【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年12月3日−5日 国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて開催された第20回鉄道技術連合シンポジウムで発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流検出手段は、貫通型の直流変流器であり、当該直流変流器の貫通孔の中心に前記2本の接地線を配線することで地絡電流を一箇所で検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の地絡電流検出装置。
2つの部材により前記貫通孔に配線された前記2本の接地線を挟持すると共に、前記貫通孔に嵌合されることにより、前記2本の接地線を前記貫通孔の中心に固定する固定部材を有することを特徴とする請求項4に記載の地絡電流検出装置。
【背景技術】
【0002】
電鉄用直流変電所等では、直流機器が収納された直流キュービクルにおいて、収納された整流器によって三相交流電圧を直流電圧に変換し、直流高速度遮断器により電車線に送電している。このような直流キュービクルで地絡が発生した場合には、当該地絡時に発生する電圧を、直流高圧接地継電器により検出して、直流高速度遮断器で直流電圧及び電流を遮断することにより、地絡事故から直流変電所を保護している。
【0003】
但し、従来の直流高圧接地継電器による直流変電所の保護において、高抵抗地絡等の不完全な地絡では、直流高圧接地継電器側の電圧上昇が小さく、直流高圧接地継電器は動作しない。このため、電圧検出以外の地絡電流を検出することにより、冗長性を持たせることが求められる。
【0004】
このような地絡電流の検出に関して、整流器や直流高速度遮断器の筐体である直流キュービクル等に設けられた接地線に流れる地絡電流を直流変流器で検出して地絡事故を検出し、直流高速度遮断器で直流電圧及び電流を遮断することにより、地絡事故から直流変電所を保護する装置が開示されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
一般に、直流キュービクルに設けられる接地線は、1本ではなく、2本の接地線を設け、それぞれの地絡線に流れる地絡電流を2つの直流変流器で監視することにより、直流キュービクル内の接地母線の断線や、接地線自体の断線等が発生した場合であっても、一方の接地線に流れる地絡電流を直流変流器で検出することができ、地絡事故から直流変電所を保護することが保安上求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、直流キュービクルに設けられる接地線を2本にすると、直流変電所における迷走電流、整流時の脈流成分である交流電流、近接する交流ケーブルにより誘導される誘導電流等が、一つの接地線を介して直流キュービクルに流れ込み、また他の接地線を介して、直流キュービクルと鉄筋などの躯体との電気的なつながりによって大地に流れ出す場合があり、当該接地線を流れる地絡電流を検出する際の非対称な電流やノイズとなってしまう。
【0008】
このようなネット状回路の電流の中の2本の配線は、理想的には、2つの直流変流器で検出された地絡電流を相殺することにより除去できるはずであるが、実際には、2つの直流変流器間のネット状回路の電流の非対称性や変流器の特性のばらつき等により、真の漏洩電流と地絡電流を検出することができない。
【0009】
このため、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるために、2本の接地線に流れる数mA程度の微小電流を検出しようとした場合、当該微小電流は迷走電流等に起因するノイズに埋もれて検出できず、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えることができないといった問題点があった。
【0010】
本発明の課題は、直流キュービクルに、保安上、2本の接地線を設けた場合であっても、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる地絡電流検出装置及び地絡電流検出装置の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、この発明は、
直流機器が収納された直流キュービクルの下部に敷設され、当該直流キュービクルと大地との間を絶縁する絶縁材と、
前記直流キュービクルの接地母線を大地に接続する2本の接地線と、
前記2本の接地線にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出する電流検出手段と、
を備えるようにしたものである。
【0012】
