(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の励起光検知装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態に係る紙葉類処理装置1の全体構成を概略的に示す断面図である。
図1に示されるように、紙葉類として紙幣Pを処理する紙葉類処理装置1は、例えば、メインモジュール10と、整列モジュール30と、施封モジュール60とを備える。メインモジュール10、整列モジュール30および施封モジュール60は、この順で一列に並んで配置される。また、メインモジュール10、整列モジュール30および施封モジュール60は、互いに電気的かつ機械的に連結されている。
【0009】
まず、紙幣Pの振分け処理について説明する。
図1に示されるように、メインモジュール10は、供給部11と、ローラ12と、搬送路14とを有する。供給部11には、複数枚の紙幣Pが載置される。ローラ12は、供給部11から紙幣Pを1枚ずつ送り出す。搬送路14は、ローラ12によって送り出された紙幣Pを搬送する。搬送路14には、複数組の図示しない無端状の搬送ベルトが搬送路を挟むように延設されている。ローラ12によって送り出された紙幣Pは、搬送ベルトに挟持されて搬送される。
【0010】
搬送路14は、ローラ12を通過した位置から鑑査部100に向けて傾斜して延びている。これにより、供給部11から紙幣Pと共に、クリップ、コイン、ピン等の異物が搬送路14に送り出された際、異物は重力により搬送路14の最下部に落下する。これにより、異物が鑑査部100に入ることを防止し、異物による鑑査部100の損傷を未然に防止することができる。
【0011】
搬送路14の最下部には、異物回収部13が設けられている。異物回収部13は、例えば、装置本体から引き出し可能な回収箱により構成されている。搬送路14に沿って落下する異物は、異物回収部13に落下して回収される。
【0012】
搬送部15は、紙幣と紙幣の間隔が所定の間隔となるように紙幣Pの搬送速度を調整し、紙幣Pを鑑査部100へと搬送する。鑑査部100は、紙幣Pの金種や、紙幣Pの異常(破れ、折れ、汚れ、2枚取り等)、および真偽を検知する。
【0013】
また、鑑査部100は、搬送された紙幣Pの画像を検知する。紙幣Pの画像としては、透過画像および反射画像が含まれる。さらに、鑑査部100は、励起光検出装置を用いて、紙幣Pに印刷された発光体から発光された励起光を検知する。さらに、鑑査部100は、紙幣Pに含まれた磁性体から発せられた磁気を検知する。鑑査部100は、検知された画像、励起光、および磁気に基づいて、紙幣Pの金種、真偽、汚損度等のうち少なくとも一つを判別する。
【0014】
紙幣Pの異常が検知された場合、メインモジュール10は、紙幣Pを搬送路17に沿って搬送し、異常の種類に応じて紙幣Pをリジェクト部18a又は18bに振り分けて集積する。一方、紙幣Pの異常が検知されなかった場合、メインモジュール10は、紙幣Pを搬送路17に沿って搬送し、紙幣Pの金種に応じて紙幣Pを集積庫19a〜19dに振り分けて集積する。以上が、紙幣の振分け処理である。
【0015】
次に、紙幣の整列処理について説明する。整列処理は、紙幣Pの位置や表裏を揃えて金種ごとに集積する処理である。メインモジュール10と施封モジュール60との間に設けられた整列モジュール30は、搬送路31および35と、整列部32と、反転部34と、複数の集積庫36a〜36dとを備える。
【0016】
搬送路31は、メインモジュール10から送られた紙幣Pを搬送する。整列部32は、紙幣Pを整列させる。整列部32は、メインモジュール10から送られてくる紙幣Pの中心を、紙幣Pの搬送方向に直交する方向の所定の基準位置に合わせる。また、整列部32は、スキューしている紙幣Pの先端部が搬送方向と直交するように、紙幣Pの向きを補正する。スキューとは、搬送方向と紙幣Pの辺とが直交または平行でなく、角度を持っていることをいう。
【0017】
