特許第6314841号(P6314841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6314841
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】コク味付与剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/21 20160101AFI20180416BHJP
【FI】
   A23L27/21
【請求項の数】22
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-559675(P2014-559675)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2014051745
(87)【国際公開番号】WO2014119535
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-19482(P2013-19482)
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】宮木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】黒田 素央
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/114022(WO,A1)
【文献】 特表2009−514791(JP,A)
【文献】 特開2004−350554(JP,A)
【文献】 特開2011−229470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を含む、コク味付与剤であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、以下の(1)および(2)を満たす、コク味付与剤
(1)コハク酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり400μmol以下となるように含まれる;
(2)コハク酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり0.005g〜0.1gとなるように含まれる場合は除く
【請求項2】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を含む、コク味付与剤であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され、
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され、
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、前記コク味付与剤がγ−Glu−Abuを含む場合を除く、コク味付与剤。
【請求項3】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を含む、コク味付与剤であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され、
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され、
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、さらにプロリンを含む、コク味
付与剤。
【請求項4】
前記γ−グルタミルペプチドに対する前記ジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が1より大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項5】
前記γ−グルタミルペプチドに対する前記ジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が75000以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項6】
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、請求項1〜のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項7】
前記ジカルボン酸が、コハク酸である、請求項1〜のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項8】
さらにプロリンを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項9】
呈味の持続性を増強する機能を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコク味付与剤。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のコク味付与剤を飲食品またはその原料に添加することを含む、コク味の付与された飲食品の製造方法。
【請求項11】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を飲食品またはその原料に添加することを含む、コク味の付与された飲食品の製造方法であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、以下の(1)および(2)を満たす、方法
(1)コハク酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり400μmol以下となるように添加される;
(2)コハク酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり0.005g〜0.1gとなるように添加される場合は除く
【請求項12】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を飲食品またはその原料に添加することを含む、コク味の付与された飲食品の製造方法であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され、
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され、
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、前記方法がγ−Glu−Abuを飲食品またはその原料に添加することを含む場合を除く、方法。
【請求項13】
γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸を飲食品またはその原料に添加することを含む、コク味の付与された飲食品の製造方法であって、
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択され、
前記ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択され、
ただし、前記ジカルボン酸がコハク酸である場合には、さらにプロリンを飲食品またはその原料に添加することを含む、方法。
【請求項14】
添加されるγ−グルタミルペプチドに対する添加されるジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が1より大きい、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
