特許第6315071号(P6315071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6315071
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】冷媒組成物の移充填方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20180416BHJP
   F25B 1/00 20060101ALN20180416BHJP
【FI】
   C09K5/04 E
   !F25B1/00 396B
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-229822(P2016-229822)
(22)【出願日】2016年11月28日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 立美
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】黒木 眸
(72)【発明者】
【氏名】山田 康夫
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−124569(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/075393(WO,A1)
【文献】 特開平11−118787(JP,A)
【文献】 特開平08−157810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/04、
F25B1/00、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:32.5〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.3〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜53.2重量%
である、方法。
【請求項2】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:32.9〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.4〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.7重量%
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:33.4〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.6〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.0重量%
である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:29.7〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.6重量%
である、方法。
【請求項5】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:29.9〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.9〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.2重量%
である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:30.3〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:30.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜39.4重量%
である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:39.9〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.8重量%
である、方法。
【請求項8】
移充填前の供給元における前記冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:40.2〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.5〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.3重量%
である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
移充填前の供給元における前記冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:40.7〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜29.6重量%
である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:25.3〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:15.1〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜59.6重量%
である、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒組成物の移充填方法に関する。より詳細には、ジフルオロメタン(HFC−32又はR32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125又はR125)及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a又はR134a)を含む冷媒組成物の移充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコン、冷凍機、冷蔵庫等に使用される冷媒組成物として、ジフルオロメタン(HFC−32、沸点:−52℃)、ペンタフルオロエタン(HFC−125、沸点:−48℃)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a、沸点:−27℃)、及び1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a、沸点:−48℃)等の分子構造中に塩素を含まないハイドロフルオロカーボン(HFC)の混合物が用いられている。
【0003】
例えば、HFC−32、HFC−125及びHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物として、R407C(23重量%のHFC−32、25重量%のHFC−125、及び52重量%のHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物)、R407E(25重量%のHFC−32、15重量%のHFC−125、及び60重量%のHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物)、R407F(30重量%のHFC−32、30重量%のHFC−125、及び40重量%のHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物)、32.5重量%のHFC-32、15重量%のHFC−125、及び52.5重量%のHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物(R407Hとして登録申請中)、40.0重量%のHFC-32、30.0重量%のHFC−125、及び30.0重量%のHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物(下記特許文献1参照;以下、「D407HT」と記載する場合がある。)などが提案されている。
【0004】
上記したHFC−32、HFC−125及びHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物は非共沸性であることから、蒸発・凝縮などのように相変化する場合には低沸点の成分が蒸発しやすく、高沸点の成分が凝縮しやすいことから組成変動が生じる。この傾向は蒸発の際、即ち、液から気への相変化の際に顕著であり、また、冷媒組成物を構成する各成分の沸点差が大きいほど顕著である。従って、非共沸性の冷媒組成物を充填した密閉容器から別の容器又は機器に移す(移充填)場合には、通常、相変化を伴わないように液側から抜き出すことが行われている。
【0005】
しかしながら、液側から抜き出したとしても冷媒組成物を構成する各成分の沸点差が大きい場合、冷媒組成物の抜き出しに伴う圧力の減少や気相部空間の増加により液相中の低沸点成分が蒸発することから、数重量%の幅で液相の組成変動が生じる。このように数重量%の幅で液相の組成変動が生じた場合、冷媒性能に大きな変化が生じ、能力や効率が低下するだけでなく、燃焼性などの冷媒の安全性にも大きな影響を与えるという問題がある。
