(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されるような吐水装置において、装置全体をコンパクトにし、又はデザインを良くするには、流入口を多数設けることは好ましくない。例えば、シャワー吐水と整流吐水のための流入口を、それぞれ設けるとなると、吐水口の位置に合わせて、シャワー吐水用の流入口を外周側に、整流吐水用の流入口を中央部分に配置することとなり、流入口の数が多くなる。そこで、シャワー吐水と整流吐水の流入口を共用することで、流入口の数を増やすことなくコンパクトかつデザインの優れた吐水装置を提供できる。
【0008】
しかしながら、流入口を共用する場合、流入口を設ける位置によっては、シャワー吐水用の流速が低下と、それに伴うシャワー吐水における気泡混入量の低下が懸念される。すなわち、シャワー吐水は、整流吐水のように一箇所から多くの流量を吐出するのと異なり、小さい吐水口に少量の水を分岐させて吐出させるため、流路抵抗による流速の低下が懸念される。そして、特許文献2で示されるように気液界面に水を突入させて気液混入水を生成する技術を採用する場合には、水が気液界面に突入する前における流速の低下が気泡混入量の低下に繋がる。そこで、シャワー吐水における水の流速の低下を防ぐため、流入口をシャワー吐水口と同一外周上(装置の外周側)に配置することが望ましい。
【0009】
ところが、このように流入口を装置外周側に配置すると、中央に設けられた整流吐水口へは流入口からの距離が遠くなってしまう。そのため、今度は、流入口から整流吐水口に至る水の流速が、整流吐水口上の気液界面に突入するまでに低下し、その結果、整流吐水における気泡混入量が低下してしまう懸念がある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シャワー吐水と整流吐水との流入口を共用にした場合でも、装置内における流速の低下を防止し、気泡混入量を低下させることなく気泡混入水を吐出させることが可能な吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る吐水装置は、一時的に貯留される水と空気との気液界面に水を突入させることで気泡混入水を生成し吐出する吐水装置であって、水を給水元から流入させる流入口と、気泡混入水を単一のまとまった水流として吐出する整流吐水口と、前記整流吐水口の外周に配置され、気泡混入水をシャワー状に吐出するシャワー吐水口と、前記流入口から前記整流吐水口に至る整流流路と、前記流入口から前記シャワー吐水口に至るシャワー流路と、を備える。そして、前記流入口は、前記シャワー吐水口の位置に合わせて外周に沿って配置され、前記整流流路に水を流し当該水に前記シャワー流路からの空気を混入させる第1状態と、前記シャワー流路に水を流し当該水に前記整流流路からの空気を混入させる第2状態とが切り替え可能であり、前記整流流路には、前記流入口から前記整流吐水口に向かって導く流路壁が形成され、前記第1状態において、前記流入口から前記整流吐水口に向かう水が、前記気液界面に突入するまでの間に、水の流速が低下することを抑制する流速低下抑制手段を備える。
【0012】
このような本発明によれば、流速低下抑制手段により、整流吐水において水の流速が低下する前に気液界面に水を衝突させることができる。シャワー吐水の流速の低下を防ぎ、気泡混入量を十分に確保するため、流入口をシャワー吐水口と同一外周上に配置したことで、流入口から整流吐水口までの距離が長くなる。このように流入口から整流吐水口までの距離が長いことにより、流速の低下が懸念される。しかしながら、流速低下抑制手段により、整流吐水において水の流速が低下する前に気液界面に水を衝突させることで整流吐水における気泡混入量の低下を抑制することができる。これにより、シャワー吐水と整流吐水のいずれにおいても気泡混入量を低下させることなく気泡混入水を吐出させることができる。
【0013】
本発明に係る吐水装置では、前記流速低下抑制手段は、前記気液界面を上昇させるものであることも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、流速低下抑制手段により気液界面を上昇させることで、流入口から流れる水が気液界面に突入するまでの距離を短くすることができる。したがって、流下する水の流速を低下させることなく、水を気液界面に突入させることができるので、気泡混入量の低下を抑制できる。
【0015】
