(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
歪緩和バッファ層(2)、歪量子バリア層(4)およびチャネル層(5)の組成は、歪量子バリア層(4)が歪緩和バッファ層(2)よりも多量のGeを含むように選択された、請求項7に記載のFinFETデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0006】
すべての図面は、本開示の幾つかの態様および実施形態を説明することを意図している。記載した図面は、概略的に過ぎず、非限定的である。
【0007】
本発明は、量子井戸閉じ込めのための歪み層を有するデバイスおよびその製造方法に関する。本発明のデバイスは、10nmノードのFinFETについて改善した性能を有する。
【0008】
チャネルがSRBの上に直接に成長した従来の層スタックでは、チャネル応力(チャネル移動度を決定する)と、チャネルと下位層との間のバンドオフセット(MOSFETの静電制御を決定する)との両方が、チャネルとSRBの組成で決定される。このアプローチの1つの欠点は、大きい歪みは高い移動度とバンドオフセットの両方にとって有用であるが、大きすぎる歪みは欠陥の形成と緩和につながることである。
【0009】
本開示のデバイスは、少なくとも上記課題を解決し、チャネル内での欠陥の形成と緩和につながる可能性のあるレベルまで歪みを増加させることなくバンドオフセットを増加させることができる。本発明に開示されているように、量子バリア層を導入することによって、両パラメータは分離される。すなわち、チャネル応力はチャネルとSRBについての組成の選択によって決定され、一方チャネルと下位層との間のバンドオフセットは、チャネルと量子バリア層についての組成の選択によって決定される。それゆえ、このスタックは、チャネル応力とバンドオフセットの分離した最適化を可能にする。
【0010】
バルクシリコンのFinFETをスケーリングすることは、グラウンド平面(ground-plane)で増え続けるドーピングレベルを必要とする一方、ヘテロ接合の使用は、静電気を改善するための代替手段を提供する。確かに、シミュレーションは、10nmノードのFinFETについて、ドレイン誘起バリア低下(Drain-induced barrier lowering:DIBL)とサブスレッショルドスロープを大きく向上させるのに200meVのバンドオフセットが充分であり、より大きいバンドオフセットについては少ししか改善しないことを示している。
【0011】
本発明の第1の態様では、半導体基板と、歪緩和バッファ(SRB)層と、歪量子バリア(SQB)層と、チャネル層とを備え、歪量子バリア層は、歪緩和バッファ層とチャネル層との間に配置され、これら両方と物理的に接触するようにしたFinFETデバイスが開示されている。歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪緩和バッファ層に対するチャネル層のバンドオフセットと歪量子バリア層のバンドオフセットが反対の符号を有するように選択され、これにより、n型FinFETデバイスについては伝導帯バンド構造において、p型FinFETデバイスについては価電子帯バンド構造において、それぞれ量子井戸効果が作り出され、チャネル内でのキャリア閉じ込めが向上するようにしている。歪量子バリア層とチャネル層の両方が、歪緩和バッファに対して歪んでいる。
【0012】
SiGeヘテロ構造についての伝導帯バンドオフセットと価電子帯バンドオフセットは、以下で簡単に説明するモデルを使用して計算した。
【0013】
まず、標準のトランジスタ方向(transistor orientation)ごとに、(100)ウエハでの<011>方向に沿って歪みテンソルε’を計算する。大面積の(wide)プレーナ型FETの場合、SRBの上の歪みチャネルは2軸応力下にあるが、FinFETの場合、応力は事実上一軸である。その後、歪みテンソルε’は、半導体の主軸に沿って回転してεとなる。Si
1−xGe
xに関する文献(Van De Walle et al., Phys. Rev. B39, 1871(1989) and Galdin et al, Semicond. Sci. Technol. 15, 565 (2000))からのパラメータを用いて、チャネルとSRBについてのバンドがεから計算される。
【0014】
n型FETの場合の量子井戸は、負の伝導帯バンドオフセットΔE
C = E
C,channel−E
C,SRBに対応し、一方p型FETは、正の価電子帯バンドオフセットΔE
V = E
V,channel−E
