(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6315900
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】クラッチ操作なしにシフトするためのシフトアシスト装置を備える自動二輪車シフト装置、および、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/26 20060101AFI20180416BHJP
【FI】
F16H61/26
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-124671(P2013-124671)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2014-1852(P2014-1852A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】10 2012 209 963.8
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・メルベ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・キスナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ティロルト
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・ティルシュ
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ポグントケ
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・キアーシュテン
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−250307(JP,A)
【文献】
特開2001−50389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための方法であって、
シフトレバー(150)を運動させる工程と、
前記シフトレバー(150)の初期位置からの運動に基づいてシフトプロセスを実施する工程と、
前記シフトレバー(150)の初期位置からの運動に基づいてエンジンの回転速度を制御する工程と、
を備える方法において、
前記シフトレバー(150)の初期位置からの運動に基づいてシフトプロセスを実施する工程は、前記シフトレバー(150)の運動に応じて、シフトアップおよびシフトダウンのためにシフトプロセスを実施するものであり、前記シフトレバー(150)の初期位置からの運動は前記シフトレバー(150)の回転であり、前記シフトレバー(150)の回転を前記シフトレバー(150)の軸線方向の並進運動に変換し、前記並進運動によりばねアキュムレータユニット(125)に予圧をかけるものであって、エンジンの回転速度にかかわらず、シフトプロセスを実施する工程である、
クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記シフトレバー(150)を運動する工程が、シフトレバー軸線(152)を中心として前記シフトレバー(150)を回転させる工程を含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記シフトレバー(150)のさらなる運動とは無関係に、予圧をかけられた前記ばねアキュムレータユニット(125)の支援によって所定の回転角度が得られた場合に、シフトを行う方法。
【請求項4】
クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするためのシフトアシスト装置(100)であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法を実施するための手段が設けられているシフトアシスト装置(100)。
【請求項5】
請求項4に記載のシフトアシスト装置(100)であって、
前記手段は、シフトレバー(150)によって実施される回転運動を変換するための変換装置(160)を含むシフトアシスト装置(100)。
【請求項6】
請求項5に記載のシフトアシスト装置(100)であって、
前記変換装置(160)は、少なくとも1つの回転ユニット(165)と、該少なくとも1つの回転ユニット(165)と協働するストロークユニット(167)と、を有する回転・ストローク装置(161)を備えるシフトアシスト装置(100)。
