特許第6315419号(P6315419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6315419半導体検査方法、半導体検査装置及び半導体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315419
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】半導体検査方法、半導体検査装置及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20180416BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   H01L21/66 J
   G01N21/956 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-257450(P2013-257450)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-115504(P2015-115504A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】沼田 光徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 明夫
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/046848(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/172103(WO,A1)
【文献】 特開2001−091228(JP,A)
【文献】 特開平09−265537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する半導体検査方法であって、
前記互いに対応する画素値の差が、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、
前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差である
ことを特徴とする半導体検査方法。
【請求項2】
前記互いに対応する画素値の差を求める際に、前記複数回の撮像間で画素毎に位置合わせを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体検査方法。
【請求項3】
前記撮像の回数を、前記互いに対応する画素値の差の統計量に応じて設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体検査方法。
【請求項4】
前記当該領域における欠陥の有無を判定する際に、
前記第1領域を撮像した1の前記第1画像と、前記第2領域を撮像した1の前記第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における前記撮像1回分の欠陥の有無の判定結果を得て、
前記複数回における欠陥検出率に応じて、前記当該領域における欠陥の有無を判定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体検査方法。
【請求項5】
前記撮像複数回分の前記撮像1回分の判定結果に応じて、前記当該領域における欠陥の有無を判定する際に、
前記互いに対応する画素値の差の値と、当該画素の周辺画素の前記互いに対応する画素値の差とに応じて、位置合わせの基準となる画素を設定し、
前記複数の撮像間で画素毎に位置合わせを行う
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体検査方法。
【請求項6】
ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する半導体検査装置であって、
前記互いに対応する画素値の差が、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、
前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差である
ことを特徴とする半導体検査装置。
【請求項7】
ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する検査工程を含む半導体製造方法であって、
前記互いに対応する画素値の差が、
前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、
前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差である
ことを特徴とする半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハー(Wafer)の外観検査等に用いて好適な、半導体検査方法、半導体検査装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は1枚のウエハー(Wafer)上に同一のパターン(Pattern)を持つチップ(Chip(ダイ;Die))やセル(Cell)を多数転写し作成する。外観検査装置においては、各チップやセルの同一パターン部分の画像を比較することで、欠陥の有無を判別することができる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3258385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイス(Device)の微細化に伴い、検出すべき欠陥のサイズ(Size)も微細化している。このため、半導体デバイスの外観検査においては、欠陥信号は微弱になっている。ここで欠陥信号とは、同一パターンを有する2領域の各画像信号の差(すなわち画素値あるいは輝度値の差)に基づく信号(例えば各画素値の差が所定の閾値より大きな信号)であって、実際の構造物の欠損や異物に対応して発生した信号を意味する。光学画像を用いた外観検査装置においては、欠陥信号と様々な要因によって画像中に生じるノイズ(Noise)を区別することが困難になっており、欠陥信号のみを抽出し検出することが非常に重要となっている。