V,SRBを必要とする。伝導帯バンドエネルギーでの歪み効果は、Si
1−xGe
xについてのΔとLバンドも含み、変形ポテンシャル理論(deformation potential theory)を用いて計算される。価電子帯バンド構造は、文献(Van De Walle et al., Phys.Rev. B 39,1871 (1989))からのパラメータを使用する、すべての半導体についての理論(6-band k.p theory)により計算される。合金の場合の変形ポテンシャルが線形的に補完される。最適化されたゲートスタックの場合(0.7nmのCET)、n型FETとp型FETについてそれぞれ+0.2Vと−0.2VのV
Tターゲットを仮定して、仕事関数が見積もられる。
【0015】
図1Aは、FinFETデバイスについて、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yとチャネル層Si
1−xGe
xについて同等の伝導帯バンドオフセットの線(灰色領域での濃い線)と、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yと歪量子バリア(QB)層Si
1−xGe
xについて同等の伝導帯バンドオフセットの線(白色領域での濃い線)を示す。
【0016】
図1Bでは、
図1AにA,B,C,Dで示す黒四角に対応する層のスタックを左側に示す。一方、
図1Aに白四角で示す、チャネルと下位層との間に追加の伝導帯バンドオフセットを導入する歪量子バリア(SQBまたはQB)層を備えた本発明に係るスタックを右側に示す。
【0017】
図1Bから、種々の例についてまとめることができる。
【0018】
(i)初期のスタック(SiGe40%からなるSRBの上にSiチャネル)についての−200meVと歪量子バリア層により導入される−60meVとからなる−260meVの増強された伝導帯バンドオフセット。最終的なスタックは、SiGe40%からなるSRBと、SiGe80%からなるQB層と、Siからなるチャネル層とで構成される。
【0019】
(ii)初期のスタック(SiGe25%からなるSRBの上にSiチャネル)についての−120meVと歪量子バリア層により導入される−90meVとからなる−210meVの増強された伝導帯バンドオフセット。最終的なスタックは、SiGe25%からなるSRBと、SiGe75%からなるQB層と、Siからなるチャネル層とで構成される。
【0020】
(iii)初期のスタック(Si基板の上にSiチャネル)についての0meVと歪量子バリア層により導入される−100meVとからなる−100meVの増強された伝導帯バンドオフセット。最終的なスタックは、Si基板と、SiGe50%からなるQB層と、Siからなるチャネル層とで構成される。
【0021】
(iv)初期のスタック(GeからなるSRBの上にGeチャネル)についての0meVと歪量子バリア層により導入される−70meVとからなる−70meVの増強された伝導帯バンドフセット。最終的なスタックは、GeからなるSRBと、SiGe80%からなるQB層と、Geからなるチャネル層とで構成される。
【0022】
図2Aは、FinFETデバイスについて、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yとチャネル層Si
1−xGe
xについて同等の価電子帯バンドオフセットの線(灰色領域での濃い線)と、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yと歪量子バリア(QB)層Si
1−xGe
xについて同等の価電子帯バンドオフセットの線(白色領域での濃い線)を示す。
【0023】
図2Bでは、
図2AにA,B,C,Dで示す黒四角に対応する層のスタックを左側に示す。一方、
図1Aに白四角で示す、チャネルと下位層との間に追加の価電子帯バンドオフセットを導入する歪量子バリア層を備えた本発明に係るスタックを右側に示す。
【0024】
図2Bから、種々の例についてまとめることができる。
【0025】
(i)初期のスタック(GeからなるSRBの上にGeチャネル)についての0meVと歪量子バリア層により導入される+150meVとからなる+150meVの増強された価電子帯バンドオフセット。最終的なスタックは、GeからなるSRBと、SiGe50%からなるQB層と、Geからなるチャネル層とで構成される。
【0026】
(ii)初期のスタック(Ge75%からなるSRBの上にGeチャネル)についての+170meVと歪量子バリア層により導入される+180meVとからなる+350meVの増強された価電子帯バンドオフセット。最終的なスタックは、Ge75%からなるSRBと、SiGe25%からなるQB層と、Geからなるチャネル層とで構成される。
