【文献】
Olivier, M.,The Invader assay for SNP genotyping,Mutat Res.,2005年,Vol.3, No.573(1-2),pp.103-110
【文献】
Hsu, T.M., et al.,Genotyping single-nucleotide polymorphisms by the invader assay with dual-color fluorescence polarization detection,Clin Chem.,2001年,Vol.47, No.8,pp.1373-1377
【文献】
Ulvik, A., et al.,Single nucleotide polymorphism (SNP) genotyping in unprocessed whole blood and serum by real-time PCR: application to SNPs affecting homocysteine and folate metabolism,Clin Chem,2001年,Vol.47, No.11,pp.2050-2053
【文献】
Lyamichev, V., et al.,Comparison of the 5'nuclease activities of Taq DNA polymerase and its isolated nuclease domain,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1999年,Vol.96, No,11,pp.6143-6148
【文献】
Liu, L., et al.,Functional FEN1 genetic variants contribute to risk of hepatocellular carcinoma, esophageal cancer, gastric cancer and colorectal cancer,Carcinogenesis,2012年,Vol.33, No.1,pp.119-123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突然変異遺伝子は、単一塩基多型性(single point nucleotide polymorphisms)、1塩基以上の欠失、置換及び挿入のうち一以上を示すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記プローブの3’末端にはリポーター顔料が、前記前方プライマーの5’末端にはクエンチャー顔料がそれぞれ修飾されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記非修飾プローブを使用する場合、DNA二重結合に結合する挿入剤(intercalating agents)又はDNA二重結合の表面に結合する表面結合剤(surface binding agents)をさらに加えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
前記プローブは、リポーター顔料とクエンチャー顔料が同時に修飾されているデュアルラベルプローブであることを特徴とする、請求項10に記載の遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キット。
前記プローブの3’末端にはリポーター顔料が、前記前方プライマーの5’末端にはクエンチャー顔料がそれぞれ修飾されていることを特徴とする、請求項10に記載の遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キット。
前記非修飾プローブを使用する場合、DNA二重結合に結合する挿入剤(intercalating agents)又はDNA二重結合の表面に結合する表面結合剤(surface binding agents)をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キット。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の突然変異分析は、人間遺伝疾患診断、薬物遺伝学、薬物開発及び微生物学などの多様な科学分野でその重要性が強調されながら迅速に成長している。遺伝学分野において、突然変異は、DNAを構成する塩基配列の変化をいい、転座、逆位を初めとして特定遺伝子の挿入/欠失と単一塩基多型性(SNP)を含む。これらのうち、SNPは最も一般的な形態のDNA塩基配列の変化であり、ヒト遺伝体の場合、1,000塩基当たり1個の頻度で表れている(Sachidanandam,R.et al.2001.Nature,409:928−933)。ヒト遺伝体上で、SNPは暗号化部位(coding regions)よりは非暗号化部位(non−coding regions)でより頻繁に表れ(LI,W.H.and Sadler,L.A.1991.Genetics,129:513−523)、非暗号化部位のSNPは進化学的な研究において分子マーカーとして使用されており、暗号化部位のSNPは、遺伝子の機能、タンパク質の構造又は発現に影響を与え得るので、遺伝疾患研究及び診断においてマーカーとして使用されている(Kim,S.and Misra,A.2007.Annu.Rev.Biomed.Eng.,9:289−320)。このように、分子マーカーとしてのSNPを高い信頼度と敏感度で、迅速かつ経済的に分析できる多様な方法が開発されている(Syvanen,A.C.2001.Nat.Rev.Genet.,2:930−942;Kirk,B.W.et al.2002.Nucleic acids Res.,30:3295−3311;Kwok,P−Y.,2002.Hum.Mutat.,19:315−323)。
【0003】
RT−PCRを用いるSNP分析方法は、最も広範囲に使用される方法であって、利用可能な遺伝情報が豊かになると共に、その活用度はより大きくなっている。RT−PCRは、他のSNP分析法に比べて速く、敏感度と特異度が高く、分析費用が低く、また、容易に自動化できるという長所を有する。なお、RT−PCRは、既存の一般PCR(conventional PCR)と異なり、アガロースゲルを用いる電気泳動分析が必要でないので、汚染による分析の誤りを最小化できるという長所も有する。
【0004】
