特許第6313071号(P6313071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6313071カフェイン低減茶飲料およびコーヒー飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6313071
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】カフェイン低減茶飲料およびコーヒー飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20180409BHJP
【FI】
   A23F3/16
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-39500(P2014-39500)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-163049(P2015-163049A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】山 本 研一朗
(72)【発明者】
【氏名】塩 野 貴 史
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−231719(JP,A)
【文献】 特開2013−165690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料の製造方法。
【請求項2】
前記白土が、交換性カルシウムイオン含量低減処理白土である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
交換性カルシウムイオン含量低減処理白土が、白土に含まれる交換性カルシウムイオンをカルシウムイオン以外の陽イオンで処理してなる白土である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
茶抽出液に含まれるカフェインが60%以上除去された、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
茶抽出液に、白土に含まれる交換性カルシウムイオンをカルシウムイオン以外の陽イオンで処理してなる白土を接触させる工程を含む、茶飲料の製造方法。
【請求項6】
茶抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料の濁度上昇抑制方法。
【請求項7】
茶抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料の香味低減抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白土を利用したカフェイン低減茶飲料およびコーヒー飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりから、カフェインを低減した茶飲料またはコーヒー飲料の開発が求められている。これまでに、カフェインを除去する技術として、茶抽出物に活性炭や白土などの吸着剤を接触させ、カフェインを除去する製法が数多く検討されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カフェインを含有する水溶液を活性白土または酸性白土と接触させることにより、水溶液からカテキン類の減少を抑えながらカフェインを除去する製法が開示されている。また、特許文献2には、茶抽出物とエタノール水溶物とを混合し、活性炭、酸性白土、または活性白土から選ばれる1種以上と接触させる工程と、タンナーゼで処理する工程を経て得られる風味が改良された精製緑茶抽出物が開示されている。
さらに、特許文献3には、茶抽出物をアルカリ性条件下で活性白土および/または酸性白土と接触させることにより、白土から茶抽出物へのミネラル成分の溶出を抑制した精製茶抽出物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−142405号公報
【特許文献2】特開2007−104967号公報
【特許文献3】特開2012−231719号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を用いて茶飲料を製造すると、ミネラル成分の茶抽出物への溶出に伴い、カフェイン低減処理が施されていない通常の茶飲料と比較して香味の悪化やシュウ酸カルシウムなどの析出物による沈殿危害や液色の悪化などの外観悪化が生じる場合があることが判明した。また、特許文献2や特許文献3のような技術を用いて茶飲料を製造する場合には、使用した有機溶媒を除去する際の香気損失や、アルカリ性条件にするためのpH調整剤の香味に対する影響などを考慮する必要があった。また、特許文献3において添加するアルカリ物質やpHの条件によっては、白土の膨潤による沈降性の低下などにより白土処理後の抽出液の濁度が上昇し、製造の後工程でフィルターなどを用いる場合にフィルターの目詰まりなどの問題を引き起こす可能性もある。
【0006】
本発明は、外観や香味が通常の茶飲料と遜色ない、カフェインが低減された茶飲料およびコーヒー飲料をより簡便に製造する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、外観や香味が通常の茶飲料と遜色ない程度に維持される、茶飲料およびコーヒー飲料の濁度低減方法や香味低減抑制方法を提供することも目的とする。
