(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形原料を成形して、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する、ハニカム成形体を押出し成形、切断および乾燥により形成する成形工程と、
前記成形工程によって得られた前記ハニカム成形体の前記一方の端面の中心付近から、前記ハニカム成形体の中心軸方向に沿って突出し、平面状の凸端面を備える凸端部を形成し、前記一方の端面を断面凸状に加工する凸端部形成工程と、
前記凸端部が形成された前記一方の端面の側を下方に向け、棚板面に前記凸端部の一部を当接させて前記ハニカム成形体を棚板に載置する載置工程と、
前記棚板に載置された前記ハニカム成形体を焼成し、ハニカム焼成体を形成する焼成工程と、
前記焼成工程によって得られた前記ハニカム焼成体の前記一方の端面を研削し、前記凸端部を除去する端面研削工程と
を有するハニカム構造体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス製ハニカム構造体は、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ、或いは燃焼装置用蓄熱体等の広範な用途に使用されている。セラミックス製ハニカム構造体(以下、単に「ハニカム構造体」と称す。)は、成形原料(坏土)を調製し、押出成形機を用いて所望のハニカム形状に押出成形し、生切断、乾燥、仕上げ切断したハニカム成形体を、高温で焼成する焼成工程を経て製造されている。
【0003】
上記焼成工程において、ハニカム成形体は、一方の端面を下方に向けた状態で棚板の上に載置され、当該棚板とともに焼成炉内に投入される。このとき、ハニカム成形体が棚板に付着することを防止するとともに、形成されるハニカム構造体の端面を良好に保ち、端面切れ等の不具合を生じさせないために、棚板及びハニカム成形体の間に“トチ(栃)”と呼ばれる焼成用の敷板が一般的に介設されている。このトチは、例えば、ハニカム成形体を焼成したハニカム構造体を薄く切断したものが用いられ、繰り返しの使用が可能である。
【0004】
しかしながら、トチを繰り返し使用すると、割れ等が生じるため、セラミックス原料をプレス成形して焼成した“プレストチ”と呼ばれるものが使用され、繰り返しの使用が可能となった(例えば、特許文献1参照。)。これらのトチを総称して、“焼きトチ”と呼ぶ。また、特に、セル隔壁の薄いハニカム成形体を焼成する場合には、ハニカム成形体と同一素材で形成された未焼成のハニカム成形体を薄く切断した焼成用生トチ(以下、単に「生トチ」と称す。)が焼成工程において用いられている(例えば、特許文献2参照。)。なお、本明細書において、押出成形から焼成前のものを「ハニカム成形体」と定義し、焼成後のものを「ハニカム構造体」と定義する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
押出成形されたハニカム成形体は、焼成工程において、セルの長手方向及びセルの長手方向に直交する方向に沿って焼成収縮する。そのため、ハニカム成形体を上記焼トチの上に載置して焼成炉内に投入した場合、ハニカム成形体の焼成収縮により焼トチ上面とハニカム成形体の下端面との間でズレを生じ、焼トチと接したハニカム構造体の下端面にセル隔壁の変形や切れ等の不良が発生することがあった。また、ハニカム成形体の下端面と焼トチ上面の間に引っ掛かりが生じ、ズレ等が均等に起こらず、ハニカム構造体の下端面の形状に歪みを生じることがあった。同歪みが発生した場合、円柱形状のハニカム構造体では端面の真円度不良となる。特に複数のセルを区画形成するセル隔壁の隔壁厚さが薄いハニカム成形体を焼成する場合、上記不良の発生が顕著であった。
【0007】
一方、上記生トチを使用した場合、焼成対象のハニカム成形体と同一素材で形成されているため、ハニカム成形体と生トチとの間で焼成時における焼成収縮差が生じることがない。そのため、ハニカム成形体と同一のタイミング及び同一の比率でセルの長手方向及びセルの長手方向に直交する断面方向に沿って焼成収縮することができる。そのため、焼トチを使用した場合の不具合を解消することが可能となる。但し、生トチの形状が不適切な場合は、生トチが棚板の拘束を受けて等方的に焼成収縮することができず、生トチ上に載置するハニカム成形体との間に焼成収縮の差異を生じることがあった。この結果、ハニカム成形体のセル隔壁に生トチ載置面側で変形を生じたり、ハニカム成形体の形状精度(例えば真円度)に悪影響を与えたりすることがあった。更に、生トチは、繰返しの使用をすることができず、ハニカム成形体の焼成における焼成コストを増加させる要因ともなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体の端面における不良の発生を軽減するとともに、焼成コストを抑えることが可能なトチを使用しないハニカム構造体の製造方
