【0060】
よって、本発明の一実施例により、振動発生部500と注入管200とが直接結合して振動発生部500の振動を直接注入管200に伝達するだけでなく、振動発生部500に別に結合された振動ワイヤに振動を伝達してこれが再び注入管200に伝達されるようにもなる。これにより、振動発生部500から発生した振動の伝達効率を非常に高くすることができる。
【0061】
この際、注入管200のうち振動発生部500に直接結合する部分とそれ以外の部分は、カプラCを介して結合することができる。振動発生部500と直接接触して振動が伝達される部分は、摩耗や損傷が発生しやすいため、このような部分は取り替えが必要になる可能性がある。よって、このような場合に、注入管200のうち振動発生部500と直接接触する部分のみを容易に取り替えることができるようになる。
【0062】
図9は、本発明のさらなる他の実施例にしたがって、グラウト装置を用いて対象体に形成された多数の亀裂に補強材を同時に注入することを示す図である。前記で説明した図1及び図5は、本発明に係るグラウト注入装置を地盤補強工法に用いた例であるが、図9は、構造物の亀裂補強に用いる場合である。本発明に係るグラウト注入装置を図9のように岩盤の節理や構造物の亀裂補強に用いる場合と、図1のように地盤補強工法に用いる場合、グラウト注入装置の機械的構成は同一である。ただ、図9のように亀裂補強のための場合には、注入管の先端にパッカーを装着しない点のみが異なる。すなわち、前記の説明と同様に、注入管は、一側が補強材を供給するポンプ部に結合され、他側が亀裂の入口に連結され、ポンプ部からの補強材を構造物の亀裂に注入することができる。特に、亀裂の入口には注入管と振動ワイヤがともに挿入できるソケットのような挿入具を装着し、注入管と振動ワイヤが対象体に安定的に結合できるようにする。
【0063】
図9のように、対象体に多数の亀裂が存在する可能性があり、本発明に係るグラウト装置を用いて多数の亀裂に同時に補強材を注入するようになると、時間の節約はもちろん経済性をも大きく向上させることができる。この際、対象体の亀裂に注入管を挿入せず、直接に補強材を注入することもでき、穿孔機を用いて注入孔を形成した後、注入孔に注入管を挿入し、それから補強材を注入することもできる。すなわち、注入管200は、亀裂のサイズ及び亀裂の状況などにより、亀裂内に挿入されることも、また、亀裂の外部で亀裂の入口と連結されることもあり得る。
【0064】
対象体の亀裂に補強材を注入する場合、補強材の流動性だけでなく、補強材の硬化、亀裂のサイズ及び亀裂の深さなど様々な条件により、補強材の円滑な注入が行われない可能性がある。よって、本発明は、補強材の注入時に補強材を振動させて補強材の流動性を向上させ、亀裂の内部に均一に補強材を注入して補強材の硬化を遅らせることで、微細な亀裂にまで深く補強材を注入することができるようになる。
【0065】
また、対象体に亀裂が複数形成された場合にも、1つの振動発生部500から発生した振動をそれぞれの亀裂に連結され補強材を注入する注入管に伝達させることで、対象体の複数の亀裂に同時多発的で効率的に補強を実施することができる。
【0066】
すなわち、本発明に係るグラウト装置の複数の注入管200及び注入管200に密着結合された振動ワイヤ600を用いると、1つの振動発生部500から発生した振動が、複数の振動ワイヤ600を介して複数の注入管に伝達されるようになり、これに伴い、それぞれの亀裂に注入される補強材が振動するようになる。したがって、1つの振動発生部500を用いて、対象体に形成された複数の亀裂に補強材を同時かつ効率的に注入することができるようになる。
【0067】
また、隙間に挿入されている補強材の硬化を遅らせて注入孔Hの深く微細な亀裂にまで補強材を効率よく浸透させることができるようになる。この際、亀裂は地盤中の注入孔内の亀裂、岩盤節理、土砂の間隙など各種の隙間を含む。
【0068】
本発明の保護範囲は、以上で明示的に説明した実施例の記載と表現に制限されるものではない。また、本発明の属する技術分野における自明な変更や置換えにより、本発明の保護範囲が制限されるものでもないことを改めて付言する。
【符号の説明】
【0069】
B:バンド
C:カプラ
H:注入孔
100:ポンプ部
200:注入管
300:注入ケース
400:パッカー
500:振動発生部
600:振動ワイヤ
【要約】
本発明は、グラウト装置に関する。詳しくは、本発明は、補強材注入のための注入孔が形成された対象体に補強材を注入するグラウト装置であって、前記対象体に注入される補強材をポンピングするポンプ部;一側は前記ポンプ部に連結され、他側は前記注入孔に挿入され、前記ポンプ部によって移送される補強材を前記対象体に注入する注入管;振動を発生させる振動発生部;及び一端が前記振動発生部と結合され、他端が前記注入管に沿って延長されて前記注入管の先端に結合され、前記振動発生部から発生した振動を前記注入管に伝達する振動ワイヤを含むことを特徴とするグラウト装置を提供するものである。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8
図9