RT−PCRを用いてSNPを分析するためには、オリゴヌクレオチド形態のプローブ又はプライマーを用いるようになり、主に混成化プローブ(hybridization probe)、加水分解プローブ(hydrolysis probe又はTaqMan probe)、分子ビーコン(molecular beacons)及びスコーピオンプライマー(scorpion primers)方法などが使用されている。混成化プローブを用いる突然変異分析方法としては、蛍光共鳴エネルギー伝達(fluorescent resonance energy transfer;FRET)を原理とするRoche社のLightCycler PCRシステムを使用する方法が常用化されている(Wittwer,C.T.et al.,1997.BioTechniques,22:176−181)。分析には二つの種類のプローブが使用され、FRETは、二つのプローブが標的DNAに隣接して混成化結合される場合に蛍光が発生する原理を用いたものである。混成化プローブを用いた突然変異分析は、PCRの終了後、溶融曲線(melting curve)を分析することによって可能である。すなわち、突然変異で標的配列の一部の配列がプローブ配列と不一致する場合は、完璧に一致する場合より溶融温度が低いので、溶融曲線の様相に差を示すようになる(Lohmann,S.,et al.,2000.Biochemica,4:23−28)。混成化プローブと溶融曲線とを用いて突然変異を分析する方法は非常に速い分析方法であり、プローブデザインも相対的に容易である。しかし、溶融曲線は、実質的に常に期待する程度の突然変異判読能力を示すことができない。
【0005】
加水分解プローブ方法は、PCR反応時、プライマーと共に両末端にリポーター(reporter)とクエンチャー(quencher)が結合されたプローブを使用し、蛍光共鳴エネルギー伝達原理を用いる。すなわち、リポーターとクエンチャーとが隣接している場合、リポーターから放出されたエネルギーが隣接したクエンチャーに転移され、蛍光は検出されないが、その後、PCR増幅産物の増加と共に、標的遺伝子に結合されたプローブがTaq DNAポリメラーゼの5'→3’ヌクレアーゼ活性によって分解されながらリポーターの蛍光が発散される原理である。加水分解プローブ分析方法(TaqMan probe assay)は、標的塩基配列へのプローブの結合につながるヌクレアーゼ活性によるプローブの分解が起こり得る最適な条件を探すことが非常に重要である。すなわち、PCRに使用されるプライマーとプローブとが標的配列に混成化結合されると同時に、プローブが分解され得るPCR条件(thermal profile)が重要である。これら二つの要求条件を充足するために、一般に2段階PCRが適用される。すなわち、95℃で変性(denaturation)段階が行われ、プローブのTmより7℃〜10℃低い60℃でアニーリングと延長が同時に行われる。過度に高い温度で反応を行うと、プローブは、Taq DNAポリメラーゼによって分解されるよりは、標的から分離(strand−displace)され、蛍光は増加しなくなる(Logan,J.et al.2009.Caister Academic Press)。TaqMan
TMプローブは、蛍光物質を多様に使用し、SNP検出又は突然変異分析が可能であるという長所を有する。しかし、この方法は、プローブの特異度を付与するために短いプローブを使用しなければならなく、これによってTm値が必然的に低くなり、安定したアニーリング状態維持が難しくなる。これを克服するために、高価のMGB(Miner Groove Binder)プローブ又はLNA(Locked Nucleic Acid)プローブを使用しなければならないという短所を有する(Letertre,C.et al.2003.Mol.Cell Probes,17:307−311)。MGB TaqManプローブは、一般的なTaqManプローブと類似するが、3'末端にマイナーグルーブ結合部分を加えることによって、プローブの長さが短くてもTmが高いので、PCR条件で安定したアニーリング状態を維持できるようにする(Kutyavin,I.V.et al.2000.Nucleic Acids Res.,28:655−661)。MGBのように、別途の変形プローブを使用することなく、TaqManプローブと共にAMRS(Amplification Refractory Mutation System)PCR原理を適用してSNPを分析することもある(Ellison,G.et al.2010.J.Exp.Clin.Cancer Res.,29:132)。しかし、ARMS PCRは、SNPを区分できる最適のPCR条件を探すことが非常に難しい(Punia P.and SAunders.N.http://www.horizonpress.com/pcrbooks)。
【0006】
分子ビーコン(Molecular beacon)とスコーピオンプライマー(Scorpion primer)は、ステム−ループ(stem−loop)構造を含む構造化された探針(structured probes)であって、混成化プローブやTaqManプローブなどの線形プローブより相対的に高い特異度を示し、ミスマッチ識別能力に優れるので、類似する配列の区別又はSNPと対立形質の区分に適している。しかし、ループ構造を有するプローブをデザインすることが非常に難しいので、一般に、多くの種類のプローブを製作して実験した後、目的とする結果を得ることができるプローブを確保しにくい(Bonnet,G.,et al.1999.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96:6171−6176;Broude,N.E.2002.Trends Biotechnol.,20;249−256.;Tapp,I.et al.2000.Biotechniques,28:732−738)。
【0007】
最も代表的に使用されているリアルタイム重合酵素反応法は、加水分解プローブ方式であるTaqMan分析方法であり、これに適用された基本原理は、Taq DNAポリメラーゼが保有している5'→3'エキソヌクレアーゼ活性を用いるものである。1991年、Holland等は、鋳型DNAと相補的塩基配列を有するプローブを使用する場合、Taq DNAポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ活性によって特定PCR反応をリアルタイムで確認できることを明らかにした。また、このときに使用されるプローブは、鋳型DNAと100%相補性を有する場合のみならず、5'−末端の非相補的フラップ(flap)部位を有するプローブも区分なしでTaq DNAの5’→3'エキソヌクレアーゼ活性によって分解されることを確認した(Holland P.M.et al.,1991.Proc.Natl.Acad.Sci.,88:7276−7280)。その後、この方法を基盤にして蛍光顔料で修飾されたプローブを活用した多様なRT−PCR技法が開発され、多くの分野で広範囲に活用されている(Heid,C.A.et al.,1996.Genome Res.6.986−994.;Livak K.J.1999.Genet.Anal.,14:143−149)。
【0008】
