特許第6315029号(P6315029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315029
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】光ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20180416BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20180416BHJP
   C03B 37/00 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   G02B6/44 371
   G02B6/44 331
   G02B6/44 311
   G02B6/44 366
   C03B37/012 B
   C03B37/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-97083(P2016-97083)
(22)【出願日】2016年5月13日
(62)【分割の表示】特願2014-102393(P2014-102393)の分割
【原出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2016-184170(P2016-184170A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 豊明
(72)【発明者】
【氏名】長尾 美昭
(72)【発明者】
【氏名】土屋 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】平間 隆郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
(72)【発明者】
【氏名】武田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亨
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】石上 茂久
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−178883(JP,A)
【文献】 特開2004−021214(JP,A)
【文献】 特開2005−338632(JP,A)
【文献】 特開2005−037936(JP,A)
【文献】 特開2003−232972(JP,A)
【文献】 特表2006−528374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有するスペーサと、
複数のテープ心線と、を備えた光ケーブルの製造方法であって、
前記複数のテープ心線の各々は、
並列された複数の光ファイバ心線と、
前記複数の光ファイバ心線を一括に被覆する被覆部材と、を備えており、
前記複数の光ファイバ心線の各々は、
光ファイバと、
前記光ファイバの周囲を覆う被覆と、
前記被覆の外周面に施されたマーキングと、を備えており、
前記複数のスロットの各々の長手方向における第1部分において、前記複数のテープ心線、前記複数の光ファイバ心線の並列方向および長手方向に直交する向きに積層配列
前記複数のスロットの各々の長手方向における第2部分においては、前記複数のテープ心線の積層配列を積極的に崩すことにより、前記積層配列維持させない、光ケーブルの製造方法
【請求項2】
前記複数のスロット、前記スペーサの長手方向に沿ってSZ撚りを形成するように延在する、請求項1に記載の光ケーブルの製造方法
【請求項3】
前記並列方向および前記長手方向に直交する向きにおける前記複数のテープ心線の各々の寸法が0.32mm以下になるように、前記被覆部材の厚さ定め、請求項1または請求項2に記載の光ケーブルの製造方法
【請求項4】
隣接する前記複数の光ファイバ心線の間に位置する前記被覆部材の一部、前記複数の光ファイバ心線の外周面に沿って窪んでいるようにする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ケーブルの製造方法
【請求項5】
隣接する前記複数の光ファイバ同士、その長手方向において間欠的に離間させる、請求項4に記載の光ケーブルの製造方法
【請求項6】
前記マーキングの厚さ、5μm以下とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ケーブルの製造方法
