特許第6315231号(P6315231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000002
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000003
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000004
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000005
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000006
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000007
  • 特許6315231-電子機器および腕時計 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315231
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】電子機器および腕時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 25/04 20060101AFI20180416BHJP
   G04G 21/00 20100101ALI20180416BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   G04B25/04
   G04G21/00 302A
   H04M1/02 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-195015(P2013-195015)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59886(P2015-59886A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−137493(JP,U)
【文献】 実公昭62−025745(JP,Y2)
【文献】 特開平07−218663(JP,A)
【文献】 実開平03−039999(JP,U)
【文献】 実開昭57−108184(JP,U)
【文献】 実開昭56−148687(JP,U)
【文献】 米国特許第06547728(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 25/04
G04G 21/00
G04C 21/02
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成されたケースと、
前記ケースの前記開口部に配置された振動板と、
前記ケース内に位置する前記振動板の内面と接し、振動を発生する振動素子と、
前記振動板の内面側に配置され、前記振動板の前記ケース内方向への位置を規制する位置規制部と、
前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、前記ケースの下端部に配置された裏蓋を更に備え、前記位置規制部の下端面と前記裏蓋の内面との間に前記弾性体が挟まった状態で固定されていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、前記弾性体の外周縁に前記ケースと前記裏蓋との間に防水リングが一体形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の電子機器において、前記弾性体は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、発泡樹脂、ゲル状の低反発素材の弾力性を有する材料の中から選んだ少なくとも何れかの材料で形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載の電子機器において、前記弾性体は、前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とに跨った状態で、枠状に連続して形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載の電子機器において、前記弾性体は、前記ケースの前記開口部の内周縁と前記振動板の外周縁との間の隙間に配置されると共に、上端部が振動板の内面に折り曲げられて接着され、下端部が前記ケースの外面に折り曲げられて接着されていることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子機器において、前記振動板が前記ケース内に押し込まれるのを阻止する位置規制部を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電子機器において、前記振動板と前記ケースの前記開口部とは非円形状に形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
腕時計ケースと、
前記腕時計ケースの裏面に取り付けられ、かつ開口部が形成された裏蓋と、