【0005】
外観検査装置においては、欠陥信号とノイズ信号を区別するため閾値を設定し、閾値以下の信号は検出しないようにしている。しかし、昨今の超微細欠陥からの欠陥信号は、ノイズと同程度になり、検出が非常に困難である。従来、欠陥信号をノイズに対して大きくするために、光源光量を増加させる、また露光時間を長くする等の対策がなされているが、検出器のショット(Shot)ノイズや様々な要因によるノイズを低減する対策はなされていない。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、上記のノイズを低減することが可能な半導体検査方法、半導体検査装置及び半導体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の半導体検査方法は、ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する半導体検査方法であって、前記互いに対応する画素値の差が、前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の半導体検査方法は、前記互いに対応する画素値の差を求める際に、前記複数回の撮像間で画素毎に位置合わせを行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の半導体検査方法は、前記撮像の回数を、前記互いに対応する画素値の差の統計量に応じて設定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の半導体検査方法は、前記当該領域における欠陥の有無を判定する際に、前記第1領域を撮像した1の前記第1画像と、前記第2領域を撮像した1の前記第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における前記撮像1回分の欠陥の有無の判定結果を得て、前記複数回における欠陥検出率に応じて、前記当該領域における欠陥の有無を判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の半導体検査方法は、前記撮像複数回分の前記撮像1回分の判定結果に応じて、前記当該領域における欠陥の有無を判定する際に、前記互いに対応する画素値の差の値と、当該画素の周辺画素の前記互いに対応する画素値の差とに応じて、位置合わせの基準となる画素を設定し、前記複数の撮像間で画素毎に位置合わせを行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の半導体検査装置は、ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する半導体検査装置であって、前記互いに対応する画素値の差が、前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の半導体製造方法は、ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながら前記ウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、前記第1領域を撮像した複数の第1画像と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する検査工程を含む半導体製造方法であって、前記互いに対応する画素値の差が、前記第1領域を撮像した複数の第1画像の各画素値を、前記複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、前記第2領域を撮像した複数の第2画像の各画素値を、前記複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ウエハーを搭載したステージを所定方向に移動させながらウエハー上で同一パターンを有する第1及び第2領域をそれぞれ複数回撮像し、第1領域を撮像した複数の第1画像と、第2領域を撮像した複数の第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における欠陥の有無を判定する。この構成によれば、1回の撮像で取得した2領域の画像間のみから互いに対応する画素値の差を求める場合と比較し、容易に、ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である半導体検査装置の基本構成を説明するためのブロック図である。
図2図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するためのフローチャートである。
図3図1に示した半導体検査装置1における画像スキャンの一例を説明するための図である。
図4図1に示した半導体検査装置1における画像スキャンの他の例を説明するための図である。
図5図1に示した半導体検査装置1における画像スキャンのさらに他の例を説明するための図である。
