(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1方向に沿って延在するとともに、液体が充填される噴射チャネル及び液体が充填されないダミーチャネルが、第1方向に直交する第2方向に交互に並設されてなる第1チャネル列及び第2チャネル列が第1方向に間隔をあけて配設されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面に形成された個別電極と、
前記アクチュエータプレートの一方の主面上で前記個別電極に接続された個別配線と、
前記ダミーチャネルの内面に形成された共通電極と、
前記一方の主面上で前記共通電極に接続された共通配線と、を備え、
前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列間の前記ダミーチャネル同士は、第1方向から見て重ならず、かつ第1方向の内側端部同士が第2方向から見て重なり合う位置にそれぞれ配設され、
前記共通配線は、前記一方の主面上において、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列の前記ダミーチャネル同士が第2方向から見て重なり合うラップ領域上を第2方向に沿って延在して、前記共通電極に接続されるとともに、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列に対して第1方向の外側に位置する尾部のうち、少なくとも一方の尾部に引き出され、外部配線に接続されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
前記個別配線のうち、前記第1チャネル列側の前記個別配線は、前記一方の主面上において、前記第1チャネル列に対して第1方向の外側に位置する第1尾部で第1外部配線に接続され、前記第2チャネル列側の前記個別配線は、前記一方の主面上において、前記第2チャネル列に対して第1方向の外側に位置する第2尾部で第2外部配線に接続されていることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
前記共通配線は、前記一方の主面上において、前記第1尾部及び前記第2尾部まで引き出されるとともに、前記第1外部配線及び前記第2外部配線にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
第1方向において、前記第1チャネル列の前記噴射チャネルが前記第2チャネル列の前記ダミーチャネルが対向し、前記第1チャネル列の前記ダミーチャネルが前記第2チャネル列の前記噴射チャネルに対向していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の構成にあっては、第2個別配線が第1チャネル列のダミーチャネル及び第1共通配線を跨いでアクチュエータプレートの一端部まで引き出されているため、配線パターンが複雑になる。この場合、仮に第2個別配線と第1共通配線とがその交差部分で短絡すると、ノズル孔から液体を吐出させることができなくなる。
また、上述した特許文献1の構成では、ダミーチャネルの共通電極と共通配線とをダミーチャネルの延在方向に沿って延びる引き出し部を介して接続する必要があり、これによっても配線パターンが複雑になる。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、高密度記録化等を図った上で、配線パターンの簡素化を実現できる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る液体噴射ヘッドは、第1方向に沿って延在するとともに、液体が充填される噴射チャネル及び液体が充填されないダミーチャネルが、第1方向に直交する第2方向に交互に並設されてなる第1チャネル列及び第2チャネル列が第1方向に間隔をあけて配設されたアクチュエータプレートと、前記噴射チャネルの内面に形成された個別電極と、前記アクチュエータプレートの一方の主面上で前記個別電極に接続された個別配線と、前記ダミーチャネルの内面に形成された共通電極と、前記一方の主面上で前記共通電極に接続された共通配線と、を備え、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列間の前記ダミーチャネル同士は、第1方向から見て重ならず、かつ第1方向の内側端部同士が第2方向から見て重なり合う位置にそれぞれ配設され、前記共通配線は、前記一方の主面上において、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列の前記ダミーチャネル同士が第2方向から見て重なり合うラップ領域上を第2方向に沿って延在して、前記共通電極に接続されるとともに、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列に対して第1方向の外側に位置する尾部のうち、少なくとも一方の尾部に引き出され、外部配線に接続されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、共通配線がラップ領域上を延在することで、ダミーチャネルとの交差部分で共通電極に接続されることになるので、共通電極と共通配線とを接続する引き回し部分を共通配線に形成する必要がない。
したがって、高密度記録化等を図った上で、配線パターンの簡素化及び製造効率の向上を実現できる。
【0011】
また、前記個別配線のうち、前記第1チャネル列側の前記個別配線は、前記一方の主面上において、前記第1チャネル列に対して第1方向の外側に位置する第1尾部で第1外部配線に接続され、前記第2チャネル列側の前記個別配線は、前記一方の主面上において、前記第2チャネル列に対して第1方向の外側に位置する第2尾部で第2外部配線に接続されていてもよい。