本発明に係る吐水装置では、前記流速低下抑制手段は、前記整流吐水口の上流側の前記流路壁の流路断面積を前記整流吐水口の断面積よりも小さくしたくびれ部を備え、前記くびれ部から前記整流吐水口に向ってテーパ状に拡大するよう構成されることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、流路壁の流路断面積を整流吐水口の断面積よりも小さくしたくびれ部を設けることで、整流流路の容積を小さくし、気液界面の上昇を図った。ここで、気液界面を上昇させる方法として、整流網など整流吐水口の圧損を大きくして水が溜まりやすくすることも考えられる。しかし、整流吐水口の圧損を高くし、さらに、所定の流速で吐水させようとした場合、第1状態である整流吐水から第2の状態であるシャワー吐水に切り替えた場合に、シャワー吐水の流速が高くなり過ぎてしまう。そこで、整流吐水口の圧損を変えることなく気液界面を上昇させることを可能にしたものである。特に、この態様では、整流吐水口の断面積を小さくすることなく、気液界面を上昇させて流入口からの水流の流速の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シャワー吐水と整流吐水との流入口を共用にした場合でも、装置内における流速の低下を防止し、気泡混入量を低下させることなく気泡混入水を吐出させることが可能な吐水装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の第1実施形態である吐水口キャップ(吐水装置)1の概略について
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、吐水口キャップ1が水栓装置FCの構成要素として洗面化粧台Sに用いられた例を示す斜視図である。
図2は、吐水口キャップ1の断面図であり、
図3は、吐水口キャップ1の流入口とシャワー吐水及び整流吐水のための流路との関係を示す模式図である。
【0021】
吐水口キャップ1は、水栓装置FCの吐水口部分に用いられる構成部品である。水栓装置FCは、一例として
図1に示すように、洗面化粧台Sの洗面器に取り付けられるものであって、ステンレス等により細長の筒状に形成され、水を溜めたり水を受けたりするためのボウル部Bに向かって吐水するためのものである。水栓装置FCは、ボウル部の周辺に取り付けられて、水の給水元である水道管と接続される。
【0022】
図1に示すように、吐水口キャップ1は、水栓装置FCに外装を覆われるようにして先端部に取り付けられ、水道管から供給された水を、複数の細い水流からなるシャワー吐水と、単一のまとまった水流とする整流吐水として吐出させるように構成される。このシャワー吐水及び整流吐水は、いずれも外部から空気が吸入され、泡沫状にされた空気が混入されることにより、気泡混入水を吐出する。また、吐水口キャップ1は、先端部を回転させることにより、シャワー吐水と整流吐水とを切り替えることができるように構成されている。
【0023】
続いて
図2及び
図3を用いて、吐水口キャップ1の具体的な構成について説明する。
図2(a)は、
図3(a)に示すA−A断面図であり、
図2(b)は、
図3(c)におけるB−B断面図である。
【0024】
吐水口キャップ1は、全体が円筒形状で、第1筒部10と第2筒部20とから構成される。第1筒部10に対して第2筒部20を回転させることにより、上述したようにシャワー吐水と整流吐水とを切り替え可能に構成される。
【0025】
ここで、
図2(a)及び
図3(a)に示す状態が、整流流路に水を流し、この水にシャワー流路からの空気を混入させる第1状態(以下、「整流状態」という。)であり、
図2(b)及び
図3(c)に示す状態が、シャワー流路に水を流し、この水に整流流路からの空気を混入させる第2状態(以下、「シャワー状態」という。)である。
図3は、第1筒部10を第1筒部10の底部側(
図2における第2筒部20側)から見た図であり、破線で示すのは第2筒部20で、これは第2筒部20の位置を第1筒部10に投影させて示したものである。また、説明の便宜上、
図3では、第2筒部20を動かさず、第1筒部10を回転させた様子を示しているが、第1筒部10に対して第2筒部20を回転させるのが一般的である。なお、上述のように、吐水口キャップ1は、外装を筒状の水栓装置FCに覆われており、
図2及び
図3は、その外装を除いた内部の構成部品を示す図である。
【0026】
第1筒部10は、
図2及び
図3に示すように、供給元である水道管から水を流入させる流入口11を、円周上に複数(ここでは等間隔に8個)備える。流入口11は、第1筒部10の外周に沿って設けられ、
図2(b)及び
図3(c)に示すシャワー状態においては、後述するシャワー流路24と連通する位置に形成される。
【0027】
