【実施例】
【0045】
[参考例1]
実施例に先立って、M1元素としてCo、M2元素としてAlを含むLDH、それを密集させた膜、ならびに、LDHを単層剥離したLDHナノシートを製造した。
【0046】
例えば、Z.Liuらによる“J.Am.Chem.Soc.2006,128,4872”に記載の均一沈殿法により、加水分解試薬として尿素(CO(NH
2)
2)を含むCoCl
2・6H
2OおよびAlCl
3・9H
2Oの混合溶液から[Co
2+2/3Al
3+1/3(OH)
2][CO
32−1/6・0.5H
2O]で表されるCo−Al炭酸型LDHを製造した。Co−Al炭酸型LDHは、均一なマイクロメートルサイズの六角形のプレート状結晶(単にCo−Al LDHプレートと称する場合もある)であった。続いて、Co−Al炭酸型LDHにHClおよびNaClを用いてイオン交換を行い、Co−Alハロゲン型LDHを得た。なお、HClおよびNaClに代えて、HNO
3およびNaNO
3を用いてCo−Al硝酸型LDHを得てもよい。
【0047】
Co−Alハロゲン型(または硝酸型)LDHをホルムアミド(HCONO
2)に分散後、機械振とうさせ、CoおよびAlを含む、[Co
2+2/3Al
3+1/3(OH)
2]
1/3+で表されるLDHナノシート(以降ではCo−Al LDHナノシートと称する)に単層剥離した。Co−Al LDHナノシートをホルムアミドに分散させた懸濁液のゼータ電位を、ELS−Zゼータ電位および粒径アナライザを用いて測定した。結果を後述する。
【0048】
Co−Al LDHナノシートの表面を、原子間力顕微鏡(AFM、Seiko製、SPA400)を用いて観察した。詳細には、Si基板上にCo−Al LDHナノシートを堆積させ、Siカンチレバー(ばね定数:約20Nm
−1)を用いてタッピングモードにて観察した。結果を
図3に示す。
【0049】
続いて、例えば、R.Maらによる“Chem.Mater.2010,22,6341”に記載の油水界面自己組織化プロシージャを用いて、得られたプレート状結晶であるCo−AL炭酸型LDH(Co−Al LDHプレート)が密集したプレート膜を製造した。Co−Al LDHプレート(80mg)を80mLのミリQ水に分散させた。次に、これに、ヘキサン(8mL)を加え、ヘキサン/水界面を形成した。ブタノール(1.5mL)をゆっくりと注入し、界面にCo−Al LDHプレートをトラップさせ、連続膜を形成した。ヘキサンを蒸発させ、垂直引き上げ法により、界面に浮遊する膜をITOガラス(酸化インジウムスズ、シート抵抗:約10Ω/□、サイズ:1×3cm
3)に移した。ITOガラス上のCo−AL LDHプレート膜を80℃で24時間乾燥させた。
【0050】
ITOガラス上のCo−Al LDHプレート膜の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM、Keyence製、VE8800)を用いて観察した。結果を
図15(A)に示す。
【0051】
作用電極としてITOガラス上のCo−Al LDHプレート膜、電解液としてKOH(1M)、参照電極としてAg/AgCl、および、カウンタ電極としてプラチナ線を用い、電気化学ワークステーション(Solartron製)にて、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。電気化学インピーダンス分光測定では、0.1Hz〜10000Hzの周波数にわたって、電位振幅10mVを印加した。結果を
図15(B)〜(D)に示す。
【0052】
[参考例2]
参考例2では、M1元素としてCoおよびNi、M2元素としてCoを含むLDH、それを密集させた膜、ならびに、LDHを単層剥離したLDHナノシート、を製造した。
【0053】
例えば、J.Liangらによる“Chem.Mater.2010,22,371”に記載のトポケミカル酸化的インターカレーション法により、CoおよびNiを含むLDHプレート状結晶を得た。加水分解試薬としてヘキサメチレンテトラミン(HMT、C
6H
12N
4)を含むCoCl
2・6H
2OおよびNiCl
2・6H
2Oの混合溶液からCo
2+2/3Ni
2+1/3(OH)
2で表されるブルーサイトを製造した。ブルーサイトは、均一なマイクロメートルサイズの六角形のプレート状結晶であった。続いて、Co
2+2/3Ni
2+1/3(OH)
2を、臭素アセトニトリル溶液を作用させることによってCo
2+を部分酸化させるとともに、臭素自身を還元し、ホスト層間に臭素イオンをインターカレートし、[Co
2+1/3Ni
2+1/3Co
3+1/3(OH)
2][Br
−1/3・0.5H
2O](Co−Niハロゲン型LDHまたはCo−Ni LDHプレートと称する)を得た。
【0054】
Co−Niハロゲン型LDHをNO
3−(またはClO
4−)でアニオン交換し、ホルムアミド(HCONH
2)に分散後、機械振とうさせ、CoおよびNiを含む、[Co
2+1/3Ni
2+1/3Co
3+1/3(OH)
2]
1/3+で表されるLDHナノシート(以降ではCo−Ni LDHナノシートと称する)に単層剥離した。Co−Ni LDHナノシートをホルムアミドに分散させた懸濁液の電位を、ELS−Zゼータ電位および粒径アナライザを用いて測定した。結果を後述する。
【0055】
参考例1と同様に、Co−Ni LDHナノシートの表面を、AFMを用いて観察した。結果を
図4(A)に示す。Co−Ni LDHナノシートの表面を、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)および電子エネルギー損失分光装置(EELS)を備えた透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL製、JEM−3100Fエネルギーフィルタリング(オメガタイプ)顕微鏡)で観察し、電子回折パターンを得た。結果を
図4(B)〜(C)に示す。
【0056】
