特許第6316096号(P6316096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6316096
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】液冷式冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20180416BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 N
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-109962(P2014-109962)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-225953(P2015-225953A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】田村 忍
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/054887(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/157247(WO,A1)
【文献】 特開2011−134979(JP,A)
【文献】 特開2011−091301(JP,A)
【文献】 特開2012−156322(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3077725(JP,U)
【文献】 米国特許第06401810(US,B1)
【文献】 登録実用新案第3117925(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05 K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシングに、入口ヘッダ部に通じる冷却液入口および出口ヘッダ部に通じる冷却液出口が形成され、ケーシング内の冷却液流路に、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置されている液冷式冷却装置において、
放熱器が、互いに間隔をおいて並列状に配置され、かつ長手方向を冷却液流路における冷却液の流れ方向に向けるとともに幅方向を上下方向に向けた状態で板厚方向に間隔をおいて配置された複数の縦長方形状フィンプレートを有し、全フィンプレートのうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレートのみにまたがるように、冷却液流路の幅よりも短い少なくとも1つの棒状流量均一化部材が配置されており、流量均一化部材が、フィンプレートの上下両側縁部のうちいずれか一方の側縁部に形成された切り欠き内に嵌め入れられている液冷式冷却装置。
【請求項2】
入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の一端部側に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部における冷却液入口と同一端部側に冷却液出口が設けられ、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置されている請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項3】
入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の一端部側に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部における冷却液入口と同一端部側に冷却液出口が設けられ、長さの異なる複数の流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置されている請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項4】
長さの異なる2つの流量均一化部材を有しており、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側に一方の流量均一化部材が配置されるとともに、冷却液流路の冷却液流れ方向下流側に他方の流量均一化部材が配置されている請求項3記載の液冷式冷却装置。
【請求項5】
入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液出口が設けられ、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置されている請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項6】
入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液出口が設けられ、長さの異なる複数の流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置されている請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項7】
長さの異なる2つの流量均一化部材を有しており、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側に一方の流量均一化部材が配置されるとともに、冷却液流路の冷却液流れ方向下流側に他方の流量均一化部材が配置されている請求項6記載の液冷式冷却装置。
【請求項8】
冷却液入口と冷却液出口とが入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の同一位置にあり、流量均一化部材が、冷却液入口および冷却液出口における入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の幅よりも長尺であり、冷却液入口および冷却液出口が、流量均一化部材の全長の範囲内に位置している請求項5〜7のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【請求項9】
放熱器が、フィンプレートの長手方向と交差する方向にのび、かつ全フィンプレートを連結一体化する2つの棒状連結部材を備えており、フィンプレートの幅方向両側縁部のうち一方の側縁部に、少なくとも1つの連結部材用切り欠きが、流量均一化部材を嵌め入れる切り欠きとは干渉しないように形成され、フィンプレートの幅方向両側縁部のうち他方の側縁部に、少なくとも1つの連結部材用切り欠きが、前記一方の側縁部の切り欠きとはフィンプレートの長手方向にずれた位置に、流量均一化部材を嵌め入れる切り欠きとは干渉しないように形成され、連結部材が、全フィンプレートの両側縁部の連結部材用切り欠き内に圧入されており、全フィンプレートが連結部材により連結一体化されている請求項1〜8のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【請求項10】
