(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上部バネ部、前記屈曲部、及び前記下部バネ部は、それぞれ一対備えており、前記一対の各部は、前記ステアリングコラムを基準として面対称に配置されるとともに、前記下部バネ部は連結部を介して連結されている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した電動パワーステアリング装置1(以下、ステアリング装置という)の一実施形態を
図1〜
図10を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、ステアリング装置1は、車両後方側の端部(
図1の右側端部)に図示しないステアリングホイールが固定されるステアリングシャフト3を備えている。ステアリングシャフト3は、軸受5に軸支されることによりステアリングコラム6内において回転可能に収容されている。ステアリングシャフト3における車両前方側の端部(
図1の左側端部)は自在継手を介してインターミディエイトシャフト(図示せず)に連結されている。よって、ステアリング操作に伴う回転及び操舵トルクが、ラックアンドピニオン機構等の図示しない転舵輪の舵角を変更する転舵機構へと伝達されるようになっている。なお、ステアリングシャフト3は、車両前方側の端部が車両後方側の端部よりも鉛直方向下側に位置するように傾斜した状態で車両に搭載されている。
【0013】
また、ステアリング装置1は、鉛直方向におけるステアリングホイールの位置(ステアリング位置)の調整を可能とするチルト機構を備えている。また、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3の軸線方向におけるステアリング位置の調整を可能とするテレスコピック機構を備えている。
【0014】
図2に示すように、ステアリングシャフト3は、図示しないステアリングホイールが固定される中空状のアッパシャフト11と、アッパシャフト11に収容されるロアシャフト12とを備えている。アッパシャフト11の内周にはスプライン嵌合部11aが形成されるとともに、ロアシャフト12の上部から中央部の外周にはスプライン嵌合部12aが形成されている。また、ロアシャフト12の下部には、上部及び中間部よりも拡径した拡径部12bが設けられている。そして、アッパシャフト11とロアシャフト12とは、各スプライン嵌合部11a,12aがスプライン嵌合することにより軸線方向へ相対摺動可能、且つ一体回転可能に構成されている。
【0015】
また、ステアリングコラム6は、軸受5を介してアッパシャフト11を収容支持するアッパチューブ13(アッパジャケットとともいう)と、ロアシャフト12を収容するロアチューブ14(ロアジャケットとともいう)を備えている。アッパチューブ13は、ロアチューブ14に対して、軸方向に相対摺動可能にして嵌め合わされている。この軸方向の相対摺動により、後述するテレスコピック調整が可能となっている。
【0016】
図2に示すように、ロアチューブ14の他端(前端)には、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するパワーアシスト部PAの出力軸16及び出力軸16の周囲に配置されるトルクセンサSが収容されるハウジング17が設けられている。
図2に示すようにハウジング17において、トルクセンサSを収納する部位は、後述するウォームホイール22を収納する部位に比して小径に形成されている。
【0017】
出力軸16は、その一端がロアシャフト12の他端にスプライン嵌合されて連結されるとともに、ハウジングに対して軸受19〜21を介して回転可能に支持されている。出力軸16は、アッパシャフト11及びロアシャフト12と共にステアリングシャフト3を構成している。
【0018】
出力軸16には、ハウジング17に収容されるウォームホイール22が固定されている。出力軸16には、ハウジング17に支持されたモータMの回転がウォームホイール22及び図示しないウォームギアにより構成される減速機構RGを介して伝達されることにより、操舵系に対してアシスト力を付与することが可能である。モータM、減速機構RG、トルクセンサS等により、ステアリングコラム6の下部にアシスト力を付与するパワーアシスト部PAが構成されている。
【0019】
図2に示すように、ステアリングコラム6(すなわちステアリング装置1)は、図示しない車両側部材に設けられた図示しないロアブラケットに対して、ハウジング17に設けられたチルト中心軸Oを中心として傾動可能に支持されている。
【0020】
