(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺動面上には、前記回転方向前方側に向かうに従って、前記摺動面上における前記軸線方向両端縁から、該軸線方向における中央の領域に向かって延びるとともに、前記摺動面から径方向外側に向かって凹没する案内溝が形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のジャーナル軸受。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたジャーナル軸受は、回転機械の運転状態が変化した場合に、回転軸を適切に支持することができない可能性がある。例えば、回転機械に振動が生じた場合や、回転軸自体に振れ回り振動が生じた場合、又は、タービン翼が飛散し、外部荷重が加わった場合、回転軸には上述の下向き荷重のみならず、上向きの荷重が加わる可能性がある。
【0006】
このような上向きの荷重が生じた場合、回転軸は上方に向かってわずかに移動して、上半部キャリアリングに接触する。しかしながら、ジャーナル軸受の上半部には潤滑油を積極的に供給する装置が設けられていない。加えて、水平方向に延びる回転軸に対してこのようなジャーナル軸受を適用した場合、軸受内部の潤滑油は、重力によって下方に滞留しやすい。
【0007】
したがって、ジャーナル軸受の上半部は下半部に比して潤滑性能に乏しい。これにより、上半部に位置するティルティングパッドと回転軸とが接触した場合、両者に損傷を生じる可能性がある。
【0008】
一方で、潤滑油の供給量を増やすことは、軸受におけるエネルギー損失の増大につながる可能性がある。このため、潤滑油の量を増減させることなく、潤滑性能を向上することが可能な軸受に対する要請が高まっている。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、少量の潤滑油によって十分な潤滑性能を発揮することが可能なジャーナル軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様によれば、ジャーナル軸受は、水平方向に延びる軸線回りに回転可能な回転軸の外周面を下方から摺動可能に支持する軸受下半部と、前記回転軸の外周面の上側半分を支持する軸受上半部と、前記軸受下半部及び前記軸受上半部と前記回転軸との間に潤滑油を供給する潤滑油供給部と、を備え、前記軸受上半部は、前記回転軸の上側半分の外周面に間隔を開けて対向する軸受本体部と、該軸受本体部の内周面から径方向内側に突出して前記回転軸との摺動面を形成するとともに周方向に延びるランド部と、前記潤滑油を前記ランド部の摺動面に案内する案内部と、を有する。
【0011】
上述のような構成によれば、潤滑油供給部によって供給された潤滑油は、回転軸の回転に伴って、軸受上半部に設けられた案内部によって、ランド部の摺動面に向かって案内される。これにより、軸受上半部と回転軸との間にも潤滑油を行き渡らせることができる。
加えて、案内部が設けられていることによって軸受下半部側に滞留している潤滑油を軸受上半部側に向かって供給することができる。これにより、潤滑油の供給量を増やすことなく、軸受上半部をも潤滑することができる。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、上記第一の態様に係るジャーナル軸受では、前記案内部は、前記内周面上に設けられるとともに、回転方向後方側から回転方向前方側に向かうに従って、前記内周面から前記ランド部に近接する方向に延びる集油壁と、前記集油壁の回転方向後方側に設けられ、前記内周面から前記摺動面に向かって傾斜して延びる傾斜部と、を有してもよい。
【0013】
上述のような構成によれば、軸受本体部の内周面に沿って流れる潤滑油は、集油壁によってランド部に向かって集められた後、傾斜部によってランド部の摺動面上に供給される。これにより、軸受上半部と回転軸とが、摺動面上の潤滑油を介して潤滑される。
【0014】
本発明の第三の態様によれば、上記第一の態様に係るジャーナル軸受では、前記案内部は、回転方向後方側における前記ランド部の端面に形成され、前記潤滑油が流入する流入孔と、前記摺動面上に形成され、前記潤滑油を供給する供給孔と、前記流入孔と前記供給孔とを連通する給油管と、を有していてもよい。
【0015】
上述のような構成によれば、流入孔から流入した潤滑油が、給油管及び供給孔を介して摺動面上に供給される。これにより、軸受上半部と回転軸とが、摺動面上の潤滑油を介して潤滑される。