一般に、眞核生物(eukarya)と古細菌類(archaea)は、DNAポリメラーゼとFEN1ヌクレアーゼ(Lieber,M.R.,1997.BioEssays 19:233−240)と呼ばれるDNAエンドヌクレアーゼIVが区分されており、フラップエンドヌクレアーゼ1(FEN1)は、DNAの複製と修繕過程で生成される5'−フラップを除去する重要な役割をするものと知られている(Rossi,M.L.et al.,Chem.Rev.106,453−473,Kim,K.et al.,1998.J.Biol.Chem.,273:8842−8848:Klungland,A.and Lindahl,T.1997.EMBO J.16:3341−3348)。特に、眞核生物のFENは、癌、ウイルス性疾病の進行などと連関しており、新薬開発のためにFEN、特にFEN−1の活性阻害剤に対する関心が非常に大きくなっている(McWhirter C.et al.2013.J.biomol.Screen.18:567−75)。
【0009】
その一方で、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のDNAポリメラーゼ(Taq)を含む原核生物ファミリーAポリメラーゼの場合は、一つのタンパク質内に5'−ヌクレアーゼとDNAポリメラーゼが互いに異なるドメインに存在し、5'−ヌクレアーゼは一般的な5'→3'エキソヌクレアーゼ活性の他に5’−フラップを除去するエンドヌクレアーゼ(FEN)活性を同時に有しているものと知られている(Lyamichev,V.et al.1993.Science,260:778−783)。
【0010】
上述したHolland等の実験結果は、使用されるプローブの5'−末端にフラップ部位が存在する場合は、Taq DNAポリメラーゼの5'→3’エキソヌクレアーゼ活性でなくFEN活性によるものであることが分かる。しかし、TaqManプローブを使用する既存の方法では、5'→3’エキソヌクレアーゼとFEN活性を区別することなく、総称して5'−ヌクレアーゼとして使用している。2005年に発表されたインベーダーアッセイ(Invader assay)(Olivier M.,2005.Mutat.Res.,573:103−110)は、熱安定性(thermostable)FEN酵素の特性を用いてSNPを検出できる方法を提示したが、回転信号増幅でなく等温(isothermal)反応に起因する低い敏感度のため幅広く活用されてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を含むDNAポリメラーゼの5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性抑制を用いてリアルタイム重合酵素連鎖反応で突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0028】
また、本発明は、前記DNAポリメラーゼが耐熱性DNAポリメラーゼであることを特徴とする、5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性が抑制又は除去されたDNAポリメラーゼを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0029】
本発明で用いられる耐熱性DNAポリメラーゼとしては、特に制限はないが、具体的な例としては、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、サーモコッカス・ゴルゴナリウス(Thermococcus gorgonarius)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、サーモコッカス・コダカラエンシスKOD1(Thermococcus kodakaraensis KOD1)、パイロコッカス・
ヴェッセイ (Pyrococcus woesei)、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、アエロパイラム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)、アクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)、パイロロバス・フマリ(Pyrolobus fumarii)、メタノピュルス・カンドレリ(Methanopyrus kandleri)由来の耐熱性DNAポリメラーゼ又はウルトラ(Ultra)DNAポリメラーゼなどを含む野生型又はその由来の変異型耐熱性DNAポリメラーゼを挙げることができる。耐熱性DNAポリメラーゼは、遺伝工学的かつ人工的に合成された耐熱性DNAポリメラーゼを包括する。
【0030】
本発明において、5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性の抑制は、プローブ及びプライマーを適切に位置させることによって5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制する方法、DNAポリメラーゼの変異を通じて5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制する方法、5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性阻害剤を添加する方法、その他の5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性に影響を及ぼす反応条件、例えば、塩イオンの濃度を調節するなどの方法で達成することができる。
【0031】
このような方法のうち、本発明の実施例では、具体的に、重合酵素連鎖反応産物と対をなすプローブを適切に位置させることによって5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制する方法で本発明の目的を達成できることを提示した。
【0032】
また、本発明は、PCR産物と対をなす検出用プローブの5'−末端をPCR産物の5'−末端から24塩基−38塩基以内に位置させることによって5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制させることを特徴とする、DNAポリメラーゼを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0033】
また、本発明は、前記検出用プローブが5'−末端にフラップ部位を有するプローブであることを特徴とする、DNAポリメラーゼを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0034】
また、本発明は、前記検出用プローブの5'−末端が2塩基以上の連続的なフラップ構造又は非連続的フラップ構造を有することを特徴とする、DNAポリメラーゼを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0035】
また、本発明は、前記突然変異遺伝子が単一塩基多型性(SNP)、1塩基以上の欠失、置換及び挿入のうち一つ以上を示すことを特徴とする。
【0036】
