(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体と該支持体の表面に担持されかつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるオゾン分解除去用触媒と、請求項1に記載の劣化診断装置とを備えることを特徴とする大気浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、オゾンセンサーを使用せずに、オゾン浄化率を求めることができ、このオゾン浄化率に基づいてオゾン分解除去用触媒の劣化状態を診断することが可能なオゾン分解除去用触媒の劣化診断装置、それを備える大気浄化装置、及びオゾン分解除去用触媒の劣化診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オゾン分解除去用触媒を構成する金属膜の電気抵抗、触媒温度及び触媒を通過する風速が、互いに相関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のオゾン分解除去用触媒の劣化診断装置は、オゾン分解除去用触媒の
劣化を診断するための劣化診断装置であって、
前記オゾン分解除去用触媒が支持体と該支持体の表面に担持されかつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるものであり、
前記劣化診断装置が、
前記触媒の金属膜の電気抵抗を測定する手段と、
前記触媒の温度を測定する手段と、
前記触媒を通過する風速を測定する手段と、
下記式(1):
R=f
1(T) (1)
(式中、Rは触媒の抵抗値(単位:Ω)を表し、Tは触媒の温度(単位:℃)を表す)
で表される、初期状態の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を用い、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、前記金属膜の電気抵抗の測定値を触媒の基準温度T
0(単位:℃)における金属膜の電気抵抗値R
0(単位:Ω)に補正し、
下記式(2):
C
ST=f
2(R
ST) (2)
(式中、C
STは触媒の基準温度T
0及び触媒を通過する基準風速Sw
0(単位:m/s)におけるオゾン浄化率(単位:%)を表し、R
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0における触媒の抵抗値(単位:Ω)を表す)
で表される、前記基準温度及び前記基準風速における触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記補正した電気抵抗値R
0に対応する前記基準温度及び前記基準風速におけるオゾン浄化率C
0を算出し、
下記式(3):
C
T/C
ST=f
3(T) (3)
(式中、Tは触媒の温度(単位:℃)を表し、C
Tは前記触媒温度T及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表し、C
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準風速における初期状態の触媒についての温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線、並びに下記式(4):
C
Sw/C
ST=f
4(Sw) (4)
(式中、Swは触媒を通過する風速(単位:m/s)を表し、C
Swは前記基準温度T
0及び前記風速Swにおけるオゾン浄化率を表し、C
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準温度における初期状態の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記オゾン浄化率C
0を前記触媒の温度の測定値及び前記触媒を通過する風速の測定値に対応するオゾン浄化率C
Swに補正し、
該オゾン浄化率C
Swを用いて、下記式(5):
大気浄化クレジット値=K×オゾン浄化率×触媒を通過する風量 (5)
により、大気浄化クレジット値を算出し、
該大気浄化クレジット値に基づいて前記触媒の劣化を診断する手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の大気浄化装置は、支持体と該支持体の表面に担持されかつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるオゾン分解除去用触媒と、前記本発明の劣化診断装置とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明のオゾン分解除去用触媒の劣化診断方法は、前記オゾン分解除去用触媒の劣化を診断する方法であって、