第2筒部20は、気泡混入水を単一のまとまった水流として吐出する整流吐水口21と、整流吐水口21の外周に配置され気泡混入水をシャワー状に吐出するシャワー吐水口22と、を備える。また、第2筒部20は、流入口11から整流吐水口21に至る整流流路23と、流入口11からシャワー吐水口22に至るシャワー流路24と、を備える。
【0028】
整流吐水口21は、第2筒部20の中央部分に形成され、格子状を成し多数の微細な孔が形成された整流網21aが配置されている。整流吐水口21から吐出される水は、整流網21aの孔を経ることで乱れが抑制され、ボウル部B等に対する飛散が抑制された穏やかな流れとなる。また、整流網21aにより、整流吐水口21に流入する水に流路抵抗を与えることで、後述する整流流路23に吐出する水を一時的に貯留し、貯留された水と、空気との気液界面(後述)を形成する。
【0029】
シャワー吐水口22は、後述するシャワー流路24の先端に形成される複数の微小の孔からなり、シャワー流路24を流れる水をシャワー吐水として吐出する。このシャワー吐水口22も、シャワー流路24を流れる水に対して流路抵抗を与えることで、吐出される水に流速を付与するとともに、吐出する水を一時的に貯留し、貯留された水と、空気との気液界面(後述)を形成する。
【0030】
整流流路23は、外周側に形成された流入口11側から中央側に形成された整流吐水口21に向かって水を導く流路であり、整流吐水口21に向かってテーパ形状を成す流路壁23aを有する。流路壁23aは、基本的には、整流吐水口21に向かってテーパ状に形成されれば良いが、本実施形態では、整流網21aを設けた上流側を最小径のくびれ部23bを設け、くびれ部23bより下流側の径を拡げて整流吐水口21に至るよう形成されている。
【0031】
整流流路23には、流路壁23aから突出して形成され、整流流路23を円周上で複数の区画流路23dに区画するガイド部23cが設けられる。ガイド部23cは、円周上に複数個(ここでは、8個)の円筒部材を、テーパ状の流路壁23aに対して垂直方向に突き刺したようにして設けられている。したがって、ガイド部23cは、全体として、流入口11側よりも整流吐水口21側のほうが細くなるように形成される。本実施形態では、特に、ガイド部23cは、流入口11側から整流吐水口21に向かって一定の幅で形成される第1領域23c1と、第1の領域23c1よりも下流側で徐々に細くなる第2領域23c2とからなる。
【0032】
また、ガイド部23cによって区画される区画流路23dは、上記第1領域23c1と第2の領域23c2に沿って上流側は一定の幅で形成された後、下流側で徐々に拡がるようになっている。そして、区画流路23dは、くびれ部23bの上流側において一つの流路として合流するようになっている。
【0033】
このように、ガイド部23cによって区画される区画流路23dは、流入口11から整流吐水口21に向かう水の流れが、流路壁23aを蛇行して進まず、また、他の区画流路23dを流れる水と合流しないように規制するものである。ガイド部23cは、理想的には、水がテーパ状の流路壁23aの円錐中心方向に向かって直線状に進行するように規制するものであり、言い換えれば、後述する気液界面の中心軸に向かって最短距離で規制するものである。
【0034】
シャワー流路24は、外周側に形成された流入口11からシャワー吐水口22に向かって水を導く流路である。具体的には、シャワー流路24は、第2筒部20において、流路壁23aを隔てて、整流流路23の外側に配置される。シャワー流路24は、上流側が筒状の縦穴24aを円周上に複数配置するとともに、下流側には、第2筒部20の下部を円周状にドーナツ型に貫通して、一時的に水を貯留する滞留部24bを備える。
【0035】
シャワー流路24を構成する縦穴24aは、流入口11からの水が重力方向直下に流下するように、流入口11の外周上の位置に合わせて、第2筒部20の外周側に複数個(ここでは、等間隔に8個)設けられている。なお、この縦穴24aの壁面は、整流流路23内に突出することで、整流流路23内ではガイド部23cとして機能している。
【0036】
一方、シャワー流路24の他の構成要素である滞留部24bは、整流流路23の流路壁23aがテーパ状の傾斜を成す部分において、第2筒部20の内側方向に突出して容積が拡がっている。この部分は、整流流路23側に突出した状態となり、整流流路23側には、流路壁23aを隔ててくびれ部23bが形成されている。
【0037】