【0016】
本発明の第四の態様によれば、上記第一から第三のいずれか一態様に係るジャーナル軸受では、前記摺動面上には、前記回転方向前方側に向かうに従って、前記摺動面上における軸線方向両端縁から、該軸線方向における中央の領域に向かって延びるとともに、前記摺動面から径方向外側に向かって凹没する案内溝が形成されていてもよい。
【0017】
上述のような構成によれば、潤滑油は、案内溝によって、摺動面上で軸線方向における中央の領域に向かって案内される。これにより、摺動面上に形成される潤滑油の油膜の膜厚を維持することができる。
【0018】
本発明の第五の態様によれば、上記第一から第四のいずれか一態様に係るジャーナル軸受では、前記軸受上半部は、周方向に配列された複数の前記ランド部及び前記案内部を有してもよい。
【0019】
上述のような構成によれば、複数のランド部及び案内部が周方向に沿って配列されている。これにより、軸受上半部をその周方向にわたってより広範囲に潤滑することができる。
【0020】
本発明の第六の態様によれば、上記第一から第五のいずれか一態様に係るジャーナル軸受では、前記軸受上半部は、軸線方向に間隔を開けて配列された複数の前記ランド部を有してもよい。
【0021】
上述のような構成によれば、軸受上半部には、軸線方向に間隔を開けて配列された複数のランド部が形成されている。これにより、回転軸をさらに安定的に支持することができる。加えて、各々のランド部に加わる荷重を低減することができるため、経年使用に伴う軸受上半部、及び軸受下半部の摩耗を抑制することができる。
【0022】
本発明の第七の態様によれば、上記第一から第六のいずれか一態様に係るジャーナル軸受では、前記潤滑油供給部は、前記回転軸の周方向で、前記軸受上半部と前記軸受下半部との間に設けられた端部供給装置を有し、前記端部供給装置は、前記回転方向前方側に向かって前記潤滑油を吹き出す前方供給部と、前記回転方向後方側に向かって前記潤滑油を吹き出す後方供給部と、を備えてもよい。
【0023】
上述のような構成によれば、前方供給部、及び後方供給部によって、軸受上半部、及び軸受下半部のそれぞれに対して十分に潤滑油を供給することができる。特に、潤滑油を軸線に対する径方向内側のみに向かって供給する場合に比べて、軸受上半部、及び軸受下半部に対してさらに積極的に潤滑油を供給することができる。
【0024】
本発明の第八の態様によれば、上記第七の態様に係るジャーナル軸受では、前記前方供給部は、前記軸線方向で前記ランド部に対応する領域に設けられていてもよい。
【0025】
上述のような構成によれば、前方供給部が軸線方向でランド部に対応する領域に設けられていることから、ランド部に対して直接的に潤滑油を供給することができる。すなわち、ランド部に十分な量の潤滑油を行き渡らせることができる。
【0026】
本発明の第九の態様によれば、上記第七又は第八の態様に係るジャーナル軸受では、前記後方供給部は、前記軸線方向で前記軸受下半部に対応する領域に設けられていてもよい。
【0027】
上述のような構成によれば、後方供給部が軸線方向で軸受下半部に対応する領域に設けられていることから、軸受下半部に対して直接的に潤滑油を供給することができる。すなわち、軸受下半部に十分な量の潤滑油を行き渡らせることができる。
【0028】
本発明の第十の態様によれば、上記第七から第九のいずれか一態様に係るジャーナル軸受では、前記後方供給部は、前記軸線方向で前記ランド部に対応する領域のみに設けられていてもよい。
【0029】
上述のような構成によれば、ランド部に対して回転方向の前方側からも潤滑油を供給することができる。すなわち、ランド部にさらに十分に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0030】
本発明の第十一の態様によれば、回転機械は、上記第一から第十のいずれか一態様に係る前記ジャーナル軸受と、該ジャーナル軸受によって支持される前記回転軸と、を備える。
【0031】
上述のような構成によれば、ジャーナル軸受によって回転軸が支持されることで、安定的に運転することが可能な回転機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、少量の潤滑油によって十分な潤滑性能を発揮することが可能なジャーナル軸受、及びこれを備える回転機械を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態に係るジャーナル軸受10、及び回転機械100について図面を参照して説明する。