【請求項7】
請求項6に記載のシフトアシスト装置(100)であって、
前記回転・ストローク装置(161)に連結された少なくとも1つのばねアキュムレータユニット(125)を備え、
前記ばねアキュムレータユニット(125)は、前記回転・ストローク装置(161)の軸線方向運動によって、弛緩状態から予圧をかけられた状態に移行可能である
シフトアシスト装置(100)。
【請求項8】
クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための自動二輪車シフト装置であって、
少なくとも1つのシフト電子装置と、少なくとも1つのシフト機械装置とを備え、
前記シフト電子装置が前記シフト機械装置に連結されている自動二輪車シフト装置において、
請求項5〜7のいずれか一項に記載のシフトアシスト装置(100)が設けられている
自動二輪車シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のクラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、請求項8のプリアンブルに記載のクラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするためのシフトアシスト装置に関する。
【0003】
さらに本発明は、請求項12のプリアンブルに記載のクラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための自動二輪車シフト装置に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、半オートマチック自動二輪車シフト装置または半オートマチックシフト方法、すなわち、独立請求項のプリアンブルに記載のクラッチ操作なしにシフトする方法から出発している。
【0005】
本発明の対象は、使用者の手動によるクラッチ操作なしにシフトが実施されるエンジン駆動式二輪車または自動二輪車のためのシフト装置である。
【0006】
従来技術により、クラッチ操作なしにシフトするための自動二輪車シフト装置が既知である。このような自動二輪車シフト装置は、部分的にはかなり大型であり、および/または、特にシフトプロセスが中断された場合には、シフト特性の質的低下が生じる。さらに、高価な力測定センサが必要な場合も多い。さらに、既知の自動二輪車シフト装置は、十分に確実に作動しないことも多い。
【0007】
ドイツ国特許出願公開第102010015036号明細書により、足によって第1シフト方向または第1シフト方向とは反対の第2シフト方向に操作可能な操作部材を備える自動二輪車のためのシフト装置が既知である。操作部材は、クラッチが閉じられた状態でシフトを可能にするシフトアシスト装置を介して、自動二輪車ギアのシフト入力部に連結されている。シフトアシスト装置は、単一のばねを備え、この場合、シフトアシスト装置は、操作部材のばねが、ばねに予圧がかけられた非操作基本位置から出発して、操作部材が操作された場合に第1シフト方向および第2シフト方向のどちらにも圧縮されるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第102010015036号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための本発明による方法は、シフトレバーを運動させる工程と、初期位置からのシフトレバーの運動に基づいてシフトプロセスを実施する工程とを含み、シフトレバーの運動に応じてシフトアップのためにもシフトダウンのためにもシフトプロセスが実施される方法は、シフトアシスト装置の組付け後にシフトがクラッチ操作なしに両方向に支援されるという利点を有する。他のシフトアシスト装置は、組付け後には一方向へのシフト支援に関しては定められているが、本発明によれば、組付け後に両方向への任意のシフト、すなわち、シフトアップおよびシフトダウンが支援装置によりクラッチ操作なしに実施可能である。
【0010】
