特許第6312077号(P6312077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000002
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000003
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000004
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000005
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000006
  • 特許6312077-回転角検出装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6312077
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】回転角検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/165 20060101AFI20180409BHJP
   H01C 10/32 20060101ALI20180409BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20180409BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   G01D5/165 B
   H01C10/32 A
   H01C13/00 V
   G01D5/12 N
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-1474(P2014-1474)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129686(P2015-129686A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安宅 竜二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 譲
(72)【発明者】
【氏名】尼子 定幸
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−99307(JP,U)
【文献】 実開平5−55024(JP,U)
【文献】 特開平3−210047(JP,A)
【文献】 特開平9−243306(JP,A)
【文献】 特開平11−194006(JP,A)
【文献】 米国特許第6253630(US,B1)
【文献】 特開2002−267439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
H01C 8/00−10/50、
13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1の導電パターンを介して電源に接続され、他端が第2の導電パターンを介して接地される抵抗体と、前記第1の導電パターンと前記第2の導電パターンとの間に設けた不感帯と、前記抵抗体の表面を摺接する2つの摺動子と、を有する回転型のポテンショメータと、
前記2つの摺動子が前記抵抗体の表面を摺接することに伴って発生する電圧を検出する制御部と、を備えた回転角検出装置であって、
一端が前記2つの摺動子のそれぞれに接続される2つの抵抗素子と、
前記制御部の制御に従って、前記2つの抵抗素子の他端と電源との接続状態を切換える切換え手段とを更に備え、
前記制御部は、前記2つの抵抗素子が電源と接続されていない状態であって、且つ、前記2つの摺動子から共に中間電圧が出力された場合に、前記切換え手段を制御し、前記2つの抵抗素子を電源に接続した状態で前記2つの摺動子から出力される電圧から前記2つの摺動子のうちの一方の摺動子が前記不感帯の上に位置すると判断して、他方の摺動子から出力される電圧から回転角を検出することを特徴とする回転角検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポテンショメータを用いた回転角検出装置に関し、特に、誤検出を防止することができる回転角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抵抗体と、摺動位置が異なる2つの摺動子を有するポテンショメータを回転角センサに用いて、2つの摺動子から出力される電位の変化から回転軸の回転角を検出する回転角検出装置が知られている。