【0027】
(iii)初期のスタック(SiGe40%からなるSRBの上にSiGe80%からなるチャネル)についての+250meVと歪量子バリア層により導入される+170meVとからなる+420meVの増強された価電子帯バンドオフセット。最終的なスタックは、SiGe40%からなるSRBと、SiからなるQB層と、SiGe80%からなるチャネル層とで構成される。
【0028】
(iv)この例は、そのモデルによれば、+250meVの価電子帯バンドオフセットを有する初期のスタック(Si基板の上にSiGe40%からなるチャネル)についてどのQBソリューション(solution)も利用可能でないような状況に対応する。
【0029】
第1の態様の実施形態で、半導体基板は、IV族半導体材料を含む/からなる。
【0030】
第1の態様の別の実施形態で、歪緩和バッファ層は、Geと、SiGeを含む歪量子バリア層とを含む。
【0031】
第1の態様の更なる実施形態で、FinFETデバイスのチャネルは、Geを含む。
【0032】
デバイスがn型FinFETであり、チャネル層がGeを含む第1の例で、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に少なくとも約0.4%の格子定数不整合度(lattice constant mismatch)が存在するように選択される。
【0033】
第1の例のデバイスとその製造について、さらに詳細に説明する。スタック全体、すなわちSRB、SQBおよびチャネル層を1つのプロセス工程中でインサイチュ(in-situ)に成長させられることは、本発明の方法の利点である。
【0034】
デバイスがp型FinFETであり、チャネル層がGeを含む第2の例で、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層が歪緩和バッファ層よりも少量のGeを含むように選択される。好ましくは、歪量子バリア層は、歪緩和バッファよりも10%から70%少ないGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、好ましくは歪緩和バッファよりも少なくとも10%少ないGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、かつ、格子不整合に起因する欠陥を導入することがないように、最大で約70%少ないGeを含む。
【0035】
さらに、第1の例または第2の例に関する第1の態様の実施形態で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、Siを含んでもよい。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がSiGeを含む。好ましくは、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がSiGeからなる。
【0036】
あるいは、第1の例または第2の例に関する第1の態様の実施形態で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、さらにSnを含んでもよい。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がGeSnを含む。好ましくは、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がGeSnからなる。
【0037】
さらに、歪緩和バッファ層がGeを含み、歪量子バリア層がSiGeを含む第1の態様の他の実施形態で、FinFETデバイスのチャネルはSiからなる。
【0038】
デバイスがn型FinFETであり、チャネル層がSiからなる第1の態様の第3の例で、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層が歪緩和バッファよりも多量のGeを含むように選択される。好ましくは、歪量子バリア層は、歪緩和バッファよりも10%から70%多くGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、好ましくは歪緩和バッファよりも少なくとも10%多くGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、かつ、格子不整合に起因する欠陥を導入することがないように、最大で約70%多くGeを含む。
【0039】
