特許第6314448号(P6314448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6314448
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】作動油温度推定装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20180416BHJP
   F16H 61/12 20100101ALI20180416BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20180416BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20180416BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20180416BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20180416BHJP
【FI】
   F16D25/12 EZHV
   F16H61/12
   B60W10/02 900
   B60W10/30 900
   B60K6/48
   B60K6/547
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-247564(P2013-247564)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105696(P2015-105696A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】藤田 行識
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 浩之
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−129243(JP,A)
【文献】 特開平8−93794(JP,A)
【文献】 特開2012−151995(JP,A)
【文献】 特開2001−99278(JP,A)
【文献】 特開平5−272622(JP,A)
【文献】 特開2014−91520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00,48/00−48/12
F16H 59/00−61/12,61/16−61/24,
61/66−61/70,63/40−63/50
B60K 6/20− 6/547
B60W 10/00,10/02,10/06,10/08,
10/10,10/18,10/26,10/28,
10/30,20/00−20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転数と作動油の吐出量が線形である電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づき前記電動オイルポンプに作用する負荷トルクを算出する負荷トルク算出部と、
前記負荷トルクに基づいて前記作動油の粘度を算出する粘度算出部と、
前記作動油の粘度に基づき前記作動油の推定油温を算出する推定油温算出部と、を備えた作動油温度推定装置。
【請求項2】
前記電動オイルポンプは、車両に搭載された作動機器に前記作動油により油圧を作用させる請求項1に記載の作動油温度推定装置。
【請求項3】
前記負荷トルク算出部と前記粘度算出部と前記推定油温算出部は、前記作動機器に対しての油圧を制御する電子制御ユニットによる演算処理とする請求項2に記載の作動油温度推定装置。
【請求項4】
前記作動機器は、前記作動油の温度を検出する油温センサを備え、前記推定油温は前記油温センサの異常の判定に用いられる請求項2又は3記載の作動油温度推定装置。
【請求項5】
前記作動機器は、前記推定油温を制御情報として制御される請求項2〜4のいずれか1項に記載の作動油温度推定装置。
【請求項6】
前記作動機器は、前記車両のエンジンと前記車両の自動変速機側に連結された駆動モータ間を接続可能とするハイブリッドクラッチである請求項2〜5のいずれか1項に記載の作動油温度推定装置。
【請求項7】
前記作動機器は、前記車両の自動変速機の変速機構である請求項2〜5のいずれか1項に記載の作動油温度推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油温度推定装置に関するものであり、特に電動オイルポンプを使用した作動油の温度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動油の温度は、サーミスタ等による油温センサにて検出している。その油温センサが、故障しながらも通常使用油温領域を示す信号を出力している場合、即ち実際の油温値に対し油温センサ値がオフセット誤差を持ち、実際の油温値の変化に対し油温センサ値が追従して変化するものの、常にオフセット誤差による乖離を持つオフセット異常モードがある。