特許第6313635号(P6313635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6313635
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 11/00 20060101AFI20180409BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   B01F11/00 A
   B01F15/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-75977(P2014-75977)
(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-196143(P2015-196143A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹化学機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0275121(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0027997(US,A1)
【文献】 特開平01−293127(JP,A)
【文献】 特開2004−243161(JP,A)
【文献】 特開2011−031192(JP,A)
【文献】 特表2010−531212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 11/00
B01F 15/02
C12M 1/
F16J 13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性撹拌容器と、該撹拌容器を貫通すると共に、該撹拌容器に固定した駆動軸と、前記可撓性容器内の該駆動軸に設けた撹拌翼と、前記駆動軸を往復駆動させる駆動手段と
前記駆動軸を貫通して固定された、前記駆動軸が移動した場合に、前記可撓性容器を押圧可能に形成されたダメージ防止用部材とよりなることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記ダメージ防止用部材は、前記可撓性容器に当接する面が、平面、又は、湾曲面であることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記ダメージ防止用部材は、板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記ダメージ防止用部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記ダメージ防止用部材は、前記撹拌容器外に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記ダメージ防止用部材は、前記駆動軸に、前記撹拌容器に当接する位置に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記撹拌軸は、前記可撓性撹拌容器外部から内部に添加物を供給するために、パイプ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記添加物は、酸素であることを特徴とする請求項7に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てバッグ(シングルユースバッグ)などの可撓性(弾性も含む)のある撹拌容器内の内容物を撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬分野等で使用される液体などの撹拌においては、撹拌後の撹拌容器内の洗浄が困難であることから、撹拌容器は、再利用せず、一度きりの使用(シングルユース)となる。
【0003】
このようなシングルユースの撹拌容器は、経済性の観点から、可撓性のある合成樹脂製(プラスチック製、エラストマー製)の使い捨て(シングルユース)バッグなどの可撓性容器が用いられる。
【0004】
このシングルユースバッグ内の内容物の撹拌は、従来においては、バッグ内に挿入した回転式撹拌翼により、内容物を撹拌していたが、該回転式撹拌翼の回転軸とバッグとの間で摺動部分が存在し、この摺動部分を通じて、外部から容器内部に異物が挿入(コンタミ)したり、または、内容物が容器外部に漏れてしまうという危険性があった。
【0005】