反転部34は、整列部32の下流側に設けられ、紙幣Pの表裏の向きを反転させる。搬送路35は、反転部34へと紙幣Pを案内する。紙幣の整列処理が行われる際に、各紙幣の表裏の向きを揃える必要が生じる。このため、鑑査部100は、紙幣Pの画像を読み取って紙幣Pの表裏を検知し、検知結果を整列モジュール30に送信する。整列モジュール30は、鑑査部100による表裏の検知結果に応じて、反転部34を用いて紙幣Pの表裏を反転するかどうかを切り替える。
【0018】
紙幣Pの表裏を反転しない場合、整列モジュール30は、搬送路31に沿って紙幣Pを搬送し、紙幣Pの金種に応じて集積庫36a〜36dに振り分けて集積する。一方、紙幣Pの表裏を反転する場合、整列モジュール30は、搬送路35に沿って紙幣Pを搬送する。反転部34は、内部にひねり搬送路を備え、紙幣Pを搬送しながら紙幣Pの表裏の向きを反転する。その後、整列モジュール30は、反転部34によって表裏を反転された紙幣Pを搬送し、紙幣Pの金種に応じて集積庫36a〜36dに振り分けて集積する。以上が、紙幣の整列処理である。
【0019】
なお、整列モジュール30は、向きを整えられた紙幣Pをメインモジュール10に戻し、集積庫19a〜19dに振り分けて集積してもよい。また、整列モジュール30内の集積庫36a〜36dは、異常が検知された紙幣Pを集積するリジェクト部として用いられてもよい。
【0020】
次に、紙幣の施封処理について説明する。施封処理は、所定枚数の紙幣の束を帯で留める処理である。施封モジュール60は、搬送路62と、第1集積部64aおよび第2集積部64bと、搬送トレイ66と、施封部68とを備える。搬送路62は、整列モジュール30の搬送路31に接続される。第1集積部64aおよび第2集積部64bは、紙幣Pを所定枚数ずつ集積する。搬送トレイ66は、紙幣束を搬送する。施封部68は、紙幣束を帯により施封する。第2集積部64bは、第1集積部64aに対して斜め下方向にずれて配置され、施封部68は、第2集積部64bの下方に配置されている。更に、施封部68により施封された紙幣束を受取って集積する排出部69が、施封部68の下方に設けられている。
【0021】
施封モジュール60は、整列モジュール30から送られてきた紙幣Pの金種に応じて、第1集積部64a及び第2集積部64bのいずれかに紙幣Pを搬送する。第1集積部64a及び第2集積部64bは、搬送されてきた紙幣Pを所定枚数(例えば、100枚)集積する。
【0022】
搬送トレイ66は、
図1の矢印方向に移動可能に設けられている。第1集積部64aに所定枚数の紙幣Pが集積されると、搬送トレイ66は第1集積部64aの位置へ移動し、紙幣Pの束を受け取る。また、第2集積部64bに所定枚数の紙幣Pが集積されると、搬送トレイ66は第2集積部64bの位置へ移動し、紙幣束を受け取る。
【0023】
紙幣束を受け取った後、搬送トレイ66は施封部68の位置まで下降し、施封部68へ紙幣束を受け渡す。施封部68は、搬送トレイ66から受け取った紙幣束に帯を巻き付ける。また、施封部68は、紙幣束の帯に所定の情報を印字する。帯に印字される情報は、例えば日時、シリアル番号、銀行のロゴ等である。これらの情報は、例えば、インクジェットプリンタ、ドットプリンタ、レーザプリンタ等を用いて印字される。
【0024】
帯への印字が完了した後、施封部68は紙幣束を排出部69へと排出する。なお、施封部68は、紙幣Pの金種に応じて位置を変えて紙幣束を排出する。以上が、紙幣の施封処理である。
【0025】
次に、鑑査部100について説明する。
図2は、鑑査部100の構成の概略を示す図である。鑑査部100は、複数の搬送ローラ105a、105b、105c、105d、105e、105f、105i、105g、105h、および105kを有する。鑑査部100は、図示しないモータ等から各搬送ローラに駆動トルクを供給させ、各搬送ローラを回転駆動させる。これにより、鑑査部100では、搬送路105Aに沿って、紙幣Pが図中に右側から左側へと所定の搬送速度で搬送される。本実施形態において、紙幣Pは、上面を図中上方に向け、下面を図中下方に向けて搬送される。
【0026】