対応する独立請求項またはさらなる請求項に記載の特徴を有する本発明による自動二輪車シフト装置、シフトアシスト装置、および、クラッチ操作なしに二輪自動車シフト装置をシフトするための本発明による方法は、従来技術に対して次のような利点を有する。クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための方法であって、工程初期位置から、および/または、初期位置へ、シフトレバーを運動させる工程と、初期位置からのシフトレバーの運動に基づいてシフトプロセスを実施する工程とを含む方法では、この運動によって、シフトプロセスを支援する少なくとも1つのばねアキュムレータユニットの予圧が変更され、運動およびこれによる予圧変化が変換装置によって変換される。これにより、変換装置によって、予圧変化、ひいてはシフトプロセス特性が調節可能となっている。一実施形態では、調節は、例えば、作業時または製造時に一回だけ行われる。別の実施形態では、調節は、アクセス可能な調節ねじなどを介して行われる。すなわち、使用者は、簡単にアクセスして個人的に調整を行うことができる。一実施形態では、シフトのために最適化されたばね特性線もしくは最適化された予圧が一回だけ、および/または、変更不能に調節される。シフト動作またはシフト力の伝達は、純粋に線形には行われない。むしろ、力および/または運動の変換は、変換装置によって実施される。この場合、変換は、力の変換および/または運動の変換、特に並進運動の回転運動への変換を含む。このようにして、シフトの際に改善された配量を行うことができる。予圧変化は、例えばギアとして構成された変換装置によって調節可能である。一実施形態では、ばねアキュムレータユニットは、初期位置では弛緩された状態、特に完全に弛緩された状態に構成されるか、または、予圧のない状態に構成される。好ましい実施形態では、ばねアキュムレータユニットは、少なくとも軽く予圧をかけられた状態で初期位置に配置される。好ましくは、ばねアキュムレータユニットは、アイドリングの検出を支援するように予圧をかけられる。変換装置によって、シフトアシスト装置の柔軟な配置が可能である。シフトアシスト装置は、上方へも下方へも、レースドライバが最速でギアチェンジを行い、ツーリングドライバがクラッチ操作なしに快適にシフトすることを可能にする。
【0011】
従属請求項に記載の手段によって、独立請求項に記載の装置の有利な他の実施形態および改良形態が可能である。
【0012】
一実施形態では、シフトレバーの移動は、シフトレバー軸線を中心としたシフトレバーの回転を含む。このようにして、シフトレバー、より一般的には入力レバーの引っ張りまたは押圧操作が、シフトレバー軸線を中心とした所定の変向角度の回転または変向に変換される。変換は、例えば、ボールジョイントによって行われる。この場合、変向角度は、例えば、約−15°〜約+15°の範囲であり、最も好ましくは、約−7.5°〜約+7.5°の角度範囲である。
【0013】
他の実施形態では、シフトは
エンジンの回転
速度に応じて行われる。シフトアシスト装置は、いずれの
エンジンの回転
速度でも作動する。このようなことは、とりわけ、ばね支援装置およびシフトアシスト装置の構成によって行われる。これにより、所定の
エンジンの回転
速度の範囲でのみシフト支援を保障する既知の解決手段に対して快適なシフトが実施される。
【0014】
別の実施形態では、シフトレバーの回転は、シフトレバーの軸線方向の並進運動に変換される。これに対応してストロークまたは運動変換が行われる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、並進運動によって、ばねアキュムレータユニットに予圧がかけられる。ばねアキュムレータユニットは、好ましくは、シフトレバー軸線に沿って一方向に予圧をかけられる。
【0016】
対応する独立請求項またはさらなる請求項に記載の特徴を有する、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための本発明によるシフトアシスト装置は、従来技術に対して、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするためのシフトアシスト装置に、本発明による方法を実施するための手段が設けられているという利点を有する。これにより、シフトの際に改善された配量を実施することができる。一手段は、例えば、ギアとして構成された変換装置である。ギアは、省スペースに構成可能である。さらに、ギアによって最適にシフトを行うための任意の変換比を設定することができる。
【0017】
一実施形態では、手段は、シフトレバーによって行われた運動および/または加えられた力、特に回転運動すなわちトルクを、例えば、並進運動または引っ張り力もしくは押圧力に変換するための変換装置、例えば、変換ギアを含む。これにより、省スペースの構成が実施可能である。変換ギアにより、シフトアシスト装置の配置に関してより高い柔軟性が得られる。シフトレバーは、シフトレバー軸線を中心として回動可能である。一実施形態では、シフトレバー軸線は、シフトシャフトまたは出力レバーに対して同心的に配置されている。別の実施形態では、シフトレバー軸線は、シフトシャフトに対して偏心的に配置されている。変換装置は、力および/またはストロークもしくは運動変換装置として構成されている。