この様なオフセット異常モードである油温センサの異常を判定できるものとして、エンジン始動して車両走行状態が所定時間以上を経過した後、外気温と油温とを比較して外気温よりも油温の方が低い場合に油温センサが、異常であると判定するものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、エンジン暖気状態からエンジン停止によりエンジン冷気状態になるまで待ってエンジンを再始動したとき、エンジン側温度センサ(例えば、水温センサ)からのセンサ値と油温センサからの油温センサ値との上下乖離幅が所定閾値以下である否か判定するものが知られている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-11869号公報
【特許文献2】特開2013-96385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、エンジン始動後、十分な車両走行時間を待たないと、又油温が十分下がらないと、正確な判定結果が得られない。
【0006】
また、特許文献2に記載された技術では、油温及び冷却水温が外気温相当に下がった状態で異常判定を行う必要があるため、異常判定を行える状態が限定される上に、油温が外気温相当までに下がりきるまでに、エンジン始動がされた場合には、判定ができない又は誤判定する可能性がある。
【0007】
本発明は、こうした事情に鑑み案出されたものであり、電動オイルポンプを使用する場合に、電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づいて、作動油の温度を推定できる作動油温度推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る作動油温度推定装置は、回転数と作動油の吐出量が線形である電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づき前記電動オイルポンプに作用する負荷トルクを算出する負荷トルク算出部と、前記負荷トルクに基づいて前記作動油の粘度を算出する粘度算出部と、前記作動油の粘度に基づき前記作動油の推定油温を算出する推定油温算出部と、を備えたことを要旨とする。
【0009】
これによれば、電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づいて作動油の温度を簡単かつ安価に推定することができる。
【0010】
請求項2に係る作動油温度推定装置は、請求項1において、前記電動オイルポンプは、車両に搭載された作動機器に前記作動油により油圧を作用させることを要旨とする。
【0011】
これによれば、車両に搭載された作動機器に設けられた電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づいて作動油の温度を推定することができる。
【0012】
請求項3に係る作動油温度推定装置は、請求項2において、前記負荷トルク算出部と前記粘度算出部と前記推定油温算出部は、前記作動機器に対しての油圧を制御する電子制御ユニットによる演算処理とすることを要旨とする。
【0013】
これによれば、作動油温度の推定を、作動機器を制御する電子制御ユニットのプログラム上で実現することができる。
【0014】
請求項4に係る作動油温度推定装置は、請求項2又は3において、前記作動機器は、前記作動油の温度を検出する油温センサを備え、前記推定油温は前記油温センサの異常の判定に用いられることを要旨とする。
【0015】
これによれば、油温センサを備えた作動機器における油温検出の異常を、格別の付加的機構を設けることなく安価な構成にて判定することができ、構成が簡素となる。
【0016】
請求項5に係る作動油温度推定装置は、請求項2〜4のいずれか1項において、前記作動機器は、前記推定油温を制御情報として制御されることを要旨とする。
【0017】
これによれば、作動機器は油温センサを備えずに、あるいは、油温センサを備えた作動機器における油温検出の異常時に、作動機器に設けられた電動オイルポンプからの情報である推定油温にて作動機器を適正に制御可能となる。
【0018】
請求項6に係る作動油温度推定装置は、請求項2〜5のいずれか1項において、前記作動機器は、前記車両のエンジンと前記車両の自動変速機側に連結された駆動モータ間を接続可能とするハイブリッドクラッチであることを要旨とする。
【0019】
これによれば、ハイブリッドクラッチは油温センサを備えずに、あるいは、油温センサを備えたハイブリッドクラッチにおける油温検出の異常時に、ハイブリッドクラッチに設けられた電動オイルポンプからの情報である推定油温にてハイブリッドクラッチを適正に制御可能となるため、ハイブリッドクラッチの解除状態への切換が遅れて燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【0020】
請求項7に係る作動油温度推定装置は、請求項2〜5のいずれか1項において、前記作動機器は、前記車両の自動変速機の変速機構であることを要旨とする。
【0021】