添加されるγ−グルタミルペプチドに対する添加されるジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が75000以下である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記γ−グルタミルペプチドが、喫食濃度が飲食品100gあたり0.017μmol〜1.65μmolとなるように添加される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ジカルボン酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり0.6μmol〜1235μmolとなるように添加される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ジカルボン酸が、コハク酸である、請求項11〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
さらにプロリンを添加することを含む、請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記ジカルボン酸の純度が90%以上である、請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記製造される飲食品において呈味の持続性が増強されている、請求項11〜21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「コク味」付与剤およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品領域では呈味物質が古くから利用されてきた。特に、甘味(sweet taste)、塩味(salty taste)、酸味(sour taste)、苦味(bitter taste)、うま味(umami)で表される5基本味(five basic taste)を有する物質やこれらを増強する物質が調味料として広く利用されている。
【0003】
上記基本味では表せない味覚として「コク味」がある。「コク味」とは、基本味だけではなく、厚み(thickness)、ひろがり(growth (mouthfulness))、持続性(continuity)、まとまり(harmony)等の基本味の周辺の味(marginal tastes)や風味(marginal flavor)をも増強した味覚をいう。これまで、飲食品に対して効果的に「コク味」を付与する技術が求められてきた。
【0004】
「コク味」を付与することのできる物質(「コク味」付与物質)としては、例えば、グルタチオン(γ−Glu−Cys−Gly)やγ−Glu−Val−Gly等のγ−グルタミルトリペプチド、およびγ‐Glu‐Metやγ‐Glu‐Thr等のγ−グルタミルジペプチドが知られている(特許文献1、2)。特許文献2には、これらγ−グルタミルペプチドは薬理学的に許容される任意の塩の形態でも用いることができ、塩としてはコハク酸との塩やマレイン酸との塩が例示できることが開示されている。
【0005】
コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸は、いずれもジカルボン酸であり、互いに類似の構造を有する。例えば、コハク酸はうま味物質として知られている。
【0006】
しかしながら、γ−Glu−Val−Gly等の「コク味」付与物質とコハク酸等のジカルボン酸とを併用することで「コク味」がさらに増強されることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1464928号公報
【特許文献2】国際公開第2007/055393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、飲食品に対して効果的に「コク味」を付与する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、γ−Glu−Val−Gly等の「コク味」付与物質とコハク酸等のジカルボン酸とを併用することで、「コク味」がさらに増強されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおり例示できる。
[1]
γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択されるγ−グルタミルペプチド、ならびにコハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択されるジカルボン酸を含む、「コク味」付与剤。
[2]
前記γ−グルタミルペプチドに対する前記ジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が1より大きい、[1]に記載の「コク味」付与剤。
[3]
前記γ−グルタミルペプチドに対する前記ジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が75000以下である、[1]または[2]に記載の「コク味」付与剤。
[4]
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、[1]〜[3]のいずれかに記載の「コク味」付与剤。
[5]
前記ジカルボン酸が、コハク酸である、[1]〜[4]のいずれかに記載の「コク味」付与剤。
[6]
さらにプロリンを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の「コク味」付与剤。
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載の「コク味」付与剤を飲食品またはその原料に添加することを含む、「コク味」の付与された飲食品の製造方法。
[8]
γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択されるγ−グルタミルペプチド、ならびにコハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択されるジカルボン酸を、飲食品またはその原料に添加することを含む、「コク味」の付与された飲食品の製造方法。
[9]
添加されるγ−グルタミルペプチドに対する添加されるジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が1より大きい、[8]に記載の方法。
[10]
添加されるγ−グルタミルペプチドに対する添加されるジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が75000以下である、[8]または[9]に記載の方法。
[11]
前記γ−グルタミルペプチドが、喫食濃度が飲食品100gあたり0.017μmol〜1.65μmolとなるように添加される、[8]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記ジカルボン酸が、喫食濃度が飲食品100gあたり0.6μmol〜1235μmolとなるように添加される、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