この摺動部分の問題点を解決するために、例えば、超電導を利用して、バッグ内に挿入した撹拌翼をバッグ底部から浮上させて、該撹拌翼の回転手段と非接触で該撹拌翼を回転させることにより、容器内の内容物を撹拌させる撹拌装置がある。この撹拌装置によれば、バッグを完全密閉状態で内容物を撹拌することができるので、異物の混入(コンタミ)や、内容物が容器外部に漏れる危険性はない(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−35098号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の回転翼の回転手段と非接触で撹拌翼を回転させる撹拌装置では、伝達トルクの関係から、撹拌翼を大きくできず、また、撹拌翼のデザインに制約があり、撹拌効率を高めることができないという欠点があった。
【0008】
本発明はこれらの問題点を解消し、良好の撹拌を実現できる撹拌装置を提供できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本願の撹拌装置は、可撓性撹拌容器と、該撹拌容器を貫通すると共に、該撹拌容器に固定した駆動軸と、前記撹拌容器内の該駆動軸に設けた撹拌翼と、前記駆動軸を往復駆動させる手段と、前記駆動軸を貫通して固定された、前記駆動軸が移動した場合に、前記可撓性容器を押圧可能に形成されたダメージ防止用部材とよりなり、該撹拌容器に固定された駆動軸を、該撹拌容器の可撓性、弾力性を利用して往復動できるようにすることにより、特別なシール部を設けることなく、該容器内を密閉状態で撹拌できるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特別なシール部を設けることなく、可撓性撹拌容器と回転しない駆動軸と撹拌翼の一体構造が可能となり、容器を完全密閉状態とでき、異物の混入(コンタミ)や、内容物が容器外部に漏れる危険性が無くなる。また、撹拌翼を大きくすることができるなど、適切な流動・撹拌作用を得るための撹拌翼のデザインを自由に設計でき、無菌性と良好な撹拌の両方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1の撹拌装置の縦断面図である。
図2】該撹拌装置の使用状態の説明図である。
図3】該撹拌装置の使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図1乃至図3によって説明する。
【0014】
1は、本発明の撹拌装置を示し、2は、該撹拌装置1の可撓性撹拌容器であり、該可撓性撹拌容器2は、薬液や培養液などの被撹拌物(内容物)を収納する容器であって、例えば、全体或いは少なくとも一部において可撓性(弾性も含む)のある合成樹脂製(プラスチック製、エラストマー製)からなる使い捨てバッグなどからなる。
【0015】
なお、該可撓性撹拌容器2は、後述するように、駆動軸3に従って該可撓性撹拌容器2の壁を上下動等の往復運動させた場合であっても、十分撓み、かつ、耐久性のあるものである。
【0016】
3は、駆動軸であり、該駆動軸3は、前記可撓性撹拌容器2の天井壁2aを貫通すると共に、該駆動軸3が貫通する前記可撓性撹拌容器2の貫通孔4の縁部において気密に固定されている。これにより、該可撓性撹拌容器2は、完全に密閉状態となる。
【0017】
なお、前記駆動軸3に、前記可撓性撹拌容器2の内外を連通する貫通孔を設け、即ち、例えば、前記駆動軸3を、上端を閉口し、下端が開口したパイプ状とすると共に、前記可撓性撹拌容器2外から突出した該駆動軸2の側面部分に、前記駆動軸3のパイプ孔3a内に連通した供給口部5を設け、容器外部から内部に酸素などの気体の供給を行えるようにしてもよい。
【0018】
6は、撹拌翼であり、該撹拌翼6は、前記撹拌容器2内の駆動軸3に1段、又は2段以上設けられ、該撹拌翼6の形状は、例えば、円形、楕円形、長円形など様々な形状がある。
【0019】
なお、該駆動軸3に該撹拌翼6を固定する位置は、特に制限はない。
【0020】
また、該撹拌翼6は、折り畳んで収納可能できるようにしてもよく、保管コストを下げることもできる。
【0021】
7は、上下駆動モータなどの往復駆動装置を示し、該往復駆動装置7のモータ軸7aは、前記撹拌容器2外に突出した前記駆動軸3の上端部に、締結手段8により連結されている。そして、該往復駆動装置7により、前記駆動軸3の撹拌翼6が、例えば上下動に往復移動される。
【0022】
そして、該往復駆動装置7は、例えば、床9に載置した固定台10の支柱11の上端に横設した固定部材12に固定されている。
【0023】
なお、13は、前記固定部材12に前記モータ軸7aを上下動自在に支持する、前記モータ軸7aと前記固定部材12との間に設けられたスラストベアリングである。
【0024】
14は、前記可撓性撹拌容器2の収納容器などの固定手段であり、該固定手段14は、例えば上部が開口した有底筒体であり、例えば、前記床9に載置した台15上に固定される。
【0025】