鑑査部100は、透過画像検知部110と、上面反射画像検知部120と、下面反射画像検知部130と、上面励起光検知部(励起光検知装置)140と、磁気検知部150と、下面励起光検知部(励起光検知装置)160と、厚さ検知部(厚さ検出装置)170と、検知情報処理部180とを有する。
【0027】
透過画像検知部110は、紙幣Pの透過画像を検知する。透過画像検知部110は、例えば紙幣Pの上面に配置された光源と、紙幣Pの下面に配置された画像センサとを有する。透過画像検知部110は、紙幣Pが搬送されるタイミングで光源から光を照射させ、画像センサにより紙幣Pを透過した光を検出させる。これにより透過画像検知部110は、画像センサにより透過画像信号を生成させる。透過画像検知部110は、生成された透過画像信号を検知情報処理部180に供給する。
【0028】
上面反射画像検知部120は、紙幣Pの上面の反射画像を検知する。上面反射画像検知部120は、紙幣Pの上面に配置された発光部および受光部を有する。発光部は、例えば、複数個のLED(Light Emitting Diode)を一列に配列したLEDアレイである。LEDは、可視光または近赤外光である。受光部は、LEDアレイに対応してフォトダイオードを配列したフォトダイオードアレイ、またはCCD(Charge Coupled Device)を有する1次元画像読み取りセンサである。
【0029】
上面反射画像検知部120は、紙幣Pが搬送されるタイミングで発光部から光を照射させ、受光部により紙幣Pの上面からの反射光を検出させる。上面反射画像検知部120は、搬送方向における所定幅ごとに上面反射画像信号を生成する。上面反射画像検知部120は、生成された上面反射画像信号を検知情報処理部180に供給する。
【0030】
下面反射画像検知部130は、紙幣Pの下面の反射画像を検知する。下面反射画像検知部130は、紙幣Pの下面に配置された発光部および受光部を有する。発光部および受光部は、上面反射画像検知部120と同様に構成される。下面反射画像検知部130は、紙幣Pが搬送されるタイミングで発光部から光を照射させ、受光部により紙幣Pの下面からの反射光を検出させる。下面反射画像検知部130は、搬送方向における所定幅ごとに下面反射画像信号を生成する。下面反射画像検知部130は、生成された下面反射画像信号を検知情報処理部180に供給する。
【0031】
上面励起光検知部140は、紙幣Pの上面の励起光を検知する。上面励起光検知部140により検知される励起光には、蛍光および燐光が含まれる。上面励起光検知部140は、紙幣Pの上面において検知された蛍光を示す上面蛍光信号を検知情報処理部180に供給する。上面励起光検知部140は、紙幣Pの上面において検知された燐光を示す上面燐光信号を検知情報処理部180に供給する。
【0032】
磁気検知部150は、紙幣Pの磁気特性を検知する。磁気特性は、例えば紙幣Pに含まれる磁性体量である。磁気検知部150は、例えば磁気ヘッドである。磁気ヘッドとしては、例えば、コア(鉄芯)に逆方向に一次コイルおよび二次コイルを巻いた構成を有する。磁気ヘッドは、一次コイルに直流バイアス電流を供給し、紙幣Pに含まれる磁性体が通過した時における磁束の変化を二次コイルにより検出する。これにより、磁気ヘッドは、紙幣Pの磁性体量に応じて変化する磁性信号を生成する。磁気検知部150は、生成した磁性信号を検知情報処理部180に供給する。
【0033】
下面励起光検知部160は、紙幣Pの下面の励起光を検知する。下面励起光検知部160により検知される励起光には、蛍光および燐光が含まれる。下面励起光検知部160は、紙幣Pの下面において検知された蛍光を示す下面蛍光信号を検知情報処理部180に供給する。下面励起光検知部160は、紙幣Pの下面において検知された燐光を示す下面燐光信号を検知情報処理部180に供給する。
【0034】
厚さ検知部170は、紙幣Pの厚さを検知する。厚さ検知部170は、厚さ検知ローラ105jの軸は、一方の端部を回転軸に固定されたアーム175に接続されている。厚さ検知ローラ105jは、搬送されてくる紙幣Pの厚さに応じて、搬送ローラ105kから離れる方向に移動する。厚さ検知部170は、厚さ検知ローラ105jの移動量を検知することで、紙幣Pの厚さを検知する。