前記裏蓋の前記開口部に配置される振動板と、
前記腕時計ケース内に位置する前記振動板の内面と接し、振動を発生する振動素子と、
前記振動板の内面側に配置され、前記振動板の前記ケース内方向への位置を規制する位置規制部と、
前記振動板の外周縁と前記裏蓋の前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、
を備えていることを特徴とする腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計、携帯電話機、携帯情報端末機などの電子機器および腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースの裏蓋に振動モータを取り付け、この振動モータで発生した振動が裏蓋を介して腕などの人体に伝達されるように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−44540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような腕時計では、振動モータで発生した振動を腕などの人体に伝えるために、振動モータで裏蓋を腕時計ケースと共に振動させる必要がある。このため、振動モータに大きな電流を流して、振動モータを強力に振動させなければならないので、消費電力が多くなり、電池の消耗が激しく、電池交換の頻度が多くなるという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、少ない消費電力で効率良く振動素子の振動を人体に伝えることができる電子機器および腕時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、開口部が形成されたケースと、前記ケースの前記開口部に配置された振動板と、前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、前記ケース内に位置する前記振動板の内面に接し、振動を発生する振動素子と、前記振動板の内面側に配置され、前記振動板の前記ケース内方向への位置を規制する位置規制部と、前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、振動素子で発生した振動によって振動板のみを振動させることができ、この振動板によって振動を人体に確実に伝えることができる。このため、振動素子でケースの一部または全部を振動させる必要がないので、少ない消費電力で振動素子を振動させることができると共に、効率良く振動素子の振動を人体に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明を指針式の腕時計に適用した第1実施形態を示した拡大断面図である。
図2図1に示された腕時計の振動発生装置を示した拡大平面図である。
図3図2に示された振動発生装置を示した拡大側面図である。
図4図2に示された振動発生装置のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
図5図2に示された振動発生装置における振動板の回転止め部の第1変形例を示した平面図である。
図6図2に示された振動発生装置における振動板の腕時計ケース内への押込みを防ぐ位置規制部の第2変形例を示した要部の拡大断面図である。
図7】この発明を指針式の腕時計に適用した第2実施形態を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図1図4を参照して、この発明を指針式の腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
この腕時計は、図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1は、合成樹脂からなるケース本体2と、このケース本体2の上部外周に設けられた第1ベゼル3と、この第1ベゼル3の下部外周に設けられた第2ベゼル4とを有している。
【0010】
この場合、ケース本体2には、図1に示すように、金属製の補強部材2aが埋め込まれている。また、このケース本体2の上部外周と第1ベゼル2との間には、補助ベゼル2bが設けられている。さらに、このケース本体2の12時側および6時側に位置する個所には、バンド取付部2cがそれぞれ外部に突出して設けられている。このバンド取付部2cには、腕時計ケース1を腕に取り付けるための時計バンド9がそれぞれ取り付けられている。
【0011】
この腕時計ケース1の上部開口部、つまりケース本体2の上部開口部には、図1に示すように、時計ガラス5がパッキン5aを介して取り付けられている。この腕時計ケース1の下部、つまりケース本体2の下部には、裏蓋6が防水リング部6aを介して取り付けられている。また、この腕時計ケース1の内部、つまりケース本体2の内部には、時計モジュール7が中枠8を介して設けられている。
【0012】
この時計モジュール7は、図1に示すように、上部ハウジング10と下部ハウジング11とを備えている。この上部ハウジング10と下部ハウジング11との内部には、時計ムーブメントや回路基板などの時計機能に必要な各種の部品(図示せず)が組み込まれている。この場合、時計ムーブメントは、指針軸12を回転させることにより、指針軸12に取り付けられた指針13を運針させて時刻を指示表示するように構成されている。
