(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボビンに対して上下方向に伸びる中心軸周りに導線が巻かれることによって構成されるコイルと、 前記コイルの径方向内方において、中心軸に沿って上下方向に移動可能に配置され、磁性体部を有するプランジャと、 前記コイルの径方向内方に固定され、前記プランジャの磁性体部と中心軸方向に対向して配置され、前記プランジャを中心軸方向に移動可能に支持する円筒部を有する磁性体のコアと、 前記コイルを径方向外方から覆い、磁性体である円筒部を有するカバーと、 前記コア、前記プランジャおよび前記カバーとの間で、磁気回路を構成する円環状のマグネットと、 前記マグネットの磁束の影響により、前記プランジャの磁性体部が前記コアに対して磁気吸引される力に反発する方向に、前記プランジャを前記コアに対して相対的に押圧するスプリングと、 前記コアよりも軸方向下側に配置され、インポートと、アウトポートと、前記プランジャの端部が接触する弁とを備えるノズルと、 を備え、 前記マグネットは、磁気回路において前記プランジャまでの経路に、前記カバーおよび非磁性体を有し、 前記マグネットは、磁気回路に沿って片側単極着磁がなされており、N極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面が、前記コアを通過せず、 前記マグネットは、前記コアの径方向外側に配置され、径方向内方に一方の極が存在し、径方向外方に他方の極が存在し、 前記マグネットの軸方向上側には非磁性のキャップが配置され、 前記マグネットは、前記キャップと前記カバー、または前記キャップと前記ボビンにより挟持され、 軸方向における前記マグネットと前記コイルとの間には、非磁性体のみ配置されて、 前記コアおよび前記キャップは軸方向に貫通する呼吸孔を備え、 前記プランジャの径方向外側には軸方向に伸びる円筒状のブッシュが配置されている電磁弁。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、プランジャの中心軸Xに沿う方向を「軸方向」、中心軸Xに直交する方向を「径方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向等の定義により、本発明に係る電磁弁の製造時および使用時の向きを限定する意図はない。
【0013】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0014】
図1と
図2とは、本発明の第1実施形態に係る電磁弁1の断面図である。この電磁弁1は、プランジャ7を上下方向に移動させる装置である。
図1は弁閉状態における電磁弁1を、
図2は弁開状態における電磁弁1を示す。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態に係る電磁弁1は、カバー2、ノズル3、ヨーク4、ソレノイド5、コア6、プランジャ7、スプリング8、マグネット9、キャップ10、ダイヤフラム11を有する。
【0016】
この電磁弁1のカバー2は、コイル52を径方向外方から覆い磁性体である円筒部21を有している。カバー2の下端部にはノズル3が設けられている。ノズル3は、円板部31とノズル部32と弁33とを有する。円板部31はノズル部32の上端から径方向外側に伸びる。また、円板部31の径方向外端はカバー2の内周面に固定される。ノズル部32は、弁33を収容する弁室34と、弁室34と連通可能なインポート35、アウトポート36、ドレンポート37とを有する。インポート35は流体の流入口であり、ノズル部32の下側の空間と弁室34とを連通させるように設けられる。インポート35の下側は、例えばポンプに接続され、圧力の高い流体が存在している。そのため、弁閉状態において、弁33は流体より軸方向上側に向かって押圧された状態となる。アウトポート36は流体の流出口であり、ノズル部32の径方向外側と弁室34とを連通させるように設けられる。ドレンポート37は、アウトポート36よりも上側において、ノズル部32の径方向外側と弁室34と連通させるように設けられる。ドレンポート37は弁開状態から弁閉状態にした際に、アウトポート36付近の高い圧力を保った流体の移動先として利用され、流体がドレンポート37側に移動することにより、流体の圧力が下がる。