この構成によれば、各チャネル列の個別配線が第1方向の外側に向けて互いに逆方向に引き出されているため、同一方向に引き出す場合と異なり、一方のチャネル列の個別配線が共通配線や、他方のチャネル列のダミーチャネルと交差することがない。これによっても、配線パターンの簡素化及び製造効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、前記共通配線は、前記一方の主面上において、第1尾部及び前記第2尾部まで引き出されるとともに、前記第1外部配線及び前記第2外部配線にそれぞれ接続されていてもよい。
この場合、共通配線が各外部配線に接続されているため、共通配線のインピーダンスを抑制できる。
【0013】
また、第1方向において、前記第1チャネル列の前記噴射チャネルが前記第2チャネル列の前記ダミーチャネルが対向し、前記第1チャネル列の前記ダミーチャネルが前記第2チャネル列の前記噴射チャネルに対向していてもよい。
この場合、各チャネル列の吐出チャネル同士及びダミーチャネル同士が千鳥状に配列されることになるので、印刷時のドットのピッチをより狭くすることが可能になり、更なる高密度記録化を図ることができる。
【0014】
また、前記アクチュエータプレートの前記一方の主面上に積層されるとともに、前記噴射チャネルに各別に連通する複数の噴射孔を有する噴射孔プレートを備え、前記噴射チャネルは、第1方向の中央部から内側端部に向かうに従い前記アクチュエータプレートの他方の主面側に向けて延びる噴射側傾斜部を有し、前記ダミーチャネルは、第1方向の中央部から内側端部に向かうに従い前記アクチュエータプレートの前記一方の主面側に向けて延びるダミー側傾斜部を有し、前記第1チャネル列及び前記第2チャネル列間において、第1方向で対向する前記噴射チャネル及び前記ダミーチャネルは、前記噴射側傾斜部及び前記ダミー側傾斜部同士が、前記アクチュエータプレートの厚さ方向で重なり合う位置に相互に近接配置されていてもよい。
この場合、隣り合うチャネル列間において、第1方向で対向する吐出チャネル及びダミーチャネルの噴射側傾斜部及びダミー側傾斜部同士がアクチュエータプレートの厚さ方向で重なり合う位置に相互に近接配置されているため、アクチュエータプレートの第1方向への小型化が可能となる。この場合、例えば複数のアクチュエータプレートをウエハレベルで一括して作成し、最後に各アクチュエータプレート毎に分割する場合には、1枚のウエハから作成できるアクチュエータプレートの取り個数も増加できる。そのため、液体噴射ヘッドの低コスト化を実現できる。
【0015】
また、前記ダミー側傾斜部は、前記ラップ領域上に位置していてもよい。
この場合、ダミー側傾斜部が、ラップ領域上に位置しているため、共通電極と共通配線とが滑らかに接続されることになる。これにより、共通電極及び共通配線間の安定した導通を確保できる。
【0016】
また、前記噴射チャネルの内面には、前記個別電極を被覆する絶縁膜が形成されていてもよい。
この構成によれば、液体を介して各電極間が短絡するのを抑制できるため、水性インク等の導電性を有するインクを用いる等、汎用性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る液体噴射装置は、上記本発明に係る液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明に係る液体噴射ヘッドを備えているため、高密度記録化等に対応できるとともに、信頼性の高い液体噴射装置を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高密度記録化を図った上で、配線パターンの簡素化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置の一例として、インク(液体)を利用して記録紙に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
[プリンタ]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、紙等の記録紙(被記録媒体)Pを搬送する一対の搬送手段(移動機構)2,3と、インクが収容されたインクタンク4と、記録紙Pに液滴状のインクを吐出するインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させるインク循環手段6と、インクジェットヘッド5を記録紙Pの搬送方向(以下、X方向とする)と直交する方向(記録紙Pの幅方向、以下、Y方向とする)に走査させる走査手段(移動機構)7と、を備えている。なお、図中Z方向はX方向及びY方向と直交する高さ方向を示す。
【0022】
搬送手段2は、Y方向に延設されたグリッドローラ11と、グリッドローラ11に平行に延設されたピンチローラ12と、グリッドローラ11を軸回転させるモータ等の駆動機構(不図示)と、を備えている。同様に、搬送手段3は、Y方向に延設されたグリッドローラ13と、グリッドローラ13に平行に延設されたピンチローラ14と、グリッドローラ13を軸回転させる駆動機構(不図示)と、を備えている。
【0023】
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクのインクタンク4Y,4M,4C,4BがX方向に並んで設けられている。なお、本実施形態では、油性インク等の導電性が低いインクが好適に用いられている。
【0024】