【0018】
さらに別の実施形態では、変換装置は、少なくとも1つの回転ユニットおよびこれと協働するストロークユニットを有する回転・ストローク装置を備える。回転ユニットは、シフトレバーに回動不能に連結されている。この場合、第1回転ユニットは、シフトレバー軸線を中心として回転可能に支承されている。ストロークユニットは、シフトレバー軸線に沿って軸線方向に運動可能に支承されている。好ましくは、ストロークユニットは、シフトレバー軸線に対して回動不能に支承されている。回転ユニットが回転された場合、ストロークユニットは、シフトレバー軸線に沿って回転ユニットに対して軸線方向に移動される。この場合、回転ユニットは、回転の際に常にストロークユニットに接触する。これらのユニットは、回転ユニットの回転をストロークユニットの並進運動に変換するために、対応する変換手段を備える。変換手段は、好ましくは斜面の原理にしたがって作用する。別の一実施形態では、変換手段に対して相対移動可能な転動体および/または滑動体などの付加的な可動体が設けられている。ギア手段の形態の他の変換手段、例えば、連結装置、歯車、カムディスクおよび/またはこれらと同等のものも可能である。付加的な可動体なしに、好ましくは、摩擦を低減する手段、例えば被覆層、または、適宜な材料結合部が設けられる。例えば、被覆層としては、減摩ラッカーまたは同等のものが設けられる。これらの変換手段は、等しい構成または異なる構成になっている。例えば、一実施形態では、斜面は、様々な傾斜度もしくは平坦度に構成されている。特に、シフトアップのために構成された斜面は、シフトダウンのために構成された斜面とは異なる。これにより、異なるシフト特性を形成することができる。一実施形態では、斜面は真っすぐに構成されている。他の実施形態では、斜面は湾曲されており、特に一回または複数回湾曲されている。例えば、湾曲した斜面は、S字形またはC字形に構成されている。この場合、一実施形態では、斜面の勾配は一定である。別の一実施形態では、斜面の勾配は、例えば、不連続または連続的に変化する。このように、増大もしくは減衰するシフト特性または任意のシフト特性を実施することもできる。
【0019】
さらに一実施形態では、手段は、回転・ストローク装置に連結された少なくとも1つのばねアキュムレータユニットを備え、このばねアキュムレータユニットは、回転・ストローク装置の軸線方向運動によって、弛緩状態から予圧をかけられた状態に移行可能である。一方では、ばねアキュムレータユニットは、ストロークユニットに連結されている。他方では、ばねアキュムレータユニットは、例えば、ケーシング、ディスク、ストッパなどによって形成される。したがって、ばねアキュムレータユニットは、ストロークユニットが軸線方向に運動した場合に圧縮されるか、もしくは予圧をかけられる。ばねアキュムレータユニットは、例えば、ばね、特に圧縮ばね、例えば、皿ばねなどとして構成される。一実施形態では、ばねアキュムレータユニットは、複数のばねから構成される。例えば、一実施形態のばねは、線形または直列に接続された状態に構成される。別の実施形態では、並列接続されているか、または、直列接続と並列接続とを組み合わせている。
【0020】
要約すれば、以下のことを確認できる。
【0021】
シフトアシスト装置は、より迅速なギアチェンジまたはシフトプロセスを可能にし、この場合、シフトアップまたはシフトダウンの際にクラッチを操作することなしに、快適で正確なシフトが行われる。この場合、シフトアシスト装置は、シフトシャフトの端部に固定されており、シフトレバーに結合されている。シフトレバーは、シフトプロセスでシフトレバーに加えられる引っ張り負荷および/または押圧負荷によって動く。シフトレバーで所定の変向角度が得られた場合、シフトアシスト装置は、シフトアップの場合に点火を中断させるか、または、シフトダウンの場合に絞りを短時間開放させる。2つの機能は、駆動系への力の伝達を遅らせる。シフトレバーの操作によりシフトアシスト装置のばねアキュムレータユニットに予圧がかけられることによって、クラッチ操作およびガスレバーの変更なしに迅速にシフトを行うことが可能となる。シフトレバーまたは入力部は、シフトシャフトまたは出力部に固定されており、異なる方向に移動させることができる。力を加えられていない場合には、シフトレバーは、ばねアキュムレータユニットの戻し力によってニュートラルな位置すなわち中央の位置にある。シフトアシスト装置のセンサは、シフトレバーの変向角度を監視する。シフトレバーの所定の変向角度が得られた場合には、シフトアシスト装置のセンサは、所望の機能を実行するためにエンジン制御部に信号を発信する。