前記γ−グルタミルペプチドが、γ−Glu−Val−Glyである、[8]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]
前記ジカルボン酸が、コハク酸である、[8]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
さらにプロリンを添加することを含む、[8]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
前記ジカルボン酸の純度が90%以上である、[8]〜[15]のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、アミノ酸およびアミノ酸誘導体は、特記しない限りいずれもL−体である。また、本発明において、濃度は、特記しない限り質量を基準とする濃度である。すなわち、例えば、「%」は特記しない限り「質量%」を、「ppm」は特記しない限り「質量ppm」を示す。また、本発明において、ある成分の「喫食濃度」とは、当該成分を含む飲食品を喫食する際の、当該飲食品における当該成分の濃度をいう。すなわち、ある成分の「喫食濃度」とは、具体的には、例えば、当該成分を含む本発明の「コク味」付与剤を添加して製造した飲食品または当該成分を添加して製造した飲食品を喫食する際の、当該飲食品における当該成分の濃度をいう。
【0012】
<1>本発明の「コク味」付与剤
本発明は、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択される1またはそれ以上のγ−グルタミルペプチド、ならびにコハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択される1またはそれ以上のジカルボン酸を含む、「コク味」付与剤を提供する。以下、同「コク味」付与剤を、「本発明の「コク味」付与剤」ともいう。また、以下、同γ−グルタミルペプチドおよび同ジカルボン酸を総称して「有効成分」ともいう。
【0013】
<1−1>本発明のγ−グルタミルペプチド
本発明において用いられるγ−グルタミルペプチドは、一般式:γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)で表されるγ−グルタミルトリペプチドおよび一般式:γ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)で表されるγ−グルタミルジペプチドからなる群より選択される。上記一般式において、「γ−」とは、グルタミン酸のγ位のカルボキシル基を介してXまたはYが結合していることを意味する。γ−グルタミルペプチドとしては、1種のγ−グルタミルペプチドを用いてもよく、2種またはそれ以上のγ−グルタミルペプチドを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
アミノ酸として、具体的には、例えば、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Met、Asn、Gln、Pro、Hyp等の中性アミノ酸、Asp、Glu等の酸性アミノ酸、Lys、Arg、His等の塩基性アミノ酸、Phe、Tyr、Trp等の芳香族アミノ酸、ホモセリン、シトルリン、オルニチン、α−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、タウリンが挙げられる。すなわち、「Cysを除くアミノ酸」として、具体的には、例えば、これらの内、Cys以外のものが挙げられる。
【0015】
なお、本発明において、アミノ基残基の略号は以下のアミノ酸を意味する。
(1)Gly:グリシン
(2)Ala:アラニン
(3)Val:バリン
(4)Leu:ロイシン
(5)Ile:イソロイシン
(6)Met:メチオニン
(7)Phe:フェニルアラニン
(8)Tyr:チロシン
(9)Trp:トリプトファン
(10)His:ヒスチジン
(11)Lys:リジン
(12)Arg:アルギニン
(13)Ser:セリン
(14)Thr:トレオニン
(15)Asp:アスパラギン酸
(16)Glu:グルタミン酸
(17)Asn:アスパラギン
(18)Gln:グルタミン
(19)Cys:システイン
(20)Pro:プロリン
(21)Orn:オルニチン
(22)Sar:サルコシン
(23)Cit:シトルリン
(24)Nva:ノルバリン
(25)Nle:ノルロイシン
(26)Abu:α−アミノ酪酸
(27)Tau:タウリン
(28)Hyp:ヒドロキシプロリン
(29)t−Leu:tert−ロイシン
【0016】
アミノ酸誘導体とは、上記のようなアミノ酸の各種誘導体をいう。アミノ酸誘導体としては、例えば、特殊アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノアルコール、ならびに末端カルボニル基、末端アミノ基、およびシステインのチオール基等の官能基の1またはそれ以上が各種置換基により置換されたアミノ酸が挙げられる。置換基として、具体的には、例えば、アルキル基、アシル基、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルフォニル基、および各種保護基が挙げられる。アミノ酸誘導体として、具体的には、例えば、Arg(NO2):N−γ−ニトロアルギニン、Cys(SNO):S−ニトロシステイン、Cys(S−Me):S−メチルシステイン、Cys(S−allyl):S−アリルシステイン、Val−NH2:バリンアミド、Val−ol:バリノール(2−アミノ−3−メチル−1−ブタノール)、Met(O):メチオニンスルホキシド、およびCys(S−Me)(O):S−メチルシステインスルホキシドが挙げられる。
【0017】
γ−グルタミルペプチドとして、具体的には、例えば、γ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Nva−Gly、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Nvaが挙げられる。これらの中では、例えば、γ−Glu−Val−Glyが好ましい。
【0018】
本発明において、γ−グルタミルペプチドは、特記しない限り、いずれもフリー体、もしくはその塩、またはそれらの混合物である。
【0019】
塩は、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、例えば、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。なお、塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
γ−グルタミルペプチドとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0021】
ペプチドの製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。公知の方法としては、例えば、(1)化学的にペプチドを合成する方法や(2)酵素的な反応によりペプチドを合成する方法が挙げられる。アミノ酸残基数が2〜3残基の比較的短いペプチドの合成には、特に、化学的に合成する方法を用いるのが簡便である。
【0022】
化学的にペプチドを合成する場合、ペプチド合成機を用いてペプチドを合成あるいは半合成することができる。化学的にペプチドを合成する方法としては、例えば、ペプチド固相合成法が挙げられる。合成されたペプチドは通常の手段、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。このようなペプチド固相合成法、およびそれに続くペプチド精製はこの技術分野においてよく知られたものである。