図2はインクジェットヘッド5及びインク循環手段6の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、インク循環手段6は、インクジェットヘッド5にインクを供給するインク供給管21、及びインクジェットヘッド5からインクを排出するインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。なお、インク供給管21及びインク排出管22は、インクジェットヘッド5を支持する走査手段7の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0025】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を介してインクジェットヘッド5の後述する入口側共通インク室90(
図3参照)にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧となっている。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インクジェットヘッド5の後述する出口側共通インク室91a,91b(
図3参照)からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧となっている。そして、インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を介して循環可能となっている。
【0026】
図1に示すように、走査手段7は、Y方向に延設された一対のガイドレール31,32と、一対のガイドレール31,32に移動可能に支持されたキャリッジ33と、キャリッジ33をY方向に移動させる駆動機構34と、を備えている。駆動機構34は、一対のガイドレール31,32の間に配設された一対のプーリ35,36と、一対のプーリ35,36間に巻回された無端ベルト37と、一方のプーリ35を回転駆動させる駆動モータ38と、を備えている。
【0027】
一対のプーリ35,36は、一対のガイドレール31,32の両端部間にそれぞれ配設される。無端ベルト37は、一対のガイドレール31,32間に配設され、この無端ベルト37にキャリッジ33が連結される。キャリッジ33には、複数のインクジェットヘッド5として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色のインクのインクジェットヘッド5Y,5M,5C,5BがY方向に並んで搭載される。なお、上述した搬送手段2,3及び走査手段7により、インクジェットヘッド5と記録紙Pとを相対的に移動させる移動機構を構成している。
【0028】
<インクジェットヘッド>
次に、上述したインクジェットヘッド5について詳述する。なお、インクジェットヘッド5Y,5M,5C,5Bは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、まとめてインクジェットヘッド5として説明する。
図3はインクジェットヘッド5の分解斜視図、
図4はノズルプレート51を取り外した状態におけるインクジェットヘッド5の底面図である。
図3、
図4に示すように、各インクジェットヘッド5は、後述する吐出チャネル71における延在方向(Y方向(第1方向))の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式のインクジェットヘッド5である。また、本実施形態のインクジェットヘッド5は、複数のノズル孔(噴射孔)85,86からなるノズル列87,88が二列に亘って形成された二列タイプのインクジェットヘッド5である。
【0029】
インクジェットヘッド5は、ノズルプレート(噴射孔プレート)51、アクチュエータプレート52、及びカバープレート53を主に備えている。そして、インクジェットヘッド5は、これらノズルプレート51、アクチュエータプレート52、及びカバープレート53がこの順で接着剤等によりZ方向に積層された構成とされている。なお、以下の説明では、上述したZ方向のうち、ノズルプレート51側を一端側、カバープレート53側を他端側として説明する。
【0030】
<アクチュエータプレート>
図5は
図4のV−V線に相当する断面図、
図6は
図4のVI−VI線に相当する断面図である。
図5、
図6に示すように、アクチュエータプレート52は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成され、その分極方向が厚さ方向(Z方向)に沿って一方向に設定されている。このアクチュエータプレート52には、X方向(第2方向)に間隔をあけて並設された複数のチャネル71,72からなるチャネル列(第1チャネル列63及び第2チャネル列64)が2列配設されている。なお、以下の説明では、主に第1チャネル列63について説明し、第2チャネル列64における第1チャネル列63と対応する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
第1チャネル列63は、Y方向に沿って延在する複数のチャネル71,72が、X方向に間隔をあけて互いに平行に並んで構成されている。すなわち、各チャネル71,72は、Y方向に直線状、かつX方向に等間隔に形成されるとともに、圧電体(アクチュエータプレート52)からなる駆動壁65によってそれぞれ画成されている。
【0032】
具体的に、複数のチャネル71,72は、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)71と、インクが充填されないダミーチャネル72と、を有している。そして、これら吐出チャネル71及びダミーチャネル72は、X方向で交互に並んで配列されている。
図3、