【0022】
シフトダウンのためには、シフトアシスト装置の方向にシフトレバーに押圧力が加えられる。シフトレバーは、並進を回転または変向(変向角度)に変換する。一方向への変向によってシフトアシスト装置のばねに応力が生成される。所定の変向角度が得られた場合、シフトアシスト装置のセンサは、エンジン制御のための信号を生成し、これにより、絞りが短時間開放される。この場合、駆動系への力の伝達が中断される。予圧をかけられたばね、または、ばねアキュムレータユニットは、機械的なシフトプロセスを引き起こすばねエネルギー、もしくは、ばね力を出力レバーに伝達するか、または、シフトシャフトに直接に伝達する。
【0023】
シフトアップのためには、シフトレバーを介してシフトアシスト装置に引っ張り力が伝達される。シフトレバーまたは入力レバーは、シフト力を変向に変換する。適宜な方向への変向は、シフトアシスト装置のばねアキュムレータユニットの応力を生成する。変向角度が得られるとすぐに、シフトアシスト装置のセンサは、エンジン制御部に信号を発信し、この信号は点火を短時間中断する。予圧をかけられたばね、または、ばねアキュムレータユニットは、機械的なシフトプロセスを引き起こすばねエネルギー、もしくは、ばね力を出力レバーに伝達するか、または、シフトシャフトに直接に伝達する。センサとしては、好ましくはホール式角度センサが使用される。この場合、センサは、シフトシャフトに軸線方向に組み付けられた磁石の前方に位置決めされる。磁束密度がx方向およびy方向に検出される。逆正接関数によって、出力信号が磁束密度から計算される。センサは、2つの独立した出力信号を提供する。この場合、センサは非接触式に作動する。
【0024】
これにより、シフトアシスト装置は、クラッチ操作なしに、最適なシフト時間および精度でシフトアップおよびシフトダウンを可能にする。この場合、シフトは、クラッチ操作の使用とは無関係に、使用者にとって明瞭に、自然に構成される。使用者は、慣れるまでの時間を必要とせず、シフト特性およびシフト感覚に関して相違は生じない。シフトアシスト装置は、設計変更を必要としないように配置される。組み込まれたばね力を使用することによりシフトプロセスは正確に実施され、シフトエラーが防止される。この場合、シフトアシスト装置は、メンテナンスが不要であり、自動二輪車の安全な場所に配置される。柔軟な構成により、レバー長さおよび変位は、使用者の必要性に任意に適合させることができる。
【0025】
対応する独立請求項に記載の特徴を有する、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするための本発明による自動二輪車シフト装置は、従来技術に対して、クラッチ操作なしに自動二輪車ギアをシフトするためのシフトアシスト装置において、少なくとも1つのシフト電子装置および少なくとも1つのシフト機械装置を含み、シフト電子装置はシフト機械装置に連結されており、本発明による方法を実施するために、本発明によるシフトアシスト装置が設けられているという利点を有する。
【0026】
本発明の実施例を図面に示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】自動二輪車におけるシフトアシスト装置の位置を示す概略図である。
【
図2】自動二輪車のシフトアシスト装置の領域を拡大して示す概略図である。
【
図3】自動二輪車のシフトアシスト装置を別の方向から見た概略図である。
【
図4】シフトアシスト装置の第1実施例の構成を示す概略断面図である。
【
図5】シフトアシスト装置の別の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【
図6】シフトアシスト装置の別の実施形態を示す概略的な斜視図である。
【
図7】シフトアシスト装置のシフトプロセスを示す概略的な斜視図である。
【
図8】シフトアシスト装置の一実施形態の構成を示す概略的な分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜
