特許第6315706号(P6315706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6315706-半導電性ローラ 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315706
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】半導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20180416BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20180416BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20180416BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20180416BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
   G03G15/00 551
   G03G15/16 103
   G03G15/02 101
   G03G21/00 312
   G03G15/16
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-77939(P2015-77939)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197217(P2016-197217A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020443(JP,A)
【文献】 特開2013−061614(JP,A)
【文献】 特開平06−274020(JP,A)
【文献】 特開2005−148467(JP,A)
【文献】 特開2008−176027(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0183615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム分として、
(1) エピクロルヒドリンゴム、
(2) ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム、ならびに
(3) 液状ブタジエンゴムおよび液状スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の液状ゴム、
を含むゴム組成物によって形成された半導電性ローラ。
【請求項2】
前記(2)のゴムはブタジエンゴム、(3)の液状ゴムは液状ブタジエンゴムであり、前記液状ブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、40質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記(2)のゴムはブタジエンゴム、(3)の液状ゴムは液状スチレンブタジエンゴムであり、前記液状スチレンブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、40質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
前記(2)のゴムはスチレンブタジエンゴム、(3)の液状ゴムは液状ブタジエンゴムであり、前記液状ブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、30質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項5】
前記(2)のゴムはスチレンブタジエンゴム、(3)の液状ゴムは液状スチレンブタジエンゴムであり、前記液状スチレンブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、40質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項6】
外周面に酸化膜を備えている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項7】
電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像する現像ローラとして用いる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置において特に現像ローラ等として好適に使用される半導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機などの、電子写真法を利用した画像形成装置においては、帯電させた感光体の表面を露光して当該表面に形成される静電潜像をトナー像に現像するために、現像ローラが用いられる。
すなわち量規制ブレード(帯電ブレード)を接触させた状態で現像ローラを回転させるとトナーが帯電され、帯電されたトナーが現像ローラの外周面に付着されるとともに量規制ブレードによって付着量が規制されることで、当該現像ローラの外周面に厚みがほぼ一定のトナー層が形成される。
【0003】
そしてこの状態で現像ローラがさらに回転して、トナー層が感光体ドラムの表面近傍に搬送されると、当該トナー層を形成するトナーが感光体ドラムの表面に形成された静電潜像に応じてトナー層から感光体ドラムの表面に選択的に移動して静電潜像がトナー像に現像される。
現像ローラとしてはトナーの微細化、均一化、球形化やあるいは重合トナーへの移行等の流れに対応してトナーに高い帯電性を付与するとともに、トナーの付着を生じることなく効率的に静電潜像をトナー像に現像するために、ローラ抵抗値が例えば10Ω以下に調整された半導電性ローラを用いるのが有効である。
【0004】
また現像ローラには、トナーの劣化を生じにくくして画像耐久性に優れることも求められる。
画像耐久性とは、同じトナーを繰り返し画像形成に使用した際に形成画像の画質をどれだけの間、良好に維持できるかを表す指標である。
1回の画像形成には画像形成装置の現像部に収容されたトナーのごく一部しか使用されず、残りの大部分のトナーは現像部内を繰り返し循環する。そのため現像部内に設けられてトナーと繰り返し接触する現像ローラがトナーにどれだけのダメージを与えるか、あるいは与えないかが画像耐久性を向上する上での大きな鍵となる。
【0005】
画像耐久性が低下すると形成画像の黒ベタ部分に白縦筋を生じたり、余白部分にカブリを生じたりして画質が低下する。
そこでオイルや可塑剤等の軟化剤を配合したり、ゴム分として液状ゴムを併用(特許文献1〜3)したりして現像ローラの柔軟性を向上することが検討されている。