図6図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するための説明図である。
図7図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するための特性図である。
図8図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するための説明図である。
図9図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するための説明図である。
図10図1に示した半導体検査装置1の動作例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態としての半導体検査装置1の基本的な構成例を示したブロック図である。図2は、図1に示した半導体検査装置1の基本的な動作例を説明するためのフローチャートである。
【0018】
図1に示した半導体検査装置1は、撮像部2と、ステージ(Stage)3と、制御部4とを備えている。撮像部2は、例えば、CCD(電荷結合素子)1次元ラインセンサ等の撮像素子、撮像素子の入光部に設けられた光学系、照明用の光源、撮像素子の駆動や出力信号の変換部等を有し、ステージ3上に搭載された図示していないウエハーで反射された光信号を電気信号に変換して出力する。ステージ3は、図示していないウエハーを着脱可能に固定し、制御部4から入力した制御信号に応じてウエハーを前後左右上下あるいは所定の回転方向に移動させる。
【0019】
制御部4は、図示していないウエハーを搭載したステージ3を所定方向に移動させながら。撮像部2を用いて、ウエハー上で同一パターンを有する領域A(第1領域)及び領域B(第2領域)を含む所定の複数領域を、それぞれ複数回撮像する。制御部4は、また、領域Aを撮像した複数の画像(以下、領域Aの画像を第1画像とする)と、領域Bを撮像した複数の画像(以下、領域Bの画像を第2画像とする)との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域A又は領域Bにおける欠陥の有無を判定する。
【0020】
その際、制御部4は、例えば図2に示したように、まず、ステージ3を所定の方向に移動させながら撮像部2が所定のフレーム周期で繰り返し撮像した画像信号を、所定のサンプリング周期で繰り返し取得することで、画像スキャン(すなわち取得位置を走査しながらの画像取得)を実行する(ステップS1)。ステージ3の移動方向や、ウエハー上の各領域の撮像順序は、特に限定されない。例えば、図3に示したように、矢印でそれぞれ示した1回目のスキャン(1番上の矢印)に対し2回目のスキャンは垂直方向にスキャン位置を変えて逆方向にスキャンする。これを繰り返すことでウエハー5全面を走査する。そして、1番下のスキャンを終了したら、再び1番上からスキャンしたり、下から2番目の矢印のようにスキャンしたりすることで2回目の画像スキャンを行う。このスキャン動作を同一領域について指定回数分の画像が取得されるまで繰り返し行う(ステップS2からステップS1の繰り返し)。ここで、ステップS2の所定回数は2以上である。
【0021】
なお、図3から図5は画像スキャンの仕方の例を説明するための説明図であり、ウエハー5を模式的に示すとともに、ウエハー5上のスキャン位置及び方向を矢印を付けた細線で模式的に示している。図3から図5に示した矢印は、ウエハー5を基準として相対的なスキャン位置と方向の変化を示したものであり、本実施形態では撮像部2は固定されていて、ウエハー5が移動する。ただし、撮像部2を移動させたり、撮像部2の移動とウエハー5の移動(つまりステージ3の移動)とを組み合わせたりしてもよい。また、図3から図5に示した例では、ウエハー5上には、同一のパターンを有する複数のチップ6が形成されている。
【0022】
また、図4に示したように、1回目のスキャンに対して2回目以降のスキャンもスキャン位置を変更せず、同一箇所を往復スキャンするようにしてもよい。この場合は、指定回数(この例では4回)のスキャンが完了するまで同一箇所の往復スキャンを繰返す。その後、垂直方向の位置を変更して、再度複数回往復スキャンを行う。あるいは、図5に示したように、図3に示した右方向へのスキャンと次に垂直方向に移動した位置での左方向へのスキャンとを1組として、1回分の垂直方向の位置変更を伴いながら、2回1組のスキャンを指定回数(この例では3回)繰り返し行い、その後、垂直方向の2回分の位置変更を行って同様の2回1組のスキャンを繰り返して行うようにしてもよい。
【0023】
次に、制御部4は、ウエハー5上の同一パターンの領域Aと領域Bについて、領域Aで取得された複数の画像と領域Bで取得された複数の画像との間で互いに対応する画素値の差を求めることで欠陥を検出する(ステップS3)。ここで領域Aと領域Bとは、例えば図3に示したように同一パターンを有する2つのチップ6毎の全領域又はチップ6内で対応する一部の領域であってもよいし、例えばチップ6内に同一パターンの複数のセルが形成されている場合にはセル毎の全領域又はセル内で対応する一部の領域であってもよい。
【0024】
次に、図2に示したステップS3における、領域A及びBで取得された各複数の画像を用いた欠陥の検出処理について2つの例を挙げ、第1実施形態及び第2実施形態として説明する。
【0025】
[第1実施形態]