直流機器が収納された直流キュービクルの下部に当該直流キュービクルと大地との間を絶縁する絶縁材を敷設し、2本の接地線で直流キュービクルの接地母線を大地に接続し、1つの電流検出手段で2本の接地線にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出することにより、直流キュービクルに、保安上、2本の接地線を設けた場合であっても、流れ込む迷走電流と、流れ出す迷走電流とは打ち消されて相殺されるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記2本の接地線は、前記絶縁材を貫通して大地に接続するようにしたものである。
絶縁材を貫通させて大地に接地することにより、接地線を絶縁材上に敷設する必要がなくなるので、2本の接地線をできるだけ短い経路で施工することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記接地母線は、前記直流キュービクルの長手方向に敷設され、前記2本の接地線は、前記接地母線の両端に接続されるようにしたものである。
2本の接地線により接地母線を接地する場合、2本の接地線の一端は、接地母線の両端にそれぞれ接続することにより、直流キュービクル内の接地母線が断線した場合であっても、直流キュービクルで発生した地絡電流は、どちらか一方の接地線を介して大地に流れるので、確実に直流変電所を保護することができる。
【0015】
また、望ましくは、前記電流検出手段は、貫通型の直流変流器であり、当該直流変流器の貫通孔の中心に前記2本の接地線を配線することで地絡電流を一箇所で検出するようにしたものである。
2本の接地線を、直流変流器の貫通孔の中心に配線するほどノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【0016】
また、望ましくは、2つの部材により前記貫通孔に配線された前記2本の接地線を挟持すると共に、前記貫通孔に嵌合されることにより、前記2本の接地線を前記貫通孔の中心に固定する固定部材を有するようにしたものである。
地絡電流検出装置の施工の際に、2つの部材から構成される固定部材を用い、直流変流器の貫通孔に配線された2本の接地線を、両側から挟み込み、貫通孔に挿入することにより、2本の接地線を直流変流器の貫通孔の中心に確実に固定することができるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【0017】
また、望ましくは、前記固定部材は、前記貫通孔に嵌合した時に前記貫通孔の縁に掛止する突起部を備えるようにしたものである。
地絡電流検出装置の施工の際に、固定部材を用い、直流変流器の貫通孔に配線された2本の接地線を、両側から挟み込み、貫通孔に挿入する際に、突起部によって、直流変流器の貫通孔に確実に固定することができるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【0018】
また、本出願の他の発明は、
直流機器が収納された直流キュービクルの下部に、当該直流キュービクルと大地との間を絶縁する絶縁材を敷設する絶縁工程と、
前記直流キュービクルの接地母線を2本の接地線で大地に接続する接地工程と、
前記2本の接地線を、前記2本の接地線にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出する電流検出手段に配線する配線工程と、
を含むようにしたものである。
【0019】
直流機器が収納された直流キュービクルの下部に当該直流キュービクルと大地との間を絶縁する絶縁材を敷設する絶縁工程と、2本の接地線で直流キュービクルの接地母線を大地に接続する接地工程と、前記2本の接地線を、前記2本の接地線にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出する電流検出手段に配線する配線工程と、を含むことにより、直流キュービクルに、保安上、2本の接地線を設けた場合であっても、流れ込む迷走電流と、流れ出す迷走電流とは打ち消されて相殺されるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる地絡電流検出装置の施工をすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、直流機器が収納された直流キュービクルの下部に当該直流キュービクルと大地との間を絶縁する絶縁材を敷設し、2本の接地線で直流キュービクルの接地母線を大地に接続し、1つの電流検出手段で2本の接地線にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出することにより、直流キュービクルに、保安上、2本の接地線を設けた場合であっても、流れ込む迷走電流と、流れ出す迷走電流とは打ち消されて相殺されるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1.構成の説明]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である地絡電流検出装置を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0023】