参考例1と同様に、得られたCo−Ni LDHプレートが密集したプレート膜をITOガラス上に形成した。参考例1と同様に、ITOガラス上のCo−Ni LDHプレート膜の表面をSEMで観察した。結果を
図16(A)に示す。
【0057】
参考例1と同様に、作用電極としてITOガラス上のCo−Ni LDHプレート膜、電解液としてKOH(1M)、参照電極としてAg/AgCl、および、カウンタ電極としてプラチナ線を用い、電気化学ワークステーション(Solartron製)にて、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。結果を
図16(B)〜(D)に示す。
【0058】
[参考例3]
参考例3では、グラファイト酸化物、および、それを単層剥離した酸化グラフェンナノシート(GOナノシート)を製造した。
【0059】
例えば、S.Parkらによる、“Nature Nanotechnol.2009,4,217”に記載の改良ハマー法により、天然グラファイト片(純度99.9999%、100メッシュ)からグラファイト酸化物を製造した。天然グラファイト(1g)を、1000mL円錐ビーカ内にてKNO
3(1.2g)およびH
2SO
4(50mL)の混合溶液中で撹拌した。次いで、KMnO
4(6g)をゆっくりと添加し、室温(15℃以上30℃以下)にて6時間撹拌した。この円錐ビーカを冷却バスに入れ、温度を80℃以下に保持しつつ、ミリQ水(30mL)をゆっくりと添加した。さらにミリQ水(200mL)を添加し、懸濁液を希釈した。この懸濁液にH
2O
2(6mL)をゆっくり添加し、続いてミリQ水を添加し、1000mLまで希釈した。懸濁液は沈降し、上澄み液を除去した。沈降と上澄み液の除去とを、pHが5以上になるまで数回繰り返した。この結果、天然グラファイトからグラファイト酸化物を得た。なお、天然のグラファイト片について、単色のCuKα線(λ=1.5405Å)を用いて、X線回折装置(Rigaku製、Rint−2200)によりX線回折(XRD)測定を行った。結果を
図6中のAに示す。
【0060】
グラファイト酸化物のスラリーを水に分散させ、超音波処理することにより単層剥離し、酸化グラファイトナノシート(GOナノシート)を得た。超音波処理を約2時間行った後、茶色のコロイド状の懸濁液が得られた。
【0061】
参考例2と同様に、GOナノシートの表面を、AFMおよびTEMを用いて観察した。結果を
図5(A)および
図7(A)に示す。GOナノシートについて、XRD測定を行った。結果を
図6中のBに示す。GOナノシートを水に分散させた懸濁液のゼータ電位を測定した。結果を後述する。
【0062】
[参考例4]
参考例4では、参考例3で製造した酸化グラフェンナノシート(GOナノシート)を還元した酸化グラフェンナノシート(rGOナノシート)、および、それを密集させた膜を製造した。
【0063】
参考例3で得たGOナノシートを水に分散させた懸濁液(1mg/mL、10mL)をホルムアミド(90mL)と混合した。この混合溶液にヒドラジン一水和物(N
2H
4・H
2O、8μL)を加え、油浴中で80℃に加熱し、12時間保持した。ここで懸濁液中のホルムアミド(F)に対する水(H)の体積比(H/F)は、1/9であった。加熱後、GOナノシートからrGOナノシートに還元されたことを示す黒い懸濁液が得られた。
【0064】
参考例2と同様に、rGOナノシートの表面を、AFMを用いて観察した。結果を
図5(B)に示す。rGOナノシートについて、TEMを用いて観察し、電子回折パターンおよびEELSスペクトルパターンを測定した。結果を
図7(B)および
図8に示す。rGOナノシートについて、XRD測定を行った。結果を
図6中のCに示す。rGOナノシートをホルムアミドと水との混合溶媒(水:ホルムアミド=1:9(体積))に分散させた懸濁液のゼータ電位を測定した。結果を後述する。
【0065】
ITOガラス上にrGOナノシート懸濁液を滴下し、スピンコートによりrGOナノシートからなる膜(単にrGOナノシート膜と称する)を形成した。参考例1と同様に、作用電極としてITOガラス上のrGOナノシート膜を用い、CV測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。また、rGOナノシート膜を用いて定電流充放電(CD)測定を行った。これらの結果を
図17および
図21(A)に示す。
【0066】
CD測定の結果から、式C=IΔt/mΔV(Iは充電電流または放電電流、Δtは完全充電または完全放電までの時間、mは活物質の質量、ΔVは完全充電または完全放電後の電位変化である)を用いて、比容量を算出した。結果を
図22に示す。
【0067】
[実施例5]
実施例5では、参考例1で製造したCo−Al LDHナノシートと、参考例4で製造したrGOナノシートとの超格子構造体を製造した。実施例5では、rGOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、Co−Al LDHナノシートとしてCo−Al LDHの質量(LDH)の比(LDH/G)が3.04であった。
【0068】
参考例1で製造したCo−Al LDHナノシートを第1の非プロトン性極性溶媒としてホルムアミドに分散させたカチオン性溶液を調製した。参考例5で製造したrGOナノシートを、第2の非プロトン性極性溶媒としてホルムアミドおよび水の混合溶媒に分散させたアニオン性溶液を調製した。ここで、ホルムアミド(F)に対する水(H)の体積比(H/F)は1/9であった。
【0069】
カチオン性溶液とアニオン性溶液とを混合・撹拌した(
図2のステップS210)。詳細には、カチオン性溶液を室温(15℃以上30℃以下)で撹拌しながら1mL/分以上10mL/分以下の範囲の速度でアニオン性溶液を添加した。カチオン性溶液中のカチオン性のCo−Al LDHナノシートと、アニオン性溶液中のアニオン性のrGOナノシートとは、静電的相互作用により構造体を形成し、析出した。析出物を遠心分離(回転速度:6000rpm)し、エタノールで洗浄した。この工程を数回繰り返した。
