特許第6314385号(P6314385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6314385防水加工された皮革製時計バンドおよびそれを備えた腕時計並びに防水加工された皮革製時計バンドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6314385
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】防水加工された皮革製時計バンドおよびそれを備えた腕時計並びに防水加工された皮革製時計バンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/02 20060101AFI20180416BHJP
   A44C 5/10 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   A44C5/02 C
   A44C5/02 F
   A44C5/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2013-161128(P2013-161128)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-29669(P2015-29669A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135759
【氏名又は名称】株式会社バンビ
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修二
(72)【発明者】
【氏名】竹本 健士郎
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−255131(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/087826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/02
A44C 5/10
B68F 1/00−3/04
C14B 1/00−99/00
C14C 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然素材の表面素材と裏面素材と中芯素材とからなる防水加工された皮革製時計バンドであって、
表面素材は、ワニ革(クロコダイル)を染色加脂工程で同時に防水材を含浸させる防水加工を施し、ワニ革の繊維に防水材が吸着し定着しており、
裏面素材および中芯素材も、各々の染色加脂工程で同時に防水材を含浸させる防水加工を施し、同素材中の繊維に防水材が吸着し定着していることを特徴とする防水加工された皮革製時計バンド。
【請求項2】
請求項1記載の皮革製時計バンドを備えたことを特徴とする腕時計。
【請求項3】
天然素材の表面素材と裏面素材と中芯素材とからなる防水加工された皮革製時計バンドの製造方法であって、
表面素材と裏面素材と中芯素材とは、各々の染色加脂工程で同時に防水材を含浸させる防水加工を施し、同素材中の繊維に防水材を吸着し定着させることを特徴とする防水加工された皮革製時計バンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、皮革製の時計バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水加工された皮革製時計バンドに関する先行文献としては、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1に開示された皮革製時計バンドの防水加工技術とは、予め防水処理を施したポリウレタンとポリエステル不織布との積層体よりなる芯材の両面に、同じく防水処理を施した表材と裏材とを重ね合せてバンド体として接着するとともに、接着して一体化したこのバンド体にさらに防水処理を施すことのよって防水性を有する革バンドを構成するようにしたものであり、また、この革バンドの製造方法として、芯材とこの芯材の表裏面に接合する皮革材とをこれぞれ単体の状態で防水処理し、ついで芯材の表裏面に皮革材を重ね合せて接着し、最後に、接着一体化したバンド体に再度防水処理を施すことにより、防水性を有するバンド体を構成するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2835933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の皮革製時計バンドの防水加工技術では、天然素材の皮革について、「また、皮革材2、6として天然皮革を用いた場合には、単体での防水処理段階で、皮革材2、6を引っ張りながらこれらに防水処理を施すことができ、これにより、繊維が複雑にからみ合った皮革材に対してもこれらの各部に等しく防水剤を浸透させることができる。」と記載されているのみである(同明細書[0016])。
【0005】
しかし、爬虫類の中でも「皮革の王様」といわれる「ワニ」、特にクロコダイルの皮革については、繊維が密であり、特許文献1の防水加工技術では、到底使用に耐えうる防水加工は施せない。また、特許文献1の防水加工技術には、数ある皮革の製造工程においてどの段階で防水加工を施すのか全く不明である。
【0006】
これに対して、本願出願人は、これまで技術的に困難とされてきたワニ(特にクロコダイル)素材の防水加工技術の提供を目的とし、本願発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、天然素材の表面素材と裏面素材と中芯素材とからなる防水加工された皮革製時計バンドであって、表面素材は、ワニ革(クロコダイル)を染色加脂工程で同時に防水加工を施し、ワニ革の繊維に防水材が定着しており、裏面素材および中芯素材も、各々の染色加脂工程で同時に防水加工を施し、同素材中の繊維に防水材が定着していることを特徴とするものである。
また、天然素材の表面素材と裏面素材と中芯素材とからなる防水加工された皮革製時計バンドの製造方法であって、表面素材と裏面素材と中芯素材とは、各々の染色加脂工程で同時に防水加工を施し、同素材中の繊維に防水材を定着させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、実際の使用に耐えうる防水加工された皮革製時計バンドを提供できる(吸水率7%前後)。なお、防水加工されていない皮革製時計バンドの場合で吸水率約100%程度、通常の防水加工された皮革製時計バンドの場合で吸水率約20%程度である(自社調べ)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
皮革の製造方法(概略)は、水洗 → 水漬け → 脱鱗 → 鞣し(なめし) → 染色・加脂 → 乾燥 → 仕上げ、となっている。
本願発明は、この「染色・加脂」の工程において、これと同時に「防水加工」を施すものである。
【0010】
本願発明のように、皮革に染色および加脂を施す工程において同時に防水加工を施すことで、皮革素材中の繊維に防水材が強固に定着し、特に、繊維が密であって防水加工のし難いワニ皮に対しても防水材が定着し、革自体が防汚撥水効果を持つ皮革製時計バンドとなるのである。
【0011】
ここで、本願発明の「防水加工」には、専用の防水材(撥水剤)を使用する。この防水材が皮革素材に含浸されて、皮革素材中の繊維に吸着し定着することで、皮革表面による防水・撥水効果ではなく、皮革全体(皮革内部)に防水・撥水効果を発揮されるものとなる。
【0012】
なお、本願発明の「防水加工」された表面素材と裏面素材と中芯素材とを組み合わせて成形された時計バンドに対して、専用のトップ剤を塗布し、最終製品としてもよい。なお、このトップ剤の塗布は「色止め」を目的としたものであって、防水を目的としたものではない。本願発明では、時計バンドを構成する各素材(表面素材と裏面素材と中芯素材)に確実な防水加工を施しているので、これら各素材を組み合わせて成形された時計バンドに対して防水加工(例えば、防水液剤中に浸漬するなど)を施す必要がないのである。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本願発明は、皮革製の時計バンド、特に技術的に困難とされてきたワニ(特にクロコダイル)素材の利用できるものである。また、時計バンドに限らず、バッグその他の革製品に広く利用できるものである。