特許第6314095号(P6314095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6314095
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
   B24D 15/02 20060101AFI20180409BHJP
【FI】
   B24D15/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-24953(P2015-24953)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147337(P2016-147337A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年9月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515039281
【氏名又は名称】黒崎 実
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 実
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03975868(US,A)
【文献】 実開昭58−136246(JP,U)
【文献】 米国特許第02626489(US,A)
【文献】 実開昭58−140049(JP,U)
【文献】 独国実用新案第20020934(DE,U1)
【文献】 中国実用新案第204819210(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 15/00−15/10
9/00− 9/10
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が片手で把持可能に形成された厚板矩形状の保持具本体と、
前記保持具本体に、鉛直方向所定間隔置きに、長手方向に沿って、互いに平行となるようにスリット状に設けられている複数の係止溝と、を有し、
前記複数の係止溝には、夫々、前記係止溝より前記長手方向と直交する一方向から突出している研磨シートの一部を、使用者が、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、前記一方向と相反する他方向に折り曲げて前記保持具本体の下面に当接させ、これにより、ワークの被研磨面に当接できるように係止可能であるとともに、前記保持具本体の下面に当接されている当該研磨シートの一部が、使用者によって、前記他方向に引っ張られると、当該研磨シートがそれに伴い前記係止溝内を前記長手方向と直交する一方向にスライドし、もって、該係止溝より当該研磨シートの一部とは異なる当該研磨シートの別の一部の一端が、前記係止溝より前記長手方向と直交する一方向から新たに突出し、該新たに突出した研磨シートの別の一部の一端を、使用者が、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、前記他方向に折り曲げて前記保持具本体の下面に当接させることにより、該研磨シートの別の一部の一端が前記研磨シートの一部に代わってワークの被研磨面に当接できるように係止可能であり、
前記他方向に引っ張られた前記研磨シートの一部と、前記係止溝より前記長手方向と直交する他方向から突出している研磨シートの別の一部の他端とは、前記保持具本体と共に、使用者が片手で把持可能である保持具。
【請求項2】
前記複数の係止溝には、夫々、異なる粗さの研磨シートが係止されてなる請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記被研磨面に対向する前記保持具本体の面には、クッション材が設けられてなる請求項1又は2に記載の保持具。
【請求項4】
前記研磨シートの幅と前記係止溝の溝深さが同一である請求項1〜3の何れか1項に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パテ研ぎ作業の荒研摩や、面出し作業等に使用される研磨シートを複数枚保持可能な保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、金型の表面研磨の他、金属・木材・セラミック等の仕上げ、溶接仕上げ、自動車板金塗装の仕上げ、錆落とし等には、サンドペーパ等の研磨シートを用いて手作業にて研磨、仕上げ作業を行うことが多い。