(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の素子と共にセンサを電子回路基板に実装するセンサ実装基板において、コイルが巻装された一対のチョークコイルを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置されることを特徴とするセンサ実装基板。
前記一対のチョークコイルと前記センサとの間に配置され、前記一対のチョークコイルと共にノイズフィルタを構成するコンデンサを備えたことを特徴とする請求項1記載のセンサ実装基板。
ナット部材と、該ナット部材に螺合するロッドを有し、該ナット部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構に装着し、前記ロッドの軸方向変位を検知する直動機構の変位検知装置において、複数の素子を実装する電子回路基板と、前記ロッドに平行に固定する永久磁石と、該永久磁石の移動経路に対向する範囲で前記電子回路基板に実装し前記永久磁石の磁束変化を検出するセンサと、コイルが巻装された一対のチョークコイルとを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置されることを特徴とする直動機構の変位検知装置。
前記電子回路基板を所定の間隙を以って支持する支持基板を備え、前記センサ近傍で前記電子回路基板を前記支持基板に固定することを特徴とする請求項3記載の直動機構の変位検知装置。
車両の後輪を支持するサスペンション機構に介装し当該後輪を操舵する車両の後輪操舵装置において、前記サスペンション機構に第1の連結部材及び第2の連結部材を介して連結するハウジングと、該ハウジングを構成する筒体内に収容する電動モータと、前記筒体内に収容し前記電動モータの出力を減速する減速機構と、該減速機構に連結して回転するナット部材及び該ナット部材に螺合すると共に前記第2の連結部材に連結するロッドを有し、前記ナット部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構と、前記ハウジングを構成し、前記筒体から延出する前記ロッドを囲繞するように配置して前記筒体に固定する筐体と、該筐体内に配置し複数の素子を実装する電子回路基板と、前記ロッドに平行に固定する永久磁石と、該永久磁石の移動経路に対向する範囲で前記電子回路基板に実装し前記永久磁石の磁束変化を検出するセンサと、コイルが巻装された一対のチョークコイルとを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置されることを特徴とする車両の後輪操舵装置。
前記電子回路基板を所定の間隙を以って支持する支持基板を備え、前記センサ近傍で前記電子回路基板を前記支持基板に固定することを特徴とする請求項5記載の車両の後輪操舵装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、磁場キャンセラーを構成する部品の追加により装置が大型化し、コストアップとなる。また、上記特許文献2においては、外乱磁場をトロイダルコア内で打ち消すように構成されているので、コイルのインダクタンスが低下してしまう。従って、この外乱磁場対策コイルをノイズフィルタとしても利用する場合には本来のノイズ対策効果が低下することとなる。例えば、上記の変位検知装置及び後輪操舵装置に供される電源回路を含む電子回路基板ではノイズ対策用コイルが実装されるので、このノイズ対策用コイルを外乱磁場対策にも利用することが考えられるが、ノイズ対策用コイルとしては、一般的なノイズフィルタと同様、単一のコイルが用いられるので、上記特許文献2に記載の技術をそのまま適用することはできない。結局、別途外乱磁場対策コイルを追加せざるを得ず、大型の装置となる。
【0006】
一方、上記特許文献4においては、後輪舵角センサについて、ホールICを有し、ラック軸に装着された永久磁石の移動量に応じて転舵位置を表す信号が出力される旨説明されており、同文献の段落〔0036〕には「後輪舵角センサ21は
図8に示す基板31上に配置される」と記載されているが、この基板は「後輪舵角センサ21と永久磁石21aとの間隙の管理」(同段落〔0037〕に記載)を行うものであり、複数の素子を実装する電子回路基板に相当するものではない。一般的に、電子回路基板にはセンサを適切に保持し得る程の剛性は求められないので、直接センサを装着することは行われていない。従って、特許文献4においては、後輪舵角センサが装着されるサーボユニットは電子制御ユニットと別体として形成されており、一体化も示唆されているものの、後輪舵角センサが電子制御ユニット内に配置されることまで想起し得るものではない。