【0023】
酵素的な反応によりペプチドを合成する場合、例えば、国際公開パンフレットWO2004/011653号に記載の方法を用いることができる。具体的には、例えば、カルボキシル基がエステル化またはアミド化されたアミノ酸またはジペプチドと、アミノ基がフリーの状態であるアミノ酸(例えばカルボキシル基が保護されたアミノ酸)とを、ペプチド生成酵素の存在下で反応させることにより、ジペプチドまたはトリペプチドを合成することができる。合成されたジペプチドまたはトリペプチドは、適宜精製することができる。ペプチド生成酵素としては、例えば、ペプチドを生成する能力を有する微生物の培養物、該培養物から分離した培養上清、該培養物から分離した菌体、該微生物の菌体処理物、それらから分離したペプチド生成酵素が挙げられる。ペプチド生成酵素としては、必要に応じて適宜精製されたものを用いることができる。
【0024】
また、例えば、γ−グルタミルペプチドは、当該γ−グルタミルペプチドの生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体から当該γ−グルタミルペプチドを回収することで製造することができる。具体的には、例えば、特開2012-213376に記載の方法により、γ−Glu−Abu等のγ−グルタミルペプチドを高濃度に含有する酵母が得られる。
【0025】
γ−グルタミルペプチドは、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。例えば、γ−グルタミルペプチドとしては、純度が50%以上、70%以上、90%以上、または95%以上のものを用いてもよい。また、例えば、γ−グルタミルペプチドとしては、当該γ−グルタミルペプチドを含有する素材を用いてもよい。γ−グルタミルペプチドを含有する素材として、具体的には、例えば、当該γ−グルタミルペプチドの生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、およびそれらの加工品が挙げられる。そのような加工品としては、例えば、γ−グルタミルペプチドを含有する酵母エキス(特開2012-213376)が挙げられる。
【0026】
<1−2>本発明のジカルボン酸
本発明において用いられるジカルボン酸は、コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択される。コハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸は、互いに類似の構造を有する。ジカルボン酸としては、1種のジカルボン酸を用いてもよく、2種またはそれ以上のジカルボン酸を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明において、ジカルボン酸は、特記しない限り、いずれもフリー体、もしくはその塩、またはそれらの混合物である。ジカルボン酸の塩については、上述のγ−グルタミルペプチドのカルボキシル基等の酸性基に対する塩の記載を準用できる。
【0028】
ジカルボン酸としては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。
【0029】
ジカルボン酸の製造方法は特に制限されず、例えば公知の方法を利用できる。例えば、ジカルボン酸は、化学合成により製造することができる。また、例えば、ジカルボン酸は、当該ジカルボン酸の生産能を有する微生物を培養し、培養液または菌体から当該ジカルボン酸を回収することで製造することができる。具体的には、例えば、特開2008-011714に記載の方法により、微生物を利用してコハク酸を製造することができる。また、例えば、ジカルボン酸は、当該ジカルボン酸を含有する農水畜産物から回収することで製造することができる。
【0030】
ジカルボン酸は、所望の程度に精製されていてもよく、そうでなくてもよい。例えば、ジカルボン酸としては、純度が50%以上、70%以上、90%以上、または95%以上のものを用いてもよい。また、例えば、ジカルボン酸としては、当該ジカルボン酸を含有する素材を用いてもよい。ジカルボン酸を含有する素材として、具体的には、例えば、当該ジカルボン酸の生産能を有する微生物を培養して得られた培養液、菌体、培養上清等の発酵生産物、当該ジカルボン酸を含有する農水畜産物、およびそれらの加工品が挙げられる。
【0031】
<1−3>本発明の「コク味」付与剤
本発明の「コク味」付与剤は、上記有効成分を含む。
【0032】
なお、本発明の「コク味」付与剤がγ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方に該当する成分、例えばγ−グルタミルペプチドのジカルボン酸塩、を含む場合、同成分は本発明の「コク味」付与剤においてγ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方を兼ねる。すなわち、本発明の「コク味」付与剤がγ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方に該当する成分、例えばγ−グルタミルペプチドのジカルボン酸塩、を含む場合、本発明の「コク味」付与剤は別途γ−グルタミルペプチドおよび/またはジカルボン酸を含んでいてもよく、含んでいなくともよい。
【0033】
本発明の「コク味」付与剤は、上記有効成分のみからなるものであってもよく、その他の成分を含むものであってもよい。
【0034】
「その他の成分」は、経口摂取可能なものであれば特に制限されず、例えば、調味料、飲食品、または医薬品に配合して利用されるものを利用できる。
【0035】
「その他の成分」として、具体的には、例えば、プロリンが挙げられる。本発明において、プロリンは、特記しない限り、フリー体、もしくはその塩、またはそれらの混合物である。プロリンの塩については、上述のγ−グルタミルペプチドの塩の記載を準用できる。
【0036】
また、「その他の成分」としては、例えば、本発明において用いられるγ−グルタミルペプチド以外の、「コク味」付与活性を有する化合物やカルシウム受容体刺激活性を有する化合物が挙げられる。「コク味」付与活性を有する化合物として、具体的には、例えば、グルタチオンやアリインが挙げられる。カルシウム受容体刺激活性を有する化合物として、具体的には、例えば、カルシウム、カドリニウム等のカチオン;ポリアルギニン、ポリリジン等の塩基性ペプチド;プトレッシン、スペルミン、スペルミジン等のポリアミン;プロタミン等のタンパク質;フェニルアラニン、グルタチオン等のペプチド;シナカルセットが挙げられる。これらの化合物についても、塩を形成し得るものは塩の形態で利用されてもよい。塩については、上述のγ−グルタミルペプチドの塩の記載を準用できる。
【0037】
また、「その他の成分」として、具体的には、例えば、砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、スクロース、グルコース、フルクトース、異性化糖、オリゴ糖等の糖類;キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;天然または人工甘味料;食塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;酢酸、クエン酸等の有機酸類およびその塩;グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸類およびその塩;イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸等の核酸類およびその塩;食物繊維、pH緩衝剤、香料、食用油、エタノール、水が挙げられる。塩については、上述のγ−グルタミルペプチドの塩の記載を準用できる。