(実施形態)
本発明の実施形態の地絡電流検出装置の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、地絡電流検出装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、地絡電流検出装置100(以下、単に装置100と呼ぶ。)は、直流キュービクル1、絶縁材2、2本の接地線3、電流検出手段である直流変流器4を有する。
【0024】
直流キュービクル1は、母線BS11に並列接続された断路器DC11、直流高速度遮断器CB11及びCB12、避雷器(図示せず)等の直流機器を、箱型の金属容器に収納したものであり、例えば、電鉄用直流変電所等であっては直流1500Vの電圧を送出し、地絡事故や過負荷時には、直流高速度遮断器CB11及びCB12等によって直流1500Vの電圧及び電流を遮断することにより、直流変電所を保護する。
ちなみに、
図1においては、3個の箱型の金属容器から直流キュービクル1が構成されているが、直流変電所の規模によっては数十個の箱型の金属容器から直流キュービクル1が構成される。
【0025】
絶縁材2は、このような直流機器が収納された直流キュービクル1の下部に敷設され、直流キュービクル1と大地ET11との間を絶縁することにより、直流キュービクル1と大地ET11との間に流れる地絡電流の流れるルートを2本の接地線3に制限させる。
【0026】
接地線3は、直流キュービクル1の長手方向に敷設された接地母線EB11を大地ET11に接続するケーブル等であり、例えば、直流キュービクル1内で地絡により発生する地絡電流や、直流機器の絶縁劣化に起因する地絡電流(漏洩電流)が、接地母線EB11に流れ込んだ場合に、当該地絡電流を大地ET11に流す。
具体的には、2本の接地線3の一端は、接地母線EB11の両端にそれぞれ接続され、2本の接地線3の他端が、大地ET11に接続(接地)される。また、2本の接地線3の中間部分はそれぞれ、1つの直流変流器4の貫通孔の中心に通される。
ちなみに、接地線3は、接地線3を絶縁材2上に敷設するのではなく、接地母線EB11の両端部分で絶縁材2を貫通させて、1つの直流変流器4の貫通孔を通して大地ET11に接地することにより、2本の接地線3を、できるだけ短い経路で施工することができる。
【0027】
直流変流器4は、2本の接地線3に流れる直流電流を一箇所で高精度に検出する機器である。
具体的には、リングコアを励磁回路により常時励磁状態に保ち、検出回路とフィードバック回路を、バランス回路によりバランスさせておく。そして、リングコア内を通した2本の接地線3に直流電流(地絡電流)を流がれると、フィードバック回路のバランスが崩れるが、バランス回路が、検出回路とフィードバック回路とがバランスするように制御する。この制御の際に必要な信号の大きさが当該直流電流(地絡電流)の大きさに比例することを利用して、リングコア内を通した2本の接地線3に流れる直流電流(地絡電流)の値を検出する。
また、直流変流器4には、極性があり、直流電流(地絡電流)の流れる方向に応じて、正の電流値、或いは、負の電流値として検出される。例えば、当該極性と同じ方向に直流電流(地絡電流)が流れる場合は、正の電流値として検出され、一方、当該極性と逆方向に直流電流(地絡電流)が流れる場合は、負の電流値として検出される。
【0028】
このような、直流変流器4の出力である電流検出信号は、制御手段である検出器DT11に入力され、検出器DT11は、例えば、入力された電流検出信号の値が、予め設定された閾値を超過した場合、地絡が発生したと判断し、直流高速度遮断器CB11及びCB12等によって直流1500Vの電圧及び電流を遮断させるように制御する。
【0029】
[2.地絡電流検出装置の動作の説明]
地絡電流検出装置100の動作を
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、地絡電流検出装置100の動作を説明する説明図であり、
図2(a)は、接地線3に地絡電流以外の迷走電流等が流れた場合を示す説明図、
図2(b)は、接地線3に地絡電流が流れた場合を示す説明図である。
【0030】
また、
図3は、比較例である地絡電流検出装置の動作を説明する説明図である。
図3に示す比較例である地絡電流検出装置101の基本的な構成は、装置100と同じであり、異なる点は、2本の接地線3に流れる直流電流を1つの直流変流器4で検出するのではなく、2本の接地線3に流れる直流電流の電流値を、2つの直流変流器4でそれぞれ別個に検出する点である。
【0031】
図3の比較例に示すように、例えば、地絡電流以外の迷走電流CT31が、大地ET11から一方の接地線3を介して直流キュービクル1に流れ込み、接地母線EB11を流れ、他方の接地線3を介して再び大地ET11に流れ出す場合が想定される。