図1に示すように、回転機械100としての蒸気タービン100は、水平方向に延びる軸線O回りに回転する回転軸1と、回転軸1の外周面1Aに設けられた複数のブレード2と、回転軸1を外周側から覆うケーシング3と、ケーシング3の内周面に設けられるとともに、ブレード2に対して軸線O方向に互い違いに配列されたステータ4と、回転軸1を支持する複数の軸受部5と、を有している。
【0035】
蒸気タービン100には、ケーシング3に設けられた蒸気流入部6を介して外部から高温高圧の蒸気が供給される。この上記は、ブレード2とステータ4との間で画成される蒸気流路7を流通する。蒸気流路7を流通する過程で、蒸気がブレード2に衝突することで、回転軸1が回転する。回転軸1の回転エネルギーは、不図示のジェネレータ等によって取り出されることで、発電等に利用される。回転軸1を回転させた後の蒸気は、ケーシング3に設けられた排気部8を介して外部に排気される。
【0036】
軸受部5は、回転軸1の軸線O方向における両端部を支持する装置である。本実施形態に係る軸受部5は、1つのスラスト軸受9と、2つのジャーナル軸受10と、を有している。スラスト軸受9は、回転軸1の軸線O方向における荷重を支持する装置である。一方で、ジャーナル軸受10は、回転軸1を軸線Oと交差する方向から支持する装置である。
【0037】
以下、このジャーナル軸受10について詳述する。
図2に示すように、このジャーナル軸受10は、回転軸1の外周面1Aを下方から支持する軸受下半部11と、回転軸1の外周面1Aにおける上側半分を支持する軸受上半部12と、軸受下半部11及び軸受上半部12と回転軸1との間に潤滑油を供給する潤滑油供給部13と、これら軸受上半部12、軸受下半部11、及び潤滑油供給部13を軸線O方向両側から覆う一対のサイドプレート14と、を備えている。
【0038】
軸受下半部11は、回転軸1の外周面1Aに接触する複数(2つ)の軸受パッド15と、これら軸受パッド15を外周側から支持するキャリアリング下半部16と、を有している。2つの軸受パッド15はそれぞれ、回転軸1の回転方向Rを基準として、回転方向Rの前方側に位置する前方側パッド15Aと、回転方向Rの後方側に位置する後方側パッド15Bとされている。前方側パッド15Aと後方側パッド15Bとは、周方向に間隔を開けて配列されている。
【0039】
前方側パッド15Aと後方側パッド15Bとは、軸線O方向から見て円弧状に湾曲して形成されるとともに、周方向から見て矩形板状に形成されている。前方側パッド15A及び後方側パッド15Bの径方向内側の面は、径方向外側に向かって湾曲して形成されることで、それぞれパッド面17とされている。パッド面17は、回転軸1の外周面1Aと接触することでこれを支持する。
【0040】
さらに、前方側パッド15A及び後方側パッド15Bは、ともにキャリアリング下半部16の内周面上で、不図示の支持部によって支持されている。支持部は、前方側パッド15A及び後方側パッド15Bの径方向外側の面を点接触で支持することで、これらをわずかに揺動可能に支持する。これにより、ジャーナル軸受10はいわゆるティルティング機構を有している。振動等により回転軸1に径方向の変位が生じた場合、前方側パッド15A及び後方側パッド15Bが軸線O方向を中心として揺動することで、この変位を吸収する。
なお、これら前方側パッド15A及び後方側パッド15Bは、例えばホワイトメタル(W87)等の金属材料で形成されることが望ましい。
【0041】
軸受上半部12は、回転軸1の外周面1Aと間隔を開けて対向する軸受本体部18(キャリアリング上半部18)と、キャリアリング上半部18の内周側に設けられるガイドメタル20と、を有している。
【0042】
キャリアリング上半部18は、上述のキャリアリング下半部16と概ね同一の寸法を有する円弧状の部材である。このキャリアリング上半部18の径方向内側には、ガイドメタル20が固定されている。
【0043】
ガイドメタル20は、回転軸1と接触する複数(2つ)のランド部21と、ランド部21に向かって潤滑油を案内する複数(2つ)の案内部22と、を有している。ランド部21は、キャリアリング下半部16の内周面に沿って周方向に延びることで、軸線O方向から見て半円弧状をなしている。さらに、周方向から見て、ガイドメタル20はキャリアリング上半部18の内周面から径方向内側に突出することで概ね矩形の断面を有している。