【0007】
本発明者らは、交換性カルシウムイオン含量を低減させた白土を吸着剤として茶抽出液と接触させることにより、茶飲料中のカフェイン含量を十分に低減させつつ、通常の茶飲料と比較して遜色ない外観や香味を有する茶飲料を製造できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)茶抽出液またはコーヒー抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(2)前記白土が、交換性カルシウムイオン含量低減処理白土である、前記(1)に記載の製造方法。
(3)交換性カルシウムイオン含量低減処理白土が、白土に含まれる交換性カルシウムイオンをカルシウムイオン以外の陽イオンで処理してなる白土である、前記(2)に記載の製造方法。
(4)茶抽出液またはコーヒー抽出液に含まれるカフェインが60%以上除去された、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)茶飲料の製造方法である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)茶飲料が、緑茶または紅茶である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法により製造された、茶飲料またはコーヒー飲料。
(8)茶抽出液またはコーヒー抽出液に、白土に含まれる交換性カルシウムイオンをカルシウムイオン以外の陽イオンで処理してなる白土を接触させる工程を含む、茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(9)茶抽出液またはコーヒー抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料またはコーヒー飲料の濁度上昇抑制方法。
(10)茶抽出液またはコーヒー抽出液に、下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たす白土を接触させる工程を含む、茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法。
【0009】
本発明の製造方法により製造された茶飲料やコーヒー飲料は、飲料中のカフェイン含量を低減させつつも、白土処理による濁度上昇が抑制され、飲料形態としての外観も好ましく、併せて香味は通常の茶飲料と遜色ないことから、カフェイン摂取を控えつつ、本来の香味を味わえる茶飲料やコーヒー飲料を簡便に製造できる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法は、茶抽出液またはコーヒー抽出液に、所定の条件を満たす白土を接触させる工程を含むものである。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法は、好ましくはカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法である。
【0011】
本発明の製造方法に用いられる茶抽出液は、特に限定されないが、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮物を用いることができる。例えば、茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出物の濃縮物や精製物を水(0〜100℃)に混合または溶解させることにより、本発明の製造方法に用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーを混合したものとを茶抽出液として本発明の製造方法に用いてもよい。茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させた場合には、メッシュやストレーナーなどを用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。
【0012】
茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させる条件は、特に限定されないが、茶葉に対し10〜50倍の水(0〜100℃)を混合接触させることが好ましく、より好ましくは30〜40倍の水(0〜100℃)を混合接触させて抽出したものである。
【0013】
茶抽出液のpHは、茶抽出液が未調整の場合には、通常5.5〜6.0である。
【0014】
茶抽出液の調製に用いられる茶葉は、特に限定されないが、Camellia sinensisに属する茶葉を用いることができ、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶等の緑茶葉のような不発酵茶に限らず、烏龍茶のような半発酵茶や、紅茶のような発酵茶、プーアル茶のような後発酵茶等も用いることができる。本発明の製造方法に用いられる茶抽出液に用いられる茶葉は、上記のような茶葉であれば特に限定されるものではないが、好ましくは緑茶、烏龍茶、または紅茶であり、より好ましくは緑茶または紅茶である。
【0015】
茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物としては、ポリフェノン(三井農林社製)やサンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物や茶精製物は、そのまま又は水で溶解もしくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0016】