法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記課題を解決したハニカム構造体の製造方
法が提供される。
【0010】
[1]成形原料を成形して、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する、ハニカム成形体を押出し成形、切断および乾燥により形成する成形工程と、前記成形工程によって得られた前記ハニカム成形体の前記一方の端面の中心付近から、前記ハニカム成形体の中心軸方向に沿って突出し、平面状の凸端面を備える凸端部を形成し、前記一方の端面を断面凸状に加工する凸端部形成工程と、前記凸端部が形成された前記一方の端面の側を下方に向け、棚板面に前記凸端部の一部を当接させて前記ハニカム成形体を棚板に載置する載置工程と、前記棚板に載置された前記ハニカム成形体を焼成し、ハニカム焼成体を形成する焼成工程と、前記焼成工程によって得られた前記ハニカム焼成体の前記一方の端面を研削し、前記凸端部を除去する端面研削工程とを有するハニカム構造体の製造方法。
【0011】
[2]前記凸端部は、前記凸端面に直交する凸周面を備え、薄円板状を呈する前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0012】
[3]前記凸端部は、前記一方の端面が斜め方向に面取りされ、前記ハニカム成形体の外径に対して前記凸端面が縮径してなる断面テーパー形状を呈する面取部を更に有する前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0013】
[4]前記凸端部は、前記面取部の一端から前記凸端面と平行になるように屈曲した平面部を更に有する前記[3]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0014】
[5]前記ハニカム成形体の断面積に対する前記凸端面の面積の面積比率Rが、15〜30%である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0015】
[6]前記凸端部の前記一方の端面の角部からの高さが0.3〜3mmである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0016】
[7]前記凸端部を除去する研削除去部の厚さが0.5〜3mmである前記[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、トチを使用することなく、端面のセル隔壁および形状精度を良好に保持したハニカム構造体を製造することができる。また、本発明のハニカム成形体は、上記製造方法に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明のハニカム構造体の製造方
法の実施の形態について詳述する。なお、本発明のハニカム構造体の製造方法、及びハニカム成形体は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0024】
本発明の一実施形態のハニカム成形体1は、
図1及び
図2に示すように、全体として略円柱状を呈し、一方の端面2aの中心付近から、中心軸方向X(
図1参照)に沿って突出し、平面状の凸端面3a及び凸端面3aに直交する凸周面3bを備える薄円板状の凸端部3を有している。これにより、ハニカム成形体1は、一方の端面2aの中心付近が膨らんだ断面凸状に加工される。このハニカム成形体1を使用したハニカム構造体の製造方法100を
図3に基づいて説明する。なお、
図1〜5において、ハニカム成形体1の端面に現れるセル及び隔壁について、一部図示を省略している。
【0025】
ハニカム成形体1は、成形原料(杯土)を調製し、押出成形機を用いて所望の形状に押出成形したものであり、押出成形機による押出成形後に、所定の長さに切断(生切断)し、乾燥させた後、仕上げ切断を経た円柱状のハニカム成形体1をベースに形成されている(成形工程)。本実施形態のハニカム成形体1は、成形工程から形成された上記円柱状のハニカム成形体1の一方の端面2aをカップ型砥石等で円形状に研削加工し、中心付近を一方の端面2aの角部4から突出させ、一方の端面2aに形成された円環状の平面部2cに対して平行な凸端面3aを備える凸端部3を形成したものである(凸端部形成工程)。
【0026】
なお、
図1において、図示を簡略化するため、一方の端面2aを上方に向けた状態のものを示している。また、