また、本発明は、5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を含むDNAポリメラーゼを用いたリアルタイム重合酵素連鎖反応で突然変異遺伝子を検査する方法において、DNAポリメラーゼの5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制するプローブを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0037】
また、本発明は、前記遺伝子突然変異部位がPCR産物と対をなすプローブの5'−末端に位置することを特徴とする、DNAポリメラーゼの5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性を抑制するプローブを用いて突然変異遺伝子を検査する方法に関する。
【0038】
また、本発明は、前記突然変異遺伝子が単一塩基多型性(SNP)、1塩基以上の欠失、置換及び挿入のうち一つ以上を示すことを特徴とする。
【0039】
また、本発明は、前記プローブが、対立形質によってDNAポリメラーゼの5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性が抑制される5'−末端フラップ構造が誘導されるものであることを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、前記DNAポリメラーゼの5'−フラップエンドヌクレアーゼ活性が抑制される5'−末端フラップ構造が誘導されるプローブが、5'−フラップ塩基が一つである構造、5'−フラップ塩基が二つである構造、又は非連続的フラップ構造であって、5'−フラップ塩基が二つであり、末端塩基の一つはマッチされる構造であるMis+3(1)であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明は、1塩基以上の欠失、置換及び挿入のうち一つ以上の突然変異部位が、PCR産物と対をなすプローブの5'−末端に位置することを特徴とする。
【0042】
また、本発明は、遺伝子突然変異検査用重合酵素連鎖反応キットにおいて、試料DNA、前方プライマー、後方プライマー、プローブ及び耐熱性DNAポリメラーゼを含み、前記プローブは、DNAポリメラーゼのFEN活性を抑制するものであることを特徴とする遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キットに関する。
【0043】
また、本発明は、前記プローブが、リポーター顔料とクエンチャー顔料とが同時に修飾されているデュアルラベルプローブ又は非修飾プローブであることを特徴とする遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キットに関する。
【0044】
また、本発明は、前記前方プライマー及び後方プライマーがそれぞれ相補結合配列を含み、プローブは、リポーター顔料とクエンチャー顔料とが同時に修飾されているデュアルラベルプローブであることを特徴とする遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キットに関する。
【0045】
また、本発明は、前記非修飾プローブを使用する場合は、SYBR−グリーンなどのDNA二重結合に結合する挿入剤(intercalating agents)又は表面結合剤(surface binding agents)を付加することを特徴とする遺伝子突然変異検査用リアルタイム重合酵素連鎖反応キットに関する。
【0046】
本発明は、SNPなどの突然変異DNAを効果的に検出できる方法を開発し、遺伝疾患検査、腫瘍関連遺伝子検査などに臨床的に用いるためのものである。
【0047】
本発明は、リアルタイムPCRのために必要な一対のプライマー、二つのプライマーのうち一つ及び一部分の相補的な塩基配列で構成されながら標的遺伝子塩基配列などのプローブ、及び5'−ヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて突然変異を検出することを特徴とする。
【0048】
本発明者等は、5'−フラップ構造を認識して分解するTaq DNAポリメラーゼのフラップエンドヌクレアーゼ(Flap endonuclease;FEN)活性能力がPCR時に混成化結合されるプローブの位置によって変わり得ることを発見した(
図1a)。この発見を用いて、DNAポリメラーゼのヌクレアーゼ活性を用いた新たな概念のSNP検出方法を発明することができた(
図1b)。
【0049】
本発明において、5'−フラップ構造を認識して加水分解するDNAポリメラーゼのFEN活性は、PCR時に混成化結合されるプローブの位置によって変わり得る(
図1)。具体的に、混成化結合時、5'−フラップ構造を有するプローブがPCR増幅産物の末端に位置すると、DNAポリメラーゼのFEN活性が制限され、プローブは分解されない。より具体的には、混成化結合時、プローブの5'−フラップ塩基が0個である構造を有するプローブ(以下、Mis+0)及び1塩基である構造を有するプローブ(以下、Mis+1)を使用する場合はPCR増幅産物が生じる一方、5'−フラップ塩基が2塩基である構造を有するプローブ(以下、Mis+2)及び3塩基である構造を有するプローブ(以下、Mis+3)を使用する場合はDNAポリメラーゼのFEN活性が制限され、PCR増幅産物が生成されない(
図3a〜
図3d)。
【0050】
本発明で適用可能なプライマーとプローブ類型としては、プライマーの5’−末端にクエンチャー、プローブの3’−末端にリポーターの機能が可能な蛍光物質が結合された変形オリゴヌクレオチドを使用するDSP(double stranded primer)システムを用いたNSTS/dsp(
図4a)があり、SYBRグリーン原理を適用した非修飾プライマー及びプローブを用いるNSTS/sybr−グリーン(
図4b)などの既存のリアルタイムPCRに使用されるプライマーとプローブも可能である。
【0051】
また、既存に最も幅広く活用されているTaqManプローブシステムの場合は、プローブの5'−フラップ部位が2塩基以上である場合もTaq DNAポリメラーゼのFEN活性が抑制されないが(
図5b)、TaqManプローブをPCR産物の末端位置に適用させたNSTS/taqmanの場合は、プローブの5−フラップ部位が2塩基以上である場合、Taq DNAポリメラーゼのFEN活性が抑制され、PCR増幅産物が生じないことを確認することができた(
図5a)。したがって、TaqManプローブも、PCR産物の末端部位に位置させる場合、本発明の方法を効果的に適用可能であることを確認することができる。
【0052】
本発明において、DNAポリメラーゼのFEN活性が抑制される条件であるプローブのPCR産物内の末端位置は、プローブの5'−フラップ部位からPCR産物の5’−末端位置まで28塩基〜34塩基内に限定して使用可能であるが(
図6a〜
図6d、
図7a〜
図7d)、必ずしもこれに限定されることはない。
【0053】