第1、第2または第3の例に関する第1の態様の別の実施形態で、FinFETデバイスの一部である歪量子バリア層は、3nmから30nm、より好ましくは5nmから20nmの厚さを有する。
【0040】
本発明の第2の態様では、半導体基板と、歪緩和バッファ(SRB)層と、歪量子バリア(SQB)層と、チャネル層とを備え、歪量子バリア層は、歪緩和バッファ層とチャネル層との間に配置され、これら両方と物理的に接触するようにしたプレーナ型FETデバイスが開示されている。歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪緩和バッファ層に対するチャネル層のバンドオフセットと歪量子バリア層のバンドオフセットが反対の符号を有するように選択され、これにより、n型FETデバイスについてはチャネルと量子バリア層との間に伝導帯バンドオフセットを作り出すことにより伝導帯バンド構造において、p型FETデバイスについてはチャネルと量子バリア層との間に価電子帯バンドオフセットを作り出すことにより価電子帯バンド構造において、それぞれ量子井戸効果が作り出され、チャネル内でのキャリア閉じ込めが向上するようにしている。歪量子バリア層とチャネル層の両方が、歪緩和バッファに対して歪んでいる。
【0041】
第2の態様の実施形態で、半導体基板はIV族半導体材料を含む/からなる。
【0042】
第2の態様の実施形態で、歪緩和バッファ層はGeを含み、歪量子バリア層はSiGeを含む。さらに、第2の態様の実施形態で、チャネル層はGeを含む。
【0043】
図3は、プレーナ型のn型FETデバイスについて、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yとチャネル層Si
1−xGe
xについて同等の伝導帯バンドオフセットの線(灰色領域での濃い線)と、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yと歪量子バリア(QB)層Si
1−xGe
xについて同等の伝導帯バンドオフセットの線(白色領域での濃い線)を示す。
【0044】
第2の態様の第4の例で、デバイスはn型のプレーナ型FETであり、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に少なくとも約0.4%の格子定数不整合度が存在するように選択される。
【0045】
また、第4の例に関する第2の態様の実施形態で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、さらにSiを含んでもよい。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がSiGeを含む。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がSiGeからなる。
【0046】
一方、第4の例に関する第2の態様の他の実施形態で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、さらにSnを含んでもよい。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がGeSnを含む。したがって、SRB層とチャネル層の少なくとも一方または両方がGeSnからなる。
【0047】
第4の例のデバイスとその製造について、さらに詳細に説明する。
【0048】
図4は、プレーナ型のp型FETデバイスについて、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yとチャネル層Si
1−xGe
xとについて同等の価電子帯バンドオフセットの線(灰色領域での濃い線)と、種々の組成のSRB層(または基板)Si
1−yGe
yと歪量子バリア(QB)層Si
1−xGe
xとについて同等の価電子帯バンドオフセットの線(白色領域での濃い線)を示す。
【0049】
第2の態様の第5の例で、デバイスはp型のプレーナ型FETであり、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層が歪緩和バッファよりも少量のGeを含むように選択される。好ましくは、歪量子バリア層は、歪緩和バッファよりも10%から70%少ないGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、好ましくは歪緩和バッファよりも少なくとも10%少ないGeを含む。歪量子バリア層は、量子井戸効果を達成するために、かつ、格子不整合に起因する欠陥を導入することがないように、最大で約70%少ないGeを含む。
【0050】
