(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間層を構成するポリエチレン樹脂組成物(C)のメルトフローレシオ(MFR)が0.1〜100g/10分であることを特徴とする請求項1に記載の包装用フィルムの製造方法。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のMFRが高圧法低密度ポリエチレン(B)のMFRよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用フィルムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体及び粘体、並びに不溶物質として繊維、粉体等の固形状のものを含んだ液体、粘体等の包装には、基材上に必要に応じて種々の中間層を積層させ、さらにその上にシーラント層を積層させて得られる積層フィルムが使用されている。このような積層フィルムには、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、紙、アルミニウム箔等からなる表面基材層上に、シーラント層を設け、このシーラント層のヒートシール性を利用する包装用フィルムが知られている。
【0003】
このシーラント層に使用される樹脂として、例えば、特定の物性を有するエチレン・C
4−10α−オレフィンのランダム共重合体と高圧法低密度ポリエチレン(以下、HPLDと略称することがある)とのブレンド組成物が提案されている(特許文献1参照)。上記ランダム共重合体として、具体的には、Mg−Ti触媒で製造されたエチレン・4−メチル−1−ペンテンランダム共重合体が提案されているが、横シール部の発泡開始温度が低い欠点がある。
【0004】
また、特定の温度上昇溶離分別(以下、TREFと略称することがある)特性を示すエチレン・C
3−18α−オレフィン共重合体とHPLDとのブレンド組成物が提案されている(特許文献2参照)。上記共重合体として具体的には、メタロセン触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体など)が提案されているが、内容物の充填時にシール部に該内容物が夾雑物としてシールされるため、ヒートシーラー部から受ける圧力と熱によって、シール部分で基材と中間層の剥離に基づく樹脂だまり(シーラント層および中間層部分がコブ状に盛り上った状態)生成によるシール不良が発生し、一方シーラーの圧力と温度を下げると、シーラント層の低温ヒートシール性およびホットタック性不足によるシール不良が発生し、シール強度の低下、耐圧強度の低下、異物介在による液漏れ等が発生し易く、その結果充填速度を高くすることができなかった。
【0005】
また、特定の物性を有するエチレン・C
4−10α−オレフィンのランダム共重合体とHPLDとのブレンド組成物が提案されている(特許文献3参照)。上記ランダム共重合体として具体的には、メタロセン触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体など)が提案されているが、上記特許文献2の場合と同様に、低温ヒートシール性およびホットタック性不足によるシール不良が発生しやすい欠点がある。
【0006】
かかる問題点に鑑み、基材層に内層・中間層・外層からなる特定の3層構造フィルムを共押出した貼合用共押出多層フィルムが提案されている(特許文献4参照)。しかしこの積層フィルムは耐衝撃性に優れるとの利点を持つが、液体充填機で充填できないといった問題がある。特許文献4には内層にチーグラー系触媒を用いて製造された線状低密度ポリエチレンを配合する処方が示されているが、該線状低密度ポリエチレン中に高結晶性成分が相当量存在していることが、問題発生の原因と考えられる。
【0007】
また、基材層に、線状低密度ポリエチレンとHPLDのブレンドからなる特定物性の中間層を設け、その外側に通常のシーラント層を設けた3層構造フィルムが提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、この方法による積層フィルムは製袋品で高い破袋強度を有する利点を持つが、液体充填包装機での充填適性に劣るといった問題がある。
【0008】
また、特定の熱的物性を有するエチレン・C
3−10α−オレフィンのランダム共重合体を中間層及びシーラント層とし、かつ厚みを特定した3層構造の包装用積層体が提案されている(特許文献6参照)。このシーラント層として、該ランダム共重合体にHPLDを0〜70重量%配合してよい旨記載されているが、具体的な事例は示されていない。この積層フィルムは一定の条件下での高速液体充填適性が得られるという利点を持つが、幅広いシール温度での高速液体充填適性は得られないといった問題がある。
【0009】
したがって、種々の内容物、基材の違いなどに対応させるために、充填装置の設定条件を調整する必要があるが、従来のものでは個々の包材での許容範囲が狭く、都度充填条件を探索する必要がある等の煩雑さが生じる問題は解決できていない。
【0010】
【特許文献1】特公平2−4425号公報
【特許文献2】特開平7−26079号公報
【特許文献3】特開平8−269270号公報
【特許文献4】特開平10−323948号公報
【特許文献5】特開平11−10809号公報
【特許文献6】特開平11−254614号公報