本発明の製造方法に用いられるコーヒー抽出液は、特に限定されないが、一般的な方法(例えば、「最新・ソフトドリンクス」(光琳)を参照)により抽出することができる。
コーヒー、例えば焙煎したコーヒー豆から各種方法により得られる抽出液(いわゆるレギュラーコーヒー)のほか、コーヒーから抽出した成分を含有する液体がすべて包含され、例えば、コーヒー焙煎豆の冷水、温水、熱水、加圧熱水による抽出液や、ショ糖脂肪酸エステル等の食品添加物として許容されている界面活性剤の水溶液による抽出液、炭酸ガス等の臨界抽出により得られた抽出液、インスタントコーヒーの溶解液等も包含される。コーヒー抽出液は上述したいずれであってもよいが、コーヒー抽出液は、好ましい態様によれば、焙煎したコーヒー豆を熱水(例えば、コーヒー豆の10倍量)で抽出した後、冷却してコーヒー抽出液とすることが好ましい。また、コーヒー豆からの抽出方法については、特に限定されず、例えば、ボイリング式、エスプレッソ式、サイフォン式、ドリップ式(例えば、ペーパー、ネル)が挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法に用いられるコーヒー抽出液を得るのに用いられるコーヒー豆の種類は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテンが挙げられ、これらの1種または2種以上をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種があり、好ましくは、香味の観点から、アラビカ種である。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆を焙煎により焙煎コーヒーとする方法については、特に限定されるものではなく、焙煎温度、焙煎環境についても限定されない。焙煎方法としては直火式、熱風式、半熱風式などが挙げられる。焙煎コーヒーの焙煎度としては特に限定されるものではなく、例えばライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンのいずれを用いてもよい。焙煎コーヒーの焙煎度は、L値を用いて表現してもよく、当業者は適宜、豆のL値を選択することができる。L値は、例えば日本電色工業社製の色差計により測定することができる。なお、焙煎度の異なるコーヒー豆を複数種混合してもよい。
【0018】
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法では、所定の条件を満たす白土が用いられる。以下の理論に拘束される訳ではないが、所定の条件を満たす白土を茶抽出液またはコーヒー抽出液と接触させることにより、茶抽出液やコーヒー抽出液中のカフェイン含量を低減させることができるとともに、茶抽出液およびコーヒー抽出液に含まれるシュウ酸と白土との接触により生じうるシュウ酸カルシウムなどの析出を低減することができ、それにより茶飲料やコーヒー飲料の濁度上昇を抑制することができると考えられる。
【0019】
本発明の製造方法は、好ましくは茶飲料の製造方法であり、より好ましくは緑茶飲料の製造方法または紅茶飲料の製造方法である。
【0020】
本発明の製造方法において茶抽出液およびコーヒー抽出液と接触させる白土は下記条件AおよびB:
A 白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量が3mg以下である
B 白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHが4.0〜9.0である
を満たすものである。
【0021】
条件Aにおいて、白土1g(乾燥重量)当たりの交換性カルシウムイオン含量は、好ましくは、2.5mg以下、より好ましくは2mg以下である。本発明における交換性カルシウムイオン含量とは、白土を酢酸アンモニウム溶液で処理した際に溶液に溶出されるカルシウムイオンの全量のことをいう。具体的には、以下のように算出することができる。吸着剤に対し、50倍以上の1M酢酸アンモニウム溶液を添加し攪拌した後、常温で2時間接触させる。得られた懸濁液を、遠心分離機を用いて固液分離し、0.45μmポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルターで濾過して、ICP発光分析法にて各濾液のカルシウム濃度を定量する。得られた懸濁液のカルシウム濃度と、1M酢酸アンモニウム溶液に添加した吸着剤の量から、以下の式を用いて吸着剤あたりの交換性カルシウムイオン含量を算出する。
吸着剤あたりの交換性カルシウムイオン含量(mg/g)
=カルシウム濃度(mg/L)×1M酢酸アンモニウム溶液の液量(L)/吸着剤添加量(g)
ICP発光分析法による交換性カルシウムイオン含量の測定は周知であり、実施例に示す表2の条件あるいはその条件と同等の条件に従って交換性カルシウムイオン含量を測定することができる。
【0022】
条件Bにおいて、白土を2重量%の濃度で純水に懸濁したときのpHは、好ましくは5.0〜8.0、より好ましくは5.0〜7.0である。
【0023】
