【実施例】
【0051】
本圧力容器に10.4MPaの内圧が作用したときに容器本体10に生じる最大ひずみεについて、前記割合L/Hが0.27〜5.5の範囲で解析を行った。
図5は、その結果を示している。なお、最大ひずみεは、上壁20と周壁40との境界及び底壁30と周壁40との境界で生じ、最大ひずみεに次いだ大きなひずみは、周壁40の高さ方向の中央部で生じた。本実施例では、容器本体10の高さ寸法H(Z軸方向の寸法)は364mmであり、容器本体10の幅寸法(Y軸方向の寸法)は636mmである。また、各リブ60の容器本体10からの突出量は50mmであり、各リブ60の厚さ方向(X軸方向)の寸法は25mmである。
【0052】
図5に示されるように、横軸に前記割合L/Hをとり、縦軸に最大ひずみεをとると、前記割合L/Hが大きくなるにしたがって最大ひずみεが大きくなる曲線が得られた。本実施例では、前記割合L/Hが5.5のとき、最大ひずみεは0.58%となった。この値は、容器本体10の外面に複数のリブ60が全く設けられない場合に当該容器本体10に生じる最大基準ひずみε0の値と同じであった。つまり、前記割合L/Hが5.5では、実質的に複数のリブ60による容器本体10の補強効果が得られないことが分かった。
【0053】
図6は、横軸に前記割合L/Hをとり、縦軸に最大基準ひずみε0(0.58%)から
図5に示される最大ひずみεを引いた値をとったときのグラフである。つまり、
図6は、容器本体10があとどれだけひずむことが許容されるか、すなわち最大ひずみεの許容量を表すグラフである。
【0054】
図7は、横軸に前記割合L/Hをとり、縦軸に圧力容器の重量をとったときのグラフである。前記割合L/Hが大きくなるにしたがってリブ60の総数が少なくなるため、前記割合L/Hが大きくなるにしたがって重量が小さくなる曲線が得られた。
【0055】
図8は、横軸に前記割合L/Hをとり、縦軸に
図6の縦軸の値(最大基準ひずみε0−最大ひずみε)を
図7の縦軸の値(圧力容器の重量W)で割った値をとったときのグラフである。
図8の縦軸の値は、圧力容器の単位重量当たりの最大ひずみεの許容量を表している。つまり、この値が大きいほど、圧力容器の単位重量当たりの複数のリブ60による容器本体10の補強効果が優れていることを表している。すなわち、
図8の縦軸の値が前記補強性能指標に相当する。この値が比較的高い範囲では、容器本体10が効果的に補強されかつ圧力容器が軽量化される。
図8に示されるように、グラフは、上向きに凸となる曲線となるため、最適点が存在することが分かる。
【0056】
図9は、
図8のグラフの最適点の近傍を拡大したグラフである。
図9より、前記割合L/Hが0.27〜1.16の範囲では、補強性能指標が8.15以上という比較的高い値となるので、容器本体10の効果的な補強と圧力容器の重量の低減との双方が達成されることが分かる。
【0057】
さらに、
図9から、前記割合L/Hが0.40〜0.86の範囲に設定されることがより好ましいことが分かる。この範囲では、補強性能指標が8.86以上となる。よって、容器本体10の各壁の薄肉化、すなわち圧力容器の軽量化が可能となる。
【0058】
そして、
図9より、前記割合L/Hが0.55のときに補強性能指標が最大値9.0となることが分かる。
【0059】
なお、上記に示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
例えば、複数のリブ60は、以下の第一変形例及び第二変形例に示される形状であってもよい。
【0061】
<第一変形例>
上記第一実施形態の第一変形例について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。なお、本変形例の複数のリブ60の形状以外の構造ついては、これまで説明した実施形態の構造と同じである。
【0062】
図10及び
図11に示されるように、複数のリブ60は、中央領域A1に設けられる複数の中央リブ66と、外側領域A2に設けられる複数の外側リブ67とを有している。中央領域A1は、容器本体10の外面のうち各リブの並び方向(X軸方向)の中央に位置するとともに、容器本体10の隔壁50と直交する面に沿って周方向に並ぶ4つの壁(上壁20、一対の第一対向壁44及び底壁)総面積の2分の1を占める領域である。外側領域A2は、前記並び方向について容器本体10の外面のうち中央領域A1の外側に位置する領域である。
【0063】
本変形例では、中央領域A1に3本の中央リブ66が設けられており、各外側領域A2に1本ずつ外側リブ67が設けられている。
