(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Al、Zr、Ti、Ce、Mg及びSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されている、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルカリ化合物と、前記多孔質担体に担持されているMn化合物とを備えるNOx吸蔵還元型触媒であり、
前記触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点において、TEM−EDX分析により求められる、全無機金属元素に対するアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下であり、かつ、全無機金属元素に対するMn元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下であることを特徴とするNOx吸蔵還元型触媒。
前記多孔質担体に担持されている、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属元素を含む化合物を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属元素を含有する水溶液を用いて、前記多孔質担体に、前記活性金属元素を含む化合物を担持せしめた後、前記アルカリ化合物と前記Mn化合物とを担持せしめることを特徴とする請求項3に記載のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法。
Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属元素を更に含有する前記水溶性前駆体溶液を用いて、前記多孔質担体に、前記アルカリ化合物と前記Mn化合物と前記活性金属元素を含む化合物とを担持せしめることを特徴とする請求項3に記載のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。先ず、本発明のNOx吸蔵還元型触媒について説明する。本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、
Al、Zr、Ti、Ce、Mg及びSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されている、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルカリ化合物と、前記多孔質担体に担持されているMn化合物とを備えるNOx吸蔵還元型触媒であり、
前記触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点において、TEM−EDX分析により求められる、全無機金属元素に対するアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下であり、かつ、全無機金属元素に対するMn元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下であるものである。
【0019】
(多孔質担体)
本発明にかかる多孔質担体は、Al、Zr、Ti、Ce、Mg及びSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなるものである。前記酸化物としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、酸化マグネシウム、シリカ、及びこれらの複合酸化物が挙げられる。このような酸化物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような酸化物のうち、耐久性に優れているという観点から、アルミナ、ジルコニア、及びこれらを含む複合酸化物(例えば、アルミナ−ジルコニア−セリア複合酸化物、アルミナ−ジルコニア−チタニア−セリア複合酸化物等)が好ましい。
【0020】
また、本発明にかかる多孔質担体の形状としては、特に制限されないが、触媒担体の比表面積がより増加し、より高いNOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が得られるという観点から、粉末状であることが好ましい。多孔質担体が粉末状である場合における多孔質担体の平均粒子径としては、1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。多孔質担体の平均粒子径が前記下限未満になると、多孔質担体の微細化にコストがかかるとともに、その取扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体を基材に安定に固定することが困難となる傾向にある。
【0021】
さらに、前記多孔質担体の比表面積としては、特に制限されないが、100m
2/g以上が好ましい。多孔質担体の比表面積が前記下限未満になると、NO酸化サイトやNOx吸蔵サイトの量が減少し、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は、窒素吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0022】
また、前記多孔質担体の平均細孔直径としては、特に制限されないが、5〜30nmであることが好ましく、5〜20nmであることが特に好ましい。多孔質担体の平均細孔直径が前記下限未満になると、細孔内のガス拡散性が低下し、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体の比表面積が低下し、NO酸化サイトやNOx吸蔵サイトの量が減少するため、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する傾向にある。このような平均細孔直径は、窒素吸着等温線を測定し、BJH法により細孔径分布曲線を作成することによって求めることができる。