【請求項7】
前記被覆は、
前記光ファイバを被覆する一次被覆と、
前記一次被覆を被覆する二次被覆と、を含
前記一次被覆のヤング率、0.8MPa以下とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ケーブルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のテープ心線を備える光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
並列された複数の光ファイバ心線が樹脂製の被覆部材により一括に被覆された構成を有するテープ心線が知られている(例えば、特許文献1を参照)。複数の光ファイバ心線の各々は、光ファイバと、当該光ファイバの外周面を覆う被覆とを備えている。特許文献1に記載のテープ心線においては、複数の光ファイバ心線同士の識別性を向上させるために、被覆の外周面の長手方向における一部にマーキングが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2013/039766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マーキングが施された箇所と施されていない箇所では、光ファイバに加わる側圧が異なるため、光ファイバの長手方向についてマイクロベンド損失が生じ、伝送損失が増加する場合がある。特に、特許文献1に記載のテープ心線のように複数の光ファイバ心線が樹脂製の被覆部材により一括に被覆されている構成の場合、伝送損失の増加がより顕著となることが判った。
【0005】
本発明は、マーキングが施された複数の光ファイバ心線が被覆部材により一括に被覆された構成を有するテープ心線を備える光ケーブルの伝送損失増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明がとりうる態様は
数のスロットを有するスペーサと、
複数のテープ心線と、を備えた光ケーブルの製造方法であって、
前記複数のテープ心線の各々は、
並列された複数の光ファイバ心線と、
前記複数の光ファイバ心線を一括に被覆する被覆部材と、を備えており、
前記複数の光ファイバ心線の各々は、
光ファイバと、
前記光ファイバの周囲を覆う被覆と、
前記被覆の外周面に施されたマーキングと、を備えており、
前記複数のスロットの各々の長手方向における第1部分において、前記複数のテープ心線、前記複数の光ファイバ心線の並列方向および長手方向に直交する向きに積層配列
前記複数のスロットの各々の長手方向における第2部分においては、前記複数のテープ心線の積層配列を積極的に崩すことにより、前記積層配列維持させない。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様に係る構成によれば、マーキングが施された複数の光ファイバ心線が被覆部材により一括に被覆された構成を有するテープ心線を備える光ケーブルの伝送損失増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態例に係る光ファイバ心線の構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係るテープ心線の横断面を示す図である。
図3】比較例に係るテープ心線の横断面を示す図である。
図4】第2実施形態に係るテープ心線の横断面を示す図である。
図5】第3実施形態に係るテープ心線の横断面を示す図である。
図6】第4実施形態に係るテープ心線の構成を示す図である。
図7】上記光ファイバ心線にマーキングを施す方法を示す図である。
図8】上記のテープ心線を備える光ケーブルの一例を示す図である。
図9】上記のテープ心線を備える光ケーブルの別例を示す図である。
図10図9の光ケーブルの一部の横断面を拡大して示す図である。
図11図9の光ケーブルが備えるスペーサの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を以下に列記して説明する。
【0010】
(1):複数のスロットを有するスペーサと、
複数のテープ心線と、を備えた光ケーブルの製造方法であって、
前記複数のテープ心線の各々は、
並列された複数の光ファイバ心線と、
前記複数の光ファイバ心線を一括に被覆する被覆部材と、を備えており、
前記複数の光ファイバ心線の各々は、
光ファイバと、
前記光ファイバの周囲を覆う被覆と、
前記被覆の外周面に施されたマーキングと、を備えており、