【0070】
得られた構造体について、参考例3と同様に、XRD測定およびTEM観察を行った。結果を
図9および
図11に示す。EDSにより構造体について元素マッピングを行った。結果を
図13に示す。
【0071】
構造体(1mg)をミリQ水(500μL)に分散させ、Nafion(登録商標)溶液(10μL)と混合した。これをITOガラス上に50μL滴下し、スピンコートし、構造体からなる膜を得た。ITOガラス上の膜を80℃で24時間乾燥させ、電気化学測定用の作用電極として用いた。
【0072】
参考例4と同様に、作用電極としてITOガラス上の構造体からなる膜を用いて、CV測定、CD測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。結果を
図19、
図21(B)および
図22に示す。
【0073】
[比較例6]
比較例6では、参考例1で製造したCo−Al LDHナノシートと、参考例3で製造したGOナノシートとの超格子構造体を製造した。比較例6では、GOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、Co−Al LDHナノシートの前駆体であるCo−Al LDHの質量(LDH)の比(LDH/G)が3.04であった。製造手順は実施例5と同様であった。得られた構造体について、参考例3と同様に、XRD測定を行った。結果を
図9に示す。また、参考例4と同様に、作用電極としてITOガラス上の構造体からなる膜を用いて、CV測定、CD測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。
【0074】
[実施例7]
実施例7では、参考例2で製造したCo−Ni LDHナノシートと、参考例4で製造したrGOナノシートとの超格子構造体を製造した。実施例7では、rGOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、Co−Ni LDHナノシートの前駆体であるCo−Ni LDHの質量(LDH)の比(LDH/G)が3.33であった。製造手順は実施例5と同様であった。
【0075】
得られた構造体について、参考例3と同様に、XRD測定およびTEM観察を行った。結果を
図10および
図12に示す。
【0076】
参考例1と同様に、作用電極としてITOガラス上の構造体からなる膜を用いて、CV測定、CD測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。結果を
図20、
図21(C)、
図22および
図23に示す。
【0077】
[比較例8]
比較例8では、参考例2で製造したCo−Ni LDHナノシートと、参考例3で製造したGOナノシートとの超格子構造体を製造した。比較例8では、GOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、Co−Ni LDHナノシートの前駆体であるCo−Ni LDHの質量(LDH)の比(LDH/G)が3.33であった。製造手順は実施例5と同様であった。得られた構造体について、参考例3と同様に、XRD測定を行った。結果を
図10に示す。また、参考例4と同様に、作用電極としてITOガラス上の構造体からなる膜を用いて、CV測定、CD測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。
【0078】
[比較例9]
比較例9では、参考例1で製造したCo−Al LDHナノシートと、参考例3で製造したGOナノシートとの超格子構造体を製造した。比較例9では、GOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、Co−Al LDHナノシートの前駆体であるCo−Al LDHの質量(LDH)の比(LDH/G)が4.0および5.0の2種類であった。製造手順は実施例5と同様であった。得られた構造体について、参考例3と同様に、XRD測定を行った。結果を
図14に示す。
【0079】
[比較例10]
比較例10では、参考例1で製造したCo−Al LDHナノシートの再凝集体と、参考例4で製造したrGOナノシートの再凝集体との混合体を製造した。比較例10では、rGOナノシートの再凝集体中のグラファイトの質量(G)に対する、Co−Al LDHナノシートの再凝集体中の層状複水酸化物の質量(LDH)の比(LDH/G)が3.0であった。
【0080】
Co−Al LDHナノシートをホルムアミドに分散させ、これにKClホルムアミド溶液(1M)を添加することにより、Co−Al LDHナノシートの再凝集体を得た。同様に、rGOナノシートをホルムアミドに分散させ、これにKCl水溶液(1M)を添加することにより、rGOナノシートの再凝集体を得た。Co−Al LDHナノシートの再凝集体と、rGOナノシートの再凝集体とを混合し、混合物を得た。
【0081】
参考例3と同様に、作用電極としてITOガラス上の混合物からなる膜を用いて、CV測定、CD測定および電気化学インピーダンス分光測定を行った。結果を
図18および
図22に示す。
【0082】
以上の参考例、実施例および比較例を簡単のため、表1にまとめて示す。
【0083】
【表1】
【0084】
図3は、参考例1の試料のAFM像を示す図である。
【0085】
測定用の試料は、Si基板上に堆積させたCo−Al LDHナノシートである。
図3によれば、Co−Al LDHナノシートの厚さは、約0.8nmであった。この厚さは、単層剥離されたLDHナノシート単一層として報告されている値に一致しており、結晶学的厚さとも近かった。また、Co−Al LDHナノシートの横方向(長手方向)の大きさは、数マイクロメートル(0.5μm〜5μm)であった。
【0086】
図4は、参考例2の試料のAFM像(A)、TEM像(B)および電子回折パターン(C)を示す図である。
【0087】