しかし軟化剤や液状ゴムを配合すると現像ローラの圧縮永久ひずみが大きくなる傾向があり、圧縮永久ひずみが大きい現像ローラは、例えば画像形成装置の停止時に感光体に圧接され続けた箇所が当該現像ローラを回転させる等して圧接を解除しても元の状態まで復元されないいわゆるヘタリを生じて、形成画像に画像ムラ等の画像不良を生じやすいという問題がある。
【0006】
また特に軟化剤は、現像ローラを例えば画像形成装置の現像ユニットに組み込んで感光体の表面に接触させた状態で、高温高湿環境下で長期間静置した際にブリードしやすく、ブリードした軟化剤が感光体を汚染して形成画像に汚染ライン等の画像不良を生じやすいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3601811号公報
【特許文献2】特開2005−148467号公報
【特許文献3】特開2007−154165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に現像ローラとして使用した際に柔軟でトナーの劣化を生じにくく画像耐久性に優れる上、感光体の汚染を生じにくく、しかも圧縮永久ひずみが小さいためヘタリを生じにくい半導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はゴム分として、
(1) エピクロルヒドリンゴム、
(2) ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム、ならびに
(3) 液状ブタジエンゴムおよび液状スチレンブタジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の液状ゴム、
を含むゴム組成物によって形成された半導電性ローラである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に現像ローラとして使用した際に柔軟でトナーの劣化を生じにくく画像耐久性に優れる上、感光体の汚染を生じにくく、しかも圧縮永久ひずみが小さいためヘタリを生じにくい半導電性ローラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はゴム分として、
(1) エピクロルヒドリンゴム、
(2) ブタジエンゴム(BR)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム、ならびに
(3) 液状BRおよび液状SBRからなる群より選ばれた少なくとも1種の液状ゴム、
を含むゴム組成物によって形成された半導電性ローラである。
【0013】
ゴム分と架橋反応するため感光体の汚染を生じない液状ゴムを半導電性ローラに配合すること自体は、例えば特許文献1〜3等に記載されているように公知である。
しかし発明者の検討によると、ゴムと液状ゴムの組み合わせが適切でない場合には、ゴム分の相溶性が不十分で、製造した半導電性ローラにスジが入ったり、先述したように現像ローラとして使用した際に、圧縮永久ひずみが大きくなってヘタリを生じやすくなったり、逆に硬すぎて良好な画像耐久性が得られなかったりするといった問題を生じる。
【0014】
これに対し本発明によれば、上記のように半導電性ローラにイオン導電性を付与するための(1)のエピクロルヒドリンゴム、および半導電性ローラの全体形状を形成するためのゴムとしての(2)のBRおよび/またはSBRに、液状ゴムとして(3)の液状BRおよび/または液状SBRを選択的に組み合わせることにより、現像ローラとして使用した際に柔軟でトナーの劣化を生じにくく画像耐久性に優れる上、感光体の汚染を生じにくく、しかも圧縮永久ひずみが小さいためヘタリを生じにくい半導電性ローラを形成することが可能となる。
【0015】
《ゴム組成物》
ゴム組成物を構成するゴム分としては、上記のように(1)〜(3)の3種のゴム分を少なくとも併用する。
〈(1) エピクロルヒドリンゴム〉
(1)のエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0016】
これらの中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、特にECOおよび/またはGECOが好ましい。
上記両共重合体において、エチレンオキサイド含量はいずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは半導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、半導電性ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0017】
一方、エチレンオキサイド含量が上記の範囲を超える場合にはエチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却って半導電性ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また架橋後の半導電性ローラの硬度が上昇して画像耐久性が低下したり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して加工性が低下したりするおそれもある。
【0018】
ECOにおいて、エピクロルヒドリン含量はエチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
またGECOにおいて、アリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
【0019】
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかしアリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲未満ではかかる働きが得られないため、半導電性ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
【0020】
一方、アリルグリシジルエーテルはGECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合にはGECOの架橋密度が高くなり、分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却って半導電性ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また半導電性ローラの引張強度や疲労特性、耐屈曲性等が低下するおそれもある。
【0021】
さらにGECOにおいて、エピクロルヒドリン含量はエチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