【0013】
また、この腕時計ケース1には、図1に示すように、報知機能としての振動発生装置14が設けられている。この振動発生装置14は、裏蓋6に設けられた開口部15内に配置されて腕などの人体に接触する振動板16と、この振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁とを弾力的に連結する弾性体17と、腕時計ケース1の内部側に位置する振動板16の内面に固定されて振動を発生する振動モータ18と、を備えている。
【0014】
裏蓋6は、ステンレスなどの金属からなり、図2に示すように、ほぼ円板状に形成されている。この裏蓋6の外周部における互いに対向する個所には、一対の取付部20がそれぞれ側方に突出して設けられている。これら一対の取付部20は、裏蓋6を腕時計ケース1の下面、つまりケース本体2の下面にねじ(図示せず)によって取り付けるためのものであり、複数のねじ取付孔20aがそれぞれ設けられている。
【0015】
また、この裏蓋6には、図1に示すように、開口部15が設けられている。この開口部15は、図2に示すように、その一部を除いて、ほぼ円形状に形成されている。すなわち、この開口部15は、その一部が一方(図2では下辺側)の取付部20に食い込んで形成されていることにより、全体が非円形状に形成されている。
【0016】
振動板16は、ステンレスなどの金属板であり、図1および図2に示すように、裏蓋6の開口部15よりも少し小さい大きさで、開口部15と同じ形状で形成されている。これにより、振動板16は、裏蓋6の開口部15内に配置された際に、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間に隙間Sが設けられるように構成されている。
【0017】
この振動板16と裏蓋6とを連結する弾性体17は、図1に示すように、腕時計ケース1の内部側に位置する裏蓋6の内面と振動板16の内面とにおいて、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との両方に跨った状態で、裏蓋6の内面と振動板16の内面とに接着されるように構成されている。
【0018】
この弾性体17は、弾力性を有するシートであり、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、発泡樹脂、ゲル状の低反発素材のいずれかの材料で形成されているが、好ましくはシリコーン樹脂で形成されていることが望ましい。これにより、弾性体17は、図1および図2に示すように、振動板16を裏蓋6に弾力的に連結し、振動板16が裏蓋6に対して弾力的に変位するように構成されている。
【0019】
この場合、弾性体17の上面には、図1に示すように、中枠8の下端面が裏蓋6と振動板16とに跨って配置されている。これにより、弾性体17は、中枠8の下端面と裏蓋6の内面との間に挟まった状態で固定されるように構成されている。このため、振動板16は、その下側から腕時計ケース1内に向けて押されても、中枠8の下端面によって腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制されている。
【0020】
また、振動板16は、図1に示すように、その厚みが裏蓋6の厚みとほぼ同じ厚みで形成されているが、好ましくは裏蓋6の厚みよりも少し薄く形成されていることが望ましい。これにより、振動板16は、裏蓋6の開口部15内に配置された際に、振動板16の外周縁が裏蓋6の裏面側に突出しないように構成されている。また、この弾性体17の外周部には、腕時計ケース1のケース本体2と裏蓋6との間の防水を図る防水リング6aが一体に形成されている。
【0021】
この振動板16に搭載される振動モータ18は、図1図4に示すように、モータ部18a、一対の偏心回転部18b、および回路部18cを有し、モータ部18aが一対の偏心回転部18bを偏心回転させることにより、振動を発生するように構成されている。この振動モータ18は、振動板16に一体的に形成されたモータ保持部21に取り付けられるように構成されている。
【0022】
モータ保持部21は、合成樹脂を含み、図2図4に示すように、インサート成型によって振動板16に一体に形成されている。すなわち、このモータ保持部21は、振動モータ18のモータ部18aを保持する本体部21aと、振動板16中に埋め込まれて固定された固定部21bと、を有し、これらが合成樹脂によって一体に形成されている。
【0023】
本体部21aは、図2図4に示すように、その上側および両側が開放されたほぼ箱状に形成され、その内部にモータ部18aが配置され、この状態で一対の偏心回転部18bが本体部21aの両側外部に突出するように構成されている。固定部21bは、その一部が振動板16に設けられた取付穴部22内に埋め込まれた状態で、振動板16の内面に露出し、この露出した部分が本体部21aと一体に形成されている。
【0024】