各フィンプレートの幅方向と直交する平面で切断した形状が波形であって、波頂部および波底部が交互に形成されており、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を蛇行状に流れるようになされている請求項1〜9のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置用放熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば半導体素子などの電子部品からなる発熱体を冷却する液冷式冷却装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図2の上下を上下というもとのとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイス(半導体素子)を冷却する液冷式冷却装置として、特許文献1記載のものが提案されている。
【0004】
特許文献1記載の液冷式冷却装置は、頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシング内の冷却液流路に、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置され、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中央部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中央部でかつ両ヘッダ部の長手方向に関して冷却液入口と同一位置に冷却液出口が設けられ、放熱器が、互いに間隔をおいて並列状に配置されるとともに上下両側縁部がケーシングの頂壁および底壁にろう付された複数の縦長方形状フィンプレートからなり、端部のフィンプレートを除いたフィンプレートの両面には、複数の凸部が点在するように設けられ、隣り合うフィンプレートの凸部どうしが接触した状態でろう付されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の液冷式冷却装置においては、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中央部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中央部でかつ冷却液入口と対応する位置に冷却液出口が設けられているので、冷却液入口から入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における冷却液入口および冷却液出口に近い部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口および冷却液出口から遠い部分には流れにくくなる。したがって、冷却液流路の幅方向に流量が不均一になり、流量が低下した部分において冷却性能が低下するという問題がある。この問題は、冷却液流路の幅が比較的広い場合に顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−37136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷却液流路の幅方向の流量を均一化しうる液冷式冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシングに、入口ヘッダ部に通じる冷却液入口および出口ヘッダ部に通じる冷却液出口が形成され、ケーシング内の冷却液流路に、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置されている液冷式冷却装置において、
放熱器が、互いに間隔をおいて並列状に配置され、かつ長手方向を冷却液流路における冷却液の流れ方向に向けるとともに幅方向を上下方向に向けた状態で板厚方向に間隔をおいて配置された複数の縦長方形状フィンプレートを有し、全フィンプレートのうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレートのみにまたがるように、冷却液流路の幅よりも短い少なくとも1つの棒状流量均一化部材が配置されており、流量均一化部材が、フィンプレートの上下両側縁部のうちいずれか一方の側縁部に形成された切り欠き内に嵌め入れられている液冷式冷却装置。
【0010】
2)入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の一端部側に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部における冷却液入口と同一端部側に冷却液出口が設けられ、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置されている上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0011】
3)入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の一端部側に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部における冷却液入口と同一端部側に冷却液出口が設けられ、長さの異なる複数の流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置されている上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0012】
4)長さの異なる2つの流量均一化部材を有しており、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側に一方の流量均一化部材が配置されるとともに、冷却液流路の冷却液流れ方向下流側に他方の流量均一化部材が配置されている上記3)記載の液冷式冷却装置。
【0013】
5)入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液出口が設けられ、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置されている上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0014】