【0017】
円板部31の上側には、磁性体からなる円環状のヨーク4が配置される。ヨーク4は、カバー2の内側面に形成された下方段部22によって位置決めされる。カバー2の下端は、内側へ折り曲げられており、下方カシメ部23を形成している。これにより、ヨーク4と円板部31とは、下方段部22と下方カシメ部23とにより挟持されている。
【0018】
ヨーク4の上側には、ソレノイド5が配置される。ソレノイド5は、ボビン51、コイル52、モールド53を有する。ボビン51は円筒状の部材である。コイル52は、ボビン51に対して上下方向に伸びる中心軸X周りに導線が巻かれることによって構成される。ボビン51の径方向内方にはコア6が配置されている。コア6は、吸引子61とブッシュ62とを有する。吸引子61とブッシュ62とは、ボビン51の内周に固定される。より詳しくは、ボビン51の内周面に設けられた、径方向内側に向かって突出する凸部511より上側に吸引子61は固定される。ブッシュ62は凸部511より下側に固定される。また、吸引子61は凸部511の上面に接触し、ブッシュ62は凸部511の下面に接触することで軸方向に位置決めされる。言い換えると、コア6は、コイル52の径方向内方に固定され、プランジャ7の磁性体部71と中心軸Xに対向して配置され、プランジャ7を中心軸Xに移動可能に支持する円筒部を有している。円筒部とは、つまりブッシュ62のことである。また、ブッシュ62の径方向外側には、ブッシュ62の外周面と接触するようにヨーク4が配置される。
【0019】
ボビン51とコイル52とは、モールド53により覆われている。ヨーク4は固定孔41を有する。ヨーク4はコイル52およびボビン5とインサート成型にてモールド53により覆われる。その際に、モールド53の一部分が固定孔41に入り込むことにより、ヨーク4はモールド53に対して、外れにくくなっている。
【0020】
ブッシュ62の径方向内方にはプランジャ7が、中心軸Xに沿って上下方向に移動可能に配置される。プランジャ7は、磁性体からなる磁性体部71と非磁性体からなるピン72とを有する。磁性体部71の下端部にピン72は固定される。また、ピン72はノズル部32の内部へと挿入されている。ピン72の下端部は、弁閉状態においては、弁33と接触している。言い換えると、プランジャ7はコイル52の径方向内方において、中心軸Xに沿って上下方向に移動可能に配置されている。
【0021】
磁性体部71は、上側に開口する凹部711を有する。凹部711には、スプリング8が配置される。スプリング8は、凹部711の底面と吸引子61の下面とのそれぞれに接触している。スプリング8により、磁性体部71は吸引子61に対して、軸方向に離れる方向に押圧されている。言い換えると、プランジャ7の磁性体部71とコア6のそれぞれは、スプリング8と接触するスプリング接触部81を有している。また、スプリング接触部81間の距離は、プランジャ7の磁性体部71とコア6と最近接距離よりも大きい。これにより、吸引子61と磁性体部71との間における磁気吸引力は確保しつつ、スプリング8を配置するスペースを確保することができる。
【0022】
ソレノイド5の上側には円環状のマグネット9が配置されている。また、マグネット9は、吸引子61とカバー2との間に配置され、例えば、径方向内側がN極、径方向外側がS極となるように、径方向に片側単極着磁をされている。
【0023】