【0003】
ポテンショメータを回転角センサとして用いた場合、抵抗体の両端部付近に不感帯が形成され、一方の摺動子が抵抗体と不感帯との境界部分に位置している場合に、その摺動子が抵抗器に微接触して他方の摺動子と同様に出力電位が最大電位と最小電位との間の中間電位を出力することで誤検出する可能性がある。
【0004】
特許文献1(従来例1)に記載の操舵角検出装置(回転角検出装置)900では、図6に示すように、軸部材901と、支持部材902と、抵抗器903と、抵抗器903に設けられた第1及び第2集電部材903b,903bと、操舵角演算手段904と、操舵角補正値演算手段905とを備えている。
【0005】
操舵角演算手段904と操舵角補正値演算手段905と、は第1集電部材903a及び第2集電部材903bの、前回サンプリング時の検出信号と、今回サンプリング時の検出信号から角度の検出及び補正を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−186102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来例では、前回の検出信号と、今回の検出信号から角度の検出及び補正を行うため、集電部(摺動子)が微接触した状態に留まって、中間電位を出力し続けた場合には、角度を誤検出する虞があるという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、摺動子が微接触した状態に留まったとしても誤検出を防ぐことができる回転角検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明の回転角検出装置は、一端が第1の導電パターンを介して電源に接続され他端が第2の導電パターンを介して接地される抵抗体と、前記第1の導電パターンと前記第2の導電パターンとの間に設けた不感帯と、前記抵抗体の表面を摺接する2つの摺動子と、を有する回転型のポテンショメータと、前記2つの摺動子が前記抵抗体の表面を摺接することに伴って発生する電圧を検出する制御部と、を備え、一端が前記2つの摺動子のそれぞれに接続される2つの抵抗素子と、前記制御部の制御に従って、前記2つの抵抗素子の他端と電源との接続状態を切換える切換え手段とを更に備え、前記制御部は、前記2つの抵抗素子が電源と接続されていない状態であって、且つ、前記2つの摺動子から共に中間電圧が出力された場合に、前記切換え手段を制御し、前記2つの抵抗素子を電源に接続した状態で前記2つの摺動子から出力される電圧から前記2つの摺動子のうちの一方の摺動子が前記不感帯の上に位置すると判断して、他方の摺動子から出力される電圧から回転角を検出することを特徴とする。
【0010】
これによれば、2つの抵抗素子を電源に接続されていない状態と接続されている状態とに切換えることができるので、2つの摺動子と電源との間に接続されている抵抗の合成抵抗値を変化させることができる。このため、一方の摺動子が微接触した状態で生じる接触抵抗の値よりも、抵抗素子が接続されることで構成される合成抵抗の値を小さくすることができるので一方の摺動子の出力は大きく変化し、出力電圧は高くなる。他方の摺動子は抵抗体上に摺接しているので、出力電圧は、抵抗素子が接続された場合でも変化が小さい。この変化から、他方の摺動子が抵抗体上に存在すると判断できるので、正しい操作位置を検出することが可能となる。従って一方の摺動子が微接触した状態に留まった状態でも誤検出を防ぐことができる回転角検出装置を提供することができる。
また、2つの摺動子から出力される電圧が中間電位となった場合にだけ切換え手段を制御し、2つの抵抗素子が電源に接続された状態で2つの摺動子から出力される電圧から回転角を検出する。このため、切換え手段を制御する回数が少なくてすむので効率よく回転角を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、摺動子が抵抗体に微接触した状態に留まった状態でも誤検出を防ぐことができる回転角検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る回転角検出装置の構成を示す図である。
