特許第6317105号(P6317105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6317105ゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造
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  • 特許6317105-ゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造 図000002
  • 特許6317105-ゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6317105
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】ゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20180416BHJP
   E02B 3/00 20060101ALI20180416BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20180416BHJP
【FI】
   E02B1/00 Z
   E02B3/00
   B01J20/18 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-270974(P2013-270974)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124564(P2015-124564A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)経済産業省のウェブサイト (1−1)掲載アドレス http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/20131108_01.html http://irid.or.jp/cw/public/group/info_list.pdf http://irid.or.jp/cw/public/group/form2_701−750.pdf (1−2)掲載日 平成25年11月8日 (2)技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(IRID)のウェブサイト (2−1)掲載アドレス http://irid.or.jp/cw/?lang=ja http://irid.or.jp/cw/wp−content/uploads/2013/11/RFI_Result1115_1_3.pdf http://irid.or.jp/cw/public/ http://irid.or.jp/cw/public/703.pdf (2−2)掲載日 平成25年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】山之口 寛
(72)【発明者】
【氏名】三輪 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 達生
(72)【発明者】
【氏名】岩田 将英
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−041871(JP,A)
【文献】 特開2002−317427(JP,A)
【文献】 特開2002−285556(JP,A)
【文献】 実開昭59−151931(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00−3/02,3/16−3/28
C02F 1/28
B01J 20/00−20/34
G21C 11/00−13/10
G21F 9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略閉鎖された水域において、当該水域内の汚染水を浄化して汚染物質を含有する汚染水が当該水域外へ漏出することを防止するための汚染拡大防止壁構造であって、
汚染水が存在する水域を略閉鎖する閉鎖部材と、
前記閉鎖部材の前記水域内側に設けられ、ゼオライトコンクリートパネルを連続して設置することにより形成した浄化壁部と、を備え
前記浄化壁部は、汚染水の流れ方向に沿って複数段設けられていることを特徴とするゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造。
【請求項2】
前記ゼオライトコンクリートパネルは、交換可能に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造に関するものであり、例えば、略閉鎖された水域において、当該水域内に存在する汚染水を浄化して、汚染物質の拡散を防止することが可能な汚染拡大防止壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湖沼や港湾等、略閉鎖された水域に汚染水が流入した場合には、汚染水が当該水域から漏れ出さないようにすることも重要であるが、汚染水を浄化して汚染物質濃度を低減することが根本的な環境対策となる。
【0003】