マグネット9は、カバー2の内側面に設けられた上方段部24にて軸方向に位置決めがされている。マグネット9と吸引子61の上側には非磁性体からなる円板状のキャップ10が配置されている。カバー2の上端は内側へ折り曲げられており、上方カシメ部25を形成している。これにより、マグネット9とキャップ10とは、上方段部24と上方カシメ部25とにより挟持されている。上方カシメ部25はカバー2の円筒部21上端より径方向内方に向かって伸びるが、吸引子61と軸方向に重なる位置までは伸びていない。これにより、マグネット9の上側において、マグネット9と上方カシメ部25の間の磁気回路が形成されるのを防止している。また、上方カシメ部25は、マグネット9のN極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面と、軸方向に重なる位置まで伸びていない。これにより、さらにマグネット9の上側において、マグネット9と上方カシメ部25の間の磁気回路が形成されるのを防止している。
【0024】
コイル52の一旦は、ボビン51に設けられたコネクタ531と電気的に接続されている。また、カバー2はコネクタ531に対応する位置が軸方向下側から軸方向上側に向けて切り欠かれており、その切り欠かれた部分にコネクタが嵌まり込んでいる。
【0025】
ピン72とノズル部32との間にはダイヤフラム11が配置されている。ダイヤフラム11の径方向内端は、ピン72に固定され、ダイヤフラム11の径方向外端はノズル部32に固定されている。これにより、弁開状態から弁閉状態にした際に、ダイヤフラム11より上側が、アウトポート36付近の高い圧力を保った流体の移動先ではなくなるため、電磁弁としての信頼性が高まる。
【0026】
図1、また後述する
図2に示す電磁弁1においては、マグネット9の径方向内側におけるN極から発生する磁束は、吸引子61、磁性体部71、ブッシュ62、ヨーク4、カバー2を通り、マグネット9の径方向外側におけるS極に至る磁気回路が形成される。言い換えると、マグネット9は、コア6、プランジャ7およびカバー2との間で、磁気回路を構成している。
【0027】
つまり、マグネット9は、磁気回路に沿って片側単極着磁がなされており、N極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面が、コア6を通過しないように配置されているため、上述した磁気回路以外の磁気回路が形成されるのを防止することができる。これにより、マグネット9のN極から発生する磁束を、プランジャ7の磁性体部71を吸引子61へ吸引する力として有効に活用することができる。
【0028】
また、スプリング8は、マグネット9の磁束の影響により、プランジャ7の磁性体部71がコア6に対して磁気吸引される力に反発する方向に、プランジャ7をコア6に対して相対的に押圧している。
【0029】
図1における電磁弁1のように弁閉状態においては、吸引子61と磁性体部71との間の距離が、吸引子61と磁性体71との間の磁気吸引力がスプリング8による押圧する力よりも小さくなるような距離となっているため、コイルに通電することなく、弁閉状態を維持することができる。
【0030】
図2における電磁弁1は、弁開状態を示している。弁開状態においては、吸引子61と磁性体部71との距離が、吸引子61と磁性体71との間の磁気吸引力がスプリング8による押圧する力よりも大きくなるような距離となっているため、コイルに通電することなく、弁開状態を維持することができる。弁開状態においては、磁性体部71の軸方向上側の面は吸引子61の下面と接触している。
【0031】
この第1実施形態に係る電磁弁1の構造によれば、弁閉状態と弁開状態とを、通電することなく維持することができる。また、弁閉状態から弁開状態へ変更する場合には、マグネット9から発生する磁束と同じ向きの磁束が発生するようにコイル52に通電すればよい。コイル52に通電したことにより、マグネット9から発生する磁束と同じ向きの磁束が発生すれば、吸引子61と磁性体部71との間の磁気吸引力がスプリング8による押圧している力よりも大きくなり、プランジャ7が軸方向上側に移動する。そうすれば、インポート側の流体の圧力に押され弁は軸方向上側に移動し、弁開状態となる。また上述したとおり、弁開状態においては、コイル52への通電をとめた後も、その状態が維持される。
【0032】