【0038】
これらの成分は、単独で、あるいは任意の組み合わせで利用されてよい。
【0039】
本発明の「コク味」付与剤の形態は特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、液状、ペースト状、キューブ状等のいかなる形態であってもよい。
【0040】
本発明の「コク味」付与剤における有効成分の濃度は、本発明の「コク味」付与剤を利用して飲食品に「コク味」を付与できる限り特に制限されず、有効成分の種類、有効成分の喫食濃度、本発明の「コク味」付与剤の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0041】
本発明の「コク味」付与剤における有効成分の総濃度は、特に制限されないが、例えば、0.01ppm以上、0.1ppm以上、1ppm以上、または10ppm以上であってよい。また、本発明の「コク味」付与剤における有効成分の総濃度は、特に制限されないが、例えば、100%以下、10%以下、または1%以下であってよい。なお、「有効成分の総濃度」とは、γ−グルタミルペプチドの濃度およびジカルボン酸の濃度の合計を意味する。
【0042】
本発明の「コク味」付与剤における有効成分の比率は、本発明の「コク味」付与剤を利用して飲食品に「コク味」を付与できる限り特に制限されず、有効成分の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。本発明の「コク味」付与剤において、γ−グルタミルペプチドに対するジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])は、例えば、1より大きくてよい(すなわち、ジカルボン酸量[mol]>γ−グルタミルペプチド量[mol])。また、本発明の「コク味」付与剤において、γ−グルタミルペプチドに対するジカルボン酸のモル比は、例えば、3以上、15以上、または30以上であってよい。また、本発明の「コク味」付与剤において、γ−グルタミルペプチドに対するジカルボン酸のモル比は、例えば、75000以下、4000以下、または200以下であってよい。
【0043】
本発明の「コク味」付与剤におけるγ−グルタミルペプチドの濃度は、例えば、上記例示した有効成分の総濃度と上記例示した有効成分の比率を満たすような範囲に設定されてよい。また、γ−グルタミルペプチドは、例えば、γ−グルタミルペプチドの喫食濃度が、飲食品100gあたり、0.015μmol以上、または0.3μmol以上となるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてよい。また、γ−グルタミルペプチドは、例えば、γ−グルタミルペプチドの喫食濃度が、飲食品100gあたり、200μmol以下、20μmol以下、または2μmol以下となるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてよい。γ−グルタミルペプチドは、具体的には、例えば、γ−グルタミルペプチドの喫食濃度が、飲食品100gあたり、0.017μmol〜1.65μmol、または0.33μmol〜1.65μmolとなるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてもよい。なお、2またはそれ以上のγ−グルタミルペプチドを用いる場合、γ−グルタミルペプチドの喫食濃度とは、2またはそれ以上のγ−グルタミルペプチドの喫食濃度の合計であってよい。
【0044】
本発明の「コク味」付与剤におけるジカルボン酸の濃度は、例えば、上記例示した有効成分の総濃度と上記例示した有効成分の比率を満たすような範囲に設定されてよい。ジカルボン酸は、例えば、ジカルボン酸の喫食濃度が、飲食品100gあたり、0.5μmol以上、または5μmol以上となるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてよい。また、ジカルボン酸は、例えば、ジカルボン酸の喫食濃度が、飲食品100gあたり、1400μmol以下、または400μmol以下となるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてよい。ジカルボン酸は、具体的には、例えば、ジカルボン酸の喫食濃度が、飲食品100gあたり、0.6μmol〜1235μmol、または6.2μmol〜309μmolとなるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてもよい。なお、2またはそれ以上のジカルボン酸を用いる場合、ジカルボン酸の喫食濃度とは、2またはそれ以上のジカルボン酸の喫食濃度の合計であってよい。
【0045】
本発明の「コク味」付与剤における「その他の成分」の濃度は、本発明の「コク味」付与剤を利用して飲食品に「コク味」を付与できる限り特に制限されず、「その他の成分」の種類、「その他の成分」の喫食濃度、本発明の「コク味」付与剤の使用量等の諸条件に応じて適宜設定することができる。「その他の成分」の喫食濃度は、「その他の成分」の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。例えば、プロリンは、プロリンの喫食濃度が、飲食品100gあたり、0.5μmol〜2000μmol、好ましくは2μmol〜1000μmol、さらに好ましくは5μmol〜500μmolとなるように、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてよい。
【0046】
また、本発明の「コク味」付与剤に含まれる各成分(すなわち、有効成分および必要によりその他の成分)は、互いに混合されて本発明の「コク味」付与剤に含まれていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の「コク味」付与剤に含まれていてもよい。本発明の「コク味」付与剤を添加して製造された飲食品中で有効成分が共存していれば「コク味」の増強効果が得られる。
【0047】
<2>本発明の飲食品の製造方法
本発明の「コク味」付与剤は、飲食品に「コク味」を付与するために好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の「コク味」付与剤を飲食品またはその原料に添加することを含む、「コク味」の付与された飲食品の製造方法を提供する。
【0048】
また、有効成分を飲食品またはその原料に添加することによって飲食品に「コク味」を付与してもよい。すなわち、本発明は、γ−Glu−X−Gly(XはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)およびγ−Glu−Y(YはCysを除くアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)からなる群より選択される1またはそれ以上のγ−グルタミルペプチド、ならびにコハク酸、マレイン酸、およびメチルマロン酸からなる群より選択される1またはそれ以上のジカルボン酸を、飲食品またはその原料に添加することを含む、「コク味」の付与された飲食品の製造方法を提供する。
