特許第6315083号(P6315083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315083
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】電解液及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20180416BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180416BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20180416BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20180416BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20180416BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01M10/0567
   H01G11/60
   H01G11/64
【請求項の数】7
【全頁数】69
(21)【出願番号】特願2016-510390(P2016-510390)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058954
(87)【国際公開番号】WO2015146997
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-67013(P2014-67013)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 英郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 穣輝
(72)【発明者】
【氏名】有馬 博之
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 佳子
(72)【発明者】
【氏名】木下 信一
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−197254(JP,A)
【文献】 特開2013−065540(JP,A)
【文献】 特開2003−197480(JP,A)
【文献】 特開2010−015968(JP,A)
【文献】 特開2009−231261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 11/60,11/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池又はキャパシタに用いられる電解液であって、
フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒、ニトリル化合物、並びに、電解質塩を含み、
前記ニトリル化合物は、3−ヘキセンジニトリル、ムコノニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル及び2−ヘキセンニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする電解液。
【請求項2】
フッ素化鎖状カーボネートのフッ素含有率が33〜70質量%である請求項1記載の電解液。
【請求項3】
溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネートが3〜97体積%、フッ素化鎖状カーボネートが3〜97体積%である請求項1又は2記載の電解液。
【請求項4】
溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートの合計量が6〜100体積%である請求項1、2又は3記載の電解液。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の電解液を備えることを特徴とするキャパシタ。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の電解液を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
請求項5記載のキャパシタ、又は、請求項6記載のリチウムイオン二次電池を備えることを特徴とするモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気製品の軽量化、小型化にともない、高いエネルギー密度をもつリチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスの開発が進められている。また、リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスの適用分野が拡大するにつれて特性の改善が要望されている。特に今後、車載用にリチウムイオン二次電池が使われた場合、電池特性の改善はますます重要となる。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、初期容量、レート特性、サイクル特性、高温保存特性、低温特性、連続充電特性、自己放電特性、過充電防止特性等の様々な特性が必要とされ、これらの特性を改良するために種々の添加剤を電解液に含有させる方法が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高電圧で充電しても分解を生じない電解液、ひいては起電力、放電容量、充放電のサイクル寿命に優れるLi二次電池を形成しうる電解液の開発を目的とする発明として、非水溶媒にリチウム塩を溶解させた電解液に、シアノ基を2個以上有する有機化合物を0.001〜0.1モル/lの割合で添加したことを特徴とするLi二次電池用電解液が記載されている。
【0005】
特許文献2には、過放電時の負極集電体の溶解を防止して、過放電保護回路が不要となるリチウム二次電池を提供することを目的とする発明として、リチウムを吸蔵、放出が可能な正極と、Cu若しくはCu合金からなる負極集電体に接合されてリチウムを吸蔵、放出が可能な負極と、リチウムイオンを伝導する電解質とを具備してなり、ジニトリル化合物等の、官能基を二以上有し且つCu若しくはCu合金と強い親和性を有するCu親和性化合物が前記電解質に添加されていることを特徴とするリチウム二次電池が記載されている。
【0006】
特許文献3には、リチウム二次電池等の電気化学素子における常温及び高温寿命特性等の諸般性能を向上させることを目的とする発明として、電解質塩と、有機溶媒と、及び、非水電解液添加剤を含む非水電解液であって、前記非水電解液添加剤が、二重結合及び2つ以上のシアノ基が存在する特定の化合物であり、かつ、前記2つ以上のシアノ基が、前記二重結合に対してトランス位置に存在することを特徴とする非水電解液が記載されている。
【0007】
特許文献4には、高温特性を改善できる非水電解質電池を提供することを目的とする発明として、正極および負極と、非水電解質と、セパレータとを備え、上記正極は、リチウムおよび遷移金属を少なくとも有するリチウム複合酸化物と、該リチウム複合酸化物の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を含み、上記非水電解質は、シアノ基を有する脂肪族化合物を含む非水電解質電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−176322号公報
【特許文献2】特開2006−73513号公報
【特許文献3】特表2009−543318号公報
【特許文献4】特開2010−73366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイスを車両等の大容量電源を要する用途に適用する場合には、より高いエネルギー密度を達成するために、高電圧化する必要がある。このため、高電圧化に対応した電解液で、かつ、電気化学デバイスの種々の特性を向上させることができる電解液が求められていた。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電気化学デバイスの高電圧化に対応でき、かつ、電気化学デバイスの高温保存特性を向上させることができる電解液及び電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒を使用した電解液が、高電圧電池等の電気化学デバイスに適用でき、しかもサイクル特性等を向上させることができることを見いだした。そして、当該電解液に特定のニトリル化合物を添加することで、更に電気化学デバイスの高温保存特性を向上させることができることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒、下記一般式(1a)、(1b)及び(1c)で表されるニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、電解質塩を含むことを特徴とする電解液である。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基(CN)、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。nは1〜10の整数を表す。)
【化2】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基、又は、NC−Rc1−Xc1−(Rc1はアルキレン基、Xc1は酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。mは1〜10の整数を表す。)
【化3】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、シアノ基(CN)を含む基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。ただし、R、R、R及びRのうち少なくとも1つはシアノ基を含む基である。lは1〜3の整数を表す。)
【0013】
上記フッ素化鎖状カーボネートのフッ素含有率が33〜70質量%であることが好ましい。
【0014】
溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネートが3〜97体積%、フッ素化鎖状カーボネートが3〜97体積%であることが好ましい。
【0015】
溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートの合計量が6〜100体積%であることが好ましい。
【0016】
本発明は、上記電解液を備えることを特徴とする電気化学デバイスでもある。
【0017】
本発明は、上記電解液を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池でもある。
【0018】
本発明は、上記電気化学デバイス、又は、上記リチウムイオン二次電池を備えることを特徴とするモジュールでもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電解液によれば、電気化学デバイスの高電圧化に対応でき、かつ、電気化学デバイスの高温保存特性を向上させることができる。上記電解液を備える電気化学デバイスは、高電圧で、しかも高温保存特性に優れるため、車載用等の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0021】
本発明の電解液は、溶媒を含む。
【0022】
上記溶媒は、フッ素化飽和環状カーボネートを含む。
【0023】
フッ素化飽和環状カーボネートは、フッ素原子を有する飽和環状カーボネートである。具体的には、下記一般式(A):
【0024】
【化4】
(式中、X〜Xは同じか又は異なり、それぞれ−H、−CH、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基を表す。ただし、X〜Xの少なくとも1つは、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基である。)
で表されるフッ素化飽和環状カーボネート(A)が挙げられる。
上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)を含むと、本発明の電解液をリチウムイオン二次電池等に適用した場合に、負極に安定な被膜を形成することができ、負極での電解液の副反応を充分に抑制することができる。その結果、極めて安定で優れた充放電特性が得られる。
なお、本明細書中で「エーテル結合」は、−O−で表される結合である。
【0025】
上記一般式(A)において、誘電率、耐酸化性が良好な点から、X〜Xの1つ又は2つが、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
【0026】
上記一般式(A)において、低温での粘性の低下、引火点の上昇、更には電解質塩の溶解性の向上が期待できることから、X〜Xは、−H、−F、フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、又は、フッ素化アルコキシ基(c)であることが好ましい。
【0027】
上記フッ素化アルキル基(a)は、アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。フッ素化アルキル基(a)の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜17がより好ましく、2〜7が更に好ましく、2〜5が特に好ましい。
炭素数が大きくなりすぎると低温特性が低下したり、電解質塩の溶解性が低下したりするおそれがあり、炭素数が少な過ぎると、電解質塩の溶解性の低下、放電効率の低下、更には粘性の増大等がみられることがある。
【0028】
上記フッ素化アルキル基(a)のうち、炭素数が1のものとしては、CFH−、CFH−及びCF−が挙げられる。
【0029】
上記フッ素化アルキル基(a)のうち、炭素数が2以上のものとしては、下記一般式(a−1):
−R− (a−1)
(式中、Rはフッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基;Rはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基;ただし、R及びRの少なくとも一方はフッ素原子を有している)
で示されるフッ素化アルキル基が、電解質塩の溶解性が良好な点から好ましく例示できる。
なお、R及びRは、更に、炭素原子、水素原子及びフッ素原子以外の、その他の原子を有していてもよい。
【0030】
は、フッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基である。Rとしては、炭素数1〜16の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。Rの炭素数としては、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
【0031】
として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基として、CH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCHCHCH−、
【0032】
【化5】
【0033】
等が挙げられる。
【0034】
