【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として、Txポート及びRxポートの両方を有したメイン動作帯域がバンド2であり、アグリゲートされた帯域がバンド4である状況を考える。この場合、バンド2Txポートとバンド2Rxポートとの良好な分離が得られること、及びバンド2Txポートとバンド4Rxポートとの良好な分離が得られることが、等しく重要である。
【0005】
特に、周波数が互いに近接するバンド対については、ダイプレクサが、互いに近接する帯域の周波数を十分に分離することができないことから、アンテナをダイプレクサに接続することでは、この問題を解決することができない。そのようなバンド対は、例えば、バンド8及びバンド20によって、またはバンド2及びバンド4によって形成される。
【0006】
近接する帯域のキャリアアグリゲーションは、アンテナポートにおける2つのデュプレクサを、いくつかの追加の整合回路網と組み合わせることによってサポートすることができる。アンテナポートにおいて組み合わされ、更に必要に応じていくつかの整合機構を有する2つのデュプレクサは、クワドプレクサ(quadplexer)とも呼称される。
【0007】
しかしながら、このような手法は、Tx部分のそれぞれが、2つの異なるRx周波数において良好に減衰するよう、デュプレクサの音響部分を再構築する必要がある。これにより、デュプレクサのTxフィルタ部分における付加的な共振器などの別の構造に起因して、何か他のパラメータ、例えば、Tx挿入損失との妥協が必要となる。このように、許容しうるTxとRxとの分離が得られるクワドプレクサを実現することは可能である。しかしながら、このようなクワドプレクサのTxとアグリゲーテッドRx(aggregated Rx)との分離は十分ではない。
【0008】
従って、本発明の目的の1つは、アンテナに接続されるクワドプレクサの欠点を克服することにある。即ち、本発明の目的は、送信ポートと受信ポートのそれぞれとの十分な分離を行うことによって、帯域間キャリアアグリゲーションをサポートする回路構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、特許請求の範囲の請求項1による回路構成によって達成される。
【0010】
アンテナポートと、第1の受信ポートと、第2の受信ポートと、第1の送信ポートと、第2の送信ポートと、入力信号を、互いに位相シフトされた2つの出力信号に変換するように構成された
複数の90度ハイブリッドとを備えた回路構成が提供される。この回路構成は、それぞれが第1のデュプレクサ及び第2のデュプレクサを備えた、2つのクワドプレクサを更に備え
る。複数の90度ハイブリッドのうちの1つの90度ハイブリッドは、アンテナポートに接続される。2つのクワドプレクサ及び
複数の90度ハイブリッドは、送信ポートのうちの一方から、受信ポートのうちの一方に伝わる漏洩信号が、受信ポートにおいて相殺的干渉を生じるように相互接続される。
また、2つのクワドプレクサのそれぞれは、2つの位相シフタを備え、2つのクワドプレクサのそれぞれにおいて、2つの位相シフタのうち、一方の位相シフタは、第1のデュプレクサとアンテナポートに接続された90度ハイブリッドとの間に接続され、他方の位相シフタは、第2のデュプレクサとアンテナポートに接続された90度ハイブリッドとの間に接続される。
【0011】
前記回路構成により、送信ポートと受信ポートとの間に非常に優れた分離が得られる。即ち、送信ポートから第1の受信ポート及び第2の受信ポートのうちのいずれか一方に伝わる信号に対し、非常に優れた分離が得られる。
【0012】
第1の送信ポート及び第2の送信ポートは、それぞれキャリアアグリゲーションのためのメイン送信ポートとして使用してもよい。更に、第1の受信ポート及び第2の受信ポートは、それぞれキャリアアグリゲーションのためのメイン受信ポートとして使用可能であり、この場合、他方の受信ポートはアグリゲーテッド受信ポート(aggregated receiving port)として使用される。