【0023】
このような多孔質担体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、市販の複合酸化物を多孔質担体として使用してもよい。
【0024】
また、このような多孔質担体が粉末状である場合、本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、粉末状の多孔質担体を、そのまま使用してもよいし、ペレット状に成形して使用してもよいし、基材上に固定せしめて使用してもよい。前記基材の形状としては特に制限されず、ペレット状、ハニカム状等の公知の形状を適宜採用することができるが、好ましい基材としては、DPF基材、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が挙げられる。また、基材の材質としては特に制限されないが、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材がより好ましい。
【0025】
本発明にかかる多孔質担体を基材上に固定せしめる場合、前記基材容量1Lあたりの前記多孔質担体の固定量としては、50〜300g/Lが好ましく、100〜200g/Lがより好ましい。多孔質担体の固定量が前記下限未満になると、アルカリ化合物やMn化合物を均一に分散担持せしめることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材の細孔が閉塞して圧損が生じたり、基材から多孔質担体が脱離しやすくなる傾向にある。
【0026】
(アルカリ化合物)
本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、このような多孔質担体にアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルカリ化合物が担持されている。このようなアルカリ化合物はNOxの吸蔵に有効な成分である。前記アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の中でも、NOxの吸蔵性能に優れているという観点から、Ba、Sr、Na、Kが好ましく、Ba、Kがより好ましい。本発明にかかるアルカリ化合物の形態としては、炭酸塩、前記多孔質担体を構成する前記元素との複合酸化物、Mn元素との複合酸化物が挙げられる。
【0027】
本発明にかかるアルカリ化合物は、結晶構造を有するものであることが好ましい。このような結晶構造は、X線回折(XRD)測定で得られるXRDスペクトル中にアルカリ化合物に由来する回折ピークが存在することによって確認することができる。
【0028】
また、前記アルカリ化合物の形状として特に制限はないが、微粒子状であることが好ましく、その平均粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。アルカリ化合物微粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、アルカリ化合物を前記多孔質担体上に十分に均一に分散担持させることが困難となる傾向にある。
【0029】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、このようなアルカリ化合物が微細かつ均一に分散担持されている必要がある。具体的には、触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点において、TEM−EDX法による元素分析(TEM−EDX分析)により求められる、全無機金属元素に対するアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下である必要があり、0.8以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。前記変動係数が前記上限を超えると、アルカリ化合物が十分に均一に分散担持されておらず、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する。このような元素の変動係数は、具体的には以下の方法により求めることができる。すなわち、触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点(10nm×10nmの領域を1つの測定点とする)において、エネルギー分散型X線分光器を装備した走査透過型電子顕微鏡(TEM−EDX分析装置)を用いてエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルを測定する。各測定点において、得られたエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルから、その測定点内に存在する元素の種類を求め、各元素に由来する蛍光X線スペクトルのピーク面積を求める。このピーク面積に基いて、各測定点内に存在する各元素の含有割合を求める。このようにして求めた、すべての測定点における元素の含有割合から、各元素について、触媒中の元素の含有割合の標準偏差と平均値(平均濃度)を求め、下記式(1):
[変動係数]=[含有割合の標準偏差]/[含有割合の平均値] (1)
に基づいて、各元素の含有割合の変動係数を求める。なお、「ピーク面積」とは、ベースラインとピークとの間の面積をいい、市販のソフト(例えば、OriginLab社製の商品名「Origin」等)を利用して求めることができる。
【0030】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒において、前記アルカリ化合物の担持量としては、前記多孔質担体が前記基材に固定されている場合、前記基材1Lに対してアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の量に換算して0.05〜1.0mol/Lが好ましく、0.1〜0.5mol/Lがより好ましい。アルカリ化合物の担持量が前記下限未満になると、十分なNOx吸蔵性能が得られない傾向があり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体の細孔が閉塞して十分な比表面積が得られず、十分なNOx吸蔵性能やNOx浄化性能が得られない傾向がある。