条件AおよびBを満たす白土としては、交換性カルシウムイオン含量を低減させる処理(交換性カルシウムイオン含量低減処理)が施された白土(本明細書において、「交換性カルシウムイオン含量低減処理白土」ということがある)を用いることができ、交換性カルシウムイオン含量低減処理が施された酸性白土が好ましい。吸着剤として交換性カルシウムイオン含量低減処理白土を用いると、カフェインの除去率は通常の白土で処理する場合と同等であり、かつ、飲料とした際の濁りや沈殿が生じない外観上も優位な飲料を製造することができる。
【0024】
交換性カルシウムイオン含量低減処理は、白土の交換性カルシウムイオン含量が所望の濃度になるまで低減できれば特に限定されるものではなく、例えば、白土(好ましくは酸性白土)をカルシウムイオン以外の陽イオンで処理することにより実施することができ(陽イオン処理)、より具体的には、白土(好ましくは酸性白土)をカルシウムイオン以外の陽イオンを含む水溶液と接触させ、分離後、洗浄することにより実施することができる。陽イオン処理により白土中のカルシウムイオン(すなわち、白土の交換性カルシウムイオン)の全部または一部がカルシウム以外の陽イオンに置換され、結果として白土中の交換性カルシウムイオン含量を低減させた交換性カルシウムイオン含量低減処理白土を得ることができる。
【0025】
カルシウムイオン以外の陽イオンは、飲食品として許容されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、有機陽イオン(1〜4級アンモニウムイオンなど)が挙げられ、これらの中でもカリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。陽イオン処理にあたっては1種または2種以上のカルシウムイオン以外の陽イオンを用いることができる。
【0026】
陽イオン処理にあたっては、上記のような陽イオンを白土に対して塩の形態で添加し、白土中のカルシウムイオンと陽イオンが置換されるようにすることができる。陽イオンが形成する塩は無機塩および有機塩のいずれでもよいが、例えば、塩化物、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸マグネシウム)、アスコルビン酸塩(例えば、アスコルビン酸マグネシウム)および乳酸塩(例えば、乳酸マグネシウム)が挙げられ、好ましくは、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化アンモニウムである。陽イオン処理にあたっては1種または2種以上の無機塩および有機塩を用いることができる。
【0027】
陽イオン処理において、白土に接触させる陽イオンは水溶液の形態であることが望ましく、陽イオンの濃度は、白土中の交換性カルシウムイオン含量を所望の濃度まで低減することができる限り特に限定されるものではないが、好ましくは、0.01〜1000mM、より好ましくは0.1〜1000mM、さらに好ましくは1〜1000mMの濃度である。2種以上の陽イオンまたは塩を用いる場合は、陽イオンの濃度は、各陽イオン濃度の合算値が上記濃度であることが好ましい。
【0028】
陽イオン処理において、白土と陽イオンの接触時間および接触温度は、白土中の交換性カルシウムイオン含量を所望の濃度まで低減することができる限り特に限定されるものではないが、接触時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは1〜24時間、接触温度は好ましくは4〜80℃、より好ましくは10〜50℃である。
【0029】
陽イオン処理において、白土および陽イオンの混合物は固液分離処理にかけ、白土から溶出してきたカルシウムイオンおよび白土中のカルシウムイオンと置換されなかった陽イオンを除去し、洗浄することが望ましい。固液分離処理としては、例えば、遠心分離や濾過が挙げられる。洗浄は、置換された陽イオンを白土中に維持したまま、溶出してきたカルシウムイオンおよび白土中のカルシウムイオンと置換されなかった陽イオンを除去することができれば特に限定されるものではないが、純水で2〜3回洗浄することが好ましい。
【0030】
交換性カルシウムイオン含量低減処理は、白土(好ましくは酸性白土)を酸性溶液で洗浄することにより実施することもでき(酸洗浄処理)、より具体的には、白土(好ましくは酸性白土)を酸性水溶液と接触させ、分離後、洗浄することにより実施することができる。酸洗浄処理により、陽イオン処理と同様に、白土中の交換性カルシウムイオン含量を低減させた交換性カルシウムイオン含量低減処理白土を得ることができる。酸洗浄処理に用いることができる酸性水溶液としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、および有機酸(クエン酸、酢酸、リンゴ酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、および酪酸など)が挙げられ、好ましくは塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、および有機酸(クエン酸、酢酸、およびシュウ酸)である。酸性水溶液は、得られる交換性カルシウムイオン含量低減処理白土のpHが4.0〜9.0となるように適当な濃度に調整してもよいし、あるいは酸性水溶液の濃度は調整せずに、酸洗浄処理後に適当な濃度のアルカリ性水溶液を加えてpHが4.0〜9.0となるように調整してもよい。
【0031】
本発明の製造方法に使用する条件AおよびBを満たす白土は好ましくは乾燥させ、乾燥粉末等の形態にすることができる。乾燥粉末等の形態にすることで白土の保存・運搬や、抽出液との接触処理を簡便に実施できる点で有利である。
【0032】