【0013】
前記回路構成により、送信ポートと受信ポートのそれぞれとの間に非常に優れた分離が得られる。即ち、この回路構成がキャリアアグリゲーションに使用されるときに、メイン送信ポートは、対応するメイン受信ポート及びアグリゲーテッド受信ポートのそれぞれに対して十分に分離される。
【0014】
更に、デュプレクサは、近接する周波数帯域における周波数の分離を可能にする。従って、この回路構成は、近接する周波数帯域におけるキャリアアグリゲーションのサポートを可能にする。その結果、この回路構成により、受信帯域幅が増大する。
【0015】
前記回路構成は、キャリアアグリゲーションをサポートするために余分なアンテナを必要としない。
【0016】
アンテナポートは、アンテナに接続されるように構成することができる。第1の受信ポート、第2の受信ポート、第1の送信ポート、及び第2の送信ポートは、フロントエンド回路に接続されるように構成してもよい。
【0017】
90度ハイブリッドは、入力信号を、互いに位相シフトされた2つの出力信号に変換するように構成される。更に、90度ハイブリッドは、2つの入力信号を結合して単一の出力信号とするように構成され、この場合、入力信号のうちの一方は、2つの入力信号が結合される前に位相シフトされる。
【0018】
90度ハイブリッド及びクワドプレクサは、送信ポートのうちの一方から受信ポートのうちの一方に伝わる漏洩信号が、90度ハイブリッドのうちの1つによって2つのサブ信号に分割されるように相互に接続してもよい。また、この回路構成は、これら2つのサブ信号が、異なる経路に沿って回路構成を通過し、互い位相シフトされるように別の90度ハイブリッドによって結合され、その結果、受信ポートにおいて相殺的干渉を生じるように構成してもよい。
【0019】
具体的には、前記回路構成は、5つの90度ハイブリッドを備えていてもよい。これら90度ハイブリッドのそれぞれは、アンテナポート、第1の受信ポート、第2の受信ポート、第1の送信ポート、または第2の送信ポートのうちの1つに接続されるようにしてもよい。従って、送信ポートのうちの一方から、受信ポートのうちの一方に伝わる漏洩信号が、受信ポートにおいて相殺的干渉を生じるような回路構成を実現することができる。更に、送信ポートのうちの一方からアンテナポートに伝わる信号が、アンテナポートにおいて建設的干渉を生じるような回路構成を実現することができる。
【0020】
クワドプレクサのそれぞれにおける第1のデュプレクサは、第1の周波数帯域に調節され、クワドプレクサのそれぞれの第2のデュプレクサは、第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域に調節されるようにしてもよい。
【0021】
具体的に、第1のデュプレクサは、第1の帯域通過フィルタ及び第2の帯域通過フィルタを備えていてもよい。第1の帯域通過フィルタは、第1の周波数帯域の送信帯域の周波数に対して通過帯域を形成するように構成してもよい。第2の帯域通過フィルタは、第1の周波数帯域の受信帯域の周波数に対して通過帯域を形成するようにしてもよい。更に、第2のデュプレクサは、第3の帯域通過フィルタ及び第4の帯域通過フィルタを備えていてもよい。第3の帯域通過フィルタは、第2の周波数帯域の送信帯域の周波数に対して通過帯域を形成するようにしてもよい。第4の帯域通過フィルタは、第2の周波数帯域の受信帯域の周波数に対して通過帯域を形成するようにしてもよい。
【0022】
2つのクワドプレクサは互いに同じに構成してもよい。それにより、2つのサブ信号、即ち、第1クワドプレクサを通過する一方のサブ信号、及び第2クワドプレクサを通過する他方のサブ信号は、同様の処理が確実に行われる。
【0023】
更に、クワドプレクサは、2つのデュプレクサをアンテナポートに整合させるための整合機構を備えていてもよい。この整合機構は、特定の要件に応じ、簡単な構成としたり、より複雑な構成としたりすることができる。簡単な整合機構は、単一のコイルを信号経路及び接地に接続することによって形成してもよい。但し、この整合機構は、更にインピーダンス素子及びキャパシタンス素子を備えていてもよい。