【0031】
(Mn化合物)
本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体にMn化合物が更に担持されている。このようなMn化合物はNOの酸化に有効な成分である。本発明にかかるMn化合物の形態としては、酸化物、前記多孔質担体を構成する前記元素との複合酸化物、前記アルカリ金属元素との複合酸化物、前記アルカリ土類金属元素との複合酸化物が挙げられる。
【0032】
本発明にかかるMn化合物は非晶質であることが好ましい。Mn化合物が非晶質であることについては、X線回折(XRD)測定で得られるXRDスペクトル中にMn化合物に由来する回折ピークが観察されないことによって確認することができる。Mn化合物が非晶質である場合、Mn化合物は、多孔質担体上で、後述する活性金属元素を含む化合物と相互作用しやすく、より高いNO酸化性能を発現することが可能となる。
【0033】
また、Mn化合物の形状として特に制限はないが、微粒子状であることが好ましく、その平均粒子径としては10nm以下(XRDによる検出限界以下)が好ましい。Mn化合物微粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、NO酸化サイトが減少する傾向にある。
【0034】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、このようなMn化合物が微細かつ均一に分散担持されている必要がある。具体的には、触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点において、TEM−EDX法による元素分析(TEM−EDX分析)により求められる、全無機金属元素に対するMn元素の含有割合の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)が0.9以下である必要があり、0.8以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。前記変動係数が前記上限を超えると、Mn化合物が十分に均一に分散担持されておらず、NO酸化性能が低下し、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する。このようなMn元素の変動係数は、前述したアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有割合の変動係数と同様の方法により求めることができる。
【0035】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒において、前記Mn化合物の担持量としては、前記多孔質担体が前記基材に固定されている場合、前記基材1Lに対してMn元素の量に換算して0.05〜1.0mol/Lが好ましく、0.1〜0.5mol/Lがより好ましい。Mn化合物の担持量が前記下限未満になると、十分なNO酸化性能が得られず、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する傾向があり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体の細孔が閉塞して十分な比表面積が得られず、十分なNOx吸蔵性能やNOx浄化性能が得られない傾向がある。
【0036】
(活性金属化合物)
本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属元素を含む化合物が更に担持されていることが好ましい。前記活性金属元素の中でも、NO酸化性能が向上し、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が更に向上するという観点から、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cuがより好ましく、Pt、Pd、Rhが更に好ましく、Pt、Rhが特に好ましく、NO酸化性能だけでなく、NOx還元性能も更に向上するという観点から、Rhが最も好ましい。
【0037】
このような活性金属化合物は、空燃比がリーン雰囲気である場合に排ガス中の酸素を利用してNOを酸化してNOxとし、空燃比がリッチ雰囲気である場合にCOやHC等の還元性ガスと反応させてNOxをN
2に還元するための触媒成分(活性成分)として機能するものである。また、このような「活性金属化合物」は、XRD分析した場合に前記活性金属元素に由来するピークが確認されることにより確認でき、その具体的な形態は、酸化物であってもメタル状であってもよく、前記多孔質担体を構成する元素や前記アルカリ金属元素、前記アルカリ土類金属元素、Mn元素と結合して化合物を形成していてもよい。
【0038】
また、活性金属化合物の形状として特に制限はないが、微粒子状であることが好ましく、その平均粒子径としては30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。活性金属化合物微粒子の平均粒子径が前記上限を超えると、十分に高い触媒活性を得ることが困難となる傾向にある。
【0039】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒において、前記活性金属化合物の担持量としては、前記多孔質担体が前記基材に固定されている場合、前記基材1Lに対して活性金属元素の量に換算して0.1〜10g/Lが好ましく、0.2〜5g/Lがより好ましい。活性金属化合物の担持量が前記下限未満になると、活性金属化合物担持によるNO酸化性能及びNOx還元性能の向上効果が十分に得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性金属化合物が均一に分散担持されにくくなり、NO酸化性能及びNOx還元性能が低下する傾向にある。