前記複数のスロットの各々の長手方向における第1部分において、前記複数のテープ心線、前記複数の光ファイバ心線の並列方向および長手方向に直交する向きに積層配列
前記複数のスロットの各々の長手方向における第2部分においては、前記複数のテープ心線の積層配列を積極的に崩すことにより、前記積層配列維持させない。
【0011】
光ケーブルがドラムに巻き取られている場合などにおいては、積層配列された複数のテープ心線には一方向に応力が加わり続ける。この応力が側圧として光ファイバに作用することにより、各テープ心線、ひいては光ケーブルの伝送損失が増加する場合がある。しかしながら、上記のように光ケーブルの長手方向の一部において、複数のテープ心線の積層配列を積極的に崩すことにより、当該部分において各テープ心線に加わる応力の向きを不揃いにできる。したがって、光ケーブルがドラムに巻き取られている場合などにおける一方向への応力蓄積が解消され、各テープ心線、ひいては光ケーブルの伝送損失増加を抑制できる。
【0012】
(2):(1)に記載の光ケーブルの製造方法であって、
前記複数のスロット、前記スペーサの長手方向に沿ってSZ撚りを形成するように延在する
【0013】
このような構成によれば、各スロットに収容された複数のテープ心線に加わる応力の向きを、光ケーブルの長手方向について不揃いにしやすい。したがって、光ケーブルがドラムに巻き取られている場合などにおける一方向への応力蓄積がより確実に解消され、各テープ心線、ひいては光ケーブルの伝送損失増加を抑制できる。
【0014】
(3):(1)または(2)に記載の光ケーブルの製造方法であって、
前記並列方向および前記長手方向に直交する向きにおける前記複数のテープ心線の各々の寸法が0.32mm以下になるように、前記被覆部材の厚さ定め
【0015】
このような構成によれば、被覆部材を形成する樹脂の加工時における熱収縮により発生する力を低減できる。これにより、テープ心線の伝送損失の増加を抑制でき、ひいては光ケーブルの伝送損失の増加を抑制できる。
【0016】
(4):(1)から(3)のいずれかに記載の光ケーブルの製造方法であって、
隣接する前記複数の光ファイバ心線の間に位置する前記被覆部材の一部、前記複数の光ファイバ心線の外周面に沿って窪んでいるようにする
【0017】
このような構成によれば、被覆部材の断面積を可及的に小さくできるため、被覆部材を形成する樹脂の収縮力をさらに低減できる。また、テープ心線全体の柔軟性を向上できる。したがって、テープ心線の伝送損失の増加を抑制でき、ひいては光ケーブルの伝送損失の増加を抑制できる。
【0018】
(5):(4)に記載の光ケーブルの製造方法であって、
隣接する前記複数の光ファイバ同士、その長手方向において間欠的に離間させる
【0019】
このような構成によれば、テープ心線に生ずる曲げ応力を、各光ファイバ心線の一部が変位することによって分散できる。したがって、テープ心線の伝送損失の増加を抑制でき、ひいては光ケーブルの伝送損失の増加を抑制できる。
【0020】
(6):(1)から(5)のいずれかに記載の光ケーブルの製造方法であって、
前記マーキングの厚さ、5μm以下とする
【0021】
このような構成によれば、マーキングを介して光ファイバに加わる側圧を可及的に低減できる。これにより、被覆部材の収縮力に起因する光ファイバ心線のマイクロベンド損失の増加を抑制できる。したがって、テープ心線の伝送損失の増加を抑制でき、ひいては光ケーブルの伝送損失の増加を抑制できる。
【0022】
(7):(1)から(6)のいずれかに記載の光ケーブルの製造方法であって、
前記被覆は、
前記光ファイバを被覆する一次被覆と、
前記一次被覆を被覆する二次被覆と、を含
前記一次被覆のヤング率、0.8MPa以下とする
【0023】
このような構成によれば、マーキングを介して光ファイバに加わる側圧を効果的に低減できる。したがって、光ファイバ心線のマイクロベンド損失に起因するテープ心線の伝送損失の増加を抑制でき、ひいては光ケーブルの伝送損失の増加を抑制できる。
【0024】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係る実施形態のより具体的な例について以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各要素を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0025】