図6に示すように、吐出チャネル71は、X方向から見た側面視において、Z方向の一端側に向けて凸の湾曲形状を呈している。具体的に、吐出チャネル71は、Y方向の両端部から中央部に向かうに従いZ方向の一端側に向けて湾曲しながら延びる切り上がり部(吐出側傾斜部)66と、各切り上がり部66間に位置する中間部67と、を有している。吐出チャネル71は、中間部67を通してアクチュエータプレート52におけるZ方向の一端側に位置する第1主面52a上に開口し、切り上がり部66及び中間部67を通してZ方向の他端側に位置する第2主面52b上に開口している。すなわち、アクチュエータプレート52において、吐出チャネル71の中間部67に位置する部分は、Z方向に貫通している。
【0033】
ダミーチャネル72は、X方向から見た側面視において、Z方向の他端側に向けて凸の湾曲形状を呈している。すなわち、ダミーチャネル72は、吐出チャネル71に対してZ方向に反転した形状になっている。具体的に、ダミーチャネル72は、Y方向の両端部から中央部に向かうに従いZ方向の他端側に向けて湾曲しながら延びる切り上がり部(ダミー側傾斜部)68と、各切り上がり部68間に位置する中間部69と、を有している。ダミーチャネル72は、切り上がり部68及び中間部69を通してアクチュエータプレート52の第1主面52a上に開口し、中間部69を通してアクチュエータプレート52の第2主面52b上に開口している。すなわち、アクチュエータプレート52において、ダミーチャネル72の中間部69に位置する部分は、Z方向に貫通している。
【0034】
したがって、吐出チャネル71及びダミーチャネル72は、アクチュエータプレート52における両主面52a,52b上でのY方向における開口長がそれぞれ異なっている。第1チャネル列63は、
図4に示すように、第1主面52a上においてダミーチャネル72の開口長が吐出チャネル71の開口長よりも長くなり、
図3に示すように、第2主面52b上において吐出チャネル71の開口長がダミーチャネル72の開口長よりも長くなっている。この場合、
図4に示すように、第1主面52a上ではダミーチャネル72が両切り上がり部68の長さ分だけ吐出チャネル71よりもY方向の両側に突出している。また、
図3に示すように、第2主面52b上では、吐出チャネル71が両切り上がり部66の長さ分だけダミーチャネル72よりもY方向の両側に突出している。
【0035】
図3、
図4に示すように、第2チャネル列64は、上述した第1チャネル列63と同様に吐出チャネル71及びダミーチャネル72が交互に並設されてなり、第1チャネル列63に対してY方向に間隔をあけて配設されている。具体的に、第2チャネル列64の吐出チャネル71及びダミーチャネル72は、第1チャネル列63の吐出チャネル71及びダミーチャネル72の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。したがって、本実施形態のインクジェットヘッド5では、第1チャネル列63及び第2チャネル列64の吐出チャネル71同士、並びに第1チャネル列63及び第2チャネル列64のダミーチャネル72同士が千鳥状(互い違い)に配置されている。すなわち、隣り合うチャネル列63,64間において、吐出チャネル71及びダミーチャネル72同士がY方向で対向している。なお、アクチュエータプレート52のうち、Y方向の両端部(各チャネル列63,64に対してY方向の外側に位置する部分はそれぞれ尾部(第1尾部70A及び第2尾部70B)を構成している。
【0036】
ここで、
図3、
図6に示すように、隣り合うチャネル列63,64間において、Y方向で対向する吐出チャネル71及びダミーチャネル72は、Y方向の内側端部同士がZ方向で重なり合う位置に相互に近接配置されている。具体的に、Y方向で対向する第1チャネル列63の吐出チャネル71及び第2チャネル列64のダミーチャネル72は、Y方向の内側に位置する切り上がり部66,68の一部同士がZ方向で重なり合っている。一方、Y方向で対向する第1チャネル列63のダミーチャネル72及び第2チャネル列64の吐出チャネル71は、Y方向の内側に位置する切り上がり部68,66の一部同士がZ方向で重なり合っている。
【0037】
そして、各チャネル列63,64における吐出チャネル71のY方向の内側端部同士は、Z方向の他端部(第2主面52b側)において、X方向から見て互いに重なり合っている。この場合、アクチュエータプレート52の第2主面52b上において、各チャネル列63,64の吐出チャネル71同士がX方向で重なり合う領域は、吐出側ラップ領域R1を構成している。
一方、
図4、
図6に示すように、各チャネル列63,64におけるダミーチャネル72のY方向の内側端部同士は、Z方向の一端部(第1主面52a側)において、X方向から見て互いに重なり合っている。この場合、アクチュエータプレート52の第1主面52a上において、各チャネル列63,64のダミーチャネル72同士がX方向で重なり合う領域は、ダミー側ラップ領域R2を構成している。
【0038】
図3〜
図6に示すように、アクチュエータプレート52の駆動壁65のうち、各吐出チャネル71に面する内側面(吐出チャネル71の内面のうち、Y方向で対向する面)には、個別電極73がそれぞれ形成されている。これら個別電極73は、Z方向における幅が吐出チャネル71の半分程度とされ、各吐出チャネル71の内側面において、Z方向の一端縁から中間部分に至る範囲に形成されている。なお、個別電極73は、Y方向における長さが吐出チャネル71の中間部67と同等(第1主面52a上における吐出チャネル71の開口長と同等)とされている。
【0039】
図4、
図6に示すように、アクチュエータプレート52における第1主面52a上の尾部70A,70Bには、個別電極73と、後述するフレキシブルプリント基板80,81の個別電極用配線82と、を電気的に接続する複数の個別配線74が形成されている。個別配線74は、Y方向に沿って互いに平行に延在する帯状とされ、そのY方向の内側端部が吐出チャネル71の個別電極73に接続されるとともに、吐出チャネル71に対してY方向の外側に向けて引き出されている。すなわち、個別配線74は、各吐出チャネル71の個別電極73ごとに電気的に分離されるとともに、各チャネル列63,64間で互いにY方向の逆向きに引き出されている。