【0044】
ランド部21の径方向における両面のうち、径方向内側の面は、回転軸1の外周面1Aと概ね対応する径寸法を有している。これにより、ランド部21の径方向内側の面は、回転軸1の外周面1Aと摺接する摺動面21Aとされている。本実施形態に係るガイドメタル20では、上述のようなランド部21が、軸線O方向に間隔を開けて2つ配列されている。すなわち、回転軸1は2つのガイドメタル20におけるそれぞれの摺動面21Aによって支持されている。
【0045】
さらに、ランド部21における軸線O方向両側の面は、摺動面21Aと概ね直交する方向に延びることで、それぞれランド部内側面211S、ランド部外側面212Sとされている。
【0046】
このように形成されたそれぞれのランド部21には、潤滑油を案内する案内部22が一体に設けられている。本実施形態では、案内部22は、ランド部21の回転方向Rの後方側の端部に設けられている。より詳しくは
図4に示すように、案内部22は2つのランド部21同士の間に設けられる集油壁22Aと、この集油壁22Aと隣接して設けられる傾斜部22Bと、を有している。
【0047】
集油壁22Aは、上述のランド部内側面211Sから、軸線Oと交差する方向に斜めに延びる壁面である。より詳細には、この集油壁22Aは、キャリアリング上半部18の内周面上における2つのランド部21同士の間の領域を軸線O方向に等分する等分線L上から、ランド部内側面211Sに向かって延びている。さらに、集油壁22Aは、回転方向Rの後方側から回転方向前方側に向かうに従って、ランド部内側面211Sに近接するように斜めに延びている。
【0048】
このように形成された集油壁22Aにおける、回転方向Rの後方側の端縁は第一端縁23とされている。さらに、回転方向Rの前方側の端縁は第二端縁24とされている。第一端縁23は、上述の等分線L上に位置している。第二端縁24はランド部内側面211Sに接続されている。集油壁22Aの回転方向における両面のうち、回転方向Rの前方側を臨む面は、集油壁前方面25とされている。同様に、回転方向Rの後方側を臨む面は、集油壁後方面26とされている。
【0049】
集油壁後方面26には、傾斜部22Bが設けられている。
図4に示すように傾斜部22Bは、集油壁22Aの第一端縁23における径方向外側から、ランド部21における摺動面21Aに向かって延びる面である。言い換えると、傾斜部22Bは軸線O方向に交差する方向から見て、軸線Oに対して一定の角度をなして斜めに延びている。さらに、軸線Oに対する径方向から見て傾斜部22Bは、概ね三角形状をなしている。
【0050】
本実施形態では、軸線O方向に配列された2つのランド部21に、それぞれ上述の案内部22が1つずつ設けられている。より詳しくは、これら2つの案内部22は、等分線Lを基準として軸線O方向に線対称をなしている。さらに、2つの案内部22において、それぞれの集油壁22Aの第一端縁23同士は、等分線L上で一体に接続されることで、稜線部30をなしている。すなわち、周方向から見て2つの案内部22は、稜線部30から2つのランド部内側面211Sに向かって延びることで、略V字状をなしている。
【0051】
さらに、再び
図2を参照して、ジャーナル軸受10には、複数(4つ)の潤滑油供給部13が周方向に間隔を開けて設けられている。より詳しくは、潤滑油供給部13は、前方側パッド15Aに設けられた第一給油ノズル13Aと、後方側パッド15Bに設けられた第二給油ノズル13B及び第三給油ノズル13Cと、軸受上半部12に設けられた第四給油ノズル13Dと、を有している。
【0052】
第一給油ノズル13Aは、前方側パッド15Aにおける回転方向Rの後方側の端部に設けられている。第二給油ノズル13B及び第三給油ノズル13Cは、後方側パッド15Bにおける回転方向の両端部にそれぞれ設けられている。第四給油ノズル13Dは、軸受上半部12における回転方向Rの前方側の端部の近傍に、第三給油ノズル13Cと間隔を開けて設けられている。
【0053】
第一給油ノズル13A、第二給油ノズル13B、第三給油ノズル13Cは、いずれもキャリアリング下半部16の外周面と、前方側パッド15A及び後方側パッド15Bのパッド面17とを連通している。第四給油ノズル13Dは、キャリアリング上半部18の外周面と、ガイドメタル20の内周面とを連通している。これら給油ノズル(潤滑油供給部13)には、外部から潤滑油が供給される。これにより、潤滑油が回転軸1の外周面1Aに供給される。
【0054】
