【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、極性及び無極性有機溶媒の両方に溶解可能な酸性化合物を含有する、マスティックガムの単離した酸性分画を含む医薬組成物を提供する。本発明の分画は、様々な治療的用途で開発され得る、様々で有益な生物活性を示す。より詳細には、本願では、マスティックガムの単離酸性分画は、神経機能障害、及び関連する神経変性状態の治療(例えば、神経変性状態の回復による)、並びに、脳卒中、組織再生、創傷及び組織修復ななどの治療において、活性を有し、有用であることが開示される。
【0018】
一部の実施形態によれば、本発明は、治療活性を有する、マスティックガムの単離酸性分画から単離された化合物を含む組成物をさらに提供する。一部の実施形態において、組成物は、本発明に記載のマスティックガムの酸性分画で発見された個々の酸性化合物から選択される複数の単離された化合物を含み得る。一部の実施形態によれば、組成物は、マスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、マスチカジエノール酸、イソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピマスチカジエノール酸、3−O−アセチルイソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピ−イソマスチカジエノール酸、オレアノン酸、モロン酸、及び3−オキソ−ルパ−20(29)−エン−28−酸から選択される少なくとも3つの単離された化合物を含む。いくつかの例示的な実施形態において、組成物は、少なくとも、マスチカジエノン酸、イソマスチカジエノン酸、及びオレアノン酸を含む。そのような組成物は、期せずして、相乗効果を示し、それにより、化合物の組み合わせは、個々の化合物のみの場合と比較して、神経機能障害、及び神経変性疾患/状態の治療において、著しく向上した治療効果を示す。
【0019】
本発明の実施形態に係る、マスティックの酸性分画は、従来技術が、極性溶媒のみを使用することを教示するのに対し、その調製が極性溶媒及び無極性溶媒の両方の使用を含むため、従来技術に開示されるマスティック分画と区別され得る。極性溶媒のみを使用することにより調製される酸性分画は、ヘキサンのような極性溶媒に不溶である化合物を含み、そのような化合物は、本発明の酸性分画に存在しない。従って、本発明の分画は、従来技術に開示されるものとは異なる化合物の組み合わせを含む。さらに、本発明の発明者は、本発明の酸性分画が、従来技術で示唆されていない、予期せぬ、広範囲の治療活性を持つことを期せずに発見している。
【0020】
本発明の教示は、極性溶媒に溶解するが、無極性溶媒には溶解せず残るマスティックガム由来の物質を除き、極性溶媒及び無極性溶媒の両方に溶解する酸性分画を得るため、3つのステップの抽出手順により調製されるマスティックガム抽出物を用いて、例示する。別の実施形態において、単離される酸性分画の主要な化合物は、単離され、同定されている。それら化合物のうちいくつかの様々な組み合わせは、様々な神経機能障害(例えば、脳卒中など)の治療、及びアルツハイマー病のような関連する神経変性疾患の治療に、予期せぬ、相乗効果を示す。
【0021】
特定の理論又は作用機構に限定されることを意図せず、本明細書に開示されるマスティックガムの単離酸性分画の活性は、例えば、不十分なシナプス形成に関する病理学の影響を受ける、介在ニューロン接合部の再形成、脳及び神経組織における、欠損を克服した介在ニューロン通信のような神経障害の状態に関する様々な疾患又は状態に対する有用性を本発明に与える。この病理学は、例えば、アルツハイマー病を含む、多くの神経系の病理学の基礎となる。マスティックガムの単離酸性分画の活性が、脳卒中の治療に使用され得ることを示す。本発明は、さらに、創傷の治癒、及び非常に多くの細胞と組織の若返りに有用であり得る。本発明は、動物の寿命を伸ばすことにも有用であり得る。
【0022】
本明細書に開示される分画及び組成物の生物活性が、本明細書に開示されるように、始めの2つの抽出ステップを用いることなく、調製される酸性分画に存在する特定の化合物の存在により、阻害されることをさらに理解されたい。
【0023】
一部の実施形態によれば、本発明は、有効量のマスティックガムの単離酸性分画及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供し、分画は、少なくとも1つの極性有機溶媒に溶解し、少なくとも1つの無極性有機溶媒に溶解することを特徴とし、分画は、極性有機溶媒には溶解するが、無極性有機溶媒に不溶な化合物を実質的に含まない。
【0024】
一部の実施形態において、組成物は、
(a)マスティックガムを極性有機溶媒で処理するステップと、
(b)極性有機溶媒で、分画を単離するステップと、
(c)極性有機溶媒を任意に除去するステップと、
(d)無極性有機溶媒を用いて、ステップ(b)又は(c)で得られた溶解した分画を処理するステップと、
(e)無極性有機溶媒に溶解する分画を単離するステップと、
(f)無極性有機溶媒を任意に除去するステップと、
(g)有機溶媒に、ステップ(f)で得られた分画を溶かすステップと、
(h)元となる分画を得るため、塩基性溶液を用いて、ステップ(g)で得られた溶液を処理するステップと、
(i)酸性溶液を用いて、ステップ(h)で得られた塩基性分画を酸性化するステップ
を含む工程により得られる。
【0025】