この場合、振動板16の取付穴部22は、図4に示すように、振動板16の内面に位置する個所の穴幅が振動板16中の内部の穴幅よりも狭く形成されている。固定部21bは、本体部21aと共にインサート成型によって振動板16の取付穴部22に埋め込まれた状態で形成されている。これにより、固定部21bは、振動板16から離脱しないように、振動板16と一体に形成されている。
【0025】
また、振動モータ18は、図2図4に示すように、そのモータ部18aがモータ保持部21の本体部21a内に配置された状態で、押え金具23によってモータ部18aが本体部21a内に押し付けられて固定されるように構成されている。この押え金具23は、ステンレスなどの金属板からなり、振動モータ18の軸方向に沿う両側部に一対の係合片23aが下側に折り曲げられて設けられている。
【0026】
これにより、押え金具23は、図2図4に示すように、モータ部18aが配置されたモータ保持部21の本体部21a上に配置されて、両側の係合片23aが本体部21aの外面に設けられたフック部24に係合されることにより、モータ部18aを本体部21a内に押し付けた状態で本体部21aに取り付けるように構成されている。
【0027】
また、この押え金具23には、図2図4に示すように、振動モータ18の回路部18cが挿入して上方に突出する開口部23bが設けられている。これにより、振動モータ18の回路部18cには、図1に示すように、板ばね状の端子板25が弾力的に接触している。この端子板25は、振動モータ18の回路部18cと時計モジュール7内の回路基板(図示せず)とを電気的に接続するように構成されている。
【0028】
次に、このような腕時計の作用について説明する。
まず、振動板16に振動モータ18を取り付ける場合には、振動板16にインサート成型によって一体に形成されたモータ保持部21の本体部21a内に振動モータ18のモータ部18aを配置する。このときには、一対の偏心回転部18bが本体部21aの両側から外部に突出した状態で配置される。
【0029】
この状態で、モータ保持部21の本体部21a上に押え金具23を配置する。このときには、押え金具23の両側の係合片23aを本体部21aの両側外面にそれぞれ設けられた各フック部24に係合させる。すると、モータ部18aが押え金具23によって本体部21a内に押し付けられる。これにより、振動モータ18がモータ保持部21に取り付けられる。
【0030】
このように振動モータ18が取り付けられた振動板16を裏蓋6に取り付ける場合には、まず、裏蓋6の開口部15内に振動板16を配置する。この状態で、裏蓋6の内面および振動板16の内面に弾性体17を、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との両方に跨った状態で接着する。これにより、振動板16と裏蓋6とが弾性体17によって弾力的に連結される。
【0031】
そして、振動板16が連結された裏蓋6を腕時計ケース1のケース本体2の下面に取り付ける。このときには、予め、ケース本体2の上部開口部に時計ガラス5を取り付けると共に、ケース本体2内に時計モジュール7を中枠8と共に配置する。この状態で、裏蓋6をケース本体2の下面に取り付けると、弾性体17が中枠8の下端面と裏蓋6の内面および振動板16の内面との間に挟まれる。
【0032】
これにより、振動板16は、その下側から腕時計ケース1内に向けて押されても、中枠8の下端面によって腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制される。また、このときには、弾性体17の外周部に一体に形成された防水リング部6aがケース本体2と裏蓋との間に配置される。これにより、ケース本体2と裏蓋との間の防水が図れる。
【0033】
次に、この腕時計を腕に取り付けて使用する場合について説明する。
この場合には、予め、ケース本体2のバンド取付部2cに時計バンド9を取り付け、この時計バンド9で腕時計ケース1を腕に取り付ける。このときには、裏蓋6および振動板16が腕に接触する。
【0034】
この状態で、振動モータ18のモータ部18aが回転すると、このモータ部18aの回転によって一対の偏心回転部18bが偏心回転して、振動を発生する。すると、振動モータ18の振動によってモータ保持部21が振動し、このモータ保持部21の振動によって振動板16が振動する。このときには、振動板16が弾性体17によって裏蓋6に弾力的に連結されているので、裏蓋6は振動せず、振動板16のみが振動する。
【0035】
このように、振動板16のみが振動する場合には、裏蓋6および腕時計ケース1を振動させる場合に比べて、振動する質量が大幅に減少するので、振動モータ18を駆動するエネルギー量に対して振動モータ18の振動量が大幅に上昇する。これにより、振動モータ18が振動すると、振動板16がモータ保持部21と共に強力に振動し、この振動板16の振動が腕に確実に伝わる。
【0036】
このように、この腕時計によれば、腕時計ケース1の裏面に取り付けられ、かつ開口部14が設けられた裏蓋6と、この裏蓋6の開口部15に配置されて腕に接触する振動板16と、この振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁とを弾力的に連結する弾性体17と、腕時計ケース1の内部側に位置する振動板16の内面に固定されて振動を発生する振動モータ18と、を備えていることにより、少ない消費電力で効率良く振動モータ18の振動を腕に伝えることができる。