AFM用の試料は、Si基板上に堆積させたCo−Ni LDHナノシートである。TEM用の試料は、マイクログリッドに堆積させたCo−Ni LDHナノシートである。
図4(A)によれば、
図3と同様に、Co−Ni LDHナノシートの厚さは、約0.8nmであった。Co−Ni LDHナノシートの横方向の大きさは、Co−Al LDHナノシートのそれに比べて小さく、数百ナノメートル(100nm〜2000nm)であった。
【0088】
図4(B)によれば、コントラストが暗く、均一に示される領域がCo−Ni LDHナノシートを示しており、単層剥離されて極薄の厚さであることを反映している。
【0089】
図4(C)によれば、面内回折スポットは、格子定数a=0.31nmを有する六方対称に配列しており、Co−Ni LDHナノシートのそれぞれが、単結晶的であることを確認した。
【0090】
以上、
図3および
図4によれば、層状複水酸化物から単層剥離され、0.8nmの分子レベル的な厚さを有しており、単結晶LDHナノシートが得られたことが分かった。
【0091】
図5は、参考例3および参考例4による試料のAFM像を示す図である。
【0092】
AFM用の試料は、Si基板上に堆積させたGOナノシートおよびrGOナノシートである。
図5(A)および(B)は、それぞれ、GOナノシートおよびrGOナノシートの結果である。
図5(A)によれば、GOナノシートの厚さは、約1.0nmであった。また、GOナノシートの横方向(長手方向)の大きさは、数マイクロメートル(1μm〜10μm)であった。
【0093】
一方、
図5(B)によれば、rGOナノシートの厚さは、GOナノシートのそれよりも薄く、約0.5nmであった。このことは、GOナノシートから酸素を含有する官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基,エポキシ基等)が除去され、還元されたことを示唆する。また、
図5(A)と(B)とを比べると、rGOナノシートは、GOナノシートに比べて、湾曲しにくく、より平坦であることが分かった。
【0094】
図6は、参考例3および参考例4による試料のXRDパターンを示す図である。
【0095】
XRDパターンA〜Cは、それぞれ、天然グラファイト片、GOナノシートおよびrGOナノシートの結果を示す。GOナノシートおよびrGOナノシートのXRDパターンから算出された層間距離は、それぞれ、0.83nmおよび0.4nmであった。
【0096】
GOナノシートの層間距離(0.83nm)は、
図5(A)で得られたGOナノシートの膜厚(1.0nm)よりも小さいこと、ならびに、rGOナノシートの層間距離(0.4nm)は、
図5(B)で得られたrGOナノシートの膜厚(0.5nm)より小さいことから、AFM観察中、GOナノシートおよびrGOナノシートの表面に水分等の吸着物の存在が示唆される。
【0097】
図7は、参考例3および参考例4による試料のTEM像を示す図である。
【0098】
TEM用の試料は、マイクログリッドに堆積させたGOナノシートおよびrGOナノシートである。
図7(A)および(B)は、それぞれ、GOナノシートおよびrGOナノシートの結果である。
図7によれば、わずかに暗く、均一に示される領域(図中に矢印で示す領域)がGOナノシートおよびrGOナノシートを示しており、いずれも、単層剥離されて極薄の厚さであることを確認した。
【0099】
図8は、参考例4による試料の電子回折パターン(A)およびEELSスペクトル(B)を示す図である。
【0100】
ここでも、試料は、マイクログリッドに堆積させたrGOナノシートである。
図8(A)によれば、面内回折スポットは、格子定数a=0.25nmを有する六方対称に配列しており、rGOナノシートのそれぞれが、単結晶的であることを確認した。
【0101】
図8(B)によれば、明確な1s→π
*炭素ピーク(@284eV)が現れているが、酸素ピーク(@532eV)は現れなかった。このことは、芳香族sp
2炭素結合が、rGOナノシートにおいて部分的に復元したことを示す。
【0102】
次に、測定したゼータ電位について説明する。Co−Al LDHナノシート/Co−Ni LDHナノシート、GOナノシートおよびrGOナノシートのゼータ電位は、それぞれ、+(50±4)mV、−(45±5)mVおよび−(36.5±8)mVであった。rGOナノシートのゼータ電位は、GOナノシートの還元の程度に依存して、GOナノシートのゼータ電位から減少した。
【0103】
これらの結果から、いずれのナノシートも分散媒に良好に分散しており、長期間安定してコロイド状態を維持することが分かった。また、Co−Al LDHナノシート/Co−Ni LDHナノシートと、rGOナノシートとは、比較的近い値の反対電荷を有しており、自発的に静電的相互作用により交互に積層し得ることを示唆する。
【0104】
図9は、実施例5および比較例6の試料のXRDパターンを示す図である。
図10は、実施例7および比較例8の試料のXRDパターンを示す図である。
【0105】
実施例5、比較例6、実施例7および比較例8の試料は、それぞれ、Co−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体、Co−Al LDHナノシートとGOナノシートとの構造体、Co−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体、Co−Ni LDHナノシートとGOナノシートとの構造体であった。
【0106】
図9のXRDパターンAおよびBは、それぞれ、比較例6の試料および実施例5の試料の結果を示す。
図10のXRDパターンAおよびBは、それぞれ、比較例8の試料および実施例7の試料の結果を示す。
図9および
図10に示す指数00lは、構造体の基本配向面であり、L
100およびL
110は、LDHナノシートからの面内回折ピークである。
【0107】
図9および