6)入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液出口が設けられ、長さの異なる複数の流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置されている上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0015】
7)長さの異なる2つの流量均一化部材を有しており、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側に一方の流量均一化部材が配置されるとともに、冷却液流路の冷却液流れ方向下流側に他方の流量均一化部材が配置されている上記6)記載の液冷式冷却装置。
【0016】
8)冷却液入口と冷却液出口とが入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の同一位置にあり、流量均一化部材が、冷却液入口および冷却液出口における入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の幅よりも長尺であり、冷却液入口および冷却液出口が、流量均一化部材の全長の範囲内に位置している上記5)〜7)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【0017】
9)放熱器が、フィンプレートの長手方向と交差する方向にのび、かつ全フィンプレートを連結一体化する2つの棒状連結部材を備えており、フィンプレートの幅方向両側縁部のうち一方の側縁部に、少なくとも1つの連結部材用切り欠きが、流量均一化部材を嵌め入れる切り欠きとは干渉しないように形成され、フィンプレートの幅方向両側縁部のうち他方の側縁部に、少なくとも1つの連結部材用切り欠きが、前記一方の側縁部の切り欠きとはフィンプレートの長手方向にずれた位置に、流量均一化部材を嵌め入れる切り欠きとは干渉しないように形成され、連結部材が、全フィンプレートの両側縁部の連結部材用切り欠き内に圧入されており、全フィンプレートが連結部材により連結一体化されている上記1)〜8)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【0018】
10)各フィンプレートの幅方向と直交する平面で切断した形状が波形であって、波頂部および波底部が交互に形成されており、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を蛇行状に流れるようになされている上記1)〜9)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置用放熱器。
【発明の効果】
【0019】
上記1)〜10)の液冷式冷却装置によれば、放熱器が、互いに間隔をおいて並列状に配置され、かつ長手方向を冷却液流路における冷却液の流れ方向に向けるとともに幅方向を上下方向に向けた状態で板厚方向に間隔をおいて配置された複数の縦長方形状フィンプレートを有し、全フィンプレートのうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレートのみにまたがるように、冷却液流路の幅よりも短い少なくとも1つの棒状流量均一化部材が配置されているので、冷却液流路の幅方向の流量分布を均一化することが可能になる。すなわち、流量均一化部材を、冷却液入口および冷却液出口が設けられた位置関係によって、冷却液流路の幅方向における冷却液が流れやすくなる部分に配置しておくと、流量均一化部材が冷却液の流れに対する抵抗となり、冷却液入口から入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における流量均一化部材が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材が配置されていない部分を流れやすくなり、その結果、冷却液流路の幅方向の流量分布を均一化することが可能になる。したがって、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、流量均一化部材が、フィンプレートの上下両側縁部のうちいずれか一方の側縁部に形成された切り欠き内に嵌め入れられているので、比較的簡単に、流量均一化部材を全フィンプレートのうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレートのみにまたがるように配置することができる。
【0021】
さらに、全フィンプレートの厚みおよび形状を、冷却性能を向上させる上で効果的な厚みおよび形状とすることが可能になる。たとえば、各フィンプレートの幅方向と直交する平面で切断した形状を波形とし、波頂部および波底部が交互に形成されたものにすると、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を、フィンプレートに沿って蛇行状に流れることになり、フィンプレートにおける伝熱に有効に働く面積が効果的に増大し、冷却性能を向上させることができる。
【0022】
上記2)の液冷式冷却装置のように、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の一端部側に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部における冷却液入口と同一端部側に冷却液出口が設けられていると、冷却液入口からケーシング内の入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における冷却液入口および冷却液出口が設けられた側を流れやすくなるとともに、他側を流れにくくなって、冷却液流路の幅方向の流量分布が不均一になり、流量が低減した部分において冷却性能が低下する。しかしながら、上記2)の液冷式冷却装置のように、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置されていると、流量均一化部材が冷却液の流れに対する抵抗になるので、冷却液入口から入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における流量均一化部材が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路の幅方向の流量分布を均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0023】
上記3)および4)の液冷式冷却装置によれば、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路における冷却液入口側および冷却液出口側の端部から一定の範囲内に配置された長さの異なる複数の流量均一化部材の働きによって、冷却液流路の幅方向の流量分布を効果的に均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0024】
