(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6316710
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】多機能を有するスロープ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20180416BHJP
A61G 3/00 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
B60R3/00
A61G3/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-175332(P2014-175332)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49845(P2016-49845A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】根尾 正志
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−215176(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/003387(WO,A1)
【文献】
特表2006−516448(JP,A)
【文献】
特開2004−217090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
A61G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口端部に回動自在に装着したスロープ装置であって、
前記スロープ装置はスロープ部材と、当該スロープ部材の基部に設けた回動部と、当該回動部が上下移動するガイド部材とを備え、
前記スロープ部材は前記回動部が前記ガイド部材の底部側に位置した状態で車内側に反転した状態と、車内に倒立した倒立モードと、車外側に展開したスロープ面を形成したスロープモードに回動可能であり、
前記スロープ部材が車内側に反転した状態で前記回動部を前記ガイド部材に沿って上昇させたデッキモードになる多機能を有することを特徴とするスロープ装置。
【請求項2】
前記スロープ部の前記回動部は前記ガイド部材に着脱自在になっていることを特徴とする請求項1記載のスロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載するスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に車椅子を昇降させるのに車両の開口部から車外側にスロープ部材を展開し、スロープ面を形成できるスロープ搭載車両が知られている。
この場合に車椅子を車室内に乗り入れた状態でスロープ部材を倒立(起立)させて格納する構造が一般的であった。
しかし、車椅子を搭載しない場合にもスロープ部材を倒立格納すると、車室の有効利用の障害になる。
そこで例えば、特許文献1にはフロアにスロープ部材を載置させた反転状態に収納する技術を開示する。
しかし、この公報に開示するスロープ部材の反転収納構造では、スロープ部材の裏面が斜めに傾斜した状態になり、荷物を搭載した場合等に安定性に欠け、車室の利用に制限がある。
特許文献2には、車両のテール部とともに回動するスロープ支持架台の回動中心と、スロープ板の回動中心を分離させた構造を開示する。
しかし、同公報に開示する技術もスロープ部材を車室内側に斜めに収納するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−60064号公報
【特許文献2】特開2013−141856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車室内にスロープ部材を反転収納する際に車室内の利用性向上を図るのに有効なスロープ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の開口端部に回動自在に装着したスロープ装置であって、前記スロープ装置はスロープ部材と、当該スロープ部材の基部に設けた回動部と、
当該回動部が上下移動するガイド部材とを備え、前記スロープ部材は前記回動部が前記ガイド部材の底部側に位置した状態で車内側に反転した状態と、車内に倒立した倒立モードと、車外側に展開したスロープ面を形成したスロープモードに回動可能であり、前記スロープ部材が車内側に反転した状態で前記回動部を前記ガイド部材に沿って上昇させたデッキモードになる多機能を有することを特徴とする。
ここで、車両の開口端部とはドアを開閉し、乗下車できる開口部をいい、自動車のテール部やサイド部に設けられている。
【0006】
例えば、ミニバン,ステーションワゴン等と称されている自動車の場合に、前部座席を有するフロントフロア、後部座席を有するミドルフロアのさらに後部側にラゲッジスペースを設けたものがある。
この種の車両においては、後部座席を前後方向にスライド可能に設けるとともに、ラゲッジスペース空間を広くする目的で、ラゲッジスペースのフロア床面をミドルフロアの床面よりも低く凹部状に設定したものも多い。
このような車両にスロープ装置を搭載する場合にラゲッジスペースの床面が低いので、車外側にスロープ面を展開形成しやすい反面、スロープ部材を室内側に反転させた際にスロープ部材の先端部がミドルフロア側に乗り上がるようになるために、スロープ部材が傾斜した状態に収納されることになりやすい。
そこで、本発明はスロープ部材を車室内側に伏せた状態でスロープ部材の回動中心となる回動部を上昇できるようにした点に特徴がある。
【0007】
このようにすると、スロープ部材を車内側に反転及び回動部を上昇させたデッキモード、前記スロープ部材を車内に倒立した倒立モード、及びスロープ部材を車外側に展開し、スロープ面を形成したスロープモードを選択使用できる多機能を有することになる。
特にスロープ部材の回動部を上昇させると、スロープ部材の下側と上側の両方に荷室を形成することができるとともに、伏せた状態のスロープ上面を略水平に維持することができ、収納した荷物の安定性に優れる。
なお、必要に応じて回動部を上昇させることなく、傾斜させたままスロープ部材を収納することもできる。
【0008】
本発明においては、スロープ部材の回動部を
ガイド部材に着脱自在に取り付けることもできる。
このようにすると、スロープ部材を必要としないときには、車両からスロープ部材を取り外すこともでき、またスロープ長さの異なるスロープ部材をニーズに合せて選択使用することもできる。
【0009】
本発明において、スロープ部材の回動部を上下移動できれば昇降手段は自動式,手動式を問わず、その構造にも制限はない。