【0007】
尚、上記特許文献3に記載の車輪操舵装置においては、モータのハウジングと減速機構のハウジングが螺着され、更に後者のハウジングとカバーがロックナットによって締結されており、これらに加えて変位検知装置が装着されるので、部品点数が多いだけでなく、組み付けが困難でコストアップ要因となる。
【0008】
そこで、本発明は、複数の素子と共にセンサを電子回路基板に実装するセンサ実装基板において、センサに対する外乱磁場を適切に低減し得るセンサ実装基板を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明は、直動機構に装着し、ロッドの軸方向変位を検知する変位検知装置において、センサを電子回路基板に適切に装着し、小型化、低コスト化を可能とする直動機構の変位検知装置を提供することを課題とする。更に、車両の後輪を支持するサスペンション機構に介装し当該後輪を操舵する車両の後輪操舵装置において、上記の変位検知装置を備え、組付が容易で、低コスト化を可能とする後輪操舵装置を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明は、複数の素子と共にセンサを電子回路基板に実装するセンサ実装基板において、コイルが巻装された一対のチョークコイルを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置される構成としたものである。上記のセンサ実装基板において、前記一対のチョークコイルと前記センサとの間に配置され、前記一対のチョークコイルと共にノイズフィルタを構成するコンデンサを備えたものとするとよい。
【0011】
また、ナット部材と、該ナット部材に螺合するロッドを有し、該ナット部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構に装着し、前記ロッドの軸方向変位を検知する直動機構の変位検知装置において、複数の素子を実装する電子回路基板と、前記ロッドに平行に固定する永久磁石と、該永久磁石の移動経路に対向する範囲で前記電子回路基板に実装し前記永久磁石の磁束変化を検出するセンサと、コイルが巻装された一対のチョークコイルとを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置される構成としたものである。更に、上記の変位検知装置において、前記電子回路基板を所定の間隙を以って支持する支持基板を備えたものとし、前記センサ近傍で前記電子回路基板を前記支持基板に固定する構成とするとよい。
【0012】
更に、車両の後輪を支持するサスペンション機構に介装し当該後輪を操舵する車両の後輪操舵装置において、前記サスペンション機構に第1の連結部材及び第2の連結部材を介して連結するハウジングと、該ハウジングを構成する筒体内に収容する電動モータと、前記筒体内に収容し前記電動モータの出力を減速する減速機構と、該減速機構に連結して回転するナット部材及び該ナット部材に螺合すると共に前記第2の連結部材に連結するロッドを有し、前記ナット部材の回転運動を前記ロッドの直線運動に変換する直動機構と、前記ハウジングを構成し、前記筒体から延出する前記ロッドを囲繞するように配置して前記筒体に固定する筐体と、該筐体内に配置し複数の素子を実装する電子回路基板と、前記ロッドに平行に固定する永久磁石と、該永久磁石の移動経路に対向する範囲で前記電子回路基板に実装し前記永久磁石の磁束変化を検出するセンサと、コイルが巻装された一対のチョークコイルとを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が前記電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、前記一対のチョークコイルが配置され、前記センサは二つの前記コイル軸から等しい距離の線上に配置される構成としたものである。更に、上記の後輪操舵装置において、前記電子回路基板を所定の間隙を以って支持する支持基板を備えたものとし、前記センサ近傍で前記電子回路基板を前記支持基板に固定する構成とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のセンサ実装基板においては、コイルが巻装された一対のチョークコイルを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、一対のチョークコイルが配置され、センサは二つのコイル軸から等しい距離の線上に配置されるように構成されており、チョークコイルの磁場ベクトルの方向が逆向きになるので、相互に磁場を打ち消し合うことになり、センサに対する外乱磁場を適切に低減することができる。従って、別途外乱磁場対策コイルを設けることなく、一対のチョークコイル(及びコンデンサ)を用いてノイズフィルタを構成することができ、省スペースで外乱磁場を低減しつつノイズフィルタ機能を維持することができる。更に、一対のチョークコイルとセンサとの間にコンデンサを配置する構成としても、外乱磁場を低減しつつノイズフィルタ機能を維持することができる。