本発明の製造方法に用いられる白土は、条件AおよびBを満たす限り、特に限定されるものではない。本発明の製造方法に用いられる白土としては、例えば、酸性白土、活性白土、ベントナイト、活性ベントナイトおよびこれらの一部または全部の組合せであって、交換性カルシウムイオン含量低減処理が施されたものが挙げられ、好ましくは、交換性カルシウムイオン含量低減処理が施された酸性白土である。
【0033】
酸性白土は、一般的な化学成分として、SiO2 、Al23 、Fe23 、CaO、MgOなどを有するが、本発明の製造方法に使用する場合、SiO2 /Al23 比は、3〜12、好ましくは3〜8が好ましい。また、酸性白土中に、Fe23 2〜5重量%、CaO 0〜1.5重量%、MgO 1〜7重量%などを含有する組成のものが好ましい。
【0034】
本発明の製造方法に使用される酸性白土の比表面積(m/g)は、50m/g以上150m/g未満であるものが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法に使用される酸性白土のうち好ましいものとしては、比表面積(m/g)が50以上150未満で、かつSiO/Al比が3以上8未満である酸性白土が挙げられる。
【0036】
上記のような好ましい酸性白土としては、例えば、ミズカエース#20やミズカエース#200、ミズカエース#400、ミズカエース#600、ミズライト(水澤化学社製)などの市販品を用いることができ、好ましくはミズカエース#20やミズカエース#200を用いることができる。
【0037】
本発明の製造方法において、茶抽出液またはコーヒー抽出液に条件AおよびBを満たす白土を接触させる方法は、茶抽出液またはコーヒー抽出液が白土と接触する限り、特に限定されるものではない。また、茶抽出液またはコーヒー抽出液に対する、条件AおよびBを満たす白土の接触時間、接触時の温度、および接触させる白土の量は、茶抽出液またはコーヒー抽出液中のカフェインを除去でき、濁度上昇が抑制される限り、特に限定されるものではない。例えば、茶抽出液の場合、白土との接触時間は1秒〜30分間であり、接触温度は0〜30℃であり、白土の量は、茶葉10gから抽出された茶抽出液400gに対して2〜40gである。
【0038】
茶抽出液またはコーヒー抽出液と接触させた条件AおよびBを満たす白土は、固液分離処理により除去することができる。固液分離処理に用いられる固液分離機としては、例えば、遠心分離機や濾過機が挙げられる。茶抽出液またはコーヒー抽出液と接触させた条件AおよびBを満たす白土を除去する方法は、濾過機による濾過のみにより除去してもよく、遠心分離機による遠心分離処理と、濾過機による濾過とを組み合わせてもよいが、遠心分離機による遠心分離処理と、濾過機による濾過とを組み合わせることがより好ましい。この場合の遠心分離処理は、一回でもよいが複数回行ってもよい。
【0039】
本発明の製造方法により製造された茶飲料またはコーヒー飲料中のpHは、例えば、5.5〜8.5の範囲とすることができ、好ましくは6.0〜7.5の範囲である。飲料や抽出液またはその調合液のpHは、市販のpHメーターにより測定することができる。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料中のpHは、例えば、抽出液や他の成分を配合したその調合液に、食品上許容されるpH調整剤を添加することにより調整することができる。添加可能なpH調整剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムが挙げられ、香味とコストの観点から炭酸水素ナトリウムを添加することが好ましい。
【0040】
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料に配合されるpH調整剤以外の成分としては、食品上許容される各種任意成分(例えば、酸化防止剤、保存料、香料)が挙げられる。
【0041】
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、本発明の製造方法で得られた茶飲料およびコーヒー飲料は、処理前の茶抽出液およびコーヒー抽出液と比較してカフェイン含量が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上低減(除去)されたものである。本発明の製造方法に用いられる抽出液および飲料中のカフェインの含量は高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定することができる。高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)の測定条件としては、例えば本明細書の実施例に示される測定条件を用いることができる。
【0042】
本発明の製造方法の他の好ましい態様によれば、本発明の製造方法で得られた茶飲料およびコーヒー飲料のカフェイン含量は、6mg/100mL以下、より好ましくは2mg/100mL以下、さらに好ましくは1mg/100mL未満である。
【0043】
本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、条件AおよびBを満たす白土を用いず通常の白土を用いて処理した場合よりも濁度が低減し外観が好ましいものとなる。すなわち、本発明の茶飲料およびコーヒー飲料の濁度の測定値は、条件AおよびBを満たす白土を用いず通常の白土を用いて処理した場合の濁度の測定値より低い値が期待できるものである。濁度の測定は当業者に周知であり、例えば、市販されている分光光度計により測定することができる。