続いて、ジャーナル軸受10の動作について説明する。上述のようにジャーナル軸受10は、水平方向に延びる回転軸1を支持するものであることから、重力によって潤滑油は下方に滞留する傾向にある。下方に滞留した潤滑油は、回転軸1の回転に伴って、回転軸1の回転方向Rと同一の方向に向かい、軸受下半部11(前方側パッド15A、後方側パッド15B)と回転軸の外周面1Aとの間の領域を流れる。やがて、潤滑油は、回転軸1の回転に伴って、軸受下半部11における回転方向R前方側の端部を経た後、軸受上半部12(ガイドメタル20)の回転方向R後方側の端部に達する。
【0055】
ここで、ガイドメタル20(ランド部21)の回転方向R後方側の端部には案内部22が設けられている。回転方向R後方側から流通してきた潤滑油は、それぞれの案内部22の集油壁22A同士が接する稜線部30によって2つの流れに分けられる。同時に、集油壁22Aに接して設けられたそれぞれの傾斜部22Bによって、潤滑油はランド部21の摺動面21A上に向かって案内される。より具体的には、傾斜部22Bは稜線部30と摺動面21Aとを斜めに接続している。これにより、回転軸1の回転に伴って、潤滑油は傾斜部22Bを傾斜方向の下方から上方に向かって流れた後、摺動面21A上に達する。摺動面21A上に達した潤滑油は、回転軸1の回転によって、摺動面21A上を回転方向R前方側に向かって流れる。これにより、潤滑油を摺動面21A上の周方向にわたって行き渡らせることが可能となる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るジャーナル軸受10によれば、回転軸1の回転に伴って、案内部22が潤滑油をランド部21の摺動面21Aに向かって案内する。これにより、軸受上半部12と回転軸1との間にも潤滑油を行き渡らせることができる。
【0057】
加えて、案内部22が設けられていることによって軸受下半部11側に滞留している潤滑油を軸受上半部12側に向かって積極的に供給することができる。これにより、潤滑油の供給量を増やすことなく、軸受上半部12を潤滑することができる。言い換えると、少量の潤滑油によって十分な潤滑性能を発揮することができる。
【0058】
さらには、本実施形態に係る案内部22は、ガイドメタル20に加工を施すのみで実現することができる。すなわち、軸受上半部12を潤滑するに当たって、他の装置や部材を追設することなく、これを実現することができる。
【0059】
加えて、上述のような構成によれば、軸受上半部12には、軸線O方向に間隔を開けて配列された複数(2つ)のランド部21が形成されている。これにより、各々のランド部21に加わる荷重を低減することができるため、回転軸1を安定的に支持することができるとともに、経年使用に伴う軸受上半部12(ガイドメタル20)、及び軸受下半部11(軸受パッド15)の摩耗を抑制することができる。
【0060】
なお、上述の第一実施形態では、案内部22が、ガイドメタル20の回転方向R後方側の端部に設けられる例について説明した。しかしながら、案内部22の設けられる位置、及び個数はこれに限定されない。具体的には、
図5に示すように、ガイドメタル20の周方向に間隔を開けて複数の案内部22が設けられていてもよい。
このような構成によれば、軸受上半部12の周方向におけるより広い範囲を潤滑することができる。
【0061】
〔第二実施形態〕
続いて、本発明の第二実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、上述の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係るジャーナル軸受101では、案内部221は潤滑油が流入する流入孔41と、潤滑油を供給する供給孔42と、これら流入孔41と供給孔42とを連通する給油管43と、を備えている。
【0063】
それぞれのランド部21の回転方向R後方側の端部には、互いに対向する一対のランド部内側面211Sから等分線Lにかけて延びる板状の接続部44がそれぞれ設けられている。それぞれの接続部44は等分線L上で接続されている。さらに、これら接続部44の径方向における寸法は、ランド部21の径方向における寸法と略同一に設定されている。
【0064】
接続部44の回転方向R後方側の端面は接続部端面44Aとされている。この接続部端面44Aには、回転方向R後方側に向かって開口する流入孔41が形成されている。一方で、ランド部21の摺動面21A上には、径方向内側に向かって開口する供給孔42が形成されている。これら流入孔41と供給孔42とは、給油管43によって連通されている。給油管43は、流入孔41から供給孔42にかけて一様な内径寸法を有する断面視円形の管路である。