【0040】
次に、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法について説明する。本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法は、
アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とMn元素と多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を用いて、Al、Zr、Ti、Ce、Mg及びSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる多孔質担体に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルカリ化合物とMn化合物とを担持せしめる方法である。
【0041】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法においては、本発明にかかる前記多孔質担体に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とMn元素と多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を、各元素が所定の担持量となるように接触せしめ、その後、焼成することによって、前記多孔質担体に本発明にかかる前記アルカリ化合物とMn化合物とを担持せしめる。このように、前記アルカリ化合物とMn化合物とを前記多孔質担体に同時に担持させることによって、前記多孔質担体に前記アルカリ化合物及びMn化合物が微細かつ十分に均一に分散担持され、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能に優れたNOx吸蔵還元型触媒を得ることが可能となる。
【0042】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法においては、予め、前記基材に前記多孔質担体を固定せしめた後、上記の方法で前記アルカリ化合物及びMn化合物を担持せしめてもよい。前記基材に前記多孔質担体を固定せしめる方法としては特に制限されず、ウォッシュコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0043】
本発明にかかる多座配位子とは、2個以上の配位基で配位し得る配位子をいい、前記アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素、Mn元素との錯体を形成するものである。また、本発明にかかる水溶性前駆体溶液に含まれるアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及びMn元素は、本発明にかかるアルカリ化合物及びMn化合物を構成する元素として説明したものである。このようなアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及びMn元素の形態としては、溶媒に溶解して前記多座配位子と錯体を形成するものであれば特に制限されず、例えば、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩等の前記元素の塩、ジニトロジアンミン錯体等の前記元素の錯体、前記元素の水酸化物等を適宜使用することができる。
【0044】
前記多座配位子としては、クエン酸、シュウ酸の多価カルボン酸から少なくとも1つの水素が脱離した残基、グリコール、ピナコール等のジオール類から少なくとも1つの水素が脱離した残基、エチレンジアミン等のジアミン類から少なくとも1つの水素が脱離した残基、アセト酢酸エチル等の2つのカルボニル基を有するエステル類から少なくとも1つの水素が脱離した残基等が挙げられる。このような多座配位子の中でも、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、アコニット酸、グルタル酸、エチレンジアミン四酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、サリチル酸、メバロン酸、エチレンジアミン、アセト酢酸エチル、マロン酸エステル、グリコール、ピナコールから少なくとも1つの水素が脱離した残基が好ましく、ヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸であるという観点から、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸から少なくとも1つの水素が脱離した残基がより好ましく、より微細かつ均一に分散された状態でアルカリ化合物及びMn化合物を担持できるという観点から、クエン酸から少なくとも1つの水素が脱離した残基が特に好ましい。また、このような多座配位子は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記多孔質担体に前記水溶性前駆体溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記水溶性前駆体溶液中に前記多孔質担体を浸漬して撹拌する方法、前記水溶性前駆体溶液を前記多孔質担体に含浸担持させる等の公知の方法を適宜採用することができる。また、前記水溶性前駆体溶液に用いられる溶媒としては特に制限されず、水、エタノール等を適宜利用することができ、廃液処理、調製コストの観点から、水が好ましい。
【0046】