【0044】
本発明の製造方法で得られた茶抽出液は、カフェインが低減されつつ、本来の香味や外観が維持され、香味や外観は通常の茶飲料またはコーヒー飲料と比較して遜色がないものである。従って、本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料はそのまま飲料として提供することができるが、配合工程、充填工程、殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。すなわち、本発明によれば、本発明の製造方法により茶飲料またはコーヒー飲料を製造し、次いで、該茶飲料またはコーヒー飲料に食品上許容される各種任意成分を配合する工程を含む、容器詰め茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法が提供される。
【0045】
本発明の別の態様によれば、本発明の製造方法により製造された茶飲料およびコーヒー飲料が提供される。本発明の茶飲料およびコーヒー飲料は、飲料中のカフェイン含量が十分に低減されつつも、通常の飲料と比較して遜色ない外観や香味を有する点で有利である。この本発明の製造方法には、上記した製造方法のいずれの製造方法を用いてもよい。
【0046】
本発明の別の態様によればまた、本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度上昇抑制方法が提供される。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度上昇抑制方法は、茶抽出液またはコーヒー抽出液に条件AおよびBを満たす白土を接触させる工程を含む方法であり、本発明のカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができる。本発明の濁度上昇抑制方法を用いることにより、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の外観を、カフェイン低減処理が施されていない通常の茶飲料またはコーヒー飲料と遜色ない程度に維持することができる。
【0047】
本発明のさらに別の態様によれば、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造における、飲料の濁度上昇抑制のための、条件AおよびBを満たす白土の使用が提供される。本発明の使用は、本発明のカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【0048】
本発明の別の態様によればまた、本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法が提供される。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法は、茶抽出液またはコーヒー抽出液に条件AおよびBを満たす白土を接触させる工程を含む方法であり、本発明のカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができる。本発明の香味低減抑制方法を用いることにより、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の香味を、カフェイン低減処理が施されていない通常の茶飲料またはコーヒー飲料と遜色ない程度に維持することができる。
【0049】
本発明のさらに別の態様によれば、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造における、飲料の香味低減抑制のための、条件AおよびBを満たす白土の使用が提供される。本発明の使用は、本発明のカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【0050】
後記実施例に示されるとおり、交換性カルシウムイオン含量低減処理が施された白土を吸着剤として茶抽出液と接触させることにより、茶飲料中のカフェイン含量を十分に低減させつつ、通常の茶飲料と比較して遜色ない外観や香味を有する茶飲料を製造することができる。従って、本発明の別の面によれば、茶抽出液またはコーヒー抽出液に、白土に含まれる交換性カルシウムイオンをカルシウムイオン以外の陽イオンで処理してなる白土を接触させる工程を含む、茶飲料またはコ−ヒー飲料の製造方法が提供される。この製造方法は、本発明のカフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0052】
カフェイン含量の測定方法
試料溶液中のカフェインの含量について、以下の手順に従い分析した。試料溶液をメンブレンフィルター(アドバンテック(株)製DISMIC 親水性PTFE、0.45μm)で濾過して、下記表1に示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にてカフェイン含量を定量した。HPLC分析条件を下記表1に示した。
【表1】
【0053】
濁度の測定方法
試料溶液の濁度は、市販の分光光度計(例えば、日立社製、U−3310)を用いて、660nmの吸光度を測定した。
【0054】
交換性カルシウムイオン含量の測定
吸着剤に対し、50倍以上の1M酢酸アンモニウム溶液を添加し攪拌した後、常温で2時間接触させた。得られた懸濁液を、固液分離し、メンブレンフィルター(アドバンテック(株)製DISMIC 親水性PTFE、0.45μm)で濾過して、下記表2に示すICP発光分析法にて各濾液のカルシウム濃度を定量した。