検査画像上の撮像素子のショットノイズ、光源の揺らぎ等によるノイズ信号の発生位置はランダム(Random)である。それに対して、欠陥信号は常に一定の場所で発生する。従って、同一箇所の画像を複数枚取得し、平均化した画像を生成すると、欠陥信号は平均化により低減せず残るが、ノイズ信号は平均化により低減される。そこで、第1実施形態では、制御部4が、ステップS3で、平均化された画像を用いて検査を行う。これにより、第1実施形態では、欠陥をより高感度で検出することが可能になる。つまり、第1実施形態では、ステップS3において制御部4が、領域Aを撮像した複数の第1画像の各画素値を、複数の第1画像間で互いに対応する画素毎に平均した値と、領域Bを撮像した複数の第2画像の各画素値を、複数の第2画像間で互いに対応する画素毎に平均した値との差を求め、領域A又はBにおける欠陥の有無を判定する。
【0026】
図6に示したように、第1実施形態において、制御部4は、例えば、領域A及び領域Bの各領域で同一箇所のスキャン画像100を複数回(図6では6回)取得する(図2のステップS1からS2)。図6は、図3から図5に示したチップ6内の同一箇所(すなわちチップ6内の同一座標の一部又はチップ6全体)の画像を、スキャン画像100として模式的に示した図である。この場合、スキャン画像100において、正常な信号をグレーで、ノイズ信号101を白点又はサイズが小さな黒点で、そして、欠陥信号111をサイズが大きな黒点で示している。図6に示した撮像1回目から6回目までの6枚のスキャン画像100の画素値を、対応する画素毎(すなわち同一座標の画素毎)に平均した画素値を有する平均画像110では、欠陥信号111が黒のまま残り、ノイズ信号101がグレーに変化している。
【0027】
例えば比較対象となる2つの領域Aと領域Bにおいて、領域Aが欠陥を含み、領域Bが欠陥を含んでいないとすれば、図6の例では、領域Aの複数の画像の平均画像110が一点の黒点を含む画像となり、領域Bの複数の画像の平均画像110がすべての画素がグレーの画像となる。この場合、領域Aの平均画像と、領域Bの平均画像との間の、対応する各画素の画素値の差は、領域Aで欠陥がある座標の画素に対応する差の値のみが大きな値となる。欠陥の有無を、画素値の差と所定の閾値との比較結果に基づいて行う場合、すなわち各画素間の差の値を所定の閾値と比較することで欠陥の有無を判定する場合、領域Aで欠陥がある座標の画素に対応する画素値間の差の値のみが欠陥として判定され、ノイズ信号は欠陥として判定されなくなる(あるいは判定されにくくなる)。
【0028】
なお、複数回のスキャンにより平均化された画像中のノイズ信号は、図7に示すスキャン回数依存性を持つ。図7は、横軸にスキャン回数(つまり平均する画像の枚数)をとり、縦軸にノイズ信号の平均化後のレベルをとって、ランダムにノイズを発生させた場合のノイズ信号の平均化後のレベルの変化を表した図である。ノイズ信号はスキャン回数を増やすごとに減衰する。しかしノイズ信号減衰率はスキャン回数の増加に従って、徐々に小さくなる。スキャン回数の指定においては、必要な感度と検査速度に応じて、欠陥信号がノイズ信号を上回るスキャン回数に設定する。例えば、比較対象の互いに対応する2画素値の差の値の実測値や計算値の平均、標準偏差、分散等の統計量(すなわち統計的な手法で算出された値)に応じて設定することができる。なお、スキャン回数の設定は、後述する第2実施形態においても同様とすることができる。
【0029】
また、ステップS3の処理において、制御部4は、互いに対応する画素値の差を求める際に、複数回の撮像間で画素毎にアライメント(すなわち位置合わせ)処理を行うことができる。平均化した画像を生成する際においては、ステージ3の精度により必ず画像取得位置にはズレが生じる。このため、取得した複数の画像にアライメント(Alignment)処理を行った上で平均化処理を行うことが望ましい。アライメント処理においては、アライメント処理を行う画像同士をシフト(Shift)させながら比較し、正規化相関係数が最も大きくなる位置同士を、ウエハー5上の同一位置を撮像した像とする。複数回取得した画像すべてに対して、アライメント処理を適用し、同一位置同士を平均化することで平均化した画像を生成する。また、図8に示したように、アライメントの際には、各画像のズレ量に応じて非検査領域が発生するため、次の領域(Area)をスキャンする際には、一定の領域を重複してスキャンする。なお、図8は、アライメント処理の一例を説明するための説明図である。図8では、1回目の撮像画像201と、2回目の撮像画像202と、3回目の撮像画像203とに垂直方向のズレが生じている。そして、ズレ量に合わせて画像同士をシフトした状態を画像201a、画像202a及び画像203aとして示し、非検査領域を間隔が広い斜線の網掛け領域で示している。
【0030】
第1実施形態によれば、欠陥を含む同一箇所の画像を複数回取得し、平均化した画像を用いて検査を行うため、常に同じ位置に発生する欠陥信号を低減することなく、ランダムに生じるノイズ信号のみを平均化し、低減することが可能である。これにより、より高感度での検査が可能になる。
【0031】
[第2実施形態]
上述したように、検査画像上の撮像素子のショットノイズ、光源の揺らぎ等によるノイズ信号の発生位置はランダムである。それに対して、欠陥信号は常に一定の場所で発生する。従って、ウエハーの同一箇所の画像を複数枚取得し、取得した複数の画像各々を用いて複数の検査を行った場合、欠陥信号は常に同一の場所で検出されるが、ノイズ信号はランダムな場所で検出される。そこで、第2実施形態では、制御部4が、ステップS3で、複数の検査結果を比較し、スキャン回数中の検出率に基づいて欠陥信号とノイズ信号を識別することにより、欠陥をより高感度で検出することを可能とする。すなわち、第2実施形態では、制御部4が、ステップS3で、領域Aを撮像した1つの第1画像と、領域Bを撮像した1つの第2画像との間で、互いに対応する画素値の差を求めることで、当該領域における撮像1回分の欠陥の有無の判定結果を得て、撮像複数回で欠陥となった撮像数を求め、さらに、この求めた撮像数を撮像複数回の回数で除算した結果(複数回における欠陥検出率)に応じて、当該領域における欠陥の有無を判定する。なお、制御部4では、検出率に閾値を設定し、100%検出される信号だけでなく、ある一定以上の検出率で検出された信号を欠陥信号とし、平均検査結果として出力することを可能としてもよい。また、複数の検査結果は、スキャン毎に複数回スキャンする場合と、ウエハー全面検査を複数回実施する場合とが考えられる。