またGECOとしては、上で説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではかかる変性物もGECOとして使用可能である。
【0022】
〈(2) BRおよび/またはSBR〉
(BR)
BRとしては、架橋前に室温で固形状を呈し、かつ架橋性を有する種々のBRがいずれも使用可能である。
特に低温特性に優れ、低温低湿環境下において低硬度でかつ良好な柔軟性を発現しうる、シス−1,4結合の含量が95%以上の高シスBRが好ましい。
【0023】
またBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、半導電性ローラを現像ローラとして使用する場合には、前述したように感光体の汚染を防止するために非油展タイプのBRを使用するのが好ましい。
BRの具体例としては、例えば日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)BR1220、BR1250H、JSR(株)製のJSR(登録商標)BR01、JSR T700、JSR BR51、JSR BR730、旭化成ケミカルズ(株)製のジエン(登録商標)NF35R等が挙げられる。
【0024】
これらBRの1種または2種以上を使用できる。
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成され、架橋前に室温で固形状を呈し、なおかつ架橋性を有する種々のSBRがいずれも使用可能である。
【0025】
またSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。
さらにSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、半導電性ローラを現像ローラとして使用する場合には、やはり感光体の汚染を防止するために非油展タイプのSBRを用いるのが好ましい。
【0026】
乳化重合法によって合成される非油展のSBR(E−SBR)の具体例としては、例えばJSR(株)製のJSR 1500、JSR 1502、JSR 1503、JSR 1507、JSR 0202、日本ゼオン(株)製のNipol 1500、Nipol 1502等が挙げられる。
また溶液重合法によって合成される非油展のSBR(S−SBR)の具体例としては、例えばJSR(株)製のJSR SL552、JSR SL563、日本ゼオン(株)製のNipol NS116R、Nipol NS612、Nipol NS616、Nipol NS310S等が挙げられる。
【0027】
これらSBRの1種または2種以上を使用できる。
〈(3) 液状BRおよび/または液状SBR〉
(液状BR)
液状BRとしては、架橋前に室温で液状を呈し、かつ架橋性を有する種々の液状BRがいずれも使用可能である。
【0028】
かかる液状BRとしては、例えば(株)クラレ製のクラプレン(登録商標)LBR−300、LBR−305、LBR−307、LBR−352等の1種または2種以上が挙げられる。
特に架橋後の半導電性ローラの圧縮永久ひずみを小さくしてヘタリを生じにくくしながら、なおかつ当該半導電性ローラに適度の柔軟性を付与して画像耐久性を向上することを考慮すると、BRと組み合わせる液状BRとしては、上記の中でも数平均分子量Mnが7500以上、特に8500以上で、かつ10000以下、特に9500以下であるものを選択して使用するのが好ましい。またSBRと組み合わせる液状BRとしては、上記の中でも数平均分子量Mnが7500以上で、かつ10000以下、特に8500以下であるものを選択して使用するのが好ましい。
【0029】
(液状SBR)
液状SBRとしては、同じく架橋前に室温で液状を呈し、なおかつ架橋性を有する種々の液状SBRがいずれも使用可能である。
かかる液状SBRとしては、例えば(株)クラレ製のクラプレンL−SBR−820、L−SBR−841等の少なくとも1種が挙げられる。
【0030】
特に液状BRと同じ理由で、液状SBRとしては、上記の中でも数平均分子量Mnが8000以上で、かつ10000以下、特に9000以下であるものを選択して使用するのが好ましい。
〈(4) クロロプレンゴム〉
ゴム分としては、上記(1)〜(3)の3種に加えて、さらにクロロプレンゴム(CR)を配合してもよい。
【0031】
CRは、半導電性ローラの柔軟性、画像耐久性をさらに向上するために機能する。またCRを配合することで、半導電性ローラのローラ抵抗値を微調整できる。
CRは、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成され、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプに分類されるが、本発明ではこのいずれのCRも使用可能である。
【0032】
硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定の粘度に調整して得られる。
また非硫黄変性タイプのCRは、メルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
【0033】
またCRは、その結晶化速度に基づいて当該結晶化速度が遅いタイプ、中程度であるタイプ、および速いタイプに分類される。
本発明ではいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプでかつ結晶化速度が遅いタイプのCRの1種または2種以上が好ましい。
さらにCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合ゴムを用いてもよい。かかる他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
【0034】
CRの具体例としては、例えば昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT等が挙げられる。
〈ゴム分の配合割合〉
(1)のエピクロルヒドリンゴムの配合割合は、上記(1)〜(3)の3種、または(1)〜(4)の4種のゴム分の総量100質量部中の10質量部以上、特に15質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、特に25質量部以下であるのが好ましい。
【0035】
エピクロルヒドリンゴムの配合割合がこの範囲未満ではローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際にトナー帯電量や搬送量が低下するおそれがある。
一方、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が上記の範囲を超える場合には、現像ローラとして使用した際にトナーが付着しやすくなって、形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。