チルト中心軸Oの回りに、ステアリングシャフト3及びステアリングコラム6を回動させることで、図示しないステアリングホイールの高さ位置を調整できるようになっている(いわゆるチルト調整)。また、ステアリングシャフト3及びステアリングコラム6をコラム移動方向X1(すなわち、軸方向)に伸縮させることで、図示しないステアリングホイールの前後方向位置を調整できるようになっている(いわゆるテレスコピック調整)。
【0021】
図4、
図5に示すようにステアリングコラム6(すなわちステアリング装置1)は、図示しない前記ロアブラケットよりも後方側において、アッパブラケット23を介して車両側に支持されている。アッパブラケット23は、車両側ブラケットに相当する。
【0022】
アッパブラケット23は、車両側に固定される固定ブラケット24、固定ブラケット24に対して一対の吊り下げ機構T1,T2を介して吊下げられるクランプブラケット25及びクランプブラケット25に支持されるコラムブラケット26を含む。
【0023】
固定ブラケット24と、クランプブラケット25とは、板金からなり、二次衝突時にクランプブラケット25を所定位置(
図1、
図3に示す位置)からコラム移動方向X1に向かって離脱させる後述する連結・離脱機構Rが設けられている。
【0024】
前記固定ブラケット24は、図示しない車両側部材に固定されている。また、クランプブラケット25は、吊り下げ機構T1,T2の吊り下げ軸としての吊り下げボルト27を介して固定ブラケット24に吊り下げ支持されている。一方、
図4に示すように、ステアリングコラム6のアッパチューブ13(アッパジャケット)には、コラムブラケット26が固定されている。
【0025】
図4、
図6に示すように、クランプブラケット25は、下方に延出された一対の側板29と、一対の側板29の上端間を連結する連結板31とを備えて、軸方向視で略コ字状に形成されている。また、各側板29には、車両幅方向に折曲げられて形成されたバネ取付板33を有する。バネ取付板33は、上端には下方へ凹設された固定凹部33aを有するとともに、側板29とは反対側の側端には、横L字状に凹設された係止溝33bを有する。
【0026】
また、
図4に示すように、コラムブラケット26は、クランプブラケット25の一対の側板29にそれぞれ対向する一対の側板30と、一対の側板30の下端間を連結する連結板32とを備えた溝形をなしている。
【0027】
(ロック機構35)
図4に示すように、クランプブラケット25及びコラムブラケット26には、ボルトからなる締付軸28が貫通されている。すなわち、コラムブラケット26の側板30には、コラム移動方向X1(紙面直交方向)に延びる長孔30a(
図3参照)が形成されていて、前記締付軸28が貫通されている。また、クランプブラケット25の側板29には、チルト中心軸Oを中心とした円弧軌跡に沿うように円弧状の長孔29a(
図6参照)が形成されていて、前記締付軸28が貫通されている。
【0028】
図4に示すように、締付軸28の先端にはナット34が螺合されているとともに、締付軸28の頭部側には、ロック機構35が設けられている。ロック機構35は、例えば図示しないカム機構からなり、同カム機構を、操作レバー36の回転操作によって回転させることにより、締付軸28(ボルト)の頭部とナット34との間に、クランプブラケット25を締め付け、コラムブラケット26をロックする。これにより、チルト調整またはテレスコ調整後の図示しないステアリングホイールの位置をロックし、チルトロック、テレスコロックを達成するようにしている。
【0029】
また、ロック機構35は、テレスコロックされた両チューブ13,14間のガタつきを抑制する機能を有している。具体的には、ロック機構35は、操作レバー36の回転操作に伴って締付軸28と一体に回転する筒状のスリーブ37と、スリーブ37の外周に一体に回転可能に設けられた、カム状突起からなる押圧部38とを備えている。操作レバー36の操作によってスリーブ37が回転することにより、押圧部38がロアチューブ14を押し上げられて、ロアチューブ14がアッパチューブ13に径方向に押し付けられることにより、アッパチューブ13に対するロアチューブ14の径方向のガタつきが抑制される。
【0030】
(チルトバネ40)
また、
図2、
図4に示すようにスリーブ37の下面には、一対のバネ取付板33に各端部が掛止されたチルトバネ40が下方から当接しており、チルトバネ40の付勢力(弾性力)により、スリーブ37は上方へ付勢されている。チルトバネ40は、線材から形成されたダブルトーションバネである。なお、チルトバネ40の前後方向は、バネ取付板33に装着された状態において、車両前方と車両後方と一致するものである。
【0031】
図7,
図8に示すようにチルトバネ40は、連結部42、一対の押圧作用部44、一対のテーパ部46、一対のトーション部48、一対の延出部50、一対の立下がり部52及び一対の掛け止め部54を有する。
【0032】