【0006】
HFC−32、HFC−125及びHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物は、非共沸性であり、かつ冷媒組成物を構成する各成分の沸点差が大きいことから、当該冷媒組成物をボンベ、ISOコンテナ、タンクローリー、貯槽等の供給元容器から他のボンベや冷凍空調機器等の供給先容器又は機器に移充填する際に生じる液相の組成変動は性能上無視することはできない。また、性能面だけでなく混合冷媒の品質保証という観点からも、その冷媒組成物の組成の許容範囲として公差が設定されており、その公差内に液相の組成変動を収めることが極めて重要である。
【0007】
本発明者らは、これまでに、HFC−32、HFC−125、及びHFC−134aの3成分のみからなる冷媒組成物であって、22〜24重量%のHFC−32、23〜27重量%のHFC−125、及び50〜54重量%のHFC−134aを許容範囲(公差)とする冷媒組成物(R407C)について、供給元容器に含まれる冷媒組成物におけるHFC−32、HFC−125、及びHFC−134aの各成分の組成を特定の範囲に調整することにより、当該冷媒組成物を移充填した場合であっても移充填に伴う相変化による液相の組成変動を上記した公差内に収める技術を開発している(例えば、下記特許文献2及び3参照)。
【0008】
しかしながら、移充填に伴う相変化による液相の組成変動は、冷媒組成物を構成する成分が共通していたとしても、各成分の組成、公差の幅、移充填率等によって大きく相違するため、R407Cとは組成の異なる冷媒組成物の液相の組成変動を上記特許文献2及び3から得られる知見から予測することは極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−129272号公報
【特許文献2】国際公開第96/33377号
【特許文献3】特開平10−160296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記した従来技術の問題点及び現状に鑑みてなされたものであり、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分を含む冷媒組成物の移充填において、供給元における冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差の範囲内に収めることができる移充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分を含む冷媒組成物について、移充填前の供給元における冷媒組成物の各成分の液相組成を公差の範囲内で特定範囲に調整することにより、当該冷媒組成物を供給元から供給先に移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差の範囲内に収めることができることを見出した。さらに、本発明者らは、移充填前の供給元における冷媒組成物の各成分の液相組成を公差の範囲内で特定範囲に調整することにより、移充填率が高い場合であっても冷媒組成物を供給元から供給先に移充填した場合に供給元における冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差の範囲内に収めることができることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づき、さらなる研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の項に記載の発明を包含する。
項1.
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:32.5〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.3〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜53.2重量%
である、方法。
項2.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:32.9〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.4〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.7重量%
である、上記項1に記載の方法。
項3.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:33.4〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.6〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.0重量%
である、上記項1に記載の方法。
項4.
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:29.7〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.6重量%
である、方法。
項5.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:29.9〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.9〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.2重量%
である、上記項4に記載の方法。
項6.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:30.3〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:30.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜39.4重量%
である、上記項4に記載の方法。
項7.
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:39.9〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.8重量%
である、方法。
項8.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:40.2〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.5〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.3重量%
である、上記項7に記載の方法。
項9.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:40.7〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜29.6重量%
である、上記項7に記載の方法。
項10.
ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:24.4〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:14.9〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜60.7重量%
である、方法。
項11.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:24.8〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:14.9〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜60.3重量%
である、上記項10に記載の方法。
項12.
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:25.3〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:15.1〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜59.6重量%
である、上記項10に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分を含む冷媒組成物を供給元の液相から供給先に移充填した場合に供給元における冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差内に収めることができる。その結果、冷媒組成物の冷媒性能の低下や燃焼危険性の発現を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】参考例1の結果(ジフルオロメタンの液相組成変動)を示す図である。