また、本発明では、特定SNPポイントを検査するのに使用されるNSTSプローブペアの5'−末端部位の構造を提供する。
【0054】
また、本発明では、多様なSNP部位とこれに適切なNSTSプローブペアに対する適用を、NSTS/sybr−グリーンを活用して検証することによって、Mis+1/Mis+2(
図9a)、Mis+3(2)/Mis+3(1)(
図9b)或いはMis+2(1)/Mis+2(
図9c)ペアのプローブが効果的にSNPタイピングに使用できることが分かる。しかし、プローブの使用がこれら5'−末端構造にのみ限定して制限されることはない。
【0055】
本発明は、プローブの相補結合温度差によってプローブを区分することを特徴とする既存の方法が有している同時多種分析及び温度敏感性の限界点を克服できる新たなSNPタイピング方法を提供する。
【0056】
本発明では、任意に選択された8種のNSTS/sybr−グリーン用プローブペアに対して同時にRT−PCRを行い、これらプローブペアが同時に効果的にSNPタイピングに使用できることを確認することができた(
図10)。また、同一の8種のプローブペアに対して異なるアニーリング温度(10℃差)で反復的に行ったRT−PCR結果(
図10)も同一の結果を示すことによって、本発明のSNPタイピング方法が、アニーリング温度に敏感でなく、酵素の反応特異性を用いて多種のプローブペアを区分できるので、同時に効果的に多種SNPをタイプできることを確認した(
図11)。
【0057】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0058】
DNA試料準備
ラムダDNA(Catalog#N3011S、New England BioLabs社)をPCR用鋳型DNAとして使用した。ラムダDNAは、滅菌蒸留水を用いて希釈して100pg/ul準備した。このように準備されたDNAは、実験に使用するまで冷凍保管した。
【0059】
プライマー及びプローブ製作
ラムダDNAの特定遺伝子部位をPCR増幅できるようにプライマーをデザインし、プローブは、増幅産物への混成化結合が可能な塩基配列を有するようにデザインした。蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)原理を適用するために蛍光物質が結合されたプライマーとプローブを使用した。デザインされたプライマー及びプローブは、本出願人である(株)ゼノテックのオリゴヌクレオチド合成システムを用いて製作した。
【0060】
RT−PCR反応及び確認
前記準備したラムダDNA試料を鋳型とし、準備したプライマー及びプローブを用いてリアルタイム重合酵素連鎖反応を行った。使用したプライマーとプローブは各実施例に記載した。本実施例に使用したポリメラーゼ及び反応組成物は、3.1X qPCRMix(31mM Tris、pH9.0、4.65mM MgCl
2、124mM KCl、620mMメチルグルコース、3.1mM dNTPs、3.1u Taq DNAポリメラーゼ、(株)ゼノテック、韓国)であった。RT−PCR増幅産物は、ABI7500リアルタイムPCRシステム又はCFX9600リアルタイムシステムを用いてリアルタイムで確認した。
【0061】
実施例1:二重鎖プライマー(Double−Stranded primer;DSP)システムを用いたリアルタイム重合酵素連鎖反応の増幅曲線確認試験
二重鎖を形成するプライマー/プローブを用いたリアルタイム重合酵素連鎖反応を行い、PCR増幅曲線を確認する試験である。前方プライマーの5'−末端で4番目の配列からプローブと混成化結合する二重鎖プライマー/プローブである。前方プライマーの5'−末端にはクエンチャーとしてTAMRAが、プローブの3−末端にはリポーターとしてFAMが結合されている。
*DSP試験用プライマーとプローブ
前方プライマー:5'−TAMRA−gccgcgctggatgaactgatac−3'
プローブ:5'−ccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
*RT−PCR反応条件:
95℃、5分(1回)、
95℃、15秒−60℃、40秒−72℃、30秒(35回反復)
*RT−PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、前記2種類のプライマーとプローブの各1ul(10pmol/ul)、及びTaq DNAポリメラーゼなどのリアルタイムPCRに必要な反応組成物があらかじめ混合された3.1x qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終容量を20ulにする。
【0062】
PCR増幅産物が生成されることによってDSPプローブが加水分解され、FAMの信号が漸次増加する典型的なRT−PCR信号が観察された。これにより、二重鎖を形成するプライマー/プローブがRT−PCR連鎖反応を妨害しないことを確認することができた(
図2)。
【0063】
実施例2:DSPプローブの5'−末端構造の特性によるリアルタイム重合酵素連鎖反応
DSPプローブの5−末端構造に変化を与えて、5'ヌクレアーゼ活性化程度の差を確認しようとした。プローブの5−末端構造は、フラップ構造がないプローブ(Mis+0)、1個の塩基がフラップ構造を有するプローブ(Mis+1)、2個のフラップ構造を有するプローブ(Mis+2)、及び3個のフラップ構造を有するプローブ(Mis+3)を使用して試験した。
*プライマー
前方プライマー:5'−TAMRA−gccgcgctggatgaactgatac−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
*プローブ
Mis+0:5'−ccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
Mis+1:5'−tccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
Mis+2:5'−atccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
Mis+3:5'−catccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
*RT−PCR反応条件
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−60℃、30秒−72℃、30秒(40回反復)
*RT−PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、前記2種類のプライマーとプローブの各1ul(10pmol/ul)、及びTaq DNAポリメラーゼなどのリアルタイムPCRに必要な反応組成物があらかじめ混合された3.1x qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終的な総容量を20ulに合わせた。
【0064】