【0024】
具体的に、第1の送信ポートは、第1の周波数帯域の信号を送信するように構成してもよい。第1の受信ポートは、第1の周波数帯域の信号を受信するように構成してもよい。第2の送信ポートは、第2の周波数帯域の信号を送信するように構成してもよい。第2の受信ポートは、第2の周波数帯域の信号を受信するように構成してもよい。
【0025】
第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域の一方は、Tx及びRxの両方で運用するメイン帯域として使用してもよい。第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域の他方は、Rxのためのアグリゲートされた帯域として使用してもよい。これにより、Rxのためのキャリアアグリゲーションがサポートされる。
【0026】
Rx帯域間キャリアアグリゲーションは、メイン信号受信経路及びアグリゲーテッド信号受信経路を必要とする。アンテナポートから第1の受信ポート及び第2の受信ポートの一方まで、メイン信号受信経路を形成するようにしてもよく、アンテナポートから第1の受信ポート及び第2の受信ポートの他方まで、アグリゲーテッド信号受信経路を形成するようにしてもよい。即ち、この回路構成は、両方の受信経路が同時にアクティブとなることを可能とする。従って、この回路構成は、Rx帯域間キャリアアグリゲーションをサポートする。
【0027】
デュプレクサのそれぞれは、不平衡Rxポートを備えていてもよい。これに代えて、デュプレクサのそれぞれは、平衡Rxポートを備えていてもよい。
【0028】
デュプレクサが平衡Rxポートを備える場合には、前記回路構成の第1の受信ポート及び第2の受信ポートが平衡化されていてもよい。
【0029】
2つの可能な実施形態を提示するのは、あるチップセットがシングルエンドRxフィルタ経路を必要とする一方、別のチップセットが平衡Rxフィルタ経路を必要とするからである。
【0030】
第1の態様において、デュプレクサは、シングルエンドRxポートを備える。この態様では、回路構成が、シングルエンド受信ポートを有する。第2の態様において、デュプレクサは、平衡Rxポートを備える。この実施形態では、回路構成が、平衡受信ポートを有する。
【0031】
一般に、平衡経路は、プリント回路基板の信号線に結合する雑音や、その他の不要な信号に対し、それほど敏感ではない。明らかな欠点は、RFIC及びRFフロントエンドの両方において、回路配線に、より多くの面積と、より多くのピンとを必要とすることである。ピン数の減少は、前記回路構成のシングルエンド受信ポートが得られるような、不平衡Rxポートを有するデュプレクサの主要な利点である。
【0032】
但し、両方の態様は、TxとRxとの分離の改善、及びTxとアグリゲーテッドRxとの分離の改善という同じ利益をもたらすものである。第2の態様は、2つの更なるハイブリッドを必要とするため、第2の態様の方が第1の態様よりも物理的に大きくなる。第2の態様の利点は、例えばRx増幅器用などの平衡LNA入力を有するチップセットとの適合性、及びその雑音低減性能である。
【0033】
90度ハイブリッドのそれぞれは、互いに90度位相シフトされた2つの出力信号を供給する。
【0034】
クワドプレクサのそれぞれは、第1のポートを備えていてもよく、クワドプレクサのそれぞれにおける第1のポートは、アンテナポートに接続された90度ハイブリッドにそれぞれ接続されるようにしてもよい。
【0035】
更に、クワドプレクサのそれぞれは、第1の受信ポート、第2の受信ポート、第1の送信ポート、及び第2の送信ポートのうちの1つに接続された90度ハイブリッドに接続されるようにしてもよい。
【0036】
クワドプレクサ及び90度ハイブリッドは、送信ポートのうちの一方からアンテナポートに伝わる信号が、アンテナポートにおいて建設的干渉を生じるように相互接続されてもよい。
【0037】
更なる特徴、改善点、及び有用性は、図に関連して示す実施形態についての以下の説明から明らかとなる。