図2】参考例1の結果(ペンタフルオロエタンの液相組成変動)を示す図である。
図3】参考例1の結果(1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液相組成変動)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明は、ジフルオロメタン(HFC−32又はR32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125又はR125)及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a又はR134a)を含む冷媒組成物の移充填方法に係る。なお、本明細書において、当該方法を「本発明の方法」と記載する場合がある。
【0017】
本発明の方法は、上記した冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含む。なお、本明細書において、当該工程を「移充填工程」と記載する場合がある。
【0018】
供給元としては、冷媒組成物を貯蔵でき、かつ密閉されたものであれば特に制限されない。例えば、サービス缶、5〜1000Lボンベ、ISOコンテナ、ローリータンク、定置式貯槽などの密閉容器などが挙げられる。
【0019】
供給先としては、供給先から供給される冷媒組成物を貯蔵でき、かつ密閉されたものであれば特に制限されない。例えば、サービス缶、5〜1000Lボンベ、ISOコンテナ、定置式貯槽などの密閉容器や、冷暖房機器、冷凍庫、冷蔵庫、給湯機器などの機器が挙げられる。
【0020】
移充填工程では、供給元に存在する冷媒組成物を供給先に移充填する。なお、本発明において用いる冷媒組成物は、蒸発・凝縮などのように相変化する場合には、低沸点の成分が蒸発しやすく、高沸点の成分が凝縮しやすいことから組成変動が生じ、この傾向は蒸発の際に顕著である。そのため、移充填工程では、供給元から供給先へ冷媒組成物を移充填する際に、供給元の液相から冷媒組成物を抜き出し、供給先へ移充填することを特徴とする。このように供給元の液相から供給先へ移充填することにより、冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差の範囲内に収めることができる。なお、移充填する環境としては、外気温度範囲が40℃以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の方法において用いる冷媒組成物は、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)の3成分を含む。当該冷媒組成物には、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン以外のハイドロカーボンやハロゲン化カーボンが含まれていてもよいが、本発明の効果が阻害されないためには、冷媒組成物中のジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量が、冷媒組成物全体を基準(100重量%)として、95重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましく、99.5重量%以上であることがさらに好ましく、99.9重量%以上であることが特に好ましい。なお、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン以外のハイドロカーボンとしては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン(これらの異性体を含む)等が挙げられ、ハロゲン化カーボンとしては、R23、R22、R41、R143、R152、HFO−1234、HFO−1243、HCFO−1233(これらの異性体を含む)等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の方法において用いる冷媒組成物は、実質的に、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンのみからなることがより好ましい。なお、本明細書において「実質的に、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンのみからなる」とは、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン以外のハイドロカーボン及び/又はハロゲン化カーボンを含む態様を包含し、かつ冷媒組成物に含まれる当該ハイドロカーボン及び/又はハロゲン化カーボンの含有量が、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の冷媒特性等に影響を与えない程度の量である場合を意味する。
【0023】
さらに、本発明の方法において用いる冷媒組成物は、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分のみからなる冷媒組成物であることが特に好ましい。換言すると、本発明の方法において用いる冷媒組成物は、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量が、冷媒組成物全体を基準(100重量%)として100重量%であることが特に好ましい。
【0024】
また、本発明の方法において用いる冷媒組成物の組成は、下記の公差範囲A〜D組成のいずれかの範囲内である。なお、下記の公差範囲A〜D組成の数値範囲はいずれも、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量を基準(100重量%)とした値である。
【0025】
<公差範囲A組成>
ジフルオロメタン:31.5〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.0〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜54.5重量%。
【0026】
<公差範囲B組成>
ジフルオロメタン:28.0〜32.0重量%、
ペンタフルオロエタン:28.0〜32.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜42.0重量%。
【0027】
<公差範囲C組成>
ジフルオロメタン:39.0〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.0〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜32.0重量%。
【0028】
<公差範囲D組成>
ジフルオロメタン:23.0〜27.0重量%、
ペンタフルオロエタン:13.0〜17.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:.58.0〜62.0重量%。
【0029】
なお、本明細書において公差とは、冷媒をASHRAEに申請する際に申請者側が冷媒の品質、性能、燃焼性を考慮し、中心組成から許容幅として設定する範囲である。
【0030】
上記した公差範囲A組成の範囲内である冷媒組成物としては、例えば、32.5重量%のジフルオロメタン、15.0重量%のペンタフルオロエタン、及び52.5重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分のみからなる冷媒組成物が挙げられる。なお、当該混合冷媒組成物は、本願出願時点において、ASHRAE34にR407Hとして登録申請中である。
【0031】
上記した公差範囲B組成の範囲内である冷媒組成物としては、例えば、30.0重量%のジフルオロメタン、30.0重量%のペンタフルオロエタン、及び40.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分のみからなる冷媒組成物(R407F)が挙げられる。
【0032】
上記した公差範囲C組成の範囲内である冷媒組成物としては、例えば、40.0重量%のジフルオロメタン、30.0重量%のペンタフルオロエタン、及び30.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分のみからなる冷媒組成物(D407HT)挙げられる。
【0033】
上記した公差範囲D組成の範囲内である冷媒組成物としては、例えば、25.0重量%のジフルオロメタン、15.0重量%のペンタフルオロエタン、及び60.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分のみからなる冷媒組成物(R407E)が挙げられる。
【0034】
本発明の方法は、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が特定範囲であることを特徴とする。具体的には、冷媒組成物を供給先へ移充填する前の供給元の冷媒組成物の液相組成を特定の範囲内となるように調整した冷媒組成物を用いることを特徴とする。
【0035】