図2】回転角検出装置に用いるポテンショメータの動きを説明する図である。
図3】本実施形態の回転角検出装置の動作を説明する図である。
図4】本実施形態の回転角検出装置の動作を説明する図である。
図5】本実施形態の回転角検出装置の動作を説明する図である。
図6】従来技術の操舵角検出装置(回転角検出装置)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下に第1実施形態における回転角検出装置100について説明する。
【0016】
まず始めに本実施形態における回転角検出装置100の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る回転角検出装置100の構成を示す図で、図1(a)は回転角検出装置100の構成を示すブロック図であり、図1(b)は回転角検出装置100の回路図である。図2は回転角検出装置100に用いるポテンショメータ1の動きを説明する図で、図2(a)は抵抗体1aと2つの摺動子(1b,1c)の位置及び動きを説明する図で、図2(b)は2つの摺動子の位置と出力電圧との関係を示す図である。
【0017】
回転角検出装置100は図1(a)に示すように、回転型のポテンショメータ1と、制御部2と、2つの抵抗素子3と、切換え手段4と、を備えている。また、回転角検出装置100は、その他に、図2(b)に示すように、第1のプルアップ抵抗R5と、第2のプルアップ抵抗R6とを有している。
【0018】
ポテンショメータ1は図1(b)に示すように、抵抗体1aと、第1の摺動子1bと第2の摺動子1cの2つの摺動子と、を有している。抵抗体1aの一端は電源に接続されており、他端は電源の基準電位に接続されて接地されている。本実施形態では、抵抗体1aの全抵抗値を10キロオーム、(以下、kΩと記す)とし、基準電位を0ボルト(以下、Vで記す)、電源の電圧を5(V)として説明する。2つの摺動子は抵抗体1aの表面を摺接し、摺動子の摺接位置に対応した0〜5(V)の間の電圧がそれぞれの摺動子に発生することになる。第1の摺動子1bと第2の摺動子1cの2つの摺動子は、それぞれ制御部2に接続されている。
【0019】
ポテンショメータ1の抵抗体1aは、図2(a)に示すように、ポテンショメータ1の回転軸Cを中心とする円周のうち内角θ1に対応する弧の部分に形成されている。抵抗体1aは一端が第1の導電パターン1dを介して電源に接続され、他端は第2の導電パターン1eを介して接地されている。
【0020】
第1の導電パターン1dは図2(a)に示すように、ポテンショメータ1の回転軸Cを中心とする円周のうち、内角θ2に対応する弧の部分に形成されており、図2(a)に示す”A”の部分で抵抗体1aと接続されている。第2の導電パターン1eは図2(a)に示すように、ポテンショメータ1の回転軸Cを中心とする円周のうち、内角θ4に対応する弧の部分に形成されており、図2(a)に示す”B”の部分で抵抗体1aと接続されている。
【0021】
第1の摺動子1bまたは第2の摺動子1cによって、第1の導電パターン1dと第2の導電パターン1eとが短絡されることがないように、絶縁体によって不感帯1fが内角θ3の範囲で形成されている。尚、本実施形態では、内角θ1が概ね190°、θ2とθ4とがそれぞれ80°、θ3が10°の範囲で形成されているものとする。
【0022】
第1の摺動子1bと第2の摺動子1cとは、回転軸Cを挟んで向かい合う位置となるように配置されており、第1の摺動子1bが図2(a)に示す抵抗体1aの上面のP1の位置にある場合には、第2の摺動子1cは不感帯1fの上に位置することとなる。また、第1の摺動子1bが図2(a)に示す抵抗体1aのP2の位置にある場合には、第2の摺動子1cはP3に位置することとなる。
【0023】
第1の摺動子1bと第2の摺動子1cの位置と出力電圧との関係について図2(b)を用いて説明する。図2(b)はポテンショメータ1の回転角と、第1の摺動子1bと第2の摺動子1cの位置に応じて出力される電圧との関係を示す図である。図2(b)において、実線で示されているのが第1の摺動子1bの出力電圧で、破線で示されているのが第2の摺動子1cの出力電圧である。
【0024】
第1の摺動子1bが、図2(a)に示すP1の位置にある場合、抵抗体1aのほぼ中央に位置しているため、出力電圧は電源電圧の半分となる2.5(V)の電圧が出力される。第1の摺動子1bが、抵抗体1aの存在する内角θ1の範囲にある場合には図2(b)に示すように回転角に応じて回転角に比例した電圧が出力される。全抵抗が10(kΩ)で抵抗体1aが190°の範囲で配置されているため回転角5°で電圧が0・13(V)変化することになる。