【0036】
(2)のBRおよび/またはSBRの配合割合は、上記(1)〜(3)の3種、または(1)〜(4)の4種のゴム分の残量とする。すなわち(1)のエピクロルヒドリンゴム、(3)の液状ゴム、および(4)のCRの配合割合をそれぞれ所定値に設定した際にゴム分の総量が100質量部となるように、(2)のBRおよび/またはSBRの配合割合を設定すればよい。
(3)の液状ゴムの配合割合は、使用する液状ゴムの種類と組み合わせる(2)のゴムの種類に応じて個別に好適範囲が設定される。
【0037】
すなわち(2)のゴムがBR、(3)の液状ゴムが液状BRである場合、当該液状BRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
また(2)のゴムがBR、(3)の液状ゴムが液状SBRである場合は、当該液状SBRの配合割合が、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0038】
(2)のゴムがSBR、(3)の液状ゴムが液状BRである場合は、液状BRの配合割合が、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
さらに(2)のゴムがSBR、(3)の液状ゴムが液状SBRである場合には、当該液状SBRの配合割合が、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に10質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0039】
いずれの組み合わせにおいても、液状ゴムの配合割合が上記の範囲未満では当該液状ゴムを配合することによる効果が得られず、半導電性ローラが硬くなりすぎて現像ローラとして使用した際に画像耐久性が低下するおそれがある。
一方、液状ゴムの配合割合が上記の範囲を超える場合には当該液状ゴムが過剰で、半導電性ローラが柔らかくなりすぎて、圧縮永久ひずみが小さくなってヘタリを生じやすくなる。
【0040】
CRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の1質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
CRの配合割合がこの範囲未満では、上述したCRを配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。
一方、CRの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際にトナー帯電量や搬送量が低下するおそれがある。
【0041】
なおCRは、前述したように配合しなくてもよい。
〈架橋成分〉
ゴム組成物には、ゴム分を架橋させるための架橋成分を配合する。架橋成分としては架橋剤、促進剤等が挙げられる。
このうち架橋剤としては、ゴム分の種類に応じて例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。
【0042】
中でも硫黄系架橋剤が好ましい。
硫黄系架橋剤としては、例えば粉末硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物等の1種または2種以上が挙げられ、特に硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.4質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0043】
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、あるいは有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
また有機促進剤としては、例えば1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;エチレンチオウレア等のチオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0044】
促進剤は種類によって機能が異なるため、2種以上の促進剤を併用するのが好ましい。
個々の促進剤の配合割合は種類によって任意に設定できるが、通常は個別に、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては例えば架橋助剤、受酸剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、共架橋剤、顔料、難燃剤、気泡防止剤等が挙げられる。
【0045】
このうち架橋助剤としては亜鉛華(酸化亜鉛)等の金属化合物、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋助剤の配合割合は、個別にゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0046】
受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムやCRから発生する塩素系ガスが半導電性ローラ内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等を生じたりするのを防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0047】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、6質量部以下、特に4質量部以下であるのが好ましい。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0048】
充填剤を配合することにより、半導電性ローラの機械的強度等を向上できる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
また充填剤として導電性カーボンブラック等の導電性充填剤を配合して、半導電性ローラに電子導電性を付与してもよい。
【0049】
導電性カーボンブラックとしては、例えば電気化学工業(株)製のデンカ ブラック(登録商標)等が挙げられる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、半導電性ローラ1のローラ抵抗値を先に説明した範囲に調整することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上、特に15質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下、特に25質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0051】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0052】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの、複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0053】