また、滞留部24bは、それより下流側の流路壁23aが整流網21aの設けられた整流吐水口21に向かって拡がる部分において、円環状に段部24cを有する。この段部24cは、縦穴部24aの断面と少なくとも一部が重なるように配置されている。したがって、吐水口キャップ1の第2筒部20を回転させて、整流状態からシャワー状態へ切り替えた場合に、シャワー流路24の縦穴24aから流入した水は、まず、直下に流れることで、段部24cに衝突するようになっている。なお、本実施形態では、縦穴24aから流れる水の一部が段部24cに衝突し、他の部分は段部24cに衝突しないように構成されるのが望ましい。また、本実施形態において、段部24cが、第2筒部20の一部として形成されているように、シャワー吐水口22と同一の部材で形成されるなど、段部24cとシャワー吐水口22とが固定的に形成されていることが好ましい。
【0038】
上記のような構成からなる吐水口キャップ1の作用の概略について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、第1の状態である整流状態として、整流流路23に水Wを流し、水Wにシャワー流路24からの空気Airを混入させる吐水状態を示す図である。また、同図(b)は、第2の状態であるシャワー状態として、シャワー流路24に水Wを流し、水Wに整流流路23からの空気Airを混入させる吐水状態を示す図である。
【0039】
図4(a)に示すように、整流状態においては、第1筒部10の外周上に複数形成された流入口11から水Wが供給されると、水Wは重力方向に流下し、整流流路23に流入して、流路壁23aに衝突する。水Wは、流路壁23aからはねたり、流路壁23aを伝って流下して、整流吐水口21側に導かれる。なお、この整流状態における流入口11と第2筒部20との関係は
図3(a)に示す状態である。
【0040】
このとき、シャワー吐水口22は空気導入口として機能し、シャワー流路24は空気流路として機能する。すなわち、
図4(a)に示すように、流入口11から整流流路23に向かって水が噴出されることにより、シャワー流路24には負圧が生じ、シャワー吐水口22からシャワー流路24を介して空気Airが整流流路23に向かって流入する。空気Airは、滞留部24bから縦穴24aを通って、整流流路23内に流入し、水Wの流れに巻き込まれて泡沫状にされる。
【0041】
整流吐水口21には、整流網21a上に一時的に水が滞留することにより、気液界面Iaが形成されている。この気液界面Iaに水Wが突入し、これに泡沫状にされた空気Airが混入することにより、気泡混入水Bwが生成される。気泡混入水Bwは、整流網21aを通過して整流吐水口21から順次吐出される。
【0042】
一方、
図4(b)に示すように、シャワー状態においては、第1筒部10の外周上に複数形成された流入口11から水Wが供給されると、水Wは重力方向に流下し、シャワー流路24の縦穴24aに流入して、そのまま直下の滞留部24bに導かれる。なお、この整流状態における流入口11と第2筒部20との関係は
図3(c)に示す状態である。
【0043】
このとき、整流吐水口21は空気導入口として機能し、整流流路23は空気流路として機能する。すなわち、
図4(a)に示すように、流入口11から整流流路23に向かって水が噴出されることにより、整流流路23側には負圧が生じ、整流吐水口21から整流流路23を介して空気Airが整流流路23に向かって流入する。空気Airは、整流網21aから整流流路23を通過して、シャワー流路24の縦穴24aに流入し、水Wの流れに巻き込まれて泡沫状にされる。
【0044】
シャワー流路24では、シャワー吐水口22の流路抵抗により、滞留部24bに一時的に水が滞留することにより、気液界面Ibが形成される。この気液界面Ibに水Wが突入し、これに泡沫状にされた空気Airが混入することにより、気泡混入水Bwが生成される。気泡混入水Bwは、シャワー吐水口22を通過して外部に吐出される。
【0045】
本実施形態の吐水口キャップ1では、以上のような第1の状態である整流状態と、第2の状態であるシャワー状態を、第2筒部20を第1筒部10に対して回動させることで、
図3(a)に示す状態から
図3(c)に示す状態に移行させることにより実現するものである。
【0046】
以上のような吐水口キャップ1の構成並びに概略的な作用に基づき、吐水口キャップ1が備える各手段について
図5〜
図8を参照して説明する。
【0047】
図5は、吐水口キャップ1の流速低下抑制手段について説明するための模式図である。本実施形態の流速低下抑制手段は、第1状態である整流状態において、流入口11から整流吐水口21に向かう水Wが、整流吐水口21に滞留した水によって形成される気液界面Iaに突入するまでの間に、水Wの流速が低下することを抑制する構成である。
【0048】
図5(a)に示すように、流速低下抑制手段は、気液界面Iaを上昇させる手段であり、気液界面Iaを上昇させることにより、流入口11から流下する水Wが気液界面Iaに到達するまでの距離を短くするものである。このように、水Wが流下してから気液界面Iaに到達するまでの距離を短くすることで、流下した水Wが流路壁23aに伝うなどして流速が低下することを防ぐことができる。