より具体的には、上記した公差範囲A組成の範囲内である冷媒組成物を移充填する場合には、下記の3種の液相組成を有する冷媒組成物(以下、本明細書において、「冷媒組成物A1」、「冷媒組成物A2」、及び「冷媒組成物A3」とそれぞれ記載する。)のいずれかを用いる。なお、下記の冷媒組成物A1〜A3の組成の数値範囲はいずれも、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量を基準(100重量%)とした値である。
【0036】
<冷媒組成物A1>
ジフルオロメタン:32.5〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.3〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜53.2重量%。
【0037】
<冷媒組成物A2>
ジフルオロメタン:32.9〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.4〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.7重量%。
【0038】
<冷媒組成物A3>
ジフルオロメタン:33.4〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.6〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜52.0重量%。
【0039】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A1、A2、又はA3の範囲内となるように調整することにより、供給元から供給先に移充填した場合に、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A組成の範囲内に収めることができる。
【0040】
上記した公差範囲B組成の範囲内である冷媒組成物を移充填する場合には、下記の3種の液相組成を有する冷媒組成物(以下、本明細書において、「冷媒組成物B1」、「冷媒組成物B2」、及び「冷媒組成物B3」とそれぞれ記載する。)のいずれかを用いる。なお、下記の冷媒組成物B1〜B3の組成の数値範囲はいずれも、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量を基準(100重量%)とした値である。
【0041】
<冷媒組成物B1>
ジフルオロメタン:29.7〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.6重量%。
【0042】
<冷媒組成物B2>
ジフルオロメタン:29.9〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.9〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜40.2重量%。
【0043】
<冷媒組成物B3>
ジフルオロメタン:30.3〜31.0重量%、
ペンタフルオロエタン:30.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:38.0〜39.4重量%。
【0044】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物B1、B2、又はB3の範囲内となるように調整することにより、供給元から供給先に移充填した場合に、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲B組成の範囲内に収めることができる。
【0045】
上記した公差範囲C組成の範囲内である冷媒組成物を移充填する場合には、下記の3種の液相組成を有する冷媒組成物(以下、本明細書において、「冷媒組成物C1」、「冷媒組成物C2」、及び「冷媒組成物C3」とそれぞれ記載する。)のいずれかを用いる。なお、下記の冷媒組成物C1〜C3の組成の数値範囲はいずれも、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量を基準(100重量%)とした値である。
【0046】
<冷媒組成物C1>
ジフルオロメタン:39.9〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.3〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.8重量%。
【0047】
<冷媒組成物C2>
ジフルオロメタン:40.2〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.5〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜30.3重量%。
【0048】
<冷媒組成物C3>
ジフルオロメタン:40.7〜41.0重量%、
ペンタフルオロエタン:29.7〜31.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:28.0〜29.6重量%。
【0049】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物C1、C2、又はC3の範囲内となるように調整することにより、供給元から供給先に移充填した場合に、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲C組成の範囲内に収めることができる。
【0050】
上記した公差範囲D組成の範囲内である冷媒組成物を用いる場合には、下記の3種の液相組成を有する冷媒組成物(以下、本明細書において、「冷媒組成物D1」、「冷媒組成物D2」、及び「冷媒組成物D3」とそれぞれ記載する。)のいずれかを用いる。なお、下記の冷媒組成物D1〜D3の組成の数値範囲はいずれも、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの合計量を基準(100重量%)とした値である。
【0051】
<冷媒組成物D1>
ジフルオロメタン:24.4〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:14.9〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜60.7重量%。
【0052】
<冷媒組成物D2>
ジフルオロメタン:24.8〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:14.9〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜60.3重量%。
【0053】
<冷媒組成物D3>
ジフルオロメタン:25.3〜26.0重量%、
ペンタフルオロエタン:15.1〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:58.0〜59.6重量%。
【0054】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物D1、D2、又はD3の範囲内となるように調整することにより、供給元から供給先に移充填した場合に、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲D組成の範囲内に収めることができる。
【0055】
本発明の方法では、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3、及びD1〜D3のいずれかの範囲内となるように調整することにより、下記式で算出される移充填率となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A〜D組成の範囲内に収めることができる。換言すると、供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A1〜A3、B1〜B3、C1〜C3、及びD1〜D3のいずれか範囲内となるように調整することにより、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A〜D組成の範囲内に収めつつ、下記式で算出される移充填率となるまで移充填することができる。
【0056】
【数1】
【0057】
具体的には、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A1の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大70%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A組成の範囲内に収めることができる。また、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A2の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大80%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A組成の範囲内に収めることができる。さらに、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物A3の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大90%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲A組成の範囲内に収めることができる。