連結部42は、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1(すなわち、車両幅方向)に延びている。また、連結部42のY1方向を二等分する平面を想定したとき、チルトバネ40において、前記一対とした各部同士は、前記平面を対称面として面対称となるように設けられている。これは、ステアリングコラム6、ステアリングシャフト3を基準として面対称である、ともいえる。
【0033】
図3、
図4に示すように、チルトバネ40は、上部から掛け止め部54、立下がり部52、延出部50が連続して形成され、掛け止め部54から延出部50にかけて、車両側方から見ると略S字状をなしている(
図3参照)。掛け止め部54の先端であるフック部55をバネ取付板33の後面側(車両後方側)に位置させ、掛け止め部54の上端が固定凹部33aに下端が係止溝33bにそれぞれ係入、係止されることにより、掛け止め部54はバネ取付板33の前面に沿い、立下がり部52は後面に沿って配置されている。
【0034】
各立下がり部52の下端に連結される延出部50は、バネ取付板33の下側を通って車両前方に延び(
図3参照)、トーション部48、テーパ部46が連続して形成されている。延出部50からテーパ部46にかけて、車両上方から見ると略U字状をなして後方へ折り返されている(
図6参照)。
【0035】
相互に向い合うトーション部48の端部に連結されるテーパ部46は、前端に行くほど相互に離間するように配置されている。本実施形態では、
図2に示すようにテーパ部46は、
図2に示すようにも後上方へ向いて斜状に延びている。トーション部48及びテーパ部46は、屈曲部に相当する。
【0036】
また、テーパ部46の後端には、各押圧作用部44が車両後方へそれぞれ相互に平行に延出されている。各押圧作用部44の後端は、連結部42にて相互に一体に連結されている。押圧作用部44は、下部バネ部に相当する。また、本実施形態のように連結部42を有する場合、連結部も下部バネ部に相当する。
【0037】
ここで、前記延出部50、立下がり部52、及び掛け止め部54は上部バネ部に相当する。また、掛け止め部54は上部バネ部の上部に相当する。また、延出部50は、上部バネ部の上部に相当する。
【0038】
図2に示すように、チルトバネ40は、押圧作用部44がスリーブ37の下面に当接されている。そして、チルトバネ40は、押圧作用部44、テーパ部46、トーション部48、延出部50等の弾性力(付勢力)を、スリーブ37を介して、ステアリングコラム6に付与する。
【0039】
また、
図2に示すように、テーパ部46はハウジング17に対向するように配置されている。そして、二次衝突時にステアリングコラム6が収縮してチルトバネ40とハウジング17とが衝突した場合、両テーパ部46が拡開して衝撃を吸収する。
【0040】
本実施形態では、チルト中心軸O、長孔29aを有するクランプブラケット25、コラムブラケット26、ステアリングコラム6、チルトバネ40等によりチルト機構が構成されている。
【0041】
(連結・離脱機構R)
次に、連結・離脱機構Rを説明する。
図4、
図5に示すように、各吊り下げ機構T1,T2は、吊り下げボルト27と、皿ばねからなる板バネ60と、ナット62等により構成されている。
【0042】
図4〜
図6に示すように連結・離脱機構Rは、二次衝突時に剪断する樹脂ピン64と、樹脂ピン64の軸方向の一部に嵌合した円筒状のカラー66とで構成されている。カラー66は、樹脂ピン64を形成する樹脂よりも高硬度の材料(例えば、鉄、アルミニウム等の金属、高硬度の樹脂やセラミック等)で形成されている。
【0043】
図6に示すようにアッパブラケット23の固定ブラケット24は、平板部67の一対の側縁からそれぞれ下向きに延設された一対の側板68と、一対の側板68からそれぞれ車両幅方向である外側方へ延設された一対の取付板70とを備えている。各取付板70は、挿通孔70a(
図4、
図6参照)が設けられているとともに、挿通孔70aに挿通された図示しない固定ボルトにより、図示しない前記車両側部材に固定されている。
【0044】
固定ブラケット24の平板部67には、一対の長孔71が設けられている。各長孔71には、前記一対の吊り下げボルト27がそれぞれ挿通されている。一対の長孔71は、二次衝突時のコラム移動方向X1と平行に延び、また、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に離隔している。
【0045】
図6に示すようにクランプブラケット25の連結板31には、各長孔71の一部と対向する、吊り下げ機構T1,T2用の一対の丸孔72が形成されている。
図5、