前記触媒の金属膜の電気抵抗、前記触媒の温度及び前記触媒を通過する風速を測定し、
前記式(1)で表される、初期状態の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を用い、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、前記金属膜の電気抵抗の測定値を触媒の基準温度T
0(単位:℃)における金属膜の電気抵抗値R
0(単位:Ω)に補正し、
前記式(2)で表される、前記基準温度及び前記基準風速における触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記補正した電気抵抗値R
0に対応する前記基準温度及び前記基準風速におけるオゾン浄化率C
0を算出し、
前記式(3)で表される、前記基準風速における初期状態の触媒についての温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線、並びに前記式(4)で表される、前記基準温度における初期状態の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記オゾン浄化率C
0を前記触媒の温度の測定値及び前記触媒を通過する風速の測定値に対応するオゾン浄化率C
Swに補正し、
該オゾン浄化率C
Swを用いて、前記式(5)により、大気浄化クレジット値(単位:mg/マイル)を算出し、
該大気浄化クレジット値に基づいて前記触媒の劣化を診断することを特徴とする方法である。
【0011】
なお、触媒を構成する金属膜の電気抵抗を測定することによってオゾン浄化率を求めることができる理由は以下のように推察される。すなわち、本発明にかかるオゾン分解除去用触媒を用いたオゾン分解メカニズムは、
図1に示すように、金属膜2及び3において発生した電子によってオゾンが酸素に還元されることによって進行する。前記オゾン分解除去用触媒は、使用とともに金属膜の表面が酸化され劣化する。劣化した触媒においては、電子の発生量が少なくなり、オゾン除去性能が低下するとともに、金属膜の電気抵抗が大きくなる。したがって、予め、金属膜の電気抵抗とオゾン浄化率との関係を求めておくことによって、実走行条件において金属膜の電気抵抗を測定することによって、実走行条件でのオゾン浄化率を求めることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オゾンセンサーを使用せずに、実走行条件におけるオゾン浄化率を求めることができ、このオゾン浄化率に基づいてオゾン分解除去用触媒の劣化状態を診断することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明のオゾン分解除去用触媒の劣化診断装置は、支持体と、該支持体の表面に担持され、かつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるオゾン分解除去用触媒の劣化診断装置であって、
前記触媒の金属膜の電気抵抗を測定する手段と、
前記触媒の温度を測定する手段と、
前記触媒を通過する風速を測定する手段と、
下記式(1):
R=f
1(T) (1)
(式中、Rは触媒の抵抗値(単位:Ω)を表し、Tは触媒の温度(単位:℃)を表す)
で表される、初期状態の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を用い、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、前記金属膜の電気抵抗の測定値を触媒の基準温度T
0(単位:℃)における金属膜の電気抵抗値R
0(単位:Ω)に補正し、
下記式(2):
C
ST=f
2(R
ST) (2)
(式中、C
STは触媒の基準温度T
0及び触媒を通過する基準風速Sw
0(単位:m/s)におけるオゾン浄化率(単位:%)を表し、R
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0における触媒の抵抗値(単位:Ω)を表す)
で表される、前記基準温度及び前記基準風速における触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記補正した電気抵抗値R