図10のXRDパターンは、いずれも、LDHナノシートあるいは酸化グラフェンが凝集したピークを示さなかった。このことから、実施例5、7および比較例6、8で得られた構造体は、凝集したLDHナノシートや酸化グラフェンを有しない均一な超格子構造体であることが示唆される。
【0108】
図9および
図10のXRDパターンAによれば、比較例6および比較例8の構造体の層間距離は、約1.2nm(1.1nm〜1.3nmの間の誤差が見られた)であった。Co−Al LDHナノシート/Co−Ni LDHナノシートおよびGOナノシートの結晶学的な厚さが、それぞれ、0.48nmおよび0.83nmであることを考慮すれば、理論的な層間距離は約1.31nm(0.48nm+0.83nm)となる。
【0109】
比較例6および比較例8の構造体の層間距離(1.1nm〜1.3nm)は、いずれも、理論的な層間距離(1.3nm)に対してわずかながら誤差を含んでいるが、比較的良好に一致した。この誤差は、構造体の層間距離は、静電的相互作用や、層間空間中の水の量に影響されるためと考えられる。
【0110】
GOナノシートがCo−Al LDHナノシート/Co−Ni LDHナノシートと静電的相互作用により積層する場合、構造体の層間距離は、GOナノシートの酸化の程度に依存して、収縮する傾向がある。すなわち、構造体の層間距離は、表面電荷を制御することで調整できる。なお、特許文献1および非特許文献1の複合体は、その層間距離(約2.9nm)が比較例6および比較例8の結果にまったく一致せず、LDHナノシートとGOナノシートとが交互に積層されているとは言えないことが分かった。
【0111】
図9および
図10のXRDパターンBによれば、実施例5および実施例7の構造体の層間距離は、いずれも、0.9nmであった。Co−Al LDHナノシート/Co−Ni LDHナノシートおよびrGOナノシートの結晶学的な厚さが、それぞれ、0.48nmおよび0.4nmであることを考慮すれば、理論的な層間距離は0.88nmとなる。
【0112】
実施例5および実施例7の構造体の層間距離(0.9nm)は、理論的な層間距離(0.88nm)に極めて良好に一致した。LDHナノシートの金属イオンの種類が異なっても構造体の層間距離は常に一定であるので、高いイオン拡散や高い電荷輸送効率を有する構造体を設計しやすい。
【0113】
図11は、実施例5の試料のTEM像(A)、高解像度画像(B)および電子回折パターン(C)を示す図である。
図12は、実施例7の試料のTEM像(A)、高解像度画像(B)および電子回折パターン(C)を示す図である。
【0114】
実施例5および実施例7のTEM用の試料は、それぞれ、マイクログリッドに堆積させたCo−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体、および、Co−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体である。
図11および
図12のTEM像(A)によれば、実施例5および実施例7の構造体が、繊維状の外観を有していることが示される。
【0115】
図11および
図12の高解像度画像(B)によれば、実施例5および実施例7の構造体が、コントラストが明るい領域および暗い領域が交互に繰り返された超格子構造体であることが分かる。これらの明るい領域および暗い領域は、それぞれ、LDHナノシートおよびrGOナノシートを示唆する。
【0116】
図11および
図12の電子回折パターン(C)によれば、LDHナノシートの面内回折リング(L
100およびL
110)およびrGOナノシートによるグラフェンの面内回折リング(G
100およびG
110)が示され、実施例5および実施例7の超格子構造体において、LDHナノシートおよびrGOナノシートが、顕微鏡視野のスケールで密接に積層していることを示唆する。
【0117】
図13は、実施例5の試料の元素マッピングを示す図である。
【0118】
EDS用の試料は、マイクログリッドに堆積させたCo−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体である。
図13において明るく示される部分が、それぞれ、Al、CoおよびCの分布を示す。各元素マッピングは、互いに空間配置に関係しており、LDHナノシートとrGOナノシートとがナノメートルレベルで均一に積層していることを示し、実施例5の構造体が超格子構造体であることを示す。なお、図示しないが、実施例7の構造体についても同様の結果が得られたことから、実施例7の構造体もまた超格子構造体であることが分かった。以上より、本発明の製造方法において、アニオン性溶液の分散媒として非プロトン性極性溶媒を用いることにより、不純物が影響することなく、良質な超格子構造体が得られることが示唆される。
【0119】
図14は、比較例9の試料のXRDパターンを示す図である。
【0120】
比較例9の試料は、Co−Al LDHナノシートとGOナノシートとの構造体であった。
図14のXRDパターンAおよびBは、それぞれ、LDH/G比が5.0の構造体、および、LDH/G比が4.0の構造体の結果を示す。
図14によれば、いずれのXRDパターンも、構造体に起因する回折ピーク以外に、Co−Al LDHナノシートが凝集したCo−Al塩素型(または炭酸型)LDHの回折ピークが見られた。このことから、比較例9の構造体は、いずれも、凝集したLDHナノシートを含む不均一な超格子構造体であることが分かり、LDHナノシートとGOナノシートとが交互に積層した均一な超格子構造体を得るためには、LDH/G比は、4未満が好ましいことが示唆される。
【0121】
ここでLDHナノシートとrGOナノシートとの超格子構造体における質量比について検討した。
【0122】
<LDHの基本情報>
空間群:R−3m(No.166)
結晶系:菱面対称
格子定数:a=0.31nm、c=2.67nm(六方晶で算出した場合)
<グラファイトの基本情報>
空間群:P6
3mc(No.186)
結晶系:六方晶
格子定数:a=0.25nm、c=0.67nm
【0123】
<面内単位格子面積>
LDH:0.31×0.31×sin120°=8.32×10