図6に示すように、各吊り下げボルト27は、板バネ60と、第1介在板73の対応する挿通孔74と、平板部67の対応する長孔71と、連結板31の対応する丸孔72とを順次に挿通した状態でナット62により締結されている。これにより、クランプブラケット25は、固定ブラケット24に対して吊り下げボルト27を介して吊り下げ支持されている。
【0046】
第1介在板73は、
図6に示すように、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に延びる長板からなり、
図4に示すように、両板バネ60と平板部67の上面との間に介在している。第1介在板73の少なくとも平板部67側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で構成されている。すなわち、第1介在板73全体が、低摩擦材で構成されていてもよいし、第1介在板73の平板部67側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
【0047】
平板部67と連結板31との間には、二次衝突時に連結板31が平板部67に対して、コラム移動方向X1に移動するときの摺動抵抗を低減させる働きをする第2介在板75と第3介在板76とが介在配置されている。
【0048】
第2介在板75は、連結板31のコラム移動方向X1側の端部に係止された溝形のユニット75Uを構成している。
図6に示すように、ユニット75Uは、連結板31の上面及び平板部67の下面に沿う第2介在板75と、第2介在板75と対向し且つ連結板31の下面に沿う対向板77と、第2介在板75と対向板77とを連結し且つ連結板31のコラム移動方向X1側の端縁に当接する連結板78とを備えている。
【0049】
第2介在板75の少なくとも平板部67側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で構成されている。すなわち、第2介在板75ないしユニット75Uが、低摩擦材で構成されていてもよいし、第2介在板75の平板部67側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。第3介在板76は、平板部67のコラム移動方向X1とは反対側の端部及び連結板31のコラム移動方向X1とは反対側の端部に係止されたユニット76Uを構成している。すなわち、ユニット76Uは、連結板31の上面及び平板部67の下面に沿う第3介在板76と、第3介在板76に対向し且つ平板部67の上面に沿う対向板79とを備えている。また、ユニット76Uは、第3介在板76と対向板79とを連結し且つ平板部67のコラム移動方向X1とは反対側の端縁に当接する連結板80と、連結板31のコラム移動方向X1とは反対側の端部に引っ掛け係止される例えば鉤形フック状の係止部81とを備えている。第3介在板76の少なくとも連結板31側の面が、例えばフッ素樹脂等の低摩擦材で構成されている。すなわち、第3介在板76ないしユニット76Uが、低摩擦材で構成されていてもよいし、第3介在板76の連結板31側の面に、低摩擦材が被覆されていてもよい。
【0050】
図4及び
図5に示すように、各吊り下げボルト27は、頭部82と、頭部82に連なり頭部82より小径の大径部83と、大径部83に連なり大径部83より小径のネジ部84とを備えている。頭部82には、例えば六角孔形状の工具係合部が設けられている。
【0051】
図5に示すように、大径部83が、環状の板バネ60と、第1介在板73の挿通孔74と、平板部67の長孔71とを挿通している。大径部83とネジ部84間の段部は、連結板31の上面に当接して同上面によって受けられている。前記段部とナット62との間で連結板31が挟持されて、吊り下げボルト27と連結板31とが固定されている。
【0052】
なお、頭部82と前記段部との間隔(すなわち、大径部83の軸長に相当)は、平板部67と連結板31との間に介在する第2介在板75の板厚(ないし第3介在板76の板厚)と、平板部67の板厚と、平板部67の上面に沿う第1介在板73の板厚と、最圧縮時の板バネ60の板厚との合計よりも大きくされている。
【0053】
これにより、板バネ60が、第1介在板73を介して平板部67を連結板31側へ弾性的に付勢している。
連結・離脱機構Rの樹脂ピン64は、例えば断面円形の頭部86と、頭部86よりも小径の円柱状部である軸部87とを備えている。
【0054】
カラー66は、軸部87の外周に嵌合されていて、その外径は、樹脂ピン64の頭部86の外径と等しくされている。カラー66の軸方向の上端が、樹脂ピン64の頭部86に当接し、カラー66の下端が、連結板31の上面によって受けられている。これにより、樹脂ピン64及びカラー66が、連結板31の下方へ脱落することが防止されている。また、第1介在板73が、樹脂ピン64の頭部86の上方を覆うように配置されており、これにより、樹脂ピン64の上方への脱落が防止されている。