【0058】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物B1の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大70%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲B組成の範囲内に収めることができる。また、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物B2の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大80%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲B組成の範囲内に収めることができる。さらに、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物B3の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大90%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲B組成の範囲内に収めることができる。
【0059】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物C1の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大70%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲C組成の範囲内に収めることができる。また、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物C2の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大80%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲C組成の範囲内に収めることができる。さらに、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物C3の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大90%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲C組成の範囲内に収めることができる。
【0060】
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物D1の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大70%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲D組成の範囲内に収めることができる。また、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物D2の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大80%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲D組成の範囲内に収めることができる。さらに、移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した冷媒組成物D3の範囲内となるように調整することにより、移充填率が最大90%となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を公差範囲D組成の範囲内に収めることができる。
【0061】
移充填率は、供給元の容量、形状、供給元の使用方法等により好適な値が変動する。例えば、供給元がサービス缶、NRC容器、回転容器(5〜1000L)等の小型密閉容器である場合、これらは通常、密閉容器内に充填されている冷媒組成物を全て使い切ることが前提とされていることから、移充填率が90%程度となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の組成を上記した公差範囲A〜D組成の範囲内に収めることができるように、供給元の冷媒組成物の液相組成を調整することが好ましい。
【0062】
また、例えば、供給元がISOコンテナや貯槽等の大型密閉容器である場合、通常、ポンプ循環により移充填操作が行われ、装置(ポンプ)の保護のために液相を残した状態で追加の冷媒組成物を補充する。しかしながら、冷媒組成物の液相を大量に残存させた場合には、液相の組成変動を低減することが可能になるものの、冷媒組成物を補充する工程の頻度が増加するため、経済的ではない。そのため、供給元が大型密閉容器である場合にも、移充填率が70〜90%程度となるまで移充填した場合であっても、移充填後の供給元における冷媒組成物の組成を上記した公差範囲A〜D組成の範囲内に収めることができるように、供給元の冷媒組成物の液相組成を調整することが好ましい。
【0063】
なお、移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した公差範囲A〜D組成の範囲内に収めることができるように冷媒組成物の液相組成を調整した場合、移充填率が90%未満(例えば、70〜80%)となるまで移充填しても移充填後の供給元における冷媒組成物の液相組成を上記した公差範囲A〜D組成の範囲内に収めることができる。しかしながら、供給元における冷媒組成物の組成の選択幅が狭くなり、より厳しい品質管理が必要とされることから、供給元の形態に応じて移充填率を適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0065】
参考例1:R407Cの移充填による供給元の液相組成変動の検討
10Lの密閉容器(供給元)に、23.0重量%のジフルオロメタン、25.0重量%のペンタフルオロエタン、及び52.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分からなる冷媒組成物(R407C)を9kg充填した。次いで、供給元の液温を10℃、20℃、30℃、及び40℃にそれぞれ調整し、ポンプにより毎分0.9kgの速度で密閉容器(供給先)へ移充填率が90%となるまで移充填を行った。また、移充填率が0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%及び90%の各時点において、液相側の導出配管の途中に設置したサンプリングバルブから移充填中のガスを一部採取し、液相組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。ジフルオロメタンの液相組成変動を図1に、ペンタフルオロエタンの液相組成変動を図2に、1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液相組成変動を図3にそれぞれ示す。
【0066】
図1〜3から、R407Cの液相組成の変動幅は移充填率が高くなるにつれて大きくなることが確認された。また、液温が高くなるにつれて液相組成の変動幅が大きくなることが確認された。なお、液相組成の変動幅は、冷媒組成物を構成する各成分が共通していたとしても、組成比、公差の幅、及び移充填率などが異なることから、本参考例1で使用したR407Cの結果を以って、本参考例1において用いた組成以外の組成を有する冷媒組成物について液相組成の変動幅を予測することは極めて困難である。
【0067】
参考例2:R407Hの移充填による供給元の液相組成変動の検討
10Lの密閉容器(供給元容器)に、32.5重量%のジフルオロメタン、15.0重量%のペンタフルオロエタン、及び52.5重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分からなる冷媒組成物(R407H)を9kg充填した。なお、本参考例2で用いた冷媒組成物の公差範囲組成は、ジフルオロメタンが31.5〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.0〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜54.5重量%(公差範囲A組成)である。
【0068】