また、Rがフッ素原子を有する直鎖状のアルキル基である場合、CF−、CFCH−、CFCF−、CFCHCH−、CFCFCH−、CFCFCF−、CFCHCF−、CFCHCHCH−、CFCFCHCH−、CFCHCFCH−、CFCFCFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCHCF−、CFCHCHCHCH−、CFCFCHCHCH−、CFCHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、CFCFCFCFCH−、CFCFCHCFCH−、CFCFCHCHCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、CFCFCHCFCHCH−、HCF−、HCFCH−、HCFCF−、HCFCHCH−、HCFCFCH−、HCFCHCF−、HCFCFCHCH−、HCFCHCFCH−、HCFCFCFCF−、HCFCFCHCHCH−、HCFCHCFCHCH−、HCFCFCFCFCH−、HCFCFCFCFCHCH−、FCH−、FCHCH−、FCHCF−、FCHCFCH−、FCHCFCF−、CHCFCH−、CHCFCF−、CHCHCH−、CHCFCHCF−、CHCFCFCF−、CHCHCFCF−、CHCFCHCFCH−、CHCFCFCFCH−、CHCFCFCHCH−、CHCHCFCFCH−、CHCFCHCFCH−、CHCFCHCFCHCH−、CHCFCHCFCHCH−、HCFClCFCH−、HCFCFClCH−、HCFCFClCFCFClCH−、HCFClCFCFClCFCH−等が挙げられる。
【0035】
また、Rがフッ素原子を有する分岐鎖状のアルキル基である場合、
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
等が好ましく挙げられる。ただし、−CHや−CFという分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、その数は少ない(1個)かゼロであることがより好ましい。
【0039】
はフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である。Rは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。Rはこれらの単独又は組合せで構成される。
【0040】
(i)直鎖状の最小構造単位:
−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl
【0041】
(ii)分岐鎖状の最小構造単位:
【0042】
【化8】
【0043】
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
【0044】
は、直鎖状である場合には、上述した直鎖状の最小構造単位のみからなるものであり、なかでも−CH−、−CHCH−又はCF−が好ましい。電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる点から、−CH−又は−CHCH−がより好ましい。
【0045】
は、分岐鎖状である場合には、上述した分岐鎖状の最小構造単位を少なくとも1つ含んでなるものであり、一般式−(CX)−(XはH、F、CH又はCF;XはCH又はCF。ただし、XがCFの場合、XはH又はCHである)で表されるものが好ましく例示できる。これらは特に電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる。
【0046】
好ましいフッ素化アルキル基(a)としては、例えばCFCF−、HCFCF−、HCFCF−、CHCF−、CFCFCF−、HCFCFCF−、HCFCFCF−、CHCFCF−、
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
等が挙げられる。
【0050】
上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)は、エーテル結合を有するアルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)は、炭素数が2〜17であることが好ましい。炭素数が多過ぎると、フッ素化飽和環状カーボネート(A)の粘性が高くなり、また、フッ素含有基が多くなることから、誘電率の低下による電解質塩の溶解性低下や、他の溶剤との相溶性の低下がみられることがある。この観点から上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)の炭素数は2〜10がより好ましく、2〜7が更に好ましい。
【0051】
上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)のエーテル部分を構成するアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基でよい。そうした直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。
【0052】
(i)直鎖状の最小構造単位:
−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl
【0053】
(ii)分岐鎖状の最小構造単位:
【0054】
【化11】
【0055】
アルキレン基は、これらの最小構造単位単独で構成されてもよく、直鎖状(i)同士、分岐鎖状(ii)同士、又は、直鎖状(i)と分岐鎖状(ii)との組み合わせにより構成されてもよい。好ましい具体例は、後述する。
【0056】
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
【0057】
更に好ましいエーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)としては、一般式(b−1):
−(ORn1− (b−1)
(式中、Rはフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;Rはフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基;n1は1〜3の整数;ただし、R及びRの少なくとも1つはフッ素原子を有している)
で示されるものが挙げられる。
【0058】
及びRとしては以下のものが例示でき、これらを適宜組み合わせて、上記一般式(b−1)で表されるエーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)を構成することができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0059】
(1)Rとしては、一般式:XC−(Rn2−(3つのXは同じか又は異なりいずれもH又はF;Rは炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n2は0又は1)で表されるアルキル基が好ましい。
【0060】
n2が0の場合、Rとしては、CH−、CF−、HCF−及びHCF−が挙げられる。
【0061】
n2が1の場合の具体例としては、Rが直鎖状のものとして、CFCH−、CFCF−、CFCHCH−、CFCFCH−、CFCFCF−、CFCHCF−、CFCHCHCH−、CFCFCHCH−、CFCHCFCH−、CFCFCFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCHCF−、CFCHCHCHCH−、CFCFCHCHCH−、CFCHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、CFCFCFCFCH−、CFCFCHCFCH−、CFCFCHCHCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、CFCFCHCFCHCH−、HCFCH−、HCFCF−、HCFCHCH−、HCFCFCH−、HCFCHCF−、HCFCFCHCH−、HCFCHCFCH−、HCFCFCFCF−、HCFCFCHCHCH−、HCFCHCFCHCH−、HCFCFCFCFCH−、HCFCFCFCFCHCH−、FCHCH−、FCHCF−、FCHCFCH−、CHCF−、CHCH−、CHCFCH−、CHCFCF−、CHCHCH−、CHCFCHCF−、CHCFCFCF−、CHCHCFCF−、CHCHCHCH−、CHCFCHCFCH−、CHCFCFCFCH−、CHCFCFCHCH−、CHCHCFCFCH−、CHCFCHCFCHCH−、CHCHCFCFCHCH−等が例示できる。
【0062】
n2が1であり、かつRが分岐鎖状のものとしては、
【0063】
【化12】
【0064】
等が挙げられる。
【0065】
ただし、−CHや−CFという分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、Rが直鎖状のものがより好ましい。
【0066】
(2)上記一般式(b−1)の−(ORn1−において、n1は1〜3の整数であり、好ましくは1又は2である。なお、n1=2又は3のとき、Rは同じでも異なっていてもよい。
【0067】
の好ましい具体例としては、次の直鎖状又は分岐鎖状のものが例示できる。
【0068】
直鎖状のものとしては、−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCH−、−CFCH−、−CFCF−、−CHCF−、−CHCHCH−、−CHCHCF−、−CHCFCH−、−CHCFCF−、−CFCHCH−、−CFCFCH−、−CFCHCF−、−CFCFCF−等が例示できる。
【0069】
分岐鎖状のものとしては、
【0070】
【化13】
【0071】
等が挙げられる。
【0072】
上記フッ素化アルコキシ基(c)は、アルコキシ基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記フッ素化アルコキシ基(c)は、炭素数が1〜17であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜6である。
【0073】
上記フッ素化アルコキシ基(c)としては、一般式:XC−(Rn3−O−(3つのXは同じか又は異なりいずれもH又はF;Rは好ましくは炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n3は0又は1;ただし3つのXのいずれかはフッ素原子を含んでいる)で表されるフッ素化アルコキシ基が特に好ましい。
【0074】
上記フッ素化アルコキシ基(c)の具体例としては、上記一般式(a−1)におけるRとして例示したアルキル基の末端に酸素原子が結合したフッ素化アルコキシ基が挙げられる。
【0075】
フッ素化飽和環状カーボネート(A)におけるフッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は10質量%以上が好ましい。フッ素含有率が低過ぎると、引火点の上昇効果が充分に得られないおそれがある。この観点から上記フッ素含有率は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は通常85質量%である。
フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は、各基の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/各基の式量}×100(%)により算出した値である。
【0076】
また、フッ素化飽和環状カーボネート(A)全体のフッ素含有率は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は通常76質量%である。誘電率、耐酸化性が良好な点からは、フッ素化飽和環状カーボネート(A)全体のフッ素含有率は10〜70質量%が好ましく、15〜60質量%がより好ましい。
なお、フッ素化飽和環状カーボネート(A)のフッ素含有率は、フッ素化飽和環状カーボネート(A)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化飽和環状カーボネート(A)の分子量}×100(%)により算出した値である。
【0077】
上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)としては、具体的には、例えば、以下が挙げられる。
【0078】
上記一般式(A)において、X〜Xの少なくとも1つが−Fであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例として、
【0079】
【化14】
等が挙げられる。これらの化合物は、耐電圧が高く、電解質塩の溶解性も良好である。
【0080】
他に、
【0081】
【化15】
【0082】
等も使用できる。
【0083】
上記一般式(A)において、X〜Xの少なくとも1つがフッ素化アルキル基(a)であり、かつ残りが全て−Hであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例としては、
【0084】
【化16】
【0085】
【化17】
【0086】
等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(A)において、X〜Xの少なくとも1つが、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、又は、フッ素化アルコキシ基(c)であり、かつ残りが全て−Hであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例としては、
【0088】
【化18】
【0089】
【化19】
【0090】
【化20】
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
等が挙げられる。
【0095】
なお、上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)は、上述した具体例のみに限定されるものではない。また、上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0096】
上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)としては、なかでも、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネートが好ましい。
【0097】
本発明における溶媒はまた、フッ素化鎖状カーボネートを含む。
【0098】
上記フッ素化鎖状カーボネートは、フッ素原子を有する鎖状カーボネートである。上記フッ素化鎖状カーボネートは、フッ素含有率が10〜70質量%であることが好ましい。フッ素含有率が上記範囲内にあるフッ素化鎖状カーボネートを含む電解液は、電気化学デバイスの高温保存特性やサイクル特性を向上させることができる。上記フッ素含有率の下限は25質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、33質量%以上が更に好ましい。上記フッ素含有率の上限は60質量%が好ましく、55質量%がより好ましい。
【0099】
上記フッ素含有率は、フッ素化鎖状カーボネートの構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化鎖状カーボネートの分子量}×100(%)により算出した値である。
【0100】
フッ素化鎖状カーボネートとしては、例えば一般式(B):
RfOCOORf (B)
(式中、Rf及びRfは、同じか又は異なり、フッ素原子を有していてもよく、エーテル結合を有していてもよい炭素数1〜11のアルキル基である。ただし、Rf及びRfの少なくとも一方はエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜11の含フッ素アルキル基である。)
で示される含フッ素カーボネートが、難燃性が高く、かつレート特性や耐酸化性が良好な点から好ましい。Rf及びRfの炭素数は、1〜5であることが好ましい。
【0101】
Rf及びRfとしては、例えば、CF−、CFCH−、HCFCH−、HCFCFCH−、CFCFCH−、(CFCH−、H(CFCFCH−、CF−CF−等の含フッ素アルキル基、COCF(CF)CH−、COCF(CF)CFOCF(CF)CH−、COCF(CF)CH−、CFOCF(CF)CH−、COC(CFCH−等のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基、CH−、C−、C−、C−等のフッ素非含有アルキル基が例示できる。これらの基のなかから、フッ素化鎖状カーボネートのフッ素含有率が上記範囲内となる組み合わせを選択することが好ましい。