このような水溶性前駆体溶液中の各元素の濃度としては、0.1〜2mol/Lが好ましく、0.5〜1mol/Lがより好ましい。元素の濃度が前記下限未満になると、所定量のアルキル化合物やMn化合物を多孔質担体に担持するためには多孔質担体との接触操作を複数回繰り返す必要があり、製造効率が低下する傾向にあるとともに、複数回の接触操作により元素の再溶出や析出が起こり、アルキル化合物やMn化合物を十分に均一に分散担持させることが困難となる傾向にある。他方、元素の濃度が前記上限を超えると、アルキル化合物やMn化合物を十分に均一に分散担持させることが困難となり、NOx吸蔵性能及びNOx浄化性能が低下する傾向にある。
【0047】
また、前記水溶性前駆体溶液中の多座配位子の濃度としては、0.3〜8mol/Lが好ましく、1.5〜4mol/Lがより好ましい。多座配位子の濃度が前記下限未満になると、アルキル化合物やMn化合物との錯体が形成されにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、水溶性前駆体溶液としての安定性が低下する傾向にある。
【0048】
前記多孔質担体に前記水溶性前駆体溶液を接触せしめた後の焼成時の温度条件としては、300〜600℃が好ましく、300〜550℃がより好ましい。また、焼成時間としては、2〜10時間が好ましく、3〜5時間がより好ましい。焼成温度又は焼成時間が前記下限未満になると、多座配位子が十分に分解されず、NOx吸蔵性能やNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して粒成長が起こり、アルキル化合物やMn化合物を微細かつ十分に均一に分散担持させることが困難となる傾向にある。
【0049】
このように、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法においては、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とMn元素と多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を用いることによって、前記多孔質担体の表面上に微細かつ十分に均一に分散した状態でアルカリ化合物及びMn化合物を担持させることが可能となる。これは、以下の理由による。すなわち、前記水溶性前駆体溶液中において前記の各元素は多座配位子と錯体を形成する。錯体の核に存在する各元素は嵩高い前記多座配位子により離間した状態で多孔質担体上に離間して担持される。その結果、焼成時の元素の凝集が十分に抑制されるため、微細かつ十分に均一に分散した状態でアルカリ化合物及びMn化合物が担持される。
【0050】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法においては、前記多孔質担体に、Pt、Pd、Rh、Ir、Au、Ag、Cu、Co、Ni、V、Nb、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属元素を含む化合物(活性金属化合物)を担持せしめることが好ましい。
【0051】
前記活性金属化合物を担持せしめる方法としては、前記活性金属元素を含有する水溶液を用いて、前記多孔質担体に前記活性金属化合物を担持せしめた後、前記アルカリ化合物と前記Mn化合物とを担持せしめる方法(方法1)、或いは、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とMn元素と多座配位子と、更に前記活性金属元素とを含有する前記水溶性前駆体溶液を用いて、前記多孔質担体に前記アルカリ化合物と前記Mn化合物と前記活性金属化合物とを担持せしめる方法(方法2)が好ましい。
【0052】
前記方法1においては、先ず、本発明にかかる前記多孔質担体に前記活性金属元素を含有する水溶液を、前記活性金属元素が所定の担持量となるように接触せしめ、その後、焼成することによって、前記多孔質担体に本発明にかかる前記活性金属化合物を担持せしめる。次に、前述した方法に従って、前記活性金属化合物が担持されている前記多孔質担体に前記アルカリ化合物と前記Mn化合物とを担持せしめる。
【0053】
また、前記方法2においては、本発明にかかる前記多孔質担体に、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とMn元素と多座配位子と、更に前記活性金属元素とを含有する前記水溶性前駆体溶液を、前述した方法に従って、各元素が所定の担持量となるように接触せしめ、その後、焼成することによって、前記多孔質担体に前記アルカリ化合物と前記Mn化合物と前記活性金属化合物とを担持せしめる。
【0054】
前記方法1に用いられる水溶液及び前記方法2に用いられる水溶性前駆体溶液に含まれる活性金属元素は、本発明にかかる活性金属化合物を構成する元素として説明したものである。また、活性金属元素の形態(活性金属化合物の前駆体)としては、溶媒に溶解し、多孔質担体に活性金属化合物として担持されるものであれば特に制限されず、例えば、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩等の前記活性金属元素の塩、ジニトロジアンミン錯体等の前記活性金属元素の錯体、前記活性金属元素の水酸化物等を適宜使用することができる。
【0055】
前記方法1において、前記多孔質担体に前記水溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記水溶液中に前記多孔質担体を浸漬して撹拌する方法、前記水溶液を前記多孔質担体に含浸担持させる等の公知の方法を適宜採用することができる。また、前記水溶液に用いられる溶媒としては特に制限されず、水、エタノール等を適宜利用することができ、廃液処理、調製コストの観点から、水が好ましい。
【0056】
前記水溶液や前記水溶性前駆体溶液中の活性金属元素の濃度としては、5g/L以下が好ましく、1〜3g/Lがより好ましい。活性金属元素の濃度が前記下限未満になると、所定量の活性金属化合物を多孔質担体に担持するためには多孔質担体との接触操作を複数回繰り返す必要があり、製造効率が低下する傾向にあるとともに、複数回の接触操作により活性金属元素の再溶出や析出が起こり、活性金属化合物を十分に均一に分散担持させることが困難となる傾向にある。他方、活性金属元素の濃度が前記上限を超えると、活性金属化合物を十分に均一に分散担持させることが困難となり、NO酸化性能及びNOx還元性能が低下する傾向にある。