0に対応する前記基準温度及び前記基準風速におけるオゾン浄化率C
0を算出し、
下記式(3):
C
T/C
ST=f
3(T) (3)
(式中、Tは触媒の温度(単位:℃)を表し、C
Tは前記触媒温度T及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表し、C
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準風速における初期状態の触媒についての温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線、並びに下記式(4):
C
Sw/C
ST=f
4(Sw) (4)
(式中、Swは触媒を通過する風速(単位:m/s)を表し、C
Swは前記基準温度T
0及び前記風速Swにおけるオゾン浄化率を表し、C
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準温度における初期状態の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記オゾン浄化率C
0を前記触媒の温度の測定値及び前記触媒を通過する風速の測定値に対応するオゾン浄化率C
Swに補正し、
該オゾン浄化率C
Swを用いて、下記式(5):
大気浄化クレジット値=K×オゾン浄化率×触媒を通過する風量 (5)
により、大気浄化クレジット値を算出し、
該大気浄化クレジット値に基づいて前記触媒の劣化を診断する手段と、
を備えるものである。
【0015】
また、本発明の大気浄化装置は、支持体と該支持体の表面に担持されかつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるオゾン分解除去用触媒と、前記本発明の劣化診断装置とを備えるものである。
【0016】
さらに、本発明のオゾン分解除去用触媒の劣化診断方法は、前記オゾン分解除去用触媒の劣化を診断する方法であって、
前記触媒の金属膜の電気抵抗、前記触媒の温度及び前記触媒を通過する風速を測定し、
前記式(1)で表される、初期状態の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を用い、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、前記金属膜の電気抵抗の測定値を触媒の基準温度T
0(単位:℃)における金属膜の電気抵抗値R
0(単位:Ω)に補正し、
前記式(2)で表される、前記基準温度及び前記基準風速における触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記補正した電気抵抗値R
0に対応する前記基準温度及び前記基準風速におけるオゾン浄化率C
0を算出し、
前記式(3)で表される、前記基準風速における初期状態の触媒についての温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線、並びに前記式(4)で表される、前記基準温度における初期状態の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を用いて、前記オゾン浄化率C
0を前記触媒の温度の測定値及び前記触媒を通過する風速の測定値に対応するオゾン浄化率C
Swに補正し、
該オゾン浄化率C
Swを用いて、前記式(5)により、大気浄化クレジット値(単位:mg/マイル)を算出し、
該大気浄化クレジット値に基づいて前記触媒の劣化を診断する方法である。
【0017】
(オゾン分解除去用触媒)
先ず、本発明にかかるオゾン分解除去用触媒について説明する。本発明によって劣化を診断することが可能なオゾン分解除去用触媒は、支持体と、この支持体の表面に担持され、かつ前記支持体と絶縁されている金属膜とを備えるものである。
【0018】
前記支持体は、有機材料および/または無機材料からなる担体であり、その形状は特に制限されないが、フォーム状、モノリス状、ハニカム状またはコルゲート状などの通気性を有する形状であることが好ましい。前記有機材料および無機材料からなる担体は特に限定されず、従来公知のオゾン分解除去用触媒に用いられる担体が挙げられ、より具体的には、ウレタンフォーム、セラミックフォーム、セラミックハニカム担体などが挙げられる。また、本発明においては、支持体として自動車のラジエータ、エバポレータ、ヒータコアなどのアルミニウム製熱交換器を用いることも可能である。
【0019】