【0102】
上記フッ素化鎖状カーボネートとして具体的には、HCFCHOCOOCH、HCFCHOCOOCH、(CFCHO)CO、(HCFCFCHO)CO、(CFCFCHO)CO、((CFCHO)CO、(H(CFCFCHO)CO、(COCF(CF)CFOCF(CF)CHO)CO、(COCF(CF)CHO)CO、CHOCOOCHCFCF、CHOCOOCHCFCFH、COCOOCHCFCFH、CHOCOOCHCF、COCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCFH、COCF(CF)CHOCOOC、HCFCFCHOCOOC、(CFCHOCOOCH、CHOCOOCF等が例示できる。
【0103】
上記フッ素化鎖状カーボネートとしては、なかでも、(CFCHO)CO、(HCFCFCHO)CO、(CFCFCHO)CO、((CFCHO)CO、(H(CFCFCHO)CO、(COCF(CF)CFOCF(CF)CHO)CO、(COCF(CF)CHO)CO、CHOCOOCHCFCF、CHOCOOCHCFCFH、COCOOCHCFCFH、CHOCOOCHCF、COCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCFH、COCF(CF)CHOCOOC、HCFCFCHOCOOC、(CFCHOCOOCH、及び、CHOCOOCFからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0104】
本発明の電解液においては、溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネートが3〜97体積%、フッ素化鎖状カーボネートが3〜97体積%であることが好ましい。これにより、電解液の耐酸化性を向上させることができる。溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネートが3〜60体積%、フッ素化鎖状カーボネートが5〜97体積%であることがより好ましく、フッ素化飽和環状カーボネートが5〜60体積%、フッ素化鎖状カーボネートが10〜90体積%であることが更に好ましく、フッ素化飽和環状カーボネートが10〜60体積%、フッ素化鎖状カーボネートが15〜80体積%であることが更により好ましく、フッ素化飽和環状カーボネートが10〜40体積%、フッ素化鎖状カーボネートが50〜80体積%であることが特に好ましい。
【0105】
また、溶媒に対し、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートの合計量が6〜100体積%であることが好ましい。フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートの合計量が上記範囲内にあると、電解液が高電圧電気化学デバイスに一層適したものとなる。フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートの合計量は10〜95体積%がより好ましく、60〜95体積%が更に好ましく、80〜95体積%が特に好ましい。
【0106】
本発明における溶媒は、非フッ素化飽和環状カーボネート及び/又は非フッ素化鎖状カーボネートを更に含んでもよい。
【0107】
非フッ素化飽和環状カーボネートとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を有する非フッ素化飽和環状カーボネートが挙げられる。
【0108】
炭素数2〜4のアルキレン基を有する、非フッ素化飽和環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。なかでも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上及び負荷特性向上の点から特に好ましい。
【0109】
非フッ素化飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0110】
非フッ素化鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0111】
なかでも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
【0112】
非フッ素化鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0113】
非フッ素化飽和環状カーボネート及び/又は非フッ素化鎖状カーボネートを使用する場合は、非フッ素化飽和環状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートの合計で、溶媒に対し、5〜94体積%とすることが好ましい。非フッ素化飽和環状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートの合計含有量の下限は40体積%であってもよく、30体積%であってもよく、20体積%であってもよい。
【0114】
上記溶媒は、非水溶媒であることが好ましく、本発明の電解液は、非水電解液であることが好ましい。
【0115】
本発明の電解液は、下記一般式(1a)、(1b)及び(1c)で表されるニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【化24】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基(CN)、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。nは1〜10の整数を表す。)
【化25】
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基、又は、NC−Rc1−Xc1−(Rc1はアルキレン基、Xc1は酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。mは1〜10の整数を表す。)
【化26】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、シアノ基(CN)を含む基、水素原子(H)、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基を表す。ただし、R、R、R及びRのうち少なくとも1つはシアノ基を含む基である。lは1〜3の整数を表す。)
これにより、電気化学デバイスの高温保存特性を向上させることができる。上記ニトリル化合物を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0116】
上記一般式(1a)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基(CN)、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でもフッ素原子が好ましい。
アルキル基としては、炭素数1〜5のものが好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基としては、上述したアルキル基の少なくとも一部の水素原子を上述したハロゲン原子で置換した基が挙げられる。
及びRがアルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基である場合は、RとRとが互いに結合して環構造(例えば、シクロヘキサン環)を形成していてもよい。
及びRは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
【0117】
上記一般式(1a)において、nは1〜10の整数である。nが2以上である場合、n個のRは全て同じであってもよく、少なくとも一部が異なっていてもよい。Rについても同様である。nは、1〜7の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましい。
【0118】
上記一般式(1a)で表されるニトリル化合物としては、ジニトリル及びトリカルボニトリルが好ましい。
ジニトリルの具体例としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,3,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン等を例示できる。これらのうち、特に好ましいのはスクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリルである。
また、トリカルボニトリルの具体例としてはペンタントリカルボニトリル、プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ヘキサントリカルボニトリル、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル、ヘプタントリカルボニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等が挙げられ特に好ましいものは、1,3,6−ヘキサントリカルボニトリルである。
【0119】
上記一般式(1b)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基、又は、NC−Rc1−Xc1−(Rc1はアルキレン基、Xc1は酸素原子又は硫黄原子を表す。)で表される基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基である。
ハロゲン原子、アルキル基、及び、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基については、上記一般式(1a)について例示したものが挙げられる。
上記NC−Rc1−Xc1−におけるRc1はアルキレン基である。アルキレン基としては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましい。
、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基であることが好ましい。
、R及びRの少なくとも1つは、ハロゲン原子、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基であることが好ましく、フッ素原子、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をフッ素原子で置換した基であることがより好ましい。
及びRがアルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基である場合は、RとRとが互いに結合して環構造(例えば、シクロヘキサン環)を形成していてもよい。
【0120】
上記一般式(1b)において、mは1〜10の整数である。mが2以上である場合、m個のRは全て同じであってもよく、少なくとも一部が異なっていてもよい。Rについても同様である。mは、2〜7の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましい。
【0121】
上記一般式(1b)で表されるニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3,3−ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等が例示できる。これらのうち、特に好ましいのは,3,3,3−トリフルオロプロピオニトリルである。
【0122】
上記一般式(1c)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、シアノ基(CN)を含む基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基である。
ハロゲン原子、アルキル基、及び、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をハロゲン原子で置換した基については、上記一般式(1a)について例示したものが挙げられる。
シアノ基を含む基としては、シアノ基のほか、アルキル基の少なくとも一部の水素原子をシアノ基で置換した基が挙げられる。この場合のアルキル基としては、上記一般式(1a)について例示したものが挙げられる。
、R、R及びRのうち少なくとも1つはシアノ基を含む基である。好ましくは、R、R、R及びRのうち少なくとも2つがシアノ基を含む基であることであり、より好ましくは、R及びRがシアノ基を含む基であることである。R及びRがシアノ基を含む基である場合、R及びRは、水素原子であることが好ましい。
【0123】
上記一般式(1c)において、lは1〜3の整数である。lが2以上である場合、l個のRは全て同じであってもよく、少なくとも一部が異なっていてもよい。Rについても同様である。lは、1〜2の整数が好ましい。
【0124】
上記一般式(1c)で表されるニトリル化合物としては、3−ヘキセンジニトリル、ムコノニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル等が例示され、3−ヘキセンジニトリル、ムコノニトリルが好ましく、特に3−ヘキセンジニトリルが好ましい。
【0125】
上記ニトリル化合物の含有量は、電解液に対して0.2〜7質量%であることが好ましい。これにより、電気化学デバイスの高電圧での高温保存特性、安全性を一層向上させることができる。上記ニトリル化合物の含有量の合計の下限は0.3質量%がより好ましく、0.5質量%が更に好ましい。上限は5質量%がより好ましく、2質量%が更に好ましく、0.5質量%が特に好ましい。
【0126】
本発明の電解液は、電解質塩を含有する。
上記電解質塩としては、リチウム塩、アンモニウム塩、金属塩のほか、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩等、電解液に使用することができる任意のものを用いることができる。
【0127】
リチウムイオン二次電池用電解液の電解質塩としては、リチウム塩が好ましい。
上記リチウム塩として任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;
LiWOF等のタングステン酸リチウム類;
HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;
FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩(例えばLiPF(CF、LiPF(C)、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
【0128】
中でも、LiPF、LiBF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0129】
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPFとLiBFや、LiPFとFSOLi等の併用であり、負荷特性やサイクル特性を向上させる効果がある。
【0130】
この場合、電解液全体100質量%に対するLiBF或いはFSOLiの配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の電解液に対して、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0131】
また、他の一例は、無機リチウム塩と有機リチウム塩との併用であり、この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。有機リチウム塩としては、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C等であるのが好ましい。この場合には、電解液全体100質量%に対する有機リチウム塩の割合は、好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0132】
電解液中のこれらのリチウム塩の濃度は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下である。