一部の実施形態において、ステップ(d)〜(f)は、ステップ(a)〜(c)の前に行い得る。
【0026】
一部の実施形態において、ステップ(h)の塩基性溶液を用いた処理(塩基化)は、1つ又は複数の適切な塩基性溶液を用いて、ステップ(g)で得られた溶液を抽出すること、又は塩基性イオン交換樹脂と、ステップ(g)で得られた溶液を接触させることを含む。
【0027】
一部の実施形態において、ステップ(h)の塩基性イオン交換樹脂と、ステップ(g)で得られた溶液を接触させ、その後、濾過により、塩基性イオン交換樹脂を除去することを含む。それら実施形態において、ステップ(i)は、酸性溶液を用いて、塩基性イオン交換樹脂を処理することを含む。
【0028】
一部の実施形態において、工程は、
(j)有機溶媒を用いて、ステップ(i)で得られた酸性化分画を抽出するステップと、
(k)残った水を除去するために、乾燥剤と、ステップ(j)で得られた有機分画を任意に接触するステップと、
(1)ステップ(i)、(j)又は(k)のいずれかで得られた分画から有機溶媒及び/又は過剰の酸を除去するステップと、
(m)担体に、ステップ(l)で得られた端理された分画を溶かすステップ
をさらに含む。
【0029】
一部の実施形態において、ステップ(a)〜(c)は、ステップ(d)〜(f)よりも前に実行されるか、又は、ステップ(d)〜(f)は、ステップ(a)〜(c)よりも前に実行される。一部の実施形態において、ステップ(a)〜(c)及びステップ(d)〜(f)は、多数の周期で繰り返される。
【0030】
一部の実施形態において、ステップ(c)、(f)及び(l)のいずれかは、ロータリーエバポレーション、高真空の利用及びその組み合わせからなる群のから選択される手段により溶媒を除去することを含む。
【0031】
一部の実施形態において、ステップ(h)は、塩基性水溶液を用いて、ステップ(g)で得られた溶液を抽出すること、及び有機分画を収集し、得ることを含む。一部の実施形態において、工程は、ステップ(i)、(j)、又は(k)のいずれかで得られた分画と、ステップ(h)から得られた有機分画を組み合わせることをさらに含む。
【0032】
一部の実施形態において、ステップ(h)で得られた有機分画は、ステップ(i)、(j)、又は(k)のいずれかで得られた分画と、ステップ(h)から得られた有機分画が約0.1%〜約50%の範囲の量で、組み合わせられる。一部の実施形態において、量は、0.5〜50%、2〜25%、又は0.1〜10%の範囲である。
【0033】
本発明での使用に適切な極性有機溶媒は、アルコール、エーテル、エステル、アミド、アルデヒド、ケトン、ニトリル、及びその組み合わせから選択され得る。
【0034】
適切な極性有機溶媒の特定の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−l−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコール、モノメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、フラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、アセトアルデヒド、ギ酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、及びその組み合わせを含む。
【0035】
一部の実施形態において、極性有機溶媒は、メタノール、及びエタノール又はその組み合わせから選択される。
【0036】
一部の実施形態において、極性溶媒は、エタノールである。
【0037】
本発明での使用に適切な無極性有機溶媒は、それぞれ、任意に、1つ又は複数のハロゲンによって置換される非環状又は環状、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、並びにその組み合わせから選択され得る。一部の実施形態において、無極性有機溶媒は、C
5−C
10アルカン、C
5−C
10シクロアルカン、C
6−C
14芳香族炭化水素及びC
7−C
14ペルフルオロアルカン、並びにその組み合わせから選択される。
【0038】
一部の実施形態において、無極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びその同位体並びにその混合物から選択される。
【0039】
一部の実施形態において、C
5−C
10アルカンは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、及びその同位体並びにその混合物からなる群から選択される。
【0040】
一部の実施形態において、無極性有機溶媒は、ヘキサンである。
【0041】
一部の実施形態において、ステップ(g)及びステップ(j)の有機溶媒は、ジアルキルエーテル、アルキル−アリルエーテル、ジアリルエーテル、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、C
5−C
14芳香族炭化水素、C
5−C
14ペルフルオロアルカンからなる群より独立して選択される。
【0042】
一部の実施形態において、ステップ(g)及びステップ(j)の適切な有機溶媒は、同じでも異なっていてもよい。
【0043】
一部の実施形態において、有機溶媒は、ジアルキルエーテルを含む。
【0044】
一部の実施形態において、有機溶媒は、ジエチルエーテルである。
【0045】
