特許第6313090号(P6313090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6313090ターボ冷凍機の蒸発器、および該蒸発器を備えたターボ冷凍機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6313090
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】ターボ冷凍機の蒸発器、および該蒸発器を備えたターボ冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20180409BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20180409BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20180409BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   F25B43/00 D
   F25B43/00 C
   F25B39/02 P
   F25B1/10 E
   F25B1/053 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-70101(P2014-70101)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190733(P2015-190733A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】天野 俊輔
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−189726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0163637(US,A1)
【文献】 特開2009−236430(JP,A)
【文献】 特開2009−186034(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/162759(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0041528(US,A1)
【文献】 特開2014−020753(JP,A)
【文献】 特開2014−038002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/02,43/00
F25B 1/053,1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却流体から熱を奪うことによって冷媒を蒸発させる蒸発器であって、
缶胴と、
前記缶胴の両端を閉塞する板材と、
前記缶胴内に配置され、前記被冷却流体が内部を流れる伝熱管と、
前記缶胴内に配置され、冷媒ガスと冷媒液とを分離する気液分離器とを備え、
前記気液分離器は、
気液冷媒流路が内部に形成された流路ブロックと、
前記流路ブロックの両側面に接続された複数の冷媒ガスガイド部材とを備え、
前記冷媒ガスガイド部材の内部には、前記気液冷媒流路に連通する冷媒ガス流路が形成されており、
前記冷媒ガス流路は、前記缶胴の内面に沿って上方に延び
前記流路ブロックは、前記気液冷媒流路に連通する冷媒液出口を有し、
前記冷媒液出口は、前記流路ブロックの側面の下部に配置されており、
前記冷媒ガスガイド部材は、前記流路ブロックの側面の上部に接続されていることを特徴とする蒸発器。
【請求項2】
被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器と、
冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、
圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、
凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて生成した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機において、