上記5)の液冷式冷却装置のように、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が、冷却液流路における冷却液の流れ方向と直角をなす方向に長くなっており、入口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液入口が設けられるとともに、出口ヘッダ部の長手方向の中間部に冷却液出口が設けられていると、冷却液入口からケーシング内の入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における冷却液入口および冷却液出口に近い部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口および冷却液出口から遠い部分には流れにくくなって、冷却液流路の幅方向の流量分布が不均一になり、流量が低減した部分において冷却性能が低下する。しかしながら、上記5)の液冷式冷却装置のように、1つの流量均一化部材が、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置されていると、流量均一化部材が冷却液の流れに対する抵抗になるので、冷却液入口から入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における流量均一化部材が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路の幅方向の流量分布を均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0025】
上記6)および7)の液冷式冷却装置によれば、冷却液流路の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路の幅方向の一定の範囲内に配置され、かつ冷却液入口および冷却液出口における入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の幅よりも長尺でかつ長さの異なる複数の流量均一化部材の働きによって、冷却液流路の幅方向の流量分布を効果的に均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0026】
上記8)の液冷式冷却装置のように、冷却液入口と冷却液出口とが入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の同一位置にあると、冷却液入口からケーシング内の入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、特に、冷却液流路における冷却液入口および冷却液出口に近い部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口および冷却液出口から遠い部分には流れにくくなって、冷却液流路の幅方向の流量分布がきわめて不均一になる。しかしながら、上記8)の液冷式冷却装置のように、流量均一化部材が、冷却液入口および冷却液出口における入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の長手方向の幅よりも長尺であり、冷却液入口および冷却液出口が、流量均一化部材の全長の範囲内に位置していると、流量均一化部材が冷却液の流れに対する抵抗になるので、冷却液入口から入口ヘッダ部内に流入した冷却液は、冷却液流路における流量均一化部材が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路の幅方向の流量分布を均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0027】
上記9)の液冷式冷却装置によれば、全フィンプレートを強固に連結一体化することができるので、液冷式冷却装置を製造する際の全フィンプレートの取扱性が向上し、液冷式冷却装置の製造作業が簡単になる。
【0028】
上記10)の液冷式冷却装置によれば、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を、フィンプレートに沿って蛇行状に流れることになり、フィンプレートにおける伝熱に有効に働く面積が効果的に増大し、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の実施形態1の液冷式冷却装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2のB−B線断面図である。
図4図3のC−C線断面図である。
図5図3のD−D線断面図である。
図6図1に示す液冷式冷却装置に用いられる放熱器を示す斜視図である。
図7】この発明の実施形態2の液冷式冷却装置の全体構成を示す図3相当の図である。
図8図7のE−E線断面図である。
図9図7のF−F線断面図である。
図10】この発明の実施形態3の液冷式冷却装置の全体構成を示す図3相当の図である。
図11図10のG−G線断面図である。
図12図10のH−H線断面図である。
図13】この発明の実施形態4の液冷式冷却装置の全体構成を示す図3相当の図である。
図14図13のI−I線断面図である。
図15図13のJ−J線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0032】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0033】
また、以下の説明において、図2の左右を左右といい、図3の上側を前、これと反対側を後というものとする。
実施形態1
この実施形態は図1図6に示すものである。
【0034】
図1図5は液冷式冷却装置の全体構成を示し、図6は液冷式冷却装置に用いられる放熱器を示す。
【0035】
図1図5において、液冷式冷却装置(1)は、頂壁(2a)、底壁(2b)および周壁(2c)を有するケーシング(2)を備えており、ケーシング(2)内に、冷却液がケーシング(2)の長手方向の片側(右側)から他側(左側)に流れる冷却液流路(3)と、冷却液流路(3)よりも上流側(右側)に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部(4)と、冷却液流路(3)よりも下流側(左側)に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部(5)とが設けられ、ケーシング(2)内の冷却液流路(3)に、ケーシング(2)の頂壁(2a)外面および底壁(2b)外面のうち少なくともいずれか一方、図示の例では頂壁(2a)外面に取り付けられた発熱体(P)から発せられる熱を、冷却液流路(3)を流れる冷却液に放熱する放熱器(6)が配置されている。