【0133】
リチウムの総モル濃度が低すぎると、電解液の電気伝導率が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、電池性能が低下する場合がある。
【0134】
電気二重層キャパシタ用電解液の電解質塩としては、アンモニウム塩が好ましい。
上記アンモニウム塩としては、以下(IIa)〜(IIe)が挙げられる。
(IIa)テトラアルキル4級アンモニウム塩
一般式(IIa):
【0135】
【化27】
(式中、R1a、R2a、R3a及びR4aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のエーテル結合を含んでいてもよいアルキル基;Xはアニオン)
で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩が好ましく例示できる。また、このアンモニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0136】
具体例としては、一般式(IIa−1):
【0137】
【化28】
(式中、R1a、R2a及びXは前記と同じ;x及びyは同じか又は異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)
で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩、一般式(IIa−2):
【0138】
【化29】
(式中、R5aは炭素数1〜6のアルキル基;R6aは炭素数1〜6の2価の炭化水素基;R7aは炭素数1〜4のアルキル基;zは1又は2;Xはアニオン)
で示されるアルキルエーテル基含有トリアルキルアンモニウム塩、
等が挙げられる。アルキルエーテル基を導入することにより、粘性の低下を図ることができる。
【0139】
アニオンXは、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。無機アニオンとしては、例えばAlCl、BF、PF、AsF、TaF、I、SbFが挙げられる。有機アニオンとしては、例えばCFCOO、CFSO、(CFSO、(CSO等が挙げられる。
【0140】
これらのうち、耐酸化性やイオン解離性が良好な点から、BF、PF、AsF、SbFが好ましい。
【0141】
テトラアルキル4級アンモニウム塩の好適な具体例としては、EtNBF、EtNClO、EtNPF、EtNAsF、EtNSbF、EtNCFSO、EtN(CFSON、EtNCSO、EtMeNBF、EtMeNClO、EtMeNPF、EtMeNAsF、EtMeNSbF、EtMeNCFSO、EtMeN(CFSON、EtMeNCSOを用いればよく、特に、EtNBF、EtNPF、EtNSbF、EtNAsF、EtMeNBF、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩等が挙げられる。
【0142】
(IIb)スピロ環ビピロリジニウム塩
一般式(IIb−1):
【0143】
【化30】
(式中、R8a及びR9aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;Xはアニオン;n1は0〜5の整数;n2は0〜5の整数)
で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩、一般式(IIb−2):
【0144】
【化31】
(式中、R10a及びR11aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;Xはアニオン;n3は0〜5の整数;n4は0〜5の整数)
で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩、又は、一般式(IIb−3):
【0145】
【化32】
(式中、R12a及びR13aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;Xはアニオン;n5は0〜5の整数;n6は0〜5の整数)
で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩が好ましく挙げられる。また、このスピロ環ビピロリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0146】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIa)の場合と同じである。なかでも、解離性が高く、高電圧下での内部抵抗が低い点から、BF−、PF−、(CFSON−又は(CSON−が好ましい。
【0147】
スピロ環ビピロリジニウム塩の好ましい具体例としては、例えば、
【化33】
等が挙げられる。
【0148】
このスピロ環ビピロリジニウム塩は溶媒への溶解性、耐酸化性、イオン伝導性の点で優れている。
【0149】
(IIc)イミダゾリウム塩
一般式(IIc):
【0150】
【化34】
(式中、R14a及びR15aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)
で示されるイミダゾリウム塩が好ましく例示できる。また、このイミダゾリウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0151】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
【0152】
好ましい具体例としては、例えば
【0153】
【化35】
等が挙げられる。
【0154】
このイミダゾリウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0155】
(IId):N−アルキルピリジニウム塩
一般式(IId):
【0156】
【化36】
(式中、R16aは炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)
で示されるN−アルキルピリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN−アルキルピリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0157】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
【0158】
好ましい具体例としては、例えば
【0159】
【化37】
等が挙げられる。
【0160】
このN−アルキルピリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0161】
(IIe)N,N−ジアルキルピロリジニウム塩
一般式(IIe):
【0162】
【化38】
(式中、R17a及びR18aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;Xはアニオン)
で示されるN,N−ジアルキルピロリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4の含フッ素アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
【0163】
アニオンXの好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
【0164】
好ましい具体例としては、例えば
【0165】
【化39】
【0166】
【化40】
等が挙げられる。
【0167】
このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
【0168】
これらのアンモニウム塩のうち、(IIa)、(IIb)及び(IIc)が溶解性、耐酸化性、イオン伝導性が良好な点で好ましく、更には
【0169】
【化41】
(式中、Meはメチル基;Etはエチル基;X、x、yは式(IIa−1)と同じ)
が好ましい。
【0170】
また、電気二重層キャパシタ用電解質塩として、リチウム塩を用いてもよい。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiN(SOが好ましい。
更に容量を向上させるために、マグネシウム塩を用いてもよい。マグネシウム塩としては、例えば、Mg(ClO、Mg(OOC等が好ましい。
【0171】
電解質塩が上記アンモニウム塩である場合、濃度は、1.1モル/リットル以上であることが好ましい。1.1モル/リットル未満であると、低温特性が悪くなるだけでなく、初期内部抵抗が高くなってしまう。上記電解質塩の濃度は、1.25モル/リットル以上であることがより好ましい。
上記濃度の上限は、低温特性の点で、1.7モル/リットル以下であることが好ましく、1.5モル/リットル以下であることがより好ましい。
上記アンモニウム塩が、4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMABF)の場合、その濃度は、低温特性に優れる点で、1.1〜1.4モル/リットルであることが好ましい。
また、4フッ化ホウ酸スピロビピロリジニウム(SBPBF)の場合は、1.3〜1.7モル/リットルであることが好ましい。
【0172】
本発明の電解液は、更に、重量平均分子量が2000〜4000であり、末端に−OH、−OCOOH、又は、−COOHを有するポリエチレンオキシドを含有することが好ましい。
このような化合物を含有することにより、電極界面の安定性が向上し、電気化学デバイスの特性を向上させることができる。
上記ポリエチレンオキシドとしては、例えば、ポリエチレンオキシドモノオール、ポリエチレンオキシドカルボン酸、ポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドジカルボン酸、ポリエチレンオキシドトリオール、ポリエチレンオキシドトリカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、電気化学デバイスの特性がより良好となる点で、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールの混合物、及び、ポリエチレンカルボン酸とポリエチレンジカルボン酸の混合物であることが好ましい。
【0173】
上記ポリエチレンオキシドの重量平均分子量が小さすぎると、酸化分解されやすくなるおそれがある。上記重量平均分子量は、3000〜4000がより好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により測定することができる。
【0174】
上記ポリエチレンオキシドの含有量は、電解液中1×10−6〜1×10−2mol/kgであることが好ましい。上記ポリエチレンオキシドの含有量が多すぎると、電気化学デバイスの特性を損なうおそれがある。
上記ポリエチレンオキシドの含有量は、5×10−6mol/kg以上であることがより好ましい。
【0175】
本発明の電解液は、更に、不飽和環状カーボネート、過充電防止剤、その他の公知の助剤等を含有していてもよい。これにより、電気化学デバイスの特性の低下を抑制することができる。
【0176】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
【0177】
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0178】
芳香環又は炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0179】
なかでも、不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネートが好ましい。また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートは更に安定な界面保護被膜を形成するので、特に好ましい。
【0180】
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85以上であり、また、より好ましくは150以下である。
【0181】
不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0182】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0183】
上記不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。上記不飽和環状カーボネートの含有量は、本発明における溶媒100質量%中0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、上記含有量は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。上記範囲内であれば、電解液を用いた電気化学デバイスが十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0184】
不飽和環状カーボネートとしては、上述のような非フッ素化不飽和環状カーボネートの他、フッ素化不飽和環状カーボネートも好適に用いることができる。
フッ素化不飽和環状カーボネートは、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネートである。フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素原子の数は1以上があれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1個又は2個のものが最も好ましい。
【0185】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0186】
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0187】
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0188】
なかでも、フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0189】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上であり、また、250以下である。この範囲であれば、電解液に対するフッ素化不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
【0190】
フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ましくは200以下である。
【0191】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの含有量は、通常、電解液100質量%中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、電解液を用いた電気化学デバイスが十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0192】
本発明の電解液においては、電解液を用いた電気化学デバイスが過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
【0193】
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0194】
本発明の電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、1,2−ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド等の含燐化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0195】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0196】