【0014】
また、本発明の変位検知装置においては、上記のようにコイルが巻装された一対のチョークコイルを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、一対のチョークコイルが配置されると共に、永久磁石の移動経路に対向する範囲で電子回路基板にセンサが実装されるように構成されており、センサに対する外乱磁場を適切に低減することができ、永久磁石の磁束変化を確実に検出することができるので、センサを電子回路基板に直接支持することができ、変位検知装置として小型軽量化が可能となり、コスト低減が可能となる。更に、上記の支持基板を備えたものとし、センサ近傍で電子回路基板を支持基板に固定することとすれば、電子回路基板を一層適切に支持することができる。
【0015】
更に、本発明の後輪操舵装置においても、上記のようにコイルが巻装された一対のチョークコイルを備え、各々のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、各々のコイル軸が電子回路基板に垂直で相互に平行となるように、一対のチョークコイルが配置されると共に、永久磁石の移動経路に対向する範囲で電子回路基板にセンサが実装されるように構成されており、センサに対する外乱磁場を適切に低減することができ、永久磁石の磁束変化を確実に検出することができるので、センサを電子回路基板に直接支持することができ、小型軽量化が可能となり、後輪操舵装置全体としてのコスト低減が可能となる。更に、上記の支持基板を備えたものとし、センサ近傍で電子回路基板を支持基板に固定することとすれば、電子回路基板を一層適切に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子回路基板の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子回路基板の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に対する外乱磁場シミュレーション結果の磁場密度を示す平面図である。
【
図4】本発明の直動機構及び変位検知装置の一実施形態を示す横断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の直動機構に供される筐体及び変位検知装置の横断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の直動機構に供される筐体の斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態の直動機構に供される筐体及び磁石ブロックの平面図である。
【
図8】本発明の後輪操舵装置の一実施形態に係る全体構成を示す横断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態の後輪操舵装置に供されるアクチュエータ部分を拡大して示す横断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態の後輪操舵装置に供されるコントローラ部分を拡大して示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に関し、先ず、センサ実装基板について
図1乃至
図3を参照して説明する。本実施形態のセンサ実装基板は、
図4乃至
図7を参照して後述する変位検知装置に供されるもので、複数の素子(その一部を
図1に61乃至63で示す)と共に、本願発明が対象とするセンサの一態様として変位センサ5aが電子回路基板40に実装されている。本実施形態の変位センサ5aは例えば磁気ベクトルセンサで構成され、永久磁石(
図4に5bで示すが、これについては後述する)の磁束変化を検出するように構成されている。
【0018】
変位センサ5aは
図1に破線で示すように、電子回路基板40の一方側の面(