【0036】
詳細な図示は省略したが、ケーシング(2)は、頂壁(2a)および周壁(2c)を構成する下方に開口した箱状のアルミニウム製上構成部材を、底壁(2b)を構成する板状のアルミニウム製下構成部材上にろう付することにより形成されている。上構成部材および下構成部材は、少なくとも一面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを使用して、ろう材層がケーシング(2)内側に位置するように形成されている。
【0037】
ケーシング(2)内の入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)は、それぞれ冷却液流路(3)の幅方向(前後方向)にのびており、ケーシング(2)の周壁(2c)の後側部分における一端部側(左端部側)に、入口ヘッダ部(4)に通じる冷却液入口(7)が形成され、ケーシング(2)の周壁(2c)の後側部分における他端部側(右端部側)に、出口ヘッダ部(5)に通じる冷却液出口(8)が形成されている。冷却液入口(7)および冷却液出口(8)の左右方向の幅は等しくなっている。図示は省略したが、ケーシング(2)の冷却液入口(7)に、入口ヘッダ部(4)内に冷却液を送り込むアルミニウム製入口パイプが接続され、冷却液出口(8)に、出口ヘッダ部(5)内から冷却液を送り出すアルミニウム製出口パイプが接続されている。
【0038】
発熱体(P)は、IGBTなどのパワーデバイスや、IGBTが制御回路と一体化されて同一パッケージに収納されたIGBTモジュールや、IGBTモジュールにさらに保護回路が一体化されて同一パッケージに収納されたインテリジェントパワーモジュールなどからなり、絶縁部材(I)を介してケーシング(2)の頂壁外面に取り付けられる。
【0039】
図2図6に示すように、放熱器(6)は、長手方向を冷却液流路(3)における冷却液の流れ方向(左右方向)に向けるとともに幅方向を上下方向に向けた状態で、前後方向に間隔をおいて並列状に配置された複数のアルミニウム製縦長方形状フィンプレート(11)と、長手方向をフィンプレート(11)の長手方向と交差する方向(前後方向)に向けた状態で全フィンプレート(11)に跨るように配置され、かつ全フィンプレート(11)を連結一体化する2つの棒状連結部材(12A)(12B)と、長手方向をフィンプレート(11)の長手方向と交差する方向(前後方向)に向けた状態で全フィンプレート(11)のうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレート(11)のみにまたがるように配置された1つの棒状流量均一化部材(13)とからなる。放熱器(6)の隣り合う2つのフィンプレート(11)間、および両端のフィンプレート(11)とケーシング(2)の周壁(2c)における前後両側部分との間に冷却液が流れる分割流路(14)となっている。
【0040】
全フィンプレート(11)の上下両側縁部における長手方向両端寄りの部分に、それぞれ切り欠き(15)(16)が形成されており、フィンプレート(11)の一端寄りの部分に形成された上下の切り欠き(15)および(16)がフィンプレート(11)の長手方向の同一位置にあり、同じく他端寄りの部分に形成された上下の切り欠き(15)および(16)がフィンプレート(11)の長手方向の同一位置にある。
【0041】
一方の連結部材(12A)は、全フィンプレート(11)の上側縁部の左端寄りの部分に形成された切り欠き(15)内に、切り欠き(15)内から突出しないように圧入され、他方の連結部材(12B)は、全フィンプレート(11)の下側縁部の右端寄りの部分に形成された切り欠き(16)内に、切り欠き(16)内から突出しないように圧入されており、これにより全フィンプレート(11)が連結部材(12A)(12B)によって連結一体化されている。すなわち、各連結部材(12A)(12B)は、互いに他方の連結部材(12B)(12A)が圧入されている切り欠き(16)(15)が形成されたフィンプレート(11)の側縁部とは反対側の側縁部に形成され、かつ他方の連結部材(12B)(12A)が圧入されている切り欠き(16)(15)とはフィンプレート(11)の長手方向にずれた位置にある切り欠き(15)(16)内に圧入されている。
【0042】
フィンプレート(11)の両切り欠き(15)(16)間の部分を、幅方向と直交する平面(水平面)で切断した形状は波形であり、波頂部および波底部が交互に形成されており、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート(11)間を蛇行状に流れるようになされている。全フィンプレート(11)は、上側縁部がケーシング(2)の頂壁(2a)の内面にろう付され、下側縁部がケーシング(2)の底壁(2b)内面にろう付されている。
【0043】
流量均一化部材(13)は一定の長さ、たとえば冷却液流路(3)の幅のほぼ1/2の長さを有しており、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向下流側において、冷却液流路(3)における冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側の端部から一定の範囲内に配置されている。流量均一化部材(13)は、冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側に配置された一定数の複数のフィンプレート(11)における冷却液流れ方向下流側連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)とは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入されている。
【0044】
上記構成の液冷式冷却装置(1)において、入口パイプから冷却液入口(7)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)に配置された放熱器(6)の隣り合う2つのフィンプレート(11)間の分割流路(14)に分流し、各分割流路(14)内を右方に流れる。冷却液流路(3)の分割流路(14)を右方に流れた冷却液は、出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(5)を通って出口パイプに送り出される。
【0045】
液冷式冷却装置(1)においては、冷却液入口(7)と冷却液出口(8)が、入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)の長手方向の一端部(後端部)に来るように設けられているので、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)の冷却液入口(7)および冷却液出口(8)に近い後側部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)から遠い部分には流れにくくなる。