【0037】
すなわち、この腕時計では、振動モータ18で発生した振動によって振動板16のみを振動させることができ、この振動板16によって振動を腕に確実に伝えることができる。このため、振動モータ18で裏蓋6や腕時計ケース1の一部または全部を振動させる必要がないので、少ない消費電力で振動モータ18を振動させることができると共に、効率良く振動モータ18の振動を腕に伝えることができ、これにより振動モータ18の小型化を図ることができる。
【0038】
また、この腕時計では、弾性体17が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、発泡樹脂、ゲル状の低反発素材の弾力性を有する材料の中から選んだ1種類の材料で形成されていることにより、振動板16を裏蓋6に弾力的に連結した状態で、振動板16を裏蓋6に対して弾力的に変位させることができるので、振動板16のみを振動モータ18によって確実にかつ良好に振動させることができる。
【0039】
この場合、弾性体17は、シリコーン樹脂で形成されていることにより、弾性体17の外周部にケース本体2と裏蓋6との間の防水を図る防水リング6aを一体に形成することができるので、部品点数を削減することができると共に、裏蓋6の組み付け作業の簡素化をも図ることができ、これにより低コスト化を図ることができる。
【0040】
また、この腕時計では、弾性体17が振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁とに跨った状態で、枠状に連続して形成されているので、弾性体17によって振動板16を裏蓋6に弾力的に連結することができるほか、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の隙間Sを塞ぐことができると共に、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の防水性をも確保することができる。
【0041】
また、この弾性体17は、時計モジュール7と共に腕時計ケース1内に配置される中枠8の下端面と、裏蓋6の内面および振動板16の内面と、の間に挟まれているので、これによっても振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の隙間Sを確実に塞ぐことができると共に、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の防水をも確実にかつ良好に図ることができる。
【0042】
この場合、中枠8の下端部は、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との両方に跨って配置されていることにより、振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれるのを阻止する位置規制部としての機能を果たすことができる。すなわち、振動板16が腕時計ケース1内に向けて押し込まれると、振動板16の外周縁が中枠8の下端部に当接するので、振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれて時計モジュール7が破損するのを防ぐことができる。
【0043】
また、振動板16は、その厚みが裏蓋6の厚みと同じか、それよりも少し薄く形成されていることにより、腕時計ケース1を腕に取り付けて使用する際に、振動板16の外周縁に衣服の袖口などが引っ掛からないようにすることができ、これにより衣服の袖口が、ほつれたり、ほころんだりするのを防ぐことができるので、良好に腕に取り付けて使用することができる。
【0044】
さらに、振動板16と裏蓋6の開口部15とは、その各一部が裏蓋6の一方の取付部20に食い込むことにより、それぞれ非円形状に形成されているので、振動板16が裏蓋6の開口部15内に配置された状態で、振動板16が裏蓋6の開口部15内において、その面方向に回転するのを防ぐことができる。これにより、振動板16に搭載された振動モータ18が腕時計ケース1内で位置ずれするのを防ぐことができ、振動モータ18を所定位置に確実に位置規制することができる。
【0045】
なお、上述した第1実施形態では、振動板16と裏蓋6の開口部15とを非円形状に形成して、振動板16が裏蓋6の開口部15内においてその面方向に回転しないように構成した場合について述べたが、これに限らず、振動板16と裏蓋6の開口部15とを楕円形状、または四角形、五角形などの多角形状に形成しても良い。
【0046】
また、これに限らず、例えば図5に示す第1変形例のように、回転止め部27を備えていれば、振動板16と裏蓋6の開口部15とを円形状に形成しても良い。すなわち、この回転止め部27は、振動板16の外周面に設けられた凹部27aと、開口部15の内周面に設けられた凸部27bと、を備え、開口部15の凸部27bを振動板16の凹部27aに係合させることにより、振動板16が裏蓋6の開口部15内においてその面方向に回転しないように構成されていれば良い。
【0047】