図1の裏面)に配置され、その反対側の面(
図1の表面)に、コイルが巻装された一対のチョークコイル61及び62が配置されている。変位センサ5aとチョークコイル61及び62との位置関係は、チョークコイル61及び62のコイル軸上の磁界の向きが相互に逆向きであり、チョークコイル61及び62のコイル軸が電子回路基板40に垂直で相互に平行となるように、チョークコイル61及び62が配置され、変位センサ5aは二つのコイル軸から等しい距離の線上に配置されている。
【0019】
更に、本実施形態では、
図1に示すように、チョークコイル61及び62と変位センサ5aとの間の電子回路基板40に配置された二つのコンデンサを含め、複数のコンデンサ(代表して63で表す)が実装されており、これらのコンデンサ63とチョークコイル61及び62によってLC回路のノイズフィルタが構成されている。尚、このノイズフィルタの回路図は従前と同様の一般的な構成であるので図示は省略する。また、その他の素子についても、本発明とは直接関係しないので、図示を省略している。
【0020】
前述のように、チョークコイル61及び62は、夫々のコイル軸が電子回路基板40に垂直で相互に平行となるように配置されているので、コイルの巻き方向に対し互い違いに電流を供給することにより(通電方向を
図1に二点鎖線の矢印で示す)、チョークコイル61及び62の磁場ベクトルの方向が逆向き(各々の方向を
図1の各素子内に記号で示すように、紙面に対して相互に逆方向)になるので、相互に磁場を打ち消し合うことになる。この結果、フィルタ機能を損なうことなく、変位センサ5aに対する外乱磁場の密度を大幅に低減することができる。換言すれば、省スペースで外乱磁場を低減しつつノイズフィルタ機能を維持することができる。
【0021】
ここで、チョークコイル61及び62は独立したコイルであり、外乱磁場は漏れ磁束であることから、外乱磁場を打ち消した場合でも各コイルのインダクタンスは低下することはないので、ノイズ対策と外乱磁場の低減を同時に行うことができる。換言すれば、上記の外乱磁場の打ち消し構成によってノイズ対策が制限されることはなく、また、コイルの回路構成は直列、並列の何れでもよく、インダクタンス値及び許容電流値の調整が可能である。
【0022】
而して、
図1及び
図2に示す上記の構成による効果について外乱磁場シミュレーションを行ったところ、
図3に示すように、破線で囲まれた領域F1から領域F5に至るに従い(外乱)磁場の密度が小さくなり、変位センサ5a近傍(領域F5等)の外乱磁場はセンサ精度に影響することがない程度に低減されていることを確認できた。尚、上記の構成は、変位センサ5aに限るものではなく、種々の磁気感応センサに適用可能である。また、コイルは同一であればよく、その種類が制限されるものではない。
【0023】
次に、直動機構及び変位検知装置の一実施形態について
図4乃至
図7を参照して説明する。
図4において、直動機構3cは、回転運動するナット部材36と、このナット部材36に螺合するロッド2を有し、ナット部材36の回転運動をロッド2の直線運動に変換するものであり、螺子機構とも呼ばれる。本実施形態の変位検知装置5は、上記ロッド2の軸方向変位を検知するもので、変位センサ5a及び永久磁石5bを備え、永久磁石5bは磁石ブロック50内に保持されている。変位センサ5aは前述のように磁気ベクトルセンサで構成され、永久磁石5bの移動経路に対向する範囲で電子回路基板40の中央部(
図1に示す位置)に実装され、永久磁石5bの磁束変化を検出するように構成されている。尚、直動機構3cは、後述する後輪操舵装置に搭載され、ナット部材36は軸受37に回転可能に支持され、ロッド2は筐体12を挿通するように装着される。
【0024】
図4及び
図5に示すように、ロッド2の両側面には、軸方向に長尺となる長溝(略矩形の凹部)2r、2sが形成され、両者間を貫通する貫通孔2hが形成されている。而して、一方の長溝2rに磁石ブロック50が配置され、反対側の長溝2sから貫通孔2hにボルト51が挿通されてナット54に螺合され、磁石ブロック50がロッド2に固定されるように構成されている。
【0025】
一方、電子回路基板40は
図1及び
図2に示すように構成されており、その中央部に変位センサ5aが配置されている(
図4及び
図5ではチョークコイル61及び62等の図示は省略)。電子回路基板40は、
図1に示すように螺子穴41乃至45が形成されており、その螺子穴41乃至45に
図4及び