図3で確認されるように、プローブの5−末端のフラップ構造にしたがってTaq DNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性に差が表れることを確認することができる。Mis+0とMis+1プローブを使用した試験ではPCR増幅曲線が増加を示すが、1個のフラップ構造を有するMis+1プローブを使用した場合の増幅曲線のCt値がより大きい。Mis+2とMis+3プローブを使用した試験では信号が増幅されなかった。このような結果は、既存のTaqManプローブと異なり、DSPプローブがPCR増幅産物の末端に位置する点と、プローブの5−末端フラップ構造の差を反映したものと見える。また、このような結果は、Taq DNAポリメラーゼの5'→3'エキソヌクレアーゼ作用による遊離FAMの生成を5−末端のフラップ構造が抑制して発生したと推論することができる。
【0065】
実施例3:多様なプローブ形態による5−末端フラップ構造を有するプローブのリアルタイム重合酵素連鎖反応
実施例2で発生した5'−末端構造によるTaq DNAポリメラーゼのフラップエンドヌクレアーゼ(FEN)活性抑制作用をさらに具体的に確認するために、DSPプローブとSYBRグリーンプローブ及び外側(External)TaqManプローブとTaqManプローブを用いて、PCR増幅産物のプローブ結合位置とプローブの5'−末端構造によるTaq DNAポリメラーゼの5ヌクレアーゼ活性の差を確認しようとした。
実施例のプライマーとプローブRT−PCR条件は、下記の通りである。
*DSPプローブ試験用プライマー(
図4a)
前方プライマー:5'−TAMRA−gccgcgctggatgaactgatac−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
*プローブ
Mis+0:5'−ccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
Mis+1:5'−tccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
Mis+2:5'−atccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
*SYBRグリーンプローブ試験用プライマー(
図4b)
前方プライマー:5'−gccgcgctggatgaactgatac−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
*プローブ
Mis+0:5'−ccggtatcagttcatccagcgc−3'
Mis+1:5'−tccggtatcagttcatccagcgc−3'
Mis+2:5'−atccggtatcagttcatccagcgc−3'
*外側TaqManプローブ試験用プライマーとプローブ(
図5a)
前方プライマー:5'−taccggggttgctgagtgaatata−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
プローブ
Mis+0:5'−FAM−cgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
Mis+1:5'−FAM−acgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
Mis+2:5'−FAM−cacgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
*TaqManプローブ試験用プライマーとプローブ(
図5b)
前方プライマー:5'−gccgcgctggatgaactgatac−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
プローブ
Mis+0:5'−FAM−cgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
Mis+1:5'−FAM−acgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
Mis+2:5'−FAM−cacgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−60℃、30秒−72℃、30秒(35回反復)
*PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、2種類のプライマーとプローブの各1ul(10pmol/ul)、SYBRグリーン(Takara)1ul(10X)及び3.1X qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終的な総容量20ulにして使用した。
【0066】
図4及び
図5から分かるように、プローブの形態によってPCR増幅曲線が異なる形態を示す。前方プライマーとプローブが混成化結合されているSYBRグリーン、外側TaqManプローブの場合、DSPと同様に、プローブ末端のフラップ構造にしたがってPCR増幅曲線の差を示した。すなわち、フラップ構造がないMis+0とフラップ構造が1個であるMis+1プローブは加水分解され、フラップ構造が2個であるMis+2にはPCR増幅曲線の増加がなかった(
図4a、
図4b、
図5a)。しかし、TaqManプローブシステムの場合、プローブの種類とは関係なく信号が増幅された(
図5b)。このような結果により、PCR増幅産物の末端にプローブが位置すると、5'−末端構造の差によってTaq DNAポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性による信号の増幅の差が発生することを確認することができた。しかし、プローブがPCR増幅産物の中間に位置するTaqManプローブは、5'−末端構造と関係なくすべて加水分解されることを確認することができた。
【0067】
実施例4:5'−エンドヌクレアーゼ活性化程度に影響を与えるPCR増幅産物の末端からプローブの混成化結合位置までの距離確認試験
5−末端がフラップ構造を有するプローブがPCR増幅産物の末端に位置するとき、末端で距離がTaq DNAポリメラーゼの5−ヌクレアーゼ活性に影響を与えるか否かを確認するための試験である。NSTS/sybr−グリーンプローブ及びNSTS/taqmanプローブが試験に使用された。それぞれの後方プライマーとプローブは固定させ、前方プライマーをPCR増幅産物の3'−末端方向に移動させて試験した。前方プライマー5−末端で混成化結合されているプローブの5−末端フラップ構造までの距離を基準とし、NSTS/sybr−グリーンプローブの場合は、23塩基、26塩基、28塩基、30塩基に該当する前方プライマー(
図6)を使用し、NSTS/taqmanプローブは27塩基、32塩基、34塩基、38塩基である(
図7)。Mis+2プローブは、Mis+0の5'−末端に任意の2塩基を追加して合成した。
【0068】
*SYBRグリーン試験用プライマーとプローブ