また(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0054】
上記各成分を含むゴム組成物は従来同様に調製できる。すなわちゴム分を所定の割合で配合して素練りしながら架橋成分以外の添加剤を加えて混錬したのち、最後に架橋成分を加えて混錬することでゴム組成物が得られる。混錬には例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
《半導電性ローラ》
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【0055】
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、上記ゴム組成物により非多孔質で単層構造の筒状に形成されるとともに、中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定されたものである。
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。
【0056】
上記シャフト3は、例えば導電性を有する接着剤を介して半導電性ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで、半導電性ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されて一体に回転される。
半導電性ローラ1の外周面4には、図中に拡大して示すように酸化膜5を設けてもよい。
【0057】
酸化膜5を形成すると、当該酸化膜5が誘電層として機能して半導電性ローラ1の誘電正接を低減できる。また酸化膜5が低摩擦層となることで、例えば現像ローラ等として使用した際にトナーの付着を抑制できる。
しかも酸化膜5は、例えば酸化性雰囲気中で紫外線の照射等をするだけで簡単に形成できるため、半導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制できる。ただし酸化膜5は形成しなくてもよい。
【0058】
半導電性ローラ1を製造するには、まず先に調製したゴム組成物を、押出機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加熱してゴム分を架橋させる。
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨する。
【0059】
研磨方法としては、例えば乾式トラバース研削等の種々の研磨方法が採用可能であるが、研磨工程の最後に鏡面研磨をして仕上げると当該外周面4の離型性を向上して、例えば現像ローラ等として使用した際にトナーの付着を抑制できる。また感光体の汚染を有効に防止できる。
また外周面4を上記のように鏡面研磨して仕上げた後にさらに酸化膜5を形成すると、この両者の相乗効果によってトナーの付着をより一層良好に抑制できるとともに感光体の汚染をさらに良好に防止できる。
【0060】
シャフト3は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔2に挿通して固定できる。
ただしカット後、まず通孔2にシャフト3を挿通した状態で二次架橋、および研磨をするのが好ましい。これにより二次架橋時の膨張収縮による筒状体→半導電性ローラ1の反りや変形を防止できる。また、シャフト3を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面4のフレを抑制できる。
【0061】
シャフト3は、先に説明したように導電性を有する接着剤、特に熱硬化性接着剤を介して二次架橋前の筒状体の通孔2に挿通したのち二次架橋させるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入すればよい。
前者の場合はオーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト3が筒状体→半導電性ローラ1に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
【0062】
また後者の場合は圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
このあと、必要に応じて外周面4を先に説明した手順で酸化処理して酸化膜5を形成すると本発明の半導電性ローラ1が完成する。
本発明の半導電性ローラ1は、例えば外周面4側の外層とシャフト3側の内層の2層構造に形成してもよい。また半導電性ローラ1は多孔質構造としてもよい。
【0063】
ただし、その構造を簡略化してできるだけ生産性良く低コストで製造するとともに、それ自体の耐久性や圧縮永久ひずみ特性等を向上することを考慮すると、半導電性ローラ1は非多孔質でかつ単層構造に形成するのが好ましい。
なお、ここでいう単層構造とはゴム組成物からなる層の数が単層であることを指し、酸化処理によって形成される酸化膜5は層数に含まないこととする。
【0064】
本発明の半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の電子写真法を利用した画像形成装置において現像ローラとして好適に使用できるほか、例えば帯電ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【実施例】
【0065】
《BR−液状BR系》
〈実施例1−1〉
(ゴム組成物の調製)
下記の各ゴム分を配合した。
(1) GECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)−301、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕20質量部
(2) BR〔前出のJSR(株)製のJSR BR01、シス−1,4結合含量:95%〕69質量部
(3) 液状BR〔前出の(株)クラレ製のクラプレンLBR−307、数平均分子量Mn:8000〕1質量部
(4) CR〔前出の昭和電工(株)製のショウプレンWRT〕10質量部
