特許第6314872号(P6314872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6314872含有蛍光成分数決定方法及びその含有蛍光成分数決定方法を用いた分光蛍光光度計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6314872
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】含有蛍光成分数決定方法及びその含有蛍光成分数決定方法を用いた分光蛍光光度計
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20180416BHJP
   G01J 3/443 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   G01N21/64 B
   G01J3/443
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-34730(P2015-34730)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-156708(P2016-156708A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 知幸
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−033159(JP,A)
【文献】 特開2011−185844(JP,A)
【文献】 特開2005−114528(JP,A)
【文献】 特開2001−349833(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0002691(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0117418(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/013644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/64
G01J 3/443
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定励起波長の光を試料に対して照射する照射部と、
前記試料が配置される試料室と、
前記試料から放出される蛍光の光強度を検出する検出部と、
前記検出部で検出された光強度の時間変化であるN=1とした第N減衰曲線を作成して蛍光寿命rを算出する制御部とを備える分光蛍光光度計に用いられる含有蛍光成分数決定方法であって、
測定終了時間より所定時間前となる時点から当該測定終了時間までの所定時間間隔となる第X時間区間の第N減衰曲線に基づいて、前記試料に含まれる蛍光成分数を1種類と仮定して蛍光寿命rを算出する第X蛍光寿命算出ステップと、
前記第X時間区間より前の所定時間間隔となる第(X−1)時間区間の第N減衰曲線に基づいて、前記試料に含まれる蛍光成分数を1種類と仮定して蛍光寿命r(X−1)を算出するように、当該X値を減少させながら蛍光寿命r(X−1)、r(X−2)・・・を算出していく蛍光寿命変化算出ステップと、
蛍光寿命r、r(X−1)、r(X−2)・・・が変化しないと判定したときには、前記試料に含まれる蛍光成分数をN種類とする判定ステップと、
前記判定ステップで蛍光寿命r、r(X−1)、r(X−2)・・・が変化していくと判定したときには、蛍光寿命rの蛍光成分に対応する理論減衰曲線を、第N減衰曲線から除去することにより、第(N+1)減衰曲線を作成する作成ステップと、
第(N+1)減衰曲線について、第X蛍光寿命算出ステップと蛍光寿命変化算出ステップと判定ステップと作成ステップとを実行するように、前記N値を増加させながら蛍光成分数を算出する多成分算出ステップとを含むことを特徴とする含有蛍光成分数決定方法。
【請求項2】
設定励起波長の光を試料に対して照射する照射部と、
前記試料が配置される試料室と、
前記試料から放出される蛍光の光強度を検出する検出部と、
前記検出部で検出された光強度の時間変化である第N減衰曲線に基づいて蛍光寿命rを算出する制御部とを備える分光蛍光光度計であって、