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、少なくとも基材層、中間層及びシーラント層がこの順に、押出ラミネート加工法により積層されてなる包装用フィルムの製造方法であり、前記中間層が、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレン(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)から構成され、100℃及び110℃で測定される貯蔵弾性率(E’)が特定の条件を満たすように調製されることを特徴とする。
以下、各層を構成する各成分、包装用フィルムの製造方法等を項目毎に説明する。
【0020】
1.中間層
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、本発明における中間層を構成するポリエチレン樹脂組成物(C)の主要成分である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体である。コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8の1−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン等を挙げることができる。かかるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の具体例としては、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等が特に好ましい。
【0021】
コモノマーとして用いられる上記α−オレフィンは1種類に限られず、ターポリマーのように2種類以上用いた多元系共重合体も好ましい。具体例としては、エチレン・プロピレン・1−ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン3元共重合体等が挙げられる。
【0022】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンから誘導される構成単位を主成分とするものが好ましく、エチレン含有量が50〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%の範囲から選択される。従って、α−オレフィン含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%の範囲から選択される。
【0023】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜50g/10分であり、より好ましくは3〜20g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、シール時の耐熱性を向上させることができる(という技術的意義)がある。なお、MFRは、JIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値である。
また、後述するように、高圧法低密度ポリエチレンのシール時の貯蔵弾性率低下を抑制する観点からエチレン・α−オレフィン共重合体(A)のMFRは、高圧法低密度ポリエチレン(B)のMFRよりも小さいことが好ましい。
【0024】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の密度は、好ましくは0.870〜0.940g/cm
3、より好ましくは0.900〜0.915g/cm
3である。密度が上記範囲であることにより、シール温度を低温化できる。なお、密度はJIS−K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して測定した値である。
【0025】
(エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法)
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いる重合により容易に製造することができる。メタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。以下、上記(i)〜(iii)の各成分について説明する。
【0026】
(i)メタロセン化合物は、例えば、特開昭58−19309号、特開昭59−95292号、特開昭59−23011号、特開昭60−35006号、特開昭60−35007号、特開昭60−35008号、特開昭60−35009号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号公報等、EP公開420,436、米国特許5,055,438、国際公開WO91/04257、国際公開WO92/07123等に開示されている。
【0027】
更に具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物の混合物を使用することもできる。
【0028】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO
2、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
(ii)本発明において用いられる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。
【0030】