−2nm
2
グラファイト:0.25×0.25×sin120°=5.41×10
−2nm
2
【0124】
<面内単位格子面積当たりの電荷密度>
LDH:0.33e/(8.32×10
−2nm
2)=3.97enm
−2
酸化グラフェン:(0.15+0.075)e/(5.41×10
−2nm
2)=4.16enm
−2
なお、ここでは簡単のため、グラファイトが、30%酸素を含有する官能基で酸化されたとみなし、官能基のうち半分がOH(すなわち、0.15e)であり、残りの半分がCOOH(すなわち0.075e)と仮定した。
LDHの電荷密度は、酸化グラフェンの電荷密度に近く、この結果はゼータ電位の結果に良好に一致した。
【0125】
<モル質量>
Co−Al硝酸型LDH:[Co
2+2/3Al
3+1/3(OH)
2][NO
3−1/3・0.5H
2O]のモル質量=112.2
Co−Ni硝酸型LDH:[Co
2+1/3Ni
2+1/3CO
3+1/3(OH)
2][NO
3−1/3・0.5H
2O]のモル質量=122.8
グラファイト:炭素原子2個のモル質量=24
【0126】
<質量比>
前駆体化合物に基づいてLDHナノシートおよびGOナノシートの濃度を算出し、超格子構造体における理想的な質量比を求めた。超格子構造体におけるrGOナノシートとしてグラファイトの質量(G)に対する、各LDHナノシートの質量として対応する層状複水酸化物の質量(LDH)の質量比(LDH/G)は、それぞれ、次のように算出される。
Co−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの超格子構造体のLDH/G比=5.41×10
−2×112.2/8.32×10
−2×24=3.04
Co−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの超格子構造体のLDH/G比=5.41×10
−2×122.8/8.32×10
−2×24=3.33
【0127】
以上の結果から、凝集することなく良好にマッチングし、交互に積層した超格子構造体を得るためには、超格子構造体中のrGOナノシートの質量(G)に対するLDHナノシートの質量の比(LDH/G)は3以上が好ましいことが分かった。ここで、この比の値の式LDH/G中のGの値としては対応するグラファイトの質量を、またLDHの値としては対応する層状複水酸化物の質量を使用する。
【0128】
図15は、参考例1の試料のSEM像(A)および電気化学特性(B)〜(D)を示す図である。
【0129】
SEMおよび電気化学特性用の試料は、ともに、ITOガラス上に密集させたCo−Al LDHプレートからなる膜(Co−Al LDHプレート膜と称する)であった。
図15(A)によれば、ITOガラス上にCo−Al LDHプレート膜が形成されたことが分かる。
図15(B)は、種々のスキャン速度(30、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.5V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図15(B)によれば、CV曲線は、0.1V付近に酸化・還元ピークを示した。Al
3+が不活性であるので、酸化・還元は、Co
2+のファラデー反応に相当する。より詳細には、0.1V付近のアノードピークは、Co(OH)
2からCoOOHへの酸化に基づき、カソードピークは、その逆プロセスに基づく。CoOOHとCoO
2との間のファラデー反応は、0.4V以上の高電位で起こると予想される。
【0130】
図15(C)は、0Vおよび0.1Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコール(ナイキスト)プロット形式で示す。Z’およびZ”は、それぞれ、インピーダンスの実数部および虚数部である。各データ点は、特定の周波数(f)で測定されており、図面左側が高周波側に対応する。
図15(C)によれば、0.1Vおよび0Vのいずれで測定したコールコールプロットも、高周波数側で半円をなしており、ファラデー電荷輸送が生じていることを示す。
【0131】
図15(D)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。周波数に対するインピーダンスの大きさおよび位相シフト角をログスケールでプロットし、容量性リアクタンスインピーダンスに対する周波数の影響を示す。
図15(D)によれば、ボードプロットは、折点周波数(f
Φ=−45°)が数Hz(
図15(D)中の点線の領域)であることを示す。折点周波数は、酸化・還元ピークがある0.1Vではさらに降下した。すなわち、Co−Al LDHプレート膜のファラデー擬似容量キャパシタ特性は、極めて乏しいことが分かった。このことは、Co−Al LDHプレートが高い絶縁性を有しており、電荷輸送抵抗が大きいことからも理解できる。
【0132】
図16は、参考例2の試料のSEM像(A)および電気化学特性(B)〜(D)を示す図である。
【0133】
SEMおよび電気化学特性用の試料ともに、ITOガラス上に密集させたCo−Ni LDHプレートからなる膜(Co−Ni LDHプレート膜と称する)であった。
図16(A)によれば、ITOガラス上にCo−Ni LDHプレート膜が形成されたことが分かる。
図16(B)は、種々のスキャン速度(10、20、30、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.5V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図16(B)によれば、CV曲線は、0.3V付近に酸化・還元ピークを示した。酸化・還元ピークは、Co
2+およびNi
2+のファラデー反応に相当する。還元ピークの電位は、参考例1のCo−Al LDHナノシートのそれ(0.1V)に比べてわずかに高かった。これは、LDHナノシート中に酸化・還元可能な2種類の金属が存在する影響である。