【0049】
より具体的には、流速低下抑制手段は、整流流路23が整流吐水口21に向かってテーパ形状を成すように、整流吐水口21に向かって整流流路23の体積を減少させることによって、気液界面Iaを上昇させる。
図5(b)は、流速低下抑制手段を備えない従来の構成を比較例として示したものである。
図5(b)では、本実施形態の整流流路23の流路壁23aに相当する構成において、テーパ形状ではなく垂直方向に形成されている。このような態様では、整流吐水口21に向かって整流流路23の体積に変更はなく、気液界面Ixの上昇は見られない。
【0050】
以上のような吐水口キャップ1の流速低下抑制手段によれば、次の効果を奏する。すなわち、シャワー吐水の流速の低下を防ぎ、気泡混入量を十分に確保するため、流入口11をシャワー吐水口22と同一外周上に配置した。これにより、流入口11から整流吐水口21までの距離が長くなった。このように流入口11から整流吐水口21までの距離が長いことにより、流速の低下が懸念されるが、流速低下抑制手段を設けたことにより、整流吐水において水の流速が低下する前に気液界面Iaに水Wを衝突させることができる。したがって、整流吐水における気泡混入量の低下を抑制することができる。これにより、シャワー吐水と整流吐水のいずれにおいても気泡混入量を低下させることなく気泡混入水を吐出させることができる。
【0051】
具体的には、流速低下抑制手段により気液界面Iaを上昇させることで、流入口11から流れる水Wが気液界面Iaに突入するまでの距離を短くすることができる。したがって、流下する水Wの流速を低下させることなく、水Wを気液界面Iaに突入させることができる。
【0052】
より具体的には、流路壁23aをテーパ形状にすることで、整流流路の容積を小さくする。これにより気液界面Iaの上昇を図る。ここで、気液界面Iaを上昇させる方法として、整流網21aなど整流吐水口21の圧損を大きくして、より水が溜まりやすくすることも考えられる。しかし、整流吐水口21の圧損を高くし、さらに、所定の流速で吐水させようとした場合、整流吐水状態からシャワー吐水状態に切り替えた場合に、シャワー吐水の流速が高くなり過ぎてしまう。本態様では、整流吐水口21の圧損を変えることなく気液界面Iaを上昇させたものである。
【0053】
また、特に流路壁23aの流路断面積を整流吐水口21の断面積よりも小さくしたくびれ部23bを設けることで、整流吐水口21側に溜まる水の容積を少なくすることができる。これにより、気液界面Iaが上昇して流入口11からの水流の流速の低下を抑制することができる。
【0054】
図6は、吐水口キャップ1の合流抑制手段について説明するための模式図である。本実施形態の合流抑制手段は、第1状態である整流状態において、流入口11から整流吐水口21に向かう水Wが、他の流入口11から整流吐水口21に向かう水と、気液界面Iaに突入するまでの間に合流することを抑制する構成である。
【0055】
図6(a)は、整流状態において、流入口11から流下する水Wが泡沫状になって流下する様子を模式的に表したものである。また、
図6(b)は、泡沫状になって流下する水Wの各位置における流れWsを矢印によって表したものである。
【0056】
これらの図に示すように、流入口11から流下する水Wは、ガイド部23cに沿って区画流路23dが規制され、ガイド部23cによって他の流入口11から流下する水Wと合流しないようになる。
【0057】
ここで、
図6(a)及び(b)に示すように、ガイド部23cの先端部は、気液界面Iaよりも上流側に位置するように構成される。これは、ガイド部23cが気液界面Iaにまで達していると、合流を抑制した状態、すなわち、噴射水の幅が狭い状態で気液界面Iaに突入することになる。これでは、流下する水の流れWsが速い場所と遅い場所が発生し、整流吐水の吐水形状が乱れてしまったり、流れWsの幅が狭いことで空気との接触面積が小さくなり気泡混入量が低下してしまったりすることがあるためである。そこで、ガイド部23cの先端部を、気液界面Iaより上流側に位置させることで、気液界面Iaに突入する水の流れWsの表面積を広くさせることができ、気泡混入量の低下を抑制できる。
【0058】
このように、
図6に示す合流抑制手段では、流入した水が気液界面に到達するまで衝突しないようにすることで、水の流速の低下を抑制することができる。これにより、整流吐水において水の流速が低下する前に気液界面に水を衝突させることができる。また、ガイド部23cが、