また、弁閉状態から弁開状態へ変更する場合には、マグネット9から発生する磁束と反対向きの磁束が発生するようにコイル52に通電すればよい。コイル52に通電したことにより、マグネット9から発生する磁束と反対向きの磁束が発生すれば、吸引子61と磁性体部71との間の磁気吸引力がスプリング8による押圧している力よりも弱くなり、プランジャ7が弁33とともに軸方向下側に移動する。これにより弁閉状態となる。また上述したとおり、弁閉状態においては、コイル52への通電をとめた後も、その状態が維持される。
【0033】
吸引子61は中心軸Xに沿った方向に貫通する呼吸孔611を有する。吸引子61の上側に配置されるキャップ10も中心軸Xに沿った方向に貫通する孔を有する。そのため、電磁弁1の上側の空間と磁性体部71の凹部711の空間とは連通している。これにより、磁性体部71の凹部711の内側における空間が外部から閉じた空間とはならないため、プランジャ7の上下運動により、圧力の変化は生じにくくなり、弁の開閉運動が妨げられることはない。
【0034】
マグネット9が吸引子61の径方向外側に配置されていることにより、マグネット9が磁性体部71の径方向外側に配置されている場合と比較し、磁性体部71が、中心軸Xから径方向にずれて上下方向に移動するのを防ぐことができる。これはつまり、マグネット9が吸引子61の径方向外側に配置されている場合と、マグネット9が磁性体部71の径方向外側に配置されている場合とでは、吸引子61と磁性体部71との間の磁気吸引力は同等となるが、磁性体部71の径方向外側への磁気吸引力という観点では、マグネット9が吸引子61の径方向外側に配置されている方が、小さくなるからである。なぜなら、形成される磁気回路において、マグネット9から磁性体部71の径方向側面までの距離が、マグネット9を吸引子61の径方向外側に配置した場合の方が、マグネット9を磁性体部71の径方向外側に配置した場合と比較して、大きくなるためである。マグネット9から磁性体部71の径方向側面までの距離が大きくなれば、マグネット9から磁性体部71までの磁気回路内において、複数の部材が配置されることになる。各部材が有する磁気抵抗、または各部材間における磁気抵抗の影響を受けるため、マグネット9の磁束が与える磁性体部71への径方向への吸引力は、マグネット9を吸引子61の径方向外側に配置した場合の方が、マグネット9を磁性体部71の径方向外側に配置した場合と比較して、小さくなる。磁性体部71が中心軸Xから径方向にずれて上下方向に移動をすると、ブッシュ61または磁性体部71が削れてしまい、コンタミネーションが発生してしまう虞がある。そのコンタミネーションが磁性体部71とブッシュ62との間等に集積することで、プランジャ7の上下方向の移動の妨げとなってしまう。コンタミネーションの集積により、プランジャ7の上下方向の移動が妨げられると、電磁弁の応答性が悪化し、最悪の場合は移動が完全に妨げられ、電磁弁として機能しなくなる。第1実施形態における構造においては、そのような虞が小さくなる。
【0035】
ブッシュ62は少なくとも径方向内側の面がコーティングされている。これにより、ブッシュ62の径方向内側における磁性体部71の上下方向への移動が滑らかに行われる。また、ブッシュ62と磁性体部71との間に非磁性体からなるコーティングが存在するため、磁性体部71とブッシュ62との間の距離が大きくなり、磁気吸引力が弱まる。そのため、磁性体部71が、中心軸Xから径方向にずれて上下方向に移動するのを、より防ぐことができる。
【0036】
本実施形態における構造においては、マグネット9および吸引子61の上側に配置されるキャップ10は非磁性体で形成されている。そのため、マグネット9から発生する磁束がキャップ10を通る磁気回路を形成するのを防ぐことができる。そのため、磁気的なロスが発生するのを防ぐことができ、マグネット9から発生する磁束を有効に活用することができる。
【0037】
本実施形態における構造においては、吸引子61の径方向外側とマグネット9の径方向内側とは接触している。また、マグネット9の径方向外側とカバー2の内周面とは接触している。また、カバー2の内周面とヨーク4の径方向外側は接触している。ヨーク4の径方向内側とブッシュ62の径方向外側とは接触している。また、ブッシュ62の径方向内側と磁性体部71の径方向外側とは、ブッシュ62の内周面に施される非磁性体(コーティング)を介して対向している。また、磁性体部71と吸引子61とは、弁閉状態においては、軸方向に接触し、弁開状態においては、空隙を介して対向している。これにより、各部材間で磁気抵抗が大きくなるところは、ブッシュ62と磁性体部71との間のみとなるため、磁性体部71が径方向にずれてしまうのを防止しつつ、効率のよい磁気回路を構成することができる。