図8は、シフトアシスト装置100の様々な実施形態を異なる方向から見て異なる程度に詳細に示す図である。シフトアシスト装置100は、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置をシフトするように、より正確には、クラッチ操作なしに自動二輪車シフト装置のシフトプロセスを支援するように、または、より簡潔には、半オートマチック式にシフトするように構成されている。シフトプロセスでは、シフトレバーまたはシフトレバーに連結された入力レバー150が初期位置からシフト位置へ移動される。この移動によりシフトプロセスが誘起される。シフトプロセスを支援するために、ばねアキュムレータユニット125が設けられている。このばねアキュムレータユニット125の予圧は、シフトレバー150の移動により変更される。シフトプロセスを開始した場合、ばねアキュムレータユニット125の応力が対応して高められる。シフトプロセスを実施するためには、高められたばねアキュムレータユニットの応力、および、これによりばねアキュムレータユニット125内に蓄えられたエネルギーが、シフトプロセスを確実に開始し、実施するために使用される。シフトアシスト装置100およりシフト方法を以下に詳細に説明する。
【0029】
図1は、シフトアシスト装置100と、自動二輪車1におけるシフトアシスト装置100の位置とを概略的に示している。シフトアシスト装置100は、自動二輪車1において、シフトレバー150と、シフトシャフトまたは出力レバー20(いずれも
図1には示されていない)との間でシフトされる。シフトアシスト装置100の位置を以下に明らかに示す。
【0030】
図2は、自動二輪車1のシフトアシスト装置100の領域を示す概略的な拡大図である。このシフトアシスト装置100は、シフトシャフト20(または出力レバー、示唆のみされている)に対して同心的な延長部分に設けられている。したがって、シフトアシスト装置100は、シフトギア(ここにはシフトギアケーシング30のみが示されている)から外側に突出している。
【0031】
図3は、自動二輪車1のシフトアシスト装置100を別の方向から見た図を概略的に示している。シフトアシスト装置100は、ボールジョイント40を介してシフトレバー150に結合される。シフトレバー150は、フットレバーとして構成されており、フットレバーは、対応するフット部材151を備える。このようにして、シフトレバー150の運動がシフトアシスト装置100に伝達される。この場合、シフトレバー150は、ここに図示の実施例では一致しているシフトシャフト軸線もしくはシフトレバー軸線152を中心として時計回りに操作するか、またはシフトレバー軸線152を中心として反時計回りに操作することができる。この場合、シフトレバー軸線152は、シフトアシスト装置100の中央を通って、シフトアシスト装置100の長さ方向に沿って延在している。
【0032】
図4は、シフトアシスト装置100の第1実施例の構成を概略的に断面図で示している。この実施例では、シフトアシスト装置100は、出力レバーすなわちシフトシャフト20に同心的に設けられている。シフトシャフト20は、円筒状に構成されたシャフト端部21を備える。このシャフト端部21は、シフトアシスト装置100の対応する収容部105に収容されている。シャフト端部21を確実に収容するために、収容部105はテーパした断面を備える円錐状に構成されており、したがって、収容部105の壁部とシャフト端部21との半径方向間隔は、シャフト端部21に向けて減少している。シャフト端部21と収容部105との間のテーパした中間室は、確実な収容を保障するくさび状部材107によって充填されている。さらにシャフト端部21は、シャフト端部21の方向にシフトアシスト装置100を貫通するねじ109を介して固定されている。シフトアシスト装置100またはシフトアシスト装置本体133は、ストッパディスク111aの形態のストッパ111を外周に備える。ストッパディスク111aは、ショルダ113に対して付加的に、玉軸受リング115を軸線方向に固定する。玉軸受リング115には複数の溝状の凹部117が形成されており、これらの凹部117は、ここに図示の実施例では、ほぼ長方形の横断面を備える。凹部117は、互いに離間されており、ひいては対応する壁部によって互いに隔離されている。個々の凹部117には、それぞれ1つの玉119が配置されている。玉119の代わりに、他の転動体、滑動体またはローラ体を用いてもよい。玉119の少なくとも半分は、凹部117内に配置されている状態で凹部117に収容されている。したがって、凹部117の深さは玉119の半径よりも大きい。玉軸受リング115に向かい合って別の玉軸受リング121が設けられている。この玉軸受リング121は、玉軸受リング121の凹部123の深さにより玉軸受リング115とは異なっている。玉軸受リング121の凹部123の深さは、玉軸受リング115の凹部117の深さよりも著しく小さく、したがって、玉119の直径よりも著しく小さい。シフトレバー150が回転された場合、この回転は玉軸受リング115に伝達される。玉軸受リング115は玉119と共に回転し、これに続いて、玉119は、玉軸受リング121の凹部123の縁部に衝突する。凹部123は、玉119を凹部123に保持することができる程には深くないので、玉119は、凹部123を超えて移動し、これにより、玉軸受リング121を押圧し、玉軸受リング123を押し離す。これにより、玉軸受リング121に隣接するばねアキュムレータユニット125が圧縮され、これによりばねエネルギーが蓄積される。ばねアキュムレータユニット125は、軸線方向に別のストッパ127によって固定されている。蓄積されたばねエネルギーは、シフトを行うために、または、シフトプロセスを実施するために使用される。