【0025】
第1の摺動子1bが図2(a)に示すP2の位置にある場合、第2の導電パターン1eとの接続点(B)から約5°だけP1側に回転した位置であるため、抵抗体1aの抵抗比から出力電圧は0.13(V)になる。この場合、第2の摺動子1cは図2(a)に示すP3の位置にあるため、同様に出力電圧は4.87(V)となる。
【0026】
第1の摺動子1bが図2(a)に示すP3の位置にある場合、第1の導電パターン1dとの接続点(A)から約5°だけP1側に回転した位置であるため、抵抗体1aの抵抗比から出力電圧は4.87(V)になる。この場合、第2の摺動子1cは図2(a)に示すP2の位置にあるため、同様に出力電圧は0.13(V)となる。
【0027】
第1の摺動子1bが図2(b)に示すP4のように内角θ2の範囲にある場合、電源に接続されている第1の導電パターン1dに接しているため、電源電圧の5(V)がそのまま出力される。また、第1の摺動子1bが図2(b)に示すP5のように内角θ4の範囲にある場合、基準電位に接続されている第2の導電パターン1eに接しているため、0(V)が出力される。
【0028】
第1の摺動子1bが、不感帯1fが存在する内角θ3の範囲にある場合、第1の摺動子1bは絶縁されている状態となり、出力される電圧は不定となる。本実施形態では図1(b)に示すように第1のプルアップ抵抗R5を第1の摺動子1bと電源との間に接続することで電源電圧にプルアップされるように構成しているため、この範囲では電源電圧が出力される。また、第2の摺動子1cも回転角が180°ずれた状態で第1の摺動子1bと同様に機能するため、出力電圧は、図2(b)に破線で示す電圧が出力されることとなる。尚、第2の摺動子1cと電源との間には図1(b)に示すように第2のプルアップ抵抗R6が接続されている。
【0029】
制御部2は、第1のアナログ電圧入力ポートAD1と、第2のアナログ電圧入力ポートAD2と、第1の出力ポートPO1と、第2の出力ポートPO2と、を有している。図1(b)に示すように、第1のアナログ電圧入力ポートAD1にはポテンショメータ1の第1の摺動子1bが接続され、第2のアナログ電圧入力ポートAD2には第2の摺動子1cが接続され、第1の出力ポートPO1と第2の出力ポートPO2は切換え手段4と接続されている。
【0030】
制御部2には、2つの摺動子が抵抗体1aの表面を摺接することに伴ってそれぞれの摺動子に生じる電圧が、第1のアナログ電圧入力ポートAD1と第2のアナログ電圧入力ポートAD2に入力される。制御部2は入力された電圧をアナログ信号からデジタル信号へ変換するアナログ‐デジタル変換し(以下、AD変換と記す)、その結果を電圧データとして電圧値を検出し、検出した電圧値に基づいて演算を行う。出力ポートPOには、制御部2が行った演算の結果に基づいて切換え手段4を制御するための制御信号が出力される。また、制御部2にはタイマ機能やメモリ(図示せず)が備えられ、タイマ機能による制御間隔の管理や、取得した電圧値や電圧値を演算した結果を記憶することなどを行うことができる。
【0031】
2つの抵抗素子3は図1(a)に示すように、一端が2つの摺動子のそれぞれに接続されている。2つの抵抗素子3を区別する場合には図1(b)に示すように、第1の摺動子1bに接続されている抵抗素子3をR1、第2の摺動子1cに接続されている抵抗素子3をR2と記述する。2つの抵抗素子3の他端は切換え手段4に接続されている。尚、本実施形態では、2つの抵抗素子3の抵抗値は100(kΩ)として説明する。
【0032】
切換え手段4は図1(a)に示すように、電源と、制御部2と、2つの抵抗素子3の他端と、に接続されている。切換え手段4は図1(b)に示すように、第1のトランジスタTr1と第2のトランジスタTr2の2つのトランジスタと、ベース抵抗R3と、ベース抵抗R4と、によって構成されている。2つのトランジスタ(Tr1,Tr2)は、それぞれベースとエミッタとコレクタとの3つの端子を有しており、2つのトランジスタ(Tr1,Tr2)のエミッタは電源に接続されている。第1のトランジスタTr1のコレクタは2つの抵抗素子3のR1の他端と接続され、第2のトランジスタTr2のコレクタは2つの抵抗素子3のR2の他端と接続されている。第1のトランジスタTr1のベースはベース抵抗R3を介して制御部2の第1の出力ポートPO1と接続されており、第2のトランジスタTr2のベースはベース抵抗R4を介して制御部2の第2の出力ポートPO2と接続されている。第1の出力ポートPO1及び第2の出力ポートPO2からの出力によって、2つのトランジスタ(Tr1,Tr2)のそれぞれのベースに流れる電流がオンまたはオフすることで、それぞれのトランジスタのエミッタとコレクタの間のオンまたはオフが切換えられる。このため、制御部2の制御に従って、2つの抵抗素子3の他端と電源との接続状態を切換えられる。