【0040】
また、
図3、
図5、
図6に示すように、アクチュエータプレート52の駆動壁65のうち、各ダミーチャネル72の内面には、共通電極75が形成されている。これら共通電極75は、Z方向における幅がダミーチャネル72の半分程度とされ、各ダミーチャネル72の内面のうち、Y方向で対向する内側面及び切り上がり部68の底面上において、Z方向の一端縁から中間部分に至る範囲に形成されている。
【0041】
ここで、
図4、
図6に示すように、アクチュエータプレート52の第1主面52a上には、共通電極75と、フレキシブルプリント基板80,81の共通電極用配線83と、を電気的に接続する共通配線76が形成されている。共通配線76は、Z方向から見た平面視でH字状を呈し、各共通電極75にまとめて接続される接続配線77と、接続配線77を尾部70A,70Bまで引き出す複数の引出配線78と、を有している。
【0042】
接続配線77は、アクチュエータプレート52の第1主面52a上において、各チャネル列63,64の間に位置する部分をX方向に沿って直線状に延在している。具体的に、接続配線77は、上述したダミー側ラップ領域R2上を延在し、各ダミーチャネル72のY方向の内側端部との交差部分において、ダミーチャネル72の共通電極75に接続されている。接続配線77におけるY方向の幅は、少なくともダミー側ラップ領域R2上に形成されていれば、隣り合うチャネル列63,64における吐出チャネル71間の第1主面52a上での離間距離よりも狭い範囲で適宜設計変更が可能である。この場合、図示の例において、接続配線77におけるY方向の幅は、ダミー側ラップ領域R2よりも広くなっている。なお、接続配線77は、X方向の両端部が各チャネル列63,64よりもX方向の外側に位置している。
【0043】
各引出配線78は、接続配線77の両端部からY方向の両側に向けてそれぞれ延在している。各引出配線78におけるY方向の外側端部は、尾部70A,70B上にそれぞれ位置している。
【0044】
図4に示すように、アクチュエータプレート52の第1主面52a上において、第1尾部70Aには、第1フレキシブルプリント基板(第1外部配線)80が実装されている。第1フレキシブルプリント基板80には、第1チャネル列63側の個別電極73に各別に接続される複数の個別電極用配線82と、共通電極75に接続される共通電極用配線83と、が形成されている。
【0045】
個別電極用配線82は、第1尾部70Aにおいて第1チャネル列63側の各個別配線74に各別に接続され、各個別配線74を介して個別電極73を駆動電位Vddとする。共通電極用配線83は、各引出配線78のうち、第1尾部70Aに引き出された引出配線78に接続され、共通配線76を介して各共通電極75を基準電位GNDとする。
【0046】
また、アクチュエータプレート52の第1主面52a上において、第2尾部70Bには、第2フレキシブルプリント基板(第2外部配線)81が実装されている。第2フレキシブルプリント基板81は、上述した第1フレキシブルプリント基板80と同様に個別電極用配線82及び共通電極用配線83を有している。第2フレキシブルプリント基板81のうち、個別電極用配線82は、第2チャネル列64側の各個別配線74に各別に接続され、共通電極用配線83は、各引出配線78のうち、第2尾部70Bに引き出された引出配線78に接続されている。
このように、本実施形態において、各チャネル列63,64の個別電極73は、対応するフレキシブルプリント基板80,81の個別電極用配線82に接続されている。一方、共通電極75は、複数の引出配線78を介して各フレキシブルプリント基板80,81に接続されている。
【0047】
<ノズルプレート>
図3に示すように、ノズルプレート51は、厚みが50μm程度のポリイミド等のフィルム材からなり、アクチュエータプレート52の第1主面52a上に接着されている。なお、ノズルプレート51は、Y方向における幅がアクチュエータプレート52よりも狭くなっており、アクチュエータプレート52におけるY方向の外側端部(尾部70A,70B)を露出させている。そして、アクチュエータプレート52のうち、ノズルプレート51から露出した部分に上述したフレキシブルプリント基板80,81がそれぞれ実装されている。
【0048】
ノズルプレート51には、X方向に間隔をあけて並設された複数のノズル孔(第1ノズル孔85及び第2ノズル孔86)からなるノズル列(第1ノズル列87及び第2ノズル列88)が2列配設されている。
【0049】
第1ノズル列87は、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数の第1ノズル孔85を有し、これら第1ノズル孔85がX方向に間隔をあけて一直線上に並んで構成されている。これら第1ノズル孔85は、上述した第1チャネル列63の吐出チャネル71内に連通している。具体的に、第1ノズル孔85は、第1チャネル列63の吐出チャネル71において、Y方向の中央部に位置するように形成され、吐出チャネル71と同ピッチで形成されている。
【0050】
第2ノズル列88は、ノズルプレート51をZ方向に貫通する複数の第2ノズル孔86を有し、上述した第1ノズル列87と平行に配設されている。各第2ノズル孔86は、上述した第2チャネル列64の吐出チャネル71内に連通している。具体的に、第2ノズル孔86は、第2チャネル列64の吐出チャネル71において、Y方向の中央部に位置するように形成され、吐出チャネル71と同ピッチで形成されている。したがって、各ダミーチャネル72は、ノズル孔85,86には連通しておらず、ノズルプレート51によりZ方向の一端側から覆われている。なお、各ノズル孔85,86は、Z方向の一端側に向かうに従い漸次縮径するテーパ状とされている。