【0033】
図5は、シフトアシスト装置100の別の実施形態を概略的に斜視図で示している。シフトアシスト装置100は、シフトアシスト装置100を備えるシフトシャフト20のための固定装置129を含み、固定装置129は、ここではクランプ部材202として形成されている。固定装置129は、対応するシフトシャフト20を収容するために構成された溝付き収容部131を備える。固定装置129は、シフトアシスト装置本体133に回動不能に結合されている。この場合、固定装置129とシフトアシスト装置本体133とは互いに爪状に係合し、これにより互いに回動不能に配置されている。シフトアシスト装置本体133の突出部135にはストッパディスク137が配置されており、このストッパディスク137の表面で玉119が転動する。玉119は、他方側では玉軸受リング139によって固定されている。玉軸受リング139は、玉119を所定位置に保持する凹部141を備える。凹部141の壁部は、斜面の形式の傾斜部143として形成されている。玉119が凹部141に対して回転した場合、玉119は傾斜部143に沿って凹部141から移動し、これにより、玉軸受リング139は、軸線方向にストッパディスク137から離れるように移動される。軸線方向の移動は、隣接するばねアキュムレータユニット125に伝達され、ばねアキュムレータユニット125には、ばねエネルギーが蓄積され、シフトプロセスを支援するために取り出される。
【0034】
したがって、両方の玉軸受リング115および121、ならびに、これらの間に配置された玉119によって、または、玉軸受けリング139、玉119およびストッパディスク137によって、回転運動を並進運動に変換する変換装置160、より正確には、回転・ストローク装置161が実現される。
【0035】
図6は、シフトアシスト装置100の別の実施形態を概略的に斜視図で示している。シフトアシスト装置100の構成は、原理的には、これまでに説明した2つの実施形態に類似している。しかしながら、ここでは、変換装置160が異なる形式で構成されている。
図6に示した変換装置160では、玉119などの付加的な変換手段162が不要である。その代わりに、変換手段162は、斜面162aの形態で組み込まれている。変換装置160は、回転ユニット165を有する回転・ストローク装置161を含み、回転ユニット165は、斜面162aの形態で軸線方向に歯状に張り出した突出部を有するリングディスク165aとして構成されている。回転ユニット165は、回転ユニット165に対して相補的に構成されたストロークユニット167と協働する。すなわち、ストロークユニット167は、軸線方向に歯状に張り出した突出部を有するリングディスク165aとして構成されている。この場合、突出部は、例えば台形に構成されており、側面は、それぞれ1つの斜面162aがリングディスク165aの方に延びている。斜面162aは、どのようなシフト特性に設定したいかに応じて、等しい傾斜を備えていてもよいし、または、様々に異なる傾斜で延在していてもよい。例えば、一実施形態では、シフトアップのための斜面162aは、シフトダウンのための斜面162aよりも、より平坦に構成されているか、または、その逆に構成されている。変換装置160または回転・ストローク装置161によって、回転ユニット165の回転運動がストロークユニット167の並進運動に変換される。これにより、ばねアキュムレータユニット125は、圧縮または解放される。圧縮された場合には、ばねエネルギーが蓄積され、シフトプロセスのために使用される。
【0036】
図7は、シフトアシスト装置100のシフトプロセスを概略的に斜視図で示している。シフトプロセスは、シフトレバー150として構成された操作ユニットによって開始される。操作ユニットは、第1方向Aまたは逆の第2方向Bに矢印に従って操作される。操作によって生じる回転運動は、シフトアシスト装置100に伝達される。この回転運動は、変換装置160または回転・ストローク装置161によって並進運動に変換される。並進運動は、ばねアキュムレータユニット125に予圧をかける。この場合に蓄積されたばねアキュムレータエネルギーは、シフトプロセスを支援するために使用される。