図3において、ハニカム成形体1を棚板10に載置する図(左から2番目)以外は、同様に一方の端面2aを上方に向けた状態のものを示している。
【0027】
ハニカム成形体1は、流体の流路となる一方の端面2aから他方の端面2bまで延びる複数のセル5を有し、当該セル5を区画形成する多角形格子状の隔壁6を有している。ここで、ハニカム成形体1の断面積R1に対する凸端部3の凸端面3aの面積R2の面積比率R(R2/R1×100)が、15〜30%の範囲となるように設定されている(
図2参照)。
図2において、断面積R1及び面積R2を図示するため、それぞれハニカム成形体1及び凸端面3aの直径部に示している。
【0028】
ここで、面積比率Rが30%を超える場合、棚板10と直に接する面積が大きくなり、焼成時における焼成収縮の影響を受けやすくなる。一方、面積比率Rが15%を下回る場合、ハニカム成形体1の荷重を狭い面積の凸端面3aで支えることとなり、焼成中の振動で不安定になったり、荷重集中による変形が生じやすい。そのため、面積比率Rは、上記範囲内に設定されている。ここで、一方の端面2aの角部4から凸端部3の凸端面3aに至るまでの凸端部高さH(凸周面3bの高さに相当)は、特に限定されるものではないが、例えば、0.3〜3mmの範囲に設定することができる。
【0029】
ここで、凸端部高さHが、0.3mmよりも小さい場合、後述する載置工程において、棚板10の棚板面11との間の隙間空間7が小さくなり、一方の端面2aの角部4と棚板面11の一部が接触する可能性がある。一方、凸端部高さHが、3mmよりも大きい場合、成形体の凸端部形成工程において凸端部3を形成するための研削量と、端面研削工程において凸端部3を除去するための研削量が多くなり、凸端部3の除去に時間を要することになる。そこで、凸端部高さHは、0.3〜3mmの範囲に設定されている。
【0030】
成形工程及び凸端部形成工程を経て形成されたハニカム成形体1を、一方の端面2aを下方に向けて棚板10の棚板面11の上に載置する(載置工程)。このとき、ハニカム成形体1に形成された凸端部3によって、一方の端面2aの角部4と、棚板面11との間に、凸端部3の凸端部高さHに相当する距離だけ離間した隙間空間7が生じる。すなわち、棚板10にハニカム成形体1を載置した場合、一方の端面2aの全体が棚板面11と当接することがない。この棚板10にハニカム成形体1を載置した状態で焼成工程が実施される。
【0031】
使用する棚板10は、耐熱性セラミック質から構成され、高温の焼成温度においても焼成収縮を生じることがない。また、棚板10の棚板面11の面積は、ハニカム成形体1の一方の端面2aに対して大となるように形成されている。そのため、棚板10に載置されたハニカム成形体1は、当該棚板10からはみ出すことがない。
【0032】
これにより、ハニカム成形体1は、中心付近に凸端部3を有することにより、一方の端面2aの角部4の付近が棚板10の棚板面11の上方に浮かんだ状態で配置される。すなわち、一方の端面2aの角部4の付近では、外部からの影響を何ら受けることがない。
【0033】
棚板10に載置された状態でハニカム成形体1が焼成炉内に投入され、予め規定された焼成温度及び焼成時間で焼成が行われる(焼成工程)。これにより、ハニカム成形体1の焼成が完了し、ハニカム焼成体20が形成される。焼成工程によって、セラミックス原料の焼結により、ハニカム成形体1の長手方向(中心軸方向Xに相当)及び当該長手方向に直交する断面に沿ってそれぞれ焼成収縮が発生する。このとき、棚板面11から浮いた位置にあるハニカム成形体1の一方の端面2aの角部4の付近は、前述したように棚板10と直に接することがなく、焼成収縮を阻害する要因はない。他方の端面2bは焼成時には上面になるため拘束は受けず、焼成収縮を阻害する要因はない。
【0034】
そのため、長手方向及びこれに直交する断面に沿って、等方的な焼成収縮が行われる。すなわち、ハニカム成形体1と棚板10とが接触する面積を可能な限り小さくすることで、一方の端面2aの凸端面3aにおいてセル5を区画形成する多角形格子状の隔壁6の形状が変形する等の不具合を生じるが、角部4の付近で生じることがない。その結果、焼成後のハニカム焼成体20の一方の端面2aにおいて隔壁6の変形や隔壁切れによる不良、真円度不良等を生じさせることがない。これにより、焼成工程における不良等の問題を解消し、形状安定性の高い品質のハニカム焼成体20の形成が可能となる。
【0035】
得られたハニカム焼成体20は、一方の端面2aの中心付近に円板状の凸端部3が形成されたままである(
図3参照)。そこで、ハニカム焼成体20を中心軸方向Xを回転軸として回転させながら、一方の端面2aに相対する位置から回転するカップ型砥石(図示しない)を徐々に近接させる(端面研削工程)。これにより、凸端部3が徐々に削り取られ、除去される。これにより、円柱状のハニカム構造体30の製造が完了する。なお、