【0049】
このような「コク味」の付与された飲食品の製造方法を「本発明の方法」ともいう。また、このようにして製造される「コク味」の付与された飲食品を「本発明の飲食品」ともいう。
【0050】
本発明において、「コク味」とは、甘味(sweet taste)、塩味(salty taste)、酸味(sour taste)、苦味(bitter taste)、うま味(umami)で表される5基本味(five basic taste)では表せない感覚を意味し、基本味だけではなく、厚み(thickness)、ひろがり(growth (mouthfulness))、持続性(continuity)、まとまり(harmony)等の基本味の周辺の味(marginal tastes)や風味(marginal flavor)をも増強した味覚をいう。本発明において、「「コク味」の付与」には、基本味の増強や、それに伴う厚み、ひろがり、持続性、まとまりなど基本味の周辺の味を付与または増強することが含まれる。
【0051】
飲食品としては、特に制限されず、あらゆる飲食品が包含される。飲食品としては、例えば、水、果汁、牛乳、茶、アルコール飲料、スープなどの飲料;ハム、ソーセージなどの食肉加工食品;かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品;バター、発酵乳、粉乳などの乳製品;パン、麺類、菓子、ソース等が挙げられる。果汁として、具体的には、例えば、リンゴジュースが挙げられる。ソースとして、具体的には、例えば、トマトソースが挙げられる。スープとして、具体的には、例えば、ミネストローネスープ、ポタージュスープ(コーン、ポテト等)、コンソメスープ(チキン、ポーク、ビーフ等)、ラーメンスープ(醤油、味噌、豚骨、塩等)、中華スープ、味噌汁が挙げられる。
【0052】
本発明の飲食品は、本発明の「コク味」付与剤または有効成分を添加すること以外は、通常の飲食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。本発明の「コク味」付与剤または有効成分の添加は、飲食品の製造工程のいずれの段階で行われてもよい。すなわち、本発明の「コク味」付与剤または有効成分は、飲食品の原料に添加されてもよく、製造途中の飲食品に添加されてもよく、完成した飲食品に添加されてもよい。本発明の「コク味」付与剤または有効成分は、1回のみ添加されてもよく、2またはそれ以上の回数に分けて添加されてもよい。また、本発明の「コク味」付与剤を添加する場合、本発明の「コク味」付与剤が各有効成分をそれぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に含む場合には、各有効成分は同時に飲食品またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、飲食品またはその原料に添加されてもよい。また、有効成分を添加する場合、各有効成分は同時に飲食品またはその原料に添加されてもよいし、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、飲食品またはその原料に添加されてもよい。
【0053】
本発明の「コク味」付与剤を添加する場合、その添加量は、飲食品に「コク味」を付与できる限り特に制限されず、有効成分の種類、本発明の「コク味」付与剤における有効成分の濃度、飲食品の摂取態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。例えば、飲食品またはその原料に対して、本発明の「コク味」付与剤を0.01ppm〜50%添加してもよく、0.1ppm〜10%添加してもよい。本発明の「コク味」付与剤は、例えば、各有効成分の喫食濃度が上記例示した各有効成分の喫食濃度範囲内となるように、飲食品またはその原料に対して添加されてよい。
【0054】
有効成分を添加する場合、各有効成分の添加量や各有効成分の添加量の比率については、上述した本発明の「コク味」付与剤の添加量や本発明の「コク味」付与剤における有効成分の比率についての記載を準用できる。すなわち、各有効成分は、例えば、各有効成分の喫食濃度が上記例示した各有効成分の喫食濃度範囲内となるように、飲食品またはその原料に対して添加されてよい。また、各有効成分は、例えば、上記例示した本発明の「コク味」付与剤における有効成分の比率で、飲食品またはその原料に対して添加されてよい。
【0055】
なお、γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方に該当する成分、例えばγ−グルタミルペプチドのジカルボン酸塩、を添加する場合、同成分はγ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方を兼ねる。すなわち、γ−グルタミルペプチドおよびジカルボン酸の両方に該当する成分、例えばγ−グルタミルペプチドのジカルボン酸塩、を添加する場合、別途γ−グルタミルペプチドおよび/またはジカルボン酸を添加してもよく、添加しなくともよい。
【0056】
また、本発明の方法は、さらに、その他の成分を添加することを含んでいてもよい。ここでいう「その他の成分」については、上述した本発明の「コク味」付与剤における「その他の成分」についての記載を準用できる。例えば、「その他の成分」としては、プロリンを添加することができる。「その他の成分」の添加は、上述した有効成分の添加と同様に行ってよい。例えば、プロリンは、プロリンの喫食濃度が上記例示したプロリンの喫食濃度範囲内となるように、飲食品またはその原料に対して添加されてよい。
【実施例】
【0057】
本発明は、以下の実施例によって更に具体的に説明されるが、これらはいかなる意味でも本発明を限定する意図と解してはならない。
【0058】
実施例1:γ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0059】
市販ミネストローネスープ(キャンベル社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100g(5ppm)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度15.43μmol/100g(25ppm)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表1に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0060】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0061】
結果を表1に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例2:γ−Glu−Val−Glyとコハク酸(フリー体および塩)の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸(フリー体)またはコハク酸二ナトリウムを飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0064】