【表2】
【0055】
得られた懸濁液のカルシウム濃度と、1M酢酸アンモニウム溶液に添加した吸着剤の量から、以下の式を用いて吸着剤あたりの交換性カルシウムイオン含量を算出した。
吸着剤あたりの交換性カルシウムイオン含量(mg/g)
=カルシウム濃度(mg/L)×1M酢酸アンモニウム溶液の液量(L)/吸着剤添加量(g)
【0056】
吸着剤のpHの測定
吸着剤200mgに対して純水9.8gを添加し、充分に攪拌した後、懸濁液のpHをニッコー・ハンセン株式会社製ペンタイプpH計を用いて測定した。
【0057】
試験1:吸着剤処理緑茶抽出液の濁度低減効果
緑茶抽出液を各種吸着剤で処理し、得られたカフェイン低減処理液に関して、吸着剤の違いによる濁度上昇抑制効果について試験を行った。
【0058】
(1)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに対して70℃の熱水4000gを添加し、6分間抽出した。抽出後、固液分離し、得られた濾液を20℃まで冷却した後に同温度のイオン交換水で4000gとし、遠心分離処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0059】
(2)交換性カルシウムイオン含量低減処理白土の調製
酸性白土(ミズカエース#20、水澤化学社製)10gに対し、所定の濃度の塩化ナトリウム溶液、塩化カリウム溶液または塩化マグネシウム溶液をそれぞれ200mLずつ添加し、攪拌した後、常温で1時間以上接触させた。得られた懸濁液を、遠心分離機を用いて固液分離し、150mLの純水で2〜3回洗浄した。固液分離後、さらに150mLの純水に懸濁させた。得られた懸濁液を100℃のオーブンで8時間以上乾燥させた。得られた固形物を細かく粉砕し、交換性カルシウムイオン含量低減処理白土(それぞれ、ナトリウム処理白土、カリウム処理白土、マグネシウム処理白土)を得た。比較例として、塩化カルシウム溶液を添加し、同様に調製した交換性カルシウムイオン含量調整白土(カルシウム処理白土)を得た。
【0060】
(3)緑茶抽出液の吸着剤処理、および遠心分離処理
緑茶抽出液400gに対し、吸着剤を8.0g添加し1分間接触させた。吸着剤として、表3に記載の市販酸性白土2種(ミズカエース#20、ミズカエース♯200、水澤化学社製)、市販活性白土3種(ガレオンアースV2、ガレオンアースNFX、ガレオンアースNVZ、全て水澤化学社製)、市販ベントナイト1種(JCSS−3101)、並びに上記(2)で調製した交換性カルシウムイオン含量低減処理白土(ナトリウム処理白土、カリウム処理白土、マグネシウム処理白土)、交換性カルシウムイオン含量調整白土(カルシウム処理白土)を用いた。吸着剤は、事前に吸着剤あたりの交換性カルシウムイオン含量及びpHを測定した。緑茶抽出液を吸着剤と接触させた後、遠心分離を行い上清を得た。得られた上清を4℃に設定した冷蔵庫で2時間静置し、実施例1〜15および比較例1〜10の吸着剤処理緑茶抽出液を得た。
【0061】
(4)吸着剤処理緑茶抽出液の濁度測定
上記(3)で得られた吸着剤処理緑茶抽出液および吸着剤未処理の緑茶抽出液4mLを採取し、これを純水を用いて10mLに希釈した。よく攪拌した後、日立社製分光光度計(U−3310)を用いて濁度を測定した。
【0062】
(5)吸着剤処理緑茶抽出液のカフェイン含量の測定
上記(3)で得られた吸着剤処理緑茶抽出液を再度遠心分離処理し、前記のカフェイン量の測定方法に従ってカフェイン濃度を測定した。
【0063】
(6)吸着剤の交換性カルシウムイオン含量およびpHの測定
前記(3)で用いた吸着剤の交換性カルシウムイオン含量およびpHを前記の交換性カルシウムイオン含量の測定方法およびpHの測定方法に従って測定した。
(7)外観評価
上記(3)で得られた吸着剤処理緑茶抽出液および吸着剤未処理の緑茶抽出液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。得られた濾液にL−アスコルビン酸を400mg添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.5に調整後、イオン交換水で1000gとして飲料形態の緑茶飲料を得た。これらを用いて飲料形態とした際の濁りや液色などの外観危害について、訓練されたパネリスト6名によって評価を行った。評価は以下の評価基準でレベル分けを行った。評価基準は次の通りである:◎が吸着剤未処理茶の外観と同程度、○、△、×の順に従って、対照(吸着剤未処理茶)からの外観の変化が大きくなるものである。
◎:(4段階評価で3.5点以上)
○:(4段階評価で3点以上3.5点未満)
△:(4段階評価で2.5点以上3点未満)
×:(4段階評価で2.5点未満)
(8)香味評価
上記(7)で得られた飲料形態の緑茶飲料について、訓練されたパネリスト6名によって香味に関する官能評価を行った。すなわち、評価は吸着剤未処理の緑茶飲料を対照(4点)とし、緑茶飲料としての総合的な香味を5段階評価で相対評価した。評価基準は以下に示したとおりである。
【0064】
官能評価基準
5点:香味が良好になっている
4点:対照と同等である
3点:対照よりわずかに劣っている
2点:対照より明らかに劣っている
1点:対照よりかなり顕著に劣っている
【0065】