図3に、カップ型砥石によって削り取られた凸端部3からなる研削除去部21を模式的に示している。端面研削後の端面の平面度を良好にするために、端面2aを凸端部3の高さ以上に研削することが望ましい。
【0036】
凸端面3aに生じる隔壁6の変形等の不具合の深さは通常0.5mm程度であるので、端面2aの不具合を除去するためには0.5mm以上研削する必要がある。凸端面3aの最大高さは3mmであるので、3mm以上研削する必要はない。
【0037】
本発明の別例構成として、
図4に示す構成を有するハニカム成形体40を例示することができる。
図4は、本発明の別例構成のハニカム成形体40の概略構成を示す斜視図である。
【0038】
別例構成のハニカム成形体40は、
図4に示すように、ハニカム成形体40の一方の端面41に形成された凸端部42が断面テーパー形状を呈するように形成されたものである。すなわち、一方の端面41の角部43が斜め方向に面取りされ、ハニカム成形体40の外径に対して凸端面42aが縮径するように面取部44を有している。
【0039】
ここで、一方の端面41を下方に向けて、棚板10の棚板面の上に、別例構成のハニカム成形体40を載置した場合、面取部44及び棚板面11の間になす角度θで形成された隙間空間7が形成される。ここで、係るなす角度θは、0.5〜5°の範囲に設定される。
【0040】
これにより、棚板面11から浮いた位置にハニカム成形体40の凸端部42の面取部44は、棚板10と直に接することがなく、焼成工程の際の焼成収縮を阻害する要因はない。そのため、長手方向及びこれに直交する断面に沿って、等方的な焼成収縮が行われる。
【0041】
すなわち、ハニカム成形体40と棚板10とが接触する面積を可能な限り小さくし、かつ、面取部44及び棚板面11の間のなす角度θを規定することにより、ハニカム成形体40が焼成中の振動で棚板10の上で揺動しても復元力を維持することができ、一方の端面41においてセル5を区画形成する多角形格子状の隔壁6の形状が変形する等の不具合を生じることがない。その結果、焼成後のハニカム焼成体の一方の端面において隔壁の変形や隔壁切れによる不良や真円度不良等を生じさせることがない。これにより、焼成工程によける不良等の問題を解消し、形状安定性の高い品質のハニカム焼成体の形成が可能となる。
【0042】
図5は、棚板に載置した更に別例構成のハニカム成形体50の概略構成を示す一部拡大断面図である。ここで、ハニカム成形体50は、一方の端面51に形成された凸端部52が、前述したハニカム成形体1の凸端部3及び別例構成のハニカム成形体40の凸端部42の形状を組み合わせたものから構成されている。すなわち、凸端部52の凸端面52aの近傍は、角部53に向かって斜め方向に面取りされ、ハニカム成形体50の外径に対して凸端面52aが縮径してなる断面テーパー形状を呈する面取部54と、面取部の一端54aから凸端面52aに平行になるように屈曲した平面部55とを有している。
【0043】
ここで、一方の端面51を下方に向けて、棚板10の棚板面の上に、別例構成のハニカム成形体50を載置した場合、面取部54及び棚板面11の間になす角度θで形成され、かつ平面部55によって上方が囲まれた隙間空間7が形成される。
【0044】
本発明はハニカム構造体の外周を加工しない一体品への適用に効果的であり、特にセル隔壁が変形しやすい薄壁品(例えば隔壁厚さ0.15mm以下)に効果が大きい。一方、外周加工品や比較的セル隔壁が厚いハニカム構造体にも適用可能である。
【0045】
以下、本発明
のハニカム構造体の製造方法について、下記の実施例に基づいて説明するが、本発明
のハニカム構造体の製造方法は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(1)成形工程・凸端部形成工程
同一の杯土を使用し、成形条件及びその他条件を一定にした成形工程及び凸端部形成工程により、一方の端面に凸端部を有し、面積比率R及び棚板面と面取部の間のなす角度θがそれぞれ上記範囲に合致する複数のハニカム成形体を作製した(実施例1〜12)。更に、上記パラメータのうち面積比率Rが上記範囲から逸脱するハニカム成形体(比較例1〜8)を作製した(表1参照)。なお、表1において、なす角度θが90°のものは、面取部を有するものではなく、凸端面に対して直角の周面を有するハニカム成形体を示している。
【0047】
(2)載置工程・焼成工程