一部の実施形態において、極性有機溶媒は、エタノールを含み、無極性有機溶媒は、ヘキサンを含み、有機溶媒は、ジエチルエーテルを含む。
【0046】
一部の実施形態において、ステップ(h)は、塩基性水溶液を用いて塩基性にすることを含む。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、水に無機塩基を溶かすことにより調製される。
【0047】
一部の実施形態において、無機塩基は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及びリン酸カリウムからなる群から選択される。
【0048】
一部の実施形態において、無機塩基は、炭酸ナトリウムである。一部の実施形態において、水中の炭酸ナトリウムの濃度は、2〜20% w/wの範囲である。一部の実施形態において、炭酸ナトリウムの濃度は、3〜15% w/wの範囲である。一部の実施形態において、炭酸ナトリウムの濃度は、約5% w/wである。
【0049】
一部の実施形態において、無機塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0050】
一部の実施形態において、塩基性水溶液は、水に可溶な有機塩基を水に溶かすことにより調製される。
【0051】
一部の実施形態において、初めの無機塩基は、約5% w/wの炭酸ナトリウム水溶液であり、続いて、約4% w/wの水酸化ナトリウム水溶液である。
【0052】
一部の実施形態において、ステップ(h)における塩基化は、ステップ(g)で得られた溶液を塩基性イオン交換樹脂と接触させることを含む。一部の実施形態において、塩基性イオン交換樹脂は、スチレンビニルベンゼン、ポリアクリル又はギ酸フェノール共重合体を含む。
【0053】
一部の実施形態において、溶液の塩基化により、pHが、約7超になる。
【0054】
一部の実施形態において、溶液の塩基化により、pHが、8〜10になる。
【0055】
一部の実施形態において、溶液の塩基化により、pHが、10〜13になる。
【0056】
一部の実施形態において、溶液の塩基化は、pHが13超になる。
【0057】
一部の実施形態において、ステップ(i)における酸性溶液は、酸性水溶液又は酸性非水溶液を含む。
【0058】
一部の実施形態において、ステップ(i)における酸性水溶液は、水に無機酸を溶かすこと、又は濃鉱酸溶液を希釈することにより、調製される。
【0059】
一部の実施形態において、酸性水溶液は、塩酸又はリン酸の溶液である。
【0060】
一部の実施形態において、酸性水溶液は、塩酸の溶液である。一部の実施形態において、ステップ(i)における酸性水溶液は、水に有機酸を溶かすこと、又は濃鉱酸溶液を希釈することにより調製される。
【0061】
一部の実施形態において、酸性化により、pHが約7未満になる。一部の実施形態において、酸性化により、pHが約6未満になる。一部の実施形態において、酸性化により、pHが約5未満になる。一部の実施形態において、酸性化により、pHが約4未満になる。一部の実施形態において、酸性化により、pHが約3未満になる。
【0062】
一部の実施形態において、酸性化により、pHが1〜3の範囲になる。
【0063】
一部の実施形態において、ステップ(i)における酸性非水溶液は、アルコール、エステル、エーテル、アミド、又はその混合物から選択される非水溶有機溶媒に、有機酸を溶かすことにより調製される。
【0064】
一部の実施形態において、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、及びパラ−トルエンスルホン酸からなる群から選択される。
【0065】
一部の実施形態において、ステップ(k)で使用される乾燥剤は、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウムからなる群から選択される。
【0066】
一部の実施形態において、組成物は、当該極性有機溶媒に溶解し、且つ当該無極性有機溶媒に溶解しないテルペン化合物を実質的に含まない。
【0067】
一部の実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して約0.01〜約25%(w/w)のマスティックガムの単離酸性分画を備える。一部の実施形態において、組成物は、組成物の総重量に対して約0.01〜約12%(w/w)のマスティックガムの単離酸性分画を含む。
【0068】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、マスチカジエノール酸、イソマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピマスチカジエノール酸、3−O−アセチルイソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピ−イソマスチカジエノール酸、オレアノン酸、モロニック酸、及び3−オキソ−ルパ−20(29)−エン−28−酸のうち少なくとも1つを含む。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0069】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、オレアノール酸、ウルソン酸、及びウルソール酸のうち少なくとも1つをさらに含む。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0070】