【0051】
<カバープレート>
図3に示すように、カバープレート53は、各チャネル列63,64を閉塞するようにアクチュエータプレート52の第2主面52b上に接着された板状とされている。
図3、
図6に示すように、カバープレート53には、入口側共通インク室90及び出口側共通インク室(第1出口側共通インク室91a、及び第2出口側共通インク室91b)が形成されている。
【0052】
入口側共通インク室90は、カバープレート53をX方向に沿って延びるスリットとされ、各チャネル列63,64の上述した吐出側ラップ領域R1とZ方向で対向している。そして、入口側共通インク室90は、各チャネル列63,64の吐出チャネル71におけるY方向の内側端部において、各チャネル列63,64の吐出チャネル71内にまとめて連通している。
【0053】
第1出口側共通インク室91aは、カバープレート53をX方向に沿って延びるスリットとされ、第1チャネル列63の吐出チャネル71におけるY方向の外側端部とZ方向で対向している。そして、第1出口側共通インク室91aは、第1チャネル列63の吐出チャネル71におけるY方向の外側端部において、第1チャネル列63の吐出チャネル71内にまとめて連通している。
第2出口側共通インク室91bは、第2チャネル列64の吐出チャネル71におけるY方向の外側端部とZ方向で対向する部分に形成されている。そして、第2出口側共通インク室91bは、第2チャネル列64の吐出チャネル71におけるY方向の外側端部において、第2チャネル列64の吐出チャネル71内にまとめて連通している。
【0054】
したがって、入口側共通インク室90及び各出口側共通インク室91a,91bは、それぞれ各吐出チャネル71に連通する一方、ダミーチャネル72には連通していない。
【0055】
[プリンタの動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、記録紙Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環手段6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0056】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、搬送手段2,3のグリッドローラ11,13が回転することで、これらグリッドローラ11,13及びピンチローラ12,14間に記録紙Pを搬送方向(X方向)に向けて搬送する。また、これと同時に駆動モータ38がプーリ35,36を回転させて無端ベルト37を動かす。これにより、キャリッジ33がガイドレール31,32にガイドされながらY方向に往復移動する。
そしてこの間に、各インクジェットヘッド5より4色のインクを記録紙Pに適宜吐出させることで、文字や画像等の記録を行うことができる。
【0057】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のようなサイドシュートタイプのうち、循環式のインクジェットヘッド5では、まず
図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、入口側共通インク室90を通り、各チャネル列63,64の吐出チャネル71内に供給される。また、各吐出チャネル71内のインクは、各出口側共通インク室91a,91b内に流入し、その後インク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0058】
そして、キャリッジ33(
図1参照)によって往復移動が開始されると、個別電極73を駆動電位Vddとし、共通電極75を基準電位GNDとして各電極73,75間に電圧を印加する。すると、吐出チャネル71を画成する2つ駆動壁65に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁65が吐出チャネル71にダミーチャネル72側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート52は分極方向が一方向であり、電極73,75が駆動壁65のZ方向における中間部分までしか形成されていない。そのため、各電極73,75間に電圧を印加することで、駆動壁65におけるZ方向の中間部分を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル71があたかも膨らむように変形する。
【0059】
このように、2つの駆動壁65の圧電厚み滑り効果による変形によって、吐出チャネル71の容積が増大する。そして、吐出チャネル71の容積が増大したことにより、入口側共通インク室90内に貯留されたインクが吐出チャネル71内に誘導される。そして、吐出チャネル71の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル71の内部に伝播し、この圧力波がノズル孔85,86に到達したタイミングで、電極73,75間に印加した電圧をゼロにする。これにより、駆動壁65が復元し、一旦増大した吐出チャネル71の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル71の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、液滴状のインクがノズル孔85,86を通って外部に吐出されることで、上述したように記録紙Pに文字や画像等を記録することができる。