【0055】
図6に示すように、平板部67の両長孔71間の中央における反X1方向側寄りの部位には、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1に延びる長孔88が貫通されている。
図5に示すように、長孔88は、固定ブラケット24の平板部67の連結・離脱機構R用であって、樹脂ピン64の頭部86とカラー66の大部分とは、同長孔88に挿通されている。カラー66の一部は、長孔88から突出している。
【0056】
図6に示すように、樹脂ピン64の軸部87のうち、カラー66から下方へ突出した下部が、クランプブラケット25の連結板31における連結・離脱機構R用の断面円形の貫通孔89に対して、コラム移動方向X1とは直交する方向Y1における、その中央に挿通されている。貫通孔89は、軸部87の外径と同径の内径または若干大きな内径を有する。
【0057】
二次衝突時には、固定ブラケット24とクランプブラケット25との相対移動に伴って、軸部87において、カラー66と連結板31との境界に対応する部位が剪断可能となっており、その剪断によりカラー66から下方へ突出した下部は、下部以外の残りの部分から分離する。
【0058】
第1介在板73、第2介在板75、第3介在板76、長孔71を有する固定ブラケット24、クランプブラケット25、吊り下げ機構T1、T2、連結・離脱機構R等により、衝撃吸収機構が構成されている。
【0059】
(コラム収縮量について)
図2に示すように、本実施形態のステアリング装置1では、コラム収縮以前の状態では、A〜Gの長さを有している。
【0060】
Aは、ロアチューブ14の反ハウジング17側の端面が軸受5等に当たるまでの長さである。
Bは、アッパチューブ13のハウジング17側の端面が、ハウジング17において、トルクセンサSを収納する部位に当たるところまでの長さである。
【0061】
Cは、ロアシャフト12の反ハウジング17側の端面がアッパシャフト11に当たるまでの長さである。
Dは、アッパシャフト11のハウジング17側の端面がロアシャフト12の端部の拡径部12bに当たるまでの長さである。
【0062】
Eは、ハウジング17のトルクセンサSを収納する部位と、アッパブラケット23を構成しているいずれかのブラケットのうち、吊り下げ機構T1、T2がコラム移動方向X1へ移動したときに、最初に当たるブラケットまでの長さである。
【0063】
A〜Eのうち、いずれが最も短いかは、ステアリング装置1の仕様によって異なっている。
図2の例では、A〜Eのうち、長さDが最も短くなっている。
ここで、上述したコラム収縮量(EAストローク)の範囲で吊り下げ機構T1、T2が移動する際に、前記チルトバネ40のテーパ部46は、ハウジング17のトルクセンサSを収納する部位に当接するように配置されている。
【0064】
なお、Fはアッパチューブ13とロアチューブ14の嵌合長であり、Gはアッパシャフト11とロアシャフト12の嵌合長である。
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成されたステアリング装置1は、二次衝突時に、樹脂ピン64よりも高硬度(例えば金属製)のカラー66の軸方向の端部と、鉄等の金属製のクランプブラケット25の貫通孔89の周縁とが、一対の剪断刃として機能し、樹脂ピン64(軸部87)を剪断する。
【0065】
この結果、吊り下げ機構T1,T2は、クランプブラケット25及びアッパチューブ13とともに、コラム移動方向X1(
図1から
図3参照、
図4では紙面と直交する方向)に移動する。この移動時には、第1介在板73と固定ブラケット24間の摩擦、第2介在板75と固定ブラケット24間の摩擦等により、衝撃吸収が行われる。また、この移動により、
図2に示すように、テーパ部46はハウジング17に対向するように配置されていることから、二次衝突時にステアリングコラム6が収縮すると、チルトバネ40とハウジング17のトルクセンサSを収納する部位とが初期接触(初期衝突)すると、両テーパ部46が拡開して衝撃を吸収する。
【0066】
図9は、二次衝突時において、ステアリングコラム6が収縮した場合、チルトバネ40のテーパ部46に対して、ハウジング17のトルクセンサSを収納する部位を干渉物100として見た場合の説明図である。同図に示すように、干渉物100が、チルトバネ40の両テーパ部46に対して衝突すると、両テーパ部46は、
図9の矢印で示すように車両幅方向に開いて、衝撃吸収を行う。また、テーパ部46は、テーパとなっているため、両テーパ部46は車両幅方向に容易に開くことができる。このため、チルトバネ40にテーパ部46を有しない場合に比して、衝撃荷重が立つ(ピークを生じる)ことを防止できる。
【0067】