図1は、光ファイバ心線1の構成を示す図である。図1の(a)は、2本の光ファイバ心線1の一部をその長手方向に直交する向きから見た外観を示している。図1の(b)は、一方の光ファイバ心線1について、図1の(a)における線IB−IBに沿う横断面を示している。本明細書において「横断面」とは、光ファイバ心線1の長手方向から見た断面を意味する。
【0026】
図1の(b)に示すように、光ファイバ心線1は、光ファイバ1aを備えている。光ファイバ1aは、例えば石英ガラスやプラスチックからなる。図示を省略するが、光ファイバ1aは、コアとクラッドを含んでいる。コアは、径方向の中心に配置されて第1屈折率を有している。クラッドは、当該コアの周囲を覆い、第1屈折率よりも低い第2屈折率を有している。
【0027】
光ファイバ心線1は、一次被覆1b(被覆の一例)を備えている。一次被覆1bは、光ファイバ1aを被覆している。一次被覆1bは、例えば紫外線硬化性樹脂からなる。
【0028】
光ファイバ心線1は、二次被覆1c(被覆の一例)を備えている。二次被覆1cは、一次被覆1bを被覆している。二次被覆1cは、例えば、一次被覆1bよりも硬質の紫外線硬化性樹脂からなる。
【0029】
光ファイバ心線1は、着色インク層1d(被覆の一例)を備えている。着色インク層1dは、二次被覆1cの周囲を覆っている。着色インク層1dは、複数の光ファイバ心線1同士を識別するために、所定の色を呈するように形成されている。着色インク層1dは、光ファイバ心線1の長手方向全体に亘って形成されている。着色インク層1dは、必要に応じて省略されうる。
【0030】
図1の(a)と(b)に示すように、光ファイバ心線1は、マーキング1eを備えている。マーキング1eは、所定の色を呈するように、光ファイバ心線1の長手方向における一部に施されている。具体的には、所定の色を呈する直径0.2〜0.4mmのドットを離散的あるいは連続的に形成することにより、光ファイバ心線1の長手方向に沿う各マーキング1eの寸法は、視認が容易な20〜40mmとされている。
【0031】
本例においては、マーキング1eは、二次被覆1cと着色インク層1dの間において、二次被覆1cの外周面の一部を覆うように施されている。しかしながら、マーキング1eは、着色インク層1dの外周面の一部を覆うように施されてもよい。あるいは、マーキング1eは、一次被覆1bと二次被覆1cの間において、一次被覆1bの外周面の一部を覆うように施されてもよい。
【0032】
マーキング1eは、着色インク層1dに加えてあるいは代えて、複数の光ファイバ心線1同士を識別するために施される。例えば、図1の(a)に示す例においては、マーキング1eの数によって2本の光ファイバ心線1が区別されている。複数の光ファイバ心線1同士の区別は、マーキング1eの数、色、位置、光ファイバ心線1の長手方向における寸法の少なくとも1つにより行なわれうる。
【0033】
図2は、第1実施形態に係るテープ心線10の横断面を示している。テープ心線10は、複数の光ファイバ心線1を備えている。複数の光ファイバ心線1の各々は、図1を参照して説明したものと同じであるが、着色インク層1dの図示は省略している。
【0034】
複数の光ファイバ心線1は、それぞれの長手方向に直交する向きに並列されている。各光ファイバ心線1の直径dは、例えば0.25mmである。本例においては、4本の光ファイバ心線1が並列されているが、テープ心線10が備える光ファイバ心線1の本数は、2本以上で適宜に定められうる。
【0035】
テープ心線10は、被覆部材2を備えている。被覆部材2は、複数の光ファイバ心線1を一括に被覆している。被覆部材2は、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれかからなる。
【0036】
発明者らは、光ファイバ心線にマーキングが施されているテープ心線において伝送損失の増加が顕著となる原因を検討し、被覆部材を形成する樹脂の加工時における熱収縮により発生する力(以降、収縮力と称する)がマーキングに作用して光ファイバ心線のマイクロベンド損失を増加させていると考えた。そこで発明者らは、被覆部材の厚みの適切な選択がマイクロベンド損失増加の抑制に寄与すると考え、被覆部材の厚みを変化させながら被覆部材の収縮力およびテープ心線の伝送損失を測定した。検討を重ねた結果、伝送損失増加の抑制が可能な被覆部材の厚みを見出すに至ったので、以下に記載する。
【0037】
具体的には、1550nmの波長を有する光の伝送時における損失を測定した。また、被覆部材の収縮力は、被覆部材の横断面積、被覆部材を形成する樹脂のヤング率、当該樹脂の線膨脹係数、および加工時の温度と常温との温度差の積として求めた。ここで、ヤング率は910MPa、線膨脹係数は1.5×10−4、加工時の温度を45℃(常温との差が22℃)とした。