なお、本実施形態におけるインクを吐出チャネル71の内部に循環させる動作と、吐出チャネル71からインクを吐出する動作は、個別に実施しても、同時に実施しても構わない。
【0060】
[インクジェットヘッドの製造方法]
次に、上述したインクジェットヘッド5の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、アクチュエータプレート52の製造方法を主として説明する。
図7はインクジェットヘッド5の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図8〜
図19は、インクジェットヘッド5の製造方法を説明するための工程図であって、
図8〜
図13は
図6に相当する断面図、
図14〜
図19は
図5に相当する断面図である。
【0061】
図7、
図8、
図14に示すように、まず吐出チャネル71となる凹部95をアクチュエータプレート52に形成する(凹部形成工程(S1))。本実施形態の凹部形成工程(S1)は、ダイシングブレード96を用いた切削加工により凹部95を形成する。具体的には、アクチュエータプレート52に対して第2主面52b側からダイシングブレード96を進入させ、アクチュエータプレート52に所定深さの凹部95を形成する。
【0062】
その後、上述した凹部95の形成をX方向及びY方向に間隔をあけて繰り返し行う。このとき、Y方向で隣り合う凹部95同士を、X方向に半ピッチずらすとともに、Y方向の内側端部同士がX方向から見た側面視で重なり合うように形成する。なお、凹部95は、X方向から見た側面視でダイシングブレード96の曲率半径に倣った円弧状とされるとともに、Z方向における深さがアクチュエータプレート52を貫通させない程度の深さになっている。
【0063】
次に、
図7、
図9、
図15に示すように、アクチュエータプレート52の第2主面52b上にカバープレート53を接合する(カバープレート接合工程(S2))。具体的には、入口側共通インク室90が各凹部95におけるY方向の内側端部でまとめて連通し、かつ各出口側共通インク室91a,91bがX方向で隣り合う凹部95におけるY方向の外側端部でそれぞれ連通するように、カバープレート53をアクチュエータプレート52に接合する。
【0064】
続いて、
図7、
図10、
図16に示すように、凹部95がアクチュエータプレート52を貫通するように、アクチュエータプレート52を第1主面52a側から研削する(研削工程(S3))。これにより、アクチュエータプレート52に吐出チャネル71が形成される。
【0065】
次に、
図7、
図11、
図17に示すように、アクチュエータプレート52の第1主面52a上に、後述する電極形成工程(S6)で用いるマスク97を形成する(マスク形成工程(S4))。具体的には、まずアクチュエータプレート52の第1主面52a上に、感光性ドライフィルム等からなるマスク材料を貼り付ける。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングすることにより、マスク材料のうち、各個別配線74及び共通配線76の形成領域、並びに吐出チャネル71の第1主面52a側の開口部に相当する部分のマスク材料を除去する。なお、マスク形成工程(S4)では、マスク材料のうち、ダミーチャネル72の第1主面52a側の開口部に相当する部分のマスク材料を除去しても構わない。
【0066】
続いて、
図7、
図12、
図18に示すように、アクチュエータプレート52に対してダミーチャネル72を形成する(ダミーチャネル形成工程(S5))。ダミーチャネル形成工程(S5)は、上述した凹部形成工程(S1)と同様に、ダイシングブレード96を用いた切削加工等により行う。具体的には、アクチュエータプレート52のうち、吐出チャネル71に対してX方向の両側に位置する部分に第1主面52a側からダイシングブレード96を進入させる。これにより、吐出チャネル71及びダミーチャネル72がX方向に交互に並んで形成される。なお、本実施形態において、ダイシングブレード96は、アクチュエータプレート52をZ方向で貫通する位置まで進入させる。
【0067】
次に、
図7、
図13、
図19に示すように、アクチュエータプレート52に対して個別電極73及び共通電極75、並びに個別配線74及び共通配線76を形成する(電極形成工程(S6))。具体的には、斜め蒸着法等により、Z方向に対してX方向に傾斜する方向からアクチュエータプレート52の第1主面52a側に向けて電極材料を蒸着する。すると、アクチュエータプレート52の第1主面52a上、及び吐出チャネル71及びダミーチャネル72の内面上に、マスク97の開口部を通して電極材料が成膜される。これにより、アクチュエータプレート52の第1主面52a上に個別配線74及び共通配線76が形成されるとともに、各チャネル71,72のZ方向における中間部分から一端縁に至る部分に個別電極73及び共通電極75がそれぞれ形成される。
【0068】
次に、
図7に示すように、アクチュエータプレート52の第1主面52a上に形成されたマスク97を除去する(リフトオフ工程(S7))。
その後、
図5〜
図7に示すように、アクチュエータプレート52の第1主面52a上にノズルプレート51を接合する(ノズルプレート接合工程(S8))。
さらに、アクチュエータプレート52の尾部70A,70Bのうち、ノズルプレート51から露出した部分にフレキシブルプリント基板80,81を実装する。
以上により、本実施形態のインクジェットヘッド5が作製される。
【0069】
このように、本実施形態では、個別電極73がアクチュエータプレート52の第1主面52a上の尾部70A,70Bに個別配線74を介して引き出され、共通電極75がアクチュエータプレート52の第1主面52a上でダミー側ラップ領域R2を介して共通配線76に接続されている構成とした。