【0065】
このような構成によれば、回転方向R後方側から、流入孔41を介して流入した潤滑油が、給油管43及び供給孔42を経て摺動面21A上に供給される。これにより、上述の第一実施形態と同様に、軸受上半部12と回転軸1とは、摺動面21A上の潤滑油を介して潤滑されることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、給油管43は円形断面を有するとともに、その内径寸法は給油管43の延在長全体にわたって一様であるとした。しかしながら、給油管43の態様はこれに限定されず、例えば流入孔41側から供給孔42側に向かうに従って、内径寸法が次第に減ずるように形成されていてもよい。このような構成によれば、流入孔41から供給孔42に向かうに従って潤滑油に加わる圧力が増すことで、供給孔42に達した潤滑油の流速を高めることができる。流速が増したことによって、ランド部21の周方向におけるさらに広い領域にまで潤滑油を到達させることができる。
【0067】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について、
図7を参照して説明する。
図7に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受102は、上述の第一実施形態で説明した案内部22に加えて、ランド部21の摺動面21A上で周方向に間隔を開けて形成された複数の案内溝45を有している。
【0068】
より具体的には、案内溝45は、軸線O方向におけるランド部21の両端縁から、軸線O方向におけるランド部21の中央に向かって次第に近接するように延びる一対の凹溝45Aを有している。それぞれの凹溝45Aは回転方向R後方側から前方側に向かうに従って、軸線O方向におけるランド部21の端縁から中央に向かって傾斜するように延びている。これにより、一対の凹溝45Aは、軸線Oに対する径方向から見て概ねV字状をなしている。さらに、凹溝45Aの底部(径方向外側の面)と、ランド部21の径方向外側の面との間には十分な寸法余裕が形成される。言い換えると、凹溝45Aはランド部21を径方向に貫通しない程度に凹没している。
【0069】
このような構成によれば、摺動面21A上に供給された潤滑油は、案内溝45によって摺動面21A上で軸線O方向における中央の領域に向かって案内される。これにより、摺動面21A上に形成される潤滑油の油膜の膜厚を維持することができる。
【0070】
一方で、このような案内溝45が形成されていない場合、潤滑油は回転軸1の回転に伴ってランド部21の軸線O方向両側から外方に向かって離散してしまう。このため、案内部22から回転方向R前方側に離間した位置では、摺動面21A上に十分な量の潤滑油を供給できない可能性がある。
【0071】
しかしながら、本実施形態では摺動面21A上に上述のような案内溝45が形成されていることによって、このような可能性を低減することができる。言い換えると、案内部22から回転方向R前方側に離間した位置にも、十分な量の潤滑油を行き渡らせることができる。
【0072】
なお、上述の実施形態では、案内溝45は互いに独立した一対の凹溝45Aによって構成された例について説明した。しかしながら、案内溝45の態様はこれに限定されない。例えば、これら一対の凹溝45A同士が、回転方向R前方側の端部で互いに接続されることで1つの連続した溝として形成されていてもよい。
【0073】
さらに、それぞれの凹溝45Aは回転方向Rの後方側から前方側にかけて、軸線O方向における寸法が次第に変化するように構成されていてもよい。
【0074】
また、案内溝45の径方向における寸法(深さ)は、回転方向Rの後方側から前方側に向かうに従って次第に減ずるように設定されていてもよい。
【0075】
さらに、この案内溝45は、上述の第二実施形態におけるジャーナル軸受101に適用することも可能である。
【0076】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について
図8から