【0046】
しかしながら、一定の長さを有する1つの流量均一化部材(13)が、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側において、冷却液流路(3)における冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側の端部から一定の範囲内に配置されているので、流量均一化部材(13)が冷却液の流れに対する抵抗になる。その結果、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)における流量均一化部材(13)が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材(13)が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路(3)の幅方向の流量分布を均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0047】
そして、発熱体(P)から発せられる熱は、絶縁部材(I)、ケーシング(2)の頂壁(2a)および放熱器(6)の各フィンプレート(11)を経て冷却液流路(3)の各分割流路(14)内を流れる冷却液に放熱され、発熱体(P)が冷却される。
【0048】
実施形態1の液冷式冷却装置(1)において、流量均一化部材(13)は、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側に配置されていてもよい。この場合、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入される。
実施形態2
この実施形態は図7図9に示すものである。
【0049】
図7図9は液冷式冷却装置の全体構成を示す。
【0050】
実施形態2の液冷式冷却装置(20)に用いられている放熱器(21)は、長手方向をフィンプレート(11)の長手方向と交差する方向(前後方向)に向けた状態で全フィンプレート(11)のうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレート(11)のみにまたがるように配置された長さの異なる複数、ここでは2つの流量均一化部材(22)(23)を有している。
【0051】
一方の流量均一化部材(22)は一定の長さ、たとえば冷却液流路(3)の幅の1/2以上の長さを有しており、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向下流側において、冷却液流路(3)における冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側の端部から一定の範囲内に配置されている。当該流量均一化部材(22)は、冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側に配置された一定数の複数のフィンプレート(11)における冷却液流れ方向下流側連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)とは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入されている。
【0052】
他方の流量均一化部材(23)は一定の長さ、たとえば冷却液流路(3)の幅の1/2以下でかつ一方の流量均一化部材(22)よりも短い長さを有しており、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向上流側において、冷却液流路(3)における冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側の端部から一定の範囲内に配置されている。当該流量均一化部材(23)は、冷却液入口(7)側および冷却液出口(8)側に配置された一定数の複数のフィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入されている。
【0053】
その他の構成は、実施形態1の液冷式冷却装置(1)と同様である。
【0054】
実施形態2の液冷式冷却装置(20)においては、入口パイプから冷却液入口(7)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液が、冷却液流路(3)に配置された放熱器(20)の隣り合う2つのフィンプレート(11)間の分割流路(14)内を右方に流れて出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(5)を通って出口パイプに送り出される際に、実施形態1の液冷式冷却装置(1)と同様に、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)の冷却液入口(7)および冷却液出口(8)に近い後側部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)から遠い部分には流れにくくなる。
【0055】
しかしながら、2つの流量均一化部材(22)(23)が冷却液の流れに対する抵抗になり、冷却液流路(3)の全幅における両流量均一化部材(22)(23)が存在する部分の抵抗が最も大きく、出口ヘッダ部(5)側の流量均一化部材(22)のみが存在する部分の抵抗が次に大きく、両流量均一化部材(22)(23)が存在しない部分の抵抗は最も小さくなる。その結果、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)における両流量均一化部材(22)(23)が配置された部分を最も流れにくくなるとともに、出口ヘッダ部(5)側の流量均一化部材(22)のみが存在する部分においても若干流れにくくなり、さらに両流量均一化部材(22)(23)が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路(3)の幅方向の流量分布を効果的に均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0056】