この構成によれば、各チャネル列63,64の個別配線74がY方向で互いに逆方向に引き出されているため、同一方向に引き出す場合と異なり、一方のチャネル列63,64の個別配線74が共通配線76や、他方のチャネル列63,64のダミーチャネル72と交差することがない。さらに、共通配線76がダミー側ラップ領域R2上を延在し、ダミー側ラップ領域R2で共通電極75に接続されるため、共通電極75と共通配線76とを接続する引き回し部分を共通配線76に形成する必要がない。
したがって、高密度記録化等を図った上で、配線パターンの簡素化及び製造効率の向上を実現できる。
【0070】
しかも、本実施形態では、共通配線76が引出配線78を介して各フレキシブルプリント基板80,81に接続されているため、共通配線76のインピーダンスを抑制できる。
【0071】
また、本実施形態では、各チャネル列63,64の吐出チャネル71及びダミーチャネル72が千鳥状に配列されているため、印刷時のドットのピッチをより狭くすることが可能になり、更なる高密度記録化を図ることができる。
【0072】
さらに、隣り合うチャネル列63,64間において、Y方向で対向する吐出チャネル71及びダミーチャネル72の切り上がり部66,68同士がZ方向で重なり合う位置に相互に近接配置されているため、アクチュエータプレート52のY方向への小型化が可能となる。この場合、例えば複数のアクチュエータプレート52をウエハレベルで一括して作成し、最後に各アクチュエータプレート52毎に分割する場合には、1枚のウエハから作成できるアクチュエータプレート52の取り個数も増加できる。そのため、インクジェットヘッド5の低コスト化を実現できる。
【0073】
さらに、ダミーチャネル72におけるY方向の内側に位置する切り上がり部68の一部が、ダミー側ラップ領域R2に位置しているため、共通電極75と共通配線76とが滑らかに接続されることになる。これにより、共通電極75及び共通配線76間の安定した導通を確保できる。
【0074】
そして、本実施形態のプリンタ1では、上述したインクジェットヘッド5を備えているため、高密度記録化に対応できるとともに、信頼性に優れたプリンタを提供できる。
【0075】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。
【0077】
また、上述した実施形態では、ノズル列87,88がそれぞれX方向に沿って直線状に延在している場合について説明したが、これに限らず、例えばノズル列87,88が斜めに延在していてもよい。
また、ノズル孔85,86の形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
また、上述した実施形態では、各チャネル列63,64間において、吐出チャネル71同士及びダミーチャネル72同士が半ピッチずれた千鳥状に配列された構成について説明したが、これに限られない。吐出チャネル71同士及びダミーチャネル72同士が、X方向で異なる位置に形成されていれば構わない。
さらに、上述した実施形態では、吐出チャネル71同士及びダミーチャネル72同士が半ピッチずれた構成について説明したが、これに限らず、各チャネル列63,64の少なくともダミーチャネル72同士がY方向で重ならない構成であれば構わない。すなわち、各チャネル列63,64の吐出チャネル71同士は、Y方向で重なる構成であっても構わない。
【0078】
さらに、上述した実施形態では、ノズル列87,88が二列並んだ二列タイプのインクジェットヘッド5について説明したが、これに限らず、三列以上の複数列のノズル列を有するインクジェットヘッド5としてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、サイドシュートタイプのうち、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクが循環する循環式について説明したが、これに限られない。
また、上述した実施形態では、切り上がり部66,68を円弧状に形成した場合について説明したが、これに限らず、Y方向の中央部から内側端部に向かうに従い傾斜して延在していれば構わない。
【0080】
さらに、上述した実施形態では、分極方向が厚さ方向に一方向のアクチュエータプレート52を用いた場合について説明したが、これに限られない。例えば、分極方向が異なる2枚の圧電体を積層した、いわゆるシェブロン方式のアクチュエータプレート52を用いても構わない。この場合には、無電解めっき等を用いて、吐出チャネル71及びダミーチャネル72のうち、Z方向の全体に亘って電極73,75を形成することが好ましい。
【0081】
また、上述した実施形態では、共通配線76が複数の引出配線78を介して各フレキシブルプリント基板80,81に接続された構成について説明したが、これに限らず、少なくとも一方のフレキシブルプリント基板80,81に接続されていれば構わない。
さらに、上述した実施形態では、引出配線78がチャネル列63,64に対してX方向の外側に配置された構成について説明したが、これに限らず、引出配線78の位置は個別配線74と交差しない位置であれば適宜設計変更が可能である。
【0082】
また、各電極73,75や配線74,76のうち、少なくとも個別電極73等のインクが接する部分に個別電極73を被覆するパリレン(登録商標)等の絶縁膜を形成しても構わない。
この構成によれば、インクを介して各電極73,75が短絡するのを抑制できるため、水性インク等の導電性を有するインクを用いる等、汎用性を向上させることができる。
【0083】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。