【0134】
図16(C)は、0.1Vおよび0.3Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコールプロット形式で示す。
図16(C)によれば、0.3Vで測定したコールコールプロットは、高周波数側で半円をなしており、ファラデー電荷輸送が生じていることを示す。
【0135】
図16(D)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。
図16(D)によれば、ボードプロットは、周波数に対して位相シフト角の複雑な応答を示した。これは、Co−Ni LDHプレートの高い絶縁性に起因しており、折点周波数(f
Φ=−45°)が数Hzであることを示す。ここでもやはり、Co−Ni LDHプレート膜は、高出力キャパシタには不向きであることが分かった。
【0136】
図17は、参考例4の試料の電気化学特性(A)〜(C)を示す図である。
【0137】
電気化学特性用の試料は、ITOガラス上に密集させたrGOナノシートからなる膜であった。
図17(A)は、種々のスキャン速度(10、20、30、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.4V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図17(A)によれば、CV曲線は、明瞭な酸化・還元ピークを有しないほぼ矩形の形状であり、典型的な導電性炭素表面の特性に一致した。
【0138】
図17(B)は、0.1Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコールプロット形式で示す。高周波側において、理想的なキャパシタ的な挙動を表す垂直な線が見られた。半円が見られなかったことから、ファラデー電荷輸送が生じないことが分かった。
【0139】
図17(C)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。低周波数側では、インピーダンスの実数部が有限値に達し、インピーダンスの虚数部が無限大となった。これは、位相シフト角が、理想的なキャパシタ充電および放電挙動を表す−90°に近いことからも説明がつく。中間の周波数におけるインピーダンスの変化は、明らかな折点周波数を示し、理想的なキャパシタ挙動から周波数依存の拡散限定プロセスに転換する特徴的な変化である。折点周波数(f
Φ=−45°)は約200Hz(
図17C中の点線)であり、蓄積したエネルギーの多くがこの周波数までアクセス可能であることを示す。すなわち、1秒以下の時間スケールでエネルギー出力を可能にする。
【0140】
図18は、比較例10の試料の電気化学特性(A)〜(C)を示す図である。
【0141】
電気化学特性用の試料は、ITOガラス上に密集させたCo−Al LDHナノシートの凝集体とrGOナノシートの凝集体との混合物からなる膜であった。
図18(A)は、種々のスキャン速度(5、10、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.5V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図18(A)によれば、CV曲線は、0.1V付近に酸化・還元ピークを示した。参考例1と同様に、酸化・還元はCo
2+のファラデー反応に起因する。
【0142】
図18(B)は、−0.1Vおよび0.1Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコールプロット形式で示す。
図18(B)によれば、いずれの電位で測定したコールコールプロットも、高周波数側で半円をなしており、ファラデー電荷輸送が生じていることを示す。
【0143】
図18(C)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。
図18(C)によれば、折点周波数(f
Φ=−45°)が10Hz(
図18(C)中の点線の領域)以下であった。ここでもやはり、LDHナノシートとrGOナノシートとの物理的な混合物であっても、高出力キャパシタには不向きであることが分かった。
【0144】
図19は、実施例5の試料の電気化学特性(A)〜(C)を示す図である。
【0145】
電気化学特性用の試料は、ITOガラス上に密集させたCo−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜であった。
図19(A)は、種々のスキャン速度(10、20、30、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.5V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図19(A)によれば、CV曲線は、0.1V付近に酸化・還元ピークを示した。参考例1、比較例10と同様に、酸化・還元はCo
2+のファラデー反応に起因する。
【0146】
図19(B)は、0.1Vおよび−0.1Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコールプロット形式で示す。
図19(B)によれば、0.1Vで測定したコールコールプロットは、高周波数側で半円をなしており、ファラデー電荷輸送が生じていることを示す。
【0147】
図19(C)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。折点周波数(f
Φ=−45°)は数十Hz(
図19(C)中の点線の領域)であった。この値は、参考例1のCo−Al LDHプレート単独の結果(
図15(D))および比較例10のLDHナノシートとrGOナノシートとの物理的な混合物の結果(
図18(C))と比較すると、10倍以上大きいことが分かった。また、−0.1Vの電位における周波数応答は、約100Hzと同じ高さに達した。
【0148】