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0031】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm
2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
【0032】
係るエチレン系共重合体は、メタロセン系ポリエチレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製「アフィニティー」、日本ポリエチレン社製「カーネル」「ハーモレックス」等が挙げられる。エチレン系共重合体は、1種又は2種以上混合して使用することができる。また、密度又はMFRを異にする2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を併用してもよい。メタロセン触媒によるエチレン系共重合体は結晶性分布が狭いので種々の共重合体をブレンドすることにより幅広い範囲で高速液体充填を可能とする。
【0033】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を使用して製造することが好ましいが、チタン、ハロゲンを含むいわゆるチーグラー触媒を用いて製造することもできる。
【0034】
2.高圧法低密度ポリエチレン(B)
本発明の中間層に用いられるポリエチレン樹脂組成物(C)を構成するもう一つの成分は、高圧法低密度ポリエチレン(以下、「HPLD」ともいう。)(B)であり、詳しくは、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンとも呼称される。高圧法低密度ポリエチレンは溶融弾性が高く、特に押出ラミネート加工時のネックインの改良に多く用いられる。
【0035】
本発明における高圧法低密度ポリエチレン(B)の物性としては特に規定されず、従来公知の高圧法低密度ポリエチレンを用いることができる。なお、用いられる高圧法低密度ポリエチレン(B)は1種類に限られず、2種類以上用いてもよい。
【0036】
高圧法低密度ポリエチレン(B)は、MFRが好ましくは3〜80g/10分、特に好ましくは10〜30g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、ラミネート成形時の樹脂圧力及びモーター負荷を低減することができる。また、高圧法低密度ポリエチレン(B)は、密度が好ましくは0.910〜0.930g/cm
3であり、特に好ましくは0.915〜0.925g/cm
3である。密度が上記範囲であることにより、高圧法低密度ポリエチレンとエチレン・α−オレフィン共重合体とブレンドした際、低温のシールを阻害しない。
【0037】
3.ポリエチレン樹脂組成物(C)
本発明は、包装用フィルムの中間層が、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレン(B)からなるポリエチレン樹脂組成物(C)から構成され、かつ、100℃及び110℃における貯蔵弾性率が特定の条件を満たすように調製されることを特徴とする。
【0038】
(1)配合割合
ポリエチレン樹脂組成物(C)の各成分の配合割合は、特に限定されず、後述する特定の貯蔵弾性率を満たすように適宜調製することができるが、通常、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)及び高圧法低密度ポリエチレン(B)の合計量100重量%に対して、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)40〜90重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)10〜60重量%であり、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)45〜80重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)20〜55重量%であり、より好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)50〜70重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)30〜50重量%である。配合割合が上記範囲であることにより、充填条件に適した貯蔵弾性率に調整することができ、破袋強度、低温シール性に優れた包装材料をラミネート成形することができる。
【0039】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)として、密度を異にするメタロセン系ポリエチレン系共重合体を2種併用する場合、例えば、密度0.88〜0.91g/cm
3の共重合体を35〜70重量%、密度0.91〜0.94g/cm
3の共重合体を5〜35重量%とし、これに密度0.90〜0.93g/cm
3の高圧法低密度ポリエチレンを5〜40重量%配合する態様が好ましい。
【0040】
また、上記成分以外に、他の配合剤を適宜配合してもよい。例えば、ポリエチレン樹脂組成物(C)100重量部に対して、スリップ剤などの配合剤0〜5重量部を配合することができる。他の配合剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶造核剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤等が挙げられる。