一部の実施形態において、単離酸性分画はマスチカジエノン酸を実質的に含まない。
【0071】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、精油を実質的に欠き得る。
【0072】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、少なくとも1つのテルペン酸を含む。
【0073】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む。
【0074】
一部の実施形態において、少なくとも1つのテルペン酸は、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む。一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、マスチカジエノール酸、イソマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピマスチカジエノール酸、3−O−アセチルイソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピ−イソマスチカジエノール酸、オレアノン酸、モロニック酸、3−オキソ−ルパ−20(29)−エン−28−酸、及びその混合物からなる群から選択される。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0075】
一部の実施形態において、少なくとも1つのテルペン酸は、単量体型である。一部の実施形態において、少なくとも1つのテルペン酸は、オリゴマー型である。一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体、三量体、及びその組み合わせからなる群から選択される。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0076】
一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体である。
【0077】
一部の実施形態において、オリゴマー型は、三量体である。
【0078】
一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、単量体型である。一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、オリゴマー型である。一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体、三量体及びその組み合わせからなる群から選択される。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0079】
一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体である。
【0080】
一部の実施形態において、オリゴマー型は、三量体である。
【0081】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、単量体及び二量体トリテルペン酸の組み合わせを含む。一部の実施形態において、単離酸性分画は、単量体、二量体、及び三量体のトリテルペン酸の組み合わせを含む。
【0082】
一部の実施形態において、組成物は、マスチカジエノール酸、イソマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピマスチカジエノール酸、3−O−アセチルイソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピ−イソマスチカジエノール酸、オレアノン酸、モロニック酸、及び3−オキソ−ルパ−20(29)−エン−28−酸のうち少なくとも1つを含む。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0083】
一部の実施形態において、組成物は、オレアノール酸、ウルソン酸、及びウルソール酸のうち少なくとも1つをさらに含む。それぞれの実現性は、それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0084】
一部の実施形態において、組成物は、少なくとも1つのテルペン酸を含む。テルペン酸の実施形態は、本明細書に前述している。
【0085】
一部の実施形態において、組成物は、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む。トリテルペン酸の実施形態は、本明細書に前述している。
【0086】
一部の実施形態において、組成物は、マスチカジエノン酸を実質的に含まない。
【0087】
一部の実施形態において、マスティックガムは、ウルシ科に属する植物に由来する。適切な植物は、カイノキ属、マツ属、トウヒ属、ビャクシン属、アルシエス属、カラマツ属、キンギョソウ属、ボスウェリア属、ミカン属及びサンシチソウ属から選択される属に分類されるものを含む。
【0088】
一部の実施形態において、適切な植物は、カイノキ属から選択される。
【0089】
一部の実施形態において、カイノキ属の種は、P. lentiscus、P. atlantica、P. palestina、P. saportae、P. terebinthusm、P. vera、及びP. integerrimaからなる群から選択される。
【0090】