このような支持体は、表面に担持される金属膜と電気的に絶縁されるものであれば、その全体が絶縁体であってもよいし、表面が絶縁性材料でコーティングされているものであってもよい。また、表面が絶縁性材料でコーティングされている支持体においては、その全表面が絶縁性材料でコーティングされている必要はなく、少なくとも金属膜が担持される表面が絶縁性材料でコーティングされていればよい。
【0020】
前記金属膜としては、オゾン分解除去用触媒として用いられる金属、該金属の合金又は該金属と他の金属との合金(以下、これらを「第一の触媒成分」という)により形成されているものであれば特に制限はないが、電解メッキ又は無電解メッキによりによりコーティングでき、大気中で安定であるという観点から、Zn、Sn、Cu、Cr、Fe、Co、Ni、Cd、W、Ag、In、Ru、Rh、Pd、Au、Ir、Os、Ptからなる群から選択される少なくとも1種の金属、該金属の合金及び該金属と他の金属との合金が好ましく、Zn、Sn、Cu、Cr、Fe、Co、Ni、Ag、Au、Ptからなる群から選択される少なくとも1種の金属、該金属の合金及び該金属と他の金属との合金がより好ましく、無電解メッキによりによりコーティングできるという観点から、Coが特に好ましい。前記他の金属としては、Pb、Mo等が挙げられる。
【0021】
また、前記金属膜においては、前記第一の触媒成分との標準電極電位の差の絶対値が0.3V以上(好ましくは0.4V以上)である金属、該金属の合金又は該金属と他の金属との合金(以下、これらを「第二の触媒成分」という)が、前記第一の触媒成分の表面に担持されていることが好ましい。これにより、低オゾン濃度かつ高湿度の雰囲気下においても効率よくオゾンを分解除去することが可能となる。また、このような第二の触媒成分は、無電解メッキにより前記第一の触媒成分の表面に担持させることが可能である。前記第二の触媒成分としては、Cu、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Ru、Osからなる群から選択される少なくとも1種の金属、該金属の合金及び該金属と他の金属との合金が好ましく、低オゾン濃度かつ高湿度の雰囲気下におけるオゾン分解除去性能が更に向上するという観点から、Ag、Pt、Pd、Au、Ruからなる群から選択される少なくとも1種の金属、該金属の合金及び該金属と他の金属との合金がより好ましく、Agが特に好ましい。前記他の金属としては、Co、Ni、Fe、Sn、Zn、Cd、W、Mo等が挙げられる。
【0022】
(検量線の作成方法)
次に、本発明において用いられる各種検量線の作成方法について説明する。すなわち、初期状態(新品)の触媒を所定の温度に加熱して金属膜の抵抗値を測定する。この金属膜の抵抗値を複数の温度において測定し、下記式(1):
R=f
1(T) (1)
(式中、Rは触媒の抵抗値(単位:Ω)を表し、Tは触媒の温度(単位:℃)を表す)
で表される、初期状態(新品)の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を作成する。
【0023】
前記式(1)は、触媒毎に決定されるものであり、特に制限はないが、通常、触媒の温度と抵抗値は比例関係にあることが多く、下記式(1a):
R=a
1×T+b
1 (1a)
(式中、Rは触媒の抵抗値(単位:Ω)を表し、Tは触媒の温度(単位:℃)を表し、a
1及びb
1は触媒毎に決定される定数である)
で表されることが多い。
【0024】
また、触媒の基準温度T
0(単位:℃)及び触媒を通過する基準風速Sw
0(単位:m/s)を設定し、この基準温度T
0(単位:℃)及び基準風速Sw
0(単位:m/s)において、初期状態(新品)の触媒の抵抗値とオゾン浄化率を測定する。次に、この触媒に対して劣化処理を施し、劣化した触媒の抵抗値とオゾン浄化率を前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0において測定する。この操作を複数回繰り返して、複数の触媒の抵抗値とオゾン浄化率とを測定し、下記式(2):
C
ST=f
2(R
ST) (2)
(式中、C
STは触媒の基準温度T
0及び触媒を通過する基準風速Sw
0(単位:m/s)におけるオゾン浄化率(単位:%)を表し、R
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0における触媒の抵抗値(単位:Ω)を表す)
で表される、前記基準温度及び前記基準風速における触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を作成する。
【0025】