【0035】
検知情報処理部180は、CPU、メモリ等により構成されるコンピュータである。検知情報処理部180は、透過画像検知部110、上面反射画像検知部120、下面反射画像検知部130、上面励起光検知部140、磁気検知部150、下面励起光検知部160、および厚さ検知部170と接続されている。検知情報処理部180は、それぞれの検知部から信号が出力される。検知情報処理部180は、出力された信号に対してA/D変換処理を行う。また、検知情報処理部180は、A/D変換処理の結果得られたデータに補正処理等の処理を施して、検知情報を生成する。検知情報処理部180は、生成された検知情報に基づいて、紙幣Pの種類、方向、真偽、または汚損度等の少なくとも一つを判別する。
【0036】
以下、上述した上面励起光検知部140の構成について説明する。
図3は、上面励起光検知部140の内部構成を示す図である。
図3において、図中上方の紙幣Pは、側面図であり、図中下方の紙幣Pは、平面図である。
【0037】
上面励起光検知部140は、筐体141と、光学ガラス142と、紫外線光源143と、制御部144と、紫外線カットフィルタ145と、光学レンズ146と、光電センサ147とを有する。
【0038】
筐体141は、孔部に光学ガラス142がはめ込まれた下面が、搬送路105Aに対向するように配置されている。
【0039】
紫外線光源143は、紫外線L1を出射する。紫外線光源143は、高速に点滅できるよう、例えばLED等の半導体を用いた光源であることが望ましい。この実施形態は、光源が紫外線光源143である一例について説明するが、発光体を励起させる所定波長の光を出射する光源であればよい。
紫外線光源143には、制御部144から光源電流が供給される。紫外線光源143は、光源電流に従って紫外線L1の点灯タイミング、消灯タイミングおよび紫外線L1の強度が制御される。紫外線光源143から出射された紫外線L1は、光学ガラス142を透過して、搬送されている紙幣Pに照射される。
【0040】
紫外線カットフィルタ145および光学レンズ146は、光検知点Poと光電センサ147とを結ぶ光路上に配置されている。光検知点Poから発せられた励起光L2は、紫外線カットフィルタ145および光学レンズ146を介して光電センサ147に入射する。
【0041】
紫外線カットフィルタ145は、紙幣Pの励起光L2に含まれる紫外線成分を除去し、紫外線成分を除去した励起光L2を光学レンズ146に入射させる。光学レンズ146は、紫外線カットフィルタ145を通過した励起光L2を収束させて、光電センサ147に導く。
【0042】
光電センサ147は、光学レンズ146を介して入射する励起光L2を受光し、電気信号(受光信号)に変換する。光電センサ147は、例えば、搬送方向に対する直交方向に受光部が配列されている。光電センサ147は、例えば、フォトダイオードアレイまたはCCDを含む。光電センサ147は、光検知点Poに搬送された紙幣Pから励起光L2を受光したことに応じて受光信号を検出する。受光信号は、励起光L2の強度に応じて振幅が変化する。光電センサ147は、受光信号を上面蛍光信号または上面燐光信号として検知情報処理部180に供給する。なお、以下において、上面蛍光信号および上面燐光信号を総称する場合には「受光信号」と呼ぶ。
【0043】
制御部144は、電源から紫外線光源143に供給される光源電流を制御する制御回路である。制御部144は、光源電流を制御して、紫外線光源143の点灯タイミング、消灯タイミングおよび紫外線L1の強度を制御する。制御部144は、CPU、メモリ等により構成されるコンピュータを含んでいてもよい。この場合、制御部144のコンピュータは、CPUによってメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、光源電流を制御する。
【0044】
下面励起光検知部160は、上面励起光検知部140と同様に、紫外線光源、制御部、紫外線カットフィルタ、光学レンズ、および光電センサを備える。下面励起光検知部160は、筐体の上面に光学ガラスが配置され、上面から紫外線を出射し、紙幣Pの蛍光および燐光を検知する。
