(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した画像再現方法で再現された顔画像であっても、顔画像の有する視覚効果が簡素であるため、偽造や改竄が容易であり、顔画像の真偽を目視で判別することが困難であるという問題を有する。
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、改竄が困難であるとともに、より複雑で特徴のある視覚効果を示し、個別情報を潜像として記録可能であり、真贋の判断を容易に行うことが可能な画像表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、基材の一方の面に形成した複数本の線状の凸部を備え、
前記凸部の一部の高さを、表示する画像に対応した高さに変化させたことを特徴とする画像表示体である。
また、本発明の一態様は、前記凸部は、巻き取られたフィルムに剥離層と接着層が順に形成された転写リボンに対する、サーマルヘッドを用いた熱転写によって形成されていることを特徴とする画像表示体である。
また、本発明の一態様は、前記剥離層の厚みと前記接着層の厚みとの合計は、0.2μm以上30μm以下の範囲内であることを特徴とする画像表示体である。
【0006】
また、本発明の一態様は、前記剥離層が拡散剤を含んでいることを特徴とする画像表示体である。
また、本発明の一態様は、前記凸部は、前記表示する画像の観察方向に対して直交する方向の線状に形成することを特徴とする画像表示体である。
また、本発明の一態様は、前記凸部と、隣り合う前記凸部間に形成された凹部とを、1:9〜9:1の範囲内の比率で同一箇所に複数回転写することを特徴とする画像表示体である。
また、本発明の一態様は、前記複数回の転写のうち一回の転写は、表示する画像の全ての領域に前記凸部を転写することを特徴とする画像表示体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様であれば、個別情報を潜像として記録することにより、目視による真偽の判別が容易な、個人認証媒体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(個人認証媒体10の構成)
図1中に示すように、個人認証媒体10は、綴込み紙11と、表紙12によって構成される冊子体であって、複数の紙面13を有している。
表紙12は、個人情報を含む画像を表示する表示機能を有し、綴込み紙11を挟むように、二つに折られている。
ここで、個人情報は、所有者の認証に利用される個人認証情報を含み、例えば、生体情報と非生体個人情報に分類される。
【0010】
生体情報は、所有者の有する生体的な特徴を示す。また、生体情報は、例えば、顔、指紋、静脈、虹彩のうち、少なくとも一つであって、光学的手法によって読み取り可能な形式で記録されている。
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。また、非生体個人情報は、例えば、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属、身分のうち、少なくとも一つである。なお、非生体個人情報は、タイピングによって形成された文字であってもよいし、所有者の手書きの署名であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
また、表紙12は、第1画像表示部15と、第2画像表示部16と、第3画像表示部17と、第4画像表示部18と、第5画像表示部19を備えている。
【0011】
第1画像表示部15及び第2画像表示部16は、光の波長及び振幅を記録された部分であって、光の吸収を利用して画像を表示する。すなわち、例えば、第1画像表示部15及び第2画像表示部16に白色光が照射されるとき、第1画像表示部15及び第2画像表示部16の各部位は、そこに記録された光の波長や光の振幅に応じた可視光を反射して視認可能な画像を表示する。
また、第1画像表示部15及び第2画像表示部16は、例えば、染料及び顔料を、形成材料として含む。また、第1画像表示部15及び第2画像表示部16は、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、または、これらの2つ以上の組み合わせによって形成される。
なお、第1画像表示部15及び第2画像表示部16は、感熱発色剤を含んだ層に対するレーザビームによる描画によっても形成されてもよいし、これら方法の組み合わせによって形成されてもよい。また、第1画像表示部15及び第2画像表示部16のうち少なくとも一つは、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成されてもよく、印刷法によって形成されてもよく、これらの組み合わせによって形成されてもよい。
【0012】
第3画像表示部17は、光の波長、光の振幅及び位相を記憶する部分であって、光の回折を利用して画像を表示する。これは、例えば、第3画像表示部17に白色光が照射されるとき、第3画像表示部17の各部位は、そこに記録された光の波長、光の振幅及び位相に応じた光を回折して視認可能な画像を表示する。
第4画像表示部18は、回折格子を有したホログラム素子を有している。また、第4画像表示部18は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプまたは熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことによって形成される。
第1画像表示部15及び第4画像表示部18の表示する画像は、所有者の顔画像である。ここで、第1画像表示部15の表示する画像に含まれる顔画像と、第4画像表示部18の表示する画像に含まれる顔画像とは、外形寸法が等しくてもよく、異なってもよい。