これによれば、自動変速機の変速機構は油温センサを搭載せずに、あるいは、油温センサを搭載した自動変速機の変速機構における油温検出の異常時に、自動変速機の変速機構に設けられた電動オイルポンプからの情報である推定油温にて自動変速機の変速機構を適正に制御できるため、必要以上に低速側の変速段が選択されることにより燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における制御フローチャートである。
図3】電動オイルポンプのモータ電流−負荷トルクの特性を示すグラフである。
図4】作動油の粘度−油温の特性を示すグラフである。
図5】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態における制御フローチャートである。
図7】本発明の適用に係る車両を概念的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の作動油温度推定装置10を図1図4に基づいて説明する。
作動油の温度は、作動油の粘度と比例的に変化し、その作動油の粘度は、作動油を動作させる電動オイルポンプを駆動する負荷トルクと比例的に変化し、また、その負荷トルクは、モータ電流と比例的に変化する。本発明は、この比例関係に着目し、作動油を動作させる電動オイルポンプを駆動するモータ電流に基づく負荷トルクから作動油の粘度を算出し、この作動油の粘度の変化を作動油の温度の変化として推定するものである。
【0024】
具体的には、作動油の温度を推定する作動油温度推定装置10は、図1に示す如く、温度検出対象の作動油を動作させる電動オイルポンプ11のモータ電流Imopおよびモータ回転数Nmopが入力される負荷トルク算出部13を有する。なお、電動オイルポンプ11が定常回転状態では、回転数と作動油の吐出量が線形である即ちモータ回転数Nmopに応じて所定の吐出量で作動油を吐出するものを使用している。負荷トルク算出部13は、入力したモータ回転数Nmopが定常回転状態にあることを確認の上、入力されたモータ電流Imopと、図3に示す電動オイルポンプ11のモータ電流−負荷トルクの特性マップを用いて、電動オイルポンプ11のモータ負荷トルクTmopを算出する。
【0025】
粘度算出部14は、モータ負荷トルクTmopと、モータ角速度ωと、装置定数部15を介して入力される電動オイルポンプ11の装置定数Ksとに基づき、作動油の粘度νを算出する。粘度νは、下記の数式1を用いて算出できる。
[数1]
ν=Ks×(Tmop÷ω)
【0026】
推定油温算出部16は、粘度算出部14から出力された作動油の粘度νおよび図4に示す作動油の粘度−温度特性のマップを用いて、作動油の推定油温TEeを算出する。
【0027】
次に示す図2は、図1にて示した各部11〜16の機能を実行する作動油温度推定プログラムをフローチャートで示し、後述する電子制御ユニットにて実施される。このプログラムの制御処理は、電動オイルポンプ11が所定の回転数以上である定常状態にあることを条件に開始されるもので、ステップS11にて、電動オイルポンプ11のモータ電流Imopを入力し、ステップS12にて電動オイルポンプ11のモータ回転数Nmopを入力する。
【0028】
次いで、ステップS13で、入力されたモータ電流Imopと、図3に示す電動オイルポンプ11のモータ電流−負荷トルクの特性マップを用いて、電動オイルポンプ11のモータ負荷トルクTmopを算出する。
【0029】
次いで、ステップS14で、算出されたモータ負荷トルクTmopと、装置定数Ksと、モータ角速度ωとに基づき、作動油の粘度νを前述の数式1を用いて算出する。
【0030】
次いで、ステップS15で、算出された作動油の粘度νおよび図4に示す作動油の粘度−温度特性のマップを用いて、作動油の推定油温TEeを算出する。
【0031】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の作動油温度推定装置20を図5及び図6に基づいて説明する。
この作動油温度推定装置20は、推定した作動油の推定油温TEeを、作動油の温度を検出する油温センサ(例えば、サーミスタ等)の異常の判定に用いるととともに制御情報とすることができるものである。
【0032】
具体的には、作動油温度推定装置20は、図5に示す如く、前述した電動オイルポンプ11、負荷トルク算出部13、粘度算出部14、装置定数部15及び推定油温算出部16に加えて、例えば、サーミスタ等作動油の温度を検出する油温センサ17を有する。なお、電動オイルポンプ11、負荷トルク算出部13、粘度算出部14、装置定数部15及び推定油温算出部16の構成及び作動は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
油温センサ17は、作動油の検出油温TEsを出力する。フェール判断部18は、油温センサ17からの検出油温TEsと、推定油温算出部16からの推定油温TEeを入力として、比較判定を行う。このフェール判断は、油温センサ17が検出した検出油温TEsの油温オフセットを判断するもので、検出油温TEsと推定油温TEeの差ΔTEgを絶対値で見て、この値が予め設定した閾値Pよりも、大きいか否かを判断する。