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
プローブ
Mis+0:5'−ggtatcagttcatccagcgc−3'
Mis+2:5'−atggtatcagttcatccagcgc−3'
i)23塩基前方プライマー:5'−gccgcgctggatgaactgatac−3'
ii)26塩基前方プライマー:5'−gcagccgcgctggatgaactga−3'
iii)28塩基前方プライマー:5'−aagcagccgcgctggatgaact−3'
iv)30塩基前方プライマー:5'−caaagcagccgcgctggatgaa−3'
*外側TaqManプローブ試験用プライマーとプローブ
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
プローブ
Mis+0:5'−FAM−cgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
Mis+2:5'−FAM−cacgatatattcactcagcaaccccg−TAMRA−3'
i)27塩基前方プライマー:5'−taccggggttgctgagtgaatata−3'
ii)32塩基前方プライマー:5'−actgataccggggttgctgagt−3'
iii)34塩基前方プライマー:5'−gaactgataccggggttgctga−3'
iv)38塩基前方プライマー:5'−ggatgaactgataccggggttg−3'
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−60℃、30秒−72℃、30秒(35回反復)
*PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、2種類のプライマーとプローブの各1ul(10pmol/ul)、SYBRグリーン(10X)1ul及び3.1X qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終的な総容量20ulに合わせて使用した。
【0069】
NSTS/sybr−グリーンプローブでは、前方プライマー5−末端で混成化結合されているプローブの5−末端までの距離が30塩基で、NSTS/taqmanプローブでは34塩基からMis+2プローブのPCR増幅曲線が増加した(
図6及び
図7)。前方プライマー5−末端で混成化結合されているプローブの5−末端までの距離がNSTSプローブの5フラップ構造認識において重要な要素であることを確認することができた。これは、ポリメラーゼの5'ヌクレアーゼ活性の5'フラップを認識して切断するFEN活性が、5'フラップの末端から一定の長さ(約28塩基〜34塩基)以上であることが要求され、それ以下である場合、FENの作用が円滑でないためと推定される。また、NSTSを用いたSNPなどの突然変異部位を区別するための診断用プライマー/プローブの設計時、二つの5−末端で混成化結合されているプローブの5'−末端までの距離を適切に(約28塩基〜30塩基以内)維持すると、目的とする区別が可能であることが分かった。
【0070】
実施例5:SNPタイピングのためのプローブペアテスト
NSTSプローブに対するポリメラーゼのFEN活性差を用いてプローブの5'−末端構造に変化を与えて、SNPタイピングに適用しようとした。変異が予想される塩基(SNPポイント)を中心にSNPの存在を仮定し、NSTS/dspプローブのペアを作って試験した。
i)プローブの5'−末端構造は、フラップ構造がないプローブ(Mis+0)と1個の塩基がフラップ構造を有するプローブ(Mis+1)、ii)1個の塩基がフラップ構造を有するプローブ(Mis+1)と2個のフラップ構造を有するプローブ(Mis+2)、iii)5−末端の2番目の塩基1個がフラップ構造を有するプローブ(Mis+2(1))と2個のフラップ構造を有するプローブ(Mis+2)、iv)5−末端の3番目の塩基1個がフラップ構造を有するプローブ(Mis+3(2))と5−末端の2番目と3番目の塩基がフラップ構造を有するプローブ(Mis+3(1))を使用した(
図8)。
【0071】
*試験用プライマーとプローブ
前方プライマー:5'−TAMRA−gccgcgctggatgaactgatac−3'
後方プライマー:5'−cggcctgaacagtgagcgaag−3'
i)プローブセット
a)Mis+0:5'−ccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
b)Mis+1:5'−tccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
ii)プローブセット
a)Mis+1:5'−tccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
b)Mis+2:5'−atccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
iii)プローブセット
a)Mis+2(1):5'−ctccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
b)Mis+2:5'−atccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
iv)プローブセット
a)Mis+3(2):5'−actccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
b)Mis+3(1):5'−agaccggtatcagttcatccagcgc−FAM−3'
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−60℃、30秒−72℃、30秒(40回反復)
*PCR反応物組成
【0072】
ラムダDNA 1ul(100pg)、2種類のプライマーとプローブの各1ul(10pmol/ul)及び3.1x qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終的な総容量を20ulにして使用した。
【0073】
プローブの5−末端のフラップ構造によって表れるTaq DNAポリメラーゼの5'FEN活性差を用いてSNPタイプ時に表れ得る構造の差を予想し、前記4個のプローブペアで構成することができる。これを用いた試験結果、各セットのb)プローブがa)プローブに比べてCt値が小さいか、PCR増幅曲線が増加しないことを確認することができた。特にii)、iii)、iv)などのプローブセットは、プローブによってPCR増幅曲線がオン/オフに区分されるので、SNPタイピングに適用し、該当の対立遺伝子を判読するのに明確に用いることができるという長所を示す。
【0074】
実施例6:NSTS/sybr−グリーンの多様なプローブペアを用いたSNPタイピング適用検証