次いで、各容器の液温を40℃に調整し、ポンプにより毎分0.9kgの速度で供給先容器へ移充填率が90%になるまで移充填を行った。また、移充填率が0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%及び90%の各時点において、液相側の導出配管の途中に設置したサンプリングバルブにから移充填中のガスを一部採取し、液相組成をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0069】
なお、日本においては高圧ガス保安法により40℃以上での容器の取り扱いが禁止されているが、日本国外においてはこのような基準はなく、移充填の作業環境を考慮した場合、40℃程度が最も過酷な条件であるため、液温が40℃である場合について試験を行った。
【0070】
結果を下記表1に示す。なお、下記表1中、下線を付した値は、上記した公差範囲A組成の範囲外であることを示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から、本参考例2において用いた冷媒組成物(R407H)は、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の組成が公差範囲A組成の範囲内に収まることが確認された。一方、移充填率が80%となるまで移充填した場合には、ジフルオロメタンの液相組成が公差範囲A組成の範囲外となること、及び移充填率が90%となるまで移充填した場合にはジフルオロメタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液相組成が共に公差範囲A組成の範囲外となることが確認された。
【0073】
実施例1−1:冷媒組成物A1の導出
上記参考例2の結果を元に、R407Hを移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成(ジフルオロメタンが31.5〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.0〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜54.5重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物A1)の検討を行った。
【0074】
具体的には、R407Hを移充填率が70%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例2と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表2(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表3(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
表2及び3から、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが32.5〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.3〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜53.2重量%(冷媒組成物A1)であることが分かった。
【0078】
実施例1−2:冷媒組成物A2の導出
上記参考例2の結果を元に、R407Hを移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成(ジフルオロメタンが31.5〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.0〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜54.5重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物A2)の検討を行った。
【0079】
具体的には、冷媒組成物を移充填率が80%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前組成の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例2と同様の方法により検討を行った。結果を下記表4(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表5(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
表4及び5から、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが32.9〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.4〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜52.7重量%(冷媒組成物A2)であることが分かった。
【0083】
実施例1−2:冷媒組成物A3の導出
上記参考例2の結果を元に、R407Hを移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成(ジフルオロメタンが31.5〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.0〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜54.5重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物A3)の検討を行った。
【0084】
具体的には、冷媒組成物を移充填率が90%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前組成の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例2と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表6(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表7(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
表6及び7から、移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲A組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが33.4〜33.5重量%、ペンタフルオロエタンが14.6〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが50.5〜52.0重量%(冷媒組成物A3)であることが分かった。
【0088】
参考例3:R407Fの移充填による供給元の液相組成変動の検討
10Lの密閉容器(供給元容器)に、30.0重量%のジフルオロメタン、30.0重量%のペンタフルオロエタン、及び40.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分からなる冷媒組成物(R407F)を9kg充填した以外は、上記参考例2と同様にして試験を行った。なお、本参考例で用いた冷媒組成物の公差範囲組成は、ジフルオロメタンが28.0〜32.0重量%、ペンタフルオロエタンが28.0〜32.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜42.0重量%(公差範囲B組成)である。結果を表8に示す。なお、下記表8中、下線を付した値は、上記した公差範囲B組成の範囲外であることを示す。
【0089】
【表8】
【0090】
表8から、本参考例3において用いた冷媒組成物(R407F)は、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内に収まることが確認された。一方、移充填率が90%となるまで移充填した場合には、1,1,1,2−テトラフルオロエタンの組成が公差範囲B組成の範囲外となることが確認された。
【0091】
実施例2−1:冷媒組成物B1の導出
上記参考例3の結果を元に、R407Fを移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成(ジフルオロメタンが28.0〜32.0重量%、ペンタフルオロエタンが28.0〜32.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜42.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物B1)の検討を行った。
【0092】
具体的には、R407Fを移充填率が70%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例3と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表9(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表10(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