本発明の電解液は、本発明の効果を損なわない範囲で、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、窒素含有化合物、ホウ素含有化合物、有機ケイ素含有化合物、不燃(難燃)化剤、界面活性剤、高誘電化添加剤、サイクル特性及びレート特性改善剤等を更に含有してもよい。
【0197】
上記環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電気化学デバイスの特性向上の点から特に好ましい。
【0198】
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、溶媒100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。この範囲であると、電解液の電気伝導率を改善し、電気化学デバイスの大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。このように上限を設定することにより、電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、電気化学デバイスの大電流放電特性を良好な範囲としやすくする。
【0199】
また、上記環状カルボン酸エステルとしては、フッ素化環状カルボン酸エステル(含フッ素ラクトン)も好適に用いることができる。含フッ素ラクトンとしては、例えば、下記式(C):
【0200】
【化42】
【0201】
(式中、X15〜X20は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CH又はフッ素化アルキル基;ただし、X15〜X20の少なくとも1つはフッ素化アルキル基である)
で示される含フッ素ラクトンが挙げられる。
【0202】
15〜X20におけるフッ素化アルキル基としては、例えば、−CFH、−CFH、−CF、−CHCF、−CFCF、−CHCFCF、−CF(CF等が挙げられ、耐酸化性が高く、安全性向上効果がある点から−CHCF、−CHCFCFが好ましい。
【0203】
15〜X20の少なくとも1つがフッ素化アルキル基であれば、−H、−F、−Cl、−CH又はフッ素化アルキル基は、X15〜X20の1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3箇所、更に好ましくは1〜2箇所である。
【0204】
フッ素化アルキル基の置換位置は特に限定されないが、合成収率が良好なことから、X17及び/又はX18が、特にX17又はX18がフッ素化アルキル基、なかでも−CHCF、−CHCFCFであることが好ましい。フッ素化アルキル基以外のX15〜X20は、−H、−F、−Cl又はCHであり、特に電解質塩の溶解性が良好な点から−Hが好ましい。
【0205】
含フッ素ラクトンとしては、上記式で示されるもの以外にも、例えば、下記式(D):
【0206】
【化43】
【0207】
(式中、A及びBはいずれか一方がCX2627(X26及びX27は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF、−CH又は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキレン基)であり、他方は酸素原子;Rf12はエーテル結合を有していてもよいフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基;X21及びX22は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF又はCH;X23〜X25は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl又は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基;n=0又は1)
で示される含フッ素ラクトン等も挙げられる。
【0208】
式(D)で示される含フッ素ラクトンとしては、下記式(E):
【0209】
【化44】
【0210】
(式中、A、B、Rf12、X21、X22及びX23は式(D)と同じである)
で示される5員環構造が、合成が容易である点、化学的安定性が良好な点から好ましく挙げられ、更には、AとBの組合せにより、下記式(F):
【0211】
【化45】
【0212】
(式中、Rf12、X21、X22、X23、X26及びX27は式(D)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンと、下記式(G):
【0213】
【化46】
【0214】
(式中、Rf12、X21、X22、X23、X26及びX27は式(D)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンがある。
【0215】
これらのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性が特に発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明における電解液としての特性が向上する点から、
【0216】
【化47】
等が挙げられる。
フッ素化環状カルボン酸エステルを含有させることにより、イオン伝導度の向上、安全性の向上、高温時の安定性向上といった効果が得られる。
【0217】
上記鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3〜7のものが挙げられる。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
【0218】
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
【0219】
また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルも好適に用いることができる。含フッ素エステルとしては、下記式(H):
Rf10COORf11 (H)
(式中、Rf10は炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、Rf11は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基)
で示されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルが、難燃性が高く、かつ他溶媒との相溶性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0220】
Rf10としては、例えばCF−、CFCF−、HCFCF−、HCF−、CHCF−、CFCH−等が例示でき、なかでもCF−、CFCF−が、レート特性が良好な点から特に好ましい。
【0221】
Rf11としては、例えば−CF、−CFCF、−CH(CF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCFHCF、−CH、−CHCFCFH、−CHCH、−CHCFCF、−CHCFCFCF等が例示でき、なかでも−CHCF、−CH(CF、−CH、−CHCFCFHが、他溶媒との相溶性が良好な点から特に好ましい。
【0222】
フッ素化鎖状カルボン酸エステルの具体例としては、例えばCFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCHCHCF、CFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCH(CF等の1種又は2種以上が例示でき、なかでもCFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCH(CFが、他溶媒との相溶性及びレート特性が良好な点から特に好ましい。
【0223】
上記エーテル化合物としては、炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0224】
また、上記エーテル化合物としては、フッ素化エーテルも好適に用いることができる。
上記フッ素化エーテルとしては、下記一般式(I):
Rf−O−Rf (I)
(式中、Rf及びRfは同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。ただし、Rf及びRfの少なくとも一方は、フッ素化アルキル基である。)
で表されるフッ素化エーテル(I)が挙げられる。フッ素化エーテル(I)を含有させることにより、電解液の難燃性が向上するとともに、高温高電圧での安定性、安全性が向上する。
【0225】
上記一般式(I)においては、Rf及びRfの少なくとも一方が炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であればよいが、電解液の難燃性及び高温高電圧での安定性、安全性を一層向上させる観点から、Rf及びRfが、ともに炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であることが好ましい。この場合、Rf及びRfは同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
なかでも、Rf及びRfが、同じか又は異なり、Rfが炭素数3〜6のフッ素化アルキル基であり、かつ、Rfが炭素数2〜6のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
【0226】
Rf及びRfの合計炭素数が少な過ぎるとフッ素化エーテルの沸点が低くなりすぎ、また、Rf又はRfの炭素数が多過ぎると、電解質塩の溶解性が低下し、他の溶媒との相溶性にも悪影響が出始め、また粘度が上昇するためレート特性が低減する。Rfの炭素数が3又は4、Rfの炭素数が2又は3のとき、沸点及びレート特性に優れる点で有利である。
【0227】
上記フッ素化エーテル(I)は、フッ素含有率が40〜75質量%であることが好ましい。この範囲のフッ素含有率を有するとき、不燃性と相溶性のバランスに特に優れたものになる。また、耐酸化性、安全性が良好な点からも好ましい。
上記フッ素含有率の下限は、45質量%がより好ましく、50質量%が更に好ましく、55質量%が特に好ましい。上限は70質量%がより好ましく、66質量%が更に好ましい。
なお、フッ素化エーテル(I)のフッ素含有率は、フッ素化エーテル(I)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化エーテル(I)の分子量}×100(%)により算出した値である。
【0228】
Rfとしては、例えば、CFCFCH−、CFCFHCF−、HCFCFCF−、HCFCFCH−、CFCFCHCH−、CFCFHCFCH−、HCFCFCFCF−、HCFCFCFCH−、HCFCFCHCH−、HCFCF(CF)CH−等が挙げられる。また、Rfとしては、例えば、−CHCFCF、−CFCFHCF、−CFCFCFH、−CHCFCFH、−CHCHCFCF、−CHCFCFHCF、−CFCFCFCFH、−CHCFCFCFH、−CHCHCFCFH、−CHCF(CF)CFH、−CFCFH、−CHCFH、−CFCH等が挙げられる。
【0229】
上記フッ素化エーテル(I)の具体例としては、例えばHCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、C13OCH、C13OC、C17OCH、C17OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、HCFCFOCH(C、HCFCFOC、HCFCFOCHCH(C、HCFCFOCHCH(CH等が挙げられる。
【0230】
なかでも、片末端又は両末端にHCF−又はCFCFH−を含むものが分極性に優れ、沸点の高いフッ素化エーテル(I)を与えることができる。フッ素化エーテル(I)の沸点は、67〜120℃であることが好ましい。より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
【0231】
このようなフッ素化エーテル(I)としては、例えば、CFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、HCFCFCHOCFCFHCF、HCFCFCHOCHCFCFH、CFCFHCFCHOCFCFHCF、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH等の1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、高沸点、他の溶媒との相溶性や電解質塩の溶解性が良好な点で有利なことから、HCFCFCHOCFCFHCF(沸点106℃)、CFCFCHOCFCFHCF(沸点82℃)、HCFCFCHOCFCFH(沸点92℃)及びCFCFCHOCFCFH(沸点68℃)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、HCFCFCHOCFCFHCF(沸点106℃)及びHCFCFCHOCFCFH(沸点92℃)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0232】
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離度を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0233】
上記窒素含有化合物としては、ニトリル、含フッ素ニトリル、カルボン酸アミド、含フッ素カルボン酸アミド、スルホン酸アミド及び含フッ素スルホン酸アミド等が挙げられる。また、1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサジリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等も使用できる。ただし、上記一般式(1a)、(1b)及び(1c)で表されるニトリル化合物は上記窒素含有化合物に含めないものとする。
【0234】
上記ホウ素含有化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート等のホウ酸エステル、ホウ酸エーテル、及び、ホウ酸アルキル等が挙げられる。
【0235】
上記有機ケイ素含有化合物としては、例えば、(CH−Si、(CH−Si−Si(CH等が挙げられる。
【0236】
上記不燃(難燃)化剤としては、リン酸エステルやホスファゼン系化合物が挙げられる。上記リン酸エステルとしては、例えば、含フッ素アルキルリン酸エステル、非フッ素系アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル等が挙げられる。なかでも、少量で不燃効果を発揮できる点で、含フッ素アルキルリン酸エステルであることが好ましい。
【0237】
上記含フッ素アルキルリン酸エステルとしては、具体的には、特開平11−233141号公報に記載された含フッ素ジアルキルリン酸エステル、特開平11−283669号公報に記載された環状のアルキルリン酸エステル、又は、含フッ素トリアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0238】
上記不燃(難燃)化剤としては、(CHO)P=O、(CFCHO)P=O、(HCFCHO)P=O、(CFCFCHP=O、(HCFCFCHP=O等が好ましい。
【0239】
上記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、サイクル特性、レート特性が良好となる点から、フッ素原子を含むものであることが好ましい。
【0240】
このようなフッ素原子を含む界面活性剤としては、例えば、下記式(3):
RfCOO (3)
(式中、Rfは炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、K又はNHR’(R’は同じか又は異なり、いずれもH又は炭素数が1〜3のアルキル基)である)
で表される含フッ素カルボン酸塩や、下記式(4):
RfSO (4)
(式中、Rfは炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、K又はNHR’(R’は同じか又は異なり、いずれもH又は炭素数が1〜3のアルキル基)である)