前記制御部は、請求項1に記載の含有蛍光成分数決定方法に基づいて、蛍光成分数を算出することを特徴とする分光蛍光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に励起光を照射したときに生ずる蛍光を測定する含有蛍光成分数決定方法及びその含有蛍光成分数決定方法を用いた分光蛍光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
基底状態の分子に光を照射すると、分子はエネルギーレベルの高い励起状態に遷移する。そして、励起状態の分子は、エネルギーの一部を振動や熱により失った後、光放射による失活により基底状態に戻る。このときに分子が発する光が蛍光である。
そこで、分子が発する蛍光を検出することによって、その試料に含まれる蛍光成分の定性や定量分析を行うために、設定励起波長λEXの光を試料に照射し、そのときに試料から放出される蛍光を測定する分光蛍光光度計が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来の分光蛍光光度計の一例を示す概略構成図である。分光蛍光光度計101は、設定励起波長λEXの光を出射する照射部100と、試料Sが配置される試料室20と、蛍光を測定する検出部30と、分光蛍光光度計101全体を制御するコンピュータ150とを備える。
試料室20には、分析対象となる試料Sが収納された10mmキュベットセル等が配置されるようになっている。
【0004】
照射部100は、白色光を出射する高輝度のキセノンアークランプやフラッシュキセノンランプ等を光源とする光源部11と、白色光を波長分解するための凹面回折格子12aと励起側スリット13とミラー15とを有する励起分光器10とを備える。
凹面回折格子12aはコンピュータ150の制御によって回転し、任意の設定励起波長λEXの光を試料Sに対して照射することができるようになっている。
【0005】
検出部30は、試料Sから放出される蛍光を波長分解して目的波長範囲λEM1〜λEM2の光を光検出器32に対して出射する凹面回折格子31aと、目的波長範囲λEM1〜λEM2の光強度を検出する光検出器32と、蛍光側スリット34とを備える。
凹面回折格子31aはコンピュータ150の制御によって回転し、任意の目的波長範囲λEM1〜λEM2の光を光検出器32に対して出射することができるようになっている。
【0006】
コンピュータ150においては、CPU(制御部)151とメモリ154とを備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52と、表示装置53とが連結されている。また、CPU151が処理する機能をブロック化して説明すると、照射部100を制御する光源部制御部51aと、光検出器32からの光強度信号を取得する光検出器制御部51bと、分析部151cとを有する。
【0007】
このような分光蛍光光度計101によれば、ユーザーが試料Sの測定を実行する際には、まず、試料Sが収納された10mmキュベットセルを試料室20に配置する。そして、ユーザーは入力装置52を用いて光源部制御部51aと光検出器制御部51bとを制御することにより、設定励起波長λEX(例えば350nm)の光を試料Sに対して所定時間(例えば20μ秒間)照射する。そして、試料Sから放出される目的波長範囲λEM1〜λEM2(例えば350nm〜450nm)の蛍光を光検出器32に導き、光検出器32から光強度信号(蛍光強度)I(t)を所定時間間隔(例えば3秒間)で取得していく。
【0008】
その後、試料Sの測定が終了すると、分析部151cは、蛍光強度Iと時間tとの関係を示す減衰曲線を得て(図4参照)、その減衰曲線を下記式(1)に当てはめてフィッティングし、最もよく一致する蛍光寿命rと初期蛍光強度Iとを推定している。このとき、対数をとると直線となるため、対数をとってフィッティングすることも行われている。
I(t)=I×exp(−t/r) ・・・(1)
これにより、分析部151cは、蛍光寿命rと初期蛍光強度Iとから、その試料Sに含まれる蛍光成分の定性や定量分析を行っている。
【0009】
ところで、試料Sには、1種類の蛍光成分だけでなく複数種類nの蛍光成分を含むものがある。この場合、ユーザーが入力装置52を用いて「蛍光成分数n」を入力した後、分析部151cは、減衰曲線を下記式(2)に当てはめてフィッティングし、最もよく一致するn種類の蛍光寿命r、r、・・・rとn種類の初期蛍光強度I01、I02、・・・I0nとを推定している。