【0041】
(2)ポリエチレン樹脂組成物(C)の物性
本発明は、中間層として用いられるポリエチレン樹脂組成物(C)において、下記(A)〜(C)の特性が特定の範囲となるよう調製することにより、用いられる各成分毎に、充填条件をその都度、探索することなく、破袋強度、加工性及び低温シール性を備えた包装用フィルムのより簡便な製造方法を提供するものである。以下、各特性ごとに順次説明する。
【0042】
(A)粘弾性
本発明は、ポリエチレン樹脂組成物(C)を粘弾性測定から導き出される下記の(1)〜(3)の貯蔵弾性率に調製することを特徴とする。
(1)100℃で測定される貯蔵弾性率(E’
100)が12.0〜13.5MPaである。
(2)110℃で測定される貯蔵弾性率(E’
110)が1.5〜4.0MPaである。
(3)E’
100(単位MPa)及びE’
110(単位MPa)が以下の関係にある。
9.5≦E’
100−E’
110≦11.0
【0043】
貯蔵弾性率とは、試料に所定の周波数の正弦波を印加した際の応力を測定する際に、応力は与えた歪に対して、位相差δを生じた歪と同位相の成分と、90度位相のずれた成分に分離したときの試料の弾性的な応答に対応するものであり、その最大値から弾性率を求めたものが貯蔵弾性率E’である。これらの定義は、例えば“講座・レオロジー”、日本レオロジー学会編、高分子刊行会、1992、pp.36−37に記載されている。
本発明の方法は、中間層に用いられるポリエチレン樹脂組成物(C)を上記(1)〜(3)に規定する貯蔵粘弾率に調製することにより、種々の内容物、基材の違いなどに対応させるための設定条件等を調製することなく、容易に、破袋強度及び低温シール性に優れ、かつ、低温から高温まで幅広い温度範囲で高速液体充填を可能とする包装用フィルムを提供する。
【0044】
ポリエチレン樹脂組成物(C)の100℃で測定される貯蔵弾性率(E’
100)は、12.0〜13.5MPaであり、好ましくは12.1〜13.3MPa、特に好ましくは12.2〜13.0MPaである。
100℃での貯蔵弾性率が上記範囲より高い場合、材料の変形が抑制されるため、低温ヒートシール性に劣り、一方、上記範囲より低い場合、材料の変形が過剰となり、耐熱性に劣る。
また、E’
100は、エチレン・α−オレフィンと高圧法低密度ポリエチレンの配合比率で高圧法低密度ポリエチレンを多く調製することにより、上記範囲に制御することができる。
【0045】
110℃で測定される貯蔵弾性率(E’
110)は、1.5〜4.0MPa、好ましくは2.0〜3.5MPaである。
110℃での貯蔵弾性率が上記範囲より高い場合、材料の変形を抑制するため、低温シール性に劣り、一方、上記範囲より低い場合、材料の変形が過剰になるため、耐熱性に劣る。
また、E’
110は、エチレン・α−オレフィンと高圧法低密度ポリエチレンの配合比率でエチレン・α−オレフィンの比率を多く調製することにより(/上記E’
100と同様の調製方法により)、上記範囲に制御することができる。
【0046】
さらに、ポリエチレン樹脂組成物(C)のE’
100及びE’
110が上記範囲を満たし、かつ、E’
100(単位MPa)とE’
110(単位MPa)が以下の関係にあるとき、良好な低温シール性と耐熱性を得ることができる。
9.5≦E’
100−E’
110≦11.0
E’
100−E’
110の貯蔵弾性率が上記範囲より高い場合、材料の変形を抑制するため、低温シール性に劣り、一方、上記範囲より低い場合、材料の変形が過剰になるため、耐熱性に劣る。
また、E’
100−E’
110は、エチレン・α−オレフィンと高圧法低密度ポリエチレンの配合比率を調製することにより(/上記E’
100と同様の調製方法により)、上記範囲に制御することができる。
【0047】
また貯蔵弾性率は、以下の条件で測定をすることにより得られる。
[条件]
装置:株式会社ユービーエム社製E4000F
測定モード:温度依存性
周波数:1Hz
歪:設定0.2%(自動調整)
オートテンション:自動静荷重(最低荷重25g)
昇温速度:5℃/min
試料形状:成膜したフィルム、あるいは0.3mm〜0.5mm程度の厚みにプレス成形したフィルムを幅5mm、長さ25mmの短冊状に切り取って装置に装着する。
[測定方法]
上記サンプルの貯蔵弾性率を30℃〜140℃の温度範囲で測定。
【0048】
(B)密度特性
ポリエチレン樹脂組成物(C)の密度は、好ましくは0.90〜0.94g/cm
3、特に好ましくは0.91〜0.92g/cm
3である。密度が上記範囲より高いと低温ヒートシール性に劣る。密度が上記範囲より低いと高温でシールした際に発泡しやすいので好ましくない。なお、密度はJIS−K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して測定した値である。
【0049】
(C)メルトフローレート(MFR)特性
ポリエチレン樹脂組成物(C)のMFR(190℃、21.18N荷重)は、好ましくは1〜100g/10分、より好ましくは2〜50g/10分、特に好ましくは4〜20g/10分である。MFRが上記範囲より低いと樹脂を溶融押出する際の押出負荷が高くなり、また成形時フィルム表面の肌荒れが発生するので好ましくない。MFRが上記範囲を超えるとヒートシール時のホットタック性が低下したり、包装材料とした際の破袋強度が下がるので好ましくない。なお、MFRはJIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した値である。