【0057】
前記多孔質担体に、前記活性金属元素を含有する前記水溶液又は前記水溶性前駆体溶液を接触せしめた後の焼成時の温度条件としては、300〜600℃が好ましく、300〜550℃がより好ましい。また、焼成時間としては、2〜10時間が好ましく、3〜5時間がより好ましい。焼成温度又は焼成時間が前記下限未満になると、活性金属化合物の前駆体が十分に分解されず、NOx吸蔵性能やNOx浄化性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、熱劣化が進行して粒成長が起こり、活性金属化合物を微細かつ十分に均一に分散担持させることが困難となる傾向にある。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(調製例1)
共沈法により調製したアルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末(アルミナ/ジルコニア/チタニア=50/35/15(質量比)、平均粒子径:50μm、比表面積:100m
2/g)に、白金ジニトロジアンミン水溶液(0.25mol/L)と硝酸パラジウム水溶液(0.47mol/L)との混合水溶液を、前記複合酸化物粉末100gに対してPt及びPdの担持量がそれぞれ0.74g及び0.28gとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してPt−Pd担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末を得た。
【0060】
(調製例2)
前記アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末に硝酸ロジウム水溶液(0.27mol/L)を、前記複合酸化物粉末100gに対してRh担持量が1gとなるように含浸させて担持せしめた以外は調製例1と同様にして、Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末を得た。
【0061】
(調製例3)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35mL、セル密度:400cell/inch
2)にアルミナ粉末(ローディア社製「MI307」、平均粒子径:17μm、比表面積:170m
2/g)を、前記モノリス基材1Lに対してアルミナ粉末のコート量が150g/Lとなるようにウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質アルミナ担体と前記モノリス基材とを備える触媒担体1を得た。
【0062】
(調製例4)
六角セルコージェライトモノリス基材(直径:30mm、長さ:50mm、容積:35mL、セル密度:400cell/inch
2)に、調製例1で得たPt−Pd担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末(184g/L)と調製例2で得たRh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物粉末(27g/L)とを含有するスラリーを、前記モノリス基材1Lに対して各複合酸化物粉末のコート量が211g/Lとなるようにウォッシュコート法を用いてコートし、多孔質のPt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物担体と前記モノリス基材とを備える触媒担体2を得た。
【0063】
(調製例5)
3.3mol/Lのクエン酸水溶液50mlに酢酸マンガン粉末10.2gを添加し、室温で20分間撹拌して酢酸マンガン粉末を溶解せしめ、次いで、この水溶液に2.1mol/Lの酢酸バリウム水溶液39mlを添加し、室温で10分間撹拌してBa−Mn複合クエン酸水溶液を得た。
【0064】
(調製例6)
調製例5で得たBa−Mn複合クエン酸水溶液140mlに酢酸ロジウム粉末を0.57g添加し、室温で10分間撹拌して酢酸ロジウム粉末を溶解せしめてBa−Mn−Rh複合クエン酸水溶液を得た。
【0065】
(実施例1)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に調製例5で得たBa−Mn複合クエン酸水溶液を、前記触媒担体1Lに対してBa及びMnの担持量がいずれも0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa−Mn担持アルミナ触媒を得た。
【0066】
(実施例2)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に白金ジニトロジアンミン水溶液(0.25mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してPt担持量が2g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してPt担持アルミナ触媒を得た。次に、このPt担持アルミナ触媒に調製例5で得たBa−Mn複合クエン酸水溶液を、前記触媒担体1Lに対してBa及びMnの担持量がいずれも0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa−Mn/Pt担持アルミナ触媒を得た。
【0067】
(実施例3)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に調製例6で得たBa−Mn−Rh複合クエン酸水溶液を、前記触媒担体1Lに対してBa、Mn及びRhの担持量がそれぞれ0.2mol/L、0.2mol/L及び0.5g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa−Mn−Rh担持アルミナ触媒を得た。
【0068】