【0045】
以下、上述した制御部144の動作について、
図4を参照して説明する。
図4は、制御部144の処理手順を示すフローチャートである。なお、下面励起光検知部160の制御部においても同様の処理が行われる。
【0046】
制御部144は、蛍光検知タイミングが到来するまで待機する(ステップS100)。蛍光検知タイミングは、例えば、検知情報処理部180などから入力され、或いは制御部144が内部で生成するタイミング信号に基づいて判定される。タイミング信号は、例えば一定周期でアサートされる信号である。蛍光検知タイミングが到来すると、制御部144は、紫外線光源143から所定強度の紫外線L1を出射させる(ステップS102)。紫外線L1を出射させると同時に、或いは若干の時間が経過した後に、制御部144は、光電センサ147によって、上面蛍光信号を検出させる(ステップS104)。
【0047】
次に、制御部144は、単位処理時間が経過するまで待機する(ステップS106)。単位処理時間が経過すると、制御部144は、光源電流を増加させて、紫外線L1の強度を所定強度よりも増加させる(ステップS108)。
【0048】
次に、制御部144は、燐光検知タイミングが到来するまで待機する(ステップS110)。燐光検知タイミングが到来すると、制御部144は、光源電流の供給を停止して、紫外線光源143を消灯させる(ステップS112)。紫外線光源143を消灯させると同時に、或いは若干の時間が経過した後に、制御部144は、光電センサ147によって、上面燐光信号を検出させる(ステップS114)。
【0049】
次に、制御部144は、単位処理時間が経過するまで待機する(ステップS116)。単位処理時間が経過すると、制御部144は、処理をステップS100に戻す。そして、制御部144は、上述したステップS100からステップS116の処理を繰り返し実行する。
【0050】
つぎに、上述した上面励起光検知部140による光源電流の制御動作、および、上面蛍光信号および上面燐光信号の検出動作について説明する。
図5は、上面励起光検知部140の動作の変化(
図5(a))、および光源電流の変化(
図5(b))を示すタイミングチャートである。なお、下面励起光検知部160においても同様の処理が行われる。
【0051】
制御部144には、単位処理時間T1、T2、T3、T4(以下、総称する場合には「単位処理時間T」と呼ぶ。)が経過する度にタイミング信号pが供給される。
図5(a)におけるパルスの立ち上がりは、タイミング信号pが供給されたことを表している。単位処理時間Tは、紙幣Pにおける搬送方向に対する直交方向の1ライン分の走査時間を表す。単位処理時間Tは、例えば、紙幣Pの搬送速度が1メートル/秒であり、2ライン/ミリメートルの解像度の場合、500μ秒となる。
【0052】
制御部144は、時刻t1においてタイミング信号pが供給されると、光源電流を電流値I1に制御する。電流値I1は、紫外線L1の強度を所定強度とすることができる値である。所定強度は、紙幣Pの蛍光体を検知することができる強度である。光電センサ147は、時刻t1以降、時刻t2までの間に上面蛍光信号を検出する。
【0053】
制御部144は、時刻t2においてタイミング信号pが供給されると、光源電流の電流値をI1からI2に増加させる。これにより、紫外線L1の強度は、所定強度よりも高い強度に変更される。この結果、上面励起光検知部140は、単位処理時間T2および単位処理時間T3のそれぞれにおいて燐光体に蓄積される蓄積エネルギーを、単位処理時間T1において燐光体に蓄積される蓄積エネルギーよりも増加させる。また、時刻t2以降、時刻t3までの間、上面励起光検知部140は、受光信号の検出を停止させる。これにより、上面励起光検知部140は、光源電流の電流値をI2に増加させた状態で、紙幣Pの燐光体に蓄積エネルギーを蓄えさせる蓄光動作をする。
【0054】