また、ポリエチレン樹脂組成物(C)の構成成分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)のMFRは、高圧法低密度ポリエチレン(B)のMFRよりも小さいことが好ましい。この理由を以下に説明する。
高圧法低密度ポリエチレン(B)のMFRが小さい場合、横シール温度(130〜165℃)における高圧法低密度ポリエチレン由来の貯蔵弾性率変化が小さくなる。その結果、温度変化による材料の変形が抑制されることにつながり、低温シール性に劣る結果となるからである。
【0050】
4.包装用フィルムの製造方法
本発明は、少なくとも基材層、中間層及びシーラント層がこの順に、押出ラミネート加工法により積層され、ダイロール方式の自動充填機に用いられる包装用フィルムの製造方法である。
本発明は、上記方法により調製されたポリエチレン樹脂組成物(C)を中間層として、基材上に積層することで包装用のフィルムとすることができる。詳しくは、基材の一方の側に本発明の樹脂組成物からなる層をヒートシール層として積層した包装材料である。
積層体を構成する基材層としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体のフィルム、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。更に上記フィルム1種類単独でも、2種類以上の複合使用でも良く、また、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでも良い。特に一軸、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなども用いられる。更に、上記基材上にポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどをコーティングしたものや、アルミ、アルミナやシリカ、又はアルミナ及びシリカの混合物を蒸着した基材を用いてもよい。液体や粘体の包装材料としては二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はそれら基材上にシリカやアルミナを蒸着したものが多く用いられている。
【0051】
基材の表面にヒートシール層を設ける方法は、特に制限されず公知の方法に従って実施することができる。例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出法、サンドイッチラミネート法、共押出法等がある。ドライラミネーション等に使用するヒートシール層用フィルムは、上記エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂を用いてカレンダー法、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイ成形法など任意の方法で製造することができる。
【0052】
また、押出法の場合は、押出ラミネート加工法、ドライラミネート加工法、サンドイッチラミネート加工法、共押出法(接着層を設けない共押出、接着層を設ける共押出、接着樹脂を配合する共押出等を含む)等の方法がある。本発明の樹脂組成物からなる積層フィルムで液体、粘体の包装材料を作る方法としては、タンデム押出ラミネート加工法が多く用いられている。これは押出ラミネート加工法にて基材上に1層目として中間層を、更に2層目としてシーラント層というように2種類の樹脂層を逐次積層する方法であり、生産性と品質の面で好適である。
【0053】
積層フィルム全体の厚み及び各層の厚み並びに厚み比については特に制限はなく、内容物や用途等に応じて適宜決定すればよいが、具体的には、積層フィルム全体の厚みは40〜120μm、基材層の厚みは10〜40μm、シーラント層の厚みは10〜40μm程度が好ましい。中間層を設ける場合は、該中間層の厚みは20〜40μm程度が好ましい。また、積層の際は、基材表面の接着性をよくするために、予め基材上にコロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理を行うことができる。さらに、接着性増強等のために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布してから積層するのが好ましい。アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等のものが挙げられる。
【0054】
このようにして得られる本発明により製造される包装用フィルムは、種々の包装材、例えば食品包装材、医療用包装材、エンジンオイルなどの工業材料包装材等として用いることができる。特に、本発明により製造される包装用フィルムは、破袋強度、加工性、低温シール性等にすぐれるため、液体、繊維、粉体等の固形状の不溶物を含む液体、粘体等の流体を内容物として収容するための包装材として好適に用いられ、ダイロール式の自動充填機、中でも充填包装形態が3方シールである場合に好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法、評価方法及び材料は、以下の通りである。
【0056】
1.測定方法、評価方法
(1)密度:JIS−K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して行った。
(2)MFR:JIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して行った。