【0034】
フェールセーフ処理部19は、検出油温TEsと推定油温TEeの差ΔTEgを絶対値で見て、この値が予め設定した閾値Pよりも、大きいときに、油温センサ17が油温オフセット異常であることを検出するとともに異常表示ライト(図示略)を点灯する又は警報ブザー等の警報器(図示略)を動作させて警報するとともに、作動油の油温を推定油温TEeに置換して、推定油温TEeを制御情報に用いる。また、フェールセーフ処理部19は、検出油温TEsと推定油温TEeの差ΔTEgを絶対値で見て、この値が予め設定した閾値Pよりも、小さいときには作動油の油温を油温センサ17が検出した検出油温TEsを制御情報に用いる。
【0035】
次に示す図6は、図5にて示した各部11〜19の機能を実行する作動油温度推定プログラムをフローチャートで示し、後述する電子制御ユニットにて実施される。このプログラムの制御処理は、前述のステップS11からS15による作動油の推定油温TEeの算出に続いて、ステップS16で、油温センサ17による検出油温TEsを入力する。
【0036】
次いで、ステップS17にて、油温センサ17からの検出油温TEsと、ステップS15にて算出した推定油温TEeとの差ΔTEgの絶対値を算出する。次いで、ステップS18にて、油温センサ17が検出した検出油温TEsの油温オフセットを判断するもので、検出油温TEsと推定油温TEの差ΔTEgを絶対値で見て、この値が予め設定した閾値Pよりも、大きいか否かを判断する。
【0037】
ステップ18での判断結果が、Yes(ΔTEg>P)の場合には、油温センサ17が油温オフセット異常であることを検出するとともにステップS19に進み、異常表示ライト(図示略)の点灯や警報ブザー等の警報器(図示略)等を動作させて警報するとともに、作動油の油温を推定油温TEeに置換して、推定油温TEeを制御情報に用いる。
【0038】
一方、ステップ18での判断結果が、No(ΔTEg≦P)の場合には、油温センサ17に油温オフセットを含む異常がないと判断し、作動油の油温を油温センサ17が検出した検出油温TEsを制御情報に用いる。
【0039】
次に、本発明の作動油温度推定装置10又は20を適用できる車両に搭載されて電動オイルポンプにて作動する作動機器を、図7に基づいて説明する。
【0040】
本実施形態の作動油温度推定装置10又は20が搭載されるハイブリッド車両(以下、単に車両と略す)30は、エンジン及びモータによって駆動輪を駆動させる車両であり、必要に応じて駆動系からエンジンを切り離すことが可能とし、エンジンとモータの両駆動力を最適に使用でき、モータのみのEV走行から、エンジンとモータを使用した状況に応じた効率の良い走行と、回生時やEV走行時にはエンジンを駆動系から完全に切り離すため、エンジンの抵抗によるロスがなくなるものである。
【0041】
車両30は、エンジンEG、モータジェネレータMG、ハイブリッドクラッチ31、自動変速機ATM(以下、ATMと略す)、インバータINV、バッテリBT、ハイブリッドECU32(以下、HV−ECU32と略す)、エンジンECU33、ハイブリッドクラッチECU34(以下、HVクラッチECU34と略す)、自動変速機ECU35(以下、ATM−ECU35と略す)、モータジェネレータECU36(以下、MG−ECU36と略す)を有する。エンジンECU33は、エンジンEGを制御する電子制御装置である。HVクラッチECU34は、ハイブリッドクラッチを制御する電子制御装置である。ATM−ECU35は、ATMを制御する電子制御装置である。モータジェネレータECU36はモータジェネレータMGを制御する電子制御装置である。HV−ECU32は、車両の走行を統括制御する上位電子制御装置である。HV−ECU32、エンジンECU33、HVクラッチECU34、ATM−ECU35、MG−ECU36は、CAN(Controller Area Network)によって相互に通信可能となっている。ここでは、ハイブリッドECU32、エンジンECU33、HVクラッチECU34、ATM−ECU35、MG−ECU36は、別体として説明するが、これに限定されるものではなく、ハイブリッドECU32、エンジンECU33、HVクラッチECU34、ATM−ECU35、MG−ECU36が一体であっても差し支え無い。
【0042】
ハイブリッドクラッチ31は、エンジンEGと、自動変速機ATMの入力側に設けたモータジェネレータMGとの間に設けられて、エンジンEGからの動力をモータジェネレータMGへ伝達する係合状態と、エンジンEGをモータジェネレータMGから切り離してエンジンEGからの動力をモータジェネレータMGへ伝達しない解除状態に切り換えられる。フライホイール37はエンジンEGの回転を安定に保ち、ダンパー38はエンジンEGの振動を低減するものである。
【0043】
自動変速機ATMは、モータジェネレータMGに連結されたトルクコンバータ39及びトルクコンバータ39と連結されて各変速段を形成するクラッチ及びブレーキ等の変速機構40を有し、デファレンシャルDFを介して駆動輪WHが駆動される。
【0044】