一部の実施形態において、カイノキ属の種は、Pistacia lentiscus Lである。
【0091】
一部の実施形態において、単離酸性分画は、樹脂、葉、小枝、根、花、種子、芽、樹皮、木の実、及び根からなる群から選択される植物物質に由来する。
【0092】
一部の実施形態において、マスティックガムの単離酸性分画は、
(a)極性有機溶媒を用いて、マスティックガムを処理するステップと、
(b)その極性有機溶媒に可溶な分画を単離するステップと、
(c)その極性有機溶媒を任意に除去するステップと、
(d)ステップ(b)又は(c)で得られた可溶な分画を無極性有機溶媒を用いて、処理するステップと、
(e)その無極性有機溶媒に可溶な分画を単離するステップと、
(f)その無極性有機溶媒を任意に除去するステップと、
(g)ステップ(f)で得られた分画を有機溶媒に溶かすステップと、
(h)塩基性分画を得るため、ステップ(g)で得られた溶液を、塩基性溶液を用いて処理するステップ
(i)ステップ(i)で得られた塩基性分画を、酸性溶液を用いて酸性化するステップと、
(j)ステップ(i)で得られた酸性化分画を、有機溶媒を用いて、抽出するステップと、
(k)残った水を除去するため、ステップ(k)で得られた有機分画を、任意に乾燥剤と接触させるステップと、
(1)ステップ(i)、(j)、又は(k)のいずれかで得られた分画から有機溶媒及び/又は過剰な酸を除去するステップと、
(m)ステップ(l)で得られた単離された分画を、担体で溶かすステップと、
を含む工程によって得られる。
【0093】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも1つのトリテルペン酸を含む医薬組成物、及び薬学的に許容可能な担体を提供する。一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、マスチカジエノール酸、イソマスチカジエノン酸、イソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピマスチカジエノール酸、3−O−アセチルイソマスチカジエノール酸、3−O−アセチルエピ−イソマスチカジエノール酸、マスチカジエノン酸、オレアノン酸、モロニック酸、3−オキソ−ルパ−20(29)−エン−28−酸、及びその組み合わせからなる群から選択される。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。
【0094】
一部の実施形態によれば、本発明は、医薬品有効成分として、イソマスチカジエノン酸及びマスチカジエノン酸を本質的に含む医薬組成物、及び薬学的に許容可能な担体を提供する。両化合物の組み合わせることにより、個別の化合物の有効性と比較して、神経機能障害(従って、神経変性疾患/状態)の治療の組成物の有効性に関して、効果を向上させる/相乗作用を齎す。
【0095】
イソマスチカジエノン酸及びマスチカジエノン酸のうちいずれか1つは、マスティックガムのような天然資源から単離され得る、又は化学合成による生産物であり得る。
【0096】
一部の実施形態において、イソマスチカジエノン酸とマスチカジエノン酸間の比率は、約1:1 w/wである。
【0097】
一部の実施形態によれば、本発明は、単独の医薬品有効成分として、オレアノン酸、イソマスチカジエノン酸及びマスチカジエノン酸を本質的に含む医薬組成物、及び薬学的に許容可能な担体を提供する。3つの化合物全てを組み合わせることにより、個別の化合物、又はそれら3つの化合物のうち2つのみの混合物の有効性と比較して、神経機能障害の治療、及び神経変性疾患の治療における組成物の有効性に関して、明らかな相乗効果を齎す。
【0098】
オレアノン酸、イソマスチカジエノン酸、及びマスチカジエノン酸のいずれか1つは、マスティックガムのような天然資源から単離され得る、又は化学合成による生産物であり得る。
【0099】
一部の実施形態において、イソマスチカジエノン酸とマスチカジエノン酸とオレアノン酸間の比率は、約1:1:1 w/w/wである。
【0100】
一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、単量体である。一部の実施形態において、組成物は、オレアノン酸及びモロニック酸の単量体を含む。一部の実施形態において、オレアノン酸及びモロニック酸の単量体は、化学合成反応の生産物である。
【0101】
一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、オリゴマー型を含む。一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体、三量体、及びその組み合わせからなる群から選択される。それぞれの実現性は、本発明の個別の実施形態にある。一部の実施形態において、オリゴマー型は、二量体である。
【0102】
一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、化学合成による生産物である。
【0103】
一部の実施形態において、オリゴマー型を含む、少なくとも1つのトリテルペン酸は、化学合成による生産物である。一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、二量体型であり、化学合成による生産物である。
【0104】
一部の実施形態において、少なくとも1つのトリテルペン酸は、特に、植物資源のような、天然資源由来である。
【0105】