(3)貯蔵弾性率E’: 固体粘弾性測定は以下の条件で行った。
装置:株式会社ユービーエム社製E4000F
測定モード:温度依存性
周波数:1Hz
歪:設定0.2%(自動調整)
オートテンション:自動静荷重(最低荷重25g)
昇温速度:5℃/min
試料形状:成膜したフィルム、あるいは0.3mm〜0.5mm程度の厚みにプレス成形したフィルムを幅5mm、長さ25mmの短冊状に切り取って装置に装着。
昇温速度5℃/minで−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度100及び110℃での貯蔵弾性率(E’)を求めた。
【0057】
[充填条件]
シール温度:(縦)185℃、(横)130〜165℃の範囲で5℃刻み
包装形態:三方シール
袋寸法:幅50mm×縦100mmピッチ
充填物:30℃の水
充填量:約10cc
充填速度:20m/min
得られた液体充填小袋の横シール部について以下の1)、2)の評価を行うことで、シール温度範囲を検討した。いずれも問題ない場合を○とし、問題がある場合を×とした。
【0058】
1)破袋強度評価
テンシロン万能材料験機(株式会社オリエンテック社製、RTC−1210A)にて、充填後の袋に1mm/minで荷重を掛け、破袋するときの荷重を評価した。200kg以上の荷重に耐えられるものを○、耐えられないものを×とした。
【0059】
2)シール部の外観観察評価
横シール温度が高ければ、破袋・水漏れは起こらなくなる。しかし、横シール温度が高くなりすぎると横シール部が発泡し始めるため包装用フィルムとして適さなくなる。そこで、液体小袋の横シール部について観察をした。耐熱性が劣り、発泡が発生する場合や破袋又は水漏れが発生している場合を×とした。
【0060】
2.材料
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
エチレン・α−オレフィン共重合体として用いたA1は、メタロセン触媒を用いた気相法により製造したものである。なお、コモノマーには、1−ヘキセンを用いている。性状は表1に示したとおりである。
【0061】
(2)高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)
高圧法低密度ポリエチレンとして用いたB1、B2は、オートクレーブ反応器を有する高圧ラジカル法低密度ポリエチレン製造設備において製造したものである。性状は表1に示したとおりである。
【0062】
本発明の中間層に用いられたポリエチレン樹脂組成物(C)の各樹脂成分の配合割合を表1にまとめた。
【0063】
【表1】
【0064】
3.実施例及び比較例
(1)押出ラミネート加工による包装用フィルムの作成
モダンマシナリー社製90mmφのシングルラミネート成形機を用い、ダイ幅:500mm、成形温度:300℃、加工速度100m/分の条件で、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡社製N4142)に、三井化学社製のイソシアネート系アンカーコート剤(タケラックA3210/タケネートA3075/酢酸エチルを3対1対28の割合)を混合した溶液をアンカーコートロールにて塗工し、ラミネート部にてオゾンを吹きつけながら、各種ポリエチレン樹脂を厚み25μmになるように押出量を調整し、中間層を成形した。さらに、中間層のポリエチレン樹脂組成物の面に、上記成形機にて、日本ポリエチレン社製、カーネル KC570S(MFR10g/10分、密度0.906g/cm
3)を押出樹脂温度280℃、引取速度100m/分で被覆厚み25μmをラミネート加工を行い、積層フィルムを作成した。加工後の積層フィルムBを40℃のオーブンにて48時間のエージングを行った後、幅100mmにスリットし評価用の包装用フィルムを得た。
実施例1〜3、比較例1〜4の各樹脂組成の配合比率及び評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
(評価)
本発明の包装用フィルムの製造方法を用いた実施例1〜3は、破袋強度、低温シール性及び耐熱性に優れており、低温から高温まで広い範囲で高速液体充填が可能である。
一方、実施例と同様にエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)を用いた比較例1〜3においては、貯蔵弾性率(E’
100、E’
110、E’
100−E’
110)のいずれかが所定の範囲を満たさないため、耐熱性、破袋強度には優れるが、低温シール性に劣る。また高圧法低密度ポリエチレン(B)のみを用いた比較例4では、低温シール性に優れるが、破袋強度、耐熱性に劣る。
さらに、実施例においても、貯蔵弾性率(E’
100、E’
110)をエチレン・α−オレフィンと高圧法低密度ポリエチレンの配合比率を調製することにより、実施例1、2のように、より耐熱性を向上させたり、実施例3のように、より低温シール性を向上させたりすることができる。
実施例1:破袋強度、耐熱性に優れるが、やや低温シール性に劣る。
実施例2:破袋強度、耐熱性に優れるが、やや低温シール性に劣る。
実施例3:破袋強度、低温シール性に優れるが、耐熱性に劣る。
比較例1:破袋強度、耐熱性に優れるが、低温シール性に劣る。
比較例2:破袋強度、耐熱性に優れるが、低温シール性に劣る。
比較例3:破袋強度,耐熱性に優れるが、低温シール性に劣る。
比較例4:低温シール性に優れるが、破袋強度、耐熱性に劣る。