【表10】
【0095】
表9及び10から、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが29.7〜31.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.7〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜40.6重量%(冷媒組成物B1)であることが分かった。
【0096】
実施例2−2:冷媒組成物B2の導出
上記参考例3の結果を元に、R407Fを移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成(ジフルオロメタンが28.0〜32.0重量%、ペンタフルオロエタンが28.0〜32.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜42.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物B2)の検討を行った。
【0097】
具体的には、R407Fを移充填率が80%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例3と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表11(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表12(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
表11及び12から、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが29.9〜31.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.9〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜40.2重量%(冷媒組成物B2)であることが分かった。
【0101】
実施例2−3:冷媒組成物B3の導出
上記参考例3の結果を元に、R407Fを移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成(ジフルオロメタンが28.0〜32.0重量%、ペンタフルオロエタンが28.0〜32.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜42.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物B2)の検討を行った。
【0102】
具体的には、R407Fを移充填率が90%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例3と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表13(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表14(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0103】
【表13】
【0104】
【表14】
【0105】
表13及び14から、移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲B組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが30.3〜31.0重量%、ペンタフルオロエタンが30.3〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが38.0〜39.4重量%(冷媒組成物B3)であることが分かった。
【0106】
参考例4:D407HTの移充填による供給元の液相組成変動の検討
10Lの密閉容器(供給元容器)に、40.0重量%のジフルオロメタン、30.0重量%のペンタフルオロエタン、及び30.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分からなる冷媒組成物(D407HT)を9kg充填した以外は、上記参考例2と同様にして試験を行った。なお、本参考例で用いた冷媒組成物の公差範囲組成は、ジフルオロメタンが39.0〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.0〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜32.0重量%(公差範囲C組成)である。結果を表15に示す。なお、下記表15中、下線を付した値は、上記した公差範囲C組成の範囲外であることを示す。
【0107】
【表15】
【0108】
表15から、本参考例4において用いた冷媒組成物(D407HT)は、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内に収まることが確認された。一方、移充填率が80%となるまで移充填した場合にはジフルオロメタンの液相組成が公差範囲C組成の範囲外となること、及び移充填率が90%となるまで移充填した場合にはジフルオロメタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液相組成が共に公差範囲C組成の範囲外となることが確認された。
【0109】
実施例3−1:冷媒組成物C1の導出
上記参考例4の結果を元に、D407HTを移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成(ジフルオロメタンが39.0〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.0〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜32.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物C1)の検討を行った。
【0110】
具体的には、D407HTを移充填率が70%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例4と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表16(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表17(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0111】
【表16】
【0112】
【表17】
【0113】
表16及び17から、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが39.9〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.3〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜30.8重量%(冷媒組成物C1)であることが分かった。
【0114】
実施例3−2:冷媒組成物C2の導出
上記参考例4の結果を元に、D407HTを移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成(ジフルオロメタンが39.0〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.0〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜32.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物C2)の検討を行った。
【0115】
具体的には、D407HTを移充填率が80%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例4と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表18(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表19(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0116】
【表18】
【0117】
【表19】
【0118】
表18及び19から、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが40.2〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.5〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜30.3重量%(冷媒組成物C2)であることが分かった。
【0119】