I(t)=I01×exp(−t/r)+I02×exp(−t/r)+・・・+I0n×exp(−t/r) ・・・(2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−300632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したような分光蛍光光度計101では、分析部151cが蛍光寿命r、r、・・・rと初期蛍光強度I01、I02、・・・I0nとを推定する前に、ユーザーが試料Sに含まれている「蛍光成分数n」を入力する必要がある。しかしながら、未知試料Sの場合、含まれる「蛍光成分数n」が既知であることは少なく、ユーザーが推定した「蛍光成分数n」を入力している。そして、分析部151cは、この仮定に基づいて入力された「蛍光成分数n」に対応する式(2)に減衰曲線を当てはめてフィッティングをかけており、また、ユーザーはそのフィッティング結果を見て、推定された蛍光寿命r、r、・・・rに理論的な理由付けができるか、残差が少ないかどうかを判断している。そのため、ユーザーによる個人差が結果に影響するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件発明者は、上記課題を解決するために、未知試料Sに含まれている「蛍光成分数n」を決定することができる含有蛍光成分数決定方法について検討を行った。図5(a)は、既知の蛍光寿命r’(=200us)を有する蛍光成分1を含む試料Sを測定した際に得られた減衰曲線の一例であり、図6(a)は、既知の蛍光寿命r’(=40us)を有する蛍光成分1と既知の蛍光寿命r’(=200us)を有する蛍光成分2とを含む試料Sを測定した際に得られた減衰曲線の一例である。図6(a)に示すように、早い時間区間の減衰曲線では蛍光成分1と蛍光成分2との寄与があるが、遅い時間区間の減衰曲線では蛍光成分2の寄与が支配的である。
【0013】
よって、図5(a)の減衰曲線を、第1時間区間、第2時間区間、・・・、第X時間区間というように時間区間をずらしながら所定時間間隔Δt毎に、試料Sに含まれる蛍光成分数nを1種類と仮定して式(1)に当てはめてフィッティングして、X個の蛍光寿命r、r、・・・rを推定すると、蛍光寿命rは図5(b)に示すように200usとなり変化しないが、図6(a)の減衰曲線を同様に、所定時間間隔Δt毎に式(1)に当てはめてフィッティングしてX個の蛍光寿命r、r、・・・rを推定すると、蛍光寿命rは図6(b)に示すように測定終了時間tに近づくにつれ200usとなり、蛍光成分2の寄与が増加していく。つまり、測定終了時間t付近では最も蛍光寿命rが長い蛍光成分のみが寄与している。
【0014】
そこで、得られた測定開始時間t〜測定終了時間tの減衰曲線を、所定時間間隔Δt毎に式(1)に当てはめてフィッティングすることにより、時間に対する蛍光寿命rの変化を算出して、蛍光寿命rの変化がなければ、蛍光成分数nは1種類であるとし、一方、蛍光寿命rの変化があれば、蛍光成分2と異なる蛍光成分が含まれていると判定することを見出した。
また、異なる蛍光成分が含まれると判定したときには、最も蛍光寿命r’が長い蛍光成分2に対応する理論減衰曲線を図6(a)の減衰曲線から除去することで、新たな減衰曲線(第2減衰曲線)を作成して、第2減衰曲線に対して上述したことを繰り返すことにより、第2減衰曲線において蛍光成分数nが1種類であるか否かを判定することにした。これにより、上述した手順を繰り返していくことで、試料Sに含まれている「蛍光成分数n」を決定することを見出した。
【0015】
すなわち、本発明の含有蛍光成分数決定方法は、設定励起波長の光を試料に対して照射する照射部と、前記試料が配置される試料室と、前記試料から放出される蛍光の光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された光強度の時間変化であるN=1とした第N減衰曲線を作成して蛍光寿命rを算出する制御部とを備える分光蛍光光度計に用いられる含有蛍光成分数決定方法であって、測定終了時間より所定時間前となる時点から当該測定終了時間までの所定時間間隔となる第X時間区間の第N減衰曲線に基づいて、前記試料に含まれる蛍光成分数を1種類と仮定して蛍光寿命rを算出する第X蛍光寿命算出ステップと、前記第X時間区間より前の所定時間間隔となる第