【0037】
図8は、シフトアシスト装置100の一実施形態の構成を概略的に分解図で示している。ここに示した実施例では、ケーシング204内には、軸線方向に変位可能な調節ナット208を介して変位可能なスペーサディスク207が配置されている。スペーサディスク207には、複数の、ここでは2つの皿ばね201により構成されたばねアキュムレータユニット125が軸線方向に隣接している。ばねアキュムレータユニット125には連行ディスク206が軸線方向に接続しており、この連行ディスク206は、同時にばねアキュムレータユニット125のためのストッパ面を構成している。連行ディスク206は、ストロークディスク205として構成された回転・ストローク装置161のストロークユニット167に回動不能に軸線方向に結合されている。この場合、ストロークディスク205は、3つのシリンダピン218を介して連行ディスク206に回動不能に結合されており、3つのシリンダピン218は、連行ディスク206の対応する開口部206aに係合する。ストロークディスク205は、シリンダピン218の方を向いていない側に、斜面162aとして構成され、軸線方向に張り出した歯状の突出部を備え、この突出部は変換手段162として機能する。これに対応して、軸線方向に第2ストロークディスク205には、この第2ストロークディスク205と係合する第1ストロークディスク220が続き、第1ストロークディスク220は、回転・ストローク装置161の回転ユニット165として機能する。第1ストロークディスク205は、第2ストロークディスク205の方向に歯状に軸線方向に張り出した斜面162aを備え、これらの斜面162aは、第2ストロークティスク205の斜面162に対して相補的に構成されている。第1ストロークディスク220は、3つのシリンダピン219を介して、第1ストロークディスク220を収容するシフトレバー150に回動不能に結合されている。出力レバーまたはシフトレバー150の周面には、シフトレバー150の位置を決定するために磁石210が配置されている。さらに、シフトレバー150は軸線方向にクランプ部材202に結合されており、クランプ部材202を介してシャフト209がシフトレバー150に結合可能である。クランプ部材202は、2つの平頭ねじ214および2つの円筒形ピン217を介してケーシング204に結合されている。シャフト209内には、スタッドボルト211が収容されている。シャフト209は、シャフト209のフランジによって平頭ねじ213を介してクランプ部材202に結合されている。シフトアシスト装置100は、平頭ねじ216を介してシフトシャフト(ここには図示していない)でクランプされる。ケーシング204には、2つの平頭ねじ215によってセンサ212が配置されている。センサ212は、磁石210の運動を検出する。この運動検出に基づいてエンジン制御のための制御信号が生成される。この場合、実施形態に応じて、運動は回転運動または並進運動として行われる。センサ212は、位置検出のため、特に角度検出および/またはストローク検出のためのセンサとして構成されている。
【符号の説明】
【0038】
1…自動二輪車
20…出力レバー(シフトシャフト)
21…シャフト端部
30…シフトギアケーシング
40…ボールジョイント
100…シフトアシスト装置
105…収容部
107…状部材
111…ストッパ
111a…ストッパディスク
113…ショルダ
115…玉軸受リング
117…凹部
119…玉
121…玉軸受リング
123…凹部
125…ばねアキュムレータユニット
127…ストッパ
129…固定装置
131…収容部
133…シフトアシスト装置本体
135…突出部
137…ストッパディスク
139…玉軸受リング
141…凹部
143…傾斜部
150…入力レバー(シフトレバー)
151…フット部材
152…シフトレバー軸線
160…変換装置
161…ストローク装置
162…斜面(変換手段)
162a…斜面
165…回転ユニット
165a…リングディスク
167…ストロークユニット
201…皿ばね
202…クランプ部材
204…ケーシング
205…ストロークディスク
206…連行ディスク
206a…開口部
207…スペーサディスク
208…調節ナット
209…シャフト
210…磁石
211…スタッドボルト
212…センサ
217…円筒形ピン
218…シリンダピン
219…シリンダピン
220…第1ストロークディスク
A…第1方向
B…第2方向