前記蒸発器は、請求項1に記載の蒸発器であることを特徴とするターボ冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ冷凍機の蒸発器に関し、特に冷水などの被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器に関するものである。また本発明は、そのような蒸発器を備えたターボ冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍空調装置などに利用されるターボ冷凍機は、冷媒を封入したクローズドシステムで構成され、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発して冷凍効果を発揮する蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した冷媒ガスを圧縮して高圧の冷媒ガスにする圧縮機と、高圧の冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器と、前記凝縮した冷媒を減圧して膨張させる膨張弁(膨張機構)とを、冷媒配管によって連結して構成されている。そして、圧縮機として冷媒ガスを多段の羽根車によって多段に圧縮する多段圧縮機を用いた場合は、凝縮器と蒸発器の間の冷媒配管中に設置した中間冷却器であるエコノマイザで生じる冷媒ガスを圧縮機の中間段(多段の羽根車の中間部分)に導入することが行われている。
【0003】
このような多段圧縮冷凍サイクルを採用したターボ冷凍機は、エコノマイザから出た冷媒液を、膨張機構によって減圧する。減圧された冷媒液の一部は蒸発し、気液二相の冷媒となって蒸発器の下部から蒸発器内に供給される。図8は、蒸発器の内部を示す断面図である。蒸発器の内部には伝熱管101が配置されており、この伝熱管101内を冷水(被冷却流体)が流れている。冷媒は伝熱管101内の冷水から熱を奪って蒸発し、冷媒ガスとして圧縮機に移送される。
【0004】
しかしながら、膨張機構によって減圧される過程で発生した冷媒ガスは蒸発器において冷凍に寄与しないだけでなく、図8に示すように、冷媒ガスが蒸発器の伝熱管101にまとわりつくことで伝熱管101に乾いた面が生成され、蒸発圧力の低下に伴うターボ冷凍機の効率が低下するという問題がある。
【0005】
冷凍に寄与しない冷媒ガスを削減し、蒸発器の性能を向上させる方法はいくつかあり、従来から実施されている。冷媒ガスを削減する第1の方法は、エコノマイザと蒸発器の圧力差を小さくすることである。膨張機構で減圧した際に蒸発する冷媒ガスの量は膨張機構前後の圧力差に依存する。したがって、エコノマイザと蒸発器の圧力差を小さくすることで、減圧した際に発生する冷媒ガスの量を少なくすることができる。
【0006】
図9(a)は、一般的なエコノマイザサイクルを示すモリエル線図であり、図9(b)はエコノマイザと蒸発器の圧力差を小さくしたエコノマイザサイクルを示すモリエル線図である。図9(a)では、エコノマイザと蒸発器の圧力差は、凝縮器とエコノマイザとの圧力差とほぼ同じであるのに対して、図9(b)では、エコノマイザと蒸発器との間の圧力差は、凝縮器とエコノマイザとの圧力差よりも小さい。結果として、膨張機構で減圧した際に発生する冷媒ガスの量を少なくすることができる。
【0007】
冷媒ガスを削減する第2の方法は、蒸発器の上流側に気液分離器を配置することである。エコノマイザから出た冷媒液を膨張機構にて減圧した後、気液二相となった冷媒を気液分離器に導入する。そして、冷媒液のみを蒸発器に導入し、冷媒ガスは多段圧縮機の吸込管近傍に導入する。これにより、冷媒ガスが蒸発器の伝熱管にまとわりつくことで伝熱管に乾いた面が生成され、蒸発圧力の低下に伴うターボ冷凍機の効率が低下することを回避することができる。
【0008】
冷媒ガスを削減する第3の方法は、蒸発器の伝熱面積を増大することである。具体的には、伝熱管本数を増加することによって、熱交換器としての蒸発器の効率を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−163243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した第1乃至第3の方法は、下記に示す欠点も併せ持っている。
上述した第1の方法では、中間圧力であるエコノマイザの圧力を蒸発器の圧力に近づけると、多段圧縮機での前段羽根車と後段羽根車とでのヘッドの比率が50:50でなくなる。このため、ヘッドバランスを修正するために、圧縮機の羽根車等の最適化(形状の見直し)をすることが必要となる。
【0011】
上述した第2の方法では、気液分離器が追加されるので、気液分離器の容器および追加配管の容積分に応じた冷媒が必要となる。このため、単価が高い冷媒を使用した場合、コストが増加する。
【0012】