で表される含フッ素スルホン酸塩等が好ましい。
【0241】
上記界面活性剤の含有量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させることができる点から、電解液中0.01〜2質量%であることが好ましい。
【0242】
上記高誘電化添加剤としては、例えば、スルホラン、メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0243】
上記サイクル特性及びレート特性改善剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0244】
また、本発明の電解液は、更に高分子材料と組み合わせてゲル状(可塑化された)のゲル電解液としてもよい。
【0245】
かかる高分子材料としては、従来公知のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、それらの変性体(特開平8−222270号公報、特開2002−100405号公報);ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリルや、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂(特表平4−506726号公報、特表平8−507407号公報、特開平10−294131号公報);それらフッ素樹脂と炭化水素系樹脂との複合体(特開平11−35765号公報、特開平11−86630号公報)等が挙げられる。特には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体をゲル電解質用高分子材料として用いることが望ましい。
【0246】
そのほか、本発明の電解液は、特願2004−301934号明細書に記載されているイオン伝導性化合物も含んでいてもよい。
【0247】
このイオン伝導性化合物は、式(1−1):
A−(D)−B (1−1)
[式中、Dは式(2−1):
−(D1)−(FAE)−(AE)−(Y)− (2−1)
(式中、D1は、式(2a):
【0248】
【化48】
【0249】
(式中、Rfは架橋性官能基を有していてもよい含フッ素エーテル基;R10はRfと主鎖を結合する基又は結合手)
で示される側鎖に含フッ素エーテル基を有するエーテル単位;
FAEは、式(2b):
【0250】
【化49】
【0251】
(式中、Rfaは水素原子、架橋性官能基を有していてもよいフッ素化アルキル基;R11はRfaと主鎖を結合する基又は結合手)
で示される側鎖にフッ素化アルキル基を有するエーテル単位;
AEは、式(2c):
【0252】
【化50】
【0253】
(式中、R13は水素原子、架橋性官能基を有していてもよいアルキル基、架橋性官能基を有していてもよい脂肪族環式炭化水素基又は架橋性官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R12はR13と主鎖を結合する基又は結合手)
で示されるエーテル単位;
Yは、式(2d−1)〜(2d−3):
【0254】
【化51】
【0255】
の少なくとも1種を含む単位;
nは0〜200の整数;mは0〜200の整数;pは0〜10000の整数;qは1〜100の整数;ただしn+mは0ではなく、D1、FAE、AE及びYの結合順序は特定されない);
A及びBは同じか又は異なり、水素原子、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいフェニル基、−COOH基、−OR(Rは水素原子又はフッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基)、エステル基又はカーボネート基(ただし、Dの末端が酸素原子の場合は−COOH基、−OR、エステル基及びカーボネート基ではない)]
で表される側鎖に含フッ素基を有する非晶性含フッ素ポリエーテル化合物である。
【0256】
本発明の電解液には必要に応じて、更に他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、金属酸化物、ガラス等が挙げられる。
【0257】
本発明の電解液は、上述した成分を用いて、任意の方法で調製するとよい。
【0258】
本発明の電解液は、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒、並びに、上記一般式(1a)、(1b)及び(1c)で表されるニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。このため、本発明の電解液を用いて、高電圧で、しかも高温保存特性に優れた電気化学デバイスを製造することができる。本発明の電解液は、例えば、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに好適に適用することができる。本発明の電解液を備える電気化学デバイスもまた、本発明の一つである。
【0259】
電気化学デバイスとしては、リチウムイオン二次電池、キャパシタ(電気二重層キャパシタ)、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、各種電気化学センサー、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等が挙げられ、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタが好適である。
上記電気化学デバイスを備えたモジュールも本発明の一つである。
【0260】
本発明はまた、本発明の電解液を備えるリチウムイオン二次電池でもある。本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、及び、上述の電解液を備える。
【0261】
<負極>
まず、負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0262】
(負極活物質)
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
【0263】
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよく好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0264】
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質としては、天然黒鉛を石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチなどで表面を被覆し熱処理したもの、天然黒鉛を石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部もしくはすべてを黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0265】
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズ(以下、「特定金属元素」と略記する場合がある)の単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0266】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0267】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も挙げられる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、更に負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0268】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0269】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及びリチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、更にリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)である。即ちスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、電気化学デバイス用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0270】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0271】
上記金属酸化物が、一般式(C)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式(C)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0272】
LiTi (C)
[一般式(C)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の一般式(C)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0273】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。
また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとして挙げられる。
【0274】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー(結着剤)、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0275】
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0276】
(結着剤)
負極活物質を結着するバインダーとしては、電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0277】
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0278】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0279】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0280】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0281】
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0282】
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に合わせて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0283】
(集電体)
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0284】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0285】
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
【0286】
(集電体と負極活物質層との厚さの比)
集電体と負極活物質層の厚さの比は特に制限されないが、「(電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0287】
<正極>
(正極活物質)
以下に、正極に使用される正極活物質について述べる。本発明に用いられる正極活物質は、以下の3つの条件のいずれかを満たすリチウムイオンの挿入・脱離が可能な機能を有するリチウム遷移金化合物粉体であることが好ましい。
1.pH10.8以上であるリチウム遷移金属化合物粉体。
2.Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる少なくとも1種以上の元素を有する化合物とB元素及び/又はBi元素を有する化合物を含有するリチウム遷移金属化合物粉体。
3.細孔半径80nm以上800nm未満にピークを有するリチウム遷移金属化合物粉体。
【0288】
(リチウム遷移金属化合物)
リチウム遷移金属化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。硫化物としては、TiSやMoS等の二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MeMo(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物等が挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、LiCoVO等が挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNi1−xCo、LiNi1−x−yCoMn、LiNi0.5Mn0.5、Li1.2Cr0.4Mn0.4、Li1.2Cr0.4Ti0.4、LiMnO等が挙げられる。
【0289】
なかでも、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物又はLiCoOが好ましい。
【0290】
上記リチウム遷移金属化合物粉体は、リチウムイオン拡散の点からオリビン構造、スピネル構造、層状構造を有するものが好ましい。中でも層状構造を有するものが特に好ましい。
【0291】
また、上記リチウム遷移金属化合物粉体は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,Iの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界等に単体若しくは化合物として偏在していてもよい。
【0292】
(添加剤)
本発明では、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる少なくとも1種以上の元素(以下、「添加元素1」ともいう。)を有する化合物(以下、「添加剤1」ともいう。)、並びに、B及びBiから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、「添加元素2」ともいう。)を有する化合物(以下、「添加剤2」ともいう。)を用いてもよい。
【0293】
これらの添加元素1の中でも、効果が大きい点から、添加元素1がMo又はWであることが好ましく、Wであることが最も好ましい。また、これらの添加元素2の中でも、工業原料として安価に入手でき、かつ軽元素である点から、添加元素2がBであることが好ましい。
【0294】
添加元素1を有する化合物(添加剤1)の種類としては、本発明の効果を発現するものであればその種類に格別の制限はないが、通常は酸化物が用いられる。
【0295】
添加剤1の例示化合物としては、MoO、MoO、MoO、MoO、Mo、Mo、LiMoO、WO、WO、WO、WO、W、W、W1849、W2058、W2470、W2573、W40118、LiWO、NbO、NbO、Nb、Nb、Nb・nHO、LiNbO、TaO、Ta、LiTaO、ReO、ReO、Re、Re等が挙げられ、工業原料として比較的入手し易い、又はリチウムを包含するといった点から、好ましくはMoO、LiMoO、WO、LiWOが挙げられ、特に好ましくはWOが挙げられる。これらの更なる添加剤1は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0296】
添加元素2を含有する化合物(添加剤2)の種類としては、本発明の効果を発現するものであればその種類に格別の制限はないが、通常はホウ酸、オキソ酸の塩類、酸化物、水酸化物等が用いられる。これらの添加剤2の中でも、工業原料として安価に入手できる点から、ホウ酸、酸化物であることが好ましく、ホウ酸であることが特に好ましい。