作製したハニカム成形体を凸端部のある面を下方に向けて、セラミック質の棚板の棚板面に直接載置した。なお、比較例7,8は、棚板面及びハニカム成形体の間に生トチを介設した。このとき、生トチ側の隔壁とハニカム成形体のセルの隔壁の格子方向を互いに一致させて(=0°)、生トチの上にハニカム成形体を載置した。係る状態で、棚板及びハニカム成形体を焼成炉内に投入した。なお、焼成時間及び焼成温度等の各焼成条件については、各実施例1〜12及び比較例1〜8において同一の条件とした。
【0048】
更に、ハニカム成形体を棚板に載置した際の平面度は実施例1〜12、比較例1〜8のいずれも0.2とした。ここで、平面度とは、ハニカム成形体の一方の他面を下方に向けて平板上に置き、当該平板に対して垂直方向に平板に対する端面の高さを測定した、最大値と最小値の差である。
【0049】
(3)端面研削工程
上記(2)において得られた実施例1〜12、比較例1〜6に対し、端面研削工程を実施し、凸端部の除去を行い、ハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体について下記の項目について評価した。
【0050】
(4)評価項目(真円度の焼成前後の変化量)
焼成前のハニカム成形体の端面と、焼成後のハニカム構造体の端面とのそれぞれの真円度を算出し、“焼成前のハニカム成形体の真円度−焼成後のハニカム構造体の真円度”の差を評価した。ここで、真円度とは、円形形体の幾何学的円からの差(狂い)の大きさを表すものであり、最大の直径と最小の直径の差で示している。ここでは、寸法測定機(レーザー変位計)でハニカム成形体及びハニカム構造体の外径の最大径と最小径の測定を行い、真円度の値を算出している。なお、真円度の差の値が、0.01以上のものを“A”、−0.12〜0.00のものを“B”、−0.13以下のものを“C”として三段階の評価を行った。なお、真円度の差がマイナスになる場合は、真円度が焼成前後で悪化していることを意味する。
【0051】
(5)評価項目(隔壁切れ)
ハニカム構造体の端面の形状を目視によって確認し、焼成収縮の際によってハニカム構造体の端面に生じる隔壁切れ及び隔壁変形の有無を目視でそれぞれ判定した。なお、これらの判定基準は、切れまたは変形が認められない場合は良好な状態として“A”とし、変形量が僅かなものは許容可能として “B”とし、大きな変形が認められ許容範囲外であるものを“C”として三段階の評価を行った。係る評価項目により、棚板に直置きした場合の本発明のハニカム成形体と隔壁切れ及び隔壁変形との相関関係を把握することができる。
【0052】
実施例1〜12、及び、比較例1〜8のハニカム成形体の外径に対する凸端面の面積比率R、棚板面との間のなす角度θ、平面度、隔壁の格子方向、及び得られたハニカム構造体に対する各評価項目をまとめたものを下記表1に示す。なお、評価に供した実施例、比較例のハニカム構造体は円柱形であり、直径は118mm、長さは152mm、隔壁厚さは0.076mmは(3mil)、セル密度は62セル/cm
2(400セル/inch
2)である。
【0053】
【表1】
【0054】
(考察:実施例1〜12)
表1に示されるように、面積比率R、なす角度θの各パラメータがいずれも本発明のハニカム成形体において規定した範囲の場合、真円度の変化及び隔壁切れのいずれの評価項目においても良好な評価を得た。これにより、本発明のハニカム成形体は、焼成工程において等方的な焼成収縮を行うことができ、ハニカム成形体の一方の端面の外周縁付近及び棚板の棚板面との間で焼成収縮による拘束を生じることがないことが確認された。特に、面積比率Rが20%以下の場合(実施例1,2,5,6,9,10)、いずれにおいても真円度の差が0.01以上で“A”の評価であり、かつ隔壁切れに関しても“A”の評価であった。更に、凸端部に面取部を形成した場合であっても評価項目に大きな差異は認められなかった。すなわち、本実施形態のハニカム成形体のように、棚板面に対して側面が直交する凸端部を形成することは、端面研削の加工が高度なものとなり、係る凸端部の形成に時間及びコストが係る場合がある。これに対して、面取部を有する凸端部の形成は、比較的容易であり、十分な効果が得られることが確認された。
【0055】
(考察:比較例1〜8)
一方、面積比率Rが30%を超える場合(比較例1〜6)、すなわち、棚板面との接触面積が大きい場合には、焼成収縮による拘束を受けやすくなるため、真円度の変化の評価がいずれも“C”であり、面取部の有無によって評価結果に大きな違いは認められなかった。比較例7,8は従来の生トチの上にハニカム成形体を載置したものであり、生トチの間で焼成収縮が生じ、真円度の変化が低いものとなった。
【0056】
上記実施例1〜12、及び、比較例1〜8において示されたように、面積比率Rが15〜30%で、更に好ましくは20%以下の条件を満たすハニカム成形体を用いることにより、トチを
使用することなく、セルの隔壁の変形がなく、真円度の変化が良好なハニカム構造体を製造することができる。