上述した第3の方法では、単価の高い銅を使用した伝熱管を増やすことは、コスト高に繋がる。さらに、伝熱管を増やすことは管内冷水流速低下に伴う熱伝達率の低下にも繋がり、根本的な解決にはならない。
【0013】
そこで、本発明は、熱伝達率を向上させることができる蒸発器を低コストで提供することを目的とする。また、本発明は、そのような蒸発器を備えたターボ冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明の一態様は、被冷却流体から熱を奪うことによって冷媒を蒸発させる蒸発器であって、缶胴と、前記缶胴の両端を閉塞する板材と、前記缶胴内に配置され、前記被冷却流体が内部を流れる伝熱管と、前記缶胴内に配置され、冷媒ガスと冷媒液とを分離する気液分離器とを備え、前記気液分離器は、気液冷媒流路が内部に形成された流路ブロックと、前記流路ブロックの両側面に接続された複数の冷媒ガスガイド部材とを備え、前記冷媒ガスガイド部材の内部には、前記気液冷媒流路に連通する冷媒ガス流路が形成されており、前記冷媒ガス流路は、前記缶胴の内面に沿って上方に延び、前記流路ブロックは、前記気液冷媒流路に連通する冷媒液出口を有し、前記冷媒液出口は、前記流路ブロックの側面の下部に配置されており、前記冷媒ガスガイド部材は、前記流路ブロックの側面の上部に接続されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、被冷却流体から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する上記蒸発器と、冷媒を多段の羽根車によって圧縮する多段ターボ圧縮機と、圧縮された冷媒ガスを冷却流体で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮した冷媒液の一部を蒸発させて生成した冷媒ガスを前記多段ターボ圧縮機の多段圧縮段の中間部分に供給する中間冷却器であるエコノマイザとを備えたターボ冷凍機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)気液二相の冷媒は蒸発器内で気液分離され、冷媒ガスは伝熱管を回避するように缶胴の内面に沿って上方に導かれる。このように冷媒ガスと伝熱管との接触が回避されるので、蒸発器の熱伝達率が向上する。したがって、蒸発圧力が上昇し冷凍機の効率が向上する。
(2)気液分離器は蒸発器の内部に配置されるので、冷媒サイクルの容積増加を最小限とすることができる。したがって、追加で必要な冷媒の量が最小限となり、コストの増加を防止しつつ蒸発器の効率を向上することができる。
(3)蒸発器の外に配置された従来の気液分離器とは異なり、気液分離器は蒸発器の内部に配置されるので、気液分離器と蒸発器とを連結する配管が不要となる。
(4)伝熱管を増やすことが不要であるので、銅などの高価な材料からなる伝熱管を使用しても、コスト増加が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。
図2図2は、蒸発器の第1の実施形態を示す正面断面図である。
図3図3は、蒸発器の第1の実施形態を示す側面断面図である。
図4図4は、缶胴の内部を示す斜視図である。
図5図5は、蒸発器の第2の実施形態を示す正面断面図である
図6図6は、蒸発器の第2の実施形態を示す側面断面図である。
図7図7は、缶胴の内部を示す斜視図である。
図8図8は、蒸発器の内部を示す断面図である。
図9図9(a)は、一般的なエコノマイザサイクルを示すモリエル線図であり、図9(b)はエコノマイザと蒸発器の圧力差を小さくしたエコノマイザサイクルを示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る蒸発器および該蒸発器を備えたターボ冷凍機の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。図1乃至図7において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、ターボ冷凍機の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機1と、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器2と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器3と、凝縮器2と蒸発器3との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ4とを備えている。
【0021】