前記式(2)は、触媒毎に決定されるものであり、特に制限はないが、通常、下記式(2a):
C
ST=−a
2×R
ST+b
2 (2a)
(式中、C
STは触媒の基準温度T
0及び触媒を通過する基準風速Sw
0(単位:m/s)におけるオゾン浄化率(単位:%)を表し、R
STは前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0における触媒の抵抗値(単位:Ω)を表し、a
2及びb
2は触媒毎に決定される定数である)
で表されることが多い。
【0026】
さらに、前記基準風速Sw
0の条件下、種々の触媒の温度において、初期状態(新品)の触媒のオゾン浄化率を測定し、下記式(3):
C
T/C
T0=f
3(T) (3)
(式中、Tは触媒の温度(単位:℃)を表し、C
Tは前記触媒温度Tにおけるオゾン浄化率を表し、C
T0は前記基準温度T
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準風速における初期状態の触媒についての温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線を作成する。
【0027】
前記式(3)は、触媒毎に決定されるものであり、特に制限はないが、通常、下記式(3a):
C
T/C
T0=a
3×T+b
3 (3a)
(式中、Tは触媒の温度(単位:℃)を表し、C
Tは前記触媒温度Tにおけるオゾン浄化率を表し、C
T0は前記基準温度T
0におけるオゾン浄化率を表し、a
3及びb
3は触媒毎に決定される定数である)
で表されることが多い。
【0028】
また、前記基準温度T
0の条件下、種々の触媒通過風速において、初期状態(新品)の触媒のオゾン浄化率を測定し、下記式(4):
C
Sw/C
Sw0=f
4(Sw) (4)
(式中、Swは触媒を通過する風速(単位:m/s)を表し、C
Swは前記風速Swにおけるオゾン浄化率を表し、C
Sw0は前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表す)
で表される、前記基準温度における初期状態の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を作成する。
【0029】
前記式(4)は、触媒毎に決定されるものであり、特に制限はないが、通常、下記式(4a):
C
Sw/C
Sw0=−a
4×ln(Sw)+b
4 (4a)
(式中、Swは触媒を通過する風速(単位:m/s)を表し、C
Swは前記風速Swにおけるオゾン浄化率を表し、C
Sw0は前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率を表し、a
4及びb
4は触媒毎に決定される定数である)
で表されることが多い。
【0030】
(触媒の劣化診断装置及び劣化診断方法)
次に、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
図2は、本発明のオゾン分解除去用触媒の劣化診断装置を備える本発明の大気浄化装置の一実施形態を示す模式図である。
図2に示すように、本発明の大気浄化装置は、表面に触媒を備える支持体(触媒部分は明示なし)11、OBDセンサー等の電気抵抗測定手段12、温度センサー等の温度測定手段13、車速(風速)計等の触媒を通過する風速を測定する手段(通過風速測定手段)14、電子制御ユニット(ECU)15、バッテリー16、電圧計17を備えるものである。
【0032】
前記電気抵抗測定手段には、前記支持体に担持されている触媒と同一の金属膜を備える触媒が装着されており、この金属膜には定電流印加用及び電圧検出用の配線が接続されており、バッテリーから定電流を印加して電圧計により電圧を測定することによって金属膜の電気抵抗値を測定することができる。また、本発明においては、金属膜に定電圧を印加して金属膜に流れた電流を測定して金属膜の電気抵抗値を測定してもよい。
【0033】
本発明において、前記電気抵抗測定手段及び前記温度測定手段は、前記支持体の任意の位置に装着することができる。また、前記電気抵抗測定手段及び前記温度測定手段は、前記支持体と一体化していてもよいし、前記支持体の近傍に配置されていてもよい。
【0034】
また、本発明において、触媒を通過する風速は、車速から推算してもよいが、より正確な風速を測定するという観点から、風速センサーを用いて実測することが好ましい。
【0035】