(実施例4)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に硝酸ロジウム水溶液(0.27mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してRh担持量が0.5g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してRh担持アルミナ触媒を得た。次に、このRh担持アルミナ触媒に調製例5で得たBa−Mn複合クエン酸水溶液を、前記触媒担体1Lに対してBa及びMnの担持量がいずれも0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa−Mn/Rh担持アルミナ触媒を得た。
【0069】
(実施例5)
調製例4で得た多孔質のPt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物担体を備える触媒担体2に調製例5で得たBa−Mn複合クエン酸水溶液を、前記触媒担体1Lに対してBa及びMnの担持量がいずれも0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa−Mn/Pt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物触媒を得た。この複合酸化物触媒に、酢酸カリウム水溶液(2.16mol/L)と酢酸リチウム水溶液(1.44mol/L)との混合水溶液を、前記触媒担体1Lに対してK及びLiの担持量がそれぞれ0.15mol/L及び0.10mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してK−Li/Ba−Mn/Pt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物触媒を得た。
【0070】
(比較例1)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に酢酸バリウム水溶液(2.14mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してBa担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa担持アルミナ触媒を得た。
【0071】
(比較例2)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に白金ジニトロジアンミン水溶液(0.25mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してPt担持量が2g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してPt担持アルミナ触媒を得た。
【0072】
(比較例3)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に白金ジニトロジアンミン水溶液(0.25mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してPt担持量が2g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してPt担持アルミナ触媒を得た。次に、このPt担持アルミナ触媒に酢酸バリウム水溶液(2.14mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してBa担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa/Pt担持アルミナ触媒を得た。
【0073】
(比較例4)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に酢酸マンガン水溶液(0.58mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してMn担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してMn担持アルミナ触媒を得た。
【0074】
(比較例5)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に白金ジニトロジアンミン水溶液(0.25mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してPt担持量が2g/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してPt担持アルミナ触媒を得た。次に、このPt担持アルミナ触媒に酢酸マンガン水溶液(0.58mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してMn担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してMn/Pt担持アルミナ触媒を得た。
【0075】
(比較例6)
比較例4で得たMn担持アルミナ触媒に酢酸バリウム水溶液(2.14mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してBa担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa/Mn担持アルミナ触媒を得た。
【0076】
(比較例7)
調製例3で得た多孔質アルミナ担体を備える触媒担体1に硝酸マンガン水溶液(0.58mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してMn担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してMn担持アルミナ触媒を得た。次に、このMn担持アルミナ触媒に硝酸バリウム水溶液(2.14mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してBa担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa/Mn担持アルミナ触媒を得た。