評価点はさらに以下の評価基準でレベル分けした。◎が最も吸着剤未処理区の香味に近く、○、△、×の順に従って、吸着剤未処理区からの香味の変化が大きくなるものである。
◎:(5段階評価で3.5点以上)
○:(5段階評価で3.0点以上3.5点未満)
△:(5段階評価で2.5点以上3.0点未満)
×:(5段階評価で2.5点未満)
【0066】
(9)結果
上記(4)〜(8)で得られた結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
交換性カルシウムイオン含量が3.0mg/g以下であり、かつ水に溶解したときのpHが4.0〜9.0である吸着剤を用いることによって、カフェイン除去率80%以上を維持したまま吸着剤処理緑茶抽出液の濁度の上昇を抑制できることが示された(実施例1〜15)。また、これらは外観評価および香味評価とも緑茶抽出液(吸着剤未処理区)に近いものであった。
【0069】
水に溶解したときのpHが4.0を下回る吸着剤(活性白土)を用いた比較例3〜5では、吸着剤処理緑茶抽出液の濁度は、比較例1及び2に比べて清澄であるものの、飲料としての外観は色調が黒ずみ、茶飲料として好ましくないものであった。また比較例3〜5のカフェインの除去率は実施例1〜15には及ばず、香味も金属味が強く感じられた。
【0070】
また、pHが9.0を超える吸着剤(ベントナイト)を用いた比較例6では、実施例1〜15に比べて吸着剤処理緑茶抽出液の濁度が高く、飲料としての外観においても目視で濁りが確認され、好ましいものではなかった。さらに香味評価の結果では実施例1〜15に比べて金属味が強く、舌を刺激する好ましくない収斂味が感じられた。
【0071】
試験2:吸着剤処理紅茶抽出液の濁度低減効果
紅茶抽出液を各種吸着剤で処理し、得られたカフェイン低減処理液に関して、吸着剤の違いによる濁度上昇抑制効果について試験を行った。
【0072】
(1)紅茶抽出液の調製
紅茶葉100gに対して70℃の熱水4000gを添加し、8分間抽出した。抽出後、固液分離し、得られた濾液を10℃まで冷却した後にイオン交換水で4000gとし、遠心分離処理を行い、紅茶抽出液を得た。
【0073】
(2)交換性カルシウムイオン含量低減処理白土の調製
試験1(2)と同じ方法で交換性カルシウムイオン含量低減処理白土を調製した。
【0074】
(3)紅茶抽出液の吸着剤処理、および遠心分離処理
試験1(3)と同じ方法で紅茶抽出液を吸着剤処理した。吸着剤として、表4に記載の市販酸性白土2種(ミズカエース#20、ミズカエース♯200、水澤化学社製)、市販活性白土3種(ガレオンアースV2、ガレオンアースNFX、ガレオンアースNVZ、全て水澤化学社製)、市販ベントナイト1種(JCSS−3101)、並びに上記(2)で調製した交換性カルシウムイオン含量低減処理白土(ナトリウム処理白土、カリウム処理白土、マグネシウム処理白土)、交換性カルシウムイオン含量調整白土(カルシウム処理)を用いた。紅茶抽出液を吸着剤と接触させた後、遠心分離を行い上清を得た。得られた上清を4℃に設定した冷蔵庫で2時間静置し、実施例16〜32および比較例11〜20の吸着剤処理紅茶抽出液を得た。
【0075】
(4)吸着剤処理紅茶抽出液の濁度測定
試験1(4)と同じ方法で吸着剤処理紅茶抽出液の濁度を測定した。
【0076】
(5)吸着剤処理紅茶抽出液のカフェイン含量の測定
試験1(5)と同じ方法で吸着剤処理紅茶抽出液のカフェイン濃度を測定した。
【0077】
(6)吸着剤の交換性カルシウムイオン含量およびpHの測定
試験1(6)と同じ方法で吸着剤の交換性カルシウムイオン含量およびpHを測定した。
(7)外観評価
上記(3)で得られた吸着剤処理紅茶抽出液および吸着剤未処理の紅茶抽出液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した。得られた濾液にL−アスコルビン酸を400mg添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.0に調整後、イオン交換水で1000gとして飲料形態の紅茶飲料を得た。これらを用いて試験1(7)と同じ評価基準により、外観評価を行った。
(8)香味評価
上記(7)で得られた飲料形態の紅茶飲料について、試験1(8)と同じ評価基準により、香味評価を行った。
【0078】
(9)結果
上記(4)〜(8)で得られた結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
紅茶においても、交換性カルシウムイオン含量が3.0mg/g以下であり、かつ水に溶解したときのpHが4.0〜9.0である吸着剤を用いることによって、カフェイン除去率をほぼ維持したまま吸着剤処理紅茶抽出液の濁度の上昇を抑制できることが示された(実施例16〜32)。また、これらは外観評価および香味評価とも紅茶茶抽出液(吸着剤未処理区)に近いものであった。
【0081】
水に溶解したときのpHが4.0を下回る吸着剤(活性白土)を用いた比較例13〜15では、吸着剤処理紅茶抽出液の濁度は、比較例11及び12に比べて清澄であるものの、飲料としての外観は色調が黒ずみ、茶飲料として好ましくないものであった。また、香味も金属味が強く感じられた。
【0082】
また、pHが9.0を超える吸着剤(ベントナイト)を用いた比較例16では、実施例16〜32に比べて吸着剤処理紅茶抽出液の濁度が高く、飲料としての外観においても目視で濁りが確認され、好ましいものではなかった。さらに香味評価の結果では実施例16〜32に比べて金属味が強く、舌を刺激する好ましくない収斂味が感じられた。