実施形態2の液冷式冷却装置(20)において、一方の長い流量均一化部材(22)が冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側に配置され、他方の短い流量均一化部材(23)が冷却液流路(3)の冷却液流れ方向下流側に配置されていてもよい。この場合、長い流量均一化部材(22)は、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入され、短い流量均一化部材(23)は、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向下流側連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)とは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入される。
実施形態3
この実施形態は図10図12に示すものである。
【0057】
図10図12は液冷式冷却装置の全体構成を示す。
【0058】
実施形態3の液冷式冷却装置(30)において、ケーシング(2)の周壁(2c)の左側部分における前後方向中央部に、入口ヘッダ部(4)に通じる冷却液入口(7)が形成され、ケーシング(2)の周壁(2c)の右側部分における前後方向中央部に、出口ヘッダ部(5)に通じる冷却液出口(8)が形成されている。冷却液入口(7)および冷却液出口(8)の左右方向の幅は等しくなっており、両者(7)(8)は、入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)の長手方向(前後方向)の同一位置に形成されている。図示は省略したが、ケーシング(2)の冷却液入口(7)に、入口ヘッダ部(4)内に冷却液を送り込むアルミニウム製入口パイプが接続され、冷却液出口(8)に、出口ヘッダ部(5)内から冷却液を送り出すアルミニウム製出口パイプが接続されている。
【0059】
液冷式冷却装置(30)に用いられている放熱器(31)は、長手方向をフィンプレート(11)の長手方向と交差する方向(前後方向)に向けた状態で全フィンプレート(11)のうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレート(11)のみにまたがるように配置された1つの流量均一化部材(32)を有している。
【0060】
流量均一化部材(32)は、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)における前後方向の幅よりも長尺でかつ冷却液流路(3)の幅のほぼ1/2の長さを有しており、、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向下流側において、冷却液流路(3)の幅方向の一定の範囲内に配置されており、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)が、流量均一化部材(32)の全長の範囲内に位置している。冷却液流路(3)における流量均一化部材(32)よりも前側部分および後側部分の前後方向の幅は等しくなっている。
【0061】
流量均一化部材(32)は、一定数の複数のフィンプレート(11)における出口ヘッダ部(5)側に配置された連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)が形成されているのとは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入されている。
【0062】
その他の構成は、実施形態1の液冷式冷却装置(1)と同様である。
【0063】
上記構成の液冷式冷却装置(30)において、入口パイプ(12)から冷却液入口(7)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)に配置された放熱器(21)の隣り合う2つのフィンプレート(11)間の分割流路(14)に分流し、各分割流路(14)内を右方に流れる。冷却液流路(3)の分割流路(14)を右方に流れた冷却液は、出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(5)を通って出口パイプ(13)に送り出される。
【0064】
液冷式冷却装置(30)においては、冷却液入口(7)と冷却液出口(8)が、入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)の長手方向の中央部に長手方向の同一部分に来るように設けられているので、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)の冷却液入口(7)および冷却液出口(8)に近い部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)から遠い部分には流れにくくなる。
【0065】
しかしながら、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)の前後方向の幅よりも長尺の1つの流量均一化部材(32)が、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向下流側において、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)が、流量均一化部材(13)の全長の範囲内に位置するように、冷却液流路(3)の幅方向の一定の範囲内に配置されているので、流量均一化部材(32)が冷却液の流れに対する抵抗になる。その結果、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)における流量均一化部材(32)が配置された部分を流れにくくなるとともに、流量均一化部材(32)が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路(3)の幅方向の流量分布を均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを抑制することができる。
【0066】
実施形態3の液冷式冷却装置(30)において、流量均一化部材(32)が冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側に配置されていてもよい。この場合、流量均一化部材(32)は、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入される。
実施形態4
この実施形態は図13図15に示すものである。
【0067】
図13図15は液冷式冷却装置の全体構成を示す。
【0068】
実施形態4の液冷式冷却装置(40)に用いられている放熱器(41)は、長手方向をフィンプレート(11)の長手方向と交差する方向(前後方向)に向けた状態で全フィンプレート(11)のうちの一部の連続して並んだ複数のフィンプレート(11)のみにまたがるように配置された長さの異なる複数、ここでは2つの流量均一化部材(42)(43)を有している。
【0069】