実施例3−3:冷媒組成物C3の導出
上記参考例4の結果を元に、D407HTを移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成(ジフルオロメタンが39.0〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.0〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜32.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物C3)の検討を行った。
【0120】
具体的には、D407HTを移充填率が90%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例4と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表20(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表21(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0121】
【表20】
【0122】
【表21】
【0123】
表20及び21から、移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲C組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが40.7〜41.0重量%、ペンタフルオロエタンが29.7〜31.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが28.0〜29.6重量%(冷媒組成物C3)であることが分かった。
【0124】
参考例5:R407Eの移充填による供給元の液相組成変動の検討
10Lの密閉容器(供給元容器)に、25.0重量%のジフルオロメタン、15.0重量%のペンタフルオロエタン、及び60.0重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分からなる冷媒組成物(R407E)を9kg充填した以外は、上記参考例2と同様にして試験を行った。なお、本参考例で用いた冷媒組成物の公差範囲組成は、ジフルオロメタンが23.0〜27.0重量%、ペンタフルオロエタンが13.0〜17.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜62.0重量%(公差範囲D組成)である。結果を表22に示す。なお、下記表22中、下線を付した値は、上記した公差範囲D組成の範囲外であることを示す。
【0125】
【表22】
【0126】
表22から、本参考例5において用いた冷媒組成物(R407E)は、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内に収まることが確認された。一方、移充填率が90%となるまで移充填した場合には1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液相組成が公差範囲D組成の範囲外となることが確認された。
【0127】
実施例4−1:冷媒組成物D1の導出
上記参考例5の結果を元に、R407Eを移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成(ジフルオロメタンが23.0〜27.0重量%、ペンタフルオロエタンが13.0〜17.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜62.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物D1)の検討を行った。
【0128】
具体的には、R407Eを移充填率が70%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例5と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表23(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表24(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0129】
【表23】
【0130】
【表24】
【0131】
表23及び24から、移充填率が70%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが24.4〜26.0重量%、ペンタフルオロエタンが14.9〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜60.7重量%(冷媒組成物D1)であることが分かった。
【0132】
実施例4−2:冷媒組成物D2の導出
上記参考例5の結果を元に、R407Eを移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成(ジフルオロメタンが23.0〜27.0重量%、ペンタフルオロエタンが13.0〜17.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜62.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物D2)の検討を行った。
【0133】
具体的には、R407Eを移充填率が80%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例5と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表25(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表26(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0134】
【表25】
【0135】
【表26】
【0136】
表25及び26から、移充填率が80%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが24.8〜26.0重量%、ペンタフルオロエタンが14.9〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜60.3重量%(冷媒組成物D2)であることが分かった。
【0137】
実施例4−3:冷媒組成物D2の導出
上記参考例5の結果を元に、R407Eを移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成(ジフルオロメタンが23.0〜27.0重量%、ペンタフルオロエタンが13.0〜17.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜62.0重量%。)の範囲内に収まる組成範囲(冷媒組成物D3)の検討を行った。
【0138】
具体的には、R407Eを移充填率が90%となるまで移充填した場合に、供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内となる移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の下限値、及び移充填前の低沸点成分(ジフルオロメタン及びペンタフルオロエタン)組成の上限値について、前記参考例5と同様の方法により検討を行った。その結果を下記表27(低沸点成分組成の下限値の検討結果)及び表28(低沸点成分組成の上限値の検討結果)に示す。
【0139】
【表27】
【0140】
【表28】
【0141】
表27及び28から、移充填率が90%となるまで移充填した場合であっても供給元における冷媒組成物の液相組成が公差範囲D組成の範囲内に収まる組成範囲は、ジフルオロメタンが25.3〜26.0重量%、ペンタフルオロエタンが15.1〜16.0重量%、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンが58.0〜59.6重量%(冷媒組成物D3)であることが分かった。
【0142】
以上の実施例1−1〜4−3までの結果を下記表29に示す。
【0143】
【表29】
【要約】
【課題】ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンの3成分を含む冷媒組成物の移充填において、供給元における冷媒組成物の移充填に伴う相変化による液相の組成変動を公差の範囲内に収めることができる移充填方法を提供する。
【解決手段】ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒組成物の移充填方法であって、
冷媒組成物を供給元の液相から供給先へ移充填する工程を含み、
移充填前の供給元における冷媒組成物の液相組成が、
ジフルオロメタン:32.5〜33.5重量%、
ペンタフルオロエタン:14.3〜16.0重量%、及び
1,1,1,2−テトラフルオロエタン:50.5〜53.2重量%
である、方法。
【選択図】なし
図1
図2
図3