制御部144は、時刻t4においてタイミング信号pが供給されると、光源電流の供給を停止する。紫外線L1の紙幣Pへの照射が停止する若干の時間が経過した後に、制御部144は、光電センサ147によって上面燐光信号を検出させる。
【0055】
制御部144は、時刻t5においてタイミング信号pが供給されると、電流値I1の光源電流を紫外線光源143に供給する。これにより、制御部144は、次のラインにおける上面蛍光信号の検出動作に移行する。
【0056】
以上のように、上面励起光検知部140は、時刻t1から時刻t5までの期間に、1ライン分の上面蛍光信号および上面燐光信号を検出することができる。すなわち、上面励起光検知部140は、蛍光検知動作、蓄光動作、蓄光動作、および燐光検知動作という4回の動作サイクルで、紙幣Pの1ライン分の上面蛍光信号および上面燐光信号を検出することができる。
【0057】
制御部144は、上面燐光信号の値を高くするため、I2の増加幅、またはI2を供給する単位処理時間Tの数を調整する。
図6は、I2の増加幅およびI2を供給する単位処理時間Tの数のうち、I2の増加幅を調整する動作を示すタイミングチャートである。制御部144は、
図6に示すように、上述した
図5を参照した動作と比較して、I2の増加幅を高くし、I2を供給する単位処理時間Tの数を少なくする。I2の増加幅は、上面燐光信号の検出動作において燐光を検知するために必要な幅に調整される。これにより、制御部144は、蓄光動作の期間(T12)を短くすることができる。この結果、制御部144は、上面蛍光信号および上面燐光信号の搬送方向における解像度を高くすることができる。
【0058】
図7は、I2の増加幅およびI2を供給する単位処理時間Tの数のうち、I2を供給する単位処理時間Tの数を調整する動作を示すタイミングチャートである。制御部144は、
図7に示したように、上述した
図5を参照した動作と比較して、I2を供給する単位処理時間の数を多くしてT22からT25に亘り蓄光動作を行わせる。この蓄光動作の単位処理時間Tの数は、上面燐光信号の検出動作において燐光を検知するために必要な時間に調整される。これにより、制御部144は、光源電流を低く抑えることができる。
【0059】
I2の増加幅およびI2を供給する単位処理時間Tの数のうち、I2の増加幅およびI2を供給する単位処理時間Tの数の双方を調整する動作は、
図5に示したようになる。制御部144は、光源電流をI1からI2を増加させるとともに、T2、T3のようにI2を供給する単位処理時間Tの数を増加させる。これにより、制御部144は、光源電流の増加幅を抑制しつつ、上面蛍光信号および上面燐光信号の搬送方向における解像度を高くすることができる。
【0060】
図8は、紙幣Pの種類ごとの、一定の強度の紫外線を照射させて検出された蛍光信号および燐光信号の電圧値を示す図である。一定の強度の紫外線を照射させた場合の蛍光信号と燐光信号との比率は、紙幣毎に異なる。
【0061】
一方、燐光を発するために燐光体に蓄積される蓄積エネルギーは、下記の式のように表される。
蓄積エネルギー=励起エネルギー×発光時間
励起エネルギーは、燐光を励起させるためのエネルギーであり、発光時間は、紫外線L1の照射時間である。励起エネルギーは、燐光体の種類や照射された光の波長によって決定される。燐光体の種類に応じて適切な波長の光を照射することにより、燐光体を励起状態にすることができ、燐光体に励起エネルギーを蓄積することができる。励起状態とされた燐光体の量が多いほど、燐光体の総励起エネルギーは高くなり、蓄積エネルギーは高くなる。したがって、蓄積エネルギーが高いほど、燐光の発光量が多くなる。実施形態において、蓄積エネルギーは、紫外線L1の強度および光照射時間によって決定される。
【0062】
制御部144は、蓄光動作を行う期間において、例えば、光源電流の量および光源電流の供給時間の一方を増加させればよい。上述した紙葉類Aが紙幣Pである場合に、上面燐光信号と上面蛍光信号との比率が1:12である。これにより、制御部144は、光源電流の電流値I2をI1の12倍に増加させて、1回の単位処理時間に亘り光源電流を供給してもよい。また、制御部144は、光源電流の電流値I2をI1から増加させずに、12回の単位処理時間Tに亘り光源電流を供給してもよい。この結果、制御部144は、上面蛍光信号を検出するための蓄積エネルギーに対して、12倍の蓄積エネルギーを燐光体に蓄積させる。