【0033】
第1のプルアップ抵抗R5は、一端が第1の摺動子1bに接続され、他端が電源に接続されており、第1の摺動子1bがポテンショメータ1の不感帯1fの範囲にあるときに出力電圧が不定とならないように、第1の摺動子1bをプルアップしている。また、第2のプルアップ抵抗R6は、一端が第2の摺動子1cに接続され、他端が電源に接続されており、第2の摺動子1cがポテンショメータ1の不感帯1fの範囲にあるときに出力電圧が不定とならないように、第2の摺動子1cをプルアップしている。
【0034】
第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6の値は、ポテンショメータ1の回転角度に対する出力電圧に対する影響が許容できる程度に小さくなるように選択される。本実施形態では、第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6の値は1メガオーム(以下、MΩと記す)とする。
【0035】
次に、回転角検出装置100の動作について、図2から図5を用いて説明する。図3は回転角検出装置100の動作を説明する図で、切換え手段4がオフ状態の動作を説明する図である。図3(a)は、制御部2の第1の出力ポートPO1と第2の出力ポートPO2の出力状態を示した回路図であり、図3(b)は、切換え手段4がオフ状態で第2の摺動子1cが微接触している状態の等価回路図である。図4は回転角検出装置100の動作を説明する図で、切換え手段4がオン状態の動作を説明する図である。図4(a)は、制御部2の第1の出力ポートPO1と第2の出力ポートPO2の出力状態を示した回路図であり、図4(b)は、切換え手段4がオン状態で第2の摺動子1cが微接触している状態の等価回路図である。図5は回転角検出装置100の動作を説明する図で、2つの摺動子(1b,1c)に抵抗素子3が接続された場合の摺動子に接続された場合の等価回路図である。図5(a)は第1の摺動子1bがP6に位置する場合を示す等価回路図であり、図5(b)は第2の摺動子1cがP7にある場合を示す等価回路図である。
【0036】
初期状態では図3(a)に示すように、制御部2は切換え手段4をオフ状態とするため、出力ポートPOに電源電圧と同じ5(V)の電圧を出力している。この状態の出力を”H”レベルと表す。また、第1の出力ポートPO1または第2の出力ポートPO2に0(V)が出力される場合には”L”レベルと表す。制御部2の第1の出力ポートPO1と第2の出力ポートPO2から”H”レベルが出力されているため、切換え手段4はオフ状態となる。このため図3(b)に示すように、第1の抵抗素子R1と第2の抵抗素子R2は電源に接続されていない状態となっている。
【0037】
制御部2は、第1の摺動子1bの出力電圧と、第2の摺動子1cの出力電圧をそれぞれ検出する。
【0038】
第1の摺動子1bから出力された電圧値が0.13(V)以上で2.5(V)未満の範囲であり、第2の摺動子1cの出力が4.87(V)以上の場合に、制御部2は第1の摺動子1bの出力電圧値から、回転角を演算する。この場合、第1の摺動子1bは図2(a)及び図2(b)に示すP2とP1の間に位置していることになる。
【0039】
また、第1の摺動子1bから出力された電圧値が2.5(V)より大きく4.87(V)以下の範囲であり、第2の摺動子1cの出力が0.13(V)未満の場合も、制御部2は第1の摺動子1bの出力電圧値から、回転角を演算する。この場合、第1の摺動子1bは図2(a)及び図2(b)に示すP1とP3の間に位置していることになる。
【0040】
同様に、第2の摺動子1cから出力された電圧値が0.13(V)以上で2.5(V)未満の範囲であり、第1の摺動子1bの出力が4.87(V)以上の場合に、制御部2は第2の摺動子1cの出力電圧値から、回転角を演算する。この場合、第2の摺動子1cは図2(a)及び図2(b)に示すP2とP1の間に位置していることになる。