(X−1)時間区間の第N減衰曲線に基づいて、前記試料に含まれる蛍光成分数を1種類と仮定して蛍光寿命r(X−1)を算出するように、当該X値を減少させながら蛍光寿命r(X−1)、r(X−2)・・・を算出していく蛍光寿命変化算出ステップと、蛍光寿命rX、(X−1)、r(X−2)・・・が変化しないと判定したときには、前記試料に含まれる蛍光成分数をN種類とする判定ステップと、前記判定ステップで蛍光寿命rX、(X−1)、r(X−2)・・・が変化していくと判定したときには、蛍光寿命rの蛍光成分に対応する理論減衰曲線を、第N減衰曲線から除去することにより、第(N+1)減衰曲線を作成する作成ステップと、第(N+1)減衰曲線について、第X蛍光寿命算出ステップと蛍光寿命変化算出ステップと判定ステップと作成ステップとを実行するように、前記N値を増加させながら蛍光成分数を算出する多成分算出ステップとを含むようにしている。
【0016】
ここで、「設定励起波長」とは、ユーザー等によって分析前に予め決められた任意の波長であり、例えば350nm等となる。
また、「所定時間間隔」とは、ユーザー等によって測定前に予め決められた任意の時間間隔であり、例えば、1μ秒間等となる。
また、「測定終了時間」とは、ユーザー等によって測定後等に決められる任意の時間であり、例えば、蛍光の光強度が0となる時間等となる。
さらに、「理論減衰曲線」とは、ある蛍光寿命rを有する蛍光成分が示すであろうと文献等に記載されたり算出されたりした減衰曲線のことをいう。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の含有蛍光成分数決定方法によれば、ユーザーによる個人差が結果に影響することなく「蛍光成分数n」を決定することができる。また、原理上、推定可能な「蛍光成分数n」に上限はない。
【0018】
<他の課題を解決するための手段および効果>
また、本発明の分光蛍光光度計は、設定励起波長の光を試料に対して照射する照射部と、前記試料が配置される試料室と、前記試料から放出される蛍光の光強度を検出する検出部と、前記検出部で検出された光強度の時間変化である第N減衰曲線に基づいて蛍光寿命rを算出する制御部とを備える分光蛍光光度計であって、前記制御部は、請求項1に記載の含有蛍光成分数決定方法に基づいて、蛍光成分数を算出するようにしてもよい。
【0019】
以上のように、本発明の分光蛍光光度計によれば、制御部が「蛍光成分数n」を決定するため、ユーザーが試料Sに含まれている「蛍光成分数n」を入力する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る分光蛍光光度計の一例を示す概略構成図。
図2】本発明の分光蛍光光度計の使用方法の一例を説明するフローチャート。
図3】従来の分光蛍光光度計の一例を示す概略構成図。
図4】蛍光強度Iと時間tとの関係を示す減衰曲線。
図5】既知の蛍光寿命rを有する蛍光成分1を含む試料Sを測定した際に得られた減衰曲線の一例を示すグラフ。
図6】既知の蛍光寿命rを有する蛍光成分1と既知の蛍光寿命rを有する蛍光成分2とを含む試料Sを測定した際に得られた減衰曲線の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る分光蛍光光度計の一例を示す概略構成図である。なお、分光蛍光光度計101と同様のものについては、同じ符号を付している。
分光蛍光光度計1は、設定励起波長λEXの光を出射する照射部100と、試料Sが配置される試料室20と、蛍光を測定する検出部30と、分光蛍光光度計1全体を制御するコンピュータ50とを備える。
【0023】
コンピュータ50においては、CPU(制御部)51とメモリ54とを備え、さらにキーボードやマウス等を有する入力装置52と、表示装置53とが連結されている。また、CPU51が処理する機能をブロック化して説明すると、照射部100を制御する光源部制御部51aと、光検出器32からの光強度信号を取得する光検出器制御部51bと、分析部51cとを有する。
【0024】
ここで、分光蛍光光度計1を使用する使用方法の一例について説明する。図2は、分光蛍光光度計1を使用する使用方法の一例について説明するためのフローチャートである。