図3は、本発明の触媒の劣化診断方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、本発明の触媒の劣化診断方法は、キースイッチをONにして通電を行うことによって開始される。先ず、前記通電により触媒が加熱される。前記温度測定手段により触媒温度を測定し、触媒活性温度以上に達したと判定(ステップ1(
図3中のS1))した場合には、以下のステップ2に移行する。
【0036】
<ステップ2(
図3中のS2)>
ステップ2においては、前記電気抵抗測定手段、前記温度測定手段及び前記通過風速測定手段を用いて、実走行条件における触媒の金属膜の電気抵抗、触媒温度及び触媒を通過する風速を測定する。得られた各測定値を用い、電子制御ユニットにおいて、以下のステップ3〜7に従って、オゾン浄化率及び大気浄化クレジット値を算出して、触媒の劣化の有無を診断する。
【0037】
<ステップ3(
図3中のS3)>
前記式(1)で表される、初期状態(新品)の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、下記式(1b):
R=f
1(T)+α (1b)
に変形する。ここで、αは触媒の劣化に伴う電気抵抗の上昇値(単位:Ω)を表す。
【0038】
前記式(1b)中のR及びTにそれぞれ金属膜の電気抵抗の測定値及び触媒温度の測定値を代入し、αを求める。このようにして求めたα及び予め設定した触媒の基準温度T
0を前記式(1b)中のα及びTに代入し、基準温度T
0における金属膜の電気抵抗値R
0(単位:Ω)を求める。
【0039】
<ステップ4(
図3中のS4)>
前記式(2)中のR
STに前記電気抵抗値R
0を代入して、前記電気抵抗値R
0に対応する前記基準温度T
0及び前記基準風速Sw
0におけるオゾン浄化率C
0を求める。
【0040】
<ステップ5(
図3中のS5)>
前記式(3)中のC
T0及びTに前記オゾン浄化率C
0及び前記触媒温度の測定値を代入し、実走行時の触媒温度Tにおけるオゾン浄化率C
Tを求める。さらに、前記式(4)中のC
Sw0及びSwに前記オゾン浄化率C
T及び前記触媒通過風速の測定値を代入し、実走行時の触媒温度T及び触媒通過風速Swにおけるオゾン浄化率C
Swを求める。
【0041】
<ステップ6(
図3中のS6)>
このようにして求めた、実走行時の触媒温度T及び触媒通過風速Swにおけるオゾン浄化率C
Sw及び実走行時に触媒を通過する風量の測定値を、下記式(5):
大気浄化クレジット値=K×オゾン浄化率×触媒を通過する風量 (5)
に代入して、大気浄化クレジット値a(単位:mg/マイル)を算出する。
【0042】
通常運転で15万マイル又は15年を走行する試験を行なった場合の大気浄化クレジット値をオゾン分解除去用触媒の製品保証を行うための大気浄化クレジットの申請値b(単位:mg/マイル)とし、この大気浄化クレジットの申請値bと前記大気浄化クレジットの算出値aとを比較し、b<aの場合には、オゾン分解除去用触媒は正常であると判定し、触媒劣化診断サブルーチンを終了する。一方、b>aの場合には、オゾン分解除去用触媒は異常である(劣化した)と判定し、ステップ7に移行する。
【0043】
<ステップ7(
図3中のS7)>
ステップ6において、オゾン分解除去用触媒を異常であると判定した場合には、本ステップにおいて警告灯を点灯させる制御処理を行い、触媒劣化診断サブルーチンを終了する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(作製例1)
特開2011−152512号公報の実施例1に記載の方法に従って、検量線作成用の触媒層付きラジエータテストピースを作製した。すなわち、金属塩として塩化パラジウム(II)162mgをイオン交換水1Lに溶解した。この水溶液に、強く撹拌しながら1質量%のステアリルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液10mlを加え、さらに0.15質量%の水素化ホウ素ナトリウム水溶液50mlを加えて、パラジウムコロイド溶液を調製した。このパラジウムコロイド溶液1Lに、支持体として、予めベーマイト処理を施して表面粗化したアルミニウム製ラジエータから切り出した直径30mm×厚さ16mmのテストピースを1時間浸漬した後、引き上げ、水洗および乾燥を施して、パラジウムコロイド粒子を表面に吸着させることにより活性化させたアルミニウム製ラジエータテストピースを得た。
【0046】