例えば、スライド式,リンク式,スピンドル上下動式等が例として挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスロープ装置にあっては、車椅子等を車内に搭載する場合に車両に倒立モードで収納でき、車椅子等を使用しない場合にはデッキモードとしてラゲッジスペースの有効利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るスロープ装置の使用モードを示す。(a)はデッキモード、(b)は倒立モード、(c)はスロープモードである。
【
図2】(a)はデッキモードの斜視図、(b)は倒立モードの斜視図を示す。
【
図4】スロープ部材の回動部とガイド部材との関係を模式的に示す。(a)は回動部の下降状態、(b)は回動部をスライドレール部から上部の回動部受けに支持させた状態、(c)はスロープ部材をガイド部材から取り外した状態を示す。
【
図5】(a)は回動部にスライドシューを連結した例を示し、(b)は上下移動途中にロック機構を設けた例を示す。
【
図6】(a)〜(d)は回動部の昇降手段としてリンク機構を採用した例を示す。
【
図8】(a)〜(c)は回動部の昇降手段としてスライドレール式を採用するとともに回動中心用の支持部を形成した例を示す。
【
図9】(a),(b)は回動部の上下移動においてロック機構を付与した例を示す。
【
図10】(a),(b)は回動部の昇降手段としてスピンドル上下移動方式を採用した例を示す。
【
図11】(a),(b)はスロープ部材を室内側に伏せて収納した状態の側面視を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る多機能性を有するスロープ装置の構造例を以下図面に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0013】
図1(a)〜(c)にスロープ部材10の使用状態の側面視を示し、
図2,
図3にその斜視図を示す。
また、ガイド部材20からなる昇降手段の構造例を
図4に示す。
本実施例では、展開状態を
図3に示すように車両1のリアドアを開き、開口部2から伸縮スライド式のスロープ部材10を車外側に展開し、スロープ面を形成する例になっているが、スロープ部材10の構造に制限がなく、折りたたみ式であってもよい。
【0014】
スロープ部材10は、第1スロープ11から第2スロープ12がスライド伸縮する。
第1スロープ11は、パネル部材11aの両サイド部にスライドレール11b,11cを有し、第2スロープ12はパネル部材12aの両サイド部にスライドレール12b,12cを有する。
この第1,第2スロープ11,12のスライドレール11bと12b及び11cと12cが相互にスライド嵌合している。
スロープ部材10の第1スロープ11側の基部の両側に回動部10aを形成してある。
図3に示した実施例は、上下方向に立設したガイド部材20のスライドレール部21に沿って回動部10aが上下移動する構造例になっている。
回動部10aは、
図3に示すようにロッド部材に外形円柱又は円筒状のローラ部材13を連結してもよく、
図4(a)に示すように回転しない樹脂シュー13aとロッド部材を回転自在に連結した回動部10aであってもよい。
図4(a)に示すようにガイド部材20の底部のローラ受け21aにローラ部材13が載置するように支持させると、
図1(b),
図2(b)に示すようにスロープ部材10の先端部を持ち上げ、倒立状態(倒立モード)にすることができる。
本実施例では、
図1(b)に示すようにガイド部材10の上部にロック機構を設け、この倒立ロック部23にてスロープ部材10を倒立保持できる。
このロック機構は、スロープ部材10と車体との間に設けてもよい。
倒立ロック部23のロックを解除すると、
図1(c),
図3に示すようにスロープ部材10が車外側に回動展開し、スロープ面を形成する。
スロープ部材10を倒立モードから車室内側に反転させると、
図11(b)に示すようにスロープ部材10が車両のフロア床面に沿って伏せた状態になり、スロープ部材10の裏面が傾斜した状態になる。
このように傾斜した状態でスロープ部材10を収納してもよいが、本発明は回動部10aをガイド部材20のガイドレール部21に沿って上昇できるようにしたものである。
【0015】
この場合に
図5(b)に示すように、回動部10aをスプリング10bで突出方向に付勢したロッドピン構造にし、ガイド部材20の側壁に設けた保持孔24aにて上昇位置を保持させてもよく、途中に段階的に高さの異なる保持孔24b,24cを設けてもよい。
図4に示した実施例はさらに簡単な構造を採用し、ガイド部材20の上部に支持片22aを延在させ、この支持片22aに凹部状の回動部受け22を形成した例である。
このようにすると、
図4(b)に示すようにローラ部材13をスライドレール部21の上方から抜き取るように持ち上げ、回動部10aのロッド部を回動部受け22に載置するだけで、
図1(a),
図2(a)のデッキモードにすることができる。
このようにすると、
図11(a)に示すようにスロープ部材10の下側とラゲッジスペースの床面3との間に荷室空間3aが形成され、ここに荷物aを収納でき、スロープ部材10の上面(裏面)には荷物bを収納することができる。
【0016】
本実施例では、
図4(c)に示すようにスロープ部材10の回動部10aをガイド部材20から取り外せるようになっている。
これにより、スロープ部材を使用しないときには車外に取り出すことができ、ラゲッジスペースを広く多目的に使用できる。
【0017】
図6は、回動部10aの昇降手段としてリンク機構を採用した例である。
リンク機構120は、フロア側に固定したブラケット123に中間リンク部材122の一方を軸着123aし、他方を支持リンク部材121の一方に軸着部122aで連結し、他方をスロープ部材10の基部の回動部10aに連結した例となっている。
これにより、
図6(a)〜(d)に示す各モードが得られる。
図7に示すように、各リンク部材の回動をロックするロックピン124a,124bを有する。
【0018】
図8は、ガイド部材220のスライドレール部221の上端部と下端部に回動部10aの支持凹部を形成した例である。
スライドレール部221の上端部は逆U字形状にし、回動部10aの受け凹部222を形成し、スライドレール部221の下端部は二又状に支持凹部221a,221bを形成してある。
このようにすると、
図8(b)に示すようにスロープ部材10を車室内側に回動する際には、回動部10aを車室内側の支持凹部221aに回動支持させ、スロープモードに展開する場合には、車外側の支持凹部221bに回動部10aを回動支持させることができ、操作安定性に優れる。
この場合には、
図9に示すようにスライドレール部221の途中に保持孔224を設けて、段階的に高さ調整可能にすることもできる。
【0019】
図10は、回動部10aの昇降手段320としてスピンドル軸321とねじ部を有する上下移動部材322に回動部10aを軸連結した例を示す。
このような構造を採用すると、回動部10aの上下移動を自動制御しやすくなる。
【符号の説明】
【0020】
10 スロープ部材
10a 回動部
20 ガイド部材(昇降手段)
22 回動部受け
23 倒立ロック部