従来、湾岸、河川、漁場、養殖場、化学工場沿岸等において、汚染物質(浮遊物質、重油等)による汚濁が問題となった場合に、浮遊物質や油分を透過させないシート状の部材(例えば、シルトフェンスやオイルフェンス)によりフェンスを構築し、フェンス内において浮遊物質を沈降させて汚染物質濃度を低減し、あるいは油分が外部に漏れ出さないようにする技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、水域において広範囲に漂っている懸濁物質を採取するための方法及び装置に関するものである。この懸濁物質採取方法及び装置は、設定された水域の周辺に、当該水域周方向に間隔を置いて複数個のロープ案内部材を配置し、これらロープ案内部材にロープを順次架け渡してエンドレスに張設する。また、水域の中央部に吸入口を保持する浮体を配置し、浮体とエンドレスロープとの間にシルトフェンスを張設する。
【0005】
そして、エンドレスロープを循環駆動させ、浮体を中心にシルトフェンスを水域面に沿って旋回動させ、シルトフェンスの旋回動により水域に吸入口を中心とする渦流を発生させ、この渦流に懸濁物質を乗せて吸入口へ誘導するようにした技術である。
【0006】
特許文献2に記載された技術は、湖沼のように水が滞留する閉鎖水域において、夏場の水温上昇に伴うアオコ等の汚染物質の発生を抑制するシステム及び方法に関するものである。
【0007】
この水の汚染抑制システム及び汚染抑制方法は、閉鎖水域の貯留水の表層部に配置され、表層部に流路を形成する少なくとも1つの浮体と、浮体から離間した表層部に浸漬させて配置され、浮体により形成された流路に水流を発生させる複数の水流発生手段とを含んでいる。そして、水流により浮体に向けて流れを生じさせ、浮体に衝突することにより水底方向への流れを発生させることにより、汚染物質の発生を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−197955号公報
【特許文献2】特開2004−298663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したように、水中に汚染物質が存在する場合には、当該汚染物質が広範囲に拡散しないような対策だけでは環境対策として不十分であり、汚染水を浄化して汚染物質濃度を低減することが根本的な環境対策となる。このような汚染水が存在する場所では、汚染物質が漏れ出さないように万全の対策を施しているが、汚染物質濃度を低減することができれば、さらに安全性が高まることになる。
【0010】
この点、上述した特許文献1に記載された技術は、シルトフェンスにより浮遊物質を除去することができるが、浮遊物質以外の汚染物質を除去することはできない。例えば、イオン化した重金属や放射性物質等を含有した汚染水の場合には、シルトフェンス等で拡散を防止し、さらにこれらの汚染物質を除去する必要がある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、汚染水が存在する略閉鎖水域において、簡易な構造でありながら、確実に汚染水を浄化して、汚染物質濃度を低下させることが可能なゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造は、上述した目的を達成するため、以下の特徴を有している。すなわち、本発明のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造は、略閉鎖された水域において、当該水域内の汚染水を浄化して汚染物質を含有する汚染水が当該水域外へ漏出することを防止するための汚染拡大防止壁構造であって、汚染水が存在する水域を略閉鎖する閉鎖部材と、閉鎖部材の水域内側に設けられ、ゼオライトコンクリートパネルを連続して設置することにより形成した浄化壁部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
そして、浄化壁部は、汚染水の流れ方向に沿って複数段設けられている。なお、略閉鎖された水域とは、完全に閉鎖された水域だけではなく、潮位差により外洋海水が流れ込む港湾において、港湾出入口にシルトフェンス等を設置して、港湾内の汚染物質が外洋へ流れ出ないようにした水域を含む概念である。また、湖沼においても同様に、河川流出口にシルトフェンス等を設置することにより、汚染物質を湖沼内に閉じ込めることが可能な水域も、略閉鎖水域に含まれる。
【0014】
また、本発明のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造は、上述した構成に加えて、ゼオライトコンクリートパネルを交換可能に設置することができる。
【0015】
上述した本発明のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造では、略閉鎖した水域に存在する汚染水は、閉鎖部材により外側水域へ流出することが防止されるが、さらに、汚染水の流れ方向に沿って複数段設けられた浄化壁部を通過する際に汚染物質が除去される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造によれば、略閉鎖した水域において、汚染水が閉鎖部材に到達する前に、ゼオライトコンクリートパネルを用いた浄化壁部により、イオン化した汚染物質が効率よく吸着除去される。
【0017】
ゼオライトコンクリートパネルは、簡易に製造することができ、また、設置も容易である。したがって、大がかりな装置を必要とせず、安価かつ迅速に汚染拡大防止壁構造を構築することができる。