【0038】
図3は、比較例に係るテープ心線10Xの横断面を示している。テープ心線10Xは、並列された複数の光ファイバ心線1を備えている。各光ファイバ心線1の構造は、図2を参照して説明したものと同一である。テープ心線10Xは、複数の光ファイバ心線1を一括に被覆する被覆部材2Xを備えている。本比較例においては、複数の光ファイバ心線1の並列方向および長手方向に直交する向きにおけるテープ心線10Xの寸法T0が0.40mmとなるように、被覆部材2Xの厚さが定められている。
【0039】
この条件において、前述の方法で伝送損失および収縮力を測定したところ、以下の数値を得た。
伝送損失:0.20〜0.50dB/km
収縮力:0.73N
【0040】
一方、図2に示す本実施形態においては、複数の光ファイバ心線1の並列方向および長手方向に直交する向きにおけるテープ心線10の寸法T1が0.32mmとなるように、被覆部材2の厚さが定められている。
【0041】
この条件において、前述の方法で伝送損失および収縮応力を測定したところ、以下の数値を得た。比較例に係るテープ心線10Xと比較して、被覆部材の収縮力が低減され、伝送損失が抑制されていることが判る。
伝送損失:0.18〜0.30dB/km
収縮応力:0.43N
【0042】
したがって、本実施形態の構成によれば、光ファイバ心線1にマーキング1eが施されたテープ心線10の伝送損失の増加を抑制できる。被覆部材2を形成する樹脂の収縮力を低減できることにより光ファイバ心線1のマイクロベンド損失が抑制されていることが、テープ心線10の伝送損失増加の抑制に寄与していると考えられる。
【0043】
図4は、第2実施形態に係るテープ心線10Aの横断面を示している。第1実施形態に係るテープ心線10が備える要素と同一または同等の要素については、同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0044】
テープ心線10Aは、被覆部材2Aを備えている。被覆部材2Aは、並列された複数の光ファイバ心線1を一括に被覆している。被覆部材2Aの厚さは、複数の光ファイバ心線1の並列方向および長手方向に直交する向きにおけるテープ心線10Aの寸法T2が0.29mmとなるように定められている。
【0045】
この条件において、前述の方法で伝送損失および収縮力を測定したところ、以下の数値を得た。第1実施形態に係るテープ心線10と比較して、被覆部材の収縮力がさらに低減され、伝送損失がさらに抑制されていることが判る。
伝送損失:0.18〜0.19dB/km
収縮応力:0.33N
【0046】
したがって、本実施形態の構成によれば、光ファイバ心線1にマーキング1eが施されたテープ心線10Aの伝送損失をさらに抑制できる。
【0047】
発明者らは、被覆部材の厚みの適切な選択に加え、被覆部材の形状の適切な選択がマイクロベンド損失増加の抑制に寄与すると考えた。そこで、被覆部材の形状を変更しながら、被覆部材の収縮応力およびテープ心線の伝送損失を測定した。検討を重ねた結果、伝送損失増加の抑制が可能な被覆部材の形状を見出すに至ったので、以下に記載する。
【0048】
図5は、第3実施形態に係るテープ心線10Bの横断面を示している。第1実施形態に係るテープ心線10が備える要素と同一または同等の要素については、同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0049】
テープ心線10Bは、被覆部材2Bを備えている。被覆部材2Bは、並列された複数の光ファイバ心線1を一括に被覆している。被覆部材2Bの厚さは、複数の光ファイバ心線1の並列方向および長手方向に直交する向きにおけるテープ心線10Bの寸法T3が0.28mmとなるように定められている。また、隣接する複数の光ファイバ心線1の間に位置する被覆部材2Bの一部は、各光ファイバ心線1の外周面に沿って窪んでいる。
【0050】
この条件において、前述の方法で伝送損失および収縮力を測定したところ、以下の数値を得た。第2実施形態に係るテープ心線10Aと比較して、被覆部材の収縮応力がさらに低減されていることが判る。
伝送損失:0.18〜0.19dB/km
収縮応力:0.15N
【0051】