【0063】
また、紙葉類Aが紙幣Pである場合、制御部144は、例えば、光源電流の電流値I2をI1に対して6倍に増加させ、2回の単位処理時間Tに亘り、電流値I2の光源電流を供給し続けてもよい。
【0064】
さらに、制御部144は、紙幣Pの搬送速度に基づいて、I2の増加幅または蓄光動作における単位処理時間Tの数を変更してもよい。制御部144は、紙幣Pの搬送速度が高く調整された場合には、I2の増加幅を大きくし、または、蓄光動作における単位処理時間Tの数を増加させる。制御部144は、紙幣Pの搬送速度が低く調整された場合には、I2の増加幅を小さくし、または、蓄光動作における単位処理時間Tの数を少なくさせる。制御部144は、紙幣Pの搬送速度が調整された場合であっても、燐光を検知するために必要な蓄積エネルギーを燐光体へ蓄積させることができる。
【0065】
さらに、
図3に示すように、紫外線光源143は、光検知点Poよりも搬送方向における上流側の幅が、光検知点Poよりも搬送方向における下流側の幅よりも大きい光照射範囲Dに紫外線L1を照射する。これにより、紫外線光源143は、紙幣Pが光照射範囲D内に搬送されてから光検知点Poに搬送されるまでの期間において、燐光体へ蓄積エネルギーを蓄積させることができる。
【0066】
さらに、紫外線光源143は、紙幣Pの光照射範囲D内に搬送されてから光検知点Poに搬送されるまで、光照射幅D1に亘り紫外線L1を照射する。一方、光検知点Poは、紙幣Pの搬送方向における光検知幅D2を有している。光検知幅D2は、紙幣Pの搬送速度に応じて決定される単位処理時間Tにおける搬送量である。光照射幅D1は、光検知幅D2よりも、2倍以上大きくなっている。これにより、紫外線光源143は、紙幣Pが光検知点Poに達する前に、2倍以上の単位処理時間Tに亘り紫外線L1を照射する。これにより、紫外線光源143は、燐光体の蓄積エネルギーをより多くすることができる。
【0067】
さらに、紫外線光源143は、紫外線L1の光軸が、光検知点Poよりも搬送方向における上流側にずれている。これにより、紫外線光源143は、紙幣Pが光照射範囲D内に搬送されてから光検知点Poに搬送されるまでの期間を長くすることができ、燐光体の蓄積エネルギーをより多くすることができる。
【0068】
なお、紫外線光源143は、光照射範囲Dのうち、搬送方向における上流側に多くの光量を分布させる指向性を有するものであってもよい。これにより、紫外線光源143は、効率的に燐光体へ蓄積エネルギーを蓄積させることができる。
【0069】
上述した上面励起光検知部140は、蛍光および燐光に加えて、ブリーチ光を検知してもよい。ブリーチ光とは、紙幣Pに印刷された材料ではなく漂白剤等により励起されて紙幣Pから発光される青色光である。漂白剤は紙幣Pが誤って洗濯されることにより紙幣Pに付着することがある。また、偽券には、漂白剤を含む紙を使用したものがある。ブリーチ光は、紙幣Pに印刷された蛍光体から発せられる蛍光より高い強度を有する。したがって、紙幣Pからブリーチ光が発生されると、上面蛍光信号が飽和する場合がある。検知情報処理部180は、ブリーチ光を発する紙幣Pを判別し、紙幣Pの異常として検知してリジェクト部18aまたは18bに搬送させることができる。
【0070】
以下、ブリーチ光を検知する上面励起光検知部140による光源電流の制御動作、および、上面蛍光信号および上面燐光信号の検出動作について説明する。
図9は、上面励起光検知部140の動作の変化(
図9(a))、および光源電流の変化(
図9(b))を示すタイミングチャートである。
【0071】
制御部144は、時刻t1においてタイミング信号pが供給されると、光源電流を電流値I1に制御する。光電センサ147は、時刻t1以降、時刻t2までの間に上面蛍光信号を検出する。
【0072】