そしてこのような作業を行う際、研磨シートを確実に固定し保持できるように、例えば、特許文献1に記載のような保持具が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような保持具は、1枚の研磨シートしか固定し保持することができず、異なる粗さの研磨シートや、あるいは、複数の研磨シートを使用するような場合、その度に研磨シートを交換しなければならず作業性が非常に悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、作業性が格段に向上する保持具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明に係る保持具によれば、使用者が片手で把持可能に形成された厚板矩形状の保持具本体(10)と、
前記保持具本体(10)に、鉛直方向所定間隔置きに、長手方向に沿って、互いに平行となるようにスリット状に設けられている複数の係止溝(10a)と、を有し、
前記複数の係止溝(10a)には、夫々、前記係止溝(10a)より前記長手方向と直交する一方向(左方向)から突出している研磨シート(S)の一部(Sa)を、使用者が、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、前記一方向(左方向)と相反する他方向(右方向)に折り曲げて前記保持具本体(10)の下面に当接させ、これにより、ワーク(K)の被研磨面(Ka)に当接できるように係止可能であるとともに、前記保持具本体(10)の下面に当接されている当該研磨シート(S)の一部(Sa)が、使用者によって、前記他方向(右方向)に引っ張られると、当該研磨シート(S)がそれに伴い前記係止溝(10a)内を前記長手方向と直交する一方向(左方向)にスライドし、もって、該係止溝(10a)より当該研磨シート(S)の一部(Sa)とは異なる当該研磨シート(S)の別の一部(Sb)の一端が、前記係止溝(10a)より前記長手方向と直交する一方向(左方向)から新たに突出し、該新たに突出した研磨シート(S)の別の一部(Sb)の一端を、使用者が、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、前記他方向(右方向)に折り曲げて前記保持具本体(10)の下面に当接させることにより、該研磨シート(S)の別の一部(Sb)の一端が前記研磨シート(S)の一部(Sa)に代わってワーク(K)の被研磨面(Ka)に当接できるように係止可能であり、
前記他方向(左方向)に引っ張られた前記研磨シート(S)の一部(Sa)と、前記係止溝(10a)より前記長手方向と直交する他方向(左方向)から突出している研磨シート(S)の別の一部(Sb)の他端とは、前記保持具本体(10)と共に、使用者が片手で把持可能であることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明に係る保持具によれば、上記請求項1に記載の保持具において、 前記複数の係止溝(10a)には、夫々、異なる粗さの研磨シート(S)が係止されてなることを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項3の発明に係る保持具によれば、上記請求項1又は2に記載の保持具において、前記被研磨面(Ka)に対向する前記保持具本体(10)の面には、クッション材(11)が設けられてなることを特徴としている。
【0010】
そして、請求項4の発明に係る保持具によれば、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の保持具において、前記研磨シート(S)の幅(W1)と前記係止溝(10a)の溝深さ(D1)とが同一であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1の発明によれば、使用者が片手で把持可能である厚板矩形状の保持具本体(10)に、鉛直方向所定間隔置きに、長手方向に沿って、互いに平行となるようにスリット状に設けられている複数の係止溝(10a)に夫々係止溝(10a)より長手方向と直交する方向(左方向)から突出している研磨シート(S)の一部(Sa)又は別の一部(Sb)を、使用者によって、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、一方向(左方向)と相反する他方向(右方向)に折り曲げてワーク(K)の被研磨面(Ka)に当接できるように係止させているから、研磨シート(S)をわざわざ交換せずとも、使用したい研磨シート(S)の一部(Sa)又は別の一部(Sb)を、使用者が、鉛直方向下向きに折り曲げ、且つ、一方向(左方向)と相反する他方向(右方向)に折り曲げてワーク(K)の被研磨面(Ka)に当接させるだけで研磨作業を行うことができ、もって、作業性が格段に向上することとなるとともに、研磨シート(S)のスライド動作を繰り返せば、研磨シート(S)を全て使用することができることとなる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、上記複数の係止溝(10a)に夫々異なる粗さの研磨シート(S)を係止させているから、異なる粗さの研磨シート(S)を使用とした際、わざわざ交換せずとも、使用したい研磨シート(S)をワーク(K)の被研磨面(Ka)に当接させるだけで研磨作業を行うことができ、もって、作業性が格段に向上することとなる。