図5に示す螺子(代表してSで示す)が挿通され、所定の間隙を以って支持基板46に固定されている。特に、螺子穴45は変位センサ5a近傍に設けられており、四隅の螺子穴41乃至44に加えて螺子穴45の位置でも電子回路基板40が支持基板46に螺子固定されるので、変位センサ5aは安定した状態で支持される。
【0026】
図5及び
図6に示すように、筐体12の内部には支持部12sが形成されており、(筐体12を挿通する)ロッド2の軸に平行に一対の立壁部12w、12wが形成されている。これらの立壁部12w、12wの間に磁石ブロック50が嵌合され、ロッド2の貫通孔2hにボルト51が挿通されてナット54(
図4)に螺合される。而して、
図7に示すように、磁石ブロック50によって、ロッド2が立壁部12w、12wひいては筐体12に対し回転不能に支持される。
【0027】
更に、筐体12内には、
図4及び
図6に示すように、非磁性で熱抵抗が低い(熱伝導性がよい)材料で形成された伝熱プレート、例えばアルミプレート71と、放熱材料で形成された放熱シート72が配設される。即ち、上記の立壁部12w、12wが形成された開口12rを覆うように、アルミプレート71が筐体12に固定され(例えば螺子固定)、このアルミプレート71と電子回路基板40との間に挟持されるように放熱シート72が配置される。これらは
図6に白抜矢印で示すように筐体12内に配置され、
図6のアルミプレート71に斜線で示した領域に放熱シート72が圧着される。
【0028】
上記のアルミプレート71及び放熱シート72を配設することにより、開口12rに対向する位置の電子回路基板40にも発熱部品(例えばモータ駆動用素子)を実装することができる。また、磁石ブロック50の摺動(
図4及び
図7の左右方向)に伴って発生し得る摩耗粉はアルミプレート71で阻止されるので、電子回路基板40への付着を懸念する必要がない。この結果、電子回路基板40の設計の自由度が大となりコストダウンが可能となる。尚、
図4乃至
図7に示すその他の符合は、後述する後輪操舵装置の構成部品の符合と同様であり、これらについては後述する。
【0029】
次に、上記の構成になる変位検知装置5を備えた後輪操舵装置の実施形態について、
図8乃至
図10を参照して説明する。本実施形態の後輪操舵装置は四輪操舵システム(4WS)の一部を構成するものであるが、前輪操舵装置は従前と同様であるので省略している。また、車両の後輪を支持するサスペンション機構には種々の態様があるが、本実施形態では、
図8に二点鎖線で示すように構成されており、車両の後輪RL、RRを支持するリヤアクスルRAへの支持部RSと、リヤアクスルRAに軸支され揺動中心Cを中心に揺動するリンクLSとの間に、本実施形態の後輪操舵装置を構成するアクチュエータユニットAUが介装され、これによって支持部RSとリンクLSとの間が伸縮駆動され、リンクLSの揺動に応じてタイロッドTR、TRを介して後輪RL、RRが操舵される。
【0030】
アクチュエータユニットAUは、ハウジング1にロッド2が軸方向移動(直線運動)可能に支持され、その一端部がボールジョイントJLを介してリンクLSに連結され、ハウジング1がボールジョイントJAを介して支持部RSに連結されており、アクチュエータ3によってロッド2が駆動され、リヤアクスルRAの支持部RSとリンクLSとの間が伸縮駆動されるように構成されている。具体的には、アクチュエータ3を構成する電動モータ3aはコントローラ4によって制御され、電動モータ3aの回転出力が減速機構3bによって減速された後、前述の直動機構3cを介してロッド2の直線運動に変換されるように構成されている。尚、本実施形態では電動モータ3aはブラシレスモータで構成されている。
【0031】
本実施形態においては、ハウジング1は主としてアクチュエータ3の構成部品(電動モータ3a等)を内蔵するハウジング1aと、主としてコントローラ4の構成部品(電子回路基板40等)を内蔵するハウジング1bに大別され、ハウジング1aを構成する筒体10に連結カバー11が接合されると共に、ハウジング1bを構成し上下及び軸方向に開口部を有する筐体12が接合され、この筐体12の上下の開口部に蓋体15及び16が接合されるように構成されている。本実施形態のハウジング1は金属製で、連結カバー11及び筐体12はアルミニウム製で、筒体10並びに蓋体15及び16は鉄製である。
【0032】
アクチュエータ3は、