なお、前記固定手段14は、前記収納容器以外に、前記可撓性撹拌容器2を所望の形状に維持して固定できるものであればよい。また、前記可撓性撹拌容器2が、自立して前記台15上に載置できる場合には、前記固定手段14を省略してもよい。
【0026】
16は、前記撹拌容器2のダメージ防止用板を示し、該ダメージ防止用板16は、その中央部において、前記撹拌容器2外の駆動軸3を貫通して固定されている。また、該ダメージ防止用板16は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状等の平板、又は 円形状、楕円形状、矩形状の、下方に突出する凸状又は下方が凹む凹状に湾曲した板などから形成され、特に、中心から半径方向外方に向かって同心円状に湾曲した下方に突出する凸状の円形状の板であるのが好ましい。
【0027】
なお、前記ダメージ防止用板16以外に、前記可撓性容器に当接する面が、平面、又は凹状、凸状に湾曲した湾曲面に形成されたダメージ防止用部材であってもよい。なお、該平面又は湾曲面は、前記ダメージ防止用板16と同様に形成されたものがある。
【0028】
また、前記ダメージ防止用部材の材質は、特に限定はなく、例えば、弾性部材がある。
【0029】
また、該ダメージ防止用板16を前記撹拌容器2内の駆動軸3に固定しても良い。
【0030】
また、撹拌容器2外の駆動軸3に固定すると共に、該ダメージ防止用板16を駆動軸3に、前記撹拌容器2の前記天井壁2aと当接する位置に固定するのが好ましい。また、前記可撓性撹拌容器2内を陽圧(大気圧以上)にするのが好ましい。
【0031】
次に、本発明の撹拌装置の作動及びその効果について説明する。
【0032】
駆動軸3が固定された、被撹拌物を収納した可撓性撹拌容器2を収納容器などの固定手段14に収納する。なお、該固定手段14が収納容器である場合には、該収納容器内に前記可撓性撹拌容器2を挿入することにより、前記可撓性撹拌容器2は、その被撹拌物の重さにより変形して、該収納容器内に嵌合して、固定されるようになる。
【0033】
なお、上記可撓性撹拌容器2内の上部は気体で満たされ、この気体は陽圧(大気圧以上)となるようにするのが好ましい。
【0034】
そして、前記駆動軸3の上端を、前記往復駆動装置7のモータ軸7aに締結手段8を介して連結する。
【0035】
そして、前記往復駆動装置7を駆動することにより、上記撹拌翼6が前記被撹拌物内で上下動など往復動し、該被撹拌物が撹拌される。また、上下撹拌方式を採用することにより、撹拌性能を上げることができる。
【0036】
この際、図2及び図3に示すように、前記可撓性撹拌容器2の天井壁2aが上下に撓むので、上記駆動軸3が上下動等の往復移動ができるようになる。
【0037】
そして、完全密閉で摺動部のない雰囲気にて良好な流動作用を得られるようになる。
【0038】
また、上記ダメージ防止用板16がない場合には、上記駆動軸3が往復動する際、この駆動軸3が固定された前記可撓性撹拌容器2の天井壁2aの貫通孔4の縁部分のみに応力が集中するため、可撓性容器のように材質が弱いもの場合には、耐久性に問題が生ずる場合がある。
【0039】
そこで、本発明においては、ダメージ防止用板16を設けるとともに、前記撹拌容器2内を陽圧とし、前記駆動軸3が下方に移動する場合には、前記天井壁2aを該ダメージ防止用板16の下面で押圧するようにして、天井壁2aの一部に応力を集中させないようにし、また、前記駆動軸3が上方に移動する場合は、撹拌容器2内の陽圧により天井面2aが上方に押し上げられるようにして、上記天井壁2aの一部に応力が集中しないようにし、可撓性の容器であっても、その破損を防止でき、耐久性を上げることができるようになる。
【0040】
また、駆動軸3は回転するものではないので、該駆動軸3に添加物供給手段を容易に設けることができ、前記撹拌容器2内に酸素などの気体や液体、又は固体などの添加物を供給できるようになる。
【0041】
また、本願発明は、回転軸を用いないことから、その取付公差の制約がなく、従って、前記可撓性撹拌容器2を往復動駆動装置に容易に脱着である。
【0042】
なお、前記実施例においては、駆動軸3を垂設し、上下方向に移動する例を示したが、駆動軸3を横設し、横方向に移動するなど、駆動軸を任意の方向に向け、該任意の方向に往復移動するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の撹拌装置は、医療品関係、食品関係等における撹拌に利用される。
【符号の説明】
【0044】
1 撹拌装置
2 可撓性撹拌容器
2a 天井壁
3 駆動軸
3a パイプ孔
4 貫通孔
5 供給口部
6 撹拌翼
7 往復駆動装置
7a モータ軸
8 締結手段
9 床
10 固定台
11 支柱
12 固定部材
13 スラストベアリング
14 固定手段
15 台
16 ダメージ防止用板
図1
図2
図3