【0297】
添加剤2の例示化合物としては、BO、B、B、B、BO、BO、B13、LiBO、LiB、Li、HBO、HBO、B(OH)、B(OH)、BiBO、Bi、Bi、Bi(OH)等が挙げられ、工業原料として比較的安価かつ容易に入手できる点から、好ましくはB、HBO、Biが挙げられ、特に好ましくは、HBOが挙げられる。これらの添加剤2は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0298】
また、添加剤1及び添加剤2の合計の添加量の範囲としては、主成分を構成する遷移金属元素の合計モル量に対して、下限としては、通常0.1モル%以上、好ましくは0.3モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、特に好ましくは1.0モル%以上、上限としては、通常8モル%未満、好ましくは5モル%以下、より好ましくは4モル%以下、特に好ましくは3モル%以下である。下限を下回ると、上記効果が得られなくなる可能性があり、上限を超えると電池性能の低下を招く可能性がある。
【0299】
(正極活物質の製造法)
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0300】
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の2種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoOとLiNi0.33Co0.33Mn0.33等のLiMn若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiCoO若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
【0301】
(リチウム遷移金属系化合物粉体の製法)
上記リチウム遷移金属系化合物粉体を製造する方法は、特定の製法に限定されるものではないが、リチウム化合物と、Mn、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の遷移金属化合物と、上述の添加剤とを、液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを得るスラリー調製工程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥体を焼成する焼成工程を含む製造方法により、好適に製造される。
【0302】
例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を例に挙げて説明すると、リチウム化合物、ニッケル化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、並びに、上述の添加剤を液体媒体中に分散させたスラリーを噴霧乾燥して得られた噴霧乾燥体を、酸素含有ガス雰囲気中で焼成して製造することができる。
【0303】
以下に、本発明の好適態様であるリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体の製造方法を例に挙げて、リチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法について詳細に説明する。
【0304】
I)スラリー調製工程
上記リチウム遷移金属系化合物粉体を製造するに当たり、スラリーの調製に用いる原料化合物のうち、リチウム化合物としては、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHOOLi、LiO、LiSO、ジカルボン酸Li、クエン酸Li、脂肪酸Li、アルキルリチウム等が挙げられる。これらリチウム化合物の中で好ましいのは、焼成処理の際にSO、NO等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子、ハロゲン原子を含有しないリチウム化合物であり、また、焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に分解ガスを発生する等して空隙を形成しやすい化合物であり、これらの点を勘案すると、LiCO、LiOH、LiOH・HOが好ましく、特にLi2CO3が好ましい。これらのリチウム化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0305】
また、ニッケル化合物としては、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO、2NiCO・3Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル、ニッケルハロゲン化物等が挙げられる。この中でも、焼成処理の際にSO、NO等の有害物質を発生させない点で、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO、2NiCO・3Ni(OH)・4HO、NiC・2HOのようなニッケル化合物が好ましい。また、更に工業原料として安価に入手できる観点、及び反応性が高い、という観点からNi(OH)、NiO、NiOOH、NiCO、更に焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に空隙を形成しやすい、という観点から、特に好ましいのはNi(OH)、NiOOH、NiCOである。これらのニッケル化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0306】
また、マンガン化合物としてはMn、MnO、Mn等のマンガン酸化物、MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン等のマンガン塩、オキシ水酸化物、塩化マンガン等のハロゲン化物等が挙げられる。これらのマンガン化合物の中でも、MnO、Mn、Mn、MnCOは、焼成処理の際にSO、NO等のガスを発生せず、更に工業原料として安価に入手できるため好ましい。これらのマンガン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0307】
また、コバルト化合物としては、Co(OH)、CoOOH、CoO、Co、Co、Co(OCOCH・4HO、CoCl、Co(NO・6HO、Co(SO・7HO、CoCO等が挙げられる。中でも、焼成工程の際にSO、NO等の有害物質を発生させない点で、Co(OH)、CoOOH、CoO、Co、Co、CoCOが好ましく、更に好ましくは、工業的に安価に入手できる点及び反応性が高い点でCo(OH)、CoOOHである。加えて焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に空隙を形成しやすい、という観点から、特に好ましいのはCo(OH)、CoOOH、CoCOである。これらのコバルト化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0308】
また、上記のLi、Ni、Mn、Co原料化合物以外にも他元素置換を行って前述の異元素を導入したり、後述する噴霧乾燥にて形成される二次粒子内の空隙を効率よく形成させたりすることを目的とした化合物群を使用することが可能である。なお、ここで使用する、二次粒子の空隙を効率よく形成させることを目的として使用する化合物の添加段階は、その性質に応じて、原料混合前又は混合後の何れかを選択することが可能である。特に、混合工程によって機械的剪断応力が加わる等して分解しやすい化合物は混合工程後に添加することが好ましい。添加剤としては、前述の通りである。
【0309】
原料の混合方法は特に限定されるものではなく、湿式でも乾式でもよい。例えば、ボールミル、振動ミル、ビーズミル等の装置を使用する方法が挙げられる。原料化合物を水、アルコール等の液体媒体中で混合する湿式混合は、より均一な混合が可能であり、かつ焼成工程において混合物の反応性を高めることができるので好ましい。
【0310】
混合の時間は、混合方法により異なるが、原料が粒子レベルで均一に混合されていればよく、例えばボールミル(湿式又は乾式)では通常1時間から2日間程度、ビーズミル(湿式連続法)では滞留時間が通常0.1時間から6時間程度である。
【0311】
なお、原料の混合段階においてはそれと並行して原料の粉砕が為されていることが好ましい。粉砕の程度としては、粉砕後の原料粒子の粒径が指標となるが、平均粒子径(メジアン径)として通常0.60μm以下、好ましくは0.55μm以下、更に好ましくは0.52μm以下、最も好ましくは0.50μm以下とする。粉砕後の原料粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するのに加え、組成が均一化し難くなる。ただし、必要以上に小粒子化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、平均粒子径が通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.05μm以上となるように粉砕すればよい。このような粉砕程度を実現するための手段としては特に限定されるものではないが、湿式粉砕法が好ましい。具体的にはダイノーミル等を挙げることができる。
【0312】
なお、スラリー中の粉砕粒子のメジアン径は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率1.24を設定し、粒子径基準を体積基準に設定して測定されたものである。測定の際に用いる分散媒としては、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散(出力30W、周波数22.5kHz)後に測定を行った。
【0313】
II)噴霧乾燥工程
湿式混合後は、次いで通常乾燥工程に供される。乾燥方法は特に限定されないが、生成する粒子状物の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能、乾燥粒子を効率よく製造できる等の観点から噴霧乾燥が好ましい。
【0314】
(噴霧乾燥粉体)
上記リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体等のリチウム遷移金属系化合物粉体の製造方法においては、原料化合物と上述の添加剤とを湿式粉砕して得られたスラリーを噴霧乾燥することにより、一次粒子が凝集して二次粒子を形成してなる粉体を得る。一次粒子が凝集して二次粒子を形成してなる噴霧乾燥粉体の形状的特徴の確認方法としては、例えば、SEM観察、断面SEM観察が挙げられる。
【0315】
III)焼成工程
上述の噴霧乾燥工程で得られた噴霧乾燥粉体は、焼成前駆体として、次いで焼成処理される。
【0316】
この焼成条件は、組成や使用するリチウム化合物原料にも依存するが、傾向として、焼成温度が高すぎると一次粒子が過度に成長し、粒子間の焼結が進行し過ぎ、比表面積が小さくなり過ぎる。逆に低すぎると異相が混在し、また結晶構造が発達せずに格子歪が増大する。また比表面積が大きくなりすぎる。焼成温度としては、通常1000℃以上、好ましくは1010℃以上、より好ましくは1025℃以上、最も好ましくは1050℃以上であり、好ましくは1250℃以下、より好ましくは1200℃以下、更に好ましくは1175℃以下である。
【0317】
焼成には、例えば、箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。焼成工程は、通常、昇温・最高温度保持・降温の三部分に分けられる。二番目の最高温度保持部分は必ずしも一回とは限らず、目的に応じて二段階又はそれ以上の段階をふませてもよく、二次粒子を破壊しない程度に凝集を解消することを意味する解砕工程又は、一次粒子或いは更に微小粉末まで砕くことを意味する粉砕工程を挟んで、昇温・最高温度保持・降温の工程を二回又はそれ以上繰り返してもよい。
【0318】
焼成を二段階で行う場合、一段目はLi原料が分解し始める温度以上、融解する温度以下で保持することが好ましく、例えば炭酸リチウムを用いる場合には一段目の保持温度は400℃以上が好ましく、より好ましくは450℃以上、更に好ましくは500℃以上、最も好ましくは550℃以上が好ましく、通常950℃以下、より好ましくは900℃以下、更に好ましくは880℃以下、最も好ましくは850℃以下である。
【0319】
最高温度保持工程に至る昇温工程は通常1℃/分以上20℃/分以下の昇温速度で炉内を昇温させる。この昇温速度があまり遅すぎても時間がかかって工業的に不利であるが、あまり速すぎても炉によっては炉内温度が設定温度に追従しなくなる。昇温速度は、好ましくは2℃/分以上、より好ましくは3℃/分以上で、好ましくは18℃/分以下、より好ましくは15℃/分以下である。
【0320】
最高温度保持工程での保持時間は、温度によっても異なるが、通常前述の温度範囲であれば15分以上、好ましくは30分以上、更に好ましくは45分以上、最も好ましくは1時間以上で、24時間以下、好ましくは12時間以下、更に好ましくは9時間以下、最も好ましくは6時間以下である。焼成時間が短すぎると結晶性のよいリチウム遷移金属系化合物粉体が得られ難くなり、長すぎるのは実用的ではない。焼成時間が長すぎると、その後解砕が必要になったり、解砕が困難になったりするので、不利である。
【0321】
降温工程では、通常0.1℃/分以上20℃/分以下の降温速度で炉内を降温させる。降温速度があまり遅すぎても時間がかかって工業的に不利であるが、あまり速すぎても目的物の均一性に欠けたり、容器の劣化を早めたりする傾向にある。降温速度は、好ましくは1℃/分以上、より好ましくは3℃/分以上で、好ましくは15℃/分以下である。
【0322】
焼成時の雰囲気は、得ようとするリチウム遷移金属系化合物粉体の組成によって適切な酸素分圧領域があるため、それを満足するための適切な種々ガス雰囲気が用いられる。ガス雰囲気としては、例えば、酸素、空気、窒素、アルゴン、水素、二酸化炭素、及びそれらの混合ガス等を挙げることができる。リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体については、空気等の酸素含有ガス雰囲気を用いることができる。通常は酸素濃度が1体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上で、100体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは25体積%以下の雰囲気とする。
【0323】
このような製造方法において、リチウム遷移金属系化合物粉体、例えば前記特定の組成を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を製造するには、製造条件を一定とした場合には、リチウム化合物、ニッケル化合物、マンガン化合物、及びコバルト化合物と、添加剤とを液体媒体中に分散させたスラリーを調製する際、各化合物の混合比を調整することで、目的とするLi/Ni/Mn/Coのモル比を制御することができる。
【0324】
このようにして得られたリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体等のリチウム遷移金属系化合物粉体によれば、容量が高く、低温出力特性、保存特性に優れた、性能バランスのよいリチウム二次電池用正極材料が提供される。
【0325】
<正極の構成と作製法>
以下に、正極の構成について述べる。正極は、正極活物質と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製することができる。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成されることにより正極を得ることができる。
【0326】
正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
【0327】
(結着剤)