【0038】
以上、本発明の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0039】
図3は、一変形例に係る電磁弁1Aの断面図である。
図3の例では、第1実施形態におけるキャップ10Aを設けずに、マグネット9Aのみをカバー2Aにて挟持している。本構造においては、吸引子61Aおよびマグネット9Aの上側の面が露出している。この露出した吸引子61Aは磁気回路の一部を形成しているため、電磁弁1Aの上側におけるコンタミネーションを吸着することができる。そのため、軸方向上側から電磁弁1A内にコンタミネーションが入り込むのを防止することができる。これにより、電磁弁1Aの信頼性は高まる。
【0040】
この変形例においては、マグネット9Aの上端部を、カバー2Aの上端部を径方向内側に向かって折り曲げることで固定されている。このとき、直接マグネット9Aの端部に対してカバー2Aが接触するように折り曲げることになるため、マグネット9Aの端部に応力が集中してしまい損傷してしまう虞がある。例えば本変形例では、マグネットの端部にテーパ形状を設けることで、応力の集中を防ぐことができる。その結果、マグネット9Aの損傷を防ぎつつ、直接マグネット9Aをカバー2Aで保持することができる。
【0041】
また、本変形例では、キャップ10を用いないため、吸引子61Aの軸方向の固定が課題となる。例えば本変形例では、吸引子61Aの外周面に径方向内側に向かって窪む溝612Aを設け、モールド53Aが溝612Aに入り込むことにより、吸引子61Aの軸方向の移動を防止している。
【0042】
また、第1実施形態および本変形例においては、吸引子61Aの呼吸孔611Aは無くてもよい。その場合においては、磁性体71Aに呼吸孔712Aを設ければよい。具体的には
図3に示すように、凹部711Aの底面に軸方向に貫通する呼吸孔712Aを設ければよい。
【0043】
また、
図3に示すように、吸引子61Aの下側の面には、スプリング8Aが収容される軸方向上側に向かって窪む収容部613Aが設けられてもよい。そのような構造であれば、磁性体部71Aの下面の面積が限定されるため、より効率よく、吸引子61Aから磁性体部71Aへ磁束を通わせることができる。また、これは、プランジャ7Aの磁性体部71Aとコア6Aの間において、少なくともいずれか一方側が他方側から離れる方向に向けて窪む凹部711Aまたは収容部613Aを有しており、凹部711Aまたは収容部613Aの他方側に向く面がスプリング接触部81Aであり、凹部711Aまたは収容部613Aにスプリング8Aが収容される、と言い換えることができる。これにより、凹部711A内または収容部613A内にスプリング8Aが収容されるため、スプリング8Aを径方向に位置決めできる。また、凹部711Aまたは収容部613Aはプランジャ7Aの磁性体部71Aとコア6Aとが最近接する部位よりも径方向内側に位置している。これにより、小型のスプリング8Aを凹部711Aまたは収容部613A内に収容することができるため、電磁弁1Aを小型化できる。
【0044】
図4と
図5とは、本発明の第2実施形態に係る電磁弁1Bの断面図である。この電磁弁1Bは、プランジャ7Bを上下方向に移動させる装置である。
図4は弁閉状態における電磁弁1Bを、
図5は弁開状態における電磁弁1Bを示す。
【0045】
図4に示すように、第2実施形態に係る電磁弁1Bは、カバー2B、ノズル3B、ソレノイド5B、コア6B、プランジャ7B、スプリング8B、マグネット9Bを有する。
【0046】
この電磁弁1Bのカバー2Bは、コイル52Bを径方向外方から覆い磁性体である円筒部21Bを有している。カバー2Bの下端部にはノズル3Bが設けられている。ノズル3Bは、第1実施形態と同様の構造であるため説明は省略する。