【0018】
また、ゼオライトコンクリートパネルを交換可能とすることにより、汚染物質の除去能力を維持することができる。さらに、浄化壁部を複数段設けることにより、さらに一層、汚染物質の除去能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造の設置状態を説明する平面模式図。
図2】本発明の実施形態に係るゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造の設置状態を説明する断面模式図。
図3】本発明の実施形態で用いるゼオライトコンクリートパネルの平面図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るゼオライトコンクリートパネルを用いた汚染拡大防止壁構造(以下、汚染拡大防止壁構造という)の実施形態を説明する。図1図3は本発明の実施形態に係る汚染拡大防止壁構造を説明するもので、図1は設置状態の平面模式図、図2は設置状態の断面模式図、図3はゼオライトコンクリートパネルの平面図(a)及び正面図(b)である。
【0021】
<汚染拡大防止壁構造の概要>
本発明の実施形態に係る汚染拡大防止壁構造100は、図1及び図2に示すように、略閉鎖された水域(略閉鎖水域70)において、当該水域内の汚染水を浄化して汚染物質濃度を低減するためのシステムであり、主要な構成要素として、閉鎖部材20と、浄化壁部10とを備えている。この汚染拡大防止壁構造100は、例えば、湖沼、港湾等に設置して、汚染水中に含まれる汚染物質を除去する機構を備えており、浄化壁部10のゼオライトコンクリートパネル30によりイオン化した汚染物質を吸着除去し、閉鎖部材20により汚染水が略閉鎖水域70外へ漏れ出すことを防止する。
【0022】
<閉鎖部材>
閉鎖部材20は、例えば、港湾の出入口に設置して、港湾内を略閉鎖水域70とする部材である。この閉鎖部材20は、例えば、シルトフェンスにより構成することができる。シルトフェンスは、連続した布材からなり、地盤中にアンカーを設置して、布材の下端部を水底に固定し、布材の上部にフロートを取り付けて、汚濁物質を透過しない膜を水中に構築する。特に、本実施形態では、閉鎖部材20(シルトフェンス)により汚染物質の拡散を防止するようになっている。
【0023】
<浄化壁部>
浄化壁部10は、図1及び図2に示すように、略閉鎖水域70において、閉鎖部材20の内側に設置した壁部であり、ゼオライトコンクリートパネル30を連続して設置することにより形成する。例えば、港湾の出入口に閉鎖部材20を設置した場合には、潮位変動により外部水域と略閉鎖水域70との間で水流(潮流)が生じる。この水流(潮流)により、汚染水が浄化壁部10を構成するゼオライトコンクリートパネル30を通過して、イオン化した汚染物質が吸着除去される。
【0024】
ゼオライトコンクリートパネル30により除去可能な汚染物質は、例えば、放射性セシウム、ストロンチウム、鉛、カドミウム等であり、各汚染物質に適合したゼオライトを用いることにより、各汚染物質を除去することができる。
【0025】
浄化壁部10を形成するには、略閉鎖水域70内の地盤中にH型鋼40を打設し、隣合うH型鋼40の間にゼオライトコンクリートパネル30を嵌め込めばよい。打設するH型鋼40及び設置するゼオライトコンクリートパネル30の数は、港湾の出入口の幅に応じて適宜設定することができる。
【0026】
<ゼオライトコンクリートパネル>
ゼオライトコンクリートパネル30は、造粒した人工ゼオライトに、水、セメント、減水剤等を混合して、パネル状としたものである。また、ポーラスコンクリートブロックに人工ゼオライト粉末を練り込むことにより、ゼオライトコンクリートパネル30を製造してもよい。この人工ゼオライトを用いたブロックについては、特開2013−234948号公報に記載されている。
【0027】
このゼオライトコンクリートパネル30は、図3(a)、図3(b)に示すように、一対の枠部材31の間に挿入されており、表面には高密度ポリエチレンネット32を張設して表面保護を行い、内部に格子状の補強鋼材33を配置してある。
【0028】
<汚染拡大防止壁構造の適用対象>
本発明の汚染拡大防止壁構造100を適用する略閉鎖水域70は、図1及び図2に示すように例えば、湖沼や港湾等の水域において、、港湾の出口や河川への流下場所にシルトフェンス等の閉鎖部材20を設置することにより、略閉鎖水域70を形成することができる。また、図2に示すように、略閉鎖水域70の底面に、フェイシング層50を形成して、底面から地盤60内への汚染水の浸透を防止することが好ましい。
【0029】
また、図示しないが、浄化壁部10を複数段設けることにより、さらに一層、汚染物質の除去能力を高めることができる。さらに、ゼオライトコンクリートパネル30はH型鋼40に嵌め込んで設置されているため、容易に交換することができる。したがって、ゼオライトコンクリートパネル30を定期的に交換することにより、汚染物質の吸着能力が低下することがない。
【符号の説明】
【0030】
10 浄化壁部
20 閉鎖部材
30 ゼオライトコンクリートパネル
31 枠部材
32 高密度ポリエチレンネット
33 補強鋼材
40 H型鋼
50 フェイシング層
60 地盤
70 略閉鎖水域
100 汚染拡大防止壁構造
図1
図2
図3