【0013】
また、第1画像表示部15及び第4画像表示部18の表示する画像の各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報をさらに含んでもよい。
第4画像表示部18の表示する画像は、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでもよく、生体情報に加えて非生体個人情報をさらに含んでもよい。また、第4画像表示部18の表示する画像は、個人情報の代わりに非個人情報を含んでもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでもよい。
第2画像表示部16の表示する画像は、非生体個人情報と非個人情報とを含む。また、第2画像表示部16の表示する画像は、例えば、文字、記号、符号、及び、標章の1つ以上から構成されている。
【0014】
第3画像表示部17の表示する画像は、地紋である。これは、例えば、第3画像表示部17の表示する画像が、第1画像表示部15の表示する顔画像や、第4画像表示部18の表示する顔画像と重なることによって、個人認証媒体10の改竄はさらに抑えられる。
なお、第5画像表示部19の構成については、後述する。
紙面13には、文字列や地紋等の紙面情報14が印刷されている。なお、紙面13は、個人情報が記録されたICチップや、外部と非接触で通信するためのアンテナ等を有してもよい。
【0015】
(第5画像表示部19の構成)
第5画像表示部19は、
図2中に示す転写リボン20を用いて形成されている。
転写リボン20は、基材21と、基材21の上に位置する剥離層22と、接着層23を備えている。
基材21は、例えば、樹脂フィルムと、樹脂フィルムよりも厚く、且つその厚みよりも十分に広い表面を有した平面的な樹脂製の薄板を含む樹脂シートである。また、基材21は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等、耐熱性に優れた材料から形成されている。なお、基材21は、接着層23を支持する基材であって、接着層23を支持する基材21の面には、剥離層22の代わりに、例えば、フッ素樹脂、または、シリコーン樹脂を含む離型層が設けられてもよい。
また、第5画像表示部19は、
図3中に示すように、被転写体31と、第1層目の転写画像である第一転写画像32を備えている。
【0016】
第一転写画像32は、剥離層22と接着層23が、第5画像表示部19の被転写体31に転写されて形成されている。具体的には、第一転写画像32は、被転写体31に接着層23を密着させ、さらに、サーマルヘッドを基材21側から密着させ、サーマルヘッドで加熱して、ストライプ状の転写画像を転写することにより形成されている。
また、被転写体31に転写する第一転写画像32としては、例えば、
図4中に示すように、第5画像表示部19の領域全面に均一のストライプ状の画像を用いる。なお、第一転写画像32を被転写体31に転写する際に、複数回転写する転写のうち一回は、表示する画像の全ての領域に、線状の凸部を転写する。
また、被転写体31に、第2層目の転写画像である第二転写画像52を転写する際には、
図5中に示すように、第一転写画像32を転写した状態の被転写体31に、接着層23を密着させ、さらに、サーマルヘッドを基材21側から密着させ、サーマルヘッドで加熱して、ストライプ状の転写画像を転写する。ここで、第二転写画像52を転写する位置は、第一転写画像32の転写位置と同一とする。
【0017】
本実施形態では、一例として、第二転写画像52として、英文字の「AB」を表す画像を用いる場合を説明する。このため、本実施形態では、被転写体31に第二転写画像52を転写すると、第5画像表示部19には、
図6中に示すように、英文字の「AB」を表す画像が表示されることとなる。ここで、第二転写画像52は、文字のある部分は2層目を重ね、文字の無い部分では1層目のみの凸部となっている。
なお、本実施形態では、一例として、剥離層22と接着層23の厚みの合計を、0.2μm以上30μm以下の範囲内とした場合について説明する。これは、正面から観察した場合には画像を認識しにくく、傾斜した方向から観察した場合には画像をより認識しやすくなり、正面から観察した画像と、傾斜した方向から観察した画像のコントラストが大きくなり、表示画像をより視認し易い画像表示体となるためである。
【0018】
また、剥離層22は拡散剤を含んでいる画像表示体であり、被転写体31に第一転写画像32及び第二転写画像52を転写した状態では、剥離層22が最表面となる。このため、剥離層22に拡散剤を含ませることで、被転写体31に第一転写画像32及び第二転写画像52を転写した状態で、ストライプ状の凸部が認識しやすくなる。特に、傾斜した角度から観察すると、拡散剤を含んだ樹脂層を斜めから観察することとなり、拡散の効果が大きくなる。
【0019】
また、
図7中に示すように、被転写体31に対して垂直方向にある視点71から観察した場合には、被転写体31に転写された第2層目の第二転写画像52は、第1層目の第一転写画像32と同化して認識されず、第1層目の転写画像である、全面に均一のストライプ状の画像として認識される。
しかしながら、被転写体31に転写されたストライプ状の直線を軸として、視点71から傾斜した方向にある視点72から観察した場合、第2層目の転写画像52が分離して観察されるため、第二転写画像52を認識することが可能となる。
【0020】
すなわち、上述した構成の被転写体31であれば、被転写体31を、観察方向に対して直交する方向の直線を軸として傾斜した方向から観察することで、上述した画像を視認することが可能となる。また、転写リボン20とサーマルヘッドを用いることで、個別情報を潜像として記録することが可能となる。