市販の果汁20%リンゴジュース(コカコーラ社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100g(5ppm)、コハク酸を喫食濃度21.18μmol/100g(25ppm)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度15.43μmol/100g(25ppm)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表2に示す評価サンプルS1〜S5を調製した。
【0065】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0066】
結果を表2に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸またはコハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。以上より、フリー体のコハク酸及びコハク酸塩のいずれについても、γ−Glu−Val−Glyと併用することによって、相乗的に「コク味」が強まることが示された。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例3:γ−Glu−Val−Gly、コハク酸、およびプロリンの併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸(フリー体)に加えて、さらにプロリンを飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0069】
市販の果汁20%リンゴジュース(コカコーラ社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100g(5ppm)、コハク酸を喫食濃度21.18μmol/100g(25ppm)、及びプロリンを喫食濃度43.44μmol/100g(50ppm)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表3に示す評価サンプルS1〜S5を調製した。
【0070】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0071】
結果を表3に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸のみを併用した場合と比較して、さらにプロリンを併用した場合には、相乗的に「厚み」の強さが上昇することが明らかとなった。以上より、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸およびプロリンとを併用することによって、相乗的に「コク味」が強まることが示された。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例4:γ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを種々の濃度で飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0074】
市販トマトソース(カゴメ社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.017μmol/100g(0.05ppm)〜1.65μmol/100g(5ppm)、およびコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.6μmol/100g(1.0ppm)〜1543μmol/100g(2500ppm)となるように添加し、表4に示す評価サンプルS1〜S18を調製した。
【0075】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル2名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「++」として、評点付けを行った。
【0076】
結果を表4に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.6μmol/100g〜1543μmol/100gとなるように併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」が上昇することが明らかとなった。なお、コハク酸の呈味の観点では、コハク酸二ナトリウムの喫食濃度が1235[μmol/100g]以下の場合に好ましい結果が得られた。また、コハク酸の呈味の観点では、γ−グルタミルペプチドに対するジカルボン酸のモル比(ジカルボン酸/γ−グルタミルペプチド[mol/mol])が約75000以下の場合に好ましい結果が得られた。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例5:各種γ−グルタミルペプチドとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、各種γ−グルタミルペプチドとコハク酸二ナトリウムを飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0079】
市販の果汁20%リンゴジュース(コカコーラ社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、コハク酸二ナトリウム、γ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Nva−Gly、及びγ−Glu−Nvaを表5に示す喫食濃度となるように添加し、評価サンプルS1〜S13を調製した。
【0080】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル2名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0081】
結果を表5に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Gly、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Nva−Gly、またはγ−Glu−Nvaを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。以上より、γ−Glu−Val−Glyのみならず、その他のγ−グルタミルペプチドについても、コハク酸と併用することによって、相乗的に「コク味」が強まることが示された。
【0082】
【表5】
【0083】
実施例6:γ−Glu−Val−Glyと各種ジカルボン酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸に類似する各種ジカルボン酸(フリー体)を飲食品に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0084】
市販の果汁20%リンゴジュース(コカコーラ社製)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Gly、コハク酸、マレイン酸、及びメチルマロン酸を表6に示す喫食濃度となるように添加し、評価サンプルS1〜S9を調製した。
【0085】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル2名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度1.65μmol/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0086】