一部の実施形態において、組成物は、異なるトリテルペン酸を含み、少なくとも1つのトリテルペン酸は、化学合成による生産物であり、少なくとも1つの他のトリテルペン酸は、植物資源由来である。
【0106】
天然資源は、ウルシ科に分類される植物を含む。適切な植物は、カイノキ属、マツ属、トウヒ属、ビャクシン属、Alsies属、カラマツ属、キンギョソウ属、ボスウェリア属、ミカン属及びサンシチソウ属からなる群から選択される属に分類されるものを含む。
【0107】
一部の実施形態において、適切な植物は、カイノキ属から選択される。
【0108】
一部の実施形態において、カイノキ属の種は、P.lentiscus、P.atlantica、P.palestina、P.saportae、P.terebinthus、P.vera、及びP.integerrimaからなる群から選択される。
【0109】
一部の実施形態において、カイノキ属の種は、Pistacia lentiscus Lである。
【0110】
一部の実施形態において、天然資源は、樹脂、葉、小枝、根、花、種子、芽、樹皮、木の実、及び根からなる群から選択される植物物質である。
【0111】
一部の実施形態において、天然資源は、メボウキ属、ゲッケイジュ属、ラヴァンドゥラ属からなる種に分類される植物である。
【0112】
一部の実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、疎水性の担体を含む。一部の実施形態において、疎水性の担体は、少なくとも1つの油を含む。一部の実施形態において、油は、鉱油、植物油、及びその組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態において、植物油は、綿実油、オリーブ油、アーモンド油、カノーラ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、ブドウ種子油、ピーナッツ油、サフラン油、ゴマ油、大豆油及びその組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態において、鉱油は、軽油である。一部の実施形態において、疎水性の担体は、少なくとも1つのワックスである。一部の実施形態において、疎水性の担体は、少なくとも1つの油と少なくとも1つのワックスの組み合わせを含む。
【0113】
様々な実施形態において、本発明に係る組成物は、非経口、経皮、経口、及び局所からなる群から選択される経路での投与に適した形態である。
【0114】
様々な実施形態において、本発明に係る組成物は、局所投与に適した形態である。
【0115】
様々な実施形態において、本発明に係る組成物は、経口投与に適した形態である。
【0116】
様々な実施形態において、本発明に係る組成物は、非経口投与に適した形態である。
【0117】
一部の実施形態において、組成物は、注入による投与に適した形態である。様々な実施形態において、組成物は、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、動脈内、脳内、脳室内、骨内、及び髄腔内からなる群から選択される経路により投与される非経口製剤である。
【0118】
一部の実施形態において、組成物は、皮下経路により投与される非経口製剤である。
【0119】
様々な実施形態において、組成物は、皮膚、膣、直腸、吸入、鼻腔内、眼、耳及び頬からなる群から選択される経路により投与される製剤である。
【0120】
一部の実施形態において、組成物は、化粧品又は皮膚投与に適した形態である。
【0121】
一部の実施形態において、医薬組成物は、カプセル、錠剤、リポソーム、坐剤、懸濁液、軟膏、クリーム、ローション、溶液、エマルジョン、フィルム、セメント、粉末、接着剤、エアゾール、及びスプレーからなる群から選択される形態である。一部の実施形態において、カプセルは、硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセルからなる群から選択される。一部の実施形態において、エマルジョンは、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンである。
【0122】
一部の実施形態において、製剤は、包接錯体、ナノエマルジョン、マイクロエマルジョン、粉末、脂質ラフト、脂質微粒子、デンドリマー及びリポソームのうち少なくとも1つを含む。一部の実施形態において、包接錯体は、少なくとも1つのシクロデキストリンを含む。一部の実施形態において、少なくとも1つのシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む。一部の実施形態において、ナノエマルジョンは、平均粒子径が800nm未満の液滴を含む。一部の実施形態において、液滴は、500nm未満の平均粒子径を有する。一部の実施形態において、液滴は、200nm未満の平均粒子径を有する。一部の実施形態において、粉末は、噴霧乾燥粉末である。一部の実施形態において、リポソームは、多重層膜リポソームを含む。一部の実施形態において、マイクロエマルジョンは、非イオン界面活性剤を含む。一部の実施形態において、非イオン界面活性剤は、ポリオキシルヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸、エステル(ポリソルベート)、ポロキサマー、ビタミンE誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸、又は飽和ポリグリコール化グリセリド、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0123】