【0014】
さらに、請求項3の発明によれば、クッション材(11)が、ワーク(K)の被研磨面(Ka)と対向する保持具本体(10)の面に設けられているから、当該クッション材(11)のクッション力によって研磨シート(S)と被研磨面(Ka)との間に生じる摩擦抵抗が緩和され、もって、研磨作業がし易くなる。
【0015】
そして、請求項4の発明によれば、研磨シート(S)の幅(W1)と、係止溝(10a)の溝深さ(D1)とを同一にすることによって、研磨シート(S)の使用部分全面を用いて被研磨面(Ka)を研磨することができ、もって、研磨シート(S)を無駄なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る保持具の斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
図2】(a)は同実施形態に係る保持具に複数の研磨シートを係止させた際の斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
図3】同実施形態に係る保持具に複数の研磨シートを係止させた際の正面図を示し、(a)は下段に位置する研磨シートを折り曲げた際の正面図、(b)は(a)の状態でワークの被研磨面を研磨する際の正面図、(c)は下段に位置する研磨シートを引っ張っている正面図、(d)は(c)の状態でワークの被研磨面を研磨する際の正面図を示す図である。
図4】(a)は同実施形態に係る保持具に複数の研磨シートを係止させた際の正面図を示し、(b)は(a)の状態から中段に位置する研磨シートを折り曲げた際の正面図、(c)は(a)の状態から上段に位置する研磨シートを折り曲げた際の正面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る保持具の一実施形態を、図1図4を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
本実施形態に係る保持具1は、図1(a)に示すように、厚板長方形状の保持具本体10を備えている。この保持具本体10は、木材等で形成され、図1(a)及び図1(b)に示すように、鉛直上向きに向って所定間隔置きに、長手方向に沿って、互いに平行となるようにスリット状の係止溝10aが複数(図示では、3つ)設けられている。この係止溝10aには、図2(a)に示すように、柔軟性のある例えば紙製の基布の片面に砥粒を塗布しているサンドペーパ等からなる研磨シートSが、それぞれ係止できるようになっており、矢印P1に示すように、前後方向(左右方向)に移動可能(スライド可能)となっている。なお、これら研磨シートSの粗さはそれぞれ異なっており、例えば、下段に位置する研磨シートSの粗さが#180、中段に位置する研磨シートSの粗さが#240、上段に位置する研磨シートSの粗さが#320となっている。
【0019】
ところで、このような研磨シートSの幅W1(図2(a)参照,例えば、30mm)と、係止溝10aの溝深さD1(図2(b)参照,例えば、30mm)とは同一となっている。このようにすれば、研磨シートSの使用部分全面を無駄なく使用することができるためである。なお、詳細は後述することとする。
【0020】
一方、図1及び図2に示すように、保持具本体10の底部には、クッション力を備える樹脂性のクッション材11が接着剤等により固着されている。
【0021】
かくして、このように構成される保持具1は、図3及び図4に示すように使用される。まず、図3を用いて、保持具本体10の複数の係止溝10aにそれぞれ係止されている研磨シートSのうち、下段に位置する研磨シートSを例に使用例を説明する。
【0022】
図3(a)に示すように、下段に位置する研磨シートSを使用するにあたっては、係止溝10aより突出している研磨シートSの一部Sa(図3(a)の仮想線参照)を矢印P2方向に折り曲げ、当該研磨シートSの一部Saをクッション材11に当接させる。
【0023】