図10は、横軸をストロークとし、縦軸に荷重とした場合における、本実施形態の衝撃吸収の特性図である。なお、前記ストロークは、二次衝突時にステアリングホイールが前方へ変位するストロークであり、前記荷重は、ステアリングホイールを前方へ変位させるのに要する荷重である。
【0068】
同図に示すように、EAストロークの必要範囲(すなわち、A〜Eのうち、コラム収縮量が最も長さ(距離)を短くされた長さ)において、樹脂ピン64が剪断される時に荷重のピークが生じ、テーパ部46に干渉物100が衝突する前記範囲の終端領域では、荷重がわずかに右方上がりとなる。前記終端領域でピークが生じないのは両テーパ部46が開いて、荷重を分散できて剪断時よりも小さな荷重ですむためである。
【0069】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のステアリング装置1のチルトバネ40は、アッパブラケット23(車両側ブラケット)に上部が連結されるとともに下部が車両前方へ延出された上部バネ部(掛け止め部54、立下がり部52、延出部50)を備える。また、チルトバネ40は上部バネ部の下部に連結されて、車両後方へ折り返された屈曲部(トーション部48、テーパ部46)と、屈曲部(トーション部48、テーパ部46)からステアリングコラム6下側へ配置されて車両後方へ延びる下部バネ部(押圧作用部44)とを備える。また、前記屈曲部には、車両上方から見て、車両前方へ向けてテーパ状に広がるテーパ部46を備えており、テーパ部46は、アッパチューブ13がロアチューブ14に対して相対移動するときに、パワーアシスト部に初期接触する。
【0070】
この構成により、テーパ部46は、テーパとなっているため、車両幅方向に容易に開くことができ、チルトバネ40にテーパ部46を有しない場合に比して、衝撃荷重が立つことを防止できる。
【0071】
(2)本実施形態では、上部バネ部、屈曲部、及び下部バネ部(押圧作用部44)は、それぞれ一対備えており、一対の各部は、面対称に配置されるとともに、下部バネ部(押圧作用部44)は連結部42を介して連結されている。この結果、二次衝突時において、干渉物はチルトバネに初期接触し、一対のテーパ部46は干渉を避ける方向へ移動する結果、衝突荷重が軽減することができる。
【0072】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更してもよい。
・前記実施形態では、ステアリング装置は、テレスコ調整機能を有するようにしたが、テレスコ調整機能を持たず、チルト調整機能のみを有する電動パワーステアリング装置に適用してもよい。
【0073】
・チルトバネ40の形状は、テーパ部46を有するものであれば、他の部分の形状は、限定するものではない。
・テーパ部46の形状は、干渉物の形状に合わせて対応させてもよい。この干渉物の形状を種々変更することにより、EA荷重をコントロールすることが可能となる。すなわち、本実施形態では、ハウジング17のトルクセンサSを収納する部位に対して、チルトバネ40のテーパ部46を対応させた。チルトバネ40に衝突する物が、ハウジング17のトルクセンサSを収納する部位以外の場合には、その物に合わせて、テーパ部を形成すればよい。
【符号の説明】
【0074】
1…電動パワーステアリング装置、3…ステアリングシャフト、5…軸受、
6…ステアリングコラム、11…アッパシャフト、11a…スプライン嵌合部、
12…ロアシャフト、12a…スプライン嵌合部、12b…拡径部、
13…アッパチューブ(アッパジャケット)、
14…ロアチューブ(ロアジャケット)、16…出力軸、17…ハウジング、
19、20、21…軸受、22…ウォームホイール、
23…アッパブラケット(車両側ブラケット)、24…固定ブラケット、
25…クランプブラケット、
26…コラムブラケット、27…吊り下げボルト、28…締付軸、29…側板、
30…側板、31…連結板、32…連結板、33…バネ取付板、33a…固定凹部、
33b…係止溝、34…ナット、35…ロック機構、36…操作レバー
37…スリーブ、38…押圧部、40…チルトバネ、42…連結部、
44…押圧作用部(下部バネ部)、46…テーパ部(屈曲部)、
48…トーション部(屈曲部)、50…延出部(上部バネ部)、
52…立下がり部(上部バネ部)、54…掛け止め部(上部バネ部)、
55…フック部、60…板バネ、62…ナット、64…樹脂ピン、66…カラー、
67…平板部、68…側板、70…取付板、71…長孔、72…丸孔、
73…第1介在板、74…挿通孔、75…第2介在板、76…第3介在板、
77…対向板、78…連結板、79…対向板、80…連結板、81…係止部、
82…頭部、83…大径部、84…ネジ部、86…頭部、87…軸部、
100…干渉物、A〜F…長さ、M…モータ、O…チルト中心軸、
T1、T2…吊り下げ機構、R…連結・離脱機構。