第4または第5の例に関する第2の態様の別の実施形態では、プレーナ型FETデバイスの一部である歪量子バリア層は、3nmから30nm、より好ましくは5nmから20nmの厚さを有する。
【0051】
n型FinFETの場合、プレーナ型のn型FETの場合よりもオフセットが25%小さい(
図5に示すように)。例えば歪Siを用いたn型FETにおける−200meVのオフセットは、プレーナ型の場合31%のGeが必要であるのに対して、フィン型の場合39%のGeが必要である。Geチャネルのp型FETの場合、フィン型のΔEVはプレーナ型よりも10%大きい(
図6に示すように)。
【0052】
第1の態様と第2の態様の特定の実施形態は、量子井戸閉じ込めのための歪み層を備えたn型FETデバイスに関する。さらに、特定の実施形態は、従来のデバイスと比べて、向上したチャネル移動度およびオン電流を有し、かつ/または低減したリークを有するn型FETデバイスに関する。
【0053】
特定の実施形態で、n型FETデバイスは、Geリッチな(rich)チャネルと、シリコンゲルマニウム歪量子バリア層とを備える。
【0054】
特定の実施形態は、量子井戸閉じ込めのための歪み層を備えたn型FETデバイスを製造する方法に関する。
【0055】
更なるn型FETの性能向上のために、種々のオプションが検討されている。その1つは、従来のSiを用いたn型FETにおけるチャネル材料としてのシリコンを、Snを添加した/添加しないゲルマニウムまたはゲルマニウムリッチなSiGeと置換することである。なぜなら、これらの材料の移動度はSiと比較して高いからである。一例では、シリコンウエハの上に成長した厚い(約200nm)緩和SiGeSnを含むスタックの上にトランジスタが形成される。
【0056】
更なるn型FETの性能向上のための別のオプションは、チャネル内で引張応力を作り出すことによって移動度を大きくすることである。これは、例えばSi基板とチャネルとの間にGeSn緩和バッファを形成することによって達成される。チャネルは、Ge、GeリッチなSiGeまたはSiGeSnを含んでもよい。
【0057】
しかし、上記の両オプション、すなわち、緩和GeSn層の上の厚い緩和SiGeSnまたは歪SiGeSnチャネルには、次のような重要な欠点がある。すなわち、(1)構造全体のバンドギャップは、不要な接合リークに少しつながり、(2)チャネルと基板との間には小さい伝導帯バンドオフセットが存在し、または伝導帯バンドオフセットが存在せず、悪化した短チャネル効果につながる。
【0058】
特定の実施形態は、上記の課題のうち少なくとも1つを解決可能な解決手段に関する。SiGeを含みかつチャネルの直下に配置された薄い歪量子バリア(SQB)層は、所用の伝導帯バンドオフセットを提供し、これにより、良好な短チャネル効果につながる。さらに、一実施形態でのSQB層は、プレーナ型のn型FET構造およびp型FET構造の両方について、所用の伝導帯バンドオフセットを有する。
【0059】
好都合なことに、SQB層は、全体の接合リークの低下につながる下位の歪緩和バッファよりも大きいバンドギャップを有する。
【0060】
一態様では、
半導体基板と、
Geを含む歪緩和バッファ(SRB)層と、
SiGeを含む歪量子バリア層(SQB)層と、
Geを含むチャネル層とを備え、
歪量子バリア層は、歪緩和バッファ層とチャネル層との間に配置され、これら両方と物理的に接触し、
歪緩和バッファ層(SRB)、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に、少なくとも約0.4%の格子定数不整合度が存在するように選択されたn型FETトランジスタについて説明している。
【0061】
一実施形態で、半導体基板はシリコンである。
【0062】
一実施形態で、歪緩和バッファ層とチャネル層はそれぞれ、約75at%以上のGe濃度を有する。したがって、これら両方が、Geリッチな層であり、あるいは特定の実施形態では、純粋なGe層である。歪緩和層は、機械的応力と機械的歪みがほぼ存在しない層である。パターニングされまたはパターニングされない基板の組成と、成長する層の組成と、例えば成長温度のような成長プロセスのパラメータとに応じて、緩和が現れる前に一定の厚さが必要となる(臨界厚さ)。Si基板の上に成長したGeリッチな層の場合、臨界厚さは約30nm未満であると見積もられる。
【0063】
また、歪緩和バッファ層および/またはチャネル層は、最大で約25at%までSiを含むことができる。
【0064】
特定の実施形態で、SRB層とチャネルの組成は、例えばSRB層とチャネル層の両方がSiGeからなる(Geは約75at%より大きい)実施形態において、類似、更には同一の場合もあり得る。共に同一の材料からなるSRB層とチャネル層は、より容易に製造できるという利点がある。