図6に示すように、水の流れを阻害しない滑らかな面で形成されることで、流入口11から流下した水Wが気液界面Iaに向う途中で乱れることを抑制し、乱れることによる流速の低下を抑制することができる。
【0059】
また、ガイド部23cは、流入口11側から整流吐水口21に向かって一定の幅で形成される第1領域23c1と、第1の領域23c1よりも下流側で徐々に細くなる第2領域23c2とからなる。これにより、流入口11から流下した水Wが、上流側の第1領域23c1では、流速が低下せず、下流側の第2領域23c2では、気液界面に突入する水の表面積を大きくすることができる。したがって、気液界面Iaに突入する水Wに十分な気泡を混入させることができる。
【0060】
図7は、吐水口キャップ1の水抜き手段について説明するための模式図である。本実施形態の水抜き手段は、第1状態である整流状態から第2状態であるシャワー状態に切り替えた際に、第1状態において整流吐水口21の整流網21aに滞留した水の水抜きを行う構成である。
【0061】
より具体的には、水抜き手段は、シャワー流路24に形成され、整流状態からシャワー状態に切り替えた際に、シャワー流路24に流れる水Wがシャワー流路24の壁面、すなわち、段部24cに衝突することで、一時的に水が貯留する整流吐水口21に振動を発生させるものである。
【0062】
図7(a)は、整流状態からシャワー状態で切替え、シャワー流路24に水Wが投入されてすぐの状態を示す図である。上述の通り、シャワー流路24において、段部24cは縦穴部24aの断面と少なくとも一部が重なるように配置されている。したがって、整流状態からシャワー状態へ切り替えた場合に、シャワー流路24の縦穴24aから流入した水は、まず、直下に流れることで、段部24cに衝突する。この衝撃が、段部24cと一体に形成された整流吐水口21に伝わることで、整流吐水口21が振動する。これにより、
図7(a)に示すように、整流状態からシャワー状態への切替時に整流網21aに残った残水Wrが滴下し、
図7(b)に示すように、切り替えた初期状態から整流吐水口21を空気取入口として機能させることができるようになる。
【0063】
また、
図7(b)に示すように、本態様において、段部24cは、シャワー状態においてシャワー流路24に水が一時的に貯留した場合に形成される気液界面Ibよりも下流側に形成されている。これは、段部24cが気液界面Ibよりも上流側に設けると、流入口11からの水Wが、気液界面Ibに突入する前に段部24cに衝突することで流速が低下してしまう。このように、水Wが減速した状態で気液界面Ibに突入すると、気泡混入量が低下することが懸念される。
【0064】
以上のような
図7に示す態様では、整流吐水口21は、整流網21aを設けて一定期間水が溜まり易い構造にしており、整流状態からシャワー状態に切替えた初期状態においては、整流吐水口21に水が溜まった状態になる。したがって、シャワー状態に切り替えた際は、整流流路23を空気流路として利用できない。そこで、整流状態からシャワー状態への切り替え時に、この整流吐水口21に滞留した水の水抜きを行う水抜き手段を設けることで、整流状態からシャワー状態に切替えた直後から、整流流路23を空気流路として機能させることができる。これにより、整流吐水からシャワー吐水への切替初期段階からシャワー吐水において気泡混入水を吐水することができる。
【0065】
シャワー流路24において、段部24cは縦穴部24aの断面と少なくとも一部が重なるように配置されている。したがって、流入口11から流下した水の全部がシャワー流路24の段部24cに衝突してシャワー吐水口22近傍の圧力が低下してしまうということがない。したがって、シャワー吐水口22から吐出される流速の低下を抑制しつつ、整流吐水口に震動を与えることで整流吐水口に溜まった水を排出することができる。
【0066】
また、段部24cと整流吐水口21とは一体的に形成することで、段部24cで発生した震動を、整流吐水口21に対してダイレクトに伝えることができる。これにより、より確実に整流吐水口21に溜まった水を排出することができる。
【0067】
図8は、吐水口キャップ1の水抜き手段の変形例として示すものである。すなわち、本態様では、第2筒部30が、弾性部材24dを介して接続されている。第1状態である整流状態から第2状態であるシャワー状態へ切り替えた際に、段部24cに流入口11から流下した水Wが衝突することにより発生した振動を、整流吐水口に対して減衰させることなく伝えることができるので、より効率よく整流吐水口に溜まった水を排出することができる。
【0068】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。