図20は、実施例7の試料の電気化学特性(A)〜(C)を示す図である。
【0149】
電気化学特性用の試料は、ITOガラス上に密集させたCo−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜であった。
図20(A)は、種々のスキャン速度(10、20、50、100mV/s)で、KOH(1M)中、−0.2V〜0.4V(対Ag/AgCl)の電位領域を掃引させたサイクリックボルタンメトリ(CV)曲線である。
図20(A)によれば、CV曲線は、0.3V付近に酸化・還元ピークを示した。参考例2と同様に、酸化・還元はCo
2+およびNi
2+のファラデー反応に起因する。
【0150】
図20(B)は、−0.1Vおよび0.3Vの電位の電気化学インピーダンススペクトルをコールコールプロット形式で示す。
図20(B)によれば、0.3Vで測定したコールコールプロットは、高周波数側で半円をなしており、ファラデー電荷輸送が生じていることを示す。
【0151】
図20(C)は、インピーダンススペクトルをボードプロットの形式で示す。折点周波数(f
Φ=−45°)は数十Hz(
図20(C)中の点線の領域)であった。この値は、参考例2のCo−Ni LDHプレート単独の結果(
図16(D))と比較すると、はるかに大きいことが分かった。また、−0.1Vの電位における周波数応答は、約100Hzと同じ高さに達した。
【0152】
以上の
図15〜
図20によれば、高い導電性のrGOナノシートと絶縁性のLDHナノシートとが交互に積層された本発明の超格子構造体を構成することにより、全体の導電性が増大し、出力性能を著しく改善することが分かった。また、酸化・還元可能なLDHナノシートのファラデー反応で生成する電子は、隣接するrGOナノシートに効果的に集約し、すばやく外部回路へと輸送されるので、容量の充電および放電能を格段に上昇させることができる。さらに、rGOナノシートに基づくEDLキャパシタにほぼ等しい約100Hzの超高速応答が可能なことから、実施例5の構造体が、Co−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの超格子構造体であり、実施例7のCo−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの超格子構造体であることを示唆する。
【0153】
図21は、参考例4、実施例5および実施例7の試料による定電流充放電(CD)測定の結果を示す図である。
【0154】
参考例4、実施例5および実施例7のCD測定用の試料は、それぞれ、ITOガラス上に密集させたrGOナノシートからなる膜、Co−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜、および、Co−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜であった。
図21(A)〜(C)は、それぞれ、参考例4、実施例5および実施例7の試料の測定結果である。
【0155】
CD測定は、電流密度5A/g、0Vから0.4Vの電位範囲において行った。
図21(A)と、
図21(B)および(C)とを比較すると、実施例5および実施例7の超格子構造体の容量は、参考例4のrGOナノシートのそれに比べて5〜6倍大きいことが分かった。これもまた、rGOナノシートを酸化・還元可能なLDHナノシートと複合化したことによる効果である。
【0156】
図21(A)から算出したrGOナノシートの比容量は約100F/gであった。
図21(B)および(C)から算出した実施例5の構造体および実施例7の構造体の比容量は、それぞれ、約450F/gおよび約650F/gであった。
【0157】
図22は、参考例4、実施例5、実施例7および比較例10の試料の比容量のスキャン速度依存性を示す図である。
【0158】
参考例4、実施例5、実施例7および比較例10の測定用の試料は、それぞれ、ITOガラス上に密集させたrGOナノシートからなる膜、Co−Al LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜、Co−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜、および、Co−Al LDHナノシートの凝集体とrGOナノシートの凝集体との混合物からなる膜である。
図22の曲線A〜Dは、それぞれ、参考例4、比較例10、実施例5および実施例7の試料の測定結果である。
【0159】
比較例10の混合物および実施例5、7の構造体の比容量は、スキャン速度が増大するにつれて減少したが、実施例5、7の構造体の比容量減少は、比較例10の混合物の比容量減少より緩やかであった。
【0160】
実施例5および実施例7の結果を比較すると、いずれのスキャン速度においても、実施例7の構造体の比容量が、実施例5のそれよりも大きいことが分かった。このことは、M1元素としてCoおよびNi、M2元素として不活性なAlを代替するCoを含有するLDHナノシートを用いることが好ましいことを示す。
【0161】
図23は、実施例7の試料の容量の挙動を示す図である。
【0162】
測定用の試料は、ITOガラス上に密集させたCo−Ni LDHナノシートとrGOナノシートとの構造体からなる膜である。
図23(A)は、種々の電流密度(2、5、10、20、30A/g)における定電流放電曲線である。
図23(B)は、比容量の放電電流密度依存性を示す。
図23(C)は、電流密度5A/gにおける容量のサイクル数依存性を示す。
【0163】
図23(B)によれば、実施例5の構造体は、放電電流密度が最大30A/gまで500F/gを超える高い比容量を維持することが分かった。
図23(C)によれば、実施例5の構造体は、2000サイクル後も比容量97%を保持しており優れた保持特性を有した。これらのことからも、本発明の超格子構造体は、擬似容量キャパシタやスーパーキャパシタの電極材料として好適であることが示される。