【0065】
別の実施形態で、歪緩和バッファ層および/またはチャネル層は、さらにSnを含む。一実施形態で、SRBおよび/またはチャネルは、Snの濃度が約10at%未満のGeSnまたはSiGeSnを含む。
【0066】
一例で、SRBはGeSnを含み、チャネル層はSiGe、GeSnまたはSiGeSnを含み、これらの組成はそれぞれ約75at%以上のGe濃度を有する。GeSnの場合、Geの濃度は最大で約90at%まで大きくなる。
【0067】
別の実施形態で、歪量子バリア層は、量子井戸閉じ込めのための歪み層である。一実施形態で、SQB層は、SiGeを含み、より好ましくはSiGeとドーパントとからなる。SQB層中のGe濃度は約50at%から約90at%である。特に、Ge濃度は約60at%から約80at%でもよく、とりわけ約65at%から約75at%でもよい。SQB層は、上記濃度範囲内でSiとGeのみを含み、例えば典型的なドーパントレベル濃度(約1at%)にあるドーパント以外の元素を含まなくてもよい。
【0068】
さらに、SQB層の最適な組成は、約0.4%(約0.3nm)の格子定数不整合度がSQB層とチャネル層との間に導入されるように、チャネル層の組成に応じて選択される。格子定数不整合度は、緩和状態での対応するブランケット(blanket)層で知られているように、種々の組成についての格子定数の絶対値に基づいて評価される。
【0069】
チャネル層がGeまたはSiGe(Geは約75at%より大きい)を含む例で、SQB層中での約65at%から約90at%のGeの濃度が最適である。なぜなら、それは最大のバンドオフセット約100mVにつながるからである。チャネル層がドーパントを除いてGeまたはSiGe以外の元素を含まない場合、指標となる経験則として、SRB層のGe濃度とチャネル層(SRB層の上位の)のGe濃度との間に約10at%の差が存在することが最適であると考えられている。
【0070】
チャネル層がGeSn(Geは約75at%より大きい)を含む例で、Snが格子定数を低下させる効果を考慮すると、下位のSQBの最適なGe濃度は低く、すなわち約50at%から約70at%低い。
【0071】
SiGeのSQB層のバンドギャップの場合、約1eVが予測され、これはGe/GeSn層の場合の0.67eV以下よりも充分に大きい。
【0072】
一実施形態で、SQB層の厚さは、SQB層が歪んだ状態を維持し、応力緩和に起因する欠陥の形成を妨げるように、約3nmから約30nmの間で選択される。当業者に知られているように、一実施形態でのトレンチ(凹部)内で成長した層の緩和挙動は、臨界厚さをより直接的に見積もることができる、ブランケット基板の上に堆積した層の場合とは異なる。
【0073】
本開示の幾つかの実施形態で、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層および場合によってチャネル層は、約1at%のドーパントレベル濃度でドーパントを含んでもよい。
【0074】
さらに、一実施形態でのデバイスは、ゲルマニウム、または、歪緩和バッファ層のSi濃度より低いSi濃度を有するSiGeからなる、隆起した(elevated)ソースとドレインを備えることができる。
【0075】
一実施形態で、歪緩和バッファ層は、複数のサブ層を含む。SRB層またはその種々のサブ層内で、典型的には、基板と接するSRB層の底部でのSiリッチなSiGeから、SQB層との界面でのGeリッチなSiGe界面まで、Ge濃度の勾配をエピタキシャル成長で導入できる。
【0076】
図7(A)は、本開示の一実施形態に係るプレーナ型デバイスの、チャネルに沿った断面図を概略的に示す。(1)は基板、(2)はSRB層、(4)はSQB層、(5)はチャネル層、(6)は隆起したS/D、(7’)はゲートメタル、(8)はスペーサ、(9)はゲート充填材(gate fill)である。
【0077】
プレーナ型構造の例で、チャネル層は、約3nmから約20nmの厚さを有する。
【0078】
図7(B)は、本開示の一実施形態に係るFinFETデバイスの、フィンと交差する断面図を概略的に示す。(1)は基板、(2)はSRB層、(3)は分離部(isolation)、(4)はSQB層、(5)はチャネル層、(7’’)はゲートメタルである。
【0079】
FinFET構造の例で、歪量子バリア層(4)は、ゲート電極(7’’)の最下部の約10nm下に配置されてもよい。
【0080】
また、FinFET構造の例で、チャネル層は、約10nmから約50nmの厚さを有する。
【0081】
第2の態様では、