【0047】
円板部31Bの上側には円環状のマグネット9Bが配置される。また、マグネット9Bは、コア6Bとカバー2Bとの間に配置され、径方向内側がN極、径方向外側がS極となるように、径方向に片側単極着磁をされている。マグネット9Bはカバー2Bの内側面に形成された下方段部22Bによって位置決めされる。カバー2Bの下端は内側へ折り曲げられており、下方カシメ部23Bを形成している。これにより、マグネット9Bと円板部31Bとは、下方段部22Bと下方カシメ部23Bとにより挟持されている。
【0048】
マグネット9Bの上側にはソレノイド5Bが配置される。ソレノイド5Bは、ボビン51Bおよびコイル52Bが配置される。ボビン51Bは円筒状の部材である。コイル52Bは、ボビン51Bに対して上下方向に伸びる中心軸X周りに導線が巻かれることによって構成される。ボビン51Bの径方向内方にはコア6Bが配置されている。言い換えると、コア6Bは、コイル52Bの径方向内方に固定され、プランジャ7Bの磁性体部71Bと中心軸Xに対向して配置され、プランジャ7Bを中心軸Xに移動可能に支持する円筒部を有している。
【0049】
コア6Bの径方向内方にはプランジャ7Bが、中心軸Xに沿って上下方向に移動可能に配置される。プランジャ7Bは、磁性体からなる磁性体部71Bと非磁性体からなるピン72Bとを有する。より詳細には、ピン72Bがコア6Bの径方向内側に配置され、磁性体部71Bがコア6Bおよびコイル52Bの軸方向上側に配置される。また、ピン72Bはノズル部32Bの内部へと挿入されている。ピン72Bの下端部は、弁閉状態においては、弁33Bと接触している。言い換えると、プランジャ7Bはコイル52Bの径方向内方において、中心軸Xに沿って上下方向に移動可能に配置されている。
【0050】
磁性体部71Bとコア6Bとの間に、スプリング8Bが配置される。スプリング8Bは、磁性体部71Bの下面とコア6Bの上面とのそれぞれに接触している。これによりスプリング8Bにより、磁性体部71Bはコア6Bに対して、軸方向に離れる方向に押圧されている。より詳細には、コア6Bは軸方向下側に向かって窪む収容部613Bを有する。スプリング8Bは収容部613B内に収容されている。
【0051】
コイル52Bの一端は、ボビン51Bに設けられたコネクタ512Bと電気的に接続されている。また、カバー2Bはコネクタ512Bに対応する位置が軸方向下側から軸方向上側に向けて切り欠かれており、その切り欠かれた部分にコネクタ512Bが嵌まり込んでいる。
【0052】
この
図4に示す電磁弁1Bにおいては、マグネット9Bの径方向内側におけるN極から発生する磁束は、コア6B、磁性体部71B、カバー2Bを通り、マグネット9Bの径方向外側におけるS極に至る磁気回路が形成される。言い換えると、マグネット9Bは、コア6B、プランジャ7Bおよびカバー2Bとの間で、磁気回路を構成している。
【0053】
つまり、マグネット9Bは、磁気回路に沿って片側単極着磁がなされており、N極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面が、コア6Bを通過しないように配置されているため、N極から発生した磁束がコア6Bと磁性体部71Bとを貫きやすく、マグネット9BのN極から発生する磁束を、プランジャ7Bの磁性体部71Bをコア6Bへ吸引する力として有効に活用することができる。
【0054】
マグネット9Bが吸引子61Cの径方向外側に配置されていることにより、マグネット9Bが磁性体部71Bの径方向外側に配置されている場合と比較し、磁性体部71Bが、中心軸Xから径方向にずれて上下方向に移動するのを防ぐことができる。これはつまり、マグネット9Bが吸引子61Bの径方向外側に配置されている場合と、マグネット9Bが磁性体部71Bの径方向外側に配置されている場合とでは、吸引子61Bと磁性体部71Bとの間の磁気吸引力は同等となるが、磁性体部71Bの径方向外側への磁気吸引力という観点では、マグネット9Bが吸引子61Bの径方向外側に配置されている方が、小さくなるからである。