ここで、本実施形態では、一例として、複数本の線状の凸部(第一転写画像32、第二転写画像52)は、表示する画像の観察方向に対して直交する方向の線状に形成し、各凸部の繰返し幅は、0.005mm以上とした場合を説明する。これは、一般的なサーマルヘッドの解像度が、約1200dpiから2400dpi程度であることによる。また、分解能としては0.021mm程度から0.011mm程度となる。
【0021】
また、本実施形態では、一例として、複数本の線状の凸部の繰返し幅は、0.5mm以下とした場合を説明する。これは、複数本の線状の凸部の繰返し幅を、0.5mmを超える間隔とすると、傾斜しても画像を認識することが出来なくなるためである。
また、本実施形態では、一例として、凸部と凹部の比率を、1対9〜9対1の範囲内とした場合を説明する。これは、傾斜した方向から観察する傾斜角度として、垂直方向からの角度を小さくすることが可能であり、さらに、画像を観察可能な確度範囲を広くすることが可能となるためである。
ここで、被転写体31としては、表面が、カードのような平坦であることが望ましく、パスポートの場合には、転写表面が紙素材ではなく、ポリカーボネートのような樹脂製、または、樹脂をコーティングしてある冊子であることが望ましい。これは、表面の凹凸の影響により、記録している潜像の視認性が落ちてしまうためである。
【0022】
また、転写リボン20は、
図8中に示すように、所定の位置から観察した場合に、赤、緑、青のそれぞれの波長の回折光を観察できるような回折格子パネルを有している。また、転写リボン20は、第4画像表示部18を転写する際に、R(赤)パネル81、G(緑)パネル82、B(青)パネル83を用いて、第4画像の、赤、緑、青の、それぞれの画像を転写する。
また、第5画像表示部19を転写する際には、転写リボン20のCパネル84を用いて第5画像を転写する。Cパネル84は、2回転写するので、Rパネル81、Gパネル82、Bパネル83よりも、長さが長くなっている。
また、転写リボン20は、第5画像を2回転写する際に、1回目に転写した複数本の線状の凸部の位置に、2回目の転写を正確に行うために必要な、位置決めマーク85を備えている。
【0023】
(プリンタの構成)
本実施形態の画像表示体を個人認証媒体10に形成するプリンタ90は、
図9中に示すように、挿入ユニット91を備えている。
プリンタ90を用いて画像表示体を個人認証媒体10に形成する際には、まず、挿入ユニット91から挿入された個人認証媒体10を、コンベアーによって、サーマルヘッド94とプラテンロール95に運ぶ。
そして、転写リボン20を巻出し93に配置し、巻出し93と巻取り96によって巻きだされた転写リボン20を、サーマルヘッド94とプラテンロール95の間で、個人認証媒体10に密着させる。
さらに、転写リボン20の位置決めマーク85により転写位置を決定し、サーマルヘッド94とプラテンロール95によって画像を転写する。また、第4画像表示部18を転写する際には、Rパネル81を転写した後、プラテンロール95を逆転し、Gパネル82を転写する位置まで個人認証媒体10を移動させ、プラテンロール95の正転と逆転を繰返して、Bパネル83から転写する。以上のような動作により、第4画像の転写を行う。
【0024】
次に、転写リボン20のCパネル84を用いて第5画像を転写する。具体的には、プラテンロール95により、第5画像を転写する位置に個人認証媒体10を移動して、一回目の第5画像を転写する。さらに、プラテンロール95を逆転し、一回目の転写位置と同一箇所に二回目の第5画像を転写する。そして、第5画像を2回転写した後、個人認証媒体10を、排出ユニット97によって排出する。
なお、
図9中に示した構成では、第4画像及び第5画像を、個人認証媒体10に直接転写しているが、第4画像については、中間転写媒体に中間転写を行って、個人認証媒体10に再度転写を行う方法もある。また、第5画像については、同一箇所に複数回の転写を行うことで、凸部の高さを設けているので、中間転写方式では転写できない。
【0025】
以上のような方法で転写した個人認証媒体10であれば、正面から観察した場合には画像を認識しにくく、傾斜した方向から観察した場合には画像をより認識しやすい画像表示体となり、個別情報を潜像として記録することで、目視による真偽の判別が容易となる。
なお、画像表示体が表示する画像は、顔画像に加えて他の生体情報を含んでもよいし、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでもよい。また、画像表示体が表示する画像は、生体情報に加えて、非生体個人情報及び非個人情報のうち少なくとも一方を含んでもよいし、生体情報の代わりに、非生体個人情報及び非個人情報のうち少なくとも一方を含んでもよい。
【0026】
また、画像表示体が表示する画像は、所有者の顔画像に限らず、例えば、文字、数字、記号、図形、模様や、これらの組み合わせであってもよい。
また、画像表示媒体は、個人認証媒体に限らず、例えば、クレジットカード、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等であってもよい。
【0027】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)画像表示体を観察方向に対して直交する方向の直線を軸として、傾斜した方向から観察することで、画像を視認することが可能となる。また、転写リボン20とサーマルヘッドを用いることで、個別情報を潜像として記録することが可能となる。
(2)傾斜した方向から観察する傾斜角度の、垂直方向からの角度を小さくすることが可能となり、さらに、画像を観察可能な確度範囲を広くすることが可能となる。
(3)正面から観察した場合には画像を認識しにくく、傾斜した方向から観察した場合には画像をより認識しやすくなり、正面から観察した画像と、傾斜した方向から観察した画像のコントラストが大きくなり、表示画像をより視認し易い画像表示体を形成することが可能となる。