この状態で、図3(b)に示すように、使用者Hが片手で、係止溝10aより図示左右方向から突出している上段に位置する研磨シートSの一部及び中段に位置する研磨シートSの一部並びに下段に位置する研磨シートSの一部(図示右部分のみ)と共に、保持具本体10を把持し、金属・木材・セラミック等のワークKの被研磨面Kaに、クッション材11に当接された研磨シートSの一部Saを当接させる。これにより、保持具本体10を、矢印P3に示すように、前後方向(左右方向)に移動させれば、研磨シートSの砥粒にて被研磨面Kaを研磨することができ、もって、ワークKの仕上げ等の作業を行うことができる。この際、クッション材11が、ワークKの被研磨面Kaと対向する位置に保持具本体10に固着されているから、当該クッション材11のクッション力によって研磨シートSと被研磨面Kaとの間に生じる摩擦抵抗が緩和され、もって、研磨作業がし易くなる。また、このような作業を行うにあたって、クッション材11に当接された研磨シートSの一部Saによって被研磨面Kaを研磨することとなるが、研磨シートSの幅W1(図2(a)参照)と、係止溝10aの溝深さD1(図2(b)参照)とを同一にすることによって、研磨シートSの一部Saの全面がクッション材11に密着されることとなる。それゆえ、研磨シートSの一部Saの全面を使って被研磨面Kaを研磨することができ、もって、研磨シートSを無駄なく使用することができることとなる。
【0024】
ところで、このような作業をしている際、上記研磨シートSの一部Saに代え、当該研磨シートSの別の箇所を使用する場合は、図3(c)に示すように、上記研磨シートSの一部Saを矢印P4方向、すなわち、図示右方向に引っ張れば良い。これにより、当該研磨シートSがそれに伴い移動(スライド)し、もって、研磨シートSの別の一部Sbがクッション材11に当接される。この状態で、図3(d)に示すように、使用者Hが片手で、係止溝10aより図示左右方向から突出している上段に位置する研磨シートSの一部及び中段に位置する研磨シートSの一部並びに下段に位置する研磨シートSの一部Saと共に、保持具本体10を把持し、ワークKの被研磨面Kaに、クッション材11に当接された研磨シートSの別の一部Sbを当接させ、矢印P5に示すように、前後方向(左右方向)に移動させれば、研磨シートSの砥粒にて被研磨面Kaを研磨することができ、もって、ワークKの仕上げ等の作業を行うことができる。
【0025】
かくして、このように、図3(c)及び図3(d)に示すような動作を繰り返せば、下段に位置する研磨シートSを全て使用することができることとなる。
【0026】
一方、保持具本体10の複数の係止溝10aにそれぞれ係止されている研磨シートSのうち、中段に位置する研磨シートSを使用するにあたっては、図4(a)に示すように、係止溝10aより突出している研磨シートSの一部Sa1を矢印P6方向に折り曲げる。これにより、下段に位置する研磨シートSの一部Saも合せて折り曲げられ、もって、図4(b)に示すように、仮想線で示す研磨シートSの一部Sa1,研磨シートSの一部Saの位置から、実線で示す位置に移動することとなる。すなわち、下段に位置する研磨シートSの一部Saがクッション材11に当接されるように折り曲げられ、さらに、中段に位置する研磨シートSの一部Sa1が、その下段に位置する研磨シートSの一部Saに当接されるように折り曲げられることとなる。
【0027】
この状態で、図3(b)に示すものと同様に、使用者Hが片手で、係止溝10aより図示左右方向から突出している上段に位置する研磨シートSの一部及び中段に位置する研磨シートSの一部(図示右部分のみ)並びに下段に位置する研磨シートSの一部(図示右部分のみ)と共に、保持具本体10を把持し、ワークKの被研磨面Kaに、中段に位置する研磨シートSの一部Sa1を当接させ、前後方向(左右方向)に移動させれば、中段に位置する研磨シートSの砥粒にて被研磨面Kaを研磨することができ、もって、下段に位置する研磨シートSとは異なる粗さの研磨シートSにてワークKの仕上げ等の作業を行うことができる。なお、中段に位置する研磨シートSの一部Sa1に代え、当該研磨シートSの別の箇所を使用する際は、図3(c)に示すものと同様に、中段に位置する研磨シートSの一部Sa1を矢印P4方向、すなわち、図示右方向に引っ張れば良い。これにより、中段に位置する研磨シートSも全て使用することができることとなる。
【0028】