NSTS/sybr−グリーンプローブの5'−末端構造に変化を与えて、SNPタイピングにSYBRグリーンを使用して実質的な適用可能性の有無を確認した。ラムダDNAを鋳型として任意のSNPポイントを指定し、5'−末端構造の変化によるDSPプローブペアを定めた。使用したDSPプローブペアは、Mis+1とMis+2(
図9a)、Mis+3(2)とMis+3(1)(
図9b)、Mis+2(1)とMis+2(
図9c)であった。
【0075】
*試験用プライマーとプローブ(
図9a)
前方プライマー:5'−cgctgtggctgatttcgataacc−3'
後方プライマー:5'−tggctgacgttcccatgtacc−3'
プローブペア
Mis+1:5'−taggttatcgaaatcagccac−3'
Mis+2:5'−tcggttatcgaaatcagccac−3'
*試験用プライマーとプローブ(
図9b)
前方プライマー:5'−tctcggaatgcatcgctcagtg−3'
後方プライマー:5'−atgctcaatggatacatagacgagg−3'
プローブペア
Mis+3(2):5'−agctcaacactgagcgatgcattc−3'
Mis+3(1):5'−aactcaacactgagcgatgcattc−3'
*試験用プライマーとプローブ(
図9c)
前方プライマー:5'−ctgctgggtgtttatgcctactt−3'
後方プライマー:5'−aagttctcggcatcaccatccg−3'
プローブペア
Mis+2(1):5'−cgataaagtaggcataaacaccca−3'
Mis+2:5'−tgataaagtaggcataaacaccca−3'
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−65℃、30秒−72℃、30秒(40回反復)
*PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、2種類のプライマーとプローブの各1ul(5pmol/ul)、SYBRグリーン(10X)1ul及び3.1x qPCRMix 6.45ulと滅菌水とを混合し、最終的な総容量を20ulにして使用した。
【0076】
SYBRグリーンを用いたPCR増幅曲線確認を通じて、任意に定めたSNPポイントがプローブの5'−末端と一致或いは不一致することによって作られるフラップ構造によってPCR増幅曲線の増加と非増加とに区分されることを確認した。SNPポイントが不一致する場合は、PCR増幅曲線が全く増加しないことによってSNPタイピングを明確に区分することができる。これによって、本発明の方法を用いると、価格の高い顔料プローブを使用することなく、経済的に使用可能なSYBRグリーンなどのDNA二重結合に結合する挿入剤(intercalating agents)或いは表面結合剤(surface binding agents)を使用して簡便なSNPタイピング適用が可能であることを確認した。
【0077】
実施例7:リアルタイム重合酵素連鎖反応時にアニーリング温度差に影響を受けないNSTSプローブ作用の安定性確認試験
酵素作用の反応特異性によって区分されるNSTSプローブがリアルタイム重合酵素連鎖反応でアニーリング温度にどのような影響を受けるのかを確認するための試験である。NSTS/sybr−グリーンプローブを用いて残りのPCR条件は同一にし、アニーリング温度のみに変化を与えた。また、プローブは、5−末端の3番目の塩基1個がフラップ構造を有するプローブ(Mis+3(2))と5−末端の1番目と3番目の塩基がフラップ構造を有するプローブ(Mis+3(1))を使用した。
*DSPプローブ試験用プライマーとプローブ
前方プライマー1a:5−TGATGGAGCAGATGAAGATGCTCG−3
後方プライマー1as:5−TCCAGCTCACTCTCAATGGTGG−3
プローブペア
Mis+3(2)/1:5−GTCTCGAGCATCTTCATCTGCTC−3
Mis+3(1)/1:5−TTCTCGAGCATCTTCATCTGCTC−3
【0078】
前方プライマー2a:5−CGCTGTGGCTGATTTCGATAACC−3
後方プライマー2as:5−TGGCTGACGTTCCCATGTACC−3
プローブペア
Mis+3(2)/2:5−GATCAGGTTATCGAAATCAGCCAC−3
Mis+3(1)/2:5−AATCAGGTTATCGAAATCAGCCAC−3
【0079】
前方プライマー3a:5−GTTCCTGACCGTGTGGCTTAC−3
後方プライマー3as:5−ATCCCCATACGCGCATTTCGTAG−3
プローブペア
Mis+3(2)/3:5−GGACAGGTAAGCCACACGGTCAG−3
Mis+3(1)/3:5−TGACAGGTAAGCCACACGGTCAG−3
前方プライマー4a:5−CTGCTGGGTGTTTATGCCTACTT−3
【0080】
後方プライマー4as:5−AAGTTCTCGGCATCACCATCCG−3
プローブペア
Mis+3(2)/4:5−TCGATAAAGTAGGCATAAACACCCA−3
Mis+3(1)/4:5−GCGATAAAGTAGGCATAAACACCC−3
【0081】
前方プライマー5a:5−CCACACGGCATTCGGCAGATAT−3
後方プライマー5as:5−AGCGCCTGTTTCTTAATCACCATA−3
プローブペア
Mis+3(2)/5:5−GGTGGAATATCTGCCGAATGCCGTG−3
Mis+3(1)/5:5−CGTGGAATATCTGCCGAATGCCGT−3
【0082】
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件1
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−65℃、30秒−72℃、30秒(40回反復)
*リアルタイム重合酵素連鎖反応条件2
95℃、5分(1回)
95℃、15秒−54℃、30秒−72℃、30秒(40回反復)
*PCR反応物組成
ラムダDNA 1ul(100pg)、2種類のプライマーとプローブの各1ul(5pmol/ul)及び5x qPCRMix(50mM Tris、pH9.0、7.5mM MgCl
2、300mM KCl、1Mメチルグルコース、500mM(NH
4)
2SO
4、5mM dNTPs、5u Taq DNAポリメラーゼ、(株)ゼノテック、韓国)4ulと滅菌水とを混合し、最終的に総容量を20ulにして使用した。
【0083】
アニーリング温度に10℃以上の変化を与えてPCRを行ったが、
図10から分かるように、Ct値で大きな差を示しておらず、ターゲット−特異的プローブのPCR増幅曲線が温度変化と関係なく明確に区分されることを確認した。酵素による反応特異性によって区分性を示すNSTSのアレル−特異的プローブの作用がPCR温度に敏感でないことを確認することができ、このような結果は、本発明の方法が多くの種類のSNPの同時分析に効果的であることを示している。