【0032】
図9を参照して、第2実施形態の制御部4によるステップS3の処理例について説明する。図9は、4回の撮像画像に基づく3チップ比較方式による欠陥検出を行った結果を検査結果300として模式的に示している。各検査結果300は、ウエハー50の複数のチップ60のうち所定の2チップ60間(例えば隣接する2チップ60間)で対応する画素値を比較し、画素値間の差の値が所定の閾値を超えた場合を黒又は白の丸印で示している。そして、4回の検査結果300のすべてで所定の閾値以上であると判定された信号を黒丸印(高検出率信号)で、4回のいずれかで所定の閾値以上ではなかった場合があった(図9では閾値以上と各1回判定された)信号を白の丸印(低検出率信号)で示している。この場合、4回のうち4回とも検出された信号を高検出率信号としている。4回の検査結果300から高検出率信号のみを抽出した検査結果を、平均検査結果310として示した。図9に示した平均検査結果310は、ウエハー50に対応するウエハー51と、チップ60に対応するチップ61とを含んでいる。
【0033】
なお、非常にノイズの多い検査領域の検査を行った場合や検査装置の異常が発生した場合等、欠陥信号ではなくノイズ信号であるにも関わらず、複数の検査のうち毎回ほぼ同じ座標で、大きな信号値で検出される場合がある。このようなノイズ信号を除去するために、検出回数だけでなく欠陥のパラメータ(Parameter)を用いて、ノイズ信号を除去する方法が考えられる。例えば、各回の欠陥検査で検出された信号の形状や明暗等の特徴量、周辺の画像の明暗や分散等の特徴量を抽出し、各信号のパラメータ値として情報を保持しておく。このパラメータに閾値を設定することでノイズ信号を除去することが可能になる。一例として、複数回検査を行うと毎回検出されるが、信号の明暗・形状が毎回異なる場合は、欠陥ではなくノイズ信号とみなせる。また他の例として、検出された信号の周辺の分散が非常に大きい場合、その座標周辺でノイズ信号が検出されやすくなるため、ノイズ信号である可能性が高い。
【0034】
また、複数の検査結果を比較する際においては、ステージ3の精度により必ず欠陥が検出される座標にはズレが生じるため、取得した複数の検査結果に対し、アライメント処理を行った上で、検査結果比較を行う。第2実施形態において制御部4は、例えば図10に示したように基準となる検査結果300−1において検出された信号の中からアライメント用の信号を複数個選出する。複数の検査結果60a−1〜60a−3及び60b−1〜60b−3それぞれについてアライメント用欠陥の座標に対して、あらかじめ決められた検索範囲内にある同等の信号値を持つ信号の座標との差分を計算する。複数個のアライメント用信号座標の差分から検査結果全体のx方向、y方向、回転方向のズレを算出する。このズレ量を考慮し、複数の検査結果全体を比較し、同一座標にある信号を同一欠陥とし、平均検査結果を導出する。
【0035】
なお、図10では、図9に示した1回目の検査結果300を、検査結果1(300−1)として示し、基準となるアライメント信号1を選出したチップをチップ60a−1、アライメント信号2を選出したチップをチップ60b−1として示している。また、2回目、3回目の撮像画像に基づく対応するチップの検査結果をチップ60a−2及び60a−3ならびに60b−2及び60b−3として模式的に示している。また、各検査結果における信号位置を黒丸で示し、検査結果1(300−1)の検査結果において基準となる信号位置を他の検査結果において破線の丸印で示している。また、ズレ量を矢印で示している。
【0036】
アライメント用信号には、サイズ(Size)が小さく、信号値の大きい信号が適している。制御部4は、例えば、検出した信号をサイズと信号値にて重み付けを行い、サイズが小さく信号値の大きい信号をアライメント用信号として選出する。また、アライメント用信号は、検査領域中の座標に偏りがない様に選出することが望ましい。ここで、検出した信号のサイズは、当該画素の周辺画素の互いに対応する画素値の差の値を参照することで算出することができる。したがって、第2実施形態の制御部4は、撮像複数回分の撮像1回分の判定結果に応じて当該領域における欠陥の有無を判定する際に、互いに対応する画素値の差の値(すなわち信号値)と、当該画素の周辺画素の互いに対応する画素値の差(すなわちサイズを求める際に用いられる値)とに応じて、位置合わせの基準となる画素を設定し、複数の撮像間で画素毎に位置合わせを行うものとすることができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態は、上記のものに限定されず、例えば、上記の実施形態は検査方法あるいは検査装置としてとらえるだけでなく、半導体製造工程の一部とすることで半導体製造方法を構成するものとしてとらえることができる。あるいは、本発明の実施の形態は、ウエハーの外観検査に限定されず、例えばマスクやレチクルの検査に応用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1…半導体検査装置、2…撮像部、3…ステージ、4…制御部、5…ウエハー、6…チップ
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10