【0041】
また、第2の摺動子1cから出力された電圧値が2.5(V)より大きく4.87(V)以下の範囲であり、第1の摺動子1bの出力が0.13(V)未満の場合も、制御部2は第2の摺動子1cの出力電圧値から、回転角を演算する。この場合、第2の摺動子1cは図2(a)及び図2(b)に示すP1とP3の間に位置していることになる。
【0042】
第1の摺動子1bが図2(a)に示すP1からP3の方向へ5°回転したP6の位置となった場合、第2の摺動子1cがP7の位置となって、不感帯1fと第2の導電パターン1eの間に位置することとなる。P7で示す位置で第2の摺動子1cが第2の導電パターン1eに微接触した場合、図3(b)の等価回路に示すように微接触で生じる接触抵抗Rsが第2の摺動子1cと基準電位との間に接続されたのと等価となる。
【0043】
微接触による接触抵抗Rsが1(MΩ)の場合には、電源電圧が第2のプルアップ抵抗R6と接触抵抗Rsとで分圧されて、第2の摺動子1cの出力には2.5(V)が出力される。このとき、第1の摺動子1bの出力には、2.63(V)の電圧が出力されている。
【0044】
このように、切換え手段4がオフ状態で、2つの抵抗素子3が電源と接続されていない状態で第1の摺動子1bと第2の摺動子1cの2つの摺動子から共に2.5(V)程度の中間電圧が出力された場合に、制御部2は切換え手段4をオン状態となるように制御する。図4(a)に示すように、制御部2が第1の出力ポートPO1と第2の出力ポートPO2に”L”レベルを出力し、切換え手段4をオン状態とすることで図4(b)の等価回路に示すように2つの抵抗素子3は電源に接続された状態となる。
【0045】
図3(b)の状態で第1の摺動子1bに出力される電圧が2.63(V)であった場合に、図4(b)に示すように2つの抵抗素子3が接続された状態では、図5(a)に示すように抵抗が接続されているのと等価になる。従って、第1の摺動子1bに出力される電圧は2.69(V)となり0.06(V)しか変化しない。
【0046】
図3(b)の状態で第2の摺動子1cに出力される電圧が2.5(V)であった場合に、図4(b)に示すように2つの抵抗素子3が接続された状態では、図5(b)に示すように抵抗が接続されているのと等価になる。従って、第2の摺動子1cに出力される電圧は4.58(V)となり、2(V)以上変化する。
【0047】
このため、第2の摺動子1cが不感帯1fと第2の導電パターン1eとの間に位置し、第2の導電パターン1eと微接触していることが判断できる。従って、2つの摺動子から出力される電圧から、制御部2は切換え手段4がオフ状態で第1の摺動子1bから出力された電圧値を用いて回転角を演算することで誤検出することなく回転角を検出することができる。また、検出する角度の誤差が許容される場合は、切換え手段4がオン状態で第1の摺動子1bから出力された電圧値を用いて回転角を演算することもできる。以上のように、2つの抵抗素子3が電源に接続された状態での2つの摺動子(1b,1c)から出力される電圧によって回転角を検出することができる。
【0048】
第1の摺動子1bが図2(a)に示すP7の位置となり、第2の摺動子1cがP6の位置で第2の導電パターン1eと微接触した場合も同様の手順で回転角を検出することができる。
【0049】
尚、以上の説明で示した摺動子の出力電圧の値は概算値であり、実際にはポテンショメータ1や抵抗素子3の値が持つ誤差などによって多少の変動がある。
【0050】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0051】
本実施形態の回転角検出装置100では、一端が電源に接続され他端が接地される抵抗体1aと、抵抗体1aの表面を摺接する2つの摺動子(1b,1c)を有する回転型のポテンショメータ1と、2つの摺動子(1b,1c)が抵抗体1aの表面を摺接することに伴って発生する電圧を検出する制御部2と、一端が2つの摺動子のそれぞれに接続される2つの抵抗素子3と、制御部2の制御に従って、2つの抵抗素子3の他端と電源との接続状態を切換える切換え手段4とを備える構成とした。
【0052】