また、上述した第1実施形態では、腕時計ケース1内に配置された中枠8によって、振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれるのを防ぐように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えば図6に示す第2変形例のように、振動板16と裏蓋6の開口部15とに振動板16の腕時計ケース1内への押し込みを防ぐ位置規制部28を設けた構成であっても良い。
【0048】
すなわち、この位置規制部28は、裏蓋6の開口部15の内周面における上部から振動板16の外周面の上部に向けて突出した位置規制突起部28aと、振動板16の外周面の上部に設けられた位置規制凹部28bとを有し、裏蓋6の位置規制突起部28aに振動板16の位置規制凹部28bが接離可能に当接するように構成されていれば良い。
【0049】
さらに、上述した第1実施形態では、弾性体17が時計モジュール7の中枠8と裏蓋6および振動板16との間に配置されている場合について述べたが、これに限らず、弾性体17の一部を時計モジュール7と振動板16との間に延長させ、この延長した部分を時計モジュール7と振動板16との間の緩衝部として形成した構成であっても良い。
【0050】
また、上述した第1実施形態では、振動モータ18の回路部18cと時計モジュール7の回路基板とを端子板25によって電気的に接続した場合について述べたが、これに限らず、コイルばね、フレキシブル配線基板などの接続部材によって、振動モータ18の回路部18cと時計モジュール7の回路基板とを電気的に接続するように構成しても良い。
【0051】
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、この発明を指針式の腕時計に適用した第2実施形態について説明する。なお、図1図4に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、図7に示すように、裏蓋6と振動板16とを弾力的に連結する弾性体30が第1実施形態と異なる構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。従って、図5に示す第1変形例の構成、及び、図6に示す第2変形例の構成は、第2実施形態においても有効である。
【0052】
すなわち、この弾性体30は、図7に示すように、裏蓋6の開口部15の内周縁と振動板16の外周縁との間の隙間に配置され、この状態で上端部30aが振動板16の内面に折り曲げられて接着され、下端部30bが裏蓋6の外面に折り曲げられて接着されている。この場合、弾性体30は、裏蓋6の開口部15の内周縁と振動板16の外周縁との間の隙間に連続して配置されている。
【0053】
また、この弾性体30は、その上端部30aが振動板16の外周縁に沿って連続した状態で、振動板16の内面に枠状に固定されている。また、弾性体30は、その下端部30bが裏蓋6の開口部15の内周縁に沿って連続した状態で、裏蓋6の外面に枠状に固定されている。これにより、弾性体30は、振動板16を裏蓋6に弾力的に連結するように構成されている。
【0054】
また、この弾性体30は、第1実施形態と同様、弾力性を有するシートであり、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、発泡樹脂、ゲル状の低反発素材のいずれかの材料で形成されているが、好ましくはシリコーン樹脂で形成されていることが望ましい。このため、この弾性体30は、図7に示すように、振動板16を裏蓋6に弾力的に連結した状態で、振動板16が裏蓋6に対して弾力的に変位するように構成されている。
【0055】
この場合、腕時計ケース1内の時計モジュール7と振動板16との間には、図7に示すように、緩衝シート31が配置されている。この緩衝シート31は、振動板16がその下側から腕時計ケース1内に向けて押された際に、振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制するように構成されている。
【0056】
また、この緩衝シート31は、図7に示すように、振動板16が時計モジュール7の下部ハウジング11に接触して、時計モジュール7が振動板16の振動によって振動しないように構成されている。また、腕時計ケース1の下面、つまりケース本体2の下面と裏蓋6の内面との間には、防水リング部6aが単独で設けられている。
【0057】
このような腕時計によれば、第1実施形態と同様、振動モータ18で発生した振動によって振動板16のみを振動させることができ、この振動板16によって振動を腕に確実に伝えることができる。このため、振動モータ18で裏蓋6や腕時計ケース1の一部または全部を振動させる必要がないので、少ない消費電力で振動モータ18を振動させることができると共に、効率良く振動モータ18の振動を腕に伝えることができ、これにより振動モータ18の小型化を図ることができる。
【0058】
この場合、弾性体30は、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の隙間に枠状に連続して配置されているので、弾性体30によって振動板16を裏蓋6に弾力的に連結することができるほか、振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の隙間Sを確実に塞ぐことができ、これにより振動板16の外周縁と裏蓋6の開口部15の内周縁との間の防水性をも確保することができる。