ターボ圧縮機1、凝縮器2、エコノマイザ4、および蒸発器3は、冷媒が循環する冷媒配管5A,5B,5C,5Dによって連結されている。より具体的には、ターボ圧縮機1と凝縮器2とは冷媒配管5Aによって連結され、凝縮器2とエコノマイザ4とは冷媒配管5Bによって連結され、エコノマイザ4と蒸発器3とは冷媒配管5Cによって連結され、蒸発器3とターボ圧縮機1とは冷媒配管5Dによって連結されている。冷媒配管5Bおよび冷媒配管5Cには、それぞれ膨張弁20,21が設けられている。
【0022】
図1に示す実施形態においては、ターボ圧縮機1は多段ターボ圧縮機から構成されている。つまり、多段ターボ圧縮機は二段ターボ圧縮機からなり、一段目羽根車11と、二段目羽根車12と、これらの羽根車11,12を回転させる圧縮機モータ13とから構成されている。一段目羽根車11の吸込側には、冷媒ガスの羽根車11,12への吸込流量を調整するサクションベーン14が設けられている。
【0023】
ターボ圧縮機1は軸受や増速機を収容するギヤケーシング15を備えており、ギヤケーシング15の下部には軸受と増速機に給油するための油タンク16が設けられている。ギヤケーシング15は均圧管17によってターボ圧縮機1の吸込部に連通されている。ターボ圧縮機1は、冷媒配管8によってエコノマイザ4と接続されており、エコノマイザ4で分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目羽根車11と二段目羽根車12の間の部分)に導入されるようになっている。
【0024】
図1に示すように構成されたターボ冷凍機の冷凍サイクルでは、ターボ圧縮機1と凝縮器2とエコノマイザ4と蒸発器3とを冷媒が循環し、蒸発器3で得られる冷熱源で冷水が製造されて負荷に対応し、冷凍サイクル内に取り込まれた蒸発器3からの熱量およびモータ13から供給されるターボ圧縮機1の仕事に相当する熱量が凝縮器2に供給される冷却水に放出される。一方、エコノマイザ4にて分離された冷媒ガスはターボ圧縮機1の多段圧縮段の中間部分に導入され、一段目羽根車11からの冷媒ガスと合流して二段目羽根車12により圧縮される。2段圧縮単段エコノマイザサイクルによれば、エコノマイザ4による冷凍効果が付加されるので、その分だけ冷凍効果が増加し、エコノマイザ4を設置しない場合に比べて冷凍効果の高効率化を図ることができる。
【0025】
次に、蒸発器3についてより詳細に説明する。図2は、蒸発器3の第1の実施形態を示す正面断面図であり、図3は、蒸発器3の第1の実施形態を示す側面断面図である。蒸発器3は、円筒状の缶胴31と、缶胴31の両端を閉塞する板材33と、缶胴31内に配置され、内部を冷水(被冷却流体)が流れる伝熱管35と、冷媒ガスと冷媒液とを分離する気液分離器41とを備えている。伝熱管35は、缶胴31内に配置された複数の支持板37によって支持されている。図3においては、伝熱管35は模式的に描かれている。伝熱管35の上方にはデミスタ38が配置されている。
【0026】
気液分離器41は、缶胴31内に配置されている。この気液分離器41は、気液冷媒流路45が内部に形成された流路ブロック42と、流路ブロック42に接続された複数の冷媒ガスガイド部材50とを備えている。流路ブロック42は、伝熱管35の下方に配置されており、缶胴31の長手方向に沿って延びている。流路ブロック42は缶胴31の底面に固定されている。缶胴31の底面中央には、エコノマイザ4から延びる冷媒配管5Cの端部が接続されている。冷媒配管5Cは流路ブロック42の気液冷媒流路45に連通しており、気液二相の冷媒は冷媒配管5Cを通じて気液冷媒流路45内に導入される。
【0027】
図4は、缶胴31の内部を示す斜視図である。内部構成を見やすくするために、図4では伝熱管35の図示は省略されている。本実施形態では、10個の冷媒ガスガイド部材50が流路ブロック42の両側面に接続されている。より具体的には、5つの冷媒ガスガイド部材50が流路ブロック42の一方の側面に接続され、他の5つの冷媒ガスガイド部材50が流路ブロック42の他方の側面に接続されている。これら冷媒ガスガイド部材50は、缶胴31の内面に固定されている。
【0028】
各冷媒ガスガイド部材50の内部には気液冷媒流路45に連通する冷媒ガス流路51が形成されている。この冷媒ガス流路51は、缶胴31の内面に沿って上方に延びている。冷媒ガスガイド部材50の上端には、冷媒ガス出口53が形成されている。この冷媒ガス出口53は伝熱管35の外側に位置しており、冷媒ガス出口53から出た冷媒ガスが伝熱管35に接触しないようになっている。冷媒ガスガイド部材50の下端は、流路ブロック42の両側面の上部に接続されている。流路ブロック42の両側面の下部には、気液冷媒流路45に連通する複数の冷媒液出口46が形成されており、これら冷媒液出口46は缶胴31の長手方向に沿って等間隔に配列されている。冷媒液出口46を下部に形成することにより、比重の小さい冷媒ガスが缶胴31の内部に導入することを回避することができる。また、冷媒ガスガイド部材50の下端を流路ブロック42の両側面の上部に接続することにより、冷媒液が冷媒ガスに同伴して冷媒ガス流路51に導入することを回避することができる。