(a)パターニングされた半導体基板を準備する工程であって、当該半導体基板は、底部で半導体基板を露出させる凹部を有し、かつ、絶縁対材料を含む側壁を有するようにした工程、続いて、
(b)Geを含む歪緩和バッファSRB層をエピタキシャル成長によって凹部内に形成する工程、続いて、
(c)歪緩和バッファ層の上位にあって歪緩和バッファ層に接し、かつSiGeを含む歪量子バリアSQB層をエピタキシャル成長によって形成する工程と、続いて、
(d)歪量子バリア層の上位にあって歪量子バリア層に接し、かつGeを含むチャネル層をエピタキシャル成長によって形成する工程とを含み、
(e)歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に、少なくとも約0.4%の格子定数不整合度が存在するように選択されるようにした、n型FETトランジスタを製造する方法について説明している。
【0082】
一実施形態で、歪み緩和バッファ層は、凹部内でエピタキシャル成長し、これにより最初の凹部を完全に充填すると共に過成長させる(overgrow)。次に、ウェル(well)の注入を実施できる。次に、歪量子バリア層を形成する前に、最初の凹部よりも深さが小さい第2の凹部が残るように、歪緩和バッファに部分的にくぼみ形成する(recess back)(エッチバックする)。したがって、SRBは、最初の凹部を部分的にのみ充填し、SQB層とチャネル層を成長させた後に、最初の凹部を再度完全に充填する。
【0083】
一実施形態では、エピタキシャル反応器内でインサイチュに(真空破壊なく)歪量子バリア層とチャネル層をエピタキシャル成長させる。SRB層をエッチバックするプロセスは、SQB層を成長させる直前に、エピタキシャル反応器内でインサイチュに実施してもよい。
【0084】
一実施形態で、歪緩和バッファ層、量子バリア層およびチャネル層は、インサイチュドーピングによるエピタキシャル成長中、またはエピタキシャル成長後の注入のいずれかによって導入されるドーパントを含んでもよい。
【0085】
具体例で、Si基板と、Si基板の上のSRB層と、チャネル層とを備え、SRB層とチャネル層の両方がGeからなり、かつドーパントを含んでもよいn型FETトランジスタについて説明する。さらに、トランジスタは、SRB層とチャネル層との間に挟持され、これら両方と物理的に接触するSQB層を備える。SQB層は、SiGe(約75at%のGeを含む)を含み、さらにドーパントを含んでもよい。この例のデバイスは、より大きいSQB層のバンドギャップの存在に起因して、低下した接合リークという利点を有する。
【0086】
別の具体例で、Si基板と、最大で約10at%のSnを含むGeSnからなり、Si基板の上のSRB層とを備え、さらにドーパントを含んでもよいn型FETトランジスタについて説明する。さらに、トランジスタは、GeSn(Snは約10at%より少ない)またはSiGe(Snは約75at%より多い)からなるチャネル層を備え、ドーパントを含んでもよい。さらに、トランジスタは、SRB層とチャネル層との間に挟持され、これら両方と物理的に接触するSQB層を備える。SQB層は、SiGe(約60at%から約70at%のGeを含む)を含み、さらにドーパントを含んでもよい。この例のデバイスは、SQBの存在に起因して、低下した接合リークという利点を有する。さらに、トランジスタは、増大した移動度、およびチャネルに存在する引張歪みに起因した高いオン電流という利点を有する。
【0087】
本発明の第1と第2の態様の実施形態では、次のような発明の特徴を開示する。
【0088】
半導体基板と、Geを含む歪緩和バッファ層と、SiGeを含む歪量子バリア層と、Geを含むチャネル層とを備えたn型FETトランジスタであり、歪量子バリア層は、歪緩和バッファ層とチャネル層との間に配置され、これら両方と物理的に接触し、歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に、少なくとも約0.4%の格子定数不整合度が存在するように選択されている。
【0089】
上記n型FETトランジスタで、歪緩和バッファ層とチャネル層のそれぞれが、約75at%以上のGe濃度を有する。
【0090】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、歪緩和バッファ層および/またはチャネル層は、さらにSiを含む。
【0091】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、歪緩和バッファ層および/またはチャネル層は、さらにSnを含む。
【0092】
上記n型FETトランジスタで、Snの濃度は約10at%未満である。