これにより、2つの抵抗素子3を電源に接続されていない状態と接続されている状態とに切換えることができるので、2つの摺動子(1b,1c)と電源との間に接続されている抵抗の合成抵抗値を変化させることができる。このため、一方の摺動子が微接触した状態で生じる接触抵抗Rsの値よりも、抵抗素子3が接続されることで構成される合成抵抗の値を小さくすることができるので一方の摺動子の出力は大きく変化し、出力電圧は高くなる。他方の摺動子は抵抗体1aの上に摺接しているので、出力電圧は、抵抗素子3が接続された場合でも変化が小さい。この変化から、他方の摺動子が抵抗体1aの上に存在すると判断できるので、正しい操作位置を検出することが可能となる。従って一方の摺動子が微接触した状態に留まった状態でも誤検出を防ぐことができる回転角検出装置を提供することができる。
【0053】
また、本実施形態の回転角検出装置100では、制御部2は、2つの抵抗素子3が電源と接続されていない状態であって、且つ、2つの摺動子(1b,1c)から共に中間電圧が出力された場合に、切換え手段4を制御し、2つの抵抗素子3を電源に接続した状態で2つの摺動子(1b,1c)から出力される電圧から回転角を検出するよう構成した。
【0054】
これにより、2つの摺動子(1b,1c)から出力される電圧が中間電位となった場合にだけ切換え手段4を制御し、2つの抵抗素子3が電源に接続された状態で2つの摺動子(1b,1c)から出力される電圧から回転角を検出する。このため、切換え手段4を制御する回数が少なくてすむので効率よく回転角を検出することができる。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態に係る回転角検出装置100を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0056】
(1)本実施形態において、第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6が、2つの摺動子(1b,1c)と電源との間にそれぞれ接続されている例を示して説明を行ったが、第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6を省略しても良い。この場合でも、2つの摺動子(1b,1c)から共に中間電位が出力された場合に、制御部2が切換え手段4を制御して2つの抵抗素子3の他端を電源に接続した状態とすることで、どちらの摺動子が抵抗体1aの上に位置しているかを判別することができる。
【0057】
(2)本実施形態において、ポテンショメータ1の全抵抗値、2つの抵抗素子3、第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6の値について、具体的な数値を示して説明を行ったが、抵抗値は適宜変更して実施しても良い。
【0058】
(3)本実施形態において、切換え手段4は2つのトランジスタで構成されている例を示して説明を行ったが、FETや他のスイッチ素子を用いて構成しても良い。
【0059】
(4)本実施形態において、切換え手段4がオン状態の場合に2つの抵抗素子3が電源に接続される例を示して説明を行ったが、切換え手段4がオン状態の場合に2つの抵抗素子3が基準電位に接続されるように変形して実施しても良い。また第1のプルアップ抵抗R5及び第2のプルアップ抵抗R6をプルダウン抵抗に変えて基準電位に接続するように構成しても良い。
【0060】
(5)本実施形態において、切換え手段4と制御部2とが個別に構成されている例を示して説明を行ったが、制御部に切換え手段を内蔵して一体的に構成されていても良い。例えば制御部のアナログ電圧入力ポートにプルアップ抵抗の接続有無を選択できる機能を持つマイクロプロセッサユニット(MPU)等を用いて構成することができる。
【0061】
(6)本実施形態において、中間電位の範囲については具体的な範囲を示さずに代表値として2.5(V)を用いて説明を行ったが、微接触によって生じる接触抵抗は不安定な上に、温度や湿度などによっても変動する。このため、回転検出装置が適用される機器や条件に合わせて切換え手段を制御する電圧の範囲を適宜決定して実施するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 ポテンショメータ
1a 抵抗体
1b 第1の摺動子
1c 第2の摺動子
1d 第1の導電パターン
1e 第2の導電パターン
1f 不感帯
2 制御部
3 抵抗素子
4 切換え手段
100 回転角検出装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6