他方、保持具本体10の複数の係止溝10aにそれぞれ係止されている研磨シートSのうち、上段に位置する研磨シートSを使用するにあたっては、図4(a)に示すように、係止溝10aより突出している研磨シートSの一部Sa2を矢印P7方向に折り曲げる。これにより、下段に位置する研磨シートSの一部Sa並びに中段に位置する研磨シートSの一部Sa1も合せて折り曲げられ、もって、図4(c)に示すように、仮想線で示す研磨シートSの一部Sa2,研磨シートSの一部Sa1,研磨シートSの一部Saの位置から、実線で示す位置に移動することとなる。すなわち、下段に位置する研磨シートSの一部Saがクッション材11に当接されるように折り曲げられ、さらに、中段に位置する研磨シートSの一部Sa1が、その下段に位置する研磨シートSの一部Saに当接されるように折り曲げられ、そして、上段に位置する研磨シートSの一部Sa2が、その中段に位置する研磨シートSの一部Sa1に当接されるように折り曲げられる。
【0029】
この状態で、図3(b)に示すものと同様に、使用者Hが片手で、係止溝10aより図示右方向から突出している上段に位置する研磨シートSの一部及び中段に位置する研磨シートSの一部並びに下段に位置する研磨シートSの一部と共に、保持具本体10を把持し、ワークKの被研磨面Kaに、上段に位置する研磨シートSの一部Sa2を当接させ、前後方向(左右方向)に移動させれば、上段に位置する研磨シートSの砥粒にて被研磨面Kaを研磨することができ、もって、中段に位置する研磨シートS、或いは、下段に位置する研磨シートSとは異なる粗さの研磨シートSにてワークKの仕上げ等の作業を行うことができる。なお、上段に位置する研磨シートSの一部Sa2に代え、当該研磨シートSの別の箇所を使用する際は、図3(c)に示すものと同様に、上段に位置する研磨シートSの一部Sa2を矢印P4方向、すなわち、図示右方向に引っ張れば良い。これにより、上段に位置する研磨シートSも全て使用することができることとなる。
【0030】
しかして、本実施形態によれば、保持具本体10に設けられている複数の係止溝10aにそれぞれ異なる粗さの研磨シートSをワークKの被研磨面Kaに当接できるように係止させているから、研磨シートをわざわざ交換せずとも、使用したい研磨シートSをワークKの被研磨面Kaに当接させるだけで研磨作業を行うことができ、もって、作業性が格段に向上することとなる。
【0031】
なお、本実施形態においては、保持具本体10に設けられている複数の係止溝10aにそれぞれ異なる粗さの研磨シートSを係止させる例を示したが、それに限らず、同一粗さの研磨シートSを係止させても良い。このようにすれば、同一粗さの研磨シートSを多量に使用した場合であっても、わざわざ交換せずとも良くなり、もって、作業性が格段に向上することとなる。
【0032】
また、本実施形態においては、保持具本体10に設けられている複数の係止溝10aそれぞれに対し、1枚の研磨シートSを係止させる例を示したが、それに限らず、複数枚の研磨シートSを係止させても良い。しかしながら、研磨シートSを移動(スライド)させる際、移動(スライド)させ難くなるため、1枚の研磨シートSを係止させた方が好ましい。
【0033】
さらに、本実施形態においては、保持具本体10に3つの係止溝10aを設ける例を示したが、それに限らず、3つ以上、あるいは、2つ以上の係止溝10aを設けても良い。ただ、係止溝10aを多数設けようとすると保持具本体10自体の高さも高くなっていくため、使用者Hが片手で保持具本体10を把持し、研磨作業を行う際、研磨作業がし難くなるという可能性がある。それゆえ、保持具本体10に設ける係止溝10aとしては、3つ程度が好ましい。
【0034】
一方、保持具本体10に設けられている複数の係止溝10a内には、アクリル板のような当て板を設けても良い。このようにすれば、係止溝10a内を研磨シートSが移動(スライド)する際、当該係止溝10a内で研磨シートSが摩耗してしまう事態を低減させることができる。
【0035】
また、本実施形態にて例示した保持具本体10の形状はあくまで一例であり、どのような形状であっても良い。例えば、ワークWの被研磨面Kaに対向する面のみ平面にし、それ以外の部分を湾曲形状にしても良い。また、傾斜状にしても良い。
【0036】
さらに、本実施形態にて例示した保持具本体10に設けられている複数の係止溝10aの位置は、本実施形態において例示したように、所定間隔置きに設けず、不均一に設けても良く、ワークKの被研磨面Kaに当接できるように研磨シートSを係止できるのであれば、保持具本体10のどの位置に設けても良い。
【0037】
かくして、本実施形態において例示した保持具1は、あくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 保持具
10 保持具本体
10a 係止溝
11 クッション材
S 研磨シート
K ワーク
Ka 被研磨面
図1
図2
図3
図4