図9に拡大して示すように構成され、ステータ24にコイル23が巻装された状態で、筒体10内に圧入固定されている。電動モータ3aの出力軸は中空回転軸20で構成され、この中空回転軸20は、筒体10内に挿入される環状のモータカバー25の内径部25aと、筐体12に形成される環状溝12aに対し、夫々軸受25b及び12bを介して回転可能に支持されている。中空回転軸20の軸方向中間部には、電動モータ3aのロータを構成するコア21が圧入固定され、このコア21の円周方向に均等に永久磁石22が配設されている。
【0033】
更に、中空回転軸20内には、ロッド2が同軸に配置され、ハウジング1に対し軸方向移動(直線運動)可能に支持されると共に、ハウジング1に対し回転不能に支持されている。尚、ロッド2と筐体12の支持部との間にはブッシュ2a及び2bが介装されているが、これらはロッド2の軸方向移動を円滑に行うために摺動抵抗を低減するものである。即ち、本実施形態は言わば片持支持の伸縮機構であるので、ブッシュ2a及び2bには両端支持の軸方向移動機構における軸受としての機能は要求されない。
【0034】
本実施形態の減速機構3bは遊星歯車機構30で構成され、外歯歯車のサンギヤ31が中空回転軸20と一体的に結合され、中空回転軸20と共に回転可能に支持されている。また、内歯歯車のリングギヤ33が筒状保持部材のホルダ34に固定されており、外歯歯車のプラネタリギヤ32がサンギヤ31及びリングギヤ33に噛合しサンギヤ31回りを回転するように配設されている。そして、このプラネタリギヤ32を、ピン35を介して回転可能に支持するキャリアとして、ナット部材36がホルダ34に対し軸受37を介して回転可能に支持されている。軸受37はボールベアリングで、その内輪37aがナット部材36に嵌合されると共に、その外輪37bがホルダ34に嵌合され、C字状のスペーサ37cによってナット部材36に保持されている。
【0035】
本実施形態においては、ホルダ34及びピン35は金属製(例えば鉄製)であるが、サンギヤ31、プラネタリギヤ32及びリングギヤ33が合成樹脂製であり、サンギヤ31は金属製の中空回転軸20に一体成形されている。そして、リングギヤ33はホルダ34に対し回転不能に支持され、ホルダ34は筒体10に対して回転不能に支持されている。即ち、
図9に示すように、筒体10内に形成された環状溝10aにスナップリング14が保持され、このスナップリング14の環状側面と連結カバー11の環状開口端面との間に、軸受37の外輪37b及びホルダ34が挟持された状態で、筒体10の減速機構3b側(
図9の左側)の開口端に形成された螺子部に環状のロックナット13が螺合され、筒体10と連結カバー11が締結される。而して、ロックナット13の螺合に伴って生ずる軸方向の押圧力によって、軸受37の外輪37b及びホルダ34はスナップリング14と連結カバー11との間に強固に挟持され、この結果、ホルダ34は筒体10に対して回転不能に保持される。
【0036】
そして、ロッド2の一端部の外周面に所定の軸方向長さに亘って台形螺子が形成された雄螺子部2cとナット部材36の内周面に形成された雌螺子部36cが螺合するように配置されており、これらナット部材36とロッド2によって直動機構3cが構成されている。尚、ロッド2の脱落防止用に、雄螺子部2cの先端にはナット2dが螺着されている。ロッド2は、前述のように支持されているので、ロッド2に付与され得る軸方向の荷重は、ナット部材36、軸受37、ホルダ34及びスナップリング14を介して、筒体10及び連結カバー11で吸収される。
【0037】
一方、
図10に示すように、コントローラ4として、前述のチョークコイル61及び62(
図10では図示省略)等を含む複数の素子が実装され電子制御装置(図示せず)を構成する電子回路基板40、並びに前述の変位検知装置5を構成する変位センサ5a及び磁石ブロック50がハウジング1b内に収容されている。前述のように、変位センサ5aは電子回路基板40に直接支持されているが、チョークコイル61及び62によって外乱磁場を適切に低減することができ、永久磁石5bの磁束変化を確実に検出することができる。尚、
図10に示す変位検知装置5は
図4乃至
図7と同様の構成であるので、ここでの説明は省略するが、磁石ブロック50はロッド2の直線運動時の軸方向変位を検出する機能を有する共に、ロッド2の回転を阻止する機能を有している。
【0038】
而して、本実施形態のアクチュエータ3においては、電動モータ3aによって中空回転軸20が回転駆動されると、その回転出力が遊星歯車機構30の減速機構3bによって減速されてナット部材36が回転駆動され、更に、直動機構3cによって、ナット部材36の回転運動がロッド2の直線運動に変換される。この結果、前述のようにリヤアクスルRAの支持部RSとリンクLSとの間が伸縮駆動されて、後輪の舵角が調整される。