一方の流量均一化部材(42)は、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)における前後方向の幅以上でかつ冷却液流路(3)の幅の1/2以上の長さを有しており、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向下流側において、冷却液流路(3)の幅方向の一定の範囲内に配置されており、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)が、流量均一化部材(42)の全長の範囲内に位置している。冷却液流路(3)における流量均一化部材(42)よりも前側部分および後側部分の前後方向の幅は等しくなっている。当該流量均一化部材(42)は、冷却液流路(3)の幅方向の中間部に配置された一定数の複数のフィンプレート(11)における冷却液流れ方向下流側連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)とは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入されている。
【0070】
他方の流量均一化部材(43)は、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)における前後方向の幅以上でかつ冷却液流路(3)の幅の1/2以下であり、しかも一方の流量均一化部材(42)よりも短い長さを有しており、冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側または下流側、ここでは冷却液流れ方向上流側において、冷却液流路(3)の幅方向の一定の範囲内に配置されており、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)が、流量均一化部材(43)の全長の範囲内に位置している。冷却液流路(3)における流量均一化部材(43)よりも前側部分および後側部分の前後方向の幅は等しくなっている。当該流量均一化部材(43)は、冷却液流路(3)の幅方向の中間部に配置された一定数の複数のフィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入されている。
【0071】
その他の構成は、実施形態3の液冷式冷却装置(30)と同様である。
【0072】
上記構成の液冷式冷却装置(40)において、入口パイプから冷却液入口(7)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液が、冷却液流路(3)に配置された放熱器(41)の隣り合う2つのフィンプレート(11)間の分割流路(14)内を右方に流れて出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(5)を通って出口パイプに送り出される際に、実施形態3の液冷式冷却装置(30)と同様に、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)の冷却液入口(7)および冷却液出口(8)に近い部分を流れやすくなるとともに、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)から遠い部分には流れにくくなる。
【0073】
しかしながら、2つの流量均一化部材(42)(43)が冷却液の流れに対する抵抗になり、冷却液流路(3)の全幅における両流量均一化部材(42)(43)が存在する部分の抵抗が最も大きく、出口ヘッダ部(5)側の流量均一化部材(42)のみが存在する部分の抵抗が次に大きく、両流量均一化部材(42)(43)が存在しない部分の抵抗は最も小さくなる。その結果、冷却液入口(7)から入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)における両流量均一化部材(42)(43)が配置された冷却液入口(7)および冷却液出口(8)に近い部分を最も流れにくくなるとともに、出口ヘッダ部(5)側の流量均一化部材(42)のみが存在する部分においても若干流れにくくなり、さらに両流量均一化部材(42)(43)が配置されていない部分を流れやすくなる。したがって、冷却液流路(3)の幅方向の流量分布を効果的に均一化することが可能になり、流量分布が不均一になった場合の冷却性能のばらつきを効果的に抑制することができる。
【0074】
実施形態4の液冷式冷却装置(40)において、一方の長い流量均一化部材(42)が冷却液流路(3)の冷却液流れ方向上流側に配置され、他方の短い流量均一化部材(43)が冷却液流路(3)の冷却液流れ方向下流側に配置されていてもよい。この場合、長い流量均一化部材(42)は、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向上流側連結部材(12A)が圧入されている切り欠き(15)とは反対の側縁部、図示の例では下側縁部に形成された切り欠き(16)内に圧入され、短い流量均一化部材(43)は、フィンプレート(11)における冷却液流れ方向下流側連結部材(12B)が圧入されている切り欠き(16)とは反対の側縁部、図示の例では上側縁部に形成された切り欠き(15)内に圧入される。
【0075】
上記実施形態3および4の液冷式冷却装置(30)(40)において、冷却液入口(7)および冷却液出口(8)の左右方向の幅は等しくなっており、両者(7)(8)は、入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)の長手方向(前後方向)の同一位置に形成されているが、これに限定されるものではなく、冷却液入口(7)と冷却液出口(8)とは前後方向にずれて形成されていてもよい。この場合、冷却液入口(7)と冷却液出口(8)とは、ケーシング(2)の左右方向外側から見て部分的に重複していてもよいし、あるいは完全にずれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
この発明による液冷式冷却装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBTなどのパワーデバイスを冷却するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
(1)(20)(30)(40):液冷式冷却装置
(2):ケーシング
(2a):頂壁
(2b):底壁
(2c):周壁
(3):冷却液通路
(4):入口ヘッダ部
(5):出口ヘッダ部
(6)(21)(31)(41):放熱器
(7):冷却液入口
(8):冷却液出口
(11):フィンプレート
(12A)(12B):連結部材
(13)(22)(23)(32)(42)(43):流量均一化部材
(15)(16):切り欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15