なぜなら、形成される磁気回路において、マグネット9Bから磁性体部71Bの径方向側面までの距離が、マグネット9Bを吸引子61Bの径方向外側に配置した場合の方が、マグネット9Bを磁性体部71Bの径方向外側に配置した場合と比較して、大きくなるためである。マグネット9Bから磁性体部71Bの径方向側面までの距離が大きくなれば、マグネット9Bから磁性体部71Bまでの磁気回路内において、複数の部材が配置されることになる。各部材が有する磁気抵抗、または各部材間における磁気抵抗の影響を受けるため、マグネット9Bの磁束が与える磁性体部71Bへの径方向への吸引力は、マグネット9Bを吸引子61Bの径方向外側に配置した場合の方が、マグネット9Bを磁性体部71Bの径方向外側に配置した場合と比較して、小さくなる。磁性体部71Bが中心軸Xから径方向にずれて上下方向に移動をすると、ブッシュ61Bまたは磁性体部71Bが削れてしまい、コンタミネーションが発生してしまう虞がある。そのコンタミネーションが磁性体部71Bとブッシュ62Bとの間等に集積することで、プランジャ7Bの上下方向の移動の妨げとなってしまう。コンタミネーションの集積により、プランジャ7Bの上下方向の移動が妨げられると、電磁弁の応答性が悪化し、最悪の場合は移動が完全に妨げられ、電磁弁として機能しなくなる。よって、第1実施形態における構造においては、そのような虞が小さくなる。
【0055】
第2実施形態に係る電磁弁1Bにおいては、磁性体部71Bはカバー2Bに対して、非磁性体を介して径方向に対向している。本実施形態では、非磁性体は空気となる。このような構造においては、磁性体部71Bとカバー2Bとの間の磁気抵抗が大きくなる。そのため、磁性体部71Bとカバー2Bとの間の径方向の磁気吸引力が小さくなるため、さらに磁性体部71Bが中心軸Xから径方向にずれるのを防止できる。これにより、磁性体部71Bとコア6との間において、コンタミネーションの発生を防止することができるため、電磁弁1Bの寿命を長くすることができる。
【0056】
本実施形態における構造においては、コア6Bの径方向外側とマグネット9Bの径方向内側とは接触している。また、マグネット9Bの径方向外側とカバー2Bの内周面とは接触している。また、カバー2Bの内周面と磁性体部71Bの径方向外側とは、空隙を介して対向している。また、磁性体部71Bと吸引子61Bとは、弁閉状態においては、軸方向に僅かに空隙を介して対向し、弁開状態においては、十分に空隙を介して対向している。これにより、各部材間で磁気抵抗が大きくなるところは、カバー2Bと磁性体部71Bとの間のみとなるため、磁性体部71Bが径方向にずれてしまうのを防止しつつ、効率のよい磁気回路を構成することができる。
【0057】
以上、本発明の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0058】
図6は、第2実施形態の一変形例に係る電磁弁1Cの断面図である。
図6の例では、マグネット9Cがコア6Cと軸方向に重なる位置に配置され、軸方向上側がN極、軸方向下側S極となるように軸方向に片側単極着磁されている。このような配置においても、マグネット9CのN極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面が、コア6Cを通過しないため、マグネット9Cから発生する磁束を有効に活用できる。
【0059】
また、
図6における第2実施形態の一変形例に係る電磁弁1とは異なり、マグネット9Cはコア6Cの上端および下端に配置されてもよい。つまり、マグネット9CはN極とS極とを結ぶ直線に対して垂直且つN極とS極との中心位置を通過する面が、コア6Cを通過しないように配置されていればよい。
【0060】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図にしめされた形状と、相違していてもよい。例えば、円環状のマグネット9は、複数のセグメントマグネットを円環状に配置したものであってもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。