分光蛍光光度計1の使用方法は、第1減衰曲線を取得する減衰曲線取得ステップAと、第X時間区間の第N減衰曲線に基づいて蛍光寿命rを算出する第X蛍光寿命算出ステップBと、X値を減少させながら蛍光寿命r(X−1)、r(X−2)、・・・、rを算出していく蛍光寿命変化算出ステップCと、試料Sに含まれる蛍光成分数をN種類とする判定ステップDと、第(N+1)減衰曲線を作成する作成ステップEと、N値を増加させる多成分算出ステップFとを含む。
【0025】
(A)減衰曲線取得ステップ
まず、ステップS101の処理において、ユーザーは、試料Sが収納された10mmキュベットセルを試料室20に配置する。
次に、ステップS102の処理において、ユーザーは、入力装置52を用いて光源部制御部51aと光検出器制御部51bとを制御することにより、設定励起波長λEX(例えば、350nm)の光を試料Sに対して所定時間(例えば10μ秒間)照射する。そして、試料Sから放出される目的波長範囲λEM1〜λEM2(例えば350nm〜450nm)の蛍光を光検出器32に導き、光検出器32から光強度信号(蛍光強度)I(t)を所定時間間隔(例えば1μ秒間)で得ることにより減衰曲線を取得する。
【0026】
(B)第X蛍光寿命算出ステップ
次に、ステップS103の処理において、蛍光成分数を示すパラメータN=1とする。つまり、試料Sに含まれる蛍光成分数を1種類と仮定する。
次に、ステップS104の処理において、測定開始時間t〜測定終了時間tの第N減衰曲線を所定時間間隔ΔtでX個に分割し、その時間区間の位置を示すパラメータX=X(最終の時間区間)とする。
次に、ステップS105の処理において、分析部51cは、第X時間区間(時間(t−Δt)〜時間t)の第N減衰曲線を、式(1)に当てはめてフィッティングし、最もよく一致する蛍光寿命rと初期蛍光強度I0xとを算出する。
【0027】
(C)蛍光寿命変化算出ステップ
次に、ステップS106の処理において、X=X−1とする。つまり、第X時間区間より設定時間前(例えば1μ秒前)となる第(X−1)時間区間とする。
次に、ステップS107の処理において分析部51cは、第(X−1)時間区間の第N減衰曲線を、式(1)に当てはめてフィッティングし、最もよく一致する蛍光寿命r(X−1)と初期蛍光強度I0(X−1)とを算出する。
次に、ステップS108の処理において、分析部51cは、X=1(最初の時間区間)であるか否かを判定する。X=1でないと判定したときには、ステップS106の処理に戻る。つまり、X値を減少させながら蛍光寿命r(X−1)、r(X−2)、・・・、rを算出していく。一方、X=1であると判定したときには、ステップS109の処理に進む。
【0028】
(D)判定ステップ
次に、ステップS109の処理において、分析部51cは、蛍光寿命r(X−1)、r(X−2)、・・・、rが変化するか否かを判定する。蛍光寿命r、r(X−1)、r(X−2)、・・・、rが変化しないと判定したときには、ステップS112の処理において、分析部51cは、「蛍光成分数」をN種類とする。つまり、ここに至り試料Sには1種類の蛍光成分しか含まれていないものと判定し、「蛍光成分数」を決定して、本フローチャートを終了させる。
【0029】
(E)作成ステップ
一方、蛍光寿命r、r(X−1)、r(X−2)、・・・、rが変化すると判定したときには、ステップS110の処理において、蛍光寿命rの蛍光成分に対応する理論減衰曲線を、第N減衰曲線から除去することにより、第(N+1)減衰曲線を作成する。つまり、最も長い蛍光寿命rの蛍光成分の影響を除いた減衰曲線を作成する。
【0030】
(F)多成分算出ステップ
次に、ステップS111の処理において、N=N+1として、ステップS104の処理に戻る。つまり、1種類の蛍光成分しか含まれなくなる減衰曲線になるまで、ステップS104の処理〜ステップS111の処理が繰り返されることになる。
【0031】
以上のように、本発明の分光蛍光光度計1によれば、CPU51が「蛍光成分数n」を決定することにより、試料Sに含まれる「蛍光成分数n」をユーザーが入力する必要をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、試料に励起光を照射したときに生じる蛍光を測定する分光蛍光光度計等に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 分光蛍光光度計
20 試料室
30 検出部
51 CPU(制御部)
100 照射部
S 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6