次に、水1Lに硫酸コバルト(II)七水和物22.5g、次亜リン酸ナトリウム一水和物21.2g、酒石酸ナトリウム二水和物115gおよびホウ酸30.9gを加えて溶解した。3.3モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてこの水溶液のpHを9に調整することによりコバルト化学メッキ液を調製した。このコバルト化学メッキ液に、パラジウムコロイドで活性化した前記アルミニウム製ラジエータテストピースを90℃で30分間浸漬して無電解メッキを行なった後、引き上げ、イオン交換水で十分に水洗した。その後、105℃で1時間乾燥して、表面がコバルト(第一の触媒成分)でメッキされたラジエータテストピースを得た。
【0047】
次に、0.1Nの硝酸溶液20mlに硝酸銀0.023gを加えて溶解し、pH1の銀化学メッキ液を調製した。この銀化学メッキ液に、コバルトでメッキされた前記ラジエータテストピースを室温(27℃)で1時間浸漬して置換メッキを行なった後、引き上げ、イオン交換水で十分に水洗した。その後、105℃で1時間乾燥してコバルト(第一の触媒成分)と銀(第二の触媒成分)でメッキされたAg−Co触媒層付きラジエータテストピースを得た。なお、このAg−Co触媒層付きラジエータテストピースにおける触媒層の厚みは1μmであり、アルミニウム製ラジエータテストピース1L当たりのAg量は0.5g/Lであり、Coの量は12.1g/Lであった。
【0048】
(作製例2)
金属膜の電気抵抗測定装置として、アルミナ基板にAg−Co触媒層を備えるOBDセンサーを作製した。すなわち、先ず、ベーマイト処理を施したアルミニウム製ラジエータテストピースの代わりに、サンドブラスト処理を施して表面粗化したOBDセンサー用アルミナ基板(20mm×20mm×0.4mm)を用いた以外は作製例1と同様にして、コバルト(第一の触媒成分)と銀(第二の触媒成分)でメッキされたAg−Co触媒層付きアルミナ基板を作製した。なお、このAg−Co触媒層付きアルミナ基板における触媒層の厚みは1μmであり、Ag量及びCo量は、前記アルミニウム製ラジエータテストピースのAg量及びCo量に相当する量である。
【0049】
得られたAg−Co触媒層付きアルミナ基板の表面に電流印加用及び電圧測定用のPt線(合計4本)を導電性接着剤を用いて結線し、
図4に示すOBDセンサーを作製した。
【0050】
(製造例1)
特開2011−152512号公報の実施例1に記載の方法に従って、触媒層付きラジエータを作製した。すなわち、ベーマイト処理を施したアルミニウム製ラジエータテストピースの代わりに、ベーマイト処理を施して表面粗化したアルミニウム製ラジエータを用いた以外は作製例1と同様にして、コバルト(第一の触媒成分)と銀(第二の触媒成分)でメッキされたAg−Co触媒層付きラジエータを作製した。なお、このAg−Co触媒層付きラジエータにおける触媒層の厚みは1μmであり、アルミニウム製ラジエータ1L当たりのAg量は0.5g/Lであり、Coの量は12.1g/Lであった。
【0051】
(実施例1)
<触媒の温度と抵抗値の検量線>
先ず、
図5に示す反応装置に作製例2で得たOBDセンサーを、反応管31内の中心部(
図5中の32)に触媒層が配置されるように装着した。反応管上部より所定温度の空気(露点:21℃)を流通させて触媒を所定温度に加熱し、Ag−Co膜の電気抵抗を測定した。抵抗値は、Ag−Co膜に10mAの定電流を印加した時の電圧を測定して求めた。複数の温度についてAg−Co膜の電気抵抗を測定し、得られた抵抗値を触媒温度に対してプロットし(
図6)、下記式(1a−1):
R=0.00370×T+1.80 (1a−1)
で表される、初期状態(新品)の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を得た。
【0052】
<触媒の抵抗値とオゾン浄化率の検量線>
図5に示す反応装置に作製例2で得たOBDセンサーを、反応管31内の中心部(
図5中の32)に触媒層が配置されるように装着した。反応管上部より濃度100ppmのSO
2を含む空気(露点:21℃)を、基準温度75℃、流量5L/分で4時間流通させた後、空気の流通を停止して20時間放置した。4時間の空気流通と20時間の放置を1サイクルとし、合計6サイクルの劣化試験を行なった。各サイクルにおいて、空気流通時の金属膜の電気抵抗の経時変化を調べた。抵抗値は、金属膜に10mAの定電流を印加した時の電圧を測定して求めた。
【0053】
また、作製例1で得たAg−Co触媒層付きラジエータテストピースについても同様に
図5に示す反応装置を用いて合計6サイクルの劣化試験を行なった。各サイクル終了後に、反応管上部より濃度1ppmのO
3を含む空気(露点:21℃)を、基準温度75℃、基準風速1m/sで流通させ、触媒通過前後の空気中のオゾン濃度を測定してオゾン浄化率を求めた。