このような構成によれば、被覆部材2Bの断面積を可及的に小さくできるため、収縮応力に起因する光ファイバ心線1のマイクロベンド損失の増加を抑制できる。また、テープ心線10B全体の柔軟性を向上できる。これにより、テープ心線10Bをボビン巻きする際などに生ずる曲げ応力を低減でき、テープ心線10Bの伝送損失の増加を抑制できる。
【0052】
図6は、第4実施形態に係るテープ心線10Cを示している。図6の(a)は、テープ心線10Cの一部をその長手方向に直交する向きから見た外観を示している。図6の(b)は、図6の(a)における線VIB−VIBに沿う横断面を示している。第3実施形態に係るテープ心線10Bが備える要素と同一または同等の要素については、同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0053】
本実施形態においては、被覆部材2Bにより一括に被覆された複数の光ファイバ心線1同士は、その長手方向において間欠的に離間している。すなわち、各光ファイバ心線1の一部は、他の光ファイバ心線1に対して相対変位が可能とされている。
【0054】
このような構成によれば、テープ心線10Cをボビン巻きする際などに生ずる曲げ応力を、各光ファイバ心線1の一部が変位することによって分散できる。したがって、テープ心線10Cの伝送損失の増加を抑制できる。
【0055】
上記の各実施形態において、マーキング1eの厚さは、5μm以下である。
【0056】
このような構成によれば、マーキング1eを介して光ファイバ1aに加わる側圧を可及的に低減できる。これにより、被覆部材2(2A、2B)の収縮応力に起因する光ファイバ心線1のマイクロベンド損失の増加を抑制できる。したがって、テープ心線10(10A、10B、10C)の伝送損失の増加を抑制できる。
【0057】
上記の各実施形態においてマーキング1eを施すにあたっては、まず、図7の(a)に示すように、複数の光ファイバ心線1が並列される。次いで、図7の(b)に示すように、並列された複数の光ファイバ心線1に対して、一括してマーキング1eが施される。マーキング1eが施される位置は、各光ファイバ心線1の長手方向について一致している。その後、マーキング1eが施された複数の光ファイバ心線1が、被覆部材2(2A、2B)により一括に被覆される。このような手法によれば、マーキング1eの付与を効率的に遂行できる。
【0058】
図7の(c)に示すように、マーキング1eが施される位置を、各光ファイバ心線1の長手方向について相違させてもよい。
【0059】
このような構成によれば、複数の光ファイバ心線1を一括に被覆している被覆部材2(2A、2B)から加わる収縮応力が、マーキング1eを介して光ファイバ1aに加わる位置を、テープ心線10(10A、10B、10C)の長手方向について相違させることができる。これにより、マーキング1eを介して光ファイバ1aに加わる側圧を、テープ心線10(10A、10B、10C)の長手方向について分散でき、応力の局所集中を回避できる。したがって、テープ心線10(10A、10B、10C)の伝送損失の増加を抑制できる。
【0060】
図7の(c)に示した例のように、テープ心線10(10A、10B、10C)が備える全ての光ファイバ心線1について、マーキング1eの位置が相違している必要はない。その長手方向におけるマーキング1eの位置が相違している複数の光ファイバ心線1が、テープ心線10(10A、10B、10C)に少なくとも1組含まれていればよい。
【0061】
上記の各実施形態において、一次被覆1bのヤング率は、0.8MPa以下である。
【0062】
このような構成によれば、マーキング1eを介して光ファイバ1aに加わる側圧を効果的に低減できる。したがって、光ファイバ心線1のマイクロベンド損失に起因するテープ心線10(10A、10B、10C)の伝送損失の増加を抑制できる。
【0063】
なお耐側圧に係る指標として、上記各実施形態に係るテープ心線10(10A、10B、10C)直径15mmのボビンに1巻きするごとに増加する曲げ損失が0.01dB以下となるようにする。また、上記各実施形態に係るテープ心線10(10A、10B、10C)を60℃の水中に30日間浸した後、1550nmの波長を有する光の伝送損失値の変化が、水中に浸す前の値から0.1dB/km以下であるようにする。
【0064】
図8は、第1実施形態に係るテープ心線10を備える光ケーブル20の横断面を示している。光ケーブル20は、チューブ21と外被22を備えている。
【0065】