モータジェネレータMGは、駆動輪WHにトルクを付与する駆動モータとして作動するとともに、車両の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても作動するものである。
【0045】
インバータINVは、モータジェネレータMG及びバッテリBTと電気的に接続されている。また、インバータINVは、MG−ECU36と通信可能に接続されている。インバータINVは、MG−ECU36からの制御信号に基づいて、バッテリBTから供給される直流電流を、昇圧するとともに交流電流に変換して供給することにより、モータジェネレータMGでトルク発生させ、モータジェネレータMGを駆動モータとして機能させる。また、インバータINVは、MG−ECU36からの制御信号に基づいて、モータジェネレータMGを発電機として機能させ、モータジェネレータMGで発電された交流電流を、直流電流に変換するとともに、電圧を降下させて、バッテリBTを充電する。バッテリBTは、充電可能な二次電池である。
【0046】
ハイブリッドクラッチ31は、HVクラッチECU34からの制御信号に基づいて、ハイブリッドクラッチ31に作用する作動油がソレノイド41にて制御されて、係合状態と解除状態に切換えられる。ハイブリッドクラッチ31は、作動油を動作させるハイブリッドクラッチ用電動オイルポンプ11aを有する。
【0047】
ハイブリッドクラッチ31に作用する作動油の温度の推定は、図2又は図6に示すフローチャートに対応したプログラムを実行するHVクラッチ−ECU34による演算処理によりなされる。ハイブリッドクラッチ31は、本発明における電動オイルポンプを使用した作動機器に相当するもので、先に例示したように作動油の温度を検出するサーミスタ等の油温センサ17aを設けたものでも、設けないものでもよいが、油温センサ17aを設けた場合には、従来のハイブリッドクラッチ31における油温検出フェール時の油温推定のバックアップを行うことができる。
【0048】
実際のハイブリッドクラッチ31の作動油の油温値に対し、乖離した油温センサ17aによる油温センサ値なる油温情報を用いてハイブリッドクラッチ31の制御を行う場合、油温センサ17aの異常によりハイブリッドクラッチ31の解除状態への切換が遅れて燃費が悪化することに伴い排気ガス量が増加するという不具合が生じる。一方、自動車の排気ガス制御状況を車載コンピューターでモニターすることを義務付けたOBD法規(OBD:On-Board Diagnosticsの略)があり、排ガス関連部品に異常が発生した場合、異常表示ライトを点灯し、ドライバーに知らせることが必要である。本発明を適用したハイブリッドクラッチ31は、前述の如く、HVクラッチECU34が図6に示したフローチャートに対応したプログラムを実行することにより、油温センサ17aの異常時には異常表示ライト(図示略)を点灯することができるとともに作動油の油温を電動オイルポンプ11aの作動に基づいて算出した推定油温TEeに置換して、推定油温TEeをハイブリッドクラッチ31の制御情報に用いて適正な制御を行うことができるため、ハイブリッドクラッチ31の解除状態への切換が遅れて燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【0049】
自動変速機ATMの変速機構40は、ATM−ECU35の制御信号に基づいて、サーボ油圧が制御されるもので、サーボ油圧の作動油を動作させる自動変速機ATM用電動オイルポンプ11bを有する。変速機構40に作用する作動油の温度の推定は、図2又は図6に示すフローチャートに対応したプログラムを実行するATM−ECU35による演算処理にてなされる。変速機構40は、本発明における電動オイルポンプを使用した作動機器に相当するもので、先に例示したように作動油の温度を検出するサーミスタ等の油温センサ17bを設けたものでも、設けないものでもよいが、油温センサ17bを設けた場合には、従来の自動変速機ATMの変速機構40における油温検出フェール時の油温推定のバックアップを行うことができる。
【0050】
実際の変速機構40の作動油の油温値に対し、乖離した油温センサ17による油温センサ値なる油温情報を用いて変速機構40の制御を行う場合、油温センサ17bの異常により必要以上にローギヤ側の変速段が選択されることで燃費が悪化することに伴い排気ガス量が増加するという不具合が生じる。一方、自動車の排気ガス制御状況を車載コンピューターでモニターすることを義務付けたOBD法規(OBD:On-Board Diagnosticsの略)があり、排ガス関連部品に異常が発生した場合、異常表示ライトを点灯し、ドライバーに知らせることが必要である。