図10を参照して説明する。なお、上述の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付した上で、詳細な説明は省略する。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係るジャーナル軸受10では、潤滑油供給部13は、4つの給油ノズル(第一給油ノズル13A,第二給油ノズル13B,第三給油ノズル13C,第四給油ノズル13D)に加えて、さらに第五給油ノズル13E(端部供給装置)を備えている。
【0078】
第五給油ノズル13Eは、周方向における軸受下半部11と、軸受上半部12との間に設けられている。より具体的には、第五給油ノズル13Eは、前方側パッド15Aの回転方向Rにおける前方側の端部に設けられている。この第五給油ノズル13Eも、他の給油ノズルと同様に、外部から供給された潤滑油を回転軸1に向かって吹き出す。
【0079】
図9に示すように、第五給油ノズル13Eは、軸線O方向における略中央部に設けられた導入部131Eと、この導入部131Eから軸線O方向の両側に向かって延びる一対の棒状の噴射部132Eと、を有している。
【0080】
導入部131Eは、外部に設けられたタンクやポンプ等を含む潤滑油の供給源(不図示)に接続されている。導入部131Eに流入した潤滑油は、導入部131E内で軸線O方向両側に分けられて、一対の噴射部132E内に導かれる。
【0081】
噴射部132Eの回転方向Rの両側を向く面には、内部を流通する潤滑油を吹き出すための複数の噴射孔133Eが、軸線O方向に沿って配列されている。複数の噴射孔133Eのうち、回転方向Rの前方側を向いて開口する噴射孔133Eは、前方供給部133Fとされている。前方供給部133Fは、軸線O方向において導入部131Eから離間する側のみに設けられている。より詳細には、前方供給部133Fは、上述のランド部21に軸線O方向で対応する領域に設けられている。さらに具体的には、前方供給部133Fは、軸線O方向でランド部21と同一の位置に設けられている。すなわち、前方供給部133Fは、一対のランド部21,21と、これらランド部21,21によって軸線O方向両側から囲まれた傾斜部22Bとのうち、ランド部21のみに向かって直接的に潤滑油を吹き出すことが可能である。
【0082】
複数の噴射孔133Eのうち、回転方向Rの後方側を向いて開口する噴射孔133Eは、後方供給部133Gとされている。後方供給部133Gは、噴射部132Eの軸線O方向における全体にわたって設けられている。言い換えれば、後方供給部133Gは、軸線O方向で軸受下半部11(前方側パッド15A)に対応する領域に設けられている。これにより、後方供給部133Gは、第五給油ノズル13Eから見て回転方向Rの後方側に位置する前方側パッド15Aに向かって潤滑油を吹き出すことが可能である。
【0083】
上述のような構成によれば、前方供給部133F、及び後方供給部133Gによって、軸受上半部12、及び軸受下半部11のそれぞれに対して十分に潤滑油を供給することができる。特に、潤滑油を軸線Oに対する径方向内側のみに向かって供給する場合に比べて、軸受上半部12、及び軸受下半部11に対してさらに積極的に潤滑油を供給することができる。
【0084】
さらに、上述のような構成によれば、前方供給部133Fが軸線O方向でランド部21に対応する領域に設けられていることから、ランド部21に対して直接的に潤滑油を供給することができる。すなわち、ランド部21に十分な量の潤滑油を行き渡らせることができる。
【0085】
加えて、後方供給部133Gが軸線O方向で軸受下半部11に対応する領域に設けられていることから、軸受下半部11に対して直接的に潤滑油を供給することができる。すなわち、軸受下半部11に十分な量の潤滑油を行き渡らせることができる。
【0086】
なお、本実施形態では、後方供給部133Gが、噴射部132Eの軸線O方向における全体にわたって設けられている例について説明した。しかしながら、後方供給部133Gの態様は上記に限定されず、例えば
図10に示すように、ランド部21に軸線O方向で対応する領域に設けられてもよい。すなわち、この場合の後方供給部133Gは、第五給油ノズル13Eから見て回転方向Rの後方側に位置する前方側パッド15Aに向かって潤滑油を吹き出すことが可能である。
【0087】
このような構成によれば、ランド部21に対して回転方向Rの前方側からも潤滑油を供給することができる。すなわち、ランド部21にさらに十分に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0088】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。