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、上述した負極の製造に用いる結着剤と同様のものが挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0328】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限は、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
【0329】
(スラリー形成溶媒)
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0330】
(集電体)
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0331】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。
【0332】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
【0333】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、下限は、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0334】
<セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0335】
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0336】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0337】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、電気化学デバイス全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0338】
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0339】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0340】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0341】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0342】
以下、電池設計について、説明する。
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0343】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0344】
<集電構造>
集電構造は、特に制限されないが、本発明の電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0345】
電極群が積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0346】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0347】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0348】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0349】
<外装体>
本発明の電気化学デバイスは、通常、上記の電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0350】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
【0351】
以上のように、本発明の電解液はガス発生が抑制され、電池特性に優れたものである。このため、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池等の電気化学デバイス用の電解液として特に有用であり、そのほか小型のリチウムイオン二次電池等の電気化学デバイス用の電解液としても有用である。本発明のリチウムイオン二次電池を備えたモジュールも本発明の一つである。
【0352】
本発明はまた、正極、負極、及び、上述の電解液を備えることを特徴とする電気二重層キャパシタであってもよい。
本発明の電気二重層キャパシタでは、正極及び負極の少なくとも一方は分極性電極であり、分極性電極及び非分極性電極としては特開平9−7896号公報に詳しく記載されている以下の電極が使用できる。
【0353】
本発明で用いる活性炭を主体とする分極性電極は、好ましくは大比表面積の不活性炭と電子伝導性を付与するカーボンブラック等の導電剤とを含むものである。分極性電極は種々の方法で形成することができる。例えば、活性炭粉末とカーボンブラックとフェノール系樹脂を混合し、プレス成形後不活性ガス雰囲気中及び水蒸気雰囲気中で焼成、賦活することにより、活性炭とカーボンブラックからなる分極性電極を形成できる。好ましくは、この分極性電極は集電体と導電性接着剤等で接合する。
【0354】
また、活性炭粉末、カーボンブラック及び結合剤をアルコールの存在下で混練してシート状に成形し、乾燥して分極性電極とすることもできる。この結合剤には、例えばポリテトラフルオロエチレンが用いられる。また、活性炭粉末、カーボンブラック、結合剤及び溶媒を混合してスラリーとし、このスラリーを集電体の金属箔にコートし、乾燥して集電体と一体化された分極性電極とすることもできる。
【0355】
活性炭を主体とする分極性電極を両極に用いて電気二重層キャパシタとしてもよいが、片側に非分極性電極を用いる構成、例えば、金属酸化物等の電池活物質を主体とする正極と、活性炭を主体とする分極性電極の負極とを組合せた構成、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする負極、又はリチウム金属やリチウム合金の負極と、活性炭を主体とする分極性の正極とを組合せた構成も可能である。
【0356】
また、活性炭に代えて又は併用して、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、ポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラック等の炭素質材料を用いてもよい。
【0357】
非分極性電極としては、好ましくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とするものとし、この炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させたものを電極に使用する。この場合、電解質にはリチウム塩が使用される。この構成の電気二重層キャパシタによれば、更に高い4Vを超える耐電圧が得られる。
【0358】
電極の作製におけるスラリーの調製に用いる溶媒は結合剤を溶解するものが好ましく、結合剤の種類に合わせ、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、エタノール、メタノール、ブタノール又は水が適宜選択される。
【0359】
分極性電極に用いる活性炭としては、フェノール樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭等がある。これらのうち大きい容量を得られる点で石油コークス系活性炭又はフェノール樹脂系活性炭を使用するのが好ましい。また、活性炭の賦活処理法には、水蒸気賦活処理法、溶融KOH賦活処理法等があり、より大きな容量が得られる点で溶融KOH賦活処理法による活性炭を使用するのが好ましい。
【0360】
分極性電極に用いる好ましい導電剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、金属ファイバ、導電性酸化チタン、酸化ルテニウムが挙げられる。分極性電極に使用するカーボンブラック等の導電剤の混合量は、良好な導電性(低い内部抵抗)を得るように、また多すぎると製品の容量が減るため、活性炭との合計量中1〜50質量%とするのが好ましい。
【0361】
また、分極性電極に用いる活性炭としては、大容量で低内部抵抗の電気二重層キャパシタが得られるように、平均粒径が20μm以下で比表面積が1500〜3000m/gの活性炭を使用するのが好ましい。また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極を構成するための好ましい炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体、黒鉛化ウィスカ、気層成長炭素繊維、フルフリルアルコール樹脂の焼成品又はノボラック樹脂の焼成品が挙げられる。
【0362】
集電体は化学的、電気化学的に耐食性のあるものであればよい。活性炭を主体とする分極性電極の集電体としては、ステンレス、アルミニウム、チタン又はタンタルが好ましく使用できる。これらのうち、ステンレス又はアルミニウムが、得られる電気二重層キャパシタの特性と価格の両面において特に好ましい材料である。リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極の集電体としては、好ましくはステンレス、銅又はニッケルが使用される。
【0363】
また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料にあらかじめリチウムイオンを吸蔵させるには、(1)粉末状のリチウムを、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料に混ぜておく方法、(2)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極上にリチウム箔を載せ、電極と電気的に接触させた状態で、この電極をリチウム塩を溶かした電解液中に浸漬することによりリチウムをイオン化させ、リチウムイオンを炭素材料中に取り込ませる方法、(3)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極をマイナス側に置き、リチウム金属をプラス側に置いてリチウム塩を電解質とする非水系電解液中に浸漬し、電流を流して電気化学的に炭素材料中にリチウムをイオン化した状態で取り込ませる方法がある。
【0364】
電気二重層キャパシタとしては、巻回型電気二重層キャパシタ、ラミネート型電気二重層キャパシタ、コイン型電気二重層キャパシタ等が一般に知られており、本発明の電気二重層キャパシタもこれらの形式とすることができる。
【0365】
例えば巻回型電気二重層キャパシタは、集電体と電極層の積層体(電極)からなる正極及び負極を、セパレータを介して巻回して巻回素子を作製し、この巻回素子をアルミニウム製等のケースに入れ、電解液、好ましくは非水系電解液を満たしたのち、ゴム製の封口体で封止して密封することにより組み立てられる。
【0366】
セパレータとしては、従来公知の材料と構成のものが本発明においても使用できる。例えば、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン繊維やガラス繊維、セルロース繊維の不織布等が挙げられる。
【0367】
また、公知の方法により、電解液とセパレータを介してシート状の正極及び負極を積層したラミネート型電気二重層キャパシタや、ガスケットで固定して電解液とセパレータを介して正極及び負極をコイン型に構成したコイン型電気二重層キャパシタとすることもできる。
【0368】
本発明の電解液は、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池用や、電気二重層キャパシタ用の電解液として有用である。
【実施例】
【0369】
次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0370】
実施例1〜21、比較例1〜5
(電解液の調製)
表1に記載の組成になるように溶媒の各成分及びニトリル化合物を混合し、これに、LiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように添加して、非水電解液を得た。ニトリル化合物の配合割合は、電解液に対する質量%で表した。
なお、表中の化合物は以下の通りである。
a:CFCHOCOOCH(フッ素含有率:36.1%)
b:CFCHOCOOCHCF(フッ素含有率:50.4%)
c:(COCF(CF)CHO)CO(フッ素含有率:65.1%)
d:HCFCHOCOOCH(フッ素含有率:27.1%)
FEC:モノフルオロエチレンカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
EC:エチレンカーボネート
APN:アジポニトリル
HN:3−ヘキセンジニトリル
MN:ムコノニトリル
HT:1,3,6−ヘキサントリカルボニトリル
TP:3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル
【0371】
(コイン型リチウムイオン二次電池の作製)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、商品名:KF−7200)を92/3/5(質量比)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状とした正極合剤スラリーを準備した。アルミ集電体上に、得られた正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥して正極合剤層(厚さ50μm)を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形して、正極積層体を製造した。正極積層体を打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き、円状の正極を作製した。
【0372】
別途、人造黒鉛粉末に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形し、打ち抜き機で直径1.6cmの大きさに打ち抜き円状の負極を作製した。
【0373】
上記の円状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して正極と負極を対向させ、上記で得られた非水電解液を注入し、電解液がセパレータ等に充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0374】
(電池特性の測定)
得られたコイン型リチウムイオン二次電池について、次の要領で高温保存特性及び負荷特性を調べた。
【0375】
(高温保存特性)
高温保存特性については所定の充放電条件(1.0Cで4.35Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し、1C相当の電流で3.0Vまで放電する)により充放電を行い、放電容量を調べた。その後、再度上記の充電条件で充電をし、85℃の恒温槽の中に1日保存した。保存後の電池を25℃において、上記の放電条件で放電終止電圧3Vまで放電させて残存容量を測定し、更に上記の充電条件で充電した後、上記の放電条件での定電流で放電終止電圧3Vまで放電を行って回復容量を測定した。保存前の放電容量を100とした場合の回復容量率を表1に示す。
【0376】
(負荷特性)
25℃で所定の充放電条件(1.0Cで4.35Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し、0.2C相当の電流で3.0Vまで放電する)により充放電を行いその後、充放電条件を変えて(1.0Cで4.35Vにて充電電流が1/10Cになるまで充電し、2C相当の電流で3.0Vまで放電する)充放電を行った。下記の式を用いて負荷特性を算出した。結果を表1に示す。
【数1】
【0377】
【表1】
【0378】
実施例と比較例との比較から、フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートとともに上記一般式(1a)、(1b)及び(1c)で表されるニトリル化合物を用いると高温保存特性及び負荷特性が上がることがわかる。