【0059】
また、この弾性体30は、その上端部30aが振動板16の外周縁に沿って連続した状態で、振動板16の内面に枠状に固定され、下端部30bが裏蓋6の開口部15の内周縁に沿って連続した状態で、裏蓋6の外面に枠状に固定された構成であるから、弾性体30によって振動板16と裏蓋6とを確実にかつ良好に連結することができるほか、振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれるのを抑制することができる。
【0060】
さらに、腕時計ケース1内の時計モジュール7と振動板16との間には、緩衝シート31が配置されていることにより、振動板16がその下側から腕時計ケース1内に向けて押された際に、緩衝シート31によって振動板16が腕時計ケース1内に押し込まれないように位置規制することができる。また、この緩衝シート31は、振動板16が時計モジュール7の下部ハウジング11に接触して、時計モジュール7が振動板16の振動によって振動するのを防ぐことができる。
【0061】
なお、上述した第1、第2の各実施形態では、振動モータ18が振動板16の片側に偏って設けられている場合について述べたが、これに限らず、振動モータ18を振動板16の中央に設けた構成であっても良い。
【0062】
また、上述した第1、第2の各実施形態では、振動素子として振動モータ18を用いた場合について述べたが、必ずしも振動モータ18である必要はなく、例えば圧電素子などの振動素子を用いても良い。
【0063】
さらに、上述した第1、第2の各実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えば携帯電話機、携帯情報端末機などの電子機器に広く適用することができる。この場合には、ケースの一部に開口部を形成し、この開口部内に振動板16を配置し、この状態で振動板16とケースとを弾性体17で弾力的に連結するように構成すれば良い。
【0064】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0065】
(付記)
請求項1に記載の発明は、開口部が形成されたケースと、前記ケースの前記開口部に配置された振動板と、前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、前記ケース内に位置する前記振動板の内面に固定されて振動を発生する振動素子と、を備えていることを特徴とする電子機器である。
【0066】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子機器において、前記弾性体は、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、発泡樹脂、ゲル状の低反発素材の弾力性を有する材料の中から選んだ少なくとも何れかの材料で形成されていることを特徴とする電子機器である。
【0067】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子機器において、前記弾性体は、前記振動板の外周縁と前記ケースの前記開口部の内周縁とに跨った状態で、枠状に連続して形成されていることを特徴とする電子機器である。
【0068】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子機器において、前記弾性体は、前記ケースの前記開口部の内周縁と前記振動板の外周縁との間の隙間に配置されると共に、上端部が振動板の内面に折り曲げられて接着され、下端部が前記ケースの外面に折り曲げられて接着されていることを特徴とする電子機器である。
【0069】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子機器において、前記振動板が前記ケース内に押し込まれるのを阻止する位置規制部を備えていることを特徴とする電子機器である。
【0070】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子機器において、前記振動板と前記ケースの前記開口部とは非円形状に形成されていることを特徴とする電子機器である。
【0071】
請求項7に記載の発明は、腕時計ケースと、前記腕時計ケースの裏面に取り付けられ、かつ開口部が形成された裏蓋と、前記裏蓋の前記開口部に配置されて人体に接触する振動板と、前記振動板の外周縁と前記裏蓋の前記開口部の内周縁とを連結する弾性体と、前記腕時計ケース内に位置する前記振動板の内面に固定されて振動を発生する振動素子と、を備えていることを特徴とする腕時計である。
【符号の説明】
【0072】
1 腕時計ケース
6 裏蓋
7 時計モジュール
8 中枠
14 振動発生装置
15 開口部
16 振動板
17、30 弾性体
18 振動モータ
21 モータ保持部
23 押え金具
27 回転止め部
28 位置規制部
31 緩衝シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7