チューブ21は、光ケーブル20の長手方向に沿って延在し、テープ心線10を収容している。チューブ21は、例えばポリエチレンやポリブチルテレフタレートからなる。図示の例においては、5本のテープ心線10がチューブ21に収容されているが、テープ心線10の数は、光ケーブル20の仕様に応じて任意に定められうる。テープ心線10に代えて、上記のテープ心線10A、10B、10Cのいずれかがチューブ21に収容されてもよい。テープ心線10とチューブ21の隙間23には、樹脂やゲルなどの充填材が充填されてもよい。
【0066】
外被22は、光ケーブル20の長手方向に沿って延在し、チューブ21の周囲を覆っている。外被22は、例えば、ポリ塩化ビニルやポリエチレンからなる。
【0067】
このような構成によれば、伝送損失増加を抑制できるテープ心線10(10A、10B、10C)を備えているため、光ケーブル20の伝送損失増加も抑制できる。
【0068】
図9は、第1実施形態に係るテープ心線10を備える光ケーブル30の横断面を示している。光ケーブル30は、スペーサ31と外被32を備えている。スペーサ31は、光ケーブル30の長手方向に沿って延在し、複数のスロット31aを有している。複数のスロット31aは、スペーサ31の外周面に光ケーブル30の長手方向に沿って形成されている。各スロット31aには、複数のテープ心線10が収容されている。
【0069】
外被32は、光ケーブル30の長手方向に沿って延在し、スペーサ31の周囲を覆っている。外被32は、例えば、ポリ塩化ビニルやポリエチレンからなる。
【0070】
図10の(a)に示すように、各スロット31aの長手方向における第1部分においては、複数のテープ心線10は、複数の光ファイバ心線1の並列方向および長手方向に直交する向きに積層配列されている。ここで「積層配列されている」状態とは、複数のテープ心線10における複数の光ファイバ心線1の並列方向における両端部が揃えられている状態を意味する。
【0071】
他方、図10の(b)に示すように、各スロット31aの長手方向における第2部分においては、複数のテープ心線10の積層配列が維持されていない。ここで「積層配列が維持されていない」状態とは、複数のテープ心線10の上記両端部が不揃いな状態を意味する。
【0072】
光ケーブル30がドラムに巻き取られている場合などにおいては、積層配列された複数のテープ心線には一方向に応力が加わり続ける。この応力が側圧として光ファイバ1aに作用することにより、各テープ心線10、ひいては光ケーブル30の伝送損失が増加する場合がある。しかしながら、本例のように光ケーブル30の長手方向の一部において、複数のテープ心線10の積層配列を積極的に崩すことにより、当該部分において各テープ心線10に加わる応力の向きを不揃いにできる。したがって、光ケーブル30がドラムに巻き取られている場合などにおける一方向への応力蓄積が解消され、各テープ心線10、ひいては光ケーブル30の伝送損失増加を抑制できる。
【0073】
各スロット31aに収容されるテープ心線10は、上記のテープ心線10A、10B、10Cのいずれかで置き換えてもよい。また、光ケーブル30全体の伝送損失増加を抑制するという観点からは、テープ心線10に代えて、図3に示した比較例に係るテープ心線10Xが各スロット31aに収容されてもよい。
【0074】
図示を省略するが、図9に示す構成においては、各スロット31aは、スペーサ31の長手方向に沿って螺旋状に延在しており、一方向撚りを形成している。しかしながら、図11に示す変形例に係るスペーサ31Aのように、各スロット31aは、スペーサ31の長手方向に沿って、いわゆるSZ撚りを形成するように延在してもよい。
【0075】
このような構成によれば、各スロット31aに収容された複数のテープ心線に加わる応力の向きを、光ケーブル30の長手方向について不揃いにしやすい。したがって、光ケーブル30がドラムに巻き取られている場合などにおける一方向への応力蓄積がより確実に解消され、各テープ心線10、ひいては光ケーブル30の伝送損失増加を抑制できる。
【0076】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1:光ファイバ心線
1a:光ファイバ
1b:一次被覆
1c:二次被覆
1d:着色インク層
1e:マーキング
2、2A、2B、2X:被覆部材
10、10A、10B、10C、10X:テープ心線
20:光ケーブル
21:チューブ
22:外被
23:隙間
30:光ケーブル
31、31A:スペーサ
31a:スロット
32:外被
d:光ファイバ心線の直径
T0、T1、T2、T3:テープ心線の厚さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11