上記(1)〜(4)のゴム分計100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながらまず導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカ ブラック(登録商標)の粒状品〕20質量部、および架橋助剤としての亜鉛華〔三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛二種〕5質量部を配合して混練した。
【0066】
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1中の各成分は下記のとおり。なお表中の質量部は、ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
架橋剤:5%オイル入り硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)DM〕
促進剤22:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル22−S〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔三新化学工業(株)製のサンセラーDT〕
(半導電性ローラの作製)
調製したゴム組成物を押出機に供給して外径φ20mm、内径φ7mmの円筒状に押出成形した後、架橋用シャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
【0069】
次いで架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ7.5mmの金属製のシャフトに装着しなおしてオーブン中で160℃に加熱して当該シャフトに接着させたのち両端をカットした。
そして端部を成形するとともに、円筒研磨機を用いて外周面をトラバース研磨したのち、さらに#2000のフィルム(三共理化学(株)製)を用いて鏡面研磨して外径φ20.00mm(公差0.05)の半導電性ローラを製造した。
【0070】
〈実施例1−2〜1−8〉
(3)の液状BRの量を3質量部(実施例1−2)、5質量部(実施例1−3)、10質量部(実施例1−4)、20質量部(実施例1−5)、30質量部(実施例1−6)、40質量部(実施例1−7)、および50質量部(実施例1−8)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0071】
〈実施例1−9〜1−15〉
(3)の液状BRとして、前出の(株)クラレ製のクラプレンLBR−305〔数平均分子量Mn:26000〕を使用するとともに、その量を1質量部(実施例1−9)、5質量部(実施例1−10)、10質量部(実施例1−11)、20質量部(実施例1−12)、30質量部(実施例1−13)、40質量部(実施例1−14)、および50質量部(実施例1−15)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0072】
〈実施例1−16〜1−23〉
(3)の液状BRとして、前出の(株)クラレ製のクラプレンLBR−352〔数平均分子量Mn:9000〕を使用するとともに、その量を1質量部(実施例1−16)、3質量部(実施例1−17)、5質量部(実施例1−18)、10質量部(実施例1−19)、20質量部(実施例1−20)、30質量部(実施例1−21)、40質量部(実施例1−22)、および50質量部(実施例1−23)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0073】
〈従来例1〉
(3)の液状BRを配合せず、かつ(2)のBRの量を70質量部としたこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈従来例2〉
(2)のBRに代えてNBR〔JSR(株)製のJSR N250SL、ニトリル含量:19.5%〕60質量部を使用したこと以外は実施例1−11と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造したが、ゴム分の相溶性が不十分で、製造した半導電性ローラに長手方向にスジが入ったため以下の試験は実施しなかった。
【0074】
〈タイプAデュロメータ硬さ測定〉
実施例1−1〜1−23、従来例1で製造した半導電性ローラのタイプAデュロメータ硬さを、温度23±2℃、相対湿度55±2%の標準試験温度および標準試験湿度の環境(以下「標準試験環境」と略記する場合がある)下、下記の測定方法に則って測定した。
すなわち上記標準試験環境下、半導電性ローラの両端から突出したシャフトの両端部を支持台に固定した状態で、当該半導電性ローラの幅方向の中央部に上方から日本工業規格JIS K6253−3:2012の規定に準拠したタイプAデュロメータの押し針を当てて、加圧面に加える質量:1kg、測定時間:3秒(加硫ゴムの標準測定時間)の条件で測定した値でもってタイプAデュロメータ硬さとした。
【0075】
タイプAデュロメータ硬さが大きいほど、半導電性ローラはヘタリを生じにくいと言える。
〈画像耐久性試験〉
実施例1−1〜1−23、従来例1で製造した半導電性ローラを、市販のレーザープリンタ用の、新品のカートリッジ(トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラが一体になったもの)の既設の現像ローラと交換した。なおレーザープリンタは正帯電の非磁性1成分トナーを使用するもので、トナー推奨印字枚数は約8000枚である。
【0076】
上記新品のカートリッジを初期状態のレーザープリンタに装着し、温度30±1℃、相対湿度80±1%の高温高湿環境下、5%濃度の画像を画像形成して、かぶりの有無による画像耐久性の良否を下記の基準で評価した。
◎:カブリは全く見られなかった。画像耐久性は極めて良好。
○:目視では観察できない程度のわずかなカブリがあったものの画像耐久性は良好。
【0077】
△:紙面端部にごくわずかなカブリがあったものの画像耐久性は実用レベル。
×:紙面端部にカブリがあり画像耐久性は不良。
以上の結果を表2〜表7に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
表2〜表7の実施例1−1〜1−23、従来例1の結果より、(2)のBRと(3)の液状BRを併用することで、従来例2のようにスジ等を生じることなしに、しかも現像ローラとして使用した際に画像耐久性に優れる上、ヘタリを生じにくい半導電性ローラが得られることが判った。
ただし実施例1−1〜1−23の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状BRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0085】