本発明を適用した変速機構40は、前述の如く、ATM−ECU35が図6に示したフローチャートに対応したプログラムを実行することにより、油温センサ17bの異常時には異常表示ライト(図示略)を点灯することができるとともに作動油の油温を電動オイルポンプ11bの作動に基づいて算出した推定油温TEeに置換して、推定油温TEeを変速機構40の制御情報に用いて適正な制御を行うことができるため、必要以上に低速側の変速段が選択されることにより燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【0051】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、回転数と作動油の吐出量が線形である電動オイルポンプ11、11a、11bを駆動するモータ電流Imopに基づき電動オイルポンプ11、11a、11bに作用する負荷トルクTmopを算出する負荷トルク算出部13と、負荷トルクTmopに基づいて作動油の粘度νを算出する粘度算出部14と、作動油の粘度νに基づき作動油の推定油温TEeを算出する推定油温算出部16と、を備えるので、電動オイルポンプ11、11a、11bを駆動するモータ電流Imopに基づいて作動油の温度を簡単かつ安価に推定することができる。
【0052】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、電動オイルポンプ11、11a、11bは、車両に搭載された作動機器31、40に作動油により油圧を作用させるので、車両に搭載された作動機器31、40に設けられた電動オイルポンプ11、11a、11bを駆動するモータ電流Imopに基づいて作動油の温度を推定することができる。
【0053】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、負荷トルク算出部13と粘度算出部14と推定油温算出部16は、作動機器31,40に対しての油圧を制御する電子制御ユニット34,35による演算処理とするので、作動油温度の推定を、作動機器31、40を制御する電子制御ユニット34、35のプログラム上で実現することができる。
【0054】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、作動機器31、40は、作動油の温度を検出する油温センサ17、17a、17bを備え、推定油温は油温センサ17、17a、17bの異常の判定に用いられるので、油温センサ17、17a、17bを備えた作動機器31、40における油温検出の異常を、格別の付加的機構を設けることなく安価な構成にて判定することができ、構成の簡素となる。
【0055】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、作動機器31、40が、推定油温を制御情報として制御されるので、作動機器31、40は油温センサ17、17a、17bを備えずに、あるいは、油温センサ17、17a、17bを備えた作動機器31、40における油温検出の異常時に、作動機器31、40に設けられた電動オイルポンプ11、11a、11bからの情報である推定油温TEeにて作動機器31、40を適正に制御可能となる。
【0056】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、作動機器31は、車両30のエンジンEGと車両30の自動変速機ATM側に連結された駆動モータMG間を接続可能とするハイブリッドクラッチ31であるので、ハイブリッドクラッチ31は油温センサ17aを備えずに、あるいは、油温センサ17aを備えたハイブリッドクラッチ31における油温検出の異常時に、ハイブリッドクラッチ31に設けられた電動オイルポンプ11aからの情報である推定油温TEeにてハイブリッドクラッチ31を適正に制御可能となるため、油温センサ17aの異常時には異常表示ライトを点灯することができるとともに作動油の油温を電動オイルポンプ11aの作動に基づいて算出した推定油温TEeに置換して、推定油温TEeをハイブリッドクラッチ31の制御情報に用いて適正な制御を行うことができるため、ハイブリッドクラッチ31の解除状態への切換が遅れて燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【0057】
上述のように、本発明の実施形態の作動油温度推定装置10、20によれば、作動機器40は、車両30の自動変速機ATMの変速機構40であるので、自動変速機ATMの変速機構40は油温センサ17bを搭載せずに、あるいは、油温センサ17bを搭載した自動変速機ATMの変速機構40における油温検出の異常時に、自動変速機ATMの変速機構40に設けられた電動オイルポンプ11bからの情報である推定油温TEeにて自動変速機ATMの変速機構40を適正に制御できるため、必要以上に低速側の変速段が選択されることにより燃費が悪化したり、排気ガスが増大したりすることを防止できる。
【符号の説明】
【0058】
10・・・作動油温度推定装置
11、11a、11b・・・電動オイルポンプ
13・・・負荷トルク検出部
14・・・粘度算出部
16・・・推定油温算出部
17、17a、17b・・・油温センサ
17a、17b・・・油温センサ
20・・・作動油温度推定装置
31・・・ハイブリッドクラッチ
34・・・HVクラッチECU
35・・・ATM−ECU
40・・・変速機構
ATM・・・自動変速機
EG・・・エンジン
MG・・・モータジェネレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7