【0077】
(比較例8)
調製例4で得た多孔質のPt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物担体を備える触媒担体2に酢酸バリウム水溶液(2.14mol/L)を、前記触媒担体1Lに対してBa担持量が0.2mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してBa/Pt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物触媒を得た。この複合酸化物触媒に、酢酸カリウム水溶液(2.16mol/L)と酢酸リチウム水溶液(1.44mol/L)との混合水溶液を、前記触媒担体1Lに対してK及びLiの担持量がそれぞれ0.15mol/L及び0.10mol/Lとなるように含浸させて担持せしめ、次いで、大気中、550℃で5時間焼成してK−Li/Ba/Pt−Pd−Rh担持アルミナ−ジルコニア−チタニア複合酸化物触媒を得た。
【0078】
表1には、実施例及び比較例で得られた触媒の組成を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
<耐久試験>
実施例及び比較例で得られた触媒に対して、入りガス温度750℃、流量11L/分の条件において表2に示すリーンガスとリッチガスとを110秒/10秒の条件で切換えながら5時間供給する耐久試験を行なった。
【0081】
【表2】
【0082】
<STEM観察及びEDX分析>
前記耐久試験後、前記モノリス基材上の触媒コート層を引っ掻いて捕集し、得られた触媒粉末を、球面収差補正機能付走査透過電子顕微鏡(STEM、(株)日立製作所製「HD−2700」)を用い、加速電圧200kVの条件で観察した。
図2〜5には、実施例1、3及び比較例3、6で得られた触媒のSTEM写真を示す。
【0083】
また、前記走査透過電子顕微鏡に付属するEDX検出器を用い、触媒表面上の無作為に抽出した20点以上の測定点(10nm×10nmの領域を1つの測定点とした。)において蛍光X線スペクトルを測定し、得られたエネルギー分散型の蛍光X線スペクトルに基づいて元素分析(TEM−EDX分析)を行なった。なお、
図2〜5には、TEM−EDX分析の際に利用した測定点(長方形で囲まれた領域)を明示した。得られたスペクトルのピーク面積から各測定点における各元素の含有割合を算出した。すべての測定点の元素の含有割合から、各元素について、触媒中の元素の含有割合の標準偏差と平均値(平均濃度)を求め、各元素の変動係数(含有割合の標準偏差/含有割合の平均値)を算出した。表3には、実施例1、3及び比較例3、6で得られた触媒における、Ba及びMnの含有割合の標準偏差、平均値及び変動係数を示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3に示した結果から明らかなように、BaとMnと多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を用いて調製した本発明のNOx吸蔵還元型触媒(実施例1、3)においては、Ba元素及びMn元素の含有割合の変動係数がともに0.9以下であり、Ba及びMnが微細かつ均一に分散担持されていることが確認された。一方、Mn化合物を担持しなかった触媒(比較例3)、並びにBa化合物を担持せしめた後、Mn化合物を担持せしめた触媒(比較例6)においては、Ba元素の含有割合の変動係数が1.0以上となり、Baの均一分散性に劣っていることがわかった。
【0086】
<XRD測定>
前記耐久試験後、前記モノリス基材上の触媒コート層を引っ掻いて捕集し、得られた触媒粉末を、X線回折装置((株)リガク製「RINT−TTR II」)を用い、触媒を構成する化合物の結晶構造を分析した。
図6には、実施例1、3及び比較例3、6で得られた触媒のX線回折パターンを示す。
【0087】
図6に示した結果から明らかなように、BaとMnと多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を用いて調製した本発明のNOx吸蔵還元型触媒(実施例1、3)においては、BaCO
3結晶に由来する回折ピークの幅が狭く、粗大化したBaCO
3粒子が少ないことが確認された。また、Mn由来の回折ピークは観察されず、Mn化合物は非晶質形態で触媒表面に存在していることがわかった。
【0088】
<触媒活性評価試験>
全自動流通式触媒評価装置((株)ベスト測器「CATA−5000−8」)を用いて、以下のようにして触媒活性評価試験を行なった。すなわち、先ず、前記耐久試験後の触媒に対して、表4に示す前処理ガスを500℃で4分間流通させ、その後、表4に示すリーンガスを400℃で10分間流通させ(空間時間:25000h
−1)、入りガス中と出ガス中のNOx濃度の差分から飽和NOx吸蔵量を算出した。その結果を表5に示す。
【0089】
次に、十分なNOx吸蔵量を示した触媒(実施例1〜5及び比較例3、6〜8)に対して、表4に示すリーンガス及びリッチガスを60秒/3秒で切換えながら400℃で10.5分間流通させ(空間時間:25000h
−1)、入りガス中と出ガス中のNOx濃度の差分からリッチスパイクNOx浄化率を算出した。その結果を表5に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示した結果から明らかなように、BaとMnと多座配位子とを含有する水溶性前駆体溶液を用いて調製した本発明のNOx吸蔵還元型触媒(実施例1〜5)は、Ba化合物及びMn化合物の両者を含有していない触媒(比較例2)、Ba化合物及びMn化合物のいずれか一方を含有する触媒(比較例1、3〜5、8)並びにMn化合物を担持せしめた後、Ba化合物を担持せしめた触媒(比較例6〜7)に比べて、飽和NOx吸蔵量が多く、リッチスパイクNOx浄化活性に優れたものであることが確認された。