制御部144は、時刻t2においてタイミング信号pが供給されると、光源電流の電流値をI1からI3に低下させる。これにより、紫外線L1の強度は、所定強度よりも低い強度に変更される。電流値I3は、例えば紫外線光源143を点灯させる極小値である。制御部144は、光電センサ147によって時刻t2以降においてブリーチ光を検知させて、受光信号を検出させる。
【0073】
制御部144は、時刻t3においてタイミング信号pが供給されると、蓄光動作をする。
【0074】
制御部144は、時刻t4においてタイミング信号pが供給されると、光源電流の供給を停止する。紫外線L1の紙幣Pへの照射が停止する若干の時間が経過した後に、制御部144は、光電センサ147によって上面燐光信号を検出させる。
【0075】
制御部144は、時刻t5においてタイミング信号pが供給されると、電流値I1の光源電流を紫外線光源143に供給する。これにより、制御部144は、次のラインにおける上面蛍光信号の検出動作に移行する。
【0076】
以上のように、上面励起光検知部140は、時刻t1から時刻t5までの期間に、1ライン分の上面蛍光信号、ブリーチ光の受光信号、および上面燐光信号を検出することができる。すなわち、上面励起光検知部140は、蛍光検知動作、ブリーチ光検知動作、蓄光動作、および燐光検知動作という4回の動作サイクルで、紙幣Pの1ライン分の上面蛍光信号、ブリーチ光の受光信号および上面燐光信号を検出することができる。
【0077】
制御部144は、紙幣Pに応じて、光源電流の電流値のI1、I2、およびI3、蓄光動作における単位処理時間Tの数を変更可能としてもよい。検知情報処理部180は、例えば、処理対象の紙幣Pの国、印刷所、汚損度、および取り扱い券種等の紙幣情報に対応させて、I1、I2、およびI3、蓄光動作における単位処理時間Tの数を含む光源制御情報を記憶する。検知情報処理部180は、処理対象の紙幣Pに関する紙幣情報が供給されると、供給された紙幣情報に対応されている光源制御情報を読み出す。検知情報処理部180は、読み出した光源制御情報を制御部144に供給する。制御部144は、光源制御情報に従って、紫外線光源143を制御する。これにより、制御部144は、紙幣Pの相違に基づいて、蛍光検知動作、ブリーチ光検知動作、蓄光動作、および燐光検知動作を変更できる。
【0078】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、光源(紫外線光源143)に電流を供給して蛍光を検知させ、光源に供給する電流の量又は供給時間を増加させて紙葉類(紙幣P)に光(紫外線L1)を照射させ、電流の量又は供給時間を増加させた状態の光照射の停止後に燐光を検知させる制御部(制御部144)を持つことにより、単一の光源と単一の検知部により蛍光および燐光を検知でき、構成を簡略化することができる。
【0079】
また、この実施形態によれば、蛍光を検知させる際の強度から紫外線L1の強度を低下させて、紙幣Pから発せられたブリーチ光を検知させるので、構成を簡略化しても、蛍光および燐光に加えてブリーチ光を検知できる。
【0080】
さらに、この実施形態によれば、紙幣Pの搬送速度に基づいて紫外線光源143に供給する電流の量又は供給時間の増加量を制御するので、搬送速度が変化しても燐光を検知させるために必要な蓄積エネルギーを燐光体に蓄積させることができる。
【0081】
さらに、この実施形態によれば、紫外線光源143によって、光検知点Poよりも搬送方向における上流側の光照射幅D1が、光検知点Poよりも搬送方向における下流側の幅よりも大きい光照射範囲Dに光紫外線L1を照射する。この実施形態によれば、紙幣Pに対する光照射時間を長くすることができ、燐光体の蓄積エネルギーをより多くすることができる。
【0082】
さらに、この実施形態によれば、紫外線光源143の光軸が光検知点Poよりも搬送方向における上流側にずれているので、紙幣Pに対する光照射時間を長くすることができ、燐光体の蓄積エネルギーをより多くすることができる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。