結果を表6に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸、マレイン酸、またはメチルマロン酸を併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。以上より、コハク酸のみならず、コハク酸に類似する各種ジカルボン酸についても、γ−Glu−Val−Glyと併用することによって、相乗的に「コク味」が強まることが示された。
【0087】
【表6】
【0088】
実施例7:ポタージュスープにおけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムをポタージュスープに添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0089】
市販ポタージュスープ(クノール食品社製:製品の指示通りに調製したもの)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表7に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0090】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0091】
結果を表7に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0092】
【表7】
【0093】
実施例8:チキンコンソメスープにおけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムをチキンコンソメスープに添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0094】
市販チキンコンソメスープ(クノール社製)1キューブを300mLの熱湯に溶解したものを評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表8に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0095】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0096】
結果を表8に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0097】
【表8】
【0098】
実施例9:醤油ラーメンスープにおけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを醤油ラーメンスープに添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0099】
市販の即席醤油ラーメン(「麺職人」醤油味:日清食品社製)の別添スープ1袋を450mLの熱湯に溶解したものを評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表9に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0100】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0101】
結果を表9に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0102】
【表9】
【0103】
実施例10:豚骨ラーメンスープにおけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを豚骨ラーメンスープに添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0104】
市販即席豚骨ラーメン(マルちゃん「正麺」とんこつ味:東洋水産社製)の別添スープ1袋を500mLの熱湯に溶解したものを評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表10に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0105】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0106】
結果を表10に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0107】
【表10】
【0108】
実施例11:中華スープにおけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを中華スープに添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0109】
市販即席中華スープ(クノール食品社製:1袋を180mLの熱湯で溶解したものから具材を除いたもの)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表11に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0110】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0111】
結果を表11に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0112】
【表11】
【0113】
実施例12:味噌汁におけるγ−Glu−Val−Glyとコハク酸の併用による「コク味」付与効果の評価
本実施例では、γ−Glu−Val−Glyとコハク酸二ナトリウムを味噌汁に添加し、「コク味」付与効果について評価した。
【0114】
市販即席みそ汁(永谷園社製「あさげ」:製品の指示通りに調製したものから具材を除いたもの)を評価系とし、何も添加しないサンプルをコントロールとした。コントロールサンプルに、γ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100g(1.65μmol/100g)、及びコハク酸二ナトリウムを喫食濃度0.0025g/100g(15.43μmol/100g)となるように、それぞれ単独で、または組み合わせて添加し、表12に示す評価サンプルS1〜S3を調製した。
【0115】
評価サンプルの「厚み」及び「持続性」の強さについて、専門パネル3名により官能評価を行った。官能評価は、「−;変化なし」〜「+++++;非常に強い」の6段階で評点を付けることにより行った。尚、ここでいう「厚み」は調和が取れた状態で呈味全体が強まること、「持続性」は口に含んで5秒以降の呈味の強さを意味する。「厚み」及び「持続性」の強さ共に、コントロールサンプルにγ−Glu−Val−Glyを喫食濃度0.0005g/100gとなるように単独で添加した際の強さを「+」として、評点付けを行った。
【0116】
結果を表12に示す。官能評価の結果、γ−Glu−Val−Glyを単独で添加した場合と比較して、コハク酸二ナトリウムを併用した場合には、相乗的に「厚み」及び「持続性」の強さが上昇することが明らかとなった。
【0117】
【表12】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明により、飲食品に対して効果的に「コク味」を付与できる「コク味」付与剤を提供できる。また、本発明により提供される「コク味」付与剤を用いて「コク味」の付与された飲食品を製造することができる。