一部の実施形態において、組成物は、被覆材の形態で、製造品に配置される。一部の実施形態において、製造品は、容器を含み、組成物は、容器内に配置される。一部の実施形態において、製造品は、布製品、おむつ、創傷包帯、医療機器、針(単数又は複数)、マイクロニードル(単数又は複数)、注入機器、及び噴霧装置からなる群から選択される。一部の実施形態において、製造品は、複数のマイクロニードルを含む。一部の実施形態において、医療機器は、プロテーゼ、人工臓器又はその構成要素、弁、カテーテル、チューブ、ステント、人工膜、ペースメーカー、センサー、内視鏡、撮像装置、ポンプ、ワイヤー及びインプラントからなる群から選択される。一部の実施形態において、インプラントは、心臓インプラント、人工内耳、角膜移植、頭蓋インプラント、歯科インプラント、顎顔面インプラント、臓器インプラント、整形外科用インプラント、血管インプラント、関節インプラント及び豊胸手術からなる群から選択される。
【0124】
一部の実施形態において、組成物は、エレクトロポレーション、超音波処理、高周波、加圧噴霧及びその組み合わせからなる群から選択される手段による投与に適している。
【0125】
一部の実施形態において、組成物は、神経機能障害の治療に使用される。一部の実施形態において、神経機能障害は、認知機能、感覚機能、運動機能、及びその組み合わせからなる群から選択される機能の低下を含む。一部の実施形態において、神経機能障害は、病状又は疾患に関する。一部の実施形態において、病状又は疾患は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、パーキンソン病、血管性認知症及び老人性痴呆からなる群から選択される。一部の実施形態において、病状は、外傷又は脳卒中である。
【0126】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、統合失調症などの精神疾患、双極性障害又はうつ病である。
【0127】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、肥満、食欲不振、悪液質、感染症及び免疫疾患から選択される。
【0128】
一部の実施形態において、神経機能障害は、麻酔薬等の薬物に晒されることに因る。
【0129】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、脳血管性痴呆、老年性認知症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、パーキンソン病、及び脳卒中からなる群から選択される。
【0130】
一部の実施形態において、病状は、脳卒中である。
【0131】
一部の実施形態において、病状は、外傷である。
【0132】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、血管性認知症、老年性認知症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び多発性硬化症からなる群から選択される。
【0133】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、血管性認知症、老年性認知症、アルツハイマー病、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群から選択される。
【0134】
一部の実施形態において、病状又は疾患は、血管性認知症、老年性認知症、及びアルツハイマー病からなる群から選択される。
【0135】
一部の実施形態において、疾患は、アルツハイマー病である。
【0136】
一部の実施形態において、疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。
【0137】
一部の実施形態において、組成物は、例えば、静脈性下腿潰瘍、圧迫潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、熱傷、切断による創傷、褥瘡(床ずれ)、スプリット皮膚ドナー移植、皮膚移植のドナー部位、医療機器の移植部位、かま傷、凍傷による創傷、刺し傷、榴散弾の傷、皮膚剥離、挫傷、感染症、創傷や手術創を含む皮膚創傷の治療を目的とする。
【0138】
一部の実施形態において、組成物は、組織修復を導く又は促進することを目的とする。本明細書で使用される際、組織修復は、神経組織を含む組織再生を導く及び促進することを包含する。
【0139】
一部の実施形態において、組成物は、怪我又は外傷後の組織修復を導く又は促進することを目的とする。一部の実施形態において、怪我又は外傷は、心筋梗塞、肺塞栓症、脳梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、ヘルニア、脾梗塞、静脈性潰瘍、軸索切断、網膜剥離、感染及び手術からなる群から選択される。
【0140】
一部の実施形態において、組成物は、動物の寿命を延ばすことを導く又は促進するために使用される。一部の実施形態において、動物は、ヒト、ヒト以外の哺乳類、鳥類、及び魚類からなる群から選択される。
【0141】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の説明及び図面より明らかとなるであろう。