そして、上述の通り、2つの直流変流器4で検出された迷走電流CT31の電流値を相殺したとしても、2つの直流変流器4間の特性のばらつき等により、当該迷走電流CT31の影響を除去することはできずバックグラウンドのノイズとして残ってしまう。
【0032】
例えば、
図4は、装置101の2つの直流変流器4における検出波形の一例を示す説明図であり、
図5は、装置101の2つの直流変流器4における検出波形の他の一例を示す説明図である。
【0033】
図4は、直流キュービクル1と大地ET11との間に絶縁材2を敷設しない場合であり、検出波形CT41及び検出波形CT42は、装置101の2つの直流変流器4におけるそれぞれの検出波形であり、検出波形CT43は、検出波形CT41と検出波形CT42とが示す電流値を加算した波形である。
図4における波形CT43から分かるように、直流キュービクル1と大地ET11との間に絶縁材2を敷設しない場合、±200mA以上のノイズとして残ってしまう。
これは、2つの直流変流器4間の特性のばらつき等のみならず、絶縁材2を敷設しないことにより、迷走電流CT31が流れるルートを2本の接地線3に制限させることができないためである。
【0034】
また、
図5は、直流キュービクル1と大地ET11との間に絶縁材2を敷設した場合であり、検出波形CT51及び検出波形CT52は、装置101の2つの直流変流器4におけるそれぞれの検出波形であり、検出波形CT53は、検出波形CT51と検出波形CT52とが示す電流値を加算した波形である。
図5における波形CT53から分かるように、直流キュービクル1と大地ET11との間に絶縁材2を敷設した場合、
図4と比較して改善されているものの、8mA程度のノイズとして残ってしまう。
【0035】
これに対して、
図2(a)に示すように、装置100では、1つの直流変流器4により2本の接地線3に流れる直流電流を検出する構成のため、比較例と同様に、地絡電流以外の迷走電流CT21が、大地ET11から一方の接地線3を介して直流キュービクル1に流れ込み、接地母線EB11を流れ、他方の接地線3を介して再び大地ET11に流れ出す場合、流れ込む迷走電流CT21と、流れ出す迷走電流CT21とは打ち消されて相殺されてしまいノイズにならない。また、1つの直流変流器4で電流値を検出するため、比較例のような特性のばらつき等の問題は発生しない。
【0036】
例えば、
図6は、本実施の形態に係る地絡電流検出装置の検出波形の一例を示す説明図である。
【0037】
図6において、検出波形CT61は、装置100の1つの直流変流器4における検出波形であり、波形CT62は、検出器DT11において、検出波形CT61に対して、1秒間に1mAの変化が継続した場合に、1mAとして出力するマスク処理を施した波形である。
図6における検出波形CT61から分かるように、1つの直流変流器4により2本の接地線3に流れる直流電流を検出することにより、±3〜4mA程度のノイズまで低減され、検出器DT11において上述のマスク処理を施すことにより、殆ど1mA以下のノイズに低減することができる。
【0038】
一方、
図2(b)に示すように、地絡ST21が発生した場合には、地絡電流CT22及びCT23は、それぞれ2本の接地線3を介して大地ET11に流れ出す。この際、装置100では、1つの直流変流器4により2本の接地線3に流れる直流電流を検出する構成のため、流れ出す地絡電流CT22及びCT23は、打ち消されることなく確実に検出される。
【0039】
すなわち、装置100では、1つの直流変流器4により2本の接地線3に流れる直流電流を検出する構成のため、流れ込む迷走電流CT21と、流れ出す迷走電流CT21とは打ち消されて相殺されてしまい、1mA以下のノイズに低減することができるので、直流機器の絶縁劣化に起因する電流値の小さな地絡電流(例えば、数mA程度)であっても検出可能である。
【0040】
以上のように、直流機器が収納された直流キュービクル1の下部に当該直流キュービクル1と大地ET11との間を絶縁する絶縁材2を敷設し、2本の接地線3で直流キュービクル1の接地母線EB11を大地ET11に接続し、1つの直流変流器4で2本の接地線3にそれぞれ流れる地絡電流を一箇所で検出することにより、直流キュービクル1に、保安上、2本の接地線3を設けた場合であっても、流れ込む迷走電流と、流れ出す迷走電流とは打ち消されて相殺されるので、ノイズを低減することができ、直流キュービクル1内の故障の予兆を捉えるための微小電流を検出することができる。
【0041】
なお、本発明の実施形態等の説明に際しては、2本の接地線3の一端は、接地母線EB11の両端にそれぞれ接続され、2本の接地線3の他端が、大地ET11に接続(接地)されているが、これは、直流キュービクル1内の接地母線EB11の断線に対応するためである。
例えば、
図7は、直流キュービクル1内の接地母線EB11の詳細を説明する説明図であり、3個の箱型の金属容器CB71、CB72及びCB73内には、それぞれの金属容器の接地母線EB71、EB72及びEB73が、金属容器の長手方向に設けられている。