【0064】
各外側リブ67の容器本体10の外面からの突出量h2は、各中央リブ66の容器本体10の外面からの突出量h1よりも小さく設定されている。これは、各室10a,10bに内圧が作用した際、容器本体10の中央領域A1に生じる応力よりも外側領域A2に生じるそれの方が小さくなるからである。
【0065】
本変形例では、前記並び方向に沿って均一に複数の中央リブ66が設けられる場合に比べて複数のリブ60の総重量が低減されるので、強度を確保しつつ圧力容器全体の重量が低減される。
【0066】
なお、本変形例では、各外側リブ67の容器本体10の外面からの突出量が各中央リブ66のそれに比べて小さく設定された例が示されたが、これに限られない。例えば、各リブの容器本体10の外面からの突出量が同じであり、各外側リブ67の厚さ方向の寸法が各中央リブ66のそれよりも小さく設定されてもよい。この場合も、上記と同様の効果が得られる。
【0067】
<第二変形例>
上記実施形態の第二変形例について、
図12を参照しながら説明する。なお、本変形例においても、複数のリブ60の形状以外の構造ついては、これまで説明した実施形態の構造と同じである。
【0068】
図12に示されるように、各リブ60は、上壁20の外面及び底壁30の外面に設けられた第一部位60aと、一対の第一対向壁44の外面に設けられた第二部位60bとを有する。
【0069】
第一部位60aは、上壁20及び底壁30の板厚方向(Z軸方向)について隔壁50と重なる部位から外側に向かうにしたがって次第に突出量が大きくなった後に小さくなる形状を有する。これは、各室10a,10bに内圧が作用した際、上壁20及び底壁30のうち隔壁50とつながっている部位から外側に向かうにしたがって次第に当該壁に生じる応力が大きくなるからである。
【0070】
第二部位60bは、上壁20と周壁40との境界あるいは底壁30と周壁40との境界から第一対向壁44の高さ方向の中央に向かうにしたがって次第に突出量が大きくなる形状を有する。これは、各室10a,10bに内圧が作用した際、前記境界から第一対向壁44の中央に向かうにしたがって次第に当該壁に生じる応力が大きくなるからである。なお、最も大きな応力は前記境界に生じる。
【0071】
本変形例では、各リブ60の容器本体10の外面からの突出量が容器本体10の周方向の全域にわたって第一部位60aの最大量または第二部位60bの最大量で均一である場合に比べて複数のリブ60の総重量が低減されるので、強度を確保しつつ圧力容器全体の重量が低減される。
【0072】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態の圧力容器について、
図13及び
図14を参照しながら説明する。なお、第二実施形態では、複数のリブ60の配置以外の構造ついては、第一実施形態の構造と同じである。
【0073】
図13及び
図14に示されるように、複数のリブ60は、中央領域A1に設けられる複数の主リブ68と、外側領域A2に設けられる複数の副リブ69とを有している。
【0074】
複数の主リブ68は、前記並び方向に沿って等間隔に並んでいる。本実施形態では、中央領域A1に3本の主リブ68が設けられている。
【0075】
各副リブ69は、前記並び方向について複数の主リブ68のうち最も外側に位置する最外主リブ68aよりも外側でかつ最外主リブ68aから主リブ68間の寸法L1よりも大きな寸法L2だけ離間した位置に設けられている。本実施形態では、各外側領域A2に1本ずつ副リブ69が設けられている。
【0076】
本実施形態では、必要な強度を確保しつつ圧力容器がさらに軽量化される。具体的に、各室10a,10bに内圧が作用した際、容器本体10の中央領域A1は外側領域A2に比べて大きく外側に広がろうとするため、中央領域A1には相対的に大きな応力が生じる一方、外側領域A2には相対的に小さな応力しか生じない。このため、中央領域A1が相対的に密に配置された複数の主リブ68で補強される一方、外側領域A2が複数の主リブ68よりも疎に配置された副リブ69で補強されることにより、前記並び方向について容器本体10の外面の全域にわたって複数の主リブ68が均一に設けられる場合に比べ、圧力容器が軽量化される。
【0077】
なお、第二実施形態においても、上記第一変形例のように、各副リブ69の容器本体10の外面からの突出量が複数の主リブ68のそれよりも小さく設定されてもよい。また、各リブが、第二変形例のように第一部位60a及び第二部位60bを有する形状であってもよい。