【0054】
このようにして得られた金属膜の電気抵抗値とオゾン浄化率とをプロットし(
図7)、下記式(2a−1):
C
ST=−29.4×R
ST+127 (2a−1)
で表される、基準温度75℃及び基準風速1m/sにおける触媒の抵抗値とオゾン浄化率との関係を示す検量線を得た。
【0055】
<触媒の温度とオゾン浄化率の検量線>
図5に示す反応装置に作製例1で得たAg−Co触媒層付きラジエータテストピースを、反応管31内の中心部(
図5中の32)に装着した。反応管上部より濃度1ppmのO
3を含む空気(露点:21℃)を基準風速1m/s、所定の温度で流通させ、触媒通過前後の空気中のオゾン濃度を測定してオゾン浄化率を求めた。このオゾン浄化率測定を複数の温度について行なった。得られたオゾン浄化率を温度に対してプロットし(
図8)、下記式(3a−1):
C
T/C
T0=0.00140×T+0.890 (3a−1)
で表される、基準風速1m/sにおける初期状態(新品)の触媒の温度とオゾン浄化率との関係を示す検量線を得た。
【0056】
<触媒通過風速とオゾン浄化率の検量線>
図5に示す反応装置に作製例1で得たAg−Co触媒層付きラジエータテストピースを、反応管31内の中心部(
図5中の32)に装着した。反応管上部より濃度1ppmのO
3を含む空気(露点:21℃)を基準温度75℃、所定の風速で流通させ、触媒通過前後の空気中のオゾン濃度を測定してオゾン浄化率を求めた。このオゾン浄化率測定を複数の風速について行なった。得られたオゾン浄化率を風速に対してプロットし(
図9)、下記式(4a−1):
C
Sw/C
Sw0=−0.167×ln(Sw)+1.01 (4a−1)
で表される、基準温度75℃における初期状態(新品)の触媒を通過する風速とオゾン浄化率との関係を示す検量線を得た。
【0057】
<実走行条件における触媒の劣化診断試験>
図2に示す大気浄化装置において、表面に触媒を備える支持体11として製造例1で作製したAg−Co触媒層付きラジエータを装着し、電気抵抗測定手段12として作製例2で作製したOBDセンサー、温度測定手段13として温度センサー、風速測定手段14として風速計を装着した。
【0058】
前記大気浄化装置を様々な実走行条件での作動を開始した後、温度センサーを用いて触媒温度を測定し、触媒活性温度(40℃)以上に達成したことを確認した(ステップ1(
図3中のS1))。
【0059】
次に、OBDセンサー、温度センサー及び風速計を用いて、Ag−Co膜の電気抵抗、触媒温度、触媒を通過する風速を測定したところ、それぞれ2.19Ω、69.8℃、2.60m/sであった(ステップ2(
図3中のS2))。
【0060】
次に、前記式(1a−1)で表される、初期状態(新品)の触媒についての温度と抵抗値との関係を示す検量線を、触媒の劣化による電気抵抗の上昇を考慮して、下記式(1b−1):
R=(0.00370×T+1.80)+α (1b−1)
に変形し、前記電気抵抗及び触媒温度の測定値を代入してαを求めたところ、α=0.13であった。このα及び基準温度75℃を前記式(1b−1)中のα及びTに代入し、基準温度75℃における金属膜の電気抵抗値R
0を求めたところ、R
0=2.21Ωであった(ステップ3(
図3中のS3))。
【0061】
このようにして得られた電気抵抗値R
0を前記式(2a−1)中のR
STに代入し、基準温度75℃及び基準風速1m/sにおけるオゾン浄化率C
0を求めたところ、C
0=62.0%であった(ステップ4(
図3中のS4))。
【0062】
また、前記オゾン浄化率C
0及び前記触媒温度の測定値を前記式(3a−1)中のC
T0及びTに代入し、実走行時の触媒温度69.8℃におけるオゾン浄化率C
Tを求めたところ、C
T=61.2%であり、さらに、前記オゾン浄化率C
Tを及び前記触媒通過風速の測定値を前記式(4a−1)中のC
Sw0及びSwに代入し、実走行時の触媒温度69.8℃及び触媒通過風速2.60m/sにおけるオゾン浄化率C
Swを求めたところ、C
Sw=52.0%であった(ステップ5(
図3中のS5))。
【0063】
一方、同一の実走行条件において、オゾンセンサーを用いてオゾン浄化率を求めたところ、52.5%であった。
【0064】
以上の結果から、触媒の金属膜の電気抵抗に基づいて算出したオゾン浄化率は、オゾンセンサーを用いて測定したオゾン浄化率と同等の精度であり、本発明において求められる大気浄化クレジットの算出値は、従来のオゾンセンサーを用いて算出した大気浄化クレジット値を代用できることが確認された。