そして、直流キュービクル1の施工時に、接地母線EB71と接地母線EB72とを、ボンド線BN71によって電気的に接続し、接地母線EB72と接地母線EB73とを、ボンド線BN72によって電気的に接続することにより、直流キュービクル1の全体としての接地母線EB11が直流キュービクルの長手方向に敷設される。
【0042】
このため、2本の接地線3により接地母線EB11を接地する場合、2本の接地線3の一端を接地母線EB11の両端にそれぞれ接続することにより、ボンド線BN71若しくはボンド線BN72が断線した場合であっても、直流キュービクル1で発生した地絡電流は、どちらか一方の接地線3を介して大地ET11に流れるため、確実に直流変電所を保護することができる。
【0043】
また、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔に配線する際には、ノイズを低減するために、貫通孔の中心に配線することが望ましい。
例えば、
図8は、本実施の形態に係る地絡電流検出装置の接地線の配線位置による誤差の一例を示す説明図である。
図8中の楕円形は、直流変流器4の貫通孔の形状を示しており、縦軸及び横軸は、2本の接地線3を配線した貫通孔の位置を示している。
また、
図8中、「丸の中に×印」は、接地線3を流れる電流が、図面手前から図面裏面に向けて流れることを示し、一方、「丸の中に点」は、接地線3を流れる電流が、図面裏面から図面手前に向けて流れることを示している。
さらに、「丸の中に×印」及び「丸の中に点」の近傍の数値は、2本の接地線3を当該位置に配線した場合のノイズの電流値(mA)を示している。
【0044】
図8から分かるように、例えば、PS81の位置に2本の接地線3を配線した場合、ノイズは、0.2mA程度であり、同様にPS82の位置に2本の接地線3を配線した場合、ノイズは、1.4mA程度である。このため、貫通孔の中心ほどノイズが小さくなっており、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔に配線する際には、ノイズを低減するために、貫通孔の中心に配線することが望ましいことが分かる。
【0045】
また、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔の中心に確実に配線するため、施工時等において固定部材を用いることが望ましい。
例えば、
図9は、本実施の形態に係る地絡電流検出装置の接地線を固定する固定部材の一例を示す説明図である。
図9に示すように、固定部材PTは2つの部材PT91及びPT92から構成され、直流変流器4の貫通孔HL91に配線された2本の接地線3を、部材PT91及びPT92でSD91及びSD92に示すように両側から挟み込み、IN91に示すように貫通孔HL91に挿入する。
ちなみに、部材PT91及びPT92で、2本の接地線3を両側から挟み込んだ状態で、2本の接地線3が固定部材PTの中心に固定されると共に、当該状態における2本の接地線に対する垂直面の形状が、貫通孔HL91と略同じ形状であるので、容易に貫通孔HL91に挿入することができ、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔の中心に確実に固定することができる。
すなわち、装置100の施工の際に、2つの部材PT91及びPT92から構成される固定部材PTを用い、直流変流器4の貫通孔HL91に配線された2本の接地線3を、両側から挟み込み、貫通孔HL91に挿入することにより、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔の中心に確実に固定することができるので、ノイズを低減することができる。
【0046】
また、2本の接地線3を直流変流器4の貫通孔の中心に確実に固定するための固定部材は、当該貫通孔に挿入した時に貫通孔の縁に引っかかって、それ以上挿入できない突起部を備えることが望ましい。
例えば、
図9に示すように、固定部材PTを構成する部材PT91及びPT92に突起GD91及びGD92を設けて、直流変流器4の貫通孔HL91に配線された2本の接地線3を、両側から挟み込み、貫通孔HL91に挿入した時に、突起GD91及びGD92で形成される突起部GDが、貫通孔HL91の縁に引っかかって、それ以上挿入できなくなるようにする。
すなわち、装置100の施工の際に、固定部材PTを用い、直流変流器4の貫通孔HL91に配線された2本の接地線3を、両側から挟み込み、貫通孔HL91に挿入する際に、突起GD91及びGD92で形成される突起部GDによって、必要以上に貫通孔HL91に入り込むことなく、直流変流器4の貫通孔に2本の接地線3を確実に固定することがきる。
ちなみに、
図9に示す突起部GDは、貫通孔HL91の縁に沿って連続して形成されているが、貫通孔HL91の縁に引っかかって、それ以上挿入できなくなる機能を実現できれば、突起部GDは、部分的に形成されるものであっても良い。