また実施例1−1〜1−8、実施例1−9〜1−15、および実施例1−16〜1−23の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状BRとしては、数平均分子量Mnが7500以上、特に8500以上で、かつ10000以下、特に9500以下であるものを選択して使用するのが好ましいことが判った。
《BR−液状SBR系》
〈実施例2−1〜2−8〉
ゴム分としては、実施例1−1で使用したのと同じ(1)のGECO、(2)のBR、および(4)のCRとともに、液状BRに代えて(3) 液状SBR〔前出の(株)クラレ製のクラプレンL−SBR−820、数平均分子量Mn:8500〕を使用した。
【0086】
そして(3)の液状SBRの量を1質量部(実施例2−1)、3質量部(実施例2−2)、5質量部(実施例2−3)、10質量部(実施例2−4)、20質量部(実施例2−5)、30質量部(実施例2−6)、40質量部(実施例2−7)、および50質量部(実施例2−8)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0087】
上記実施例2−1〜2−8で製造した半導電性ローラについて、先の両試験を実施した。結果を表8、表9に示す。
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
表8、表9の実施例2−1〜2−8、および先の従来例1の結果より、(2)のBRと(3)の液状SBRを併用することで、従来例2のようにスジ等を生じることなしに、しかも現像ローラとして使用した際に画像耐久性に優れる上、ヘタリを生じにくい半導電性ローラが得られることが判った。
ただし実施例2−1〜2−8の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状SBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0091】
《SBR−液状BR系》
〈実施例3−1〜3−7〉
ゴム分としては、実施例1−1で使用したのと同じ(1)のGECO、(3)の液状BR、および(4)のCRとともに、BRに代えて(2) SBR〔E−SBR、前出のJSR(株)製のJSR 1502〕を使用した。
【0092】
そして(3)の液状BRの量を1質量部(実施例3−1)、3質量部(実施例3−2)、5質量部(実施例3−3)、10質量部(実施例3−4)、20質量部(実施例3−5)、30質量部(実施例3−6)、および40質量部(実施例3−7)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のSBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0093】
〈従来例3〉
(3)の液状BRを配合せず、かつ(2)のSBRの量を70質量部としたこと以外は実施例3−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
上記実施例3−1〜3−7、従来例3で製造した半導電性ローラについて、先の両試験を実施した。結果を表10、表11に示す。
【0094】
【表10】
【0095】
【表11】
【0096】
表10、表11の実施例3−1〜3−7、従来例3の結果より、(2)のSBRと(3)の液状BRを併用することで、従来例2のようにスジ等を生じることなしに、しかも現像ローラとして使用した際に画像耐久性に優れる上、ヘタリを生じにくい半導電性ローラが得られることが判った。
ただし実施例3−1〜3−7の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状BRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0097】
《SBR−液状SBR系》
〈実施例4−1〜4−7〉
ゴム分としては、実施例1−1で使用したのと同じ(1)のGECO、および(4)のCRとともに、BRに代えて(2) SBR〔E−SBR、前出のJSR(株)製のJSR 1502〕、液状BRに代えて(3) 液状SBR〔前出の(株)クラレ製のクラプレンL−SBR−820、数平均分子量Mn:8500〕を使用した。
【0098】
そして(3)の液状SBRの量を1質量部(実施例4−1)、5質量部(実施例4−2)、10質量部(実施例4−3)、20質量部(実施例4−4)、30質量部(実施例4−5)、40質量部(実施例4−6)、および50質量部(実施例4−7)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のSBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0099】
〈実施例4−8〜4−14〉
(3)の液状SBRとして、前出の(株)クラレ製のクラプレンL−SBR−841〔数平均分子量Mn:10000〕を使用するとともに、その量を1質量部(実施例4−8)、5質量部(実施例4−9)、10質量部(実施例4−10)、20質量部(実施例4−11)、30質量部(実施例4−12)、40質量部(実施例4−13)、および50質量部(実施例4−14)とし、なおかつゴム分の総量が100質量部となるようにそれぞれ(2)のSBRの量を調整したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0100】
上記実施例4−1〜4−14で製造した半導電性ローラについて、先の両試験を実施した。結果を表12〜表15に示す。
【0101】
【表12】
【0102】
【表13】
【0103】
【表14】
【0104】
【表15】
【0105】
表12〜表15の実施例4−1〜4−14、および先の従来例3の結果より、(2)のSBRと(3)の液状SBRを併用することで、従来例2のようにスジ等を生じることなしに、しかも現像ローラとして使用した際に画像耐久性に優れる上、ヘタリを生じにくい半導電性ローラが得られることが判った。
ただし実施例4−1〜4−14の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状SBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に10質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0106】
また実施例4−1〜4−7、および実施例4−8〜4−14の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、(3)の液状SBRとしては、数平均分子量Mnが8000以上で、かつ10000以下、特に9000以下であるものを選択して使用するのが好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0107】
1 半導電性ローラ
2 通孔
3 シャフト
4 外周面
5 酸化膜
図1