【0093】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、量子バリア層は、約50at%から約90at%、特に約60at%から約80at%、とりわけ約65at%から約75at%のGe濃度を有するSiGeを含む。
【0094】
上記n型トランジスタで、歪量子バリア層は、約3nmから約30nmの厚さを有する。
【0095】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、歪緩和バッファ、量子バリア層およびチャネル層の1つ以上はドーパントを含む。
【0096】
上記のいずれかのn型FETトランジスタは、さらに、Ge、または、歪緩和バッファのSi濃度より低いSi濃度を有するSiGeを含む、隆起したソース領域とドレイン領域を備える。
【0097】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、歪緩和バッファ層は、複数のサブ層を含み、かつ/または、歪み緩和バッファは、基板との界面でGe濃度が最低となるようなGe濃度の勾配を有する。
【0098】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、トランジスタは、プレーナ型構造を有する。
【0099】
上記のいずれかのn型FETトランジスタで、チャネル層は、約3nmから約20nmの厚さを有する。
【0100】
上記n型FETトランジスタで、トランジスタは、FinFET構造を有する。
【0101】
上記n型FETトランジスタで、トランジスタはFinFET構造を有し、チャネル層は約10nmから約50nmの厚さを有する。
【0102】
n型FETトランジスタを製造する方法は、a)パターニングされた半導体基板を準備する工程であって、当該半導体基板は、底部で半導体基板を露出させる凹部を有し、かつ、絶縁対材料を含む側壁を有するようにした工程、次に、b)Geを含む歪緩和バッファ層をエピタキシャル成長によって凹部内に形成する工程、次に、c)歪緩和バッファ層の上位にあって歪緩和バッファ層に接し、かつSiGeを含む歪量子バリア層をエピタキシャル成長によって形成する工程と、次に、d)歪量子バリア層の上位にあって歪量子バリア層に接し、かつGeを含むチャネル層をエピタキシャル成長によって形成する工程とを含み、e)歪緩和バッファ層、歪量子バリア層およびチャネル層の組成は、歪量子バリア層とチャネル層との間に、少なくとも約0.4%の格子定数不整合度が存在するように選択されている。
【0103】
上記の方法のプロセス(b)で、歪緩和バッファ層は歪み量子層の形成前に凹部を充填および過成長させ、それを部分的にエッチバックして第2の凹部を作成する。
【0104】
上記の方法で、歪緩和バッファ層とチャネル層は、約75at%以上のGe濃度を有する。
【0105】
上記方法で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、さらにSiを含む。
【0106】
上記方法で、歪緩和バッファ層とチャネル層の少なくとも一方は、さらにSnを含む。
【0107】
上記方法で、Snの濃度は約10at%未満である。
【0108】
上記方法で、量子バリア層は、Ge濃度が約50at%から約90at%、特に約60at%から約80at%、とりわけ約65at%から約75at%であるSiGeを含む。
【0109】
上記方法で、歪緩和バッファ、量子バリア層およびチャネル層の1つ以上は、インサイチュドーピングによるエピタキシャル成長中、またはエピタキシャル成長後の注入のいずれかによって導入されるドーパントを含む。
【0110】
上記方法で、歪み緩和バッファ層は、複数のサブ層を含み、かつ/または歪緩和バッファは、基板との界面でGe濃度が最低となるようなGe濃度の勾配を有する。
【0111】
先の説明は、本発明の特定の実施形態について詳細に説明している。しかし、文章中でいかに詳細に先の説明がなされていようと、本発明を多くの方法で実施できることが理解されるであろう。本発明の特定の特徴または態様を説明する場合の特定の用語の使用は、その用語が本明細書内で再定義され、当該用語に関連する本発明の特徴または態様のいずれかの特定の特性を含むように制限されることを意味する、と解釈すべきでないことに留意する必要がある。
【0112】
上記の詳細な説明は、種々の実施形態に適用される本発明の新規な特徴を示し、説明し、指摘してきたが、当業者によって、図示したデバイスまたはプロセスの形態と細部における種々の省略、置換および変更が、本発明から逸脱することなくなされることが理解されるであろう。