【0029】
気液二相の冷媒は、缶胴31の底面中央から気液冷媒流路45内に導入される。冷媒ガスから分離された冷媒液は、複数の冷媒液出口46から缶胴31の内部に排出され、伝熱管35に接触する。一方、冷媒液から分離された冷媒ガスは冷媒ガス流路51に導かれる。流路ブロック42の上面には開口部が存在しないので、気液冷媒流路45内のすべての冷媒ガスは冷媒ガス流路51に導かれる。
【0030】
冷媒ガスは、冷媒ガス流路51の内部を缶胴31の内面に沿って上昇し、冷媒ガス出口53から缶胴31の内部に排出される。冷媒ガス出口53は伝熱管35の外側に位置しているので、冷媒ガスは伝熱管35のない領域に導入される。このような構成により、冷媒ガスは伝熱管35に接触せず、冷媒ガスが伝熱管35にまとわりつかないので、伝熱管35に乾いた面が生成されることがない。また、缶胴31の内部に気液分離器41を備えているので、気液分離器を外部に配置した場合に比して気液分離器の容器および追加配管の容積分に応じた冷媒が必要ない。したがって、コストを増加することなく、蒸発器3の熱伝達率が向上し、蒸発圧力が上昇し、冷凍機の効率が向上する。
【0031】
冷媒ガスは、缶胴31内を上昇し、デミスタ38を通過して冷媒配管5D(図1参照)に流入する。冷媒ガスから分離された冷媒液は、複数の冷媒液出口46から缶胴31の内部に排出され、伝熱管35と接触する。複数の冷媒液出口46は、蒸発器3の長手方向に沿って両側面に等間隔で配列されているので、冷媒液は、複数の冷媒液出口46を通って伝熱管35に均一に接触し、蒸発器3の効率が最適化される。
【0032】
図5は、蒸発器3の第2の実施形態を示す正面断面図であり、図6は、蒸発器3の第2の実施形態を示す側面断面図であり、図7は、缶胴31の内部を示す斜視図である。内部構成を見やすくするために、図7では伝熱管35の図示は省略されている。本実施形態の特に説明しない構成は、上述した第1の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、一対の横長の冷媒ガスガイド部材50が流路ブロック42の両側面に接続されている。各冷媒ガスガイド部材50の上端には1つの冷媒ガス出口53が形成されている。冷媒ガスガイド部材50は、気液冷媒流路45に連通する複数の冷媒液出口46を有している。これら冷媒液出口46は、冷媒ガスガイド部材50の内壁に形成されている。
【0033】
気液二相の冷媒は、缶胴31の底面中央から気液冷媒流路45内に導入される。冷媒液は、冷媒ガスとともに冷媒ガス流路51内に導かれ、冷媒液のみが複数の冷媒液出口46から缶胴31の内部に排出される。冷媒液から分離された冷媒ガスは、冷媒ガス流路51の内部を缶胴31の内面に沿って上昇し、冷媒ガス出口53から缶胴31の内部に排出される。冷媒ガス出口53は伝熱管35の外側に位置しているので、冷媒ガスは伝熱管35のない領域に導入される。このような構成により、冷媒ガスは伝熱管35に接触せず、冷媒ガスが伝熱管35にまとわりつかないので、伝熱管35に乾いた面が生成されることがない。また、缶胴31の内部に気液分離器41を備えているので、気液分離器を外部に配置した場合に比して気液分離器の容器および追加配管の容積分に応じた冷媒が必要ない。さらに、第1の実施形態に比して簡易な構造となっているので、缶胴の組立てが容易となる。したがって、コストを増加することなく、蒸発器3の熱伝達率が向上し、蒸発圧力が上昇し、冷凍機の効率が向上する。
【0034】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 ターボ圧縮機
2 凝縮器
3 蒸発器
4 エコノマイザ
5 冷媒配管
11 一段目羽根車
12 二段目羽根車
13 圧縮機モータ
14 一段目サクションベーン
15 ギヤケーシング
16 油タンク
17 均圧管
20,21 膨張弁
31 缶胴
33 板材
35 伝熱管
37 支持板
38 デミスタ
41 気液分離器
42 流路ブロック
45 気液冷媒流路
46 冷媒液出口